説明

コンバイン

【課題】揺動選別負荷の増大。
【解決手段】走行装置2の前方に刈取装置5を設け、前記走行装置2の上方に脱穀装置4を設け、前記脱穀装置4は、上部に扱胴10を軸装した脱穀室11の扱網15の下方に、往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21および該揺動選別装置21に送風する唐箕16を夫々設け、前記揺動選別棚20の始端部は前記脱穀装置4の前板40との間に所定の間隔を置いて設け、前記揺動選別棚20の始端部と脱穀装置4の前板40との間に落下口41を常時開口させ、該落下口41の下方に、前記揺動選別棚20の下方に設けた一番コンベア26に穀粒を誘導する誘導板42を設けたことを特徴とするコンバイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行装置の前方に刈取装置を設け、走行装置の上方に脱穀装置を設け、脱穀装置は、上部に扱胴を軸装した脱穀室の扱網の下方に、前後往復揺動する揺動選別棚により構成した揺動選別装置および該揺動選別棚に送風する唐箕を夫々設け、前記揺動選別棚に設けたシーブ全体により落下口を開閉自在に構成し、シーブにより落下口を閉じると揺動選別棚により揺動選別し、シーブにより落下口を開けると、選別網へ案内するようにした構成は、公知である(特許文献1)
【特許文献1】特開2008−86251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、単に、揺動選別棚上の被選別物の量の多少によりシーブで落下口を開閉させているため、被選別物の量が少ないときは、扱網から落下する全ての被処理物が揺動選別棚20により揺動選別され、一番コンベアに回収される穀粒に揺動選別棚から落下する藁屑等の夾雑物が混入するという課題がある。
また、被処理物の量を検知する検知手段とシーブとを電気的に接続しなければならず、構造が複雑であり、高価になるという課題がある。
本願は、脱穀室の始端部で脱穀される被処理物中の殆どが穀粒であることに着目し、夾雑物が混入を抑制しつつ、揺動選別装置の負荷を軽減し、詰まり発生を防止するように工夫したものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、走行装置2の前方に刈取装置5を設け、前記走行装置2の上方に脱穀装置4を設け、前記脱穀装置4は、上部に扱胴10を軸装した脱穀室11の扱網15の下方に、往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21および該揺動選別装置21に送風する唐箕16を夫々設け、前記揺動選別棚20の始端部は前記脱穀装置4の前板40との間に所定の間隔を置いて設け、前記揺動選別棚20の始端部と脱穀装置4の前板40との間に落下口41を常時開口させ、該落下口41の下方に、前記揺動選別棚20の下方に設けた一番コンベア26に穀粒を誘導する誘導板42を設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、脱穀装置4に供給された穀稈は、穂先部分が回転する扱胴10により脱穀され、穀稈から穀粒が分離され、揺動選別装置21の揺動選別棚20の上方の扱網15から漏下した漏下物は、揺動選別棚20上に落下し、唐箕16からの選別風と揺動選別棚20の往復揺動により選別される。
扱網15から漏下する被処理物のうち、揺動選別棚20の始端部より前側の扱網15より漏下する漏下物は落下口41に落下し、誘導板42により一番コンベア26の上方まで誘導され、誘導板42の終端から一番コンベア26に漏下する。
本発明は、前記誘導板42の終端から落下する被処理物に、前記唐箕16からの送風が当たるように、前記誘導板42の終端を配置したことを特徴とするコンバインとしたものであり、揺動選別棚20の始端部より前側の扱網15より漏下した被処理物は、落下口41から誘導板42により一番コンベア26の上方まで誘導され、誘導板42の終端から一番コンベア26に落下するとき、唐箕16の送風による風選別を受け、穀粒は一番コンベア26に回収され、塵埃等の夾雑物は選別風により後方に吹飛ばされる。
