説明

コンバイン

【課題】 後方視認用の表示装置を利用して、前方の条列の視認性を向上させることにより、機体を後進させる際の操作と、前進作業走行時における操向操作を行い易くしたコンバインを提供する。
【解決手段】
走行機体の後方側を撮影する後方撮像手段9と、走行機体の右前方を撮影する右前方撮像手段11とを備え、これらの撮像手段による撮像情報を操縦部に配置した表示装置10のモニタ画面で択一的に切換表示するように構成するとともに、右前方撮像手段11を、刈取引き起こし装置30よりも後方側における走行機体側の固定位置に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体後部側を撮影する撮像手段を備え、その撮像手段による撮像情報を操縦部に配置した表示装置のモニタ画面で表示するように構成したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインでは、運転者が位置する操縦部よりも後方側の走行機体上にはグレンタンクや脱穀装置、あるいは排ワラ処理装置などが搭載されており、操縦部から機体の真後ろを直接目視することは不可能である。
また、機体前方側においては、分草体が条間を進行するように操向することで、適正な分草及び茎稈引き起こし作業を与えながら、茎稈を刈取引き起こしすることが望まれている。
このため、従来のコンバインでは、コンバインの機体後進時における機体後方側の監視、及び機体前進時における前進方向の視認を行うにあたり、下記[1]及び[2]に示す技術を採用することが知られている。
[1] 機体後部を撮影する撮像手段としての監視カメラを機体後部に配置し、その監視カメラによる撮像情報を、操作レバー類が設けられた操縦塔上面の操作パネル部に配備されている表示装置によって表示するように構成し、機体前方側については、左前部の分草体の上側の刈取部に監視カメラを設けて、分草体が条間に潜り込む状態を視認できるようにしたもの(特許文献1参照)。
[2] 機体後部を撮影する撮像手段としての監視カメラを機体後部に配置し、その監視カメラによる撮像情報を、操縦部に配備されている表示装置によって表示するように構成し、機体前方側については、左前部、もしくは右前部の分草ガイド板の上下方向中間部に監視カメラを設けて、分草体が条間に潜り込む状態を視認できるようにしたもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−291321号公報(段落番号〔0022〕、〔0028〕、及び図1,図2)
【特許文献2】特開2005−137260号公報(段落番号〔0022〕、〔0023〕、〔0034〕、〔0036〕、及び、図1,図2,図10,図11,図12,図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に示される技術を採用すれば、操縦部の表示装置を目視することで、機体後方側を視認することが可能となり、また、機体前方側においても分草体が条間に位置する状態を監視することが可能になるので、機体後進を良好に行い易く、かつ機体操向方向の監視が可能である点で優れている。
しかしながら、これらの特許文献1及び2に記載された技術によっても、次のような問題がある。
すなわち、特許文献1及び2に記載のように、分草体(分草ガイド)の部分に監視カメラを設けたものにおいて、条間に位置する分草体(分草ガイド)が条間から外れないように監視して操向操作を行う場合には、操向操作の応答にきわめて迅速な操作が要求され、また、雑草などによる外乱も多い状況で、集中して注視しながら監視を続ける必要がある。
つまり、分草体自体が検出対象である茎稈を押し分けて進行するものであるから、その分草体箇所に配置される監視カメラの位置は、検出対象の茎稈条との距離が必然的に極めて近くなる。このため、検出中の状況変化を認識してから実際に操作を行うまでに時間的なゆとりがなく、しかも、雑草などによる外乱も多い状況で、常時集中して監視しながら素早い応答動作が要望されるという、疲労し易い作業が要求されることになる。
