説明

コンバイン

【課題】軽負荷時におけるエンジンの回転数の異常な上昇を防止し、3番ロスを少なくする。
【解決手段】脱穀部(4)の前側に刈取部(3)を昇降可能に設け、該刈取部(3)が刈取作業位置に下降すると、エンジン(E)の出力回転数を設定された所定の定格回転数を超える回転数まで上昇させ、刈取部(3)が非刈取作業位置まで上昇すると、この上昇作動に起因してエンジン(E)の出力回転数を所定の定格回転数域に復帰させる連繋手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示されているように、急旋回操作時にのみエンジン出力を上昇させ、急旋回操作時であっても、非脱穀作業状態や未処理穀粒量が少ない状態では、エンジン出力の上昇を行わないように規制する手段を設けた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−225225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈取脱穀作業時での過負荷作業状態では、定格回転にするためにエンジンをフルスロットルにして作業をすることが多い。この状態で刈取部を上げて旋回作業に入った時に刈取脱穀負荷が減少しているため、エンジン回転が定格を超えた最高回転になるまで上昇することがあり、この時、特に脱穀部での選別風が強くなり過ぎて3番ロスの増加を招く問題があった。
【0005】
本発明の課題は、上記問題点を解消することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、脱穀部(4)の前側に刈取部(3)を昇降可能に設け、該刈取部(3)が刈取作業位置に下降すると、エンジン(E)の出力回転数を設定された所定の定格回転数を超える回転数まで上昇させ、刈取部(3)が非刈取作業位置まで上昇すると、この上昇作動に起因してエンジン(E)の出力回転数を所定の定格回転数域に復帰させる連繋手段を設けたことを特徴とするコンバインとする。
【0007】
刈取脱穀作業を開始するにあたり、刈取部(3)を刈取作業位置まで下降させると、これに関連してエンジン(E)の回転数が設定された所定の定格回転数を超える回転数まで上昇する。そして、一行程の刈取作業が終了して刈取部(3)を非作業位置まで上昇させると、少なくとも刈取負荷がなくなった分、エンジン(E)の回転数がダウンして所定の定格回転域に復帰する。
【0008】
従って、一行程の刈取作業終了時に刈取負荷がなくなっても、エンジン(E)の回転数が定格回転数を超えた回転数まで上昇することがなく、脱穀部(4)の選別風が強くなって、3番飛散の増加を招くことがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、刈取部(3)を上昇させて旋回する際には、エンジン(E)の回転数を下げて、設定された所定の定格回転数に戻すので、軽負荷時におけるエンジン(E)の回転数の異常な上昇を防止でき、3番ロスを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】エンジンのスロットル制御機構を示す側面図
【図4】同上要部の正面図
【図5】処理胴の側面図
【図6】同上要部の側面図
【図7】図6のA矢視図
【図8】脱穀装置の切断側面図
【図9】処理胴の平面図
【図10】図9のS1−S1断面図
【図11】図9のS2−S2断面図
【図12】脱穀装置の一部の平面図
【図13】同上一部の側面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は、コンバインを示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)4の前方部に刈取部3を設置し,刈取部3の横側部には運転席5、運転席前側のフロント操作ボックス6、運転席左側のサイド操作ボックス7等からなる運転操作部を備え、更に、その運転操作部の後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0012】
フロント操作ボックス6の右側には、左右方向の操作で機体の進行方向を操向制御し、前後方向の操作で刈取部3を昇降制御するパワステレバー8が設置されている。8aはハンドルである。サイド操作ボックス7には機体の走行速度を変速制御する変速レバー9や、前記運転席5の下方位置に搭載されたエンジンEの回転速度を制御するスロットルレバー10等が設置されている。
【0013】
