説明

コンバイン

【課題】横断流ファンの吸引風速を簡単な構成で上昇させ、選別部の風選による選別効率を向上させたコンバインを提供する。
【解決手段】選別部130が、選別部130の前部に配置した、流穀板135上からチャフシーブ138およびグレンシーブ137を通過して落下する穀粒を含んだ混合物を、一番物および二番物に風選する選別風を供給するための唐箕132と、この唐箕132の後方であって、選別部130の後部に配置し、上方および下方後部をファンケーシング201,202で覆設するとともに、下方後部のファンケーシング202前方を舌部203で覆設した、唐箕132からの選別風を吸引するための横断流ファン140とを備え、舌部203は、横断流ファン140の全幅にわたって形成するとともに、舌部203と、横断流ファン140の外周との隙間を拡張させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選別部の前部に配置した、流穀板上からチャフシーブおよびグレンシーブを通過して落下する穀粒を含んだ混合物を、一番物および二番物に風選する選別風を供給するための唐箕と、この唐箕の後方であって、選別部の後部に配置し、上方および下方後部をファンケーシングで覆設するとともに、下方後部のファンケーシング前方を舌部で覆設した、唐箕からの選別風を吸引するための横断流ファンとを備えるコンバインに関し、より詳細には、舌部は、横断流ファンの全幅にわたって形成するとともに、舌部と、横断流ファンの外周との隙間を拡張させるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインには、機体前端部の刈取部で刈り取った穀稈が脱穀部で脱穀され、該脱穀部の下方に配置される選別部の流穀板からチャフシーブおよびグレンシーブに落下した穀粒や未熟穀粒、藁屑などの混合物を唐箕の風力により風選した際、未熟穀粒や藁屑、風選時に発生した塵芥などは、唐箕の後方であって、選別部の後部に配置した横断流ファンにより吸引し、機外へ排出させる(例えば、特許文献1)ものがある。
また、排塵ファン(横断流ファン)下方に、選別風による混合物の排塵口からの排出を防止するための遮蔽部材を備え、この遮蔽部材の上端部を回動支点として、唐箕からの選別風の風量に応じて遮蔽部材の下部を機体前後方向に回動させることで、例えば、唐箕の風量が減少すると、遮蔽部材を閉じて、混合物中の穀粒を遮蔽部材に衝突させて揺動選別装置に導き、穀粒の3番ロスを防ぐもの(例えば、特許文献2)もある。
【0003】
【特許文献1】特開2006−345802号公報
【特許文献2】特開2008−17708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のようなコンバインでは、横断流ファンの上方および下方後部をファンケーシングで覆設するとともに、下方後部のファンケーシング前方には、舌部を横断流ファンを覆うようにして固設しているため、この横断流ファンが高速回転で稼動しているにも係らず、横断流ファンによって吸引される選別風の吸引風速が低く、選別不良や粉塵滞留量の増大など選別部における選別効率が悪いという問題があった。
また、特許文献2のようなコンバインの横断流ファンでは、遮蔽部材を回動可能としているものの、上記のような舌部を備えておらず、この遮蔽部材は、特許文献1における横断流ファンの下方後部のファンケーシングに相当し、遮蔽部材を回動させても横断流ファンによる選別風の吸引風速は上昇せず、上記同様の問題が生じていた。
さらには、横断流ファンによる吸引気流が直線状に形成された舌部に接触し、舌部から横断流ファンに向って反射して吸引風路を塞ぎ、円滑な気流の流れを妨げて、選別風の吸引風速や排出効率を低下させるなどの問題もあった。
そこで、この発明の目的は、横断流ファンの吸引風速を簡単な構成で上昇させ、選別部の風選による選別効率を向上させたコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1に記載の発明は、穀稈を刈り取る刈取部と、該刈取部で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を選別する選別部とを備え、前記選別部は、該選別部の前部に配置した、流穀板上からチャフシーブおよびグレンシーブを通過して落下する穀粒を含んだ混合物を、一番物および二番物に風選する選別風を供給するための唐箕と、該唐箕の後方であって、前記選別部の後部に配置し、上方および下方後部をファンケーシングで覆設するとともに、前記下方後部のファンケーシング前方を舌部で覆設した、前記唐箕からの選別風を吸引するための横断流ファンとを備えるコンバインにおいて、前記