説明

コンバイン

【課題】前処理部の瞬間的な動力不足を防ぐことにより、エンジンの排気量を小さくしてコストダウンを図ると共に、燃料消費量を抑える。
【解決手段】エンジンEの動力を走行変速装置(走行用無段変速装置11及びミッションケース12)を介して走行部7に伝動する走行動力伝動経路14と、走行動力伝動経路14から取り出した車速連動の動力を前処理部2に伝動する前処理動力伝動経路15とを備えるコンバイン1であって、前処理動力伝動経路15中に、前処理部2の駆動をアシストする電動アシストモータ17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの動力を走行変速装置を介して走行部に伝動する走行動力伝動経路と、走行動力伝動経路から取り出した車速連動の動力を前処理部に伝動する前処理動力伝動経路とを備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、コンバインの前処理部は、車速に連動する速度で駆動される。前処理部を車速に連動する速度で駆動させる伝動方式としては、走行動力伝動経路から取り出した車速連動の動力を前処理部に伝動する方式や、一定回転の動力をHST(静油圧式無段変速装置)で車速連動の動力に変速して前処理部に伝動する方式が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3756120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、いずれの方式でも、瞬間的な動力不足を防ぐために大きな排気量のエンジンを用いているので、製造コストが上昇するだけでなく、燃料消費量が多くなるという問題がある。また、HSTを用いる方式では、走行停止状態で前処理部を駆動させて強制掻込処理(前処理部に残った茎稈を脱穀部まで搬送する処理)を行ったり、倒伏材の刈り取りに際して前処理部の駆動速度(引起し速度)を増速させることが可能であるが、HSTによる動力損失が大きいだけでなく、HSTに加えて油圧回路やギヤケースが必要になるので、製造コストが更に上昇するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、エンジンの動力を走行変速装置を介して走行部に伝動する走行動力伝動経路と、走行動力伝動経路から取り出した車速連動の動力を前処理部に伝動する前処理動力伝動経路とを備えるコンバインであって、前記前処理動力伝動経路中に、前処理部の駆動をアシストする電動アシストモータを設けたことを特徴とする。このようにすると、電動アシストモータの駆動で前処理部の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。
また、前記電動アシストモータ単独で前処理部を駆動可能にしたことを特徴とする。このようにすると、電動アシストモータの回転制御に基づいて、前処理部を任意の回転数で駆動させることができるので、HST、油圧回路、ギヤケースなどを設けなくても、走行停止時に前処理部を駆動させて強制掻込処理を行ったり、倒伏材の刈り取りに際して前処理部の駆動速度を増速させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、茎稈を刈取る前処理部2、刈取茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3、選別済みの穀粒を貯溜する穀粒タンク4、脱穀済みの排稈を処理する後処理部5、オペレータが乗車する操縦部6、クローラ式の走行部7などを備えて構成されている。
【0006】
前処理部2は、未刈茎稈を分草するデバイダ8、分草された茎稈を引き起す引起し装置9、茎稈の株元位置を切断する刈刃(図示せず)、刈取茎稈を脱穀部3に向けて搬送する前処理搬送装置(図示せず)、刈取茎稈の扱深さを調節する扱深さ搬送装置(図示せず)などを備えて構成され、通常の刈取作業時は、車速に連動する速度で駆動される。
【0007】
脱穀部3は、扱室に沿って茎稈を搬送する脱穀フィードチェン10、搬送茎稈から穀粒を脱穀する扱胴3a、脱穀された穀粒を選別する揺動選別体3b、選別風を起風する圧風ファン3c、一番物を回収する一番ラセン3d、二番物を回収する二番ラセン3e、選別室内の藁屑などを機外に排出する排塵ファン3f、脱穀済みの排藁を後処理部5に向けて搬送する排藁搬送装置3gなどを備えて構成され、車速に拘わらず一定の速度で駆動される。ただし、本実施形態では、後述するように脱穀フィードチェン10の動力伝動経路を分離構成し、脱穀フィードチェン10も車速に連動する速度で駆動させることにより、前処理部2から脱穀フィードチェン10への茎稈の受け渡しがスムーズに行われるようになっている。
【0008】
