コンバイン
【課題】不整列状態や絡み合いが著しい茎稈でも、脱粒や引きちぎれを回避しやすい状態で刈取対象と非刈取対象に分草でき、かつ穀粒損失を抑制できるコンバインを提供する。
【解決手段】植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに切断して分草するように刈取部フレーム23の横側枠23cの横外側に設けた切断装置40を備えてある。切断装置40に動力伝達する伝動機構における刈取部フレーム23の横側枠23cから走行機体上方側に突出した部位51の刈取部フレーム内方側を覆うカバー70を設けてある。刈取部フレーム23の横側枠23cの上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置して、切断装置40から落下した茎稈片を横側枠23cよりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内する傾斜ガイド部81を設けてある。
【解決手段】植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに切断して分草するように刈取部フレーム23の横側枠23cの横外側に設けた切断装置40を備えてある。切断装置40に動力伝達する伝動機構における刈取部フレーム23の横側枠23cから走行機体上方側に突出した部位51の刈取部フレーム内方側を覆うカバー70を設けてある。刈取部フレーム23の横側枠23cの上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置して、切断装置40から落下した茎稈片を横側枠23cよりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内する傾斜ガイド部81を設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板部及び前記底板部の横端部に連なった横側枠を備えて構成した刈取部フレームと、植立茎稈に刈取り作用するように前記底板部に支持された刈取装置と、前記刈取装置の上方側位置で掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作する掻き込み装置とを有した刈取前処理部が装備されたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインにおいては、稲、麦などのように条列に沿って植え付けられた整列状態の茎稈の他、菜種やひまわりなどのように条列に沿って植え付けられたものではない不整列状態の茎稈を収穫対象とすることがあり、従来では特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載されたものでは、茎稈の穂先側を掻き込みリール15で掻き込んで、茎稈の株元側を刈取装置12で切断して刈り取るように構成されるとともに、刈取対象の茎稈と非刈取対称の茎稈とを分草具によって分草する。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−211043号公報(段落〔0012〕、図1及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載された従来構造のものでは、刈取対象の茎稈に対しては、掻き込みリールによる掻き込み作用などにより、姿勢矯正して刈取作業を行うようにしている。しかし、未刈側に近い位置の刈取対象の茎稈と未刈側の非刈取り対象の茎稈との間で絡み合いが生じた場合、絡み合いの解きほぐしに伴う脱粒や、茎稈の引きちぎれが発生しやすくなっていた。殊に、菜種など、絡み合いの度合いが強い場合、脱粒や引きちぎれがより発生しやすくなっていた。
つまり、刈取対象の茎稈であっても、不整列のために未刈側に近い箇所に位置していると、掻き込みリールによる作用を受けにくく、未刈側の近くに位置する刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈との絡み合いを分草具による押し分けによってほぐし処理することになる。この場合、絡み合いの強い茎稈にあっては、分草具による押し分けのために強い引っ張り力やこすれが発生して着粒部での脱粒や引きちぎれが発生しやすくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、不整列状態や絡み合いが著しい茎稈でも、脱粒や引きちぎれを回避しやすい状態で刈取対象と非刈取対象とに分草することができ、しかも穀粒損失を抑制することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、底板部及び前記底板部の横端部に連なった横側枠を備えて構成した刈取部フレームと、植立茎稈に刈取り作用するように前記底板部に支持された刈取装置と、前記刈取装置の上方側位置で掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作する掻き込み装置とを有した刈取前処理部が装備されたコンバインにおいて、
植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに切断して分草するように前記刈取部フレームにおける前記横側枠の横外側に走行機体上下向きに設けた切断装置を備え、
前記切断装置に動力伝達する伝動機構における前記刈取部フレームの前記横側枠から走行機体上方側に突出した部位の刈取部フレーム内方側を覆うカバーを設け、
前記刈取部フレームの前記横側枠の上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置して、前記切断装置から落下した茎稈片を前記横側枠よりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内する傾斜ガイド部を、前記カバーに設けてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、刈り取ろうとする茎稈が不整列状態にあって掻き込み装置による作用を受けにくい箇所に位置していても、この刈取対象の茎稈、及びこの刈取対象茎稈と絡み合った未刈側の非刈取対象の茎稈の穂先側に切断装置を作用させて、刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈とを切断装置による切断によって分草させることができる。