舌部は、前記横断流ファンの全幅にわたって形成するとともに、前記舌部と、前記横断流ファンの外周との隙間を拡張させることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記舌部は、上方になだらかな凸状の円弧形状を有することを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のコンバインにおいて、前記舌部は、該舌部の前部を伸縮自在に備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、穀稈を刈り取る刈取部と、この刈取部で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部と、この脱穀部で脱穀した穀粒を選別する選別部とを備え、選別部は、この選別部の前部に配置した、流穀板上からチャフシーブおよびグレンシーブを通過して落下する穀粒を含んだ混合物を、一番物および二番物に風選する選別風を供給するための唐箕と、この唐箕の後方であって、選別部の後部に配置し、上方および下方後部をファンケーシングで覆設するとともに、下方後部のファンケーシング前方を舌部で覆設した、唐箕からの選別風を吸引するための横断流ファンとを備えるコンバインにおいて、舌部は、横断流ファンの全幅にわたって形成するとともに、舌部と、横断流ファンの外周との隙間を拡張させるので、この舌部を横断流ファンに対して開いたときに、横断流ファンの吸引風速を上昇させることができ、かつ舌部を横断流ファンの全幅にわたり回動させるため、より横断流ファンの吸引風速を上昇させることができる。その結果、横断流ファンの高速回転に応じた速い吸引風速により、選別部での混合物の選別量が多い場合に、効率的に風選別できるとともに、発生する粉塵などを確実に吸引除去することができる。従って、横断流ファンの吸引風速を簡単な構成で上昇させ、選別部の風選による選別効率を向上させたコンバインを提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、舌部は、上方になだらかな凸状の円弧形状を有するので、横断流ファンによって吸引される気流が、舌部の円弧に沿って、横断流ファンと、舌部との間を円滑に流れ、選別風の吸引風速や排出効率を向上させることができる。従って、横断流ファンの吸引風速を簡単な構成で上昇させ、選別部の風選による選別効率を向上させたコンバインを提供することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、舌部は、この舌部の前部を伸縮自在に備えるので、舌部を開いて吸引風速を上昇させた際、ストローラック上から上方に飛散した三番物を、延伸させた舌部に衝突させて、三番物の機外排出による回収ロスを防止することができる。従って、選別部の風選による選別効率を向上させたコンバインを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面を参照しつつ本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1はこの発明の一例としての自脱型コンバインの右側面図、図2は図1のコンバインの左側面構成図、図3は穀稈搬送装置の側面図、図4は脱穀部および選別部の左側面模式図、図5はエンジンから排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図である。
【0012】
まず、符号1は左右一対の走行クローラ2を装設する左右一対のトラックフレーム、符号3は前記左右トラックフレーム1に架設する機台、符号4はフィードチェーン49を左側に張架し扱胴6及び処理胴を内蔵している脱穀機である脱穀部、符号7は引起機構8及び刈刃9及び収穫物搬送手段10などを備える刈取部、符号13は排藁チェーン終端を臨ませる排藁処理部、符号15は脱穀部4からの籾を揚穀筒を介して搬入するグレンタンク、符号17はグレンタンク15の籾を機外に搬出する排出オーガ、符号19は運転操作ハンドル、符号20は運転席、符号21は運転席20下方に設けるエンジンであり、これらにより自脱型のコンバイン30が連続的に稲などの農作物を刈取って脱穀するように構成されている。
【0013】
機台3の後部には、グレンタンク15内の籾を外部へ排出するための排出オーガ17の縦オーガ23が立設されており、縦オーガ23を中心としてグレンタンク15が左右回動可能に設けられて、グレンタンク15の前側を外方に回転させて開放可能に構成されている。さらに、機台3後部には、脱穀部4に連続して穀稈搬送装置40が内設されている。
【0014】
