説明

コンバイン

【課題】本発明は、低速刈取走行時において前処理部を確実に駆動できると共に、穀稈の搬送乱れを防止できるコンバインを提供することを課題とする。
【解決手段】刈取部(5)を変速駆動する刈取駆動手段(51)と、刈取駆動手段(51)を制御する制御装置(64)とを設け、制御装置(64)に、車速に連動させて刈取駆動手段(51)を制御する車速連動駆動手段(B,C)を設けたコンバインにおいて、制御装置(64)に、機体の走行速度に関係なく刈取部(5)を低速(V1)で駆動するように制御する定速駆動手段(A)を設けると共に、車速連動駆動手段(B,C)から定速駆動手段(A)への駆動切換を行う切換操作具(30)を運転操作部(8)に設け、定速駆動手段(A)は、切換操作具(30)のON操作に基づき刈取部(5)を低速(V1)駆動に切り換えると共に、ON状態が維持されると、刈取部(5)を次第に増速するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀稈を刈取搬送する刈取部を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前処理部の搬送駆動を機体の走行速度に連動させて、機体が走行停止した時は前処理部を駆動停止させると共に、走行速度が速くなれば前処理部の駆動速度を速くするように、前処理部を車速同調駆動させた特許文献1に示すコンバインが公知となっている。このものによると、刈取走行速度の大小に関係なく前処理部で搬送される穀稈の層厚が一定となるから、安定した搬送性能を維持することができる。
また、特許文献1のコンバインは、刈取走行速度に関係なく前処理部を一定速度で駆動する強制掻き込み機能を備えており、機体が停止した状態でも前処理部を駆動可能としているから、機体が停止した状態で前処理部に残った穀稈を脱穀部へ搬送して処理が可能となり、回行時における前処理部での稈こぼれを防止することができる。
また、強制掻き込み機能を備えているため、トランスミッション回転センサ(車速センサ)が低速回転を正確に検出できず、機体が低速(超低速)走行しているにも関わらず機体停止と判定して前処理部が駆動しない場合にも、強制的に前処理部を駆動させて刈取作業を行うことが可能であり便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3853216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコンバインは、例えば、最初に畦を乗り越えて穀稈の刈取を行いながら圃場に侵入する際に低速(超低速)で機体を走行させた場合でも、強制掻き込み機能で前処理部を強制的に駆動させることができるから、前処理部が駆動停止したまま機体を走行させて穀稈を押し倒すことを防止できる。しかしながら、強制掻き込み機能は、稈こぼれを防止するために走行停止状態で前処理部に残った穀稈を強制的に脱穀部へ搬送処理するための機能であり、その作業能率を上げる為に強制掻き込み時における前処理部の駆動速度を早め(中速)に設定している。即ち、圃場侵入時に前処理部を駆動させることを用途に考慮しておらず、走行速度(超低速)に対して前処理部の搬送速度が速すぎて穀稈の搬送姿勢が乱れて脱穀性能が悪くなったり搬送が詰まる課題があった。
本発明は、低速刈取走行時において前処理部を確実に駆動できると共に、穀稈の搬送乱れを防止できるコンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、機体の走行速度を検出する車速センサと、刈取部を変速駆動する刈取駆動手段と、刈取駆動手段の変速駆動を制御する制御装置とを設け、前記制御装置に、車速センサで検出した車速に連動させて、機体が走行停止した時は刈取部を駆動停止させると共に、走行速度が速くなれば刈取部の駆動速度を速くするように、前記刈取駆動手段を制御する車速連動駆動手段を設けたコンバインにおいて、前記制御装置に、機体の走行速度の大小に関係なく刈取部を低速で駆動するように、前記刈取駆動手段を制御する定速駆動手段を設けると共に、車速連動駆動手段から定速駆動手段への駆動切換を行う切換操作具を機体の運転操作部に設け、前記定速駆動手段は、切換操作具のON操作に基づき刈取部を低速駆動に切り換えると共に、前記切換操作具のON状態が維持されると、刈取部を次第に増速するように構成したことを特徴とする。
