説明

コンバイン

【課題】電気系統や油圧系統の故障時などの非常時に備えて、手動でもベルトテンション式クラッチの切換を実現可能とする。
【解決手段】油圧式アクチュエータ58を駆動させてテンションベルト32の緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチ45を備えたコンバインにおいて、前記油圧式アクチュエータ58を電磁弁65と接続して、該電磁弁65の切換により油圧式アクチュエータ58を駆動させるとともに、該電磁弁65に手動で切換可能とする手動操作手段70を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、特にエンジンから脱穀部への動力を伝達可能とする脱穀クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおいては、エンジンから脱穀部への動力は脱穀クラッチの入切状態に応じて伝達又は遮断されていた。脱穀クラッチとしては、例えばベルトテンション式クラッチが用いられ、エンジンの出力軸上の駆動プーリと従動プーリとを巻回するテンションベルト、該テンションベルトに作用するテンションローラ、テンションローラを回転自在に支持するテンションアームなどから構成されていた。
【0003】
このような脱穀クラッチでは、テンションアームが回動して、テンションローラでテンションベルトを押圧して緊張させることにより、脱穀クラッチが入状態とされて、駆動プーリから従動プーリへの動力が伝達され、テンションベルトを弛緩させることにより、脱穀クラッチが切状態とされて、駆動プーリから従動プーリへの動力が遮断されるようになっていた。そして、該脱穀クラッチの入切操作はテンションアームに連係された油圧式アクチュエータを電磁弁の切換により駆動させて行う構成とされていた(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−278776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来ような構成では、電気系統の故障などにより電磁弁の切換を電気的に行うことができない場合や、油圧系統の故障などにより油圧式アクチュエータを駆動させることができない場合に、脱穀クラッチの切換操作を行うことができなかった。そこで本発明では、非常時に備えて手動でも脱穀クラッチの切換操作を実現可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、油圧式アクチュエータを駆動させてテンションベルトの緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチを備えたコンバインにおいて、前記油圧式アクチュエータを電磁弁と接続して、該電磁弁の切換により油圧式アクチュエータを駆動させるとともに、該電磁弁に手動で切換可能とする手動操作手段を設けたものである。
【0007】
請求項2においては、油圧式アクチュエータを駆動させてテンションベルトの緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチを備えたコンバインにおいて、前記ベルトテンション式クラッチを構成するテンションアームに、リンク機構を介して、前記油圧式アクチュエータを切り換える弁体と連結し、該リンク機構を手動操作手段と付け替え可能に構成したものである。
【0008】
請求項3においては、油圧式アクチュエータを駆動させてテンションベルトの緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチを備えたコンバインにおいて、前記油圧アクチュエータに、油圧式無段変速装置にチャージ圧を供給するチャージポンプの吐出側と接続したものである。
【0009】
請求項4においては、前記ベルトテンション式クラッチを脱穀部への動力を伝達又は遮断可能とする脱穀クラッチとし、該ベルトテンション式クラッチと前記油圧式アクチュエータとの間に刈取部を支持する支持フレームを配置したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、電気系統の故障などにより電磁弁を電気的に切り換えることができない場合に、手動操作手段を用いて油圧式アクチュエータを一時的に駆動させて、ベルトテンション式クラッチの入切操作を実行することができる。
【0012】
請求項2においては、電気系統の故障などにより電磁弁を電気的に切り換えることができない場合や、油圧系統の故障などで油圧式アクチュエータを駆動させることができない場合に、手動操作手段を用いて、ベルトテンション式クラッチを入状態又は切状態に操作することができる。
【0013】