刈り取られた穀稈は、収穫物搬送手段10にて後部へ搬送され、収穫物搬送手段10の上端から株元側が穀稈搬送装置のフィードチェーン49に受け継がれ、扱胴供給始端部を介して脱穀部4および選別部130からなる脱穀装置内に穀稈が搬送される。そして、フィードチェーン49後端には排藁搬送チェーンを備える排藁搬送装置50が配設され、排藁搬送チェーン後部下方にはカッター,結束機等からなる排藁処理部が形成され、排藁を切断して藁片にした後、拡散しながら圃場に均一放出し、或いは切断せずに放出するようにしている。
【0015】
脱穀部4は、コンバイン30の進行方向左側に配置され、脱穀部4の右側には選別後の精粒を貯留するグレンタンク15が配設されている。そして、グレンタンク15の前方には運転席20が配設されている。つまり、運転席20は機体の進行方向右前方に配置されている。一方、グレンタンク15の後方には排出オーガ17の縦オーガ23が立設され、縦オーガ23を中心にして排出オーガ17及びグレンタンク15が側方へ回動可能とし、グレンタンク15を側方へ回動することにより機体内側に配置した駆動系や油圧系のメンテナンスを容易にしている。
【0016】
そして、グレンタンク15の底部には排出コンベアが前後方向に配設され、排出コンベア16の後部が縦オーガ23の下部に連通されるとともに、排出コンベア16後部から排出オーガ17に動力が伝達されて、排出オーガ17先端よりトラック等へグレンタンク15内の穀粒を排出できるようにしている。更に、脱穀部4の下方には、選別部130が配設され、脱穀部4から流下する穀粒や藁屑等から穀粒を選別し、精粒をグレンタンク15に搬送したり、藁屑等を機外に排出したりグレンタンク15に搬送するようにしている。
【0017】
図3には、穀稈搬送装置40付近の左側面図を示す。穀稈搬送装置40は、上述の脱穀部4において、刈り取った穀稈の一端(株元側)を挟扼しながら搬送するためのものであり、刈取部7で刈り取った穀稈を排藁搬送装置の排藁搬送チェーン51まで搬送するフィードチェーン49と、フィードチェーン49上方に配設され、搬送されている穀稈を挟扼する挟扼杆41と、挟扼杆41を本機側に対して弾性支持する複数の弾性支持体42等とから構成されている。
【0018】
この穀稈搬送装置40においては、対向配置される挟扼杆41とフィードチェーン49とによって、刈取部7で刈り取った穀稈の株元側を挟扼し、扱室内の扱胴6によって脱穀する構成となっており、この挟扼杆41とフィードチェーン49とが対向した部分を搬送経路としている。そして、脱穀部4にて脱粒された排藁は、フィードチェーン49の後端部(下流側端部)において、排藁搬送装置の排藁搬送チェーン51へと受け継がれ、この排藁搬送チェーン51によって排藁処理部13へと搬送される。
【0019】
挟扼杆41は、扱室カバー4aの機体進行方向左側端部においてステー43等によって固設される支持杆44と、支持杆44に複数の弾性支持体42を介して弾性支持されて設けられている。この挟扼杆41は、フィードチェーン49に沿うように左右平行状に一対の板状部材が配置された形状となっており、フィードチェーン49による搬送方向断面視逆U字状に形成されている。
【0020】
支持杆44は、中空の柱状部材であり、扱室カバー4a内左側において前後方向に長く、挟扼杆41と並列的に配置されるように形成されている。そして、この支持杆44の側面には一定間隔ごとに弾性支持体42がその上部が支持されるとともに配設され、これら弾性支持体42の下部に挟扼杆41が弾性支持されている。この弾性支持体42の下部は、挟扼杆41に連結ピンで枢支されており、弾性支持体42の上部は支持杆44よりも上方に延出されている。
【0021】
次に、脱穀部4について説明する。図4に示すように、脱穀部4に形成された扱室121には、機体の前後方向に軸架された略円柱形状の扱胴6が設けられ、扱胴6の外周面には複数の扱歯122aが植設されている。そして、扱胴6の下部周辺を覆うように半円形状の受網123が着脱可能に周設されている。一方、フィードチェーン49により、穀桿の株元側が拘束されつつ、穀桿の先端側が扱胴6の下方に挿入されて穀稈が機体後方に搬送される。このとき、扱胴6の回転により脱粒が行われ、受網123から穀粒や藁屑等が漏下するようにしている。
【0022】
続いて、選別部130について説明する。選別部130は、揺動選別装置131による揺動選別と唐箕132による風選別とが行われ、一番物と二番物と藁屑等に分別される。
【0023】
揺動選別装置131は、機枠133内に収納される。揺動選別装置131の前端部は扱胴6の前端部の下方まで延出され、揺動選別装置131前下部には図示せぬ揺動軸が設けられるとともに、後部には揺動駆動機構134が設けられ、揺動駆動機構134によって揺動選別装置131が機枠133に対して揺動するように構成されている。なお、揺動駆動機構134の後下方には燃料タンク(不図示)が配置されている。
