説明

コンバイン

【課題】走行機体の後方に存在する障害物を検出して、操縦者や周辺作業者に知らしめるバックソナー等の後方監視手段を備えたコンバインにおいて、圃場の畦際で後進する際や車庫入れのために後進する際、走行機体の後部と、その後方に存在する障害物が接触する直前まで後進操作を行わなければならない場合があり、この後進操作を操縦者が安全且つ確実に行えるようにする。
【解決手段】走行機体2に接近する障害物と走行機体2の距離に応じて、走行機体2の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーン16の警報出力周期を変化せしめるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後方に存在する障害物を検出して、操縦者や周辺作業者に知らしめるバックソナー等の後方監視装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫するコンバインにおいては、走行機体の後部に超音波送受波器を設け、この超音波送受波器を介して走行機体の後方に存在する障害物を検出すると共に、前記超音波送受波器と障害物との距離(間隔)が所定の範囲以内になると警報を発する警報発生手段を設け、且つ刈取り作業を行なっていない時のみ当該超音波送受波器による障害物の検出が有効になされるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭62−45936号公報(第1図、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そして、上述した特許文献1のものでは、コンバインのように車高の高い走行機体を後進させる際、操縦者は、サイドミラー(バックミラー)等に頼ることなく走行機体の後方に存在する障害物が所定の範囲以内に接近したことを警報によって認識することができるようになっている。しかし、圃場の畦際で後進する際や車庫入れのために後進する際は、走行機体の後部と、その後方に存在する障害物が接触(衝突)する直前まで後進操作を行わなければならない場合があり、この後進操作を操縦者が安全且つ確実に行えるように改善する余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、走行機体の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーンを備えたコンバインにおいて、走行機体の後方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、該障害物検出手段により検出した障害物と走行機体との距離を演算し、且つ前記後進警報用ホーンに警報出力信号を出力する制御装置とを設けて、前記障害物と走行機体の距離に応じて後進警報用ホーンの警報出力周期を変化せしめるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、走行機体の後方に存在する障害物を障害物検出手段により検出し、この検出した障害物と走行機体との距離を制御装置を介して演算すると共に、該制御装置から後進警報用ホーンに警報出力信号を出力することによって、走行機体の後方に存在する障害物と走行機体の距離(間隔)に応じて後進警報用ホーンの警報出力周期を変化せしめるように構成しているので、コンバインのように車高の高い走行機体を後進させる際、操縦者は、サイドミラー(バックミラー)等に頼ることなく、走行機体の後方に存在する障害物が徐々に接近することを前記後進警報用ホーンの警報出力周期の変化によって的確に認識することができる。
したがって、圃場の畦際で後進する際や車庫入れのために後進する際のように、走行機体の後部と、その後方に存在する障害物が衝突する直前の際どいタイミングまで後進操作を行わなければならない場合であっても、操縦者は、この後進操作を安全且つ確実に行なうことができる。尚、既設の後進警報用ホーンを警報手段として利用することにより特別な警報装置を設けることなく安価に構成できる。
また、操縦者から死角となる走行機体の後方領域を撮像可能な監視カメラと、この監視カメラで撮像した画像を表示するバックモニタを操縦部に設けた後方監視装置を備えるコンバインのように、操縦者は、走行機体の後進操作中に前記バックモニタを注視するための視線移動を伴うことなく、聴覚のみで走行機体の後部に存在する障害物の位置を的確に認識することができるので操縦性がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜図3は、コンバインの右側面図、平面図、及び背面図であって、このコンバインは、走行部である左右一対のクローラ走行装置1L,1Rに支持した走行機体2と、該走行機体2の前方に昇降自在に連結すると共に稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部3と、該前処理部3から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部4と、該脱穀部4で脱穀された穀粒を選別処理する図示しない選別部(揺動選別装置)と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク5と、該穀粒タンク5内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ6と、脱穀部4で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する排藁搬送部7と、機体後部において排稈を排出処理する図示しないカッタを備えた後処理部8と、オペレータが着座する座席9や操向操作具であるマルチステアリングレバー11、及び主変速レバー12等の各種操作具を配設した操縦部13を備えている。