本発明は、前記誘導板42の終端から後方に突出するように網体46を設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、揺動選別棚20の始端部より前側の扱網15から漏下して誘導板42の終端まで誘導された被処理物は、誘導板42の終端の後方に突出する網体46上で唐箕16の送風を受け、穀粒は一番コンベア26に回収され、塵埃等の夾雑物は選別風により後方に吹飛ばされる。
本発明は、前記扱網15を、落下口41の上方部分の前側扱網15Aと、揺動選別棚20の上方部分の後側扱網15Bから構成し、該前側扱網15Aの目合を、後側扱網15Bの目合よりも小さく形成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、落下口41に落下する被処理物は、目合の小さい揺動選別棚20の始端部より前側上方の前側扱網15Aより漏下するので、藁屑は目合の小さい前側扱網15Aを通過できずに漏下しないから、主として穀粒が目合の小さい前側扱網15Aより漏下する。
本発明は、前記誘導板42は、前板40側を高く、一番コンベア26側が低くなるように傾斜させて形成し、該誘導板42の上面にはガイド板45を設け、ガイド板45は、その始端部を終端部より平面視前記脱穀室11の側部に設けた扱胴10の軸心方向と略平行に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置12から離れるように斜めに設けたことを特徴とするコンバインとしたものであり、落下口41より落下した被処理物は、誘導板42の上面のガイド板45により分散されて一番コンベア26に誘導され、誘導板42の終端から一番コンベア26に落下するとき、唐箕16の送風による風選別を受け、穀粒は一番コンベア26に回収され、塵埃等の夾雑物は選別風により後方に吹飛ばされる。
本発明は、前記揺動選別棚20の下方に設けた二番コンベア27により回収された二番物を処理する二番処理装置32を、該二番処理装置32の二番処理胴34が前記扱胴10と軸心が並行となるように、前記揺動選別棚20の上方に設け、前記二番処理胴34の始端部は前記揺動選別棚20の始端部より後方に位置させたことを特徴とするコンバインとしたものであり、揺動選別棚20から漏下した被処理物の内一番コンベア26に回収されずに二番コンベア27に回収された二番物は二番処理装置32により処理され、二番処理装置32の被処理物は揺動選別棚20の始端側に戻されて、再処理される。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、脱穀室11の始端部側の扱網15から漏下した被処理物は、揺動選別棚20から漏下する夾雑物と混合せずに、一番コンベア26に回収されるので、夾雑物の混入を減少させ、しかも、揺動選別装置21の負荷を軽減させ、詰まり発生を防止できる。
請求項2の発明では、脱穀室11の始端部側の扱網15から漏下した被処理物を、揺動選別棚20から漏下する夾雑物と混合させず、唐箕16の送風による風選別されるので、夾雑物の混入を一層減少させることができる。
請求項3の発明では、脱穀室11の始端部側の扱網15から漏下した被処理物を、誘導板42の終端の網体46上で唐箕16の送風により風選するので、風選が良好にでき、夾雑物の混入を一層減少させることができる。
請求項4の発明では、脱穀室11の始端部側の目合の小さい前側扱網15Aにより藁屑の漏下を防止でき、一番コンベア26に回収され穀粒への夾雑物の混入を減少させることができる。
請求項5の発明では、誘導板42の上面のガイド板45により被処理物を分散させるので、唐箕16の送風による風選を良好にでき、一番コンベア26に回収され穀粒への夾雑物の混入を減少させることができる。
請求項6の発明では、二番処理胴34の前端は揺動選別棚20の前端より後方に位置するように配置しているので、二番処理装置32は二番被処理物を揺動選別棚20の上面に確実に落下させ、落下口41に二番被処理物が落下するのを防止して、揺動再選別前の二番被処理物の穀粒への混入を防止でき、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の一実施例をコンバインの例にて図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は左右一対のクローラ3により走行する走行装置、4は機体フレーム1の上方に設けた脱穀装置、5は脱穀装置4の前側に設けた刈取装置、6は脱穀装置4の側部に設けたグレンタンク、7はグレンタンク6の前方に設けた操縦部である。