【0024】
揺動選別装置131の前部には、流穀板135が設けられるとともに、流穀板135の後下方に搬送板136が設けられる。これら流穀板135および搬送板136は、板状の部材を波形に成形したものであり、受網123を通過した処理物(穀粒および藁屑等との混合物)は、流穀板135および搬送板136上に落下し、揺動選別装置131の揺動により機体後方に搬送される。そして、搬送板136後部には、第二選別部である網状のグレンシーブ137が連設されるとともに、グレンシーブ137と搬送板136の上方、かつ流穀板135の後方には、第一選別部であるチャフシーブ138が被装されている。さらに、チャフシーブ138の後方には、ストローラック139が配設される。
【0025】
チャフシーブ138は、複数のチャフフィンから構成され、投入される処理物の量に応じてチャフフィンの開度を調節することを可能としている。すなわち、チャフフィンの上下一側端部が揺動選別装置131に枢支されて、チャフシーブ138左右両側に設けられた揺動板に枢結され、また、他側端部がチャフシーブ138左右両側に設けられた摺動板に枢結されている。この摺動板は、揺動選別装置131と一体的に揺動されるとともに、摺動板には調節レバーが枢結されており、この調節レバーに連結されたワイヤの弛緩又は牽引により摺動板が前後に摺動される。なお、調節レバーは、ワイヤと反対側に設けられたバネによって各チャフフィンの傾斜角を小(寝かせる)とする方向に付勢されている。
【0026】
そして、摺動板の摺動によりチャフフィンの角度が変更され、チャフフィンの傾斜角を大(立てる)とさせるとき、チャフシーブ138の開度を大として穀粒の漏下量を増大させ、各チャフフィンの傾斜角を小(寝かせる)とさせるときチャフシーブ138の開度を小として穀粒の漏下量を減少させるように構成している。
【0027】
こうして、穀粒および細かい藁屑はチャフシーブ138を通過して下方に落下し、チャフシーブ138の開口よりも大きい藁屑等は後方に搬送される。このとき、チャフシーブ138とグレンシーブ137との間には唐箕132により選別部130の前方から後方への気流が発生しており、細かい藁屑の一部は後方に吹き飛ばされて穀粒と分離される。
【0028】
また、揺動選別装置131の前流穀板135後部下方かつ後流穀板136前部下方に唐箕132が配置され、チャフシーブ138やグレンシーブ137に選別風を送風するようにしている。
【0029】
そして、揺動選別装置131の後端部近傍には吸引ファン140が全幅に横設され、唐箕132から供給される選別風の流れに乗ってきた塵埃や脱穀時に発生する塵埃等を、横断流ファン140により吸引して機外へと排出するようにしている。なお、後述するが、本願発明の要部である横断流ファン140は、ファンケーシング201,202および舌部203によって覆われている。
【0030】
選別部130内に投入され、前流穀板135上に漏下された穀粒、枝梗付着粒、未熟穀粒および細かい藁屑等の混合物は、チャフシーブ138上に漏下される過程で唐箕132により発生する選別部130の前方から後方への気流により、細かい藁屑の一部が後方へ吹き飛ばされる。そして、チャフシーブ138上に漏下した穀粒、枝梗付着粒、未熟穀粒および細かい藁屑等の混合物は、揺動選別装置131の揺動により、後方に搬送される、このとき、穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑等はチャフシーブ138の開口部より下方に落下し、大きい藁屑はチャフシーブ138後方まで搬送され、ストローラック139を経て機外に排出される。
【0031】
チャフシーブ138の開口部より下方に落下した穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑等は、後流穀板136およびグレンシーブ137上に漏下される。このときにも唐箕132からの選別風により、細かい藁屑の一部は後方に吹き飛ばされて分離される。
【0032】
グレンシーブ137上に漏下された穀粒、未熟穀粒、枝梗付着粒および細かい藁屑等のうち、穀粒、未熟穀粒、細かい藁屑等は、グレンシーブ137を通過して下方に落下する。このとき、重量が大きい穀粒(一番)は一番回収部146(流穀板145の後方に設けられた選別部130底面の窪みであり、一番コンベア141が収容されている)に回収され、一番コンベア141から揚穀コンベア144を経て、グレンタンク15に搬送される。
【0033】
