説明

コンバイン

【課題】エンジンのメンテナンスの容易化、運転座席の移動構成の簡素化、開放空間の大型化。
【解決手段】下方に走行装置2を備えた機体フレーム1の上方に脱穀装置3を設け、該脱穀装置3の前側に刈取装置4を設け、前記脱穀装置3の横側にグレンタンク5を設け、該グレンタンク5の前側の機体フレーム1上にエンジン11を設け、該エンジン11を覆うエンジンカバーCと一体のキャビン12を設け、該キャビン12はグレンタンク5の前側に位置する閉鎖位置とキャビン12の一部または全部が機体フレーム1の外側方へ移動した開放位置との間にわたりリンク機構15により移動自在に支持したことを特徴とするコンバイン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行装置を有する機体フレームにエンジンを設け、該エンジンの上方に運転部の運転座席を設けたものにおいて、前記運転座席は縦軸の軸周りに外側方に向けて回動自在にした構成は、公知である(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−28941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記公知例は、単に、運転座席は縦軸の軸周りに外側方に向けて回動させる構成のため、縦軸とキャビンの側面との部分は、外側方に向けて回動させても、機体フレーム上に残ってしまいエンジンの周辺の開放できる空間が狭く限られるという課題がある。
本願は、キャビンの移動構成を工夫し、エンジンの周辺を大きく開放するようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明では、下方に走行装置2を備えた機体フレーム1の上方に脱穀装置3を設け、該脱穀装置3の前側に刈取装置4を設け、前記脱穀装置3の横側にグレンタンク5を設け、該グレンタンク5の前側の機体フレーム1上にエンジン11を設け、該エンジン11を覆うエンジンカバーCと一体のキャビン12を設け、該キャビン12はグレンタンク5の前側に位置する閉鎖位置とキャビン12の一部または全部が機体フレーム1の外側方へ移動した開放位置との間にわたりリンク機構15により移動自在に支持したことを特徴とするコンバインとしたものであり、キャビン12はその一部または全部が機体フレーム1の外側方に移動するので、エンジン11の周辺を大きく開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
請求項2記載の発明では、前記リンク機構15を、内側アーム16と外側アーム17により構成し、該内側アーム16および外側アーム17の基部を前記エンジン11よりも後方の機体フレーム1の固定部に内側基部取付軸18と外側基部取付軸19で夫々回動自在に取付け、内側アーム16と外側アーム17の先端部は、キャビン12の運転座席7よりも前側の所定部分に内側先端取付軸21と外側先端取付軸22により夫々回動自在に取付けことを特徴とするコンバインとしたものであり、内側基部取付軸18および外側基部取付軸19と内側先端取付軸21および外側先端取付軸22の四点を回動中心とするリンク機構15によりキャビン12が移動自在に支持されることになり、エンジン11の周辺まで開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
請求項3記載の発明では、前記内側アーム16の内側基部取付軸18を閉鎖位置にあるキャビン12の左端からキャビン12の左右方向の中央部分までの中間位置に配置し、外側アーム17の外側基部取付軸19は閉鎖位置にあるキャビン12の左右方向の中央部分からキャビン12の右端までの中間位置あるいはキャビン12の右端側の位置に配置したことを特徴とするコンバインとしたものであり、内側アーム16の内側基部取付軸18と外側アーム17の外側基部取付軸19との間の間隔があるので、平行リンクを形成するリンク機構15によりキャビン12を移動させる。
請求項4記載の発明では、前記内側先端取付軸21と外側先端取付軸22は、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19の夫々の上方に位置させた機体進行方向と平行な仮想線Lを基準に、キャビン12の外側オープン方向に対して仮想線Lよりも夫々内側に所定の角度後退する後退角θを有するように配置したことを特徴とするコンバインとしたものであり、内側アーム16と外側アーム17は、仮想線Lよりも夫々内側の位置から外側の位置までキャビン12を外側方に移動させる。