刈取対象と非刈取対象の茎稈を切断によって分草できることから、茎稈の絡み合いが強くても、茎稈に無理な引っ張り力やこすれを発生しにくくして脱粒及び引きちぎれを回避しやすい。
【0008】
切断による分草を行なわせると、切断された茎稈片が切断装置から落下する場合がある。この場合、落下した茎稈片を切断装置の伝動機構を覆うカバーに設けた傾斜ガイド部による落下案内によって刈取部フレーム内方側に落下させ、落下した茎稈片が刈取部フレームの外部にこぼれ出たり、横側枠の上に載ったままになって回収されなくなったりすることを回避しやすい。
【0009】
したがって、不整列状態にある茎稈の場合でも、菜種など絡み合いが強くて脱粒が発生しやすい茎稈の場合でも、刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈との分草、及び絡み合いのほぐしに伴う脱粒及び引きちぎれの発生を抑制でき、しかも切断装置から落下した茎稈片の回収漏れ及び刈取部フレーム外へのこぼれ落ちを抑制でき、穀粒損失を少なく済ませながら収穫作業できる。
しかも、刈取装置に導入される茎稈が切断装置の伝動機構に接触することをカバーによって防止してこの面からも穀粒損失の発生を抑制できるのみならず、このカバーに傾斜ガイド部を設けるだけの簡単な構造で済み、構造面及び経済面で有利に得ることができる。
【0010】
本第2発明は、前記切断装置の上端側を支持するように前記横側枠から走行機体上方向きに延出した支柱を、前記切断装置よりも走行機体後方側に設け、前記支柱と前記切断装置との間の空間を覆う壁板部を前記カバーに設けてある。
【0011】
本第2発明の構成によると、刈取装置に導入される茎稈が切断装置と支柱の間に入り込むことを壁板部によって防止でき、茎稈の切断装置及び支柱に対する絡み付きを回避しやすい。
【0012】
したがって、茎稈の切断装置及び支柱に対する絡み付きに起因した穀粒損失も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの全体を示す右側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す左側面図である。
【図3】コンバインの全体を示す平面図である。
【図4】刈取前処理部の前部を示す左側面図である。
【図5】刈取前処理部の切断装置が位置する部位を示す右側面図である。
【図6】切断装置及び伝動機構を示す側面図である。
【図7】切断装置を示す横断平面図である。
【図8】伝動機構を示す正面図である。
【図9】図5のIX−IX断面矢視図である。
【図10】図5のX−X断面矢視図である。
【図11】内用のカバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す右側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す左側面図である。図3は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施の形態に係るコンバインは、運転座席1aを有した運転部1が装備された走行機体2を備え、走行機体2の機体フレーム3の後部側に走行機体横方向に並べて設けられた脱穀装置4と袋詰め部10とを備え、脱穀装置4の前部にフィーダ21が走行機体横向き軸芯Xまわりに上下揺動自在に連結された刈取前処理部20を備えて構成してある。
【0015】
このコンバインは、菜種などの収穫作業を行う。
つまり、走行機体2は、左右一対のクローラ式の走行装置5,5を備え、運転座席1aの下方に位置するエンジン6からの駆動力によって左右一対の走行装置5,5を駆動して自走する。
【0016】
刈取前処理部20は、フィーダ21が昇降シリンダ22によって軸芯Xまわりに上下に揺動操作されることにより、フィーダ21の前端部に連結された刈取部フレーム23が地面近くに下降した下降作業状態と、刈取部フレーム23が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0017】
刈取前処理部20を下降作業状態にして走行機体2を走行させると、刈取前処理部20は、植立茎稈を刈取り、刈取茎稈の株元から穂先までの全体をフィーダ21によって脱穀装置4に供給する。脱穀装置4は、フィーダ21からの刈取茎稈を脱穀処理し、脱穀粒を揚穀装置7(図3参照)によって穀粒袋詰め部10のホッパー形の穀粒タンク11に供給する。
【0018】
穀粒の袋詰め部10について説明する。
図1,3に示すように、袋詰め部10は、前記穀粒タンク11を備える他、この穀粒タンク11の底部に走行機体前後方向に並べて設けられた二つの穀粒吐出筒12,12、穀粒タンク11の下方に設けた袋支持バー13及び袋受けデッキ14、袋受けデッキ14の走行機体横方向での外側に設けられた作業台15を備えている。
【0019】
籾袋の袋口を穀粒吐出筒12に装着し、籾袋の袋口の両端部を袋支持バー13に装着して、籾袋を袋支持バー13によって吊り下げ支持させるともに袋受けデッキ14によって受け止め支持させることにより、穀粒タンク11に貯留された脱穀粒が穀粒吐出筒12から籾袋に排出され、脱穀粒の袋詰めを行なうことができる。
【0020】
作業台15は、機体フレーム3に上下揺動自在に支持されており、上昇格納姿勢と下降使用姿勢とに切り換えることができる。
【0021】
刈取前処理部20について詳述する。
図1,2,3に示すように、刈取前処理部20の刈取部フレーム23は、フィーダ21の前端部に連結している後枠23aと、この後枠23aの下端部に後端部が連なった底板部23bと、この底板部23bの両横端部に下端部が連なった横側枠23cとを備えて構成してある。左右の横側枠23cの後端部は後枠23aの横端部に連なっている。
【0022】
図1,2,3に示すように、刈取前処理部20は、フィーダ21及び刈取部フレーム23を備える他、刈取部フレーム23の内部の底板部23bの上方に駆動自在に設けられた横送りオーガ24、刈取部フレーム23の底板部23bの前端部に駆動自在に支持されたバリカン形の刈取装置25、刈取部フレーム23の左右の横側枠23cの前端部に連設された分草具26、刈取部フレーム23の後枠23aの上部から走行機体前方向きに上下揺動操作自在に延出した左右一対の支持アーム27の先端部に支持された掻き込み装置28、刈取部フレーム23の左側の横側枠23cの横外側に走行機体上下向きに設けたバリカン形の切断装置40を備えている。