一方、重量が小さい未熟穀粒や細かい藁屑の一部や穂切り粒や穀粒等が混じった未処理粒は、唐箕132からの選別風により後方に吹き飛ばされ、二番回収部147(一番回収部146の後方に設けられた選別部130底面の窪みであり、二番コンベア142が収容されている)に回収され、二番コンベア142から二番還元コンベア148を経て、前流穀板135上(またはチャフシーブ138上)に再投入される。
【0034】
ここで、エンジン21からグレンタンク15および排出オーガ17への駆動力伝達経路について、図5を用いて説明する。エンジン21の前方出力軸21aは、走行クローラ2を駆動するための走行用ミッションケースの入力軸と連結され、走行クローラ2へ駆動力を伝達する。一方、後方出力軸21bには、脱穀部4や選別部130へ駆動力を伝達するためのプーリ62と、グレンタンク15および排出オーガ17へ駆動力を伝達するためのプーリ63とが嵌設されている。
【0035】
プーリ62は、カウンターケース108から突出する入力軸108aに固設された入力プーリ109にVベルト110を介して連結され、カウンターケース108の入力軸108aにエンジン21の駆動力の一部が伝達されるようにしている。こうして、エンジン21からの動力をカウンターケース108を介して各処理系に伝達し、扱胴6や唐箕132、一番コンベア141、フィードチェーン49、刈取部7の搬送装置や刈刃9等を駆動可能としている。カウンターケース108は各処理系へ適正速度を分配可能とするものであり、エンジン21の左側方、且つ脱穀部4の前方に配設されている。
【0036】
また、グレンタンク15の底部前面はエンジン21の略後方に位置し、グレンタンク15の底部前壁面には駆動部となる駆動ケース64が配設されている。そして、駆動ケース入力軸65が駆動ケース64から機体前方へ突出し、駆動ケース入力軸65の前端にはプーリ66が嵌設される。
【0037】
後方出力軸21b後端に嵌設されたプーリ63と、駆動ケース入力軸65前端に嵌設されたプーリ66とにVベルト67が巻回され、エンジン21の駆動力の一部が駆動ケース64の入力軸65に伝達される。
【0038】
また、プーリ63とプーリ66の間には、Vベルト67のテンションプーリを兼ねるオーガクラッチ68が設けられ、駆動力を駆動ケース64より下流側へ伝達・遮断可能に構成される。
【0039】
駆動ケース64内には、互いに噛合する平歯車69a・69bが収納されており、平歯車69aは駆動ケース64に軸支された前記入力軸65の後端に外嵌固定され、平歯車69bは排出コンベア16の前端に嵌設された回転軸であるコンベア駆動軸70に外嵌固定される。
【0040】
排出コンベア16の後端にはベベルギア71が嵌設され、縦オーガ23内のスクリュー式の縦送りコンベア72下端に嵌設されたベベルギア73と噛合している。一方、縦送りコンベア72上端にはベベルギア74が嵌設され、ベベルギア74と噛合するベベルギア75、チェーンやスプロケットを内設する中間ケース76、続いてベベルギア77・78を経て排出オーガ17内のスクリュー式の横送りコンベア79を回転駆動する。
【0041】
このように構成することにより、グレンタンク13に貯溜された穀物は排出コンベア16により後方に搬送され、グレンタンク13後方に位置する縦オーガ15aを経て、穀粒排出オーガ15先端から強制的に排出される。
【0042】
次に、開閉可能な舌部を備える横断流ファンの具体的構成を説明する。図6は後方から見た横断流ファンの斜視図、図7は横断流ファンおよび横断流ファン周辺の左側面模式図、図8は舌部を拡大して示した横断流ファン下方の左側面模式図、図9は舌部の回動を示す横断流ファン下方の左側面模式図である。
【0043】
まず、横断流ファン140は、図4および図6に示すように、選別部130の後端部であって、機体後部の選別屑排出口200内側に配設される。この横断流ファン140は、左右方向に横長の形状を有しており、回転軸204を左右側壁205に軸装させて設置される。そして、横断流ファン140の外周面には、左右方向に複数の起風板206が略平行に備えられる。
【0044】
また、図7にも示すように、横断流ファン140の上方には、横断流ファン140を上方から覆うようにして上ファンケーシング201と、横断流ファン140の後部下方にも、横断流ファン140を下方から覆うようにして下ファンケーシング202とが、それぞれ左右端部を左右側壁205に取付けて固設されている。なお、下ファンケーシング202は遮蔽板を兼ねており、選別部130で選別風により後方の横断流ファン140下方まで飛散した穀粒を含む混合物を、下ファンケーシング202に衝突させて、下方の揺動選別装置131内に導くものである。
【0045】