請求項5記載の発明では、前記内側アーム16は、内側基部取付軸18に取付けた左右方向の内側横杆部23と前後方向の内側前後杆部24とによりL字形状に形成し、内側横杆部23の長さにより第一後退角θ1を形成し、外側アーム17は、外側基部取付軸19に取付けた前後方向の外側前後杆部25と外側前後杆部25の先端を屈曲させた左右方向の外側横杆部26とにより逆L字形状に形成し、外側横杆部26の長さにより第二後退角θ2を形成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、内側アーム16の内側先端取付軸21および外側アーム17の外側先端取付軸22は内側基部取付軸18および外側基部取付軸19の夫々より内側にある内側先端取付軸21および外側先端取付軸22が内側基部取付軸18および外側基部取付軸19の夫々より外側の位置まで外側方に移動する。
請求項6記載の発明では、前記キャビン12の前後方向の中間位置に左右方向の補強杆35を設け、該補強杆35を前記外側アーム17の外側前後杆部25上に載置し、キャビン12の移動の際に補強杆35が外側アーム17上を摺動するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、キャビン12は、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22と、補強杆35と外側アーム17との当接部分との三点により支持されながら外側方に移動する。
請求項7記載の発明では、前記内側アーム16は、キャビン12の移動の際にエンジン11の上方を移動するように構成したことを特徴とするコンバインとしたものであり、内側アーム16は、エンジン11の上方を外側方に移動する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明では、特許文献1に記載の従来技術に比較して、エンジン11の周辺をより大きく開放できて、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
請求項2の発明では、請求項1の発明の効果に加えて、内側基部取付軸18および外側基部取付軸19と内側先端取付軸21および外側先端取付軸22の四点を回動中心とするので、キャビン12の周辺を大きく開放するように移動させることができ、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
請求項3の発明では、請求項2の発明の効果に加えて、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19の配置をキャビン12の移動量大きくするための合理的な配置することができる。
請求項4の発明では、請求項3の発明の効果に加えて、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22を仮想線Lよりも夫々内側に位置させた分外側に移動させることができ、キャビン12の移動量を大きくすることができる。
請求項5の発明では、請求項4の発明の効果に加えて、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22を仮想線Lよりも夫々の後退角の分外側に移動させることができ、キャビン12の移動量を大きくすることができる。
請求項6の発明では、請求項5の発明の効果に加えて、キャビン12を、内側先端取付軸21および外側先端取付軸22と、補強杆35と外側アーム17との当接部分との三点により支持することができ、キャビン12の支持を安定させることができ、キャビン12の移動を円滑にすることができる。
請求項7の発明では、請求項6の発明の効果に加えて、内側アーム16とエンジン11との干渉が無く、内側アーム16の回動量を大きくでき、キャビン12のオープン量を大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施例を図面により説明すると、1はコンバインの機体フレーム、2は走行装置、3は走行装置2の上方の一側に設けた脱穀装置、4は刈取装置、5は脱穀装置4の側方に設けたグレンタンク、6は操縦部である。
操縦部6には作業者の立つステップ(図示省略)および作業者の着座する運転座席7および運転座席7の前側に設けたスイッチやレバー類を有する操作ボックス8等により構成する。
前記操縦部6は機体フレーム1の上方に設けたエンジン11の一部または全部を包囲するエンジンカバーCと一体の任意形状のキャビン12内に設ける。
即ち、キャビン12はエンジン11の上方に設けられ、エンジンカバーCと一体に構成されるが、本願はこのキャビン12の移動構成に関するものであり、キャビン12とエンジンカバーCとの構成および形状は任意であり、実施例に限定されず、具体的構成の説明は省略する。
【0007】
キャビン12は、グレンタンク5の前側に位置する通常位置と平面視キャビン12の一部または全部が機体フレーム1の側部よりも側方にはみ出た開放位置との間、リンク機構15により移動自在に構成する。
前記リンク機構15の一例を示すと、内側アーム16と外側アーム17の二本のアームにより構成し、内側アーム16および外側アーム17の基部は前記エンジン11よりも後方の機体フレーム1の任意の固定部に内側基部取付軸18と外側基部取付軸19で回動自在に取付ける。