【0023】
左右の分草具26は、刈取装置25よりも走行機体前方側に位置している。左右の分草具26は、植立茎稈の株元側に押し分け作用して、植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに分草する。
【0024】
図4は、刈取前処理部20の前部を示す左側面図である。この図に示すように、掻き込み装置28は、走行機体側面視で正五角形に形成して左右の支持アーム27に回転自在に支持された回転枠29を備え、この回転枠29の各頂部に自転駆動可能に枢支された掻き込みタイン30を備えて構成してある。
【0025】
掻き込み装置28は、回転枠29に刈取入力軸からベルト伝動機構31(図1参照)を介して伝動されて回転枠29が掻き込み方向に回転駆動されることにより、これに同調させて掻き込みタイン30を逆方向に自転駆動することで、掻き込みタイン30を常に下方に向けた状態で刈取装置25の上方側位置で機体前方側から後方側へ円弧状の掻き込み移動軌跡をもって回動作動させ、刈取対象の植立茎稈を回動する掻き込みタイン30によって刈取部フレーム23の内部に掻き込み操作する。
【0026】
図5は、刈取前処理部20の切断装置40が位置する部位を示す右側面図である。図7は、切断装置40を示す横断平面図である。これらの図及び図4に示すように、切断装置40は、刈取部フレーム23における左側の横側枠23cの横外側に走行機体上下向きに設けた切断フレーム41と、この切断フレーム41の前面側に突設されたガイドプレート42に上下摺動自在に支持された左右一対の可動刃43,43とを備えて構成してある。
【0027】
図4,5,6,8に示すように、切断装置40の下端側は、切断フレーム41の下端部と横側枠23cの外面側とにわたって連結された連結部材44を介して横側枠23cに支持され、切断装置40の上端側は、切断フレーム41の上端部に設けた連結部41aに上端部が連結された支柱45に支持されている。支柱45は、刈取部フレーム23の左側の横側枠23cの外面側から走行機体上方向きに延出している。
【0028】
図6,7に示すように、左右の可動刃43は、走行機体上下方向に並ぶ複数枚の可動刃ピース43aと、各可動刃ピース43aに連結ピン43bによって止着されて複数枚の可動刃ピース43aを連結しているナイフバー43cとを備えて構成してある。左右の可動刃43は、ガイドプレート42の複数箇所に連結ボルト46を介して取り付けられたナイフクリップ47を介してガイドプレート42に摺動自在に装着されている。
【0029】
切断装置40は、左右の可動刃43の下端側に屈曲板金を付設して設けた可動刃操作部48を備えおり、各可動刃43の可動刃操作部48に上端部が連結された走行機体上下向きの連動ロッド51を備えた伝動機構50(図6,8参照)を介して刈取装置25の可動刃25aに連動されている。
【0030】
つまり、切断装置40は、刈取装置25の駆動力が伝動機構50によって左右の可動刃駆動部48に伝達されることにより、左右一対の可動刃43,43が走行機体上下方向に相対摺動するように、かつ往復摺動するように駆動され、左側の分草具26からの植立茎稈の分草具26よりも穂先側に位置する部位に左右一対の可動刃43,43を作用させる。これにより、切断装置40は、分草具62からの植立茎稈の分草具62よりも穂先側に位置する部位を切断し、分草具62からの植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに分草するとともに刈取対象と非刈取対象の茎稈の絡み合いをほぐし、分草後の刈取対象の植立茎稈を刈取部フレーム23の内部に流動させ、分草後の非刈取対象の植立茎稈を刈取部フレーム23の外部に流動させる。
【0031】
刈取装置25は、前記可動刃25aを備える他、この可動刃25aが摺動するように構成して刈取部フレーム23の底板部23bの前端部に固定された固定刃を備えて構成してあり、掻き込み装置28によって穂先側が刈取部フレーム23の内部に掻き込み供給された刈取対象の植立茎稈、及び切断装置40によって分草された刈取対象の植立茎稈の株元側に刈り取り作用する。
【0032】
横送りオーガ24は、刈取装置25からの刈取茎稈を刈取部フレーム23の底板部23bに沿わせてフィーダ21の前側に向けて横移送し、フィーダ21の前側に到達した刈取茎稈を横送りオーガ24が一体回転自在に備える掻き送りバー24aによってフィーダ21の搬送ダクトの前端部内に送り込む。
【0033】
フィーダ21は、搬送ダクトに送り込まれた刈取茎稈を搬送ダクトの内部に位置する無端回動形のコンベヤ21a(図2参照)によって脱穀装置4の前端部に揚送して刈取茎稈の株元から穂先までの全体を脱穀装置4の扱室に送り込む。
【0034】
図6は、切断装置40に動力伝達する伝動機構50を示す側面図である。図8は、切断装置40に動力伝達する伝動機構50を示す正面図である。これらの図に示すように、切断装置40に動力伝達する伝動機構50は、前記一対の連動ロッド51,51を備える他、一方の連動ロッド51の下端側が一方の遊端部に連結され、他方の連動ロッド51の下端側が他方の遊端部に連結された天秤型の揺動自在な連動リンク52と、この連動リンク52のボス部52aに噛み合い式のクラッチ53を介して連動する回転伝動軸54と、この回転伝動軸54の後端側から走行機体下方向きに一体回転自在に延出した揺動リンク55と、この揺動リンク55を刈取装置25の可動刃25aに連結している走行機体横向きの連動ロッド56とを備えて構成してある。
【0035】
回転伝動軸54は、横側枠23cの外面側に設けた前後一対の軸支具57,57に回転自在に支持されている。各軸支具57は、横側枠23cの外面側に板金部材を付設して設けた支持台58に支持されている。
【0036】
図6,8に示すように、クラッチ53は、連動リンク52のボス部52aと、回転伝動軸54に一体回転自在に設けた伝動ピン54aとによって構成してあり、連動リンク52のボス部52aにフォーク59aを介して連動しているロッド形の操作具59によって入り状態と切り状態とに切り換え操作されて、切断装置40を駆動状態と停止状態とに切り換える。