したがって、上述のように分草体(分草ガイド)の部分に監視カメラを設けた構造のものにおいては、現実には、刈取作業の開始時の条合わせの際に分草体箇所に設けられた監視カメラを利用した条合わせ作業を行い、通常の機体前進の際の操向操作は、監視カメラとは無関係に直接機体前方側を目視して操向操作を行うことが一般的である。
【0005】
本発明は、後方視認用の表示装置を利用して、前方の条列の視認性を向上させることにより、機体を後進させる際の操作と、前進作業走行時における操向操作を行い易くしたコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明におけるコンバインの技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
【0007】
〔解決手段1〕
本発明の技術手段の一つは、請求項1に記載したように、走行機体の最前部に刈取引き起こし装置を配備し、刈取引き起こし装置の後部で機体右横側に操縦部を配備し、操縦部の左横側部に刈取茎稈を後方搬送する縦搬送装置を配備してあるコンバインにおいて、
走行機体の後方側を撮影する後方撮像手段と、走行機体の右前方を撮影する右前方撮像手段とを備え、これらの撮像手段による撮像情報を操縦部に配置した表示装置のモニタ画面で択一的に切換表示するように構成するとともに、前記右前方撮像手段を、前記刈取引き起こし装置よりも後方側における走行機体側の固定位置に設けてあることである。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記構成によると、走行機体の後方側を撮影する後方撮像手段による撮像情報を表示する表示装置を利用して、走行機体の前方側の撮像情報をも表示することができるものであるが、特に本発明では、前方を撮影する撮像手段が、走行機体の右前方を撮影する右前方撮像手段であり、かつ、その右前方撮像手段が刈取引き起こし装置よりも後方側における走行機体側の固定位置に設けてあるので、機体操向操作のために有効な目視可能な情報を操縦者に対して提供することができる。
すなわち、右前方撮像手段は、刈取引き起こし対象の茎稈からある程度距離を隔てた後方側の機体固定部に設けてあって、右前方を撮影するように配設されたものであるから、刈取対象茎稈群のうち、右側前端の茎稈、及びその後方(機体進行方向での前方側)で右端の茎稈列、ならびに茎稈の刈り跡を条列として認識できるように撮影することができる。
つまり、前述の従来技術のように、分草体が突入対象とする条間を検出するように撮像手段を配置すると、分草体の直前の左右2点の茎稈株、あるいはその直近の茎稈株が検出対象であり、茎稈を条列として認識することができないが、本発明によれば、茎稈やその刈り跡を条列として認識することにより、機体進行方向が茎稈列の方向に沿っているか否かを確認することで有効な操向操作を行うことができる。
そして、撮像手段を刈取引き起こし装置よりも後方の走行機体の固定部に設けることで、撮像手段の配設位置を対地的に比較的高く位置設定できるので、作業中の泥土の付着などを避けるに効果的であり、また、撮像手段よりも前方で茎稈や雑草が刈り取られるので、これらとの接触で撮像手段に泥土や塵埃が付着することによる外乱の発生を抑止するにも有効である。
【0009】
〔解決手段2〕
また、本発明では、請求項1記載のコンバインにおいて、請求項2に示すように、操縦部に運転キャビンを備え、右前方撮像手段を運転キャビンの右横側部に配置した構成を採用するとよい。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記構成によると、請求項1にかかる発明の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。
すなわち、撮像手段を走行機体側に配置した場合、走行装置との干渉を避けるためなどから必然的にある程度高い位置になる。このため、例えば機体前方側で左右方向の中央付近から前方を撮影するように撮像手段を設けた場合などには、分草体の直前の茎稈を撮影することはできても、茎稈群を前後方向の条列として認識できるように撮影することは困難である。
これに対して本発明では、右前方撮像手段を運転キャビンの右横側部に配置したものであるから、走行機体の右前方箇所に配備されている運転座席に搭座した操縦者が肉眼で目視する場合よりも、さらに右側に寄った箇所に視点をおいた状態で前方の茎稈列を視認することが可能となる。