内側アーム16と外側アーム17の先端は、それぞれ運転座席7よりも前方に位置させ、キャビン12の所定部分に内側先端取付軸21と外側先端取付軸22により回動自在に取付ける。
【0008】
そのため、内側基部取付軸18および外側基部取付軸19と内側先端取付軸21および外側先端取付軸22の四点を回動中心とするリンク機構15によりキャビン12が移動するように構成されることになり、エンジン11の後側まで略開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
この場合、内側アーム16の内側基部取付軸18はキャビン12の左端(内側部分)よりキャビン12の左右方向の中央部分までの中間位置に配置し、外側アーム17の外側基部取付軸19はキャビン12の左右方向の中央部分よりキャビン12の右端(外側部分)までの中間位置あるいはキャビン12の右端側に位置するように配置すると、キャビン12の移動範囲を大きくすることができ、好適である。
【0009】
また、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22は、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19の夫々の上方を通過するように描いた機体進行方向と平行な仮想線Lを基準に、仮想線Lよりも夫々内側に位置するように配置する(図3,図4)。
換言すると、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22は、キャビン12の外側オープン方向に対して仮想線Lよりも夫々内側に所定の角度後退させた、後退角θを有するように配置する(図4)。
そのため、内側アーム16と外側アーム17を回動させると、内側アーム16と外側アーム17の先端の内側先端取付軸21と外側先端取付軸22は仮想線Lの内側から仮想線Lの上方を通過して外側方に回動するため、単に、内側アーム16と外側アーム17を並行に設けた場合に比し後退角θの分だけ外側に大きく回動し、エンジン11の周辺空間を大きく開放させられる。
【0010】
したがって、従来の一点中心の回動させた場合に比し、キャビン12の移動軌跡の横スライド量が増え、キャビン12の移動に要する前後のスペースも小さくてすみ、グレンタンク5および刈取部7との干渉小さく、グレンタンク5および刈取部7を移動(オープン)させなくても、キャビン12の移動が可能となる。
それゆえ、作業中のトラブルでも、容易にキャビン12をオープンできる。
オープン時に内側アーム16および外側アーム17で運転座席7およびキャビン12を支持するので、支持強度を確保するのが容易となる。
また、キャビン12は機体フレーム1よりも外側に移動するので、横移動量を大きくできる。そのため、エンジン11の全周の開放空間を広くでき、前方向からのエンジン11のメンテナンス作業が容易になる。
【0011】
内側先端取付軸21と外側先端取付軸22を、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19上の仮想線Lよりも外側オープン方向に対して後退角θを有するように配置する構成は任意であるが、一例を示すと、内側アーム16は、内側基部取付軸18に取付けた左右方向の内側横杆部23と前後方向の内側前後杆部24とにより逆L型形状に形成し、内側横杆部23の長さにより後退角θを形成する。同様に、外側アーム17は、外側基部取付軸19に取付けた前後方向の外側前後杆部25と外側前後杆部25の先端を屈曲させた左右方向の外側横杆部26とにより逆L型形状に形成し、外側横杆部26の長さにより後退角θを形成する。
前記内側アーム16の先端である内側先端取付軸21は運転座席7よりも前方のキャビン12の左端部分に設け、前記外側アーム17の先端である外側先端取付軸22はキャビン12の右端側側面より外側横杆部26の長さ分内側に位置させたキャビン12に設けると、一点中心の回動させる方法よりもキャビン12の横移動量を増加させることができ、エンジン11の周囲の開放空間を広くすることができ、好適である。
【0012】
即ち、リンク機構15は、夫々一部を略直角に屈曲させて形成した内側アーム16と外側アーム17により、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22を、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19上の仮想線Lよりも外側オープン方向に対して後退角θを有して構成する。
しかして、エンジン11側(エンジンフレーム)には、少なくとも、エアクリーナー30とラジエータ31を取付け、エアクリーナー30とラジエータ31をエンジン11側に残してキャビン12のオープン可能に構成する(図2)。
キャビン12の移動作業に際し、エアクリーナー30のホース(図示省略)を外す作業が不要となって、キャビン12のオープン作業を容易にする。また、エアクリーナー30のホースの脱着作業が不要となるため、ホース接続忘れも含めたエアクリーナー30のホースの脱着の作業ミスを未然に防止できる。