請求項3においては、油圧式アクチュエータへの油圧として油圧式無段変速装置のチャージ圧を利用することができ、ベルトテンション式クラッチのテンションベルトの伸びに影響されることなく、常に一定のテンション荷重を発生させることが可能となる。そのため、テンションベルトの交換期間の延長などが可能となり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0014】
請求項4においては、油圧式アクチュエータをベルト式テンションアームのテンションベルトなどの回転体から隔離して、保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施例に係るコンバインの構成を示した側面図、図2はコンバインにおける動力伝達構成を示す図、図3は脱穀クラッチの平面図、図4は脱穀クラッチの正面図、図5は脱穀クラッチの側面図、図6は電磁弁の手動操作手段の構成を示す側面図、図7は電磁弁の手動操作手段の構成を示す別実施例の側面図、図8はテンションアームの手動操作手段の構成を示す側面図である。
【0017】
図1に示すように、コンバインにおいては、左右のクローラ式走行装置1・1の上に機体フレーム2が支持され、該機体フレーム2上に脱穀部3及び選別部4が設けられている。該脱穀部3の後方には排藁処理部5が設けられ、前方には刈取部6が設けられている。該刈取部6は、引起装置7、該引起装置7で引き起こされた穀稈を刈り取る刈取装置8、該刈取装置8で刈り取った穀稈を脱穀部3に搬送する搬送装置9などを有し、これらを支持する刈取フレーム10を機体フレーム2上の左右一対の支持フレームに回動自在に支持して上下昇降可能とされている。
【0018】
また、前記脱穀部3の側方には選別部4から揚穀筒11で搬送される穀粒を貯溜するグレンタンク12が設けられ、該グレンタンク12の後方から上方にかけてグレンタンク12内の穀粒を機外に排出する排出オーガ13が配置されている。グレンタンク12の前方には操向ハンドル14や運転席15などを備える運転操作部16が設けられ、該運転操作部16の下方にエンジン17(図2参照)や油圧式無段変速装置(HST)を備えたトランスミッション18が設けられている。
【0019】
前記エンジン17とトランスミッション18とは機体フレーム2の前部に配置され、図2に示すように、該エンジン17の出力軸に設けられた駆動プーリ19とトランスミッション18の入力軸に設けられた従動プーリ20がベルト21で連結されている。これらのプーリ19・20とベルト21によりエンジン17からの動力がトランスミッション18に伝達されて、クローラ式走行装置1・1が駆動可能とされている。
【0020】
前記トランスミッション18から一方向クラッチ22を介して突設された刈取駆動軸にはプーリ23が設けられており、該プーリ23と刈取入力軸に設けた刈取プーリ24とがベルト25で連結され、これらのプーリ23・24とベルト25から機体を前進走行させているときにのみ、刈取部6に備えられた引起装置7や刈取装置8、搬送装置9などにエンジン17からの動力が伝達可能とされている。そして、該刈取部6の各装置は刈取クラッチ26の入切操作により駆動又は停止され、駆動時にはその駆動速度を車速と同調するように構成されている。
【0021】
また、エンジン17の出力軸には駆動プーリ27・30が設けられ、一方の駆動プーリ27から動力伝達機構を介してグレンタンク12内に備えられた排出コンベア28と、該排出コンベア28に連動連結された排出オーガ13にエンジン17からの動力が伝達可能とされている。そして、該排出コンベア28及び排出オーガ13は、動力伝達機構にそなえられた排出クラッチ29の入切操作により駆動又は停止されるように構成されている。
【0022】
他方の駆動プーリ30と脱穀入力軸上の従動プーリ31とはベルト32で連結され、これらのプーリ30・31とベルト32から動力伝達機構33を介して脱穀部3や選別部4、刈取部6の各装置に動力が伝達可能とされている。例えば、動力伝達機構33の脱穀プーリ35と脱穀部3に備えられた扱胴36のプーリ37とがベルト38で連結され、これらのプーリ35・37やベルト38により扱胴36にエンジン17からの動力が伝達可能とされている。
【0023】
また、前記動力伝達機構33の選別プーリ41からプーリ42やベルト43などを介して選別部4に備えられた唐箕や1番コンベアなどの搬送用コンベアにエンジン17からの動力が伝達可能とされている。そして、前記脱穀部3の扱胴36や選別部4の唐箕や搬送用コンベアなどは、ベルト32に設けられた脱穀クラッチ45の入切操作により駆動又は停止されるようになっている。
【0024】
さらに、前記従動プーリ31と同軸上に設けたプーリ46と、刈取プーリ24と同軸上に設けたプーリ47とがベルト48で連結され、これらのプーリ46・47やベルト38からも刈取部6の各装置にエンジン17からの動力が別途伝達可能とされている。そして、刈取部6の各装置はベルト48に設けられた流込クラッチ49の入切操作により機体の前進・停止・後進に関係無く駆動又は停止され、駆動時にはその駆動速度が一定となるように構成されている。