したがって、たとえば茎稈が右側へ倒れぎみで、運転座席に搭座する操縦者からは茎稈列の株元が見難い状況であっても、より右側に設置される右前方撮像手段からは茎稈の株元の条列、及び、それに隣接する刈り跡の条列を視認し易い条件で刈取作業を行うことが可能である。
【0011】
〔解決手段3〕
また、本発明では、請求項1または2記載のコンバインにおいて、請求項3に示すように、右前方撮像手段を、方向指示器の取付部に一体的に取り付けてもよい。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記構成によると、請求項1及び2にかかる発明の作用効果に加えて、次の作用効果を奏する。
すなわち、走行機体の最も右側に位置して機体前方箇所に設けられている方向指示器と一体的に右前方撮像手段を設けることで、方向指示器の取付構造を右前方撮像手段の取付構造に有効利用して、構成の簡素化を図り得る利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〔コンバインの全体構成〕
以下に本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1R,1Lの上部に設けた機体2の前部に、刈取昇降シリンダCによって横軸芯X周りで上下揺動操作自在な状態で刈取前処理部3が備えられ、機体2には、操縦部としての運転キャビン4、刈取穀稈を脱穀・選別する脱穀部5、脱穀部5から供給される穀粒を貯留する穀粒貯留用のタンク6、このタンク6に貯留されている穀粒を排出させる穀粒排出用のオーガ7、前記脱穀部5で処理された排ワラを結束または切断して放出する排ワラ処理装置8等を備えて構成されている。
【0014】
刈取前処理部3は、先端部に付設された複数の分草具32、倒伏した穀稈を立姿勢に引き起こす複数の引き起こし枠33、引き起こした穀稈の株元を切断する刈り刃34、で構成される刈取引き起こし装置30と、先端側で刈取穀稈を受け取って脱穀部5のフィードチェーン52に受け渡す縦搬送装置31とを備えている。
そして、刈取前処理部3は、前述のように刈取昇降シリンダCによって横軸芯X周りで上下揺動操作自在に構成されているとともに、左右方向でも、図3に示すように引き起こし枠33及び刈り刃34の位置を、実線で示す回り刈り用の第1作用位置と、仮想線で示す中割刈り用の第2作用位置とに、位置変更自在に構成されている。引き起こし枠33及び刈り刃34の左右位置変更のための具体構造は既に周知であり、ここではその具体的な構造の説明は省略する。
【0015】
脱穀部5は、図1,2に示すように、刈取穀稈を扱き処理する扱胴51を扱室に内装し、刈取前処理部3から供給される穀稈を搬送するフィードチェーン52を備えている。そして、扱室内で扱処理された処理物は、図示しないが、扱室の下部に設けられた受網から選別装置上に漏下し、選別処理された後に穀粒タンク6に移送される。扱き処理後の排ワラは、フィードチェーン52の後端から排ワラ処理装置8に送られて、結束または切断処理された後に機体後端から排出されるように構成されている。
【0016】
〔運転キャビン〕
図1乃至図5に示すように、機体2の右側前部には操縦部としての運転キャビン4が搭載設置されている。
この運転キャビン4は、図4及び図5に示すように、乗降用の開閉扉40Aが設けられた右側壁40と、運転キャビン4の内部に配備された操縦パネル4Aの前方側の前壁41と、座席後方の後壁43と、左側壁42とで平面視矩形状のキャビン室内空間が形成され、キャビン室内の中央部に設置された運転座席44に搭座した操縦者が、前後左右を見渡せるように夫々の壁面40〜44にガラス窓40a,41a,42a,43a,44aが設けてある。
天井部45の内面は、運転座席44に搭座した操縦者の頭頂部より少し高い程度に設定され、天井壁45の内面壁45aと屋根壁45bとの間に空調装置46を配備してある。
【0017】
運転キャビン4の右側壁40に設けられる乗降用の開閉扉40Aは、後方側のヒンジ4Bで前側を揺動開閉自在に構成されている。開閉扉40Aよりも前方の右側壁40の外面側には、手摺り4Cと、方向指示器4Dと、後述する右前方撮像手段11が装備されている。