また、キャビン12に設けた防塵ネット34(図5)によりエンジン11周辺の空気が清浄であるため、従来キャビン12に電装品収納ボックス32を取り付けることが多いが、この電装品収納ボックス32をエンジン11側(エンジンフレーム等)に取付け、エンジン11側に電装品収納ボックス32を残してキャビン12をオープンするように構成する(図2)。
【0013】
しかして、図6は、ラジエータ31を外側基部取付軸19を回動中心にしてキャビン12と一体状に回動するようにした実施例である。
したがって、キャビン12のオープンに連動してラジエータ31は外側回動して、エンジン11の周囲を開放させられる。
この場合、ラジエータ31は、外側基部取付軸19と略同一軸心で回動するようにすればよく、必ずしも、外側アーム17に取付ける必要はない。例えば、エンジンフレーム(図示省略)に前記外側基部取付軸19と略同一軸心の取付軸33を設け、取付軸33中心にラジエータ31が回動自在になるように取付ける。そして、ラジエータ31と外側アーム17との間に連結部材を設けると、ラジエータ31は連結部材によりキャビン12と連動してオープンし、キャビン12とラジエータ31との連結部材による連結を外すと前記のようにラジエータ31をエンジン11側に残してキャビン12をオープンさせられる。
【0014】
また、キャビン12の前後略中間には左右方向の補強杆35を設け(図2,図6)、補強杆35は前記外側アーム17の外側前後杆部25上に載置し、キャビン12がオープンするとき、補強杆35が外側アーム17上を摺動するように構成する。
そのため、キャビン12は内側先端取付軸21および外側先端取付軸22と、補強杆35と外側アーム17との当接部分との三点により支持され、キャビン12の支持が安定する。
また、リンク機構15の外側アーム17を、キャビン12の移動部材のみならず支持部材として兼用でき、合理的構成となる。
即ち、外側アーム17は、側面視、キャビン12の下部フレーム36と機体フレーム1との間に位置させ、キャビン12を支持する。
【0015】
また、内側アーム16は、側面視エンジン11より上方を移動してキャビン12をオープンさせるように構成する。
内側アーム16の基部を取付ける内側基部取付軸18は、エンジンフレーム40の内側縦杆41に設け、キャビン12をオープンさせるとき、内側アーム16が側面視エンジン11より上方を移動するようにする(図7、図8)。
したがって、内側アーム16とエンジン11との干渉が無く、内側アーム16の回動量を大きくでき、キャビン12のオープン量を大きくできる。
なお、外側基部取付軸19は外側縦杆41Aに設けている。
また、前記外側アーム17はキャビン12の下側を支持し、内側アーム16はエンジン11より上方部分のキャビン12を支持するので、リンク機構15による支持強度を向上させ、特に、キャビン12の横方向の倒れや捻れに対する支持強度を向上させられる。
【0016】
具体的には、内側アーム16の内側前後杆部24は、側面視エアクリーナ30の上方に位置する後部杆36と、エアクリーナ30の前方に位置する中間縦杆37と、エンジン11よりも上方に位置する前部杆38により構成し、エアクリーナ30とエンジン11との干渉が無く、内側アーム16の回動量を大きくでき、キャビン12のオープン量を大きくできる。
42はキャビンフレーム、43はキャビンフレーム42の前後杆であり、前後杆43に内側アーム16の先端を内側先端取付軸21により取付ける。44はキャビンフレーム42の下部枠であり、下部枠44に外側アーム17の先端を外側先端取付軸22により取付ける。
45はエンジンフレーム40の前側縦杆であり、キャビンフレーム42が通常位置に位置するときに、外側アーム17の内側に位置する。
【0017】
しかして、機体フレーム1の所定部分には前記外側基部取付軸19と同一軸心で回動する補助アーム50の基部を回動自在に取付け、補助アーム50の先端はキャビン12に設けた前後方向の案内部材(レール)51に軸52により案内部材51の長さ方向に移動自在に取付ける(図9)。
補助アーム50は、キャビン12のオープンのとき、キャビン12の右端側を支持するので、内側アーム16と外側アーム17と合わせて支持強度を向上させ、キャビン12のオープンを円滑にする。
また、補助アーム50の先端の軸52は、キャビン12の格納時には案内部材51の前部側に位置し、キャビン12を開放して案内部材51の後端まで軸52が移動すると、移動停止し、これにより、内側アーム16と外側アーム17の回動のストッパとしても作用する。そのため、必要以上のキャビン12の移動を制限してグレンタンク5等との干渉を防止する。
【0018】
しかして、図10は、前記リンク機構15を、前側アーム55と後側アーム56の二本のアームにより構成し、前側アーム55の基部は前記エンジン11よりも前方の機体フレーム1の任意の固定部に前側基部取付軸57で回動自在に取付ける。後側アーム56の基部は前記エンジン11の後方の機体フレーム1の任意の固定部に後側基部取付軸58で回動自在に取付ける。