【0007】
そして、走行機体2の後部には、走行機体2の後方に向けて超音波を発信すると共に、走行機体2の後方に存在する障害物からの反射波を受信することができる送受信兼用の左右一対の超音波センサ14L,14Rを設けている。即ち、両超音波センサ14L,14Rは、走行機体2の後方に存在する障害物を検出して、操縦者や周辺作業者に知らしめることができるコンバインの後方監視装置を構成するものであり、詳細は後述する制御装置15(図4参照)を介して両超音波センサ14L,14Rにより検出した障害物と走行機体2との距離を演算する共に、走行機体2の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーン16(図4参照)に警報出力信号を出力できるように構成している。
【0008】
更に詳しく説明すると、上述した後方監視装置を構成する制御装置15は、図4に示すブロック図の如くマイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM等を含む)を用いて構成される制御部であって、この制御装置(制御部)15の入力側には、主変速レバー12の操作位置を検出する主変速レバーポテンショメータ17、走行機体2の後方に存在する障害物を検出する障害物検出手段としての左右一対の超音波センサ14L,14R、図示しないオルタネータの出力パルスをカウントすることによりエンジンの回転速度を検知するエンジン回転センサ18を所定の入力インターフェイス回路を介して接続している。
【0009】
一方、制御装置15の出力側には、後進警報用ホーン16、操縦部13周辺のみで聴取可能な警報出力手段である電子ブザー19、燃料カットによりエンジンを停止させるエンジン停止ソレノイドバルブ21、左右一対の超音波センサ14L,14Rによって検出した障害物と走行機体2との距離(間隔)を視認可能な表示モニタ22を所定の出力インターフェイス回路を介して接続している。更に詳しくは、表示モニタ22は、操縦部の床面を形成する搭乗ステップ23の前側に立設した操縦塔24の上部に備えるメータパネル25に内装した複数のインジケータ22a(図5参照)からなり、これらのインジケータ22aは、機体の後方に存在する障害物と走行機体の距離に応じて順次点灯するように構成している。尚、メータパネル25には、コンバインの刈り取り作業(運転)に必要なエンジンの回転数を表示するアナログ式の回転計26、コンバインの作業時間の積算値を表示するアワーメータ27、及び機体各部の異常を表示する異常表示手段としてのインジケータ群28が設けられている。
【0010】
そして、図6は、上述した制御装置15を介して実行するコンバインの後方監視制御を示すフローチャートであって、以下このフローチャートに基づいて説明する。
【0011】
先ずステップS1では、主変速レバー12が走行機体2の後進操作位置にあるか否かを主変速レバーポテンショメータ17によって検出し、主変速レバー12が走行機体2の後進操作位置に操作されていない状態、即ち、中立または前進操作位置にあればステップS2に進み、主変速レバー12が走行機体2の後進操作位置にあるならばステップS3に進む。
【0012】
ステップS2では、走行機体2の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーン16の警報周期をリセットして元に戻る。
【0013】
一方、ステップS3では、左右一対の超音波センサ14L,14Rにより検出した障害物と走行機体2との距離、即ち制御装置15を介して演算された障害物と走行機体2の間隔が図7に示す如く走行機体2の後部と、その後方に存在する障害物が接触(衝突)する直前の危険距離(領域)Aにあるか否かを判断し、危険距離(領域)Aにあれば、ステップS4に進み、前記危険距離(領域)A以外の障害物警報距離(領域)Bまたは通常警報距離(領域)CにあればステップS5に進む。
【0014】
ステップS4では、エンジン停止ソレノイドバルブ21を作動させて燃料カットによるエンジン停止制御を実行して走行機体2の後部と障害物の接触を回避する。
【0015】
そして、ステップS5では、制御装置15を介して演算された障害物と走行機体2の間隔が図7に示す如く走行機体2の後部と、その後方に存在する障害物が接近する障害物警報距離(領域)Bにあるか否かを判断し、障害物警報距離(領域)Bになければ、ステップS6に進み、障害物警報距離(領域)BにあればステップS7に進む。
【0016】
ステップS6では、走行機体2の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーン16の警報周期を固定値にしてステップS9に進む。尚、このステップS6は、
後進警報用ホーン16の警報周期を変化させる必要のない図7に示す通常警報距離(領域)Cに対応する。
【0017】