【0025】
こうして、畦際での刈取終了時に機体を低速で前進及び後進させながら(何回か切返しを行いながら)旋回させるのと並行して、刈取部6に残った穀稈を脱穀部3へ搬送する流込作業を行う場合や、圃場の隅の未刈穀稈を、機体を低速で前進及び後進させながら(何回か切返しを行いながら)刈り取る隅刈作業を行う場合、圃場の未刈部分の一部に倒伏穀稈があり、その部分を車速を低速にして刈り取る場合などの一時的に刈取部6の各装置に動力を伝達する必要がある場合には、刈取クラッチ26が切状態に操作されたうえで、流込クラッチ49が入状態に操作されて、刈取部6の各装置がエンジンからの動力を直接に得て駆動されるようになっている。一方、機体を前進走行させながら通常の刈取作業を行う場合には、流込クラッチ49が切状態に操作されて、前述のように刈取部6の各装置がトランスミッション18を介した動力を得てその駆動速度を車速と同調して変化させながら駆動されるようになっている。
【0026】
図3、図4、図5に示すように、前記エンジン17から脱穀部3や選別部4、刈取部6への動力を伝達又は遮断する脱穀クラッチ45はベルトテンション式クラッチとされ、駆動プーリ30と従動プーリ31に巻回されたテンションベルト32、該テンションベルト32に作用するテンションローラ51と、該テンションローラ51を回動自在に支持するテンションアーム52などから構成されている。
【0027】
前記テンションローラ51は駆動プーリ30と従動プーリ31との間に配置され、テンションアーム52の一端に回転自在に支持されている。テンションアーム52の他端は機体フレーム2前部に立設された支持フレーム53に枢支された支点軸54の一端に固設されている。支持フレーム53は刈取部6を支持するべく機体フレーム2前部に立設された左右一対の支持フレームのうちの機体右側の支持フレームであり、他側(左側)の支持フレームとともにその上端部で前記刈取入力軸を内装する刈取入力ケース(図示せず)を回転自在に支持して、該刈取入力ケースに連結された刈取フレーム10を回動可能に支持する構成とされている。また、該支持フレーム53は、エンジン17の機体左側方に配置されている。
【0028】
前記テンションアーム52の支点軸54は支持フレーム53に軸受部材55を介して回転自在に支持され、支持フレーム53を機体左右方向に貫通して当該支持フレーム53に対しテンションアーム52の左右反対側へ突出されている。
【0029】
そして、前記支点軸54の突出端に連結アーム56の一端が固設され、該連結アーム56の他端に油圧式アクチュエータがリンク57を介して枢結されている。ここで、油圧式アクチュエータは油圧シリンダ58とされ、ピストンロッド先端にリンク57が連結され、該油圧シリンダ58の伸縮駆動によりテンションアーム52が連結アーム56、リンク57からなるリンク機構60を介して回動可能とされている。
【0030】
このような構成において、前記油圧シリンダ58が伸長側に駆動されると、図5に示すように、リンク機構60を介してテンションアーム52が駆動プーリ30と従動プーリ31とを巻回するテンションベルト32を押圧する方向へ回動され、該テンションベルト32が張力を得て緊張状態となる。こうして、脱穀クラッチ45が入状態となり、駆動プーリ30から従動プーリ31に動力が伝達される。
【0031】
逆に、前記油圧シリンダ58が収縮側に駆動されると、図6に示すように、リンク機構60を介してテンションアーム52がテンションベルト32から離間する方向へ回動され、該テンションベルト32は張力を得られず弛緩状態となる。こうして、脱穀クラッチ45が切状態となり、駆動プーリ30から従動プーリ31への動力が遮断される。
【0032】
図3に示すように、前記油圧シリンダ58には前記トランスミッション18に備えられた油圧式無段変速装置(HST)61にチャージ圧を供給するチャージポンプ62の吐出側が油圧配管63を介して接続されて、油圧シリンダ58に油圧が供給可能とされている。該トランスミッション18と脱穀クラッチ45は比較的近い距離に位置しているために配管を短く構成することができ、エンジンまたはミッションケースに新たに油圧ポンプを設けるよりも安価に構成することができる。そして、該油圧配管63の途中に電磁弁65が設けられ、該電磁弁65の切換により油圧の供給方向が切り換えられて、油圧シリンダ58が伸縮駆動するようになっている。
【0033】
これにより、油圧シリンダ58への油圧として油圧式無段変速装置61のチャージ圧を利用することができ、ベルトテンション式クラッチからなる脱穀クラッチ45において、テンションベルト32の伸びに影響されることなく、常に一定のテンション荷重を発生させることが可能となる。そのため、テンションベルト32の交換期間の延長などが可能となり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0034】