【0037】
すなわち、操作具59が摺動操作されると、操作具59による操作力と、回転伝動軸54に装着されたスプリング53a(図6参照)による操作力とによって連動リンク52のボス部52aが回転伝動軸54に対してスライドしてボス部52aの端部に設けてある切り欠きに伝動ピン54aが係脱する。伝動ピン54aがボス部52aの切り欠きに係入すると、ボス部52aと回転伝動軸54とが係合し合って一体回転する。伝動ピン54aがボス部52aの切り欠きから離脱すると、ボス部52aと回転伝動軸54とが係合解除状態になって相対回転する。
【0038】
図4に示すように、刈取部フレーム23は、横側枠23cの外面側に脱着自在に設けた外用のカバー60を備えている。この外用のカバー60は、横側枠23cの横外側に位置する下部カバー部61と、切断装置40の横外側に位置する上部カバー部62とを備えて構成してあり、伝動機構50の刈取部フレーム外方側を下部カバー部61と上部カバー部62とによって覆い、伝動機構50に刈取部フレーム外方側から茎稈が入り込むことを防止する。
【0039】
図5に示すように、刈取部フレーム23は、横側枠23cと支柱45と切断装置40の切断フレーム41とにわたって脱着自在に取り付けた内用のカバー70を備えている。
【0040】
図9は、図5のIX−IX断面矢視図である。図10は、図5のX−X断面矢視図である。図11は、内用のカバー70を示す斜視図である。これらの図、及び図5,8に示すように、内用のカバー70は、伝動機構50の連動ロッド51の刈取部フレーム内方側での横側方に位置する伝動カバー部71と、この伝動カバー部71の後部に連なった状態で横側枠23cの上側に位置する第一の傾斜カバー部72と、この第一の傾斜カバー部72の後部に連なった状態で横側枠23cの上側に位置する第二の傾斜カバー部73と、第一の傾斜カバー部72の上部に連なった状態で支柱45と切断装置40の切断フレーム41との間に位置する壁板部74とを備えて構成してある。
【0041】
図9,10,11に示すように、内用のカバー70は、第一の傾斜カバー部72の下端部の裏面側に設けた前後一対の第一連結部材75,75と、第二の傾斜カバー部73の下端部の裏面側に設けた第二連結部材76と、壁板部74の上部に設けた前後一対の連結孔77,77とを備えており、これらの連結部材75,76及び連結孔77によって横側枠23cと切断装置40の切断フレーム41と支柱45とにわたって取り付けられる。
【0042】
すなわち、前後一対の第一連結部材75,75及び第二連結部材76は、これと横側枠23cの上面側とにわたって連結ボルト78が装着されることによって、内用のカバー70の下端側を横側枠23cに連結する。前後一対の連結孔77,77のうちの前側の連結孔77は、これと切断フレーム41に設けた支持部材79(図10参照)とにわたって連結ネジ79aが装着されることにより、内用のカバー70の上端側を切断フレーム41に連結する。前後一対の連結孔77,77のうちの後側の連結孔77は、これと支柱45に設けた支持部材80(図10参照)とにわたって連結ネジ80aが装着されることにより、内用のカバー70の上端側を支柱45に連結する。
【0043】
図5,9に示すように、内用のカバー70は、伝動機構50の横側枠23cから走行機体上方側に突出した部位としての連動ロッド51の刈取部フレーム内方側を伝動カバー部71によって覆い、茎稈の連動ロッド51に対する接触を防止する。
【0044】
図5に示すように、内用のカバー70は、切断装置40の切断フレーム41と支柱45の間の空間を壁板部74によって覆い、茎稈が切断フレーム41と支柱45の間に入り込んで切断フレーム41や支柱45にから絡みつくことを防止する。
【0045】
図5,8,9に示すように、内用のカバー70は、第一の傾斜カバー部72及び第二の傾斜カバー部73によって傾斜ガイド部81を構成している。この傾斜ガイド部81は、横側枠23cの上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置しており、切断装置40による切断によって稈身から分離して切断装置40から落下した茎稈片を横側枠23cよりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内し、茎稈片が刈取部フレーム23の外部にこぼれ落ちたり、横側枠23cの上端面23d(図8,9参照)に載ったままになって回収されなくなることを防止する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、切断装置40が刈取部フレーム23の左横外側だけに設けられたコンバインの他、切断装置40が刈取部フレーム23の右横外側だけに設けられたコンバインにも、切断装置40が刈取部フレーム23の両横外側に設けられたコンバインにも利用できる。
【符号の説明】
【0047】
20 刈取前処理部
23 刈取部フレーム
23b 刈取部フレームの底板部
23c 刈取部フレームの横側枠
25 刈取装置
28 掻き込み装置
30 掻き込みタイン
40 切断装置
45 支柱
50 伝動機構
51 伝動機構の横側枠より走行機体上方側に突出した部位
70 カバー
74 壁板部
81 傾斜ガイド部
【技術分野】
【0001】