前記脱穀装置4は、上部に扱胴10を略水平に軸装した脱穀室11を設ける。脱穀室11の側部には穀稈供給搬送装置12を設ける(図1)。
脱穀室11は、扱胴10の主として下方側は扱網15により包囲し(図2)、扱網15の下方には唐箕16の唐箕ケーシング17を設ける。前記脱穀室11の下方には前記唐箕16の送風により穀粒と異物とを風選し得る風選室18を形成し、風選室18内には唐箕16の送風方向(前後方向)に往復揺動する揺動選別棚20により構成した揺動選別装置21を設ける。
【0007】
揺動選別装置21の構成は任意であり、その一例を示すと、揺動選別棚20の始端部(前端部)に前側シーブ23を設ける。前側シーブ23は、扱網15より漏下した穀粒と異物とを選別するものであり、所定間隔をおいて揺動方向に複数並設する。前側シーブ23は、薄い平板形状に形成し、移送方向の下手側(後側)が高くなるように傾斜させて設ける。
前側シーブ23の下方から移送方向の下手側(後側)の揺動選別棚20には後側シーブ24を複数並設する。後側シーブ24は任意の構成により前記揺動選別棚20に傾斜角度調節自在に取付ける。後側シーブ24の下手側にはストローラック25を設ける。
揺動選別棚20の下方所定位置には一番コンベア26を設け、一番コンベア26の後側には二番コンベア27を設ける。
【0008】
前記脱穀室11の後方の一側(右側)の側部には排塵処理装置30を設ける。排塵処理装置30は、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31を軸装して構成する。排塵処理装置30の前側には、二番コンベア27により回収された二番物を処理する二番処理装置32を設ける。二番処理装置32の二番処理胴34の始端部側上方には二番還元装置33の先端を開口させ、二番還元装置33の基部は二番コンベア27の終端に接続している。二番処理胴34は、排塵処理胴31と同心状に配置する。
なお、図示は省略するが、排塵処理装置30の排塵処理胴31と二番処理装置32の二番処理胴34の外周は、網あるいは板により包囲する。
前記排塵処理装置30の反対側の側部には吸引排塵ファン35を設ける。36は吸引排塵ファン35のケーシング、37はケーシング36の排風口である。
【0009】
しかして、前記揺動選別棚20の始端部は脱穀装置4の前板40との間に所定の間隔を置いて設け、揺動選別棚20の始端部と脱穀装置4の前板40との間に落下口41を開口させる。落下口41の下方には誘導板42を設け、誘導板42は唐箕ケーシング17の上方から一番コンベア26の上方に臨む位置まで延長させて構成する。
脱穀室11の始端部下方には、唐箕16の送風による風選を受けるが、揺動選別棚20の揺動を受けずに落下口41から一番コンベア26に至る流下通路(非揺動選別路)Fを形成する(図3)。
また、落下口41より後方の脱穀室11の下方には、揺動選別棚20が位置して揺動選別棚20の揺動と唐箕16の送風を受けて選別されて揺動選別棚20から一番コンベア26に至る揺動選別路Gを形成する(図3)。
【0010】
脱穀室11の始端部で脱穀された被処理物の殆どが穀粒であり、僅かに混入する塵埃等は細かいため、落下口41から流下通路Fを通って一番コンベア26に入る際の唐箕16の送風によって充分に選別されて一番コンベア26に入るので、混入する夾雑物は少なく、効率よく夾雑物の混入を抑制する。
即ち、従来では、揺動選別棚20の始端部に漏下する穀粒は、揺動選別棚20に落ちる大量の藁屑等の夾雑物と混合し、この夾雑物から揺動選別するので、夾雑物からの穀粒の選別効率が低くなるが、本願では、混入する夾雑物は少なく、効率よく夾雑物の混入を抑制する。
また、扱網15から漏下する被処理物のうち、扱網15の始端部から漏下する被処理物は落下口41から誘導板42(流下通路F)を通って一番コンベア26に入るので、揺動選別棚20上に漏下する被処理物の量を減少させ、揺動選別装置21の負荷を軽減させる。
【0011】
そのため、揺動選別棚20の全長を短くし、揺動選別棚20の軽量化を図れ、揺動選別棚20を揺動させる駆動力を小さくでき、その結果、機体の振動を抑制できる。