なお、前記油圧シリンダ58とチャージポンプ62を接続する油圧配管63においては、その途中にはフィルタ66が設けられ、該フィルタ66によりチャージ圧の脈動が低減されている。こうして、フィルタ66を経たチャージ圧を利用して、油圧シリンダ58に油圧を供給する構成とされている。
【0035】
また、前記油圧シリンダ58には電磁弁65が配管をなくしロスを低減するように付設され、該電磁弁65のソレノイドに制御回路を介して弁切換手段が接続されている。該弁切換手段としては、例えばスイッチがあり、該スイッチの操作によりソレノイドに制御信号が送信されて、電磁弁65が切り換えられ、油圧シリンダ58が伸長側又は収縮側に駆動されるようになっている。
【0036】
つまり、スイッチのON・OFF操作により油圧シリンダ58が伸縮駆動され、該油圧シリンダ58の伸縮駆動によりテンションアーム52が前述のように駆動プーリ30と従動プーリ31とを巻回するテンシベルト32を押圧する方向又はテンションベルト32から離間する方向に回動されて、脱穀クラッチ45が入状態又は切状態とされる。
【0037】
このように、脱穀クラッチ45の入切操作はスイッチを操作するだけで、電磁弁65が電気的に切り換えられて、油圧シリンダ58が伸長側又は収縮側に駆動することで行われる。よって、脱穀クラッチのテンションクラッチの入切操作を直接手動で行う場合に比べて、必要な操作荷重の低減化を図ることができ、大きな力を必要とせず簡単に入切操作することができる。
【0038】
また、前記油圧シリンダ58は前記支持フレーム53にステー68を介して取り付けられ、図3、図4に示すように、該支持フレーム53を挟んでエンジン17や脱穀クラッチ45の左右反対側に配置されている。言い換えれば、油圧シリンダ58とエンジン17や脱穀クラッチ45の間に支持フレーム53が配置されている。したがって、油圧シリンダ58をエンジンの駆動プーリ30や脱穀クラッチ45のテンションベルト32などの回転体から隔離して、保護することができる。
【0039】
前述のように脱穀クラッチ45の入切操作は通常スイッチにより電磁弁65を電気的に切り換えて油圧シリンダ58を伸縮駆動させることで行われる。しかし、このような構成では電気系統に故障が発生するなどしてスイッチ操作により電磁弁のソレノイドに制御信号を送信できない場合には、脱穀クラッチ45の入切操作が行えなくなる。そこで、本発明のコンバインにおいては、前記脱穀クラッチ45の入切操作が手動でも実行可能とされている。
【0040】
図6に示すように、前記電磁弁65にはプッシュピン69(スプールを延長してもよい)が設けられ、該プッシュピン69により電磁弁65が外部から手動で切換可能とされている。そして、該プッシュピン69を操作して、電磁弁65を手動で切り換える手段として、手動操作手段70が設けられている。手動操作手段はロッド71、該ロッド71の一端に枢結されたアーム72、該ロッド71の他端に設けられたロッド固定用部材73などから構成されている。
【0041】
前記アーム72は一端にプッシュピン69を押圧する押圧部72aを有して、中途部で支点軸74にて回動自在に支持されている。そして、該アーム72の他端に機体前後方向に延出されたロッド71の一端が枢結され、該ロッド71の他端が前方の運転操作部16側へ延出されて支持ステー75に設けられた開口に挿入されて、機体前後方向に摺動可能に支持されている。支持ステー75は前記支持フレーム53に固設されている。
【0042】
前記アーム72は、ロッド71が支持ステー75に対し前方に摺動されると、支点軸74を中心としてその押圧部72aがプッシュピン69を押圧する方向に回動され、ロッド71が支持ステー75に対し後方に摺動されると、押圧部72aがプッシュピン69から離間する方向に回動される。そして、いずれかの状態で、ロッド71の他端に形成された螺子溝にロッド固定用部材73として蝶ナットが螺挿されて、ロッド71が支持ステー75に固定されるようになっている。
【0043】
このような構成において、スイッチなどにより電磁弁65の切換が電気的に行われる場合には、ロッド71は後方に摺動された位置で支持ステー75にロッド固定用部材73により固定されて、アーム72がプッシュピン69から押圧部72aを離間させた状態に保持される。こうして、手動操作手段70による電磁弁65の操作が通常運転時には不能とされる。
【0044】
そして、電気系統の故障などによりスイッチで電磁弁65の切換を電気的に行えない場合には、ロッド固定用部材73によるロッド71の固定状態を解除して、つまり蝶ナットを緩めてロッド71を通常運転時の固定位置から前方に摺動させることで、アーム72が支点軸74を中心として回動されて、押圧部72aがプッシュピン69を押圧し、電磁弁65が切り換えられる。
【0045】
よって、前記電磁弁65の切換により油圧シリンダ58を現在と反対側となるように伸長側又は収縮側に駆動させて、脱穀クラッチ45の入切状態を変更することができる。つまり、電磁弁65の切換を電気的に行えない場合でも、手動操作手段70を用いて電磁弁65を手動で切り換え、油圧シリンダ58を一時的に駆動させて、脱穀クラッチ45の入切操作を行うことができる。
