説明

コンバイン

【課題】操縦席のステップの下方の限られた空間に配置される燃料タンクや潤滑油タンクの容量を出来るだけ大きくして、タンク内の油を取り出し易くすること。
【解決手段】操縦席20のステップ29を注油タンク31の上面と兼用とし、該注油タンク31の底部の一部をタンク底部の他部よりも深くし、該深くした部位に注油ポンプサクションホース32の先端開口部を配置したコンバインであり、注油タンク31とステップ29を一体化することによるコストダウンができ、タンク31の他部よりも深くしたタンク底部にサクションホース32の先端開口部を配置したことによりタンク31内にオイルが残って取り出せないという不具合を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植立穀稈を収穫するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインはクローラを構成する無限履帯の接地面積を広くし、水田など軟弱な圃場でも自由に走行して刈取作業などの農作業を可能としている。
コンバインの操縦席のステップの下方にはエンジンや潤滑油タンクなどが配置されている。しかし、操縦席のステップの下方の限られた空間に配置される燃料タンクや潤滑油タンクの容量も小さいままであった。
【0003】
そこで、これらの操作手段の操作性を改良して、一連の農作業を円滑に行うことができるように機能的に、操作スイッチの配置構造を改良した工夫がなされている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−318163号公報
【特許文献2】特開2006−56392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1、2記載の構成によれば、運転席のステップの下方に配置される燃料タンクは限られた空間を単に利用しているに過ぎない構成が開示されている。
本発明の課題は、操縦席のステップの下方の限られた空間に配置される燃料タンクや潤滑油タンクの容量を出来るだけ大きくして、タンク内の油を取り出し易くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は次の解決手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、操縦席(20)のステップ(29)を注油タンク(31)の上面と兼用とし、該注油タンク(31)の底部の一部を注油タンク底部の他部よりも深くし、該タンク底部の他部よりも深くした部位に注油ポンプサクションホース(32)の先端開口部を配置したコンバインである。
【0006】
請求項2記載の発明は、ステップ(29)と一体の注油タンク(31)を、該ステップ(29)を支持する車体(2)側のステップフレーム(34)に着脱自在に取り付けた請求項1記載のコンバインである。
【0007】
請求項3記載の発明は、操縦席(20)のステップ(29)に直接オイルポンプ(33)を取り付け、該オイルポンプ(33)の取り付け部をステップ(29)の左前方の操縦席(20)のサイドカバー(36)よりも外側に設け、ステップ(29)に注油タンク(31)への給油口(31a)を設けた請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、注油タンク(31)とステップ(29)を一体化することによってコストダウンが可能となり、注油タンク(31)の他部よりも深くした注油タンク底部に注油ポンプサクションホース(32)の先端開口部を配置したことにより、注油タンク(31)内にオイルが残って取り出せないという不具合を防止することができる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、注油タンク(31)を車体(2)から取り外すときには、注油タンク(31)が車体(2)に対して着脱可能なため、メンテナンス性に優れたものになる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、操縦席(20)のステップ(29)に直接オイルポンプ(33)を取り付けたため、オイルポンプ(33)専用の取付部材を省略して更にコストダウンすることができる。さらに、ステップ(29)に注油タンク(31)への給油口(31a)を設け、該給油口(31a)をサイドカバー(36)より外側に配置したので、ステップ(29)に泥水や埃が溜まっても、給油口(31a)に泥水やほこりが付着しにくく、これら泥水やほこりが燃料に混入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
図1は本実施例のコンバインの右側面図であり、図2は図1のコンバインの平面図である。なお、本明細書では、左側及び右側とはコンバインが前進する方向に向いたときの方向を言う。
【0012】
図1、図2に示すように、コンバインの車体2の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行装置(以下、走行クローラと称す。)3を有する走行装置本体4を配設し、車体2の前端側に分草杆8を備えた刈取装置9が設けられている。刈取装置9は車体2の上方の支点を中心にして上下動する刈取装置支持フレーム(図示せず)で支持されているので、コンバインに搭乗したオペレータが運転台25の操縦席20にあるパワステレバー(操向レバー)28を前後に傾倒操作することにより、刈取装置支持フレームと共に上下に昇降する構成である。
【0013】