次に、下ファンケーシング202の前方には、横断流ファン140の左右幅に略等しい幅を有する舌部203が、横断流ファン140を下方から覆うようにして、下ファンケーシング202に連設して備えられる。この舌部203は、上方になだらかな凸状の円弧形状を有するとともに、その前端部が横断流ファン140の中央近傍に位置するような前後長さを適宜有するものである。
【0046】
さらに、この舌部203は、舌部203の後端部近傍であり、下ファンケーシング202との連結部近傍であって、流穀板135の後方、かつ流穀板135の延長線上近傍に回動支点軸207を備え、この回動支点軸207を左右側壁205に軸装させて、舌部203の前部が機体上下方向に回動可能とされる。なお、回動支点軸207の位置は図示の位置に限定されない。
【0047】
また、例えば、左側壁205外側面(右側壁205外側面もしくは左右双方でもよい)にモータMを設置するとともに、このモータMの図示しないモータ軸を舌部203の回動支点軸207に連結する。そして、モータMは、運転席20などの図示しない舌部回動スイッチなどに連結させた構成とされる。なお、前記舌部回動スイッチは、機体側部の脱穀部4近傍などに設けてもよく、その設置位置は限定されない。
【0048】
ここで、刈取部7で刈取った穀稈が、脱穀部4に搬送され、脱穀部4で脱穀された穀粒を含む混合物が、選別部130に落下した際、従来では、唐箕132の図示しないシャッタを全開にしても、舌部203が固設されていたため、横断流ファン140を高速回転させているにも係らず、横断流ファン140における唐箕132による選別風の吸引力に限界があり、稈屑や粉塵などを吸引除去できないなど、選別部130の選別効率が悪くなっていた。そこで、このような場合、横断流ファン140の吸引風速を上昇させるため、例えば、オペレータは、前記舌部回動スイッチを開側に操作する。
【0049】
この舌部回動スイッチによりモータMが駆動し、前記モータ軸を介して舌部203の回動支点軸207が、図8〜9に示すように、左側面視反時計回りに回動する。その結果、舌部203が回動支点軸207を中心として、舌部203の前端部が、機体下方向に下降し、舌部203が位置aから位置bまで回動することで、舌部203が開けられる。なお、位置a,b間の角度は適宜設定することができる。
【0050】
そして、舌部203の回動支点軸207が、舌部203の後端部近傍に有することにより、横断流ファン140の底部と、舌部203との間の隙間面積Aが拡張されることで、選別風の気流の変化と併せて、横断流ファン140の吸引風速が大幅に上昇するため、選別部130に有する混合物から、稈屑や粉塵などを確実に吸引除去することができ、選別部130の選別効率を向上させることができる。
【0051】
また、舌部203の回動支点軸207が、流穀板135の後方であって、この流穀板135の延長線上近傍に有するため、流穀板135上から流穀板135の下方に落下して風選別された稈屑や粉塵などを、横断流ファン140の上昇させた吸引風速による強い吸引力で効率的に吸引することができる。さらには、舌部203が横断流ファン140の全幅にわたって回動可能に形成されているため、横断流ファン140の吸引風速をより一層上昇させることができる。
【0052】
さらに、舌部203が、上方になだらかな凸状の円弧形状を有するので、横断流ファン140によって横断流ファン140と、舌部203との間に吸引された選別風の一部は、舌部203の円弧形状に沿って流れ、横断流ファン140後方の機外に排出される。このため、従来のように、直線形状を有していた舌部203に、選別風が衝突し、横断流ファン140に向けて反射することによって選別風が吸引風路を塞ぎ、吸引風速を低下させたり、吸引を妨害することがない。特に上述したような舌部203を開いて吸引風速を上昇させた際(舌部203を閉じた状態でも同様)、舌部203に勢いよく衝突した選別風の多くは、舌部203に沿って流れて、機外に排出されることから、吸引風速を向上および維持することができる。
【0053】
なお、選別部130内の混合物量(穀粒量)が少なく、選別して得たい穀粒が横断流ファン140により吸引されて機外に除去されてしまう恐れがある場合などは、オペレータは、前記舌部回動スイッチを閉側に操作すると、モータMが駆動し、前記モータ軸を介して舌部203の回動支点軸207が左側面視時計回りに回動する。その結果、舌部203が回動支点軸207を中心として、舌部203の前端部が、機体上方向に上昇し、舌部203が位置bから位置aまで回動することで、舌部203が閉じられ、その結果、横断流ファン140の底部と、舌部203との間の隙間面積Aが縮小させることにより、選別風の気流の変化と併せて、横断流ファン140の吸引風速が減少する。
【0054】