運転キャビン4の前壁41の上部側を構成する前面ガラス窓41aは、前傾姿勢に配設してあって、図4,5に示すように外面側にワイパー47のアーム部47aが、内面側にワイパー駆動機構47bが夫々配備されている。ワイパー駆動機構47bは運転座席44に搭座する操縦者の頭部よりも左側方に寄せて、操縦者の直前の視界から外れるように配置してあり、ワイパー47のアーム部47bの停止位置は、図5に示すように前方を見る操縦者の目線よりも上側で停止するように構成されている。
【0018】
〔後方監視装置〕
図1,2、及び図6に示すように、機体後部の排ワラ処理装置8の後部上端位置には、機体の後方下方を撮影する監視カメラからなる後方撮像手段9が配設され、前記運転キャビン4内には、前記図3〜図5に示すように表示装置10が配設されている。
この後方撮像手段9と、前記表示装置10と、前記後方撮像手段9で撮影された撮像情報を運転キャビン4内の表示装置10に表示される画像データとして出力するように、マイクロコンピュータを利用して構成された制御装置12とで、後方監視装置が構成されている。
【0019】
前記後方撮像手段9は、図6に示すように、機体後方位置の排ワラ処理装置8の後端上方のカバー部材80に取付ブラケット80aを介して装着した監視カメラ90で構成されており、結束装置81の上方側で排ワラ放出口82の近く、及び、その下方側で、排ワラ細断装置83の後端側に設けられているカッターシュート84の後面とを含めて機体の後方下方を撮影できるように撮像範囲を定めて配設してある。
したがって、撮像手段では、コンバインによる刈取脱穀作業中では、排ワラ放出口82から放出される排ワラの排出状況と、放出された後の排ワラ束の落下位置などの情報となる画像が撮影され、刈取脱穀が行われていない機体後進時などには、機体後方側の障害物や地形などの情報となる画像が撮影される。
後方撮像手段9を構成する監視カメラ90の上部側は日除けカバー91で覆われており、強い日射しの影響を受け難くするように工夫されている。
【0020】
前記表示装置10は、前記撮像手段で撮影された撮像情報を表示するものであり、図4及び図5に示すように、前記後方撮像手段9で撮影された撮像情報を表示するモニタ画面部分を、運転キャビン4の天井壁45に埋め込み状態で配設してある。
この場合、表示装置10のモニタ画面は、天井壁45の厚みを必要以上に厚くしないことと、目視し易い画面の表示面積を確保し易くするために、緩やかな前下がりの傾斜姿勢で配設するとよい。このように天井側に表示装置10を埋め込み配置すると、運転キャビン4の室内空間をより広く利用できる利点がある。
【0021】
〔右前方撮像手段〕
図2乃至図5に示すように、運転キャビン4の右横側部には、機体進行方向の前方側を撮影するためのカメラで構成される右前方撮像手段11が設けられている。
この右前方撮像手段11が設けられる位置は、上下方向では走行装置との干渉が避けられる程度の低い位置から、運転座席44に搭座する操縦者の視点の位置程度の、広範囲にわたって任意の位置に設置することが可能であるが、好ましくは、図3,4及び図5に示すように、運転キャビン4の床面よりも上側で前面ガラス窓41aの下縁よりも下方である程度の高さに設定しておくとよい。このような高さに設定しておくと、右前方撮像手段11に対する泥土など他物の付着を避けるに好適であるとともに、カメラの視点高さも比較的低く、上方から見る場合よりも茎稈条列の倒れ状況の視認等が行い易い。
また、この範囲の高さ位置には、前述のように方向指示器4Dが付設されており、本発明では、この方向指示器4Dの取付構造を利用して、方向指示器4Dと一体的に右前方撮像手段11が取り付けられている。
【0022】
また、左右方向では、図2,3に示すように、運転キャビン4の右横側部に配設されているが、この左右方向位置に関しては、必ずしもこの位置に限らず、例えば図3に仮想線で図示したように、運転キャビン4の前壁41で少し機体内方側へ入り込んだ部位に配設してもよい。