本発明は、底板部及び前記底板部の横端部に連なった横側枠を備えて構成した刈取部フレームと、植立茎稈に刈取り作用するように前記底板部に支持された刈取装置と、前記刈取装置の上方側位置で掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作する掻き込み装置とを有した刈取前処理部が装備されたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したコンバインにおいては、稲、麦などのように条列に沿って植え付けられた整列状態の茎稈の他、菜種やひまわりなどのように条列に沿って植え付けられたものではない不整列状態の茎稈を収穫対象とすることがあり、従来では特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載されたものでは、茎稈の穂先側を掻き込みリール15で掻き込んで、茎稈の株元側を刈取装置12で切断して刈り取るように構成されるとともに、刈取対象の茎稈と非刈取対称の茎稈とを分草具によって分草する。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−211043号公報(段落〔0012〕、図1及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載された従来構造のものでは、刈取対象の茎稈に対しては、掻き込みリールによる掻き込み作用などにより、姿勢矯正して刈取作業を行うようにしている。しかし、未刈側に近い位置の刈取対象の茎稈と未刈側の非刈取り対象の茎稈との間で絡み合いが生じた場合、絡み合いの解きほぐしに伴う脱粒や、茎稈の引きちぎれが発生しやすくなっていた。殊に、菜種など、絡み合いの度合いが強い場合、脱粒や引きちぎれがより発生しやすくなっていた。
つまり、刈取対象の茎稈であっても、不整列のために未刈側に近い箇所に位置していると、掻き込みリールによる作用を受けにくく、未刈側の近くに位置する刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈との絡み合いを分草具による押し分けによってほぐし処理することになる。この場合、絡み合いの強い茎稈にあっては、分草具による押し分けのために強い引っ張り力やこすれが発生して着粒部での脱粒や引きちぎれが発生しやすくなっていた。
【0005】
本発明の目的は、不整列状態や絡み合いが著しい茎稈でも、脱粒や引きちぎれを回避しやすい状態で刈取対象と非刈取対象とに分草することができ、しかも穀粒損失を抑制することができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、底板部及び前記底板部の横端部に連なった横側枠を備えて構成した刈取部フレームと、植立茎稈に刈取り作用するように前記底板部に支持された刈取装置と、前記刈取装置の上方側位置で掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作する掻き込み装置とを有した刈取前処理部が装備されたコンバインにおいて、
植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに切断して分草するように前記刈取部フレームにおける前記横側枠の横外側に走行機体上下向きに設けた切断装置を備え、
前記切断装置に動力伝達する伝動機構における前記刈取部フレームの前記横側枠から走行機体上方側に突出した部位の刈取部フレーム内方側を覆うカバーを設け、
前記刈取部フレームの前記横側枠の上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置して、前記切断装置から落下した茎稈片を前記横側枠よりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内する傾斜ガイド部を、前記カバーに設けてある。
【0007】
本第1発明の構成によると、刈り取ろうとする茎稈が不整列状態にあって掻き込み装置による作用を受けにくい箇所に位置していても、この刈取対象の茎稈、及びこの刈取対象茎稈と絡み合った未刈側の非刈取対象の茎稈の穂先側に切断装置を作用させて、刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈とを切断装置による切断によって分草させることができる。
刈取対象と非刈取対象の茎稈を切断によって分草できることから、茎稈の絡み合いが強くても、茎稈に無理な引っ張り力やこすれを発生しにくくして脱粒及び引きちぎれを回避しやすい。
【0008】
切断による分草を行なわせると、切断された茎稈片が切断装置から落下する場合がある。この場合、落下した茎稈片を切断装置の伝動機構を覆うカバーに設けた傾斜ガイド部による落下案内によって刈取部フレーム内方側に落下させ、落下した茎稈片が刈取部フレームの外部にこぼれ出たり、横側枠の上に載ったままになって回収されなくなったりすることを回避しやすい。
【0009】
したがって、不整列状態にある茎稈の場合でも、菜種など絡み合いが強くて脱粒が発生しやすい茎稈の場合でも、刈取対象の茎稈と非刈取対象の茎稈との分草、及び絡み合いのほぐしに伴う脱粒及び引きちぎれの発生を抑制でき、しかも切断装置から落下した茎稈片の回収漏れ及び刈取部フレーム外へのこぼれ落ちを抑制でき、穀粒損失を少なく済ませながら収穫作業できる。
しかも、刈取装置に導入される茎稈が切断装置の伝動機構に接触することをカバーによって防止してこの面からも穀粒損失の発生を抑制できるのみならず、このカバーに傾斜ガイド部を設けるだけの簡単な構造で済み、構造面及び経済面で有利に得ることができる。
【0010】
本第2発明は、前記切断装置の上端側を支持するように前記横側枠から走行機体上方向きに延出した支柱を、前記切断装置よりも走行機体後方側に設け、前記支柱と前記切断装置との間の空間を覆う壁板部を前記カバーに設けてある。
【0011】
本第2発明の構成によると、刈取装置に導入される茎稈が切断装置と支柱の間に入り込むことを壁板部によって防止でき、茎稈の切断装置及び支柱に対する絡み付きを回避しやすい。
【0012】
したがって、茎稈の切断装置及び支柱に対する絡み付きに起因した穀粒損失も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コンバインの全体を示す右側面図である。
【図2】コンバインの全体を示す左側面図である。
【図3】コンバインの全体を示す平面図である。
【図4】刈取前処理部の前部を示す左側面図である。
【図5】刈取前処理部の切断装置が位置する部位を示す右側面図である。
【図6】切断装置及び伝動機構を示す側面図である。
【図7】切断装置を示す横断平面図である。
【図8】伝動機構を示す正面図である。
【図9】図5のIX−IX断面矢視図である。
【図10】図5のX−X断面矢視図である。