車体2の上方には、刈取装置9から搬送されてくる穀稈を搬送して脱穀、選別する脱穀装置10と該脱穀装置10で脱穀選別された穀粒を一時貯溜するグレンタンク13が載置され、グレンタンク13の後部に縦オーガ16、横オーガ17からなるオーガ15を連接して、グレンタンク13内の穀粒をグレンタンク下部の螺旋(図示せず)により搬送して、横オーガ17の穀粒排出口17cからコンバインの外部に排出する構成としている。
【0014】
すなわち、コンバインはオペレータが操縦席20において主変速レバー22および副変速レバー23を操作し、エンジン64の動力を図示しない走行トランスミッションケース内の主変速機を介して変速し、左右の走行クローラ3、3に伝動して任意の速度で走行する。
【0015】
また、図2に示すように、運転台25の右側面はオペレータの乗降用の空間が設けられている。そして前記運転台25の右側前方には、パワステレバー(操向レバー)28、その左側には、燃料や走行速度、グレンタンク13内の穀粒の貯留量などを表示する表示パネル部38を配置している。
【0016】
パワステレバー(操向レバー)28は、一本のレバーを左右に傾倒すればコンバインを左右に旋回させ、前後に傾倒すれば刈取装置9を下降、上昇できる。コンバインは、オペレータが操縦席20においてパワステレバー28を左右に傾倒操作することにより各種旋回走行することができる。すなわち、コンバインを旋回させようとする方向にパワステレバー28を傾倒操作することにより、左右の走行クローラ3、3に速度差が与えられて走行方向の変更が行われる構成としている。
【0017】
そして運転台25の左側には、走行装置3を無段階で前進、停止、後退制御できる主変速レバー22、走行装置3の速度を低速(作業速)、中速(作業速と走行速)、高速(走行速)の3段階に切り替える副変速レバー23、刈取装置9および脱穀装置10の運転停止を操作する刈取・脱穀レバー52などが設けられている。
【0018】
図3には、本発明の一実施例によるコンバインの前方部分の右側面図を示し、図4には、コンバインのエンジンカバー35の側面35aと上面35bより前方部分の操縦席部分と注油タンク31の縦断面を車体正面側から見た正面図を示し、図5にはコンバインの前方の操縦席部分の平面図を示す。
【0019】
操縦席20の前方にはフロントカバー40を設けており、該フロントカバー40の基部後方にステップ29が向けられ、ステップ29の後方にエンジン64(図1)が配置され、該エンジン64の上方には操縦者用の座面20aが設けられている。
【0020】
操作席20のステップ29を注油タンク31の上面と兼用とし、注油タンク31の底部の一部をタンク底部の他の部分よりも深くし、その部位に注油ポンプサクションホース32を配置した構成とする。この構成により注油タンク31とステップ29を一体化することによるコストダウンが可能となり、注油タンク31の底部の一部を他のタンク底部よりも深くして、そこに注油ポンプサクションホース32の先端開口部を配置したことにより、タンク31内にオイルが残って、取り出せないという不具合を防止することができる。
【0021】
また(集中)注油タンク31を車体2から取り外すときには、ステップ29と一体のタンク31をステップフレーム34(図4)より取り外すことが出来るようにすると、(集中)注油タンク31が車体2に対してワンタッチで着脱可能なため、メンテナンス性に優れたものになる。
【0022】
操作席20のステップ29の下方は中空状になっており、注油タンク31としているので、ステップ29に直接電動サクションポンプ33を取り付けることができ、ステップ29とサクションオイルポンプ33の一体化による組付作業性が良いので従来より製造コストの低減化が図れる。また、前記オイルポンプ33の取り付け部をステップ29の左前方の操縦席20のサイドカバー36より外側に設け、さらに、ステップ29に設けた集中注油タンク31への給油口31aを、サイドカバー36より外側(ステップフレーム34の空間より外)に配置したので、ステップ29に泥水や埃が溜まっても、給油口31aに泥水やほこりが付着せず、これら泥水やほこりの燃料への混入を防止できる。
【0023】
また、図6にエンジン設置部より前側とステップの縦断面方向の右側面図と図7にその正面図を示すように給油口31aのキャップにサクションホース32を挿入して、そのホース32を着脱自在としたことで、給油口31aを外したときにホース32がタンク31と分離するため、ステップ29の着脱を容易に行うことができる。また、給油口31aから図7に示す手動ポンプ45で注油することもできる。
【0024】
さらに、図6及び図7に示すように、モニタパネル部39に手動式注油ポンプ45のレバー42を配置しているので、操作席20から容易に注油が行える。
なお、前記手動式注油ポンプ45のレバー42は刈取装置9の上下シリンダ、車体2のローリングシリンダ又はオーガ15の昇降シリンダの操作レバー又は主変速レバー22としても良い。
【0025】
図8にはコンバインの前方右側のエンジンカバー35が装着された部分の側面図(図8(a))と車体2の背面側からみたエンジンカバー35の側面35aの背面図(図8(b))を示す。エンジンルームの右側側面(図8(a)の領域(イ)部分)の内側には吸気網37aが張られ、該吸気網37aが張られたエンジンルームの右側側面の下方部位(領域(ロ)部分)にも吸気網37bが張られるが、領域(ロ)部分の二重構造内側の吸気網37bの外周部位に隙間を設けている。
【0026】
一般に、エンジンルームの右側側面の下方部位(領域(ロ)部分)ほど塵埃がつきやすいが、この部分が二重構造であるので、該二重構造内側の吸気網37bの外周部位の矢印方向A、Bだけから吸気され、領域(ロ)部分の内側の吸気網37bに藁屑等が付着する量が減り、吸気効率が上がる。また、領域(ロ)部分の内側の吸気網37bに藁屑等が付着しているのが見えないので、見た目が良い。
【0027】