前側アーム55の先端は、キャビン12の内側前端付近に前側先端取付軸59で回動自在に取付け、
後側アーム56の先端は、キャビン12の内側後端付近に後側先端取付軸60で回動自在に取付ける。
そのため、前側基部取付軸57および後側基部取付軸58と前側先端取付軸59および後側先端取付軸60の四点を回動中心として前側アーム55および後側アーム56を後方回動させて、キャビン12が外側移動するように構成されることになり、エンジン11の後側まで略開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
【0019】
この場合、リンク機構15は前側アーム55および後側アーム56によりキャビン12を平行に移動させてオープンさせるので、オープン時のキャビン12が機体フレーム1から外側にはみ出す量(スペース)は少なく、オープンさせるときの作業スペースが少なくてすみ、オープン作業が容易である。
また、キャビン12は平行移動して機体フレーム1の外側にオープンするので、エンジン11の全周が開放され、エンジン11等のメンテナンスが容易になる。
なお、この実施例では、図示は省略するが、グレンタンク5を先にオープンさせてから、キャビン12をオープンさせる。
【0020】
しかして、図11は、前記リンク機構15を、前側アーム55と後側アーム56の二本のアームにより構成すると共に、前側基部取付軸57および後側基部取付軸58と前側先端取付軸59および後側先端取付軸60の四点を回動中心として前側アーム55および後側アーム56を前方回動させて、キャビン12が外側移動するように構成する。
そのため、リンク機構15は前側アーム55および後側アーム56によりキャビン12を平行に移動させてオープンさせるので、オープン時のキャビン12が機体フレーム1から外側にはみ出す量(スペース)は少なく、オープンさせるときの作業スペースが少なくてすみ、オープン作業が容易である。
また、キャビン12は平行移動して機体フレーム1の外側にオープンするので、エンジン11の全周が開放され、エンジン11等のメンテナンスが容易になる。
なお、この実施例では、図示は省略するが、刈取部7を先にオープンさせてから、キャビン12をオープンさせる。
【0021】
しかして、図12は、前記リンク機構15を、前後方向の内側アーム70と外側アーム71の二本のアームを略並行に配置して構成し、内側アーム70と外側アーム71の基部は前記エンジン11の後方の機体フレーム1の任意の固定部に後側基部取付軸72で回動自在にそれぞれ取付ける。
内側アーム70と外側アーム71の先端は、キャビン12の前端付近に前側先端取付軸73で夫々回動自在に取付ける。
そのため、一対の後側基部取付軸72および前側先端取付軸73の四点を回動中心として内側アーム70および外側アーム71を側方回動させて、キャビン12が外側移動するように構成されることになり、エンジン11の後側まで略開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
この場合、リンク機構15は内側アーム70および外側アーム71によりキャビン12を平行に移動させてオープンさせるので、オープン時のキャビン12が機体フレーム1から外側にはみ出す量(スペース)は少なく、オープンさせるときの作業スペースが少なくてすみ、オープン作業が容易である。
また、キャビン12は平行移動して機体フレーム1の外側にオープンするので、エンジン11の全周が開放され、エンジン11等のメンテナンスが容易になる。
また、この実施例では、グレンタンク5および刈取部7をオープンさせることなく、キャビン12をオープンさせることができ、オープン作業が容易である。
【0022】
しかして、図13は、前記リンク機構15を、前後方向の内側アーム70と外側アーム71の二本のアームを略並行に配置して構成し、内側アーム70と外側アーム71の基部は前記エンジン11の前方の機体フレーム1の任意の固定部に前側基部取付軸80で回動自在にそれぞれ取付ける。
内側アーム70と外側アーム71の先端は、キャビン12の後端付近に後側先端取付軸81で夫々回動自在に取付ける。
そのため、一対の後側基部取付軸72および前側先端取付軸73の四点を回動中心として内側アーム70および外側アーム71を側方回動させて、キャビン12が外側移動するように構成されることになり、エンジン11の後側まで略開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
この場合、リンク機構15は内側アーム70および外側アーム71によりキャビン12を平行に移動させてオープンさせるので、オープン時のキャビン12が機体フレーム1から外側にはみ出す量(スペース)は少なく、オープンさせるときの作業スペースが少なくてすみ、オープン作業が容易である。
また、キャビン12はエンジンカバーCごと平行移動して機体フレーム1の外側にオープンするので、エンジン11の全周が開放され、エンジン11等のメンテナンスが容易になる。