すなわち、運転座席44に搭座する操縦者の視点の位置よりも右側に寄せて配置されていれば、目視による場合よりも茎稈を条列として認識し易いという一応の目的を達成し得るが、より好ましくは、図3に示すように、刈取前処理装置3が実線で示す回り刈り作業位置にある状態で、その最も右側の茎稈引き起こし経路33aの中間位置(図中の線分yの位置)に相当する箇所よりも右側に設けておくようにするとよい。この位置に右前方撮像手段11を配設すると、回り刈り作業中に右前方撮像手段11が茎稈列よりも常に右側に位置する状態となり易いので、右端の茎稈を条列として認識し易くなる。
【0023】
参考までに、運転キャビン4の右横側部に右前方撮像手段11を配備した場合の撮像範囲の一例を図2に示している。
図中の○印が未刈り茎稈株の列であり、×印の列が既刈りの株跡を示す。図中に二点鎖線で示した角度範囲が平面視での右前方撮像手段11の撮像範囲を示し、右前方撮像手段11の中心線11cは、機体進行方向と同方向に向けてもよいが、この例では少し機体中心側に向けてある。このように最も未刈り側の茎稈列の直前もしくは少し右側に寄った位置に、視点となる右前方撮像手段11をおいて撮影するものであるから、未刈り茎稈の株元を列状に認識し易い状態で撮影することが可能となる。
【0024】
〔吐出箇所撮像手段〕
図1,2に示すように、穀粒貯留用のタンク6に貯留されている穀粒を吐出する穀粒排出用のオーガ7の先端部には、穀粒吐出箇所を撮影するカメラで構成される吐出箇所撮像手段70が設けられており、この吐出箇所撮像手段70による穀粒吐出対象箇所の撮像情報も、運転キャビン4内の前記表示装置10で表示できるように構成してある。
【0025】
〔関連構成〕
図7に示すように、後方撮像手段9、右前方撮像手段11、吐出箇所撮像手段70の夫々で撮影された撮像情報は、マイクロコンピュータで構成された制御装置12に入力され、何れかの撮像手段による情報が選択されて、表示装置10に画像データとして出力され、表示装置10に表示される。
前記制御装置12の入力部には、走行変速系に組み込まれている静油圧式無段変速装置(図外)の操作位置が前進操作域であるか、後進操作域であるかを変速操作レバー13の操作位置に基づいて検出する前後進検出センサ13Aからの検出信号と、刈取前処理装置3の昇降操作を行うための昇降操作スイッチ14からの操作信号と、オーガ操作スイッチ15による穀粒搬送用オーガの駆動のON/OFF、昇降操作、及び左右旋回操作、などの操作指令信号とが入力されるように接続されている。さらに、この制御装置12には、人為操作で前記表示装置10による表示形態を切り換えるための表示状態切換スイッチ16が接続されている。この表示状態切換スイッチ16は、図7に示すようにダイヤル式のスイッチによって、「自動」、「後方」、「オーガ」、「OFF」の4位置に切換自在に構成され、後述する図8のフローチャートに示す如く切換信号を出力するように構成されている。
また制御装置12には、刈取前処理装置3の刈取昇降シリンダCを作動させる刈取昇降シリンダ駆動装置C1に対して昇降指令を出力するシリンダ昇降操作手段120と、オーガ駆動装置150に対して作動指令を出力するオーガ制御手段121と、前記表示装置10に対して制御指令を出力する表示切換手段122とが、制御プログラムとして記憶格納されている。
【0026】
前記シリンダ昇降操作手段120は、昇降操作スイッチ14から入力された操作信号に基づいて刈取昇降シリンダCを駆動する刈取昇降シリンダ駆動装置C1に制御指令を出力するように構成されている。
前記オーガ制御手段121は、前記オーガ操作スイッチ15から入力された昇降操作信号、及び左右旋回操作信号に基づいて、オーガ駆動装置150に制御指令を出力するように構成されている。
前記表示切換手段122は、前記昇降操作スイッチ14や前後進検出センサ13Aからの検出信号に基づいて前記表示装置10に出力すべき撮像情報を選択するように構成されたものである。
【0027】
前記表示装置10は、前記後方撮像手段9、右前方撮像手段11、吐出箇所撮像手段70の夫々で撮影された撮像情報を、図8のフローチャートに示すように、次の如く選択すべく構成されている。
[1] 4位置切換自在な表示状態切換スイッチ16が「自動」の位置である(ステップ#1)と、刈取前処理装置3の昇降操作スイッチ14が「下げ」の作業位置にあり(ステップ#4)、かつ、前後進検出センサ13Aが「前進」を検出した状態であるとき(ステップ#5)に、表示装置10は右前方撮像手段11の撮像情報を表示する(ステップ#6)。