図5の平面図に示すように操作席20のステップ29をブロー成型による樹脂で成型し、ステップフレーム34(図4)から着脱自在に構成し、ステップ29に着脱用把手用穴29aを付け、該穴29aをエンジンカバー35の直近位置に設けると、ステップ29の着脱が容易となる。また、図5及び図9の右側面図に示すようにステップの左側に鎌固定用の溝29bを設けたので、ステップ29を鎌入れにしたことによる部品点数の削減とコストダウンが図れる。
【0028】
図5のレバーガイド50部分の拡大図を図10に示し、図10に対応した正面断面図を図11に示すように刈取装置9の駆動用と脱穀装置10の駆動用の一体のレバー52で脱穀装置10の駆動の「入り」と「切」の切替を該レバー52の前後方向で操作し、刈取装置の駆動の「入り」と「切」の切替を左右方向で操作するように構成し、内部レバーガイド52aをクラッチパネル53の内部に設ける。
【0029】
脱穀装置10の駆動の 「入り」と「切」の切替は図示しないテンションアームをスプリングを介して引っ張り、レバー52の支点越えによりその状態を保持する構成とし、刈取装置9の駆動の「入り」と「切」の切替操作時のレバーガイド50の形状を脱穀「切」方向に凸形状に構成している。従来は、刈取作業中に不意に刈取レバー52に触れて刈取装置9の駆動が「入り」または「切」に操作される不具合があったが、上記構成にしたことにより、脱穀装置10のテンションの引っ張り加重を利用して刈取レバー52の不意による誤操作を防止することができる。
また、内部レバーガイド52aをクラッチパネル53内部に設けたので、レバーガイド52aとレバー52によるこすれ傷が目立つことを防止する。
【0030】
図10のレバーガイド50部分の変形例を図12の平面図に示す。この場合の図10、図11に示す構成との相違点は、刈取装置9の駆動用の「入り」と「切」の操作時のレバーガイド50の形状を平面視でV形状に構成したことである。
この場合も図10のレバーガイド50と同様に脱穀テンションの引っ張り加重を利用し刈取レバー52の不意による誤操作を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明はトラクタやコンバインを含む農業用作業車両だけでなく、工業用作業車両においても利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例のコンバインの右側面図である。
【図2】図1のコンバインの平面図である。
【図3】図1のコンバインの前方部分の右側面図をである。
【図4】図1のコンバインのエンジンカバーの側面と上面より前方の操縦席部分と注油タンクの縦断面を車体正面側から見た正面図である、
【図5】図1のコンバインの前方部分の操縦席部分の平面図である。
【図6】図1のコンバインのエンジン設置部より前側とステップの縦断面方向の側面図である。
【図7】図6の正面図である。
【図8】図1のコンバインの前方右側のエンジンカバーが装着された部分の側面図(図8(a))と車体の背面側からみたエンジンカバーの側面の背面図(図8(b))である。
【図9】図1のコンバインの前方部分の操縦席部分の右側面図である。
【図10】図5のレバーガイド部分の拡大図である。
【図11】図10のレバーガイド部分の正面断面図である。
【図12】図10のレバーガイド部分の変形例の平面図である。
【符号の説明】
【0033】
2 車体 3 走行装置
4 走行装置本体 8 分草杆
9 刈取装置 10 脱穀装置
13 グレンタンク 15 オーガ
16 縦オーガ 17 横オーガ
17c 排出口 20 操縦席
20a 座面 22 主変速レバー
23 副変速レバー 25 運転台
28 パワステレバー 29 ステップ
29a ステップ着脱用把手用穴
29b 鎌固定用の溝 31 注油タンク
31a 給油口
32 注油ポンプサクションホース
33 オイルポンプ 34 ステップフレーム
35 エンジンカバー 36 サイドカバー
37a,37b 吸気網 38 表示パネル部
39 モニタパネル部 40 フロントカバー
42 手動式注油ポンプのレバー
45 手動ポンプ 50 レバーガイド
52 刈取装置駆動用と脱穀装置駆動用の一体のレバー
52a 内部レバーガイド 53 クラッチパネル
64 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦席(20)のステップ(29)を注油タンク(31)の上面と兼用とし、該注油タンク(31)の底部の一部を注油タンク底部の他部よりも深くし、該タンク底部の他部よりも深くした部位に注油ポンプサクションホース(32)の先端開口部を配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
ステップ(29)と一体の注油タンク(31)を、該ステップ(29)を支持する車体(2)側のステップフレーム(34)に着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
操縦席(20)のステップ(29)に直接オイルポンプ(33)を取り付け、該オイルポンプ(33)の取り付け部をステップ(29)の左前方の操縦席(20)のサイドカバー(36)よりも外側に設け、ステップ(29)に注油タンク(31)への給油口(31a)を設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−22308(P2010−22308A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189519(P2008−189519)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】