一方、ステップS7は、図7に示す障害物警報距離(領域)Bに対応するものであり、当該ステップS7では、左右一対の超音波センサ14L,14Rにより検出した障害物と走行機体2との間隔、即ち制御装置15を介して演算された障害物と走行機体2の距離に応じて後進警報用ホーン16の警報周期を設定した後ステップS8に進む。更に詳しくは、このステップS8における後進警報用ホーン16の警報周期は、図7に示す如く走行機体2に対して障害物が接近するに連れ、後進警報用ホーン16の警報周期が段階的に短くなるように設定する。
【0018】
ステップS8では、上述の如く制御装置15を介して演算された障害物と走行機体2の間隔に応じて、表示モニタ22である複数のインジケータ22aに順次距離表示出力(点灯出力)を実行した後ステップS9に進む。
【0019】
そして、ステップS9では、後進警報用ホーン16による警報出力(バック警報出力)を、図7に示す通常警報距離(領域)Cに対応する固定値である比較的長い周期で実行するか、または障害物警報距離(領域)Bに対応する障害物と走行機体2の間隔に応じた複数段のうち何れかの短い周期で実行して元に戻る。
【0020】
以上説明したコンバインの後方監視制御によれば、走行機体2の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる警報手段である後進警報用ホーン16を備えたコンバインにおいて、走行機体2の後方に存在する障害物を検出する障害物検出手段である左右一対の超音波センサ14L,14Rと、両超音波センサ14L,14Rにより検出した障害物と走行機体2との距離を演算し、且つ前記後進警報用ホーン16に警報出力信号を出力するマイクロコンピュータを用いて構成される制御装置15とを設けて、前記障害物と走行機体2の距離に応じて後進警報用ホーン16の警報出力周期を変化せしめるように構成したことによって、コンバインのように車高の高い走行機体2を後進させる際、操縦者は、サイドミラー(バックミラー)31L,31R等に頼ることなく、走行機体2の後方に存在する障害物が徐々に接近することを前記後進警報用ホーン16の警報出力周期の変化によって的確に認識することができる。
したがって、圃場の畦際で後進する際や車庫入れのために後進する際のように、走行機体2の後部と、その後方に存在する障害物が衝突する直前の際どいタイミングまで後進操作を行わなければならない場合であっても、操縦者は、この後進操作を安全且つ確実に行なうことができる。尚、警報手段として既設の後進警報用ホーン16を利用することにより特別な警報装置を設けることなく安価に構成できる。
また、操縦者から死角となる走行機体2の後方領域を撮像可能な監視カメラと、この監視カメラで撮像した画像を表示するバックモニタを操縦部に設けた後方監視装置を備えるコンバインのように、操縦者は、走行機体2の後進操作中に前記バックモニタを注視するための視線移動を伴うことなく、聴覚のみで走行機体2の後部に存在する障害物の位置を的確に認識することができるので操縦性がよい。
【0021】
ところで、上述した警報手段である後進警報用ホーン16は、その警報音が比較的甲高いことから圃場の周辺に隣接する住宅の居住者に迷惑を及ぼすことがある。そこで、後進警報用ホーン16の音量を制御装置15を介して適宜切替えることができる図示しない警報出力切替手段を設けることにより、この警報出力切替手段を介して後進警報用ホーン16の音量を適切に調整できるように構成してもよい。その場合は、操縦部13の周辺で聴取可能な警報出力手段である電子ブザー19を併設すると共に、該電子ブザー19の警報出力に連係してコンバインの四隅に備える方向指示器(フラッシャランプ)32L,32R,33L,33Rを点滅させるように構成することが好ましく、この時コンバインの操縦者は、聴覚のみに頼らず障害物と走行機体2との距離(間隔)を表示モニタ22で視認しながら走行機体2の後進操作を的確に行うことができると共に、コンバインの周辺作業者も安全に作業が行える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】コンバインの背面図。
【図4】制御装置のブロック図。
【図5】メータパネルの正面図。
【図6】後方監視制御の制御手順を示すフローチャート。
【図7】障害物と走行機体の距離に基づく警報手段の警報周期を示す模式図。
【符号の説明】
【0023】
2 走行機体
14L 障害物検出手段
14R 障害物検出手段
15 制御装置
16 後進警報用ホーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)の後進操作を操縦者や周辺作業者に知らしめる後進警報用ホーン(16)を備えたコンバインにおいて、走行機体(2)の後方に存在する障害物を検出する障害物検出手段(14L,14R)と、該障害物検出手段(14L,14R)により検出した障害物と走行機体(2)との距離を演算し、且つ前記後進警報用ホーン(16)に警報出力信号を出力する制御装置(15)とを設けて、前記障害物と走行機体(2)の距離に応じて後進警報用ホーン(16)の警報出力周期を変化せしめるように構成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−171911(P2009−171911A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15863(P2008−15863)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】