前記誘導板42は、前板40側を高く、一番コンベア26側が低くなるように傾斜させて形成する。誘導板42の上面にはガイド板45を設ける。ガイド板45は側面視略同一高さの板状に形成し、平面視において、ガイド板45の始端部を二番処理装置32側に、ガイド板45の終端部を穀稈供給搬送装置12側に位置するように傾斜させ、誘導板42上の被処理物が均等に流下するように構成する。
そのため、誘導板42の終端で落下する際に唐箕16の選別風による風選を良好にする。
【0012】
前記誘導板42の終端には、後方に突出するように網体46を設ける。網体46は、誘導板42上を流下する流下物に、唐箕16の選別風の風当たりを良くして風選を良好にする。
また、扱網15は、落下口41の上方部分の前側扱網15Aの目合を揺動選別棚20の上方部分の後側扱網15Bの目合より小さく形成して構成する。
そのため、一層、落下口41に漏下する漏下物から穀粒以外の異物を除去でき、穀粒の回収精度を向上させられる。
前記二番処理装置32の二番処理胴34は、後方から前方に二番物を移送しながら処理を行い、揺動選別棚20の始端部上方に被処理物を落下させる。
そのため、二番処理胴34の前端は揺動選別棚20の前端より後方に位置するように配置する(図2)。
【0013】
したがって、二番処理装置32は、二番物を揺動選別棚20の上面に確実に落下させ、落下口41に二番処理物が落下するのを防止して、穀粒への二番処理物の混入を防止して、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させている。
しかして、図7の揺動選別棚20の始端部には上方に起立する返し板50を設ける。返し板50は上部が後方に位置するように傾斜させて設け、揺動選別棚20上の被処理物が、揺動選別棚20の揺動の反動で前方に移動して落下口41へ落下するのを防止する。
そのため、落下口41に揺動選別棚20上の被処理物が落下するのを防止して、穀粒への揺動選別棚20上の被処理物の混入を防止して、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させている。
【0014】
しかして、図8,図9の揺動選別棚20の始端部には前方に突き出る櫛状体53を設ける。櫛状体53は棒状の櫛歯(篩線)54を穀粒より大きい間隔の所定間隔をおいて複数左右方向に並設して形成する。
そのため、落下口41に藁屑等が落下するのを防止して、穀粒への異物の混入を防止して、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させている。
また、櫛状体53は、側面視、前側が高くなるように傾斜させ、櫛状体53上に落下した落下物が揺動選別棚20上に移動するように誘導する作用も期待する。
【0015】
しかして、図10は、脱穀装置4の他の実施例を示し、前側シーブ23を任意の構成により前記揺動選別棚20に傾斜角度調節自在に取付ける。扱胴10の下方の前側シーブ23のピッチ(間隔)は、扱胴10より後方の前側シーブ23のピッチ(間隔)よりも狭くなるように構成する。
そのため、前側シーブ23の始端側では、狭いピッチ(間隔)のため、穀粒の漏下を促進して藁屑の落下を抑制でき、前側シーブ23の中間より終端側では、広いピッチ(間隔)のため、藁屑の落下を促進して詰まり発生を防止する。
また、前側シーブ23の終端とストローラック25の間には後側シーブ24を複数並設する。後側シーブ24は、側面視、後側シーブ24の上端が前側シーブ23の上端より低く、後側シーブ24の上端と前側シーブ23の上端との間に段差Sを形成するように構成する。
【0016】
そのため、前側シーブ23上の選別物が後側シーブ24の上面に移送される際に、落下の衝撃を受けて、選別物がばらけ易くなって、穀粒の落下を促進させて、回収効率を向上させられ、穀粒の飛散を抑制する。
したがって、後側シーブ24の上端が前側シーブ23の上端より低くして、選別物が落下するようにすればよいが、実施例では、後側シーブ24の上端を前側シーブ23の略上下中間に位置するように配置して段差Sを形成している。
また、後側シーブ24のピッチは、前側シーブ23の後方部分の広いピッチ(間隔)よりも狭くなるように構成する。
【0017】