また、前記定速駆動手段は、前記切換操作具のON状態が維持されると、所定時間は刈取部の低速駆動を保持し、所定時間を経過すると刈取部を増速するように構成したことを特徴とする。
また、前記定速駆動手段は、刈取部の低速駆動時に切換操作具をOFF操作しても、一定時間は低速駆動を保持するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように構成される本発明のコンバインによれば、機体の走行速度に関係なく刈取部を低速で駆動する定速駆動手段を設けたから、低速刈取走行時に刈取部を確実に駆動して穀稈の押し倒しを防止できると共に、搬送乱れを防止できる。また、運転操作部に設けた切換操作具をON操作するだけで刈取部を低速駆動に切り換えることができるから操作性が良い。また、切換操作具のON状態を維持すると刈取部が自動的に増速するように構成したから、例えば、機体が停止した状態で刈取部に残った穀稈を脱穀部へ搬送して処理する場合にも作業能率を向上させることができる。
また、切換操作具のON状態を維持すると、所定時間は刈取部の低速駆動を保持し、所定時間が経過すると刈取部を増速するように構成したから、刈取部の低速駆動が安定して穀稈の搬送も安定する。
また、刈取部が低速駆動時に切換操作具をOFF操作しても、一定時間は低速駆動を保持するように構成したから、切換操作具でONとOFFを交互繰り返す操作を行えば刈取部を低速駆動状態で維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】主変速レバーの把持部を示す右前斜視図である。
【図4】コンバインの伝動系統図である。
【図5】制御装置の構成を示すブロック図である。
【図6】搬送HST制御のフローチャート図である。
【図7】搬送速度と走行速度との関係を示すグラフである。
【図8】強制掻込モードにおける強制掻込スイッチ操作と搬送HST駆動速度との関係を示すタイムチャート図である。
【図9】同上別実施形態を示すタイムチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はコンバインの左側面図、図2はコンバインの平面図であり、コンバイン1は左右のクローラ2を備えた走行装置3を設け、該走行装置3で支持された機体フレーム4上には、その前部に穀稈の刈取及び搬送を行う刈取部5、該刈取部5の後方で刈取部5から搬送された穀稈を受継ぎ搬送しながら脱穀選別を行う脱穀装置6、該脱穀装置6の後方で脱穀装置6から搬送された脱穀済みの排稈を切断して排出する後処理部7が設けられると共に、前記刈取部5の右側方にはコンバインの運転操作を行う運転操作部8、該運転操作部8の後方で脱穀装置6の右側方には籾処理部9が設けられている。
【0009】
前記刈取部5は、機体フレーム4の前部に昇降自在に支持されており、植立穀稈を分草するデバイダ11、デバイダ11で分草された穀稈を引起す引起装置12、引起された穀稈の株元を切断する刈刃13、切断された穀稈を掻き込みながら搬送する穀稈搬送装置14および、穀稈を扱深調節しながら搬送する扱深搬送装置15等から構成されている。
【0010】
前記脱穀装置6は、刈取部5から搬送された穀稈の株元を挟持搬送する脱穀フィードチェーン16、該脱穀フィードチェーン16で搬送される穀稈を脱穀処理する扱胴や受網等を内装した脱穀部17、受網から落下する脱穀物を揺動選別体の篩選別と送風ファンの風選別によって穀粒と藁屑とに選別処理する選別部18、脱穀部17で脱穀処理された排稈を搬送する排藁搬送部19等から構成されている。
【0011】
前記籾処理部9は、脱穀装置6で脱穀選別された穀粒を一時的に貯留するグレンタンク20、該グレンタンク20内の穀粒を機外に排出する排出オーガ21等で構成されている。