操縦部6の下方には、前処理部2、脱穀部3、走行部7、脱穀フィードチェン10などに動力を供給するエンジンEが搭載されている。図3に示すように、本実施形態のコンバイン1には、エンジンEの動力を脱穀クラッチ(ベルトテンションクラッチ)3hを介して脱穀部3に伝動する脱穀動力伝動経路13と、エンジンEの動力を走行用無段変速装置(HST)11及びミッションケース12を介して走行部7に伝動する走行動力伝動経路14と、走行動力伝動経路14から取り出した車速連動の動力を前処理部2に伝動する前処理動力伝動経路15と、前処理動力伝動経路15から取り出した車速連動の動力を脱穀フィードチェン10に伝動するフィードチェン動力伝動経路16とを備えている。
【0009】
前処理動力伝動経路15には、前処理部2の駆動をアシストする電動アシストモータ17を設けられている。本実施形態の電動アシストモータ17は、フィードチェン動力伝動経路16の伝動上流側に設けられているので、脱穀フィードチェン10の駆動もアシストすることができ、また、非駆動状態であっても、エンジン動力で強制的に回転されることにより、いわゆる回生作用で発電し、発電機としても機能するようになっている。
【0010】
また、前処理動力伝動経路15における電動アシストモータ17の伝動上流側には、第一クラッチ(ベルトテンションクラッチ)18が設けられ、前処理動力伝動経路15における電動アシストモータ17の伝動下流側には、第二クラッチ(ベルトテンションクラッチ)19が設けられ、さらに、フィードチェン動力伝動経路16には、第三クラッチ(ベルトテンションクラッチ)20が設けられている。そして、これらのクラッチ18〜20のON/OFF(入り/切り)パターンに応じて、電動アシストモータ17の動作状態が、充電モードと、アシストモードと、モータ単独モードとに切り換えられるようになっている。
【0011】
図4に示すように、充電モードは、第一クラッチ18をON、第二クラッチ19及び第三クラッチ20をOFFとすることにより現出される。このモードでは、非駆動状態の電動アシストモータ17を強制的に回転させることにより、電動アシストモータ17に積極的に発電させる。そして、電動アシストモータ17が発電した電気は、コントローラ21を介してバッテリ22に蓄電される。
【0012】
アシストモードには、前処理部2を停止させ、脱穀部3のみを駆動させる状態(以下、脱穀運転状態という。)で実行される脱穀運転アシストモードと、前処理部2及び脱穀部3を駆動させる状態(以下、前処理運転状態という。)で実行される前処理運転アシストモードとが含まれている。
【0013】
脱穀運転アシストモードは、第一クラッチ18及び第三クラッチ20をONとし、第二クラッチ19をOFFとすることにより現出される。そして、このモードでは、電動アシストモータ17により脱穀フィードチェン10の駆動をアシストすることができる。例えば、脱穀フィードチェン10やフィードチェン動力伝動経路16に回転センサやトルクセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて脱穀フィードチェン10が過負荷状態であると判断したとき、電動アシストモータ17を駆動して脱穀フィードチェン10の駆動をアシストする。このようにすると、電動アシストモータ17の駆動で脱穀フィードチェン10の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。また、脱穀運転アシストモードでも、電動アシストモータ17を駆動させない非アシスト状態では、電動アシストモータ17が回生作用に基づいて発電するので、バッテリ22を充電することができる。尚、このモードでは、エンジンEの回転を回転センサS1で検出し、該検出回転に基づく過負荷判断で電動アシストモータ17を駆動させるようにしてもよい。
【0014】
前処理運転アシストモードは、第一クラッチ18、第二クラッチ19及び第三クラッチ20をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、電動アシストモータ17により前処理部2及び脱穀フィードチェン10の駆動をアシストすることができる。例えば、前処理部2や脱穀フィードチェン10に回転センサやトルクセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて前処理部2や脱穀フィードチェン10が過負荷状態であると判断したとき、電動アシストモータ17を駆動して前処理部2や脱穀フィードチェン10の駆動をアシストする。このようにすると、電動アシストモータ17の駆動で前処理部2や脱穀フィードチェン10の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。また、前処理運転アシストモードでも、電動アシストモータ17を駆動させない非アシスト状態では、電動アシストモータ17が回生作用に基づいて発電するので、バッテリ22を充電することができる。尚、このモードでは、エンジンEの回転を検出し、該検出回転に基づく過負荷判断で電動アシストモータ17を駆動させるようにしてもよい。
【0015】