刈取部3は、立毛する穀稈を左右に分草する分草体11,11…、分草後の穀稈を引き起す3条分の穀稈引起し装置12…、引起し後の穀稈を刈り取るバリカン式の刈取装置13、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送装置14、掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送し後方の脱穀部4に搬送供給する刈取穀稈搬送装置15等からなり、車体に対して上下に昇降可能で前後方向に沿わせて設けた刈取縦フレーム17及び該刈取縦フレームの先端に左右横方向に沿わせて設けた刈取横フレームに装備している。
【0014】
穀稈の株元側を受け継いで挟持搬送する脱穀フィードチエン18の穀稈穂先側には、前記刈取穀稈搬送装置15からの穀稈を引き継いで搬送する引継ぎ搬送チエン19が設けられている。
【0015】
エンジンEからの回転動力は、刈取部3や脱穀部4等のコンバイン各部を回転駆動するように連動構成されている。図3に示すように、軸芯P1回りに回動可能なスロットルレバー10と、エンジンE側に設置された軸芯P2回りに回動可能なスロットルアーム20とは、スロットルワイヤ21を介して連動連結され、刈取脱穀作業時には、このスロットルレバー10の操作で、スロットルアーム20を所定の定格回転位置に設定することができる。軸芯P3回りに回動変位可能なスロットル制御カム22は、刈取部の昇降動作によりカム作動ワイヤ23を介して作動するようになっており、スロットルアーム20が最高回転位置から設定された所定の定格回転位置まで回転ダウンする方向及び定格回転位置から最高回転位置まで回転アップする方向に作動するよう連動構成している。すらわち、刈取部3を刈取作業位置に下降させると、これに関連してスロットル制御カム22の作動によってスロットルアーム20が設定された所定の定格回転位置を超える最高回転位置(若しくはそれに近い位置)まで回転アップする方向に作動し、また、刈取部3を非刈取作業位置まで上昇させると、スロットルアーム20が最高回転位置から設定された所定の定格回転位置まで回転ダウンする方向に作動する。
【0016】
なお、上記実施例では、スロットル制御カムによってスロットルアームを直接作動させる手段を採用したが、スロットルレバーを直接作動させるように構成するものであっても良い。24はスロットル戻しスプリングを示す。
【0017】
次に脱穀装置の構成例について説明する。
図5〜図7に示す処理胴26には、駆動軸27に嵌合する雌スプラインを有した駆動スプライン軸部28が処理胴に対して着脱自在に軸受保持されている。このスプライン軸部28は、スプライン側フランジ29を処理胴側フランジ30に重ね合わせてボルト31aとナット31bにより締付固定する構成としている。また、スプライン軸部28側には、締付ナット31b部に対するワラ屑の巻き付きを防止するためのカバー32及びスプライン軸部先端の差込位置を規制するストッパ33が設けられ、処理胴26側フランジ30にはスプライン軸部の抜き外しを容易にするための叩き孔(この孔にピン等を差し込んでスプライン軸部を叩き抜く)34が設けられている。以上のような構成により、駆動スプライン軸部の取り外しができるので、スプラインの磨耗によって処理胴自体をも交換する必要がなく、スプライン軸部のみの交換で良く、ユーザーの負担が軽減される。
図8に示す脱穀装置は次のような構成になっている。
【0018】
すなわち、脱穀装置4は、脱穀フィードチエン18により株元を挟持しながら搬送される穀稈の穂先部を扱室35内で駆動回転する扱胴36により脱穀処理するよう構成している。扱室35の下半周部には受網37が張設されている。また、前記扱室35のフィードチエン18側とは反対側には、2番処理胴26aと排塵処理胴26bが扱胴36と平行状に並設され、2番処理胴は前方に搬送しながら2番物を処理し、排塵処理胴は後方に搬送しながら扱室からの排塵処理物を受け入れて処理するように構成されている。
【0019】
扱室下方の揺動選別装置(揺動選別棚)Yは、脱穀処理後の処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚38、前部チャフシーブ39、後部チャフシ−ブ40、ストロ−ラック41の順に配置し、且つ、前記前部チャフシ−ブ39の下方にグレンシ−ブ42、1番戻し棚43、2番戻し棚44を配置して設けた構成としている。
【0020】
また、揺動選別棚Yの下方には選別方向の上手側から順に、主唐箕45と、1番移送螺旋46、セカンドファン47、2番移送螺旋48と、その上方に排塵フアン(横断流ファン)49を設けて排塵選別室を構成している。
【0021】