【0012】
前記運転操作部8は、エンジン32を収容するエンジンカバー22の上方に設けられた座席シート23、該座席シート23の前方、左側方及び、後方に設けられた操作パネル24等から構成され、該操作パネル24には刈取部5の昇降及び機体の左右旋回操作を行う操作レバー25(マルチステアリングレバー)、機体の前後進の切換や走行変速操作を行う主変速レバー26及び、刈取クラッチ57と作業機クラッチ48(脱穀クラッチ)の入切操作を行う刈脱スイッチ27(刈脱クラッチ操作具)等から構成されている。
【0013】
図3は前記主変速レバーの把持部を示す右前斜視図である。
把持部27の前面には扱深搬送装置15の扱深さを手動操作によって任意に変更することができる浅扱スイッチ28及び深扱スイッチ29、把持部27の右側面には刈取部5の駆動切換を行う強制掻込スイッチ30(切換操作具)、把持部27の背面には同じく刈取部5の駆動切換を行う倒伏スイッチ31が設けられている。前記強制掻込スイッチ30はモーメンタリスイッチで構成され、ON操作している間は刈取部5の駆動モードが強制掻込モードA(図7参照)となり、離すと強制掻込モードAが解除されて標準モードB(図7参照)又は倒伏モードC(図7参照)となる。また、倒伏スイッチ31はオルタネイトスイッチで構成され、ON操作すると刈取部5の駆動モードが倒伏モードCに切り換わり、OFF操作すると標準モードBに切り換わる。
【0014】
図4はコンバインの伝動系統図である。
エンジン32で出力された動力は、出力プーリ33〜35を介して走行装置3、刈取部5、脱穀装置6、籾処理部9、後処理部7へと伝動される。
出力プーリ33から伝動ベルト36,37やべベル機構38を介して籾処理部9へ動力が伝動される。39は伝動ベルトを弛緩させることで動力を切り、緊張させることで動力を繋ぐベルトテンションクラッチである排出クラッチであり、運転操作部8の排出スイッチ40により入切操作されると電動モータの駆動により入切作動する。
【0015】
出力プーリ34から伝動ベルト41を介して走行装置3の入力プーリ42へ動力が伝動される。43はベルトテンションクラッチである走行クラッチであり、運転操作部8の足元に配置されたべダル操作により入切操作される。走行装置3へ入力された動力は走行HST44を介して変速され、変速された動力が走行トランスミッション45内の副変速装置やサイドクラッチを介して左右のクローラ2へ伝動される。
【0016】
出力プーリ35から伝動ベルト46を介して唐箕軸47へ動力が伝動される。唐箕軸47はカウンター軸を兼ねており、該唐箕軸47から刈取部5、脱穀部17、排藁搬送部19、選別部18、後処理部7へと伝動される。48はベルトテンションクラッチである作業機クラッチであり、運転操作部8の刈脱スイッチ27により入切操作されると電動モータの駆動により入切作動する。
【0017】
出力プーリ49から伝動ベルト50を介して搬送HST51(刈取駆動手段)の入力プーリ52へ動力が伝動される。搬送HST51で変速された動力はギアケース53を介して脱穀フィードチェーン16と刈取部5へ伝動される。出力プーリ54から伝動ベルト55を介して刈取部5の入力プーリ56へ伝動される。57はベルトテンションクラッチである刈取クラッチであり、運転操作部8の刈脱スイッチ27により入切操作されると電動モータの駆動により入切作動する。前記搬送HST51を変速操作することにより、刈取部5の駆動速度(搬送速度)及び脱穀フィードチェーン16の搬送速度を一緒に変速させたり、停止させたりすることができる。
【0018】
図5は制御装置の構成を示すブロック図である。
マイコン等で構成される制御部58の入力側には、刈取部5の駆動切換を行う強制掻込スイッチ30及び倒伏スイッチ31、主変速レバーの操作位置を検出する主変速ポテンショメータ59、走行トランスミッション45内の伝動軸に設けられた走行回転センサ60(車速センサ)及び、搬送HST51のトラニオン軸の回動位置を検出する搬送ポテンショメータ61が接続される。