モータ単独モードには、脱穀運転状態で実行される脱穀運転モータ単独モードと、前処理運転状態で実行される前処理運転モータ単独モードとが含まれている。脱穀運転モータ単独モードは、第一クラッチ18及び第二クラッチ19をOFFとし、第三クラッチ20をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、電動アシストモータ17が単独で脱穀フィードチェン10を駆動させることができるので、コントローラ21による電動アシストモータ17の回転制御に基づいて、脱穀フィードチェン10を任意の回転数で駆動させることが可能になる。
【0016】
前処理運転モータ単独モードは、第一クラッチ18をOFFとし、第二クラッチ19及び第三クラッチ20をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、電動アシストモータ17が単独で前処理部2及び脱穀フィードチェン10を駆動させることができるので、コントローラ21による電動アシストモータ17の回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を任意の回転数で駆動させることが可能になる。例えば、図5に示すように、主変速レバー23に設けられる強制掻込スイッチ(モーメンタリスイッチ)24の操作に基づいて実行される強制掻込モードでは、電動アシストモータ17の回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を一定速度で駆動させることができ、また、主変速レバー23に設けられる倒伏スイッチ(オルタネイトスイッチ)25の操作に基づいて実行される倒伏モードでは、電動アシストモータ17の回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を通常時(通常モード)よりも増速された車速連動速度で駆動させることができる。尚、倒伏モードにおける電動アシストモータ17の回転数は、走行動力伝動経路14に設けられる回転センサS2の検出回転に基づいて算出することができる。
【0017】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、エンジンEの動力を走行変速装置(走行用無段変速装置11及びミッションケース12)を介して走行部7に伝動する走行動力伝動経路14と、走行動力伝動経路14から取り出した車速連動の動力を前処理部2に伝動する前処理動力伝動経路15とを備えるコンバイン1であって、前処理動力伝動経路15中に、前処理部2の駆動をアシストする電動アシストモータ17を設けたので、電動アシストモータ17の駆動で前処理部2の瞬間的な動力不足を防ぐことができる。これにより、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。
【0018】
また、電動アシストモータ17単独で前処理部2を駆動可能にしたので、電動アシストモータ17の回転制御に基づいて、前処理部2を任意の回転数で駆動させることができる。これにより、HST、油圧回路、ギヤケースなどを設けなくても、走行停止時に前処理部2を駆動させて強制掻込処理を行ったり、倒伏材の刈り取りに際して前処理部2の駆動速度を増速させることが可能になる。
【0019】
次に、本発明の第二実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通する部分は、第一実施形態と同じ符号を付けることにより、第一実施形態の説明を援用する。
【0020】
図6に示すように、第二実施形態は、2つの電動アシストモータ17A、17Bを備え、前処理部2と脱穀フィードチェン10の駆動をそれぞれ別々の電動アシストモータ17A、17Bでアシストする点が第一実施形態と相違している。このようにすると、状況に応じて前処理部2の駆動のみをアシスト(又は変速)したり、脱穀フィードチェン10の駆動のみをアシスト(又は変速)したりすることが可能になる。
【0021】
具体的に説明すると、第二実施形態のものは、前処理動力伝動経路15に設けられる第一電動アシストモータ17Aと、フィードチェン動力伝動経路16に設けられる第二電動アシストモータ17Bと、前処理動力伝動経路15における電動アシストモータ17Aの伝動上流側に設けられる第一クラッチ(ベルトテンションクラッチ)26と、フィードチェン動力伝動経路16における第二電動アシストモータ17Bの伝動上流側に設けられる第二クラッチ(ベルトテンションクラッチ)27とを備えている。そして、これらのクラッチ26、27のON/OFF(入り/切り)パターンに応じて、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの動作状態が、アシスト充電モードと、モータ単独モードとに切り換えられるようになっている。
【0022】
図7に示すように、アシスト充電モードには、脱穀運転状態で実行される脱穀運転アシスト充電モードと、前処理運転状態で実行される前処理運転アシスト充電モードとが含まれている。
【0023】