主唐箕45からの選別風をグレンシーブ42の前方側とグレンシーブ42側とに風選経路K1,K2によって分流可能とし、移送棚38と前部チャフシーブ39との間に段差(移送棚38の後端部は前部チャフシーブ39の前端部上にオーバーラップしている)を設けて主唐箕45の風選経路K3からの風によって選別可能とし、更に、前部チャフシーブ39と後部チャフシ−ブ40との間に段差を設けて風選経路K2からの風で風選可能に構成している。また、前記風選経路K3における揺動選別棚側には、移送棚38の先端側下方において前後の風ガイド板50a,50bによって案内風洞が形成されている。該風洞の前側風ガイド板50aは移送棚の下部に接続し、後側風ガイド板50bの上端部はチャフシーブ39の上端部と略同じ高さに構成している。この案内風洞50a,50b及び風割51と揺動棚下部との間には弾性変位可能な弾性シール53,54を前後に配置して設け、前側の弾性シール53は唐箕風洞52側を固定とすると共に、揺動棚側をフリーにして、先端を揺動棚の風洞内に臨ませ、また、後側の弾性シール54は、揺動棚側を固定とし、風割51側をフリー状態として先端部を風割上で摺動可能に構成している。これにより、揺動棚風洞部への選別風の流れが効率よく行え、揺動棚での濾過率がアップし、3番飛散が軽減される。
【0022】
1番移送螺旋46と2番移送螺旋48との間に設けられたセカンドファン47からの選別風は、前後の風分流板55,55間を案内され後部チャフシーブ40の各シーブ板間を通じて上昇するようになっている。なお、セカンドファン47の吐出口56の吐出角度は、チャフシーブ40のシーブ板角度と略同じ角度に構成することで選別効率のアップを図るようにしている。また、吐出口56部の案内片57,57はゴム等の弾性体で構成している。
【0023】
図9〜図11に示す実施例では、2番処理胴26aのラセン受樋58を右側より左側が低くなるように傾斜させて処理物を下方の移送棚38の中央側に向けて案内落下させるように構成している。これにより、移送棚上に落下する処理物が該移送棚の右側一側にのみ片寄って落下するのを防止することができ、移送棚上での分散効率が良く、以後の選別効果を高めることが可能となる。また、処理胴の搬送終端側には、拡散羽根59と、これに対応する下方に傾斜案内板60を設けることで、処理物の移送棚上への拡散効果を高めることができる。更に、拡散羽根の端部側にラセン径より小径の円盤61を設けることで、処理物の拡散効果がより高められる。
【0024】
図12及び図13に示す実施例では、入口漏斗62の左側(脱穀フィードチエン側)前方部を切欠構成し、その切欠いだ切欠空間部63に引継ぎ搬送チエン19をこれが入口漏斗の下側に入り込むように配設したものにおいて、引継ぎ搬送チエンの後部及び下部にワラ屑の落下を防止する後部落下防止ガイド64と下部落下防止ガイド65を設け、その後部落下防止ガイド64にはステー66を上下調節可能に止着して設け、そして、このステー66に引継ぎ搬送チエン19の後部上面と入口漏斗62の切欠き前部をガイド板体67で覆うように橋架状態に設けた構成としている。従来では引継ぎ搬送チエンから脱落したワラ屑が入口漏斗の切欠き始端(前端)部に堆積し引継ぎ搬送作用を阻害する問題があったが、かかる本例ではこれを解消することができる。
【0025】
なお、上記ステー66を上下調節することによってガイド板体67を入口漏斗に密着状態に適宜調整することができ、また、ガイド板体は後半部を剛体とし、前半部をゴム等の弾性体で構成し、この弾性ガイド部をチエンのプレート及びローラに接する程度に近づけるように構成しておくと、チエンでのワラ屑の持ち込みを防止でき、強引に持ち込むことがあってもガイドが逃げるためメカロックを回避することができる。また、後半部のガイド剛体部を入口漏斗に沿わせるように内側の一部を下側に曲げた構成にすることで、搬送作用が支障なくスムースに行える。
【符号の説明】
【0026】
3 刈取部
4 脱穀部
10 スロットルレバー
20 スロットルアーム
21 スロットルワイヤ
22 スロットル制御カム
E エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部(4)の前側に刈取部(3)を昇降可能に設け、該刈取部(3)が刈取作業位置に下降すると、エンジン(E)の出力回転数を設定された所定の定格回転数を超える回転数まで上昇させ、刈取部(3)が非刈取作業位置まで上昇すると、この上昇作動に起因してエンジン(E)の出力回転数を所定の定格回転数域に復帰させる連繋手段を設けたことを特徴とするコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−172287(P2010−172287A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19663(P2009−19663)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】