また、舌部203の回動方法は、上述したモータMの駆動に限定されず、リンク機構によるレバー操作などにしてもよい。図10はリンク機構による舌部の回動を示した横断流ファン下方の左側面模式図である。この場合、この図10に示すように、例えば、舌部203の回動支点軸207の左右方向の一端(両端でもよい)に、前後方向の一端部208aを連結したアーム208における他端部208bの穴部などにワイヤ209などを接続する。従って、他端部の上下方向の回動により、一端部を介して回動支点軸207回動支点として舌部203の前部が上下方向に回動される。
【0055】
次いで、ワイヤ209には、機体左側部の横断流ファン140近傍などに設けられた操作レバー210が連係される。なお、この操作レバー210は、運転席20などに設けてもよく、その設置位置は限定されない。
【0056】
ここで、上述のように、横断流ファン140の吸引風速を上昇させる際、オペレータは、操作レバー210を開側に回動させると、ワイヤ209がアーム208の他端部208bを上方に押し上げて回動させる。この結果、アーム208の一端部208aおよび舌部203の回動支点軸207がそれぞれ回動支点となり、上述同様に舌部203の前部が下方に回動して舌部203が開けられ、横断流ファン140の吸引風速を上昇させることができる。
【0057】
また、上述とは逆に、横断流ファン140の吸引風速を低下させる(元に戻す)場合には、オペレータは、操作レバー210を閉側に回動させると、ワイヤ209がアーム208の他端部208bを引っ張り下方に回動させる。この結果、アーム208の一端部208aおよび舌部203の回動支点軸207がそれぞれ回動支点となり、上述同様に舌部203の前部が上方に回動して舌部203が閉められ、横断流ファン140の吸引風速を低下させることができる。
【0058】
なお、上述した舌部203の回動を行なうリンク機構は、ワイヤ209に限定されず、適宜方法を用いることができる。
【0059】
以上詳述したように、この例のコンバイン1は、穀稈を刈り取る刈取部7と、この刈取部7で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部4と、この脱穀部4で脱穀した穀粒を選別する選別部130とを備え、選別部130は、この選別部130の前部に配置した、流穀板135上からチャフシーブ138およびグレンシーブ137を通過して落下する穀粒を含んだ混合物を、一番物および二番物に風選する選別風を供給するための唐箕132と、この唐箕132の後方であって、選別部130の後部に配置し、上方および下方後部をファンケーシング201,202で覆設するとともに、下方後部のファンケーシング202前方を舌部203で覆設した、唐箕132からの選別風を吸引するための横断流ファン140とを備え、上方になだらかな凸状の円弧形状を有する舌部203は、横断流ファン140の全幅にわたって形成するとともに、舌部203を開閉自在に備えるものである。
【0060】
なお、舌部は、下ファンケーシング202の前端部に固設させることもできる。図11は下ファンケーシングの前端部に舌部を固設した横断流ファン周辺の左側面模式図である。この図11に示すように、舌部203´の後端部が、下ファンケーシング202前端部に溶接(舌部203´と下ファンケーシング202とを一体成形してもよい)などで取付けられる。このとき、舌部203´は、上述したような円弧形状を有するため、下ファンケーシング202前端部から横断流ファン140に対して、前部ほど離間することになる。
【0061】
このような構成にすることで、舌部203´による横断流ファン140の覆い面が少なくなるとともに、横断流ファン140による選別風の吸い込み角度が大きくなり、横断流ファン140の吸引風速を上昇させることができる。
【0062】
また、舌部は、その前部を伸縮可能な構造にすることもできる。図12は下ファンケーシングの前端部に、前部を伸縮自在とする舌部を固設した横断流ファン周辺の左側面模式図である。この図12に示すように、下ファンケーシング202前端部に、図6〜10のように回動可能に取付けられた舌部203´´は、外舌部203a´´と、薄い板状の内舌部203b´´との二重構造になっており、舌部203´´近傍の適宜位置に設置した、運転席20などの図示しない舌部伸縮スイッチなどに連係するモータmの駆動により、図示しないアームなどを介して内舌部203b´´が舌部203´´の前端部から伸縮自在な構成とされる。
【0063】