前側シーブ23と後側シーブ24との間に段差Sを設け、前側シーブ23の後方部分の広いピッチ(間隔)よりも狭く後側シーブ24のピッチを変えることで、後側シーブ24上の藁屑と穀粒の分離が促進され、穀粒の回収効率が向上し、穀粒の飛散を抑制する。
また、前側シーブ23の後側部分のピッチ(間隔)は、後側シーブ24のピッチより広いので、選別風の抜けが良好となって、前側シーブ23から後側シーブ24への移行の際の藁屑と穀粒の分離を良好にする。
また、後側シーブ24の傾斜は、前側シーブ23の傾斜より起立させて構成する。
そのため、後側シーブ24のピッチが、前側シーブ23の後側部分のピッチ(間隔)よりも狭く構成しているが、後側シーブ24の傾斜を前側シーブ23の傾斜より起立させて急傾斜にすることで、藁屑からの穀粒の分離を良好にし、穀粒の飛散を抑制する。
【0018】
この場合、後側シーブ24は、揺動選別棚20の下方に設けた一番棚先60の真上に位置するように構成する。
そのため、後側シーブ24上の穀粒と藁屑の分離が促進され、一番棚先60からの穀粒の回収が良好になり、脱穀装置4の排出口61からの穀粒の飛散を抑制できる。
また、後側シーブ24は、揺動選別棚20に設けた選別網62の後端と一番棚先60との間に位置するようにすると、この選別網62の後端と一番棚先60との間の位置から該一番棚先60に沿って吹き上がる選別風によって、更に、後側シーブ24上の穀粒と藁屑の分離が促進され、一番棚先60からの穀粒の回収が良好になり、脱穀装置4の排出口61からの穀粒の飛散を抑制できる。
【0019】
また、後側シーブ24と前側シーブ23との間の段差Sの部分は、揺動選別棚20の前側シーブ23の上方に設けた前側ラック63の下方に位置するように配置する。
そのため、後側シーブ24と前側シーブ23との間の段差Sと併せて、前側ラック63からの被処理物がばらけ易くなって、穀粒と藁屑の分離が促進され、穀粒の回収が良好になり、脱穀装置4の排出口61からの穀粒の飛散を抑制できる。
【0020】
(実施例の作用)
脱穀装置4の供給された穀稈は、穂先部分が回転する扱胴10により脱穀され、穀稈から穀粒が分離され、揺動選別装置21の揺動選別棚20の上方の扱網15から漏下した漏下物は、揺動選別棚20上に漏下し、唐箕16からの選別風と揺動選別棚20の往復揺動により選別される。
揺動選別棚20から落下した穀粒は、一番コンベア26により回収され、一番コンベア26に回収されずに二番コンベア27に回収された二番物は二番処理装置32により処理され、二番処理装置32の被処理物は揺動選別棚20の始端側に戻されて、再処理される。
【0021】
揺動選別棚20から落下しない藁屑は、前側シーブ23と後側シーブ24によりストローラック25まで移送され、吸引排塵ファン35により吸引排除され、吸引排除されない藁屑はストローラック25により排出口40から機外に排出される。
扱網15より漏下せず脱穀室11内に残った被処理物の一部は排塵処理装置30に入り、回転する排塵処理胴31により処理される。
しかして、前記揺動選別棚20の始端部は脱穀装置4の前板40との間に所定の間隔を置いて設け、揺動選別棚20の始端部と脱穀装置4の前板40との間に落下口41を開口させているから、扱網15よりから漏下する被処理物のうち、揺動選別棚20の始端部より前側の扱網15より漏下する漏下物は、落下口41に落下する。
【0022】
落下口41の下方には後側を低く傾斜させた誘導板42を設け、誘導板42は唐箕ケーシング17の上方から一番コンベア26の上方に臨む位置まで延長させて構成しているから、揺動選別棚20より前側の扱網15より漏下した被処理物は、落下口41から誘導板42上に落下し、誘導板42により一番コンベア26の上方まで誘導され、誘導板42の終端から一番コンベア26に落下するとき、唐箕16の送風による風選別を受け、穀粒は一番コンベア26に回収され、塵埃等の夾雑物は選別風により後方に吹飛ばされる。
【0023】
落下口41から誘導板42上を誘導される扱網15からの被処理物の殆どは、脱穀室11の始端部で脱穀された穀粒と塵埃であり、唐箕16の送風による風選で充分に選別され、揺動選別棚20から落下する藁屑等の夾雑物と混合しないので、揺動選別棚20の負荷を軽減しつつ、夾雑物の混入の少ない穀粒を一番コンベア26に回収できる。
【0024】