[2] 上記のステップ#5の状態から前後進検出センサ13Aが「後進」を検出すると、表示装置10は後方撮像手段9の撮像情報を表示する(ステップ#7)。
[3] 4位置切換自在な表示状態切換スイッチ16が「自動」の位置(ステップ#1)で、刈取前処理装置3の昇降操作スイッチ14が「上げ」の非作業位置である(ステップ#4)と、前後進検出センサ13Aの検出状態の如何に拘わらず表示装置10は後方撮像手段9の撮像情報を表示する(ステップ#7)。
[4] 4位置切換自在な表示状態切換スイッチ16が「後方」の位置(ステップ#2)であると、昇降操作スイッチ14の操作位置や、前後進検出センサ13Aの検出状態の如何に拘わらず表示装置10は後方撮像手段9の撮像情報を表示する(ステップ#7)。
[5] 4位置切換自在な表示状態切換スイッチ16が「オーガ」の位置(ステップ#3)であると、昇降操作スイッチ14の操作位置や、前後進検出センサ13Aの検出状態の如何に拘わらず表示装置10は吐出箇所撮像手段70の撮像情報を表示する(ステップ#8)。
[6] 4位置切換自在な表示状態切換スイッチ16が「OFF」の位置であると、昇降操作スイッチ14の操作位置や、前後進検出センサ13Aの検出状態の如何に拘わらず表示装置10は非表示となる(ステップ#9)。
【0028】
〔他の実施形態〕
上記の発明を実施するための最良の形態では、操縦部として運転キャビン4を備えた構造を示したが、これに限らず、運転キャビン4無しで、例えば操縦塔の右横側部に右前方撮像手段11を配設し、表示装置10を操縦パネル部分に配設するなどして実施することができる。
この場合においても、右前方撮像手段11の配設位置は、上下方向においては、操縦パネル、あるいは運転座席44の搭座面よりも下側で、操縦部フロアーよりも上側に相当する範囲に、かつ左右方向においては、前述の発明を実施するための最良の形態と同様に設定するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバイン全体の側面図
【図2】コンバイン全体の平面図
【図3】コンバイン全体の正面図
【図4】運転キャビンの正面図
【図5】運転キャビンの右側面図
【図6】後方撮像手段の取付箇所を示す側面図
【図7】制御系を示すブロック図
【図8】表示装置の切換形態を示すフローチャート
【符号の説明】
【0030】
3 刈取前処理部
4 運転キャビン
8 排ワラ処理装置
9 後方撮像手段
10 表示装置
11 右前方撮像手段
12 制御装置
16 表示状態切換スイッチ
30 刈取引き起こし装置
31 縦搬送装置
40 右側壁
41 前壁
42 左側壁
43 後壁
44 運転座席
45 天井部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の最前部に刈取引き起こし装置を配備し、刈取引き起こし装置の後部で機体右横側に操縦部を配備し、操縦部の左横側部に刈取茎稈を後方搬送する縦搬送装置を配備してあるコンバインであって、
走行機体の後方側を撮影する後方撮像手段と、走行機体の右前方を撮影する右前方撮像手段とを備え、これらの撮像手段による撮像情報を操縦部に配置した表示装置のモニタ画面で択一的に切換表示するように構成するとともに、前記右前方撮像手段を、前記刈取引き起こし装置よりも後方側における走行機体側の固定位置に設けてあるコンバイン。
【請求項2】
操縦部に運転キャビンを備え、右前方撮像手段を運転キャビンの右横側部に配置してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
右前方撮像手段は、方向指示器の取付部に一体的に取り付けてある請求項1または2記載のコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−89(P2008−89A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173868(P2006−173868)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】