このような構成により、舌部203´´を開いて吸引風速を上昇させた際、オペレータは前記舌部伸縮スイッチなどを操作し、舌部203´´の前端部であって、外舌部203a´´内から内舌部203b´´を前方に延伸させて舌部203´´の全長を延ばすことにより、舌部203´´の下方に有するストローラック139上から、横断流ファン140の強い吸引により上方に飛散した三番物を、延伸させた内舌部203b´´に衝突落下させて、横断流ファン140と、舌部203´´との間、および舌部203´´と、ストローラック139との間から、三番物の機外排出を防ぎ、三番物の回収ロスを防止することができる。なお、舌部203´´を開じた場合でも内舌部203b´´の伸縮を適宜操作することができる。
【0064】
以上述べたように、舌部203,203´は、選別屑排出口200内側に配設した横断流ファン140の下方であって、横断流ファン140の全幅に備えられるが、この横断流ファン140は、機体後部の脱穀部4(揺動選別装置131)の全幅に亘って設けることもできる。図13は機体全幅に亘って設けた横断流ファンを示す機体後部を左後方から見た斜視図、図14は機体全幅に亘って設けた横断流ファンを示す機体後部を右後方から見た斜視図である。このような構成にすることで、選別風の吸引幅(機体左右方向)が長く、排塵の吸引効率が高くなるとともに、横断流ファン140のメンテナンスを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一例としての自脱型コンバインの右側面図である。
【図2】自脱型コンバインの左側面構成図である。
【図3】穀稈搬送装置の側面図である。
【図4】脱穀部および選別部の左側面模式図である。
【図5】エンジンから排出オーガまでの動力伝達経路を示す模式図である。
【図6】後方から見た横断流ファンの斜視図である。
【図7】横断流ファンおよび横断流ファン周辺の左側面模式図である。
【図8】舌部を拡大して示した横断流ファン下方の左側面模式図である。
【図9】舌部の回動を示す横断流ファン下方の左側面模式図である。
【図10】リンク機構による舌部の回動を示した横断流ファン下方の左側面模式図である。
【図11】下ファンケーシングの前端部に舌部を固設した横断流ファン周辺の左側面模式図である。
【図12】下ファンケーシングの前端部に、前部を伸縮自在とする舌部を固設した横断流ファン周辺の左側面模式図である。
【図13】機体全幅に亘って設けた横断流ファンを示す機体後部を左後方から見た斜視図である。
【図14】機体全幅に亘って設けた横断流ファンを示す機体後部を右後方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
130 選別部
132 唐箕
135 流穀板
140 横断流ファン
200 選別屑排出口
201 上ファンケーシング
202 下ファンケーシング
203 舌部
204 回転軸
205 左右側壁
206 起風板
207 回動支点軸
208 アーム
208a 一端部
208b 他端部
209 ワイヤ
210 操作レバー
M,m モータ
a,b 位置
A 隙間面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈り取る刈取部と、該刈取部で刈り取った穀稈を脱穀する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を選別する選別部とを備え、
前記選別部は、該選別部の前部に配置した、流穀板上からチャフシーブおよびグレンシーブを通過して落下する穀粒を含んだ混合物を、一番物および二番物に風選する選別風を供給するための唐箕と、
該唐箕の後方であって、前記選別部の後部に配置し、上方および下方後部をファンケーシングで覆設するとともに、前記下方後部のファンケーシング前方を舌部で覆設した、前記唐箕からの選別風を吸引するための横断流ファンとを備えるコンバインにおいて、
前記舌部は、前記横断流ファンの全幅にわたって形成するとともに、前記舌部と、前記横断流ファンの外周との隙間を拡張させることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記舌部は、上方になだらかな凸状の円弧形状を有することを特徴とする、請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記舌部は、該舌部の前部を伸縮自在に備えることを特徴とする、請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−63396(P2010−63396A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231945(P2008−231945)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】