また、出力側には、搬送HST51のトラニオン軸を変速操作する搬送変速モータ62及び、刈取駆動モードが倒伏モードC(図7参照)である時に点灯する倒伏ランプ63が接続されている。
そして、これら搬送ポテンショメータ61、制御部58及び、搬送変速モータ62等によって搬送HST51(刈取駆動手段)の変速駆動を制御する制御装置64を構成している。
【0019】
図6は搬送HST制御のフローチャート図である。
先ず、S1で走行回転センサ60のデータを読み込み、S2で搬送ポテンショメータ61のデータを読み込む。次に、S3で強制掻込スイッチ30のON/OFFを判定し、ONの場合はS4で車速連動速度と設定速度との比較を行う。尚、前記車速連動速度とは、現在の車速(S1)を基準に標準モードB(図7参照)で搬送HST51を変速制御した場合における搬送HST51の目標値のことであり、設定速度とは、強制掻込モードA(図7参照)で搬送HST51を駆動させた場合における搬送HST51の目標値のことである。
S4で車速連動速度(標準モード目標値)と設定速度(強制掻込モード目標値)とを比較して、車速連動速度が大の場合はS5で標準モードBの目標値をを搬送HST制御の目標値に設定し、設定速度が大の場合はS6で強制掻込モードAの目標値を搬送HST制御の目標値に設定する。よって、機体の走行速度が速い場合は標準モードBから強制掻込モードAへの移行を規制し、機体が高速で走行している時に刈取部が強制掻込モードで遅く駆動されて搬送が詰まることを防止できる。
【0020】
S3で強制掻込スイッチ30がOFFの場合はS7で主変速ポテンショメータ59が前進位置か、前進以外(停止/後進)かを判定する。S7で主変速ポテンショメータ59が前進以外の場合はS8で搬送HST制御の目標値をゼロ(搬送停止)とする。S7で主変速ポテンショメータ59が前進位置と判定した場合はS9で倒伏スイッチ31のON/OFFを判定する。S9で倒伏スイッチ31がOFFと判定した場合は、S10で標準モードBの目標値を搬送HST制御の目標値に設定し、ONと判定した場合は、S11で倒伏モードC(図7参照)の目標値を搬送HST制御の目標値に設定する。
S12ではS5,S6,S8,S10,S11の何れかで設定された目標値に基づいて搬送変速モータ62が出力制御されて、搬送HST51が変速制御される。
【0021】
図7は搬送速度と走行速度との関係を示すグラフである。
縦軸は搬送HST51の駆動速度(搬送ポテンショメータ61)、横軸は機体の走行速度(走行回転センサ60)を示す。搬送HST51の駆動速度が速くなると、それに伴って刈取部5の搬送速度及び脱穀フィードチェーン16の搬送速度も速くなる。
【0022】
強制掻込スイッチ30及び倒伏スイッチ31の両者がOFFの場合は標準モードB(車速連動駆動手段)となり、搬送HST51の駆動速度を車速に連動させて、機体が走行停止した時は刈取部5を駆動停止させると共に、走行速度が速くなれば刈取部5の駆動速度を速くするように搬送HST51が制御される。本実施形態では車速が速くなるにつれて搬送HST51の駆動速度も比例して速くなるように構成している。
また、強制掻込スイッチ30がOFFで倒伏スイッチ31がONの場合は倒伏モードC(車速連動駆動手段)となり、前述した標準モードBと同様に搬送HST51の駆動速度を車速に連動させて制御を行うが、倒伏モードCは標準モードBより車速に対する搬送HST51の駆動速度を増速させて制御するように構成している。これにより刈取部5の搬送速度がアップして倒伏した穀稈をスムーズに刈り取ることができる。
また、強制掻込スイッチ30がONの場合は、強制掻込モード(定速駆動手段)Aとなり、機体の走行状態に関係なく搬送HST51を設定された駆動速度で駆動する。
【0023】
図8は強制掻込モードにおける強制掻込スイッチ操作と搬送HST駆動速度との関係を示すタイムチャート図である。