【0023】
また、この実施例では、グレンタンク5および刈取部7をオープンさせることなく、キャビン12をオープンさせることができ、オープン作業が容易である。
しかして、キャビン12のオープンはエンジン11の始動中でも可能とし、あるいは、キャビン12のオープン後のエンジン11の始動を可能とするように構成し、キャビン12のオープン中は走行装置2に回転を伝達する走行用静油圧式無段変速装置(図示省略)を、走行を規制するように自動制御するように構成する。
キャビン12のオープン中にエンジン11を始動できるのでエンジン11のメンテナンス作業を一層容易にでき、キャビン12のオープン中は走行用静油圧式無段変速装置(図示省略)を制御して走行を規制するので、危険を防止できる。
また、走行装置2の車軸にエンジン11の回転を伝達するミッション(図示省略)内に設けた駐車ブレーキ(図示省略)を解除すると、始動中のエンジン11を自動停止するように構成する。
【0024】
キャビン12をオープンさせるとき、事前に駐車ブレーキで機体の停止状態を保持するが、キャビン12のオープン中にこの駐車ブレーキを誤って解除してしまうような場合には、エンジン11を自動停止させるので、危険を未然に防止できる。
【0025】
(実施例の作用)
操縦部6の運転座席7に着座し、エンジン11を始動させ、走行装置2により機体を走行させ、刈取部7で刈取り、刈り取った穀稈を脱穀装置により脱穀する。
所定期間作業を作業すると、キャビン12を移動させてエンジン11の周囲を開放し、メンテナンス作業を行う。
キャビン12は、グレンタンク5の前側に位置する通常位置と平面視キャビン12の一部または全部が機体フレーム1より側方にはみ出るように移動する開放位置との間、リンク機構リンク機構15により移動自在に構成しているから、エンジン11の後側まで略開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
【0026】
リンク機構15は、内側アーム16と外側アーム17の二本のアームにより構成し、内側アーム16および外側アーム17の基部はエンジン11よりも後方の機体フレーム1の任意の固定部に内側基部取付軸18と外側基部取付軸19で回動自在に取付け、内側アーム16と外側アーム17の先端は、それぞれ運転座席7よりも前方に位置させ、キャビン12の所定部分に内側先端取付軸21と外側先端取付軸22により回動自在に取付けているので、内側基部取付軸18および外側基部取付軸19と内側先端取付軸21および外側先端取付軸22の四点を回動中心とするリンク機構15によりキャビン12が移動し、エンジン11の後側まで略開放できて、メンテナンス作業が容易になる。
【0027】
この場合、内側アーム16の内側基部取付軸18はキャビン12の左端(内側部分)よりキャビン12の左右方向の中央部分までの中間位置に配置し、外側アーム17の外側基部取付軸19はキャビン12の左右方向の中央部分よりキャビン12の右端(外側部分)までの中間位置あるいはキャビン12の右端側に位置するように配置しているので、キャビン12の移動範囲を大きくすることができる。
また、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22は、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19の夫々の上方に位置させた機体進行方向と平行な仮想線Lを基準に、仮想線Lよりも夫々内側に所定の角度後退させて後退角θを有するように配置しているので、内側アーム16と外側アーム17を回動させると、内側アーム16と外側アーム17の先端は後退角θの分だけ外側に大きく回動し、エンジン11の周辺空間を大きく開放させられる。
【0028】
したがって、従来の一点中心の回動させた場合に比し、キャビン12の移動軌跡の横スライド量が増え、キャビン12の移動に要する前後のスペースも小さくてすみ、グレンタンク5および刈取部7との干渉小さく、グレンタンク5および刈取部7を移動(オープン)させなくても、キャビン12の移動が可能となる。
それゆえ、作業中のトラブルでも、容易にキャビン12をオープンできる。
また、キャビン12は機体フレーム1よりも外側に移動し、キャビン12の横移動量を大きくできので、エンジン11の全周の開放空間を広くでき、特に、前方向からのエンジン11のメンテナンス作業が容易になる。
【0029】
しかして、内側アーム16は、内側基部取付軸18に取付けた左右方向の内側横杆部23と前後方向の内側前後杆部24とにより逆L型形状に形成し、内側横杆部23の長さにより後退角θを形成し、外側アーム17は、外側基部取付軸19に取付けた前後方向の外側前後杆部25と外側前後杆部25の先端を屈曲させた左右方向の外側横杆部26とにより逆L型形状に形成し、外側横杆部26の長さにより後退角θを形成しているので、内側先端取付軸21と外側先端取付軸22を、内側基部取付軸18と外側基部取付軸19上の仮想線Lよりも外側オープン方向に対して後退角θを有するように容易に配置構成を実現する。