脱穀運転アシスト充電モードは、第一クラッチ26をOFFとし、第二クラッチ27をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、第二電動アシストモータ17Bにより脱穀フィードチェン10の駆動をアシストすることができる。例えば、脱穀フィードチェン10やフィードチェン動力伝動経路16に回転センサやトルクセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて脱穀フィードチェン10が過負荷状態であると判断したとき、電動アシストモータ17を駆動して脱穀フィードチェン10の駆動をアシストする。このようにすると、電動アシストモータ17の駆動で脱穀フィードチェン10の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。また、脱穀運転アシスト充電モードでは、第二電動アシストモータ17Bを駆動させない非アシスト状態において、第二電動アシストモータ17Bが回生作用に基づいて発電するので、バッテリ22を充電することができる。尚、このモードでは、エンジンEの回転を検出し、該検出回転に基づく過負荷判断で第二電動アシストモータ17Bを駆動させるようにしてもよい。
【0024】
前処理運転アシスト充電モードは、第一クラッチ26及び第二クラッチ27をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bにより前処理部2及び脱穀フィードチェン10の駆動を個別にアシストすることができる。例えば、前処理部2や脱穀フィードチェン10に回転センサやトルクセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて前処理部2や脱穀フィードチェン10が過負荷状態であると判断したとき、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bを個別又は同時に駆動して前処理部2や脱穀フィードチェン10の駆動をアシストする。このようにすると、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bの駆動で前処理部2や脱穀フィードチェン10の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。また、前処理運転アシストモードでは、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bを駆動させない非アシスト状態では、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bが回生作用に基づいて発電するので、バッテリ22を充電することができる。尚、このモードでは、エンジンEの回転を検出し、該検出回転に基づく過負荷判断で第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bを駆動させるようにしてもよい。
【0025】
モータ単独モードには、脱穀運転状態で実行される脱穀運転モータ単独モードと、前処理運転状態で実行される前処理運転モータ単独モードとが含まれている。いずれのモータ単独モードも、第一クラッチ26及び第二クラッチ27をOFFとすることにより現出される。そして、脱穀運転モータ単独モードでは、第二電動アシストモータ17Bが単独で脱穀フィードチェン10を駆動させることができるので、コントローラ21による第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、脱穀フィードチェン10を任意の回転数で駆動させることが可能になる。
【0026】
一方、前処理運転モータ単独モードでは、コントローラ21による第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を任意の回転数で駆動させることが可能になる。例えば、図5に示すように、主変速レバー23に設けられる強制掻込スイッチ(モーメンタリスイッチ)24の操作に基づいて実行される強制掻込モードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を一定速度で駆動させることができ、また、主変速レバー23に設けられる倒伏スイッチ(オルタネイトスイッチ)25の操作に基づいて実行される倒伏モードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を通常時(通常モード)よりも増速された車速連動速度で駆動させることができる。
【0027】
次に、本発明の第三実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。ただし、前記実施形態と共通する部分は、前記実施形態と同じ符号を付けることにより、前記実施形態の説明を援用する。
【0028】