強制掻込スイッチ30をON操作すると、先ず搬送HST51の駆動速度が搬送駆動開始位置である低速V1まで一気に増速される。そして、強制掻込スイッチ30のON状態を維持すると、所定時間T1は刈取部5の駆動速度が低速V1で保持される。更に、所定時間T1が経過しても強制掻込スイッチ30のON状態を維持していると搬送HST51の駆動速度が徐々に増速されていき、強制掻込スイッチ30をON操作してから一定時間T2が経過すると強制掻込モードA(図7参照)の上限駆動速度である設定速度V2に到達し、それ以降は搬送HST51の駆動速度が設定速度V2で保持される。強制掻込モードAは、強制掻込スイッチ30をON操作している間だけ実行されるから、強制掻込スイッチ30をOFFした段階で強制掻込モードAが解除されて搬送HST51の駆動は機体が走行停止している場合は停止する。本実施形態では搬送HST51の設定速度V2は、脱穀フィードチェーン16を手扱ぎ搬送速度で駆動する駆動速度と同等の中速程度に設定している。
よって、従来は図8の二点鎖線Dで示すように強制掻込スイッチ30をON操作した時に設定速度V2まで一気に増速していたのを、本発明は最初は低速V1で駆動して次第に設定速度V2まで増速するようにしたから、例えば、畦を乗り越えて穀稈の刈取を行いながら圃場に侵入する際に低速(超低速)で機体を走行させた場合に、従来のように走行速度に対して刈取部5の搬送速度が速すぎて穀稈の搬送姿勢が乱れることを防止できる。
【0024】
図9は同上別実施形態を示すタイムチャート図である。
図8の実施形態では、強制掻込スイッチ30をON操作してから所定時間T1が経過すると搬送HST51の駆動速度を徐々に増速していったが、図9の実施形態では所定時間T1が経過すると設定速度V2まで一気に増速するから、機体が走行停止した状態で強制掻込スイッチ30をON操作して刈取部5に残った穀稈を脱穀部17に搬送する場合にも作業能率を向上させることができる。また、図9の実施形態では搬送HST51が低速V1(所定時間T1内)で駆動している時に強制掻込スイッチ30をOFF操作しても、一定時間T3は低速V1駆動を保持するように構成したから、強制掻込スイッチ30のONとOFFを交互に繰り返す操作を行えば、低速V1駆動状態を安定した状態でしかも任意な時間で維持することができる。
【0025】
以上のように構成される本発明のコンバインによれば、機体の走行速度を検出する走行回転センサ60(車速センサ)と、刈取部5を変速駆動する搬送HST51(刈取駆動手段)と、搬送HST51の変速駆動を制御する制御装置64とを設け、前記制御装置64に、走行回転センサ60で検出した車速に連動させて、機体が走行停止した時は刈取部5を駆動停止させると共に、走行速度が速くなれば刈取部5の駆動速度を速くするように、前記搬送HST51を制御する標準モードB(車速連動駆動手段)を設けたコンバインにおいて、前記制御装置64に、機体の走行速度の大小に関係なく刈取部5を低速V1で駆動するように、前記搬送HST51を制御する強制掻込モードA(定速駆動手段)を設けると共に、標準モードBから強制掻込モードAへの駆動切換を行う強制掻込スイッチ30(切換操作具)を機体の運転操作部8に設け、前記強制掻込モードAは、強制掻込スイッチ30のON操作に基づき刈取部5を低速V1駆動に切り換えると共に、前記強制掻込スイッチ30のON状態が維持されると、刈取部5を次第に増速(二点鎖線Aで示すように一気に増速ではなく、比例的に増速、或いは段階的に増速)するように構成したから、低速刈取走行時に刈取部5を確実に駆動して穀稈の押し倒しを防止できると共に、搬送乱れを防止できる。また、運転操作部8に設けた強制掻込スイッチ30をON操作するだけで刈取部5を低速V1駆動に切り換えることができるから操作性が良い。また、強制掻込スイッチ30のON状態を維持すると刈取部5が自動的に増速するように構成したから、例えば、機体が停止した状態で刈取部5に残った穀稈を脱穀部17へ搬送して処理する場合にも作業能率を向上させることができる。
また、前記強制掻込モードAは、前記強制掻込スイッチ30のON状態が維持されると、所定時間T1は刈取部5の低速V1駆動を保持し、所定時間T1を経過すると刈取部5を増速するように構成したから、刈取部5の低速駆動が安定して搬送乱れを防止できる。