【0030】
また、内側アーム16の先端である内側先端取付軸21は運転座席7よりも前方のキャビン12の左端部分に設け、前記外側アーム17の先端である外側先端取付軸22はキャビン12の右端側側面より外側横杆部26の長さ分内側に位置させたキャビン12に設けているので、一点中心の回動させる方法よりもキャビン12の横移動量を増加させることができ、エンジン11の周囲の開放空間を広がられて、好適である。
しかして、エンジン11側(エンジンフレーム)には、少なくとも、エアクリーナーエアクリーナー30とラジエータラジエータ31を取付け、エアクリーナー30とラジエータ31をエンジン11側に残してキャビン12のオープン可能に構成しているので、キャビン12の移動作業に際し、エアクリーナー30のホース(図示省略)を外す作業が不要となって、キャビン12のオープン作業を容易にする。また、エアクリーナー30のホースの脱着作業が不要となるため、ホース接続忘れも含めたエアクリーナー30のホースの脱着の作業ミスを未然に防止できる。
【0031】
また、キャビン12に設けた防塵ネット(図示省略)によりエンジン11周辺の空気が清浄であるため、電装品収納ボックス32をエンジン11側(エンジンフレーム等)に取付け、エンジン11側に電装品収納ボックス32を残してキャビン12をオープンするように構成しているので、この点でも、電装品収納ボックス32の接続を外す作業が不要となって、キャビン12のオープン作業を容易にする。
この場合、ラジエータ31は外側基部取付軸19を回動中心外側アーム17と一体状に回動するように構成しているので、キャビン12のオープンに連動してラジエータ31は外側回動して、エンジン11の周囲を開放させられる。
【0032】
しかして、キャビン12の前後略中間には、左右方向の補強杆35を設け、補強杆35は前記外側アーム17の外側前後杆部25上に載置しているから、キャビン12がオープンするとき、補強杆35は外側アーム17上を摺動する。
そのため、オープンさせる際に、キャビン12は内側先端取付軸21および外側先端取付軸22と、補強杆35と外側アーム17との当接部分との三点により支持され、キャビン12の支持が安定する。
したがって、リンク機構15の外側アーム17は、外側アーム17は、側面視、キャビン12の下部フレーム下部フレーム36と機体フレーム1との間に位置させ、キャビン12の移動部材のみならず支持部材として兼用しているので、合理的構成となる。
【0033】
また、内側アーム16の基部を取付ける内側基部取付軸18は、エンジンフレームエンジンフレーム40の縦杆縦杆41に設けているので、内側アーム16は、側面視エンジン11より上方を移動してキャビン12をオープンさせるように構成する。
キャビン12のオープンの際、内側アーム16は側面視エンジン11よりも上方を移動し、内側アーム16とエンジン11との干渉が無く、内側アーム16の回動量を大きくでき、キャビン12のオープン量を大きくできる。
また、前記外側アーム17はキャビン12の下側を支持し、内側アーム16はエンジン11より上方部分のキャビン12を支持するので、リンク機構15による支持強度を向上させ、特に、キャビン12の横方向の倒れや捻れに対する支持強度を向上させられる。
【0034】
しかして、機体フレーム1の所定部分には前記外側基部取付軸19と同一軸心で回動する補助アーム補助アーム50の基部を回動自在に取付け、補助アーム50の先端はキャビン12に設けた前後方向の案内部材(レール)案内部材51に軸軸52により案内部材51の長さ方向に移動自在に取付けているので、キャビン12のオープンのとき、補助アーム50がキャビン12の右端側を支持するので、内側アーム16と外側アーム17と合わせて支持強度を向上させ、キャビン12のオープンを円滑にする。
また、補助アーム50の先端は案内部材51の後端まで移動すると、移動停止し、これにより、内側アーム16と外側アーム17の回動のストッパとしても作用するので、必要以上のキャビン12の移動を制限してグレンタンク5等との干渉を防止する。
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示および説明しているが、これらの実施例は夫々種々組合せ可能であり、これらの表現によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】キャビンの開放状態平面図。
【図3】キャビンの通常状態平面図。
【図4】リンク機構の概略平面図。
【図5】キャビンの側面図。
【図6】キャビン(ラジエータ)の開放状態平面図。
【図7】キャビンの一部側面図。
【図8】キャビンの回動状態斜視図。
【図9】リンク機構の他の実施例の平面図。
【図10】リンク機構の他の実施例の平面図。
【図11】リンク機構の他の実施例の平面図。
【図12】リンク機構の他の実施例の平面図。
【図13】リンク機構の他の実施例の平面図。
【符号の説明】