図8に示すように、第三実施形態は、第二実施形態と同様に、2つの電動アシストモータ17A、17Bを備え、前処理部2と脱穀フィードチェン10の駆動をそれぞれ別々の電動アシストモータ17A、17Bでアシストするが、前処理動力伝動経路15における電動アシストモータ17Aの伝動下流側に設けられる第三クラッチ(ベルトテンションクラッチ)28と、フィードチェン動力伝動経路16における第二電動アシストモータ17Bの伝動下流側に設けられる第四クラッチ(ベルトテンションクラッチ)29とが追加されている点が第二実施形態と相違している。このようにすると、第二実施形態と同様に、状況に応じて前処理部2の駆動のみをアシスト(又は変速)したり、脱穀フィードチェン10の駆動のみをアシスト(又は変速)したりすることが可能になるだけでなく、アシストモードを兼ねない専用の充電モードを設定することができる。また、脱穀運転アシストモードでは、二つの電動アシストモータ17A、17Bで脱穀フィードチェン10の駆動を強力にアシストすることも可能になる。
【0029】
具体的に説明すると、第三実施形態のものは、4つのクラッチ26〜29のON/OFF(入り/切り)パターンに応じて、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの動作状態が、充電モードと、アシストモードと、モータ単独モードとに切り換えられるようになっている。
【0030】
図9に示すように、充電モードには、強充電モードと、弱充電モードとが含まれている。強充電モードは、第一クラッチ26及び第二クラッチ27をONとし、第三クラッチ28及び第四クラッチ29をOFFとすることにより現出される。このモードでは、非駆動状態の第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bを強制的に回転させることにより、二つの電動アシストモータ17A、17Bに積極的に発電させる。そして、二つの電動アシストモータ17A、17Bが発電した電気は、コントローラ21を介してバッテリ22に蓄電される。
【0031】
弱充電モードは、第一クラッチ26をONとし、第二クラッチ27、第三クラッチ28及び第四クラッチ29をOFFとするか、或いは、第二クラッチ27をONとし、第一クラッチ26、第三クラッチ28及び第四クラッチ29をOFFとすることにより現出される。このモードでは、非駆動状態の第一電動アシストモータ17A又は第二電動アシストモータ17Bを強制的に回転させることにより、何れか一方の電動アシストモータ17A、17Bに発電させる。そして、何れか一方の電動アシストモータ17A、17Bが発電した電気は、コントローラ21を介してバッテリ22に蓄電される。
【0032】
アシストモードには、脱穀運転状態で実行される脱穀運転アシストモードと、前処理運転状態で実行される前処理運転アシストモードとが含まれており、さらに、脱穀運転アシストモードには、アシストの強弱の違い基づき、脱穀運転アシスト弱モードと、脱穀運転アシスト強モードとが含まれている。
【0033】
脱穀運転アシスト弱モードは、第一クラッチ26及び第三クラッチ28をOFFとし、第二クラッチ27及び第四クラッチ29をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、第二電動アシストモータ17Bにより脱穀フィードチェン10の駆動をアシストすることができる。例えば、脱穀フィードチェン10やフィードチェン動力伝動経路16に回転センサやトルクセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて脱穀フィードチェン10が過負荷状態であると判断したとき、電動アシストモータ17を駆動して脱穀フィードチェン10の駆動をアシストする。このようにすると、電動アシストモータ17の駆動で脱穀フィードチェン10の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。また、脱穀運転アシスト弱モードでは、第二電動アシストモータ17Bを駆動させない非アシスト状態において、第二電動アシストモータ17Bが回生作用に基づいて発電するので、バッテリ22を充電することができる。尚、このモードでは、エンジンEの回転を検出し、該検出回転に基づく過負荷判断で第二電動アシストモータ17Bを駆動させるようにしてもよい。
【0034】
脱穀運転アシスト強モードは、第三クラッチ28をOFFとし、第一クラッチ26、第二クラッチ27及び第四クラッチ29をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bにより脱穀フィードチェン10の駆動をアシストすることができる。
【0035】