即ち、揺動選別棚20の始端部は脱穀装置4の前板40との間に所定の間隔を置いて設けているので、扱網15の下方には、落下口41と揺動選別棚20とが存在し、落下口41の下方には誘導板42を設けて、揺動選別棚20の揺動を受けずに落下口41から一番コンベア26に至る流下通路(非揺動選別路)流下通路Fと、往復揺動と唐箕16の送風による揺動選別装置21(揺動選別路G)とを併存させており、脱穀室11の始端部で脱穀された被処理物は、揺動選別棚20の揺動を受けずに落下口41から一番コンベア26に回収し、あわせて、藁屑の落下が多くなる脱穀室11の中間部より後方では、往復揺動と唐箕16の送風による揺動選別装置21の揺動選別を行うことにより、揺動選別棚20に供給する被処理物の量を減少させ、揺動選別装置21の負荷を軽減させる。
【0025】
それゆえ、夾雑物の混入の少ない穀粒を一番コンベア26に回収し、かつ、揺動選別棚20の全長を短くし、揺動選別棚20の軽量化を図れ、揺動選別棚20を揺動させる駆動力を小さくでき、その結果、機体の振動を抑制できる。
また、特に、バイオマスに使用される穀粒の脱穀選別作業では、充分な選別精度を確保できて、しかも、揺動選別棚20の全長を短くし、揺動選別棚20の軽量化を図って、揺動選別棚20を揺動させる駆動力を小さくして、機体の振動を抑制した脱穀装置4を提供でき、その効果は特に顕著なる。
【0026】
誘導板42は、側面視、前板40側を高く、一番コンベア26側が低くなるように傾斜させて形成し、誘導板42の上面には、平面視において、その始端部が二番処理装置32側に、その終端部が穀稈供給搬送装置12側に位置するように傾斜させたガイド板45を設けているので、落下口41から落下した被処理物は、誘導板42上に均等に散乱しながら流下し、誘導板42の終端で落下する際に唐箕16の選別風による風選を良好にする。
誘導板42の終端には、後方に突出するように網体46を設けると、誘導板42上を流下する被処理物は網体46上を移動するときに唐箕16からの選別風を充分に受け、風選を良好にする。
【0027】
また、扱網15は、落下口41の上方部分の目合を揺動選別棚20の上方部分の目合より小さく形成すると、一層、落下口41に落下する落下物から穀粒以外の異物を除去でき、穀粒の回収精度を向上させられる。
しかして、二番処理装置32の二番処理胴34は、二番処理胴34の後方から前方に二番物を移送しながら処理を行い、揺動選別棚20の始端部上方に被処理物を落下させるが、二番処理胴34の前端は揺動選別棚20の前端より後方に位置するように配置しているので、二番処理装置32は、二番物を揺動選別棚20の上面に確実に落下させ、落下口41に二番被処理物が落下するのを防止して、穀粒への二番被処理物の混入を防止して、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させている。
【0028】
しかして、図7の揺動選別棚20の始端部には上方に起立する返し板50を設けているので、揺動選別棚20上の被処理物が、揺動選別棚20の揺動の反動で前方に移動して落下口41へ落下するのを防止する。
この場合、返し板50は、側面視、その上部が後方に位置するように傾斜させて設けているので、揺動選別棚20上の被処理物が、揺動選別棚20の揺動の反動で前方に移動しても返し板50により揺動選別棚20上に戻されて、落下口41へ落下するのを防止する。
【0029】
しかして、図8の揺動選別棚20の始端部には前方に突き出る櫛状体53を設けているので、落下口41に藁屑等が落下するのを防止して、穀粒への異物の混入を抑制して、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させている。
この場合、櫛状体53は、棒状の櫛歯54を、少なくとも、穀粒より大きい間隔の所定間隔をおいて複数左右方向に並設して形成すると、落下口41に藁屑等が落下するのを防止して、穀粒への異物の混入を防止して、一番コンベア26に回収される穀粒の回収精度を向上させられる。
【0030】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】脱穀装置の側面図。
【図3】同側面図。
【図4】同平面図。
【図5】揺動選別棚を省略した平面図。
【図6】脱穀装置の背面図。