【0036】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、7…運転座席、8…操作ボックス、11…エンジン、12…キャビン、15…リンク機構、16…内側アーム、17…外側アーム、18…内側基部取付軸、19…外側基部取付軸、21…内側先端取付軸、22…外側先端取付軸、23…内側横杆部、24…内側前後杆部、25…外側前後杆部、26…外側横杆部、30…エアクリーナー、31…ラジエータ、32…電装品収納ボックス、35…補強杆、36…下部フレーム、40…エンジンフレーム、41…縦杆、50…補助アーム、51…案内部材、52…軸、55…前側アーム、56…後側アーム、57…前側基部取付軸、58…後側基部取付軸、59…前側先端取付軸、60…後側先端取付軸、70…内側アーム、71…外側アーム、72…後側基部取付軸、73…前側先端取付軸、80…前側基部取付軸、81…後側先端取付軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に走行装置(2)を備えた機体フレーム(1)の上方に脱穀装置(3)を設け、該脱穀装置(3)の前側に刈取装置(4)を設け、前記脱穀装置(3)の横側にグレンタンク(5)を設け、該グレンタンク(5)の前側の機体フレーム(1)上にエンジン(11)を設け、該エンジン(11)を覆うエンジンカバー(C)と一体のキャビン(12)を設け、該キャビン(12)はグレンタンク(5)の前側に位置する閉鎖位置とキャビン(12)の一部または全部が機体フレーム(1)の外側方へ移動した開放位置との間にわたりリンク機構(15)により移動自在に支持したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
請求項1において、 前記リンク機構(15)を、内側アーム(16)と外側アーム(17)により構成し、該内側アーム(16)および外側アーム(17)の基部を前記エンジン(11)よりも後方の機体フレーム(1)の固定部に内側基部取付軸(18)と外側基部取付軸(19)で夫々回動自在に取付け、内側アーム(16)と外側アーム(17)の先端部は、キャビン(12)の運転座席(7)よりも前側の所定部分に内側先端取付軸(21)と外側先端取付軸(22)により夫々回動自在に取付けことを特徴とするコンバイン。
【請求項3】
請求項2において、前記内側アーム(16)の内側基部取付軸(18)を閉鎖位置にあるキャビン(12)の左端からキャビン(12)の左右方向の中央部分までの中間位置に配置し、外側アーム(17)の外側基部取付軸(19)は閉鎖位置にあるキャビン(12)の左右方向の中央部分からキャビン(12)の右端までの中間位置あるいはキャビン(12)の右端側の位置に配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項4】
請求項2において、前記内側先端取付軸(21)と外側先端取付軸(22)は、内側基部取付軸(18)と外側基部取付軸(19)の夫々の上方に位置させた機体進行方向と平行な仮想線(L)を基準に、キャビン(12)の外側オープン方向に対して仮想線(L)よりも夫々内側に所定の角度後退する後退角(θ)を有するように配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項5】
請求項4において、前記内側アーム(16)は、内側基部取付軸(18)に取付けた左右方向の内側横杆部(23)と前後方向の内側前後杆部(24)とによりL字形状に形成し、内側横杆部(23)の長さにより第一後退角(θ1)を形成し、外側アーム(17)は、外側基部取付軸(19)に取付けた前後方向の外側前後杆部(25)と外側前後杆部(25)の先端を屈曲させた左右方向の外側横杆部(26)とにより逆L字形状に形成し、外側横杆部26の長さにより第二後退角(θ2)を形成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項6】
請求項5において、前記キャビン(12)の前後方向の中間位置に左右方向の補強杆(35)を設け、該補強杆(35)を前記外側アーム(17)の外側前後杆部(25)上に載置し、キャビン(12)の移動の際に補強杆(35)が外側アーム(17)上を摺動するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項7】
請求項6において、前記内側アーム(16)は、キャビン(12)の移動の際にエンジン(11)の上方を移動するように構成したことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−148434(P2010−148434A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330198(P2008−330198)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】