【図11】内用のカバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す右側面図である。図2は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す左側面図である。図3は、本発明の実施の形態に係るコンバインの全体を示す平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施の形態に係るコンバインは、運転座席1aを有した運転部1が装備された走行機体2を備え、走行機体2の機体フレーム3の後部側に走行機体横方向に並べて設けられた脱穀装置4と袋詰め部10とを備え、脱穀装置4の前部にフィーダ21が走行機体横向き軸芯Xまわりに上下揺動自在に連結された刈取前処理部20を備えて構成してある。
【0015】
このコンバインは、菜種などの収穫作業を行う。
つまり、走行機体2は、左右一対のクローラ式の走行装置5,5を備え、運転座席1aの下方に位置するエンジン6からの駆動力によって左右一対の走行装置5,5を駆動して自走する。
【0016】
刈取前処理部20は、フィーダ21が昇降シリンダ22によって軸芯Xまわりに上下に揺動操作されることにより、フィーダ21の前端部に連結された刈取部フレーム23が地面近くに下降した下降作業状態と、刈取部フレーム23が地面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降する。
【0017】
刈取前処理部20を下降作業状態にして走行機体2を走行させると、刈取前処理部20は、植立茎稈を刈取り、刈取茎稈の株元から穂先までの全体をフィーダ21によって脱穀装置4に供給する。脱穀装置4は、フィーダ21からの刈取茎稈を脱穀処理し、脱穀粒を揚穀装置7(図3参照)によって穀粒袋詰め部10のホッパー形の穀粒タンク11に供給する。
【0018】
穀粒の袋詰め部10について説明する。
図1,3に示すように、袋詰め部10は、前記穀粒タンク11を備える他、この穀粒タンク11の底部に走行機体前後方向に並べて設けられた二つの穀粒吐出筒12,12、穀粒タンク11の下方に設けた袋支持バー13及び袋受けデッキ14、袋受けデッキ14の走行機体横方向での外側に設けられた作業台15を備えている。
【0019】
籾袋の袋口を穀粒吐出筒12に装着し、籾袋の袋口の両端部を袋支持バー13に装着して、籾袋を袋支持バー13によって吊り下げ支持させるともに袋受けデッキ14によって受け止め支持させることにより、穀粒タンク11に貯留された脱穀粒が穀粒吐出筒12から籾袋に排出され、脱穀粒の袋詰めを行なうことができる。
【0020】
作業台15は、機体フレーム3に上下揺動自在に支持されており、上昇格納姿勢と下降使用姿勢とに切り換えることができる。
【0021】
刈取前処理部20について詳述する。
図1,2,3に示すように、刈取前処理部20の刈取部フレーム23は、フィーダ21の前端部に連結している後枠23aと、この後枠23aの下端部に後端部が連なった底板部23bと、この底板部23bの両横端部に下端部が連なった横側枠23cとを備えて構成してある。左右の横側枠23cの後端部は後枠23aの横端部に連なっている。
【0022】
図1,2,3に示すように、刈取前処理部20は、フィーダ21及び刈取部フレーム23を備える他、刈取部フレーム23の内部の底板部23bの上方に駆動自在に設けられた横送りオーガ24、刈取部フレーム23の底板部23bの前端部に駆動自在に支持されたバリカン形の刈取装置25、刈取部フレーム23の左右の横側枠23cの前端部に連設された分草具26、刈取部フレーム23の後枠23aの上部から走行機体前方向きに上下揺動操作自在に延出した左右一対の支持アーム27の先端部に支持された掻き込み装置28、刈取部フレーム23の左側の横側枠23cの横外側に走行機体上下向きに設けたバリカン形の切断装置40を備えている。
【0023】
左右の分草具26は、刈取装置25よりも走行機体前方側に位置している。左右の分草具26は、植立茎稈の株元側に押し分け作用して、植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに分草する。
【0024】
図4は、刈取前処理部20の前部を示す左側面図である。この図に示すように、掻き込み装置28は、走行機体側面視で正五角形に形成して左右の支持アーム27に回転自在に支持された回転枠29を備え、この回転枠29の各頂部に自転駆動可能に枢支された掻き込みタイン30を備えて構成してある。
【0025】
掻き込み装置28は、回転枠29に刈取入力軸からベルト伝動機構31(図1参照)を介して伝動されて回転枠29が掻き込み方向に回転駆動されることにより、これに同調させて掻き込みタイン30を逆方向に自転駆動することで、掻き込みタイン30を常に下方に向けた状態で刈取装置25の上方側位置で機体前方側から後方側へ円弧状の掻き込み移動軌跡をもって回動作動させ、刈取対象の植立茎稈を回動する掻き込みタイン30によって刈取部フレーム23の内部に掻き込み操作する。
【0026】
図5は、刈取前処理部20の切断装置40が位置する部位を示す右側面図である。図7は、切断装置40を示す横断平面図である。これらの図及び図4に示すように、切断装置40は、刈取部フレーム23における左側の横側枠23cの横外側に走行機体上下向きに設けた切断フレーム41と、この切断フレーム41の前面側に突設されたガイドプレート42に上下摺動自在に支持された左右一対の可動刃43,43とを備えて構成してある。
【0027】
図4,5,6,8に示すように、切断装置40の下端側は、切断フレーム41の下端部と横側枠23cの外面側とにわたって連結された連結部材44を介して横側枠23cに支持され、切断装置40の上端側は、切断フレーム41の上端部に設けた連結部41aに上端部が連結された支柱45に支持されている。支柱45は、刈取部フレーム23の左側の横側枠23cの外面側から走行機体上方向きに延出している。
【0028】
図6,7に示すように、左右の可動刃43は、走行機体上下方向に並ぶ複数枚の可動刃ピース43aと、各可動刃ピース43aに連結ピン43bによって止着されて複数枚の可動刃ピース43aを連結しているナイフバー43cとを備えて構成してある。左右の可動刃43は、ガイドプレート42の複数箇所に連結ボルト46を介して取り付けられたナイフクリップ47を介してガイドプレート42に摺動自在に装着されている。
【0029】