前処理運転アシストモードは、第一クラッチ26、第二クラッチ27、第三クラッチ28及び第四クラッチ29をONとすることにより現出される。そして、このモードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bにより前処理部2及び脱穀フィードチェン10の駆動を個別にアシストすることができる。例えば、前処理部2や脱穀フィードチェン10に回転センサやトルクセンサを設け、当該センサの検出値に基づいて前処理部2や脱穀フィードチェン10が過負荷状態であると判断したとき、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bを個別又は同時に駆動して前処理部2や脱穀フィードチェン10の駆動をアシストする。このようにすると、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bの駆動で前処理部2や脱穀フィードチェン10の瞬間的な動力不足を防ぐことができるので、エンジンEの排気量を小さくしてコストダウンが図れるだけでなく、燃料消費量も抑えることができる。また、前処理運転アシストモードでは、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bを駆動させない非アシスト状態において、第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bが回生作用に基づいて発電するので、バッテリ22を充電することができる。尚、このモードでは、エンジンEの回転を検出し、該検出回転に基づく過負荷判断で第一電動アシストモータ17Aや第二電動アシストモータ17Bを駆動させるようにしてもよい。
【0036】
モータ単独モードには、脱穀運転状態で実行される脱穀運転モータ単独モードと、前処理運転状態で実行される前処理運転モータ単独モードとが含まれている。脱穀運転モータ単独モードは、第一クラッチ26及び第二クラッチ27をOFFとし、第三クラッチ28及び第四クラッチ29をONとするか、或いは、第二クラッチ27及び第三クラッチ28をOFFとし、第一クラッチ26及び第四クラッチ29をONとすることにより現出される。そして、脱穀運転モータ単独モードでは、第二電動アシストモータ17Bが単独で脱穀フィードチェン10を駆動させることができるので、コントローラ21による第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、脱穀フィードチェン10を任意の回転数で駆動させることが可能になる。
【0037】
一方、前処理運転モータ単独モードは、第一クラッチ26及び第二クラッチ27をOFFとし、第三クラッチ28及び第四クラッチ29をONとすることにより現出される。そして、前処理運転モータ単独モードでは、コントローラ21による第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を任意の回転数で駆動させることが可能になる。例えば、図5に示すように、主変速レバー23に設けられる強制掻込スイッチ(モーメンタリスイッチ)24の操作に基づいて実行される強制掻込モードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を一定速度で駆動させることができ、また、主変速レバー23に設けられる倒伏スイッチ(オルタネイトスイッチ)25の操作に基づいて実行される倒伏モードでは、第一電動アシストモータ17A及び第二電動アシストモータ17Bの回転制御に基づいて、前処理部2及び脱穀フィードチェン10を通常時(通常モード)よりも増速された車速連動速度で駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの伝動構成を示す伝動回路図である。
【図4】電動アシストモータの各種モードを示す説明図である。
【図5】(A)及び(B)は主変速レバーの正面図及び側面図、(C)は前処理回転数と走行速度の関係を示すグラフである。
【図6】第二実施形態に係るコンバインの伝動構成を示す伝動回路図である。
【図7】第二実施形態に係る電動アシストモータの各種モードを示す説明図である。
【図8】第三実施形態に係るコンバインの伝動構成を示す伝動回路図である。
【図9】第三実施形態に係る電動アシストモータの各種モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀部
7 走行部
10 脱穀フィードチェン
11 走行用無段変速装置
12 ミッションケース
13 脱穀動力伝動経路
14 走行動力伝動経路
15 前処理動力伝動経路
16 フィードチェン動力伝動経路
17 電動アシストモータ
18 第一クラッチ
19 第二クラッチ
20 第三クラッチ
21 コントローラ
22 バッテリ
26 第一クラッチ
27 第二クラッチ
28 第三クラッチ
29 第四クラッチ
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力を走行変速装置を介して走行部に伝動する走行動力伝動経路と、走行動力伝動経路から取り出した車速連動の動力を前処理部に伝動する前処理動力伝動経路とを備えるコンバインであって、
前記前処理動力伝動経路中に、前処理部の駆動をアシストする電動アシストモータを設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記電動アシストモータ単独で前処理部を駆動可能にしたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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