【0046】
また、図7に示すように、前記電磁弁65を手動で切り換える手段は、手動操作手段80のように油圧シリンダ58に枢支されたアーム81と、該アーム81とワイヤ82を介して連係される操作レバー83などから構成することもできる。この場合、操作レバー83を回動操作することによって、アーム81を回動してプッシュピン69を押圧し、電磁弁65を手動で切り換えることができる。これにより、電気系統の故障などによりスイッチで電磁弁65の切換を電気的に行えない場合でも、脱穀クラッチ45を前記同様に操作することが可能となる。
【0047】
さらに、非常時には前記脱穀クラッチ45を手動操作手段90を用いて油圧シリンダ58を介さずに直接に手動で操作可能とすることもできる。図8に示すように、手動操作手段90はテンションアーム52を手動で操作可能とするものであり、前記リンク機構60をなす連結アーム56とリンク57、該リンク57と連係される操作レバー91などから構成される。すなわち、手動操作手段90はリンク57と油圧シリンダ58の連結を解除した状態で、リンク57に油圧シリンダ58の代わりに操作レバー91を連係して構成される。
【0048】
したがって、電気系統の故障などにより電磁弁の切換を電気的に行うことができない場合、油圧系統の故障などにより油圧シリンダ58を駆動させることができない場合のいずれか一方又は両方のような非常の場合でも、リンク57を付け替えるだけで、操作レバー91を回動操作することで、テンションアーム52をリンク機構60を介して回動し、脱穀クラッチ45の入切操作を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例に係るコンバインの構成を示した側面図。
【図2】コンバインにおける動力伝達構成を示す図。
【図3】脱穀クラッチの平面図。
【図4】脱穀クラッチの正面図。
【図5】脱穀クラッチの側面図。
【図6】電磁弁の手動操作手段の構成を示す側面図。
【図7】電磁弁の手動操作手段の構成を示す別実施例の側面図。
【図8】テンションアームの手動操作手段の構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0050】
32 テンションベルト
45 脱穀クラッチ(ベルトテンション式クラッチ)
52 テンションアーム
53 支持フレーム
58 油圧シリンダ(油圧式アクチュエータ)
60 リンク機構
61 油圧式無段変速装置
62 チャージポンプ
65 電磁弁
70 手動操作手段
80 手動操作手段
90 手動操作手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧式アクチュエータを駆動させてテンションベルトの緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチを備えたコンバインにおいて、前記油圧式アクチュエータを電磁弁と接続して、該電磁弁の切換により油圧式アクチュエータを駆動させるとともに、該電磁弁に手動で切換可能とする手動操作手段を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
油圧式アクチュエータを駆動させてテンションベルトの緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチを備えたコンバインにおいて、前記ベルトテンション式クラッチを構成するテンションアームに、リンク機構を介して、前記油圧式アクチュエータを切り換える弁体と連結し、該リンク機構を手動操作手段と付け替え可能に構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
油圧式アクチュエータを駆動させてテンションベルトの緊張と解除を行いクラッチの入切操作を行うベルトテンション式クラッチを備えたコンバインにおいて、前記油圧アクチュエータに、油圧式無段変速装置にチャージ圧を供給するチャージポンプの吐出側と接続したことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
前記ベルトテンション式クラッチを脱穀部への動力を伝達又は遮断可能とする脱穀クラッチとし、該ベルトテンション式クラッチと前記油圧式アクチュエータとの間に刈取部を支持する支持フレームを配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−82426(P2007−82426A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272619(P2005−272619)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】