切断装置40は、左右の可動刃43の下端側に屈曲板金を付設して設けた可動刃操作部48を備えおり、各可動刃43の可動刃操作部48に上端部が連結された走行機体上下向きの連動ロッド51を備えた伝動機構50(図6,8参照)を介して刈取装置25の可動刃25aに連動されている。
【0030】
つまり、切断装置40は、刈取装置25の駆動力が伝動機構50によって左右の可動刃駆動部48に伝達されることにより、左右一対の可動刃43,43が走行機体上下方向に相対摺動するように、かつ往復摺動するように駆動され、左側の分草具26からの植立茎稈の分草具26よりも穂先側に位置する部位に左右一対の可動刃43,43を作用させる。これにより、切断装置40は、分草具62からの植立茎稈の分草具62よりも穂先側に位置する部位を切断し、分草具62からの植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに分草するとともに刈取対象と非刈取対象の茎稈の絡み合いをほぐし、分草後の刈取対象の植立茎稈を刈取部フレーム23の内部に流動させ、分草後の非刈取対象の植立茎稈を刈取部フレーム23の外部に流動させる。
【0031】
刈取装置25は、前記可動刃25aを備える他、この可動刃25aが摺動するように構成して刈取部フレーム23の底板部23bの前端部に固定された固定刃を備えて構成してあり、掻き込み装置28によって穂先側が刈取部フレーム23の内部に掻き込み供給された刈取対象の植立茎稈、及び切断装置40によって分草された刈取対象の植立茎稈の株元側に刈り取り作用する。
【0032】
横送りオーガ24は、刈取装置25からの刈取茎稈を刈取部フレーム23の底板部23bに沿わせてフィーダ21の前側に向けて横移送し、フィーダ21の前側に到達した刈取茎稈を横送りオーガ24が一体回転自在に備える掻き送りバー24aによってフィーダ21の搬送ダクトの前端部内に送り込む。
【0033】
フィーダ21は、搬送ダクトに送り込まれた刈取茎稈を搬送ダクトの内部に位置する無端回動形のコンベヤ21a(図2参照)によって脱穀装置4の前端部に揚送して刈取茎稈の株元から穂先までの全体を脱穀装置4の扱室に送り込む。
【0034】
図6は、切断装置40に動力伝達する伝動機構50を示す側面図である。図8は、切断装置40に動力伝達する伝動機構50を示す正面図である。これらの図に示すように、切断装置40に動力伝達する伝動機構50は、前記一対の連動ロッド51,51を備える他、一方の連動ロッド51の下端側が一方の遊端部に連結され、他方の連動ロッド51の下端側が他方の遊端部に連結された天秤型の揺動自在な連動リンク52と、この連動リンク52のボス部52aに噛み合い式のクラッチ53を介して連動する回転伝動軸54と、この回転伝動軸54の後端側から走行機体下方向きに一体回転自在に延出した揺動リンク55と、この揺動リンク55を刈取装置25の可動刃25aに連結している走行機体横向きの連動ロッド56とを備えて構成してある。
【0035】
回転伝動軸54は、横側枠23cの外面側に設けた前後一対の軸支具57,57に回転自在に支持されている。各軸支具57は、横側枠23cの外面側に板金部材を付設して設けた支持台58に支持されている。
【0036】
図6,8に示すように、クラッチ53は、連動リンク52のボス部52aと、回転伝動軸54に一体回転自在に設けた伝動ピン54aとによって構成してあり、連動リンク52のボス部52aにフォーク59aを介して連動しているロッド形の操作具59によって入り状態と切り状態とに切り換え操作されて、切断装置40を駆動状態と停止状態とに切り換える。
【0037】
すなわち、操作具59が摺動操作されると、操作具59による操作力と、回転伝動軸54に装着されたスプリング53a(図6参照)による操作力とによって連動リンク52のボス部52aが回転伝動軸54に対してスライドしてボス部52aの端部に設けてある切り欠きに伝動ピン54aが係脱する。伝動ピン54aがボス部52aの切り欠きに係入すると、ボス部52aと回転伝動軸54とが係合し合って一体回転する。伝動ピン54aがボス部52aの切り欠きから離脱すると、ボス部52aと回転伝動軸54とが係合解除状態になって相対回転する。
【0038】
図4に示すように、刈取部フレーム23は、横側枠23cの外面側に脱着自在に設けた外用のカバー60を備えている。この外用のカバー60は、横側枠23cの横外側に位置する下部カバー部61と、切断装置40の横外側に位置する上部カバー部62とを備えて構成してあり、伝動機構50の刈取部フレーム外方側を下部カバー部61と上部カバー部62とによって覆い、伝動機構50に刈取部フレーム外方側から茎稈が入り込むことを防止する。
【0039】
図5に示すように、刈取部フレーム23は、横側枠23cと支柱45と切断装置40の切断フレーム41とにわたって脱着自在に取り付けた内用のカバー70を備えている。
【0040】
図9は、図5のIX−IX断面矢視図である。図10は、図5のX−X断面矢視図である。図11は、内用のカバー70を示す斜視図である。これらの図、及び図5,8に示すように、内用のカバー70は、伝動機構50の連動ロッド51の刈取部フレーム内方側での横側方に位置する伝動カバー部71と、この伝動カバー部71の後部に連なった状態で横側枠23cの上側に位置する第一の傾斜カバー部72と、この第一の傾斜カバー部72の後部に連なった状態で横側枠23cの上側に位置する第二の傾斜カバー部73と、第一の傾斜カバー部72の上部に連なった状態で支柱45と切断装置40の切断フレーム41との間に位置する壁板部74とを備えて構成してある。
【0041】
図9,10,11に示すように、内用のカバー70は、第一の傾斜カバー部72の下端部の裏面側に設けた前後一対の第一連結部材75,75と、第二の傾斜カバー部73の下端部の裏面側に設けた第二連結部材76と、壁板部74の上部に設けた前後一対の連結孔77,77とを備えており、これらの連結部材75,76及び連結孔77によって横側枠23cと切断装置40の切断フレーム41と支柱45とにわたって取り付けられる。
【0042】