【図7】脱穀装置の他の実施例の側面図。
【図8】脱穀装置の他の実施例の側面図。
【図9】櫛状体の平面図。
【図10】脱穀装置の他の実施例の側面図。
【符号の説明】
【0032】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…クローラ、4…脱穀装置、5…刈取装置、6…グレンタンク、7…操縦部、10…扱胴、11…脱穀室、12…穀稈供給搬送装置、13……排藁搬送装置、15…扱網、16…唐箕、17…唐箕ケーシング、18…風選室、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚部、23…前側シーブ、24…後側シーブ、25…ストローラック、26…一番コンベア、27…二番コンベア、30…排塵処理装置、31…処理胴、32…二番処理装置、33…二番還元装置、35…吸引排塵ファン、36…ケーシング、40…前板、41…落下口、42…誘導板、45…ガイド板、46…網体、50…返し板、53…櫛状体、54…櫛歯、60…一番棚先、62…選別網、63…前側ラック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)の前方に刈取装置(5)を設け、前記走行装置(2)の上方に脱穀装置(4)を設け、前記脱穀装置(4)は、上部に扱胴(10)を軸装した脱穀室(11)の扱網(15)の下方に、往復揺動する揺動選別棚(20)により構成した揺動選別装置(21)および該揺動選別装置(21)に送風する唐箕(16)を夫々設け、前記揺動選別棚(20)の始端部は前記脱穀装置(4)の前板(40)との間に所定の間隔を置いて設け、前記揺動選別棚(20)の始端部と脱穀装置(4)の前板(40)との間に落下口(41)を常時開口させ、該落下口(41)の下方に、前記揺動選別棚(20)の下方に設けた一番コンベア(26)に穀粒を誘導する誘導板(42)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、前記誘導板(42)の終端から落下する被処理物に、前記唐箕(16)からの送風が当たるように、前記誘導板(42)の終端を配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記誘導板(42)の終端から後方に突出するように網体(46)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において、前記扱網(15)を、落下口(41)の上方部分の前側扱網(15A)と、揺動選別棚(20)の上方部分の後側扱網(15B)から構成し、該前側扱網(15A)の目合を、後側扱網(15B)の目合よりも小さく形成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
請求項1または請求項2または請求項3または請求項4において、前記誘導板(42)は、前板(40)側を高く、一番コンベア(26)側が低くなるように傾斜させて形成し、該誘導板(42)の上面にはガイド板(45)を設け、ガイド板(45)は、その始端部を終端部より平面視前記脱穀室(11)の側部に設けた扱胴(10)の軸心方向と略平行に穀稈を供給搬送する穀稈供給搬送装置(12)から離れるように斜めに設けたことを特徴とするコンバイン。

【請求項6】
請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5において、前記揺動選別棚(20)の下方に設けた二番コンベア(27)により回収された二番物を処理する二番処理装置(32)を、該二番処理装置(32)の二番処理胴(34)が前記扱胴(10)と軸心が並行となるように、前記揺動選別棚(20)の上方に設け、前記二番処理胴(34)の始端部は前記揺動選別棚(20)の始端部より後方に位置させたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−124761(P2010−124761A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303275(P2008−303275)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】