また、前記強制掻込モードAは、刈取部5の低速V1駆動時に強制掻込スイッチ30をOFF操作しても、一定時間T3は低速V1駆動を保持するように構成したから、強制掻込スイッチ30でONとOFFを交互繰り返す操作を行えば刈取部5を低速V1駆動状態で維持することができる。
【0026】
図8,9の実施形態では、搬送駆動開始位置における駆動速度を低速V1と設定したが、これに限らず、搬送駆動開始位置をゼロとしてそこから徐々に駆動速度を経過時間に比例させて増速させる構成としてもよい。即ち、図8の二点鎖線Aで示すように強制掻込スイッチ30をON操作した時に設定速度V2まで一気に増速させずに、強制掻込スイッチ30をON操作した時に暫く搬送HST51が低速で駆動するものであれば、図8,9の実施形態のように駆動速度を変化させず保持するものでなくてもよい。但し、図8,9の実施形態のように、刈取部5の駆動速度が所定時間T1は低速V1で保持される構成にすると、刈取部5の低速駆動が安定して穀稈の搬送も安定する。
【0027】
本実施形態では、搬送HST51で刈取部5と脱穀フィードチェーン16の両方を駆動する構成としたが、これに限らず、両者の伝動経路を独立させて搬送HST51で刈取部5だけを駆動するように構成してもよい。
【0028】
本実施形態では、機体の走行速度を走行回転センサ60で検出する構成としたが、これに限らず、主変速レバーポテンショメータ59の検出値を走行速度として搬送HST制御を行う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
5 刈取部
51 搬送HST(刈取駆動手段)
60 走行回転センサ(車速センサ)
64 制御装置(搬送ポテンショメータ61、制御部58、搬送変速モータ62)
A 強制掻込モード(定速駆動手段)
B 標準モード(車速連動駆動手段)
C 倒伏モード(車速連動駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の走行速度を検出する車速センサ(60)と、刈取部(5)を変速駆動する刈取駆動手段(51)と、刈取駆動手段(51)の変速駆動を制御する制御装置(64)とを設け、前記制御装置(64)に、車速センサ(60)で検出した車速に連動させて、機体が走行停止した時は刈取部(5)を駆動停止させると共に、走行速度が速くなれば刈取部(5)の駆動速度を速くするように、前記刈取駆動手段(51)を制御する車速連動駆動手段(B,C)を設けたコンバインにおいて、前記制御装置(64)に、機体の走行速度の大小に関係なく刈取部(5)を低速(V1)で駆動するように、前記刈取駆動手段(51)を制御する定速駆動手段(A)を設けると共に、車速連動駆動手段(B,C)から定速駆動手段(A)への駆動切換を行う切換操作具(30)を機体の運転操作部(8)に設け、前記定速駆動手段(A)は、切換操作具(30)のON操作に基づき刈取部(5)を低速(V1)駆動に切り換えると共に、前記切換操作具(30)のON状態が維持されると、刈取部(5)を次第に増速するように構成したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記定速駆動手段(A)は、前記切換操作具(30)のON状態が維持されると、所定時間(T1)は刈取部(5)の低速(V1)駆動を保持し、所定時間(T1)を経過すると刈取部(5)を増速するように構成したことを特徴とする請求項1のコンバイン。
【請求項3】
前記定速駆動手段(A)は、刈取部(5)の低速(V1)駆動時に切換操作具(30)をOFF操作しても、一定時間(T3)は低速(V1)駆動を保持するように構成したことを特徴とする請求項2のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−155907(P2011−155907A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20437(P2010−20437)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】