すなわち、前後一対の第一連結部材75,75及び第二連結部材76は、これと横側枠23cの上面側とにわたって連結ボルト78が装着されることによって、内用のカバー70の下端側を横側枠23cに連結する。前後一対の連結孔77,77のうちの前側の連結孔77は、これと切断フレーム41に設けた支持部材79(図10参照)とにわたって連結ネジ79aが装着されることにより、内用のカバー70の上端側を切断フレーム41に連結する。前後一対の連結孔77,77のうちの後側の連結孔77は、これと支柱45に設けた支持部材80(図10参照)とにわたって連結ネジ80aが装着されることにより、内用のカバー70の上端側を支柱45に連結する。
【0043】
図5,9に示すように、内用のカバー70は、伝動機構50の横側枠23cから走行機体上方側に突出した部位としての連動ロッド51の刈取部フレーム内方側を伝動カバー部71によって覆い、茎稈の連動ロッド51に対する接触を防止する。
【0044】
図5に示すように、内用のカバー70は、切断装置40の切断フレーム41と支柱45の間の空間を壁板部74によって覆い、茎稈が切断フレーム41と支柱45の間に入り込んで切断フレーム41や支柱45にから絡みつくことを防止する。
【0045】
図5,8,9に示すように、内用のカバー70は、第一の傾斜カバー部72及び第二の傾斜カバー部73によって傾斜ガイド部81を構成している。この傾斜ガイド部81は、横側枠23cの上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置しており、切断装置40による切断によって稈身から分離して切断装置40から落下した茎稈片を横側枠23cよりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内し、茎稈片が刈取部フレーム23の外部にこぼれ落ちたり、横側枠23cの上端面23d(図8,9参照)に載ったままになって回収されなくなることを防止する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、切断装置40が刈取部フレーム23の左横外側だけに設けられたコンバインの他、切断装置40が刈取部フレーム23の右横外側だけに設けられたコンバインにも、切断装置40が刈取部フレーム23の両横外側に設けられたコンバインにも利用できる。
【符号の説明】
【0047】
20 刈取前処理部
23 刈取部フレーム
23b 刈取部フレームの底板部
23c 刈取部フレームの横側枠
25 刈取装置
28 掻き込み装置
30 掻き込みタイン
40 切断装置
45 支柱
50 伝動機構
51 伝動機構の横側枠より走行機体上方側に突出した部位
70 カバー
74 壁板部
81 傾斜ガイド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部及び前記底板部の横端部に連なった横側枠を備えて構成した刈取部フレームと、植立茎稈に刈取り作用するように前記底板部に支持された刈取装置と、前記刈取装置の上方側位置で掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作する掻き込み装置とを有した刈取前処理部が装備されたコンバインであって、
植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに切断して分草するように前記刈取部フレームにおける前記横側枠の横外側に走行機体上下向きに設けた切断装置を備え、
前記切断装置に動力伝達する伝動機構における前記刈取部フレームの前記横側枠から走行機体上方側に突出した部位の刈取部フレーム内方側を覆うカバーを設け、
前記刈取部フレームの前記横側枠の上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置して、前記切断装置から落下した茎稈片を前記横側枠よりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内する傾斜ガイド部を、前記カバーに設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記切断装置の上端側を支持するように前記横側枠から走行機体上方向きに延出した支柱を、前記切断装置よりも走行機体後方側に設け、
前記支柱と前記切断装置との間の空間を覆う壁板部を前記カバーに設けてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項1】
底板部及び前記底板部の横端部に連なった横側枠を備えて構成した刈取部フレームと、植立茎稈に刈取り作用するように前記底板部に支持された刈取装置と、前記刈取装置の上方側位置で掻き込み用タインを回動させて刈取対象の植立茎稈を掻き込み操作する掻き込み装置とを有した刈取前処理部が装備されたコンバインであって、
植立茎稈を刈取対象の植立茎稈と非刈取対象の植立茎稈とに切断して分草するように前記刈取部フレームにおける前記横側枠の横外側に走行機体上下向きに設けた切断装置を備え、
前記切断装置に動力伝達する伝動機構における前記刈取部フレームの前記横側枠から走行機体上方側に突出した部位の刈取部フレーム内方側を覆うカバーを設け、
前記刈取部フレームの前記横側枠の上方に走行機体下方側ほど刈取部フレーム内方側に位置する傾斜姿勢で位置して、前記切断装置から落下した茎稈片を前記横側枠よりも刈取部フレーム内方側に落下するように案内する傾斜ガイド部を、前記カバーに設けてあるコンバイン。
【請求項2】
前記切断装置の上端側を支持するように前記横側枠から走行機体上方向きに延出した支柱を、前記切断装置よりも走行機体後方側に設け、
前記支柱と前記切断装置との間の空間を覆う壁板部を前記カバーに設けてある請求項1記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−246505(P2010−246505A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102174(P2009−102174)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(509112648)久保田農業機械(蘇州)有限公司 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(509112648)久保田農業機械(蘇州)有限公司 (3)
【Fターム(参考)】
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