説明

コンバイン

【課題】本発明は、運転座席の後方に位置する穀粒回収タンク内の穀粒の排出作業を行うときに、排出速度を正確にしかも穀粒排出状況を確認しながらも容易に設定できるコンバインを提供することを目的とする。
【解決手段】走行機体の左右一側部に運転座席4aを備えた運転部4を、反対側に昇降自在な刈取り前処理部3を、刈取り前処理部3の後方に脱穀装置5を、脱穀装置5の横側部で且つ運転座席4aの後方に、穀粒排出オーガ7を備えた穀粒回収タンク6を配設してあるコンバインにおいて、運転座席4aの後部の運転部4の搭乗口45とは反対側の横側部に、エンジン回転計56を配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の左右一側部に運転座席を備えた運転部を配設し、前記運転部とは反対側に複数のデバイダと引起し装置と供給搬送装置を備え、走行機体に対して横軸心周りに昇降自在な刈取り前処理部を配設し、前記刈取り前処理部の後方に前記供給搬送装置で搬送されてきた穀稈をフィードチェーンで挟持搬送しながら脱穀する脱穀装置を配設し、前記脱穀装置の横側部で且つ前記運転座席の後方に、穀粒排出オーガを備えた穀粒回収タンクを配設してあるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、コンバインの運転部の前方の刈高操向レバーの横に並べた操作パネルに、エンジン回転計を備えた技術が知られている。
【0003】
エンジン回転計を備えていると、エンジンに対する負荷が大きくなるとエンジン回転数の低下量が分かるので、走行速度を調節して、エンジン負荷が適正範囲に維持するように運転することができる。
【0004】
エンジン回転数は、通常、走行負荷や作業負荷等によるエンジンに対する負荷を観察するために設けられていることから、従来は、操縦者の見える操縦部の座席前方にしか設けられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−82448号公報(図1、図4、図14、段落番号「0069」の記載参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
日本のジャポニカ米は、刈取り収穫作業及び穀粒回収タンクから穀粒を機外に排出するに当たって比較的穀粒が脱ぷし難い。これに対して、インドやタイ、中国の中南部や東南アジアで生産されているインディカ米は、穀粒が比較的脱粒し易い。通常、刈取り収穫作業も穀粒回収タンクから穀粒を機外に排出する穀粒排出作業も定格のエンジン回転数で作業を行っている。
穀粒回収タンクが運転座席の後にあり、穀粒排出作業のときは、穀粒排出オーガも通常運転席の後方に位置させた状態で穀粒排出作業を行うので、穀粒搬出オーガを昇降及び旋回させたり、穀粒排出オーガを駆動させる操作具が運転席の後方に設けられているから、穀粒排出オーガを操作するときには運転者は後向きになって穀粒排出オーガを操作する。
【0007】
穀粒排出作業を行っていても刈取り収穫作業中の場合のようにエンジンに対する作業負荷は大きくないから、脱ぷしやすい穀粒であると否とに拘らず、エンジンには大きな負荷が掛からないので、脱ぷを考慮して脱ぷしやすい穀粒のときには意識的にエンジン回転数を定格回転数よりも落す必要がある。しかし、運転部前部にエンジン回転計が備えられている場合、或いは穀粒排出作業を行う位置からエンジン回転計が見えない場合は、後向きの運転者はエンジン音を聞いて勘に頼ってエンジン回転数を調節しなければならず、脱ぷさせずに排出作業を行う最適なエンジン回転数にすることは難しい。又、運転部前部にエンジン回転計が備えられていて穀粒排出作業を行うときに振り向けば何とかエンジン回転数が見えるとしてもその都度振り向きながら、或いはエンジン回転数を調節する度にエンジン回転計を振り返って確認しなければならない煩わしさがある。
【0008】
本発明は、運転座席の後方に位置する穀粒回収タンク内の穀粒の排出作業を行うときに、排出速度を正確にしかも穀粒排出状況を確認しながらも容易に設定できるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、走行機体の左右一側部に運転座席を備えた運転部を配設し、前記運転部とは反対側に複数のデバイダと引起し装置と供給搬送装置を備え、走行機体に対して横軸心周りに昇降自在な刈取り前処理部を配設し、前記刈取り前処理部の後方に前記供給搬送装置で搬送されてきた穀稈をフィードチェーンで挟持搬送しながら脱穀する脱穀装置を配設し、前記脱穀装置の横側部で且つ前記運転座席の後方に、穀粒排出オーガを備えた穀粒回収タンクを配設してあるコンバインにおいて、
前記運転座席の後部の前記運転部の搭乗口とは反対側の横側部に、エンジン回転計を配設してある。
【0010】
〔第1発明の作用〕
刈取り収穫作業を行っているときは、運転座席に着座して前方或いは分草引起し状態を監視しながら運転する。
穀粒回収タンクが満タン状態になったときは、走行機体を所定の圃場端に寄せてから、穀粒回収タンク内の穀粒を排出するために、運転者は後向きに姿勢を代えて、穀粒排出オーガをトラックの荷台等に向けて回動させ、穀粒排出オーガを所定の位置にセットした状態で、トラックの荷台に直接、又はトラックの荷台上で補助作業者が用意した籾袋に袋詰めすべく、穀粒排出オーガを作動させる。このとき穀粒が脱ぷしやすい場合には穀粒の品質・性状に応じて穀粒排出オーガのスクリューの回転速度を低下させるべく、エンジン回転速度を低下させる。又、袋詰め時に穀粒が満杯近くになったときに、補助作業者の合図で穀粒排出速度を低下させるべく、エンジン回転計を見ながらエンジン回転数を調節する。
【0011】
穀粒排出作業を行っているときは、刈取り収穫作業中の場合のようにエンジンに対する作業負荷は大きくないので、脱ぷしやすい品質の穀粒の場合には、運転者は意識的にエンジン回転数を定格回転数よりも落す必要があるが、エンジン回転計が備えられていない場合、或いはエンジン回転計が備えられていても運転部の前部に備えられていて後向きに穀粒の排出作業をする運転者にとってエンジン回転計が見えない、若しくは見難い場合は、エンジン音を聞いて勘に頼ってエンジン回転数を調節しなければならず、脱ぷさせずに排出作業を行う最適なエンジン回転数にすることは難しい。
これに対して、第1発明のように、エンジン回転計を運転座席の後部の運転部の搭乗口とは反対側の横側部に配設してあると、穀粒回収タンク内の穀粒の排出作業を行うときに、後向き姿勢の運転者の前方に位置するエンジン回転計を見ながらエンジン回転数の調節を行うことができるので、穀粒の排出速度を正確にしかも穀粒排出作業を行いながら容易に所望のエンジン回転数に設定することができ、良好に穀粒を回収できるに至った。
【0012】
〔第1発明の効果〕
第1発明によれば、穀粒回収タンク内の穀粒を排出するときは、作業者が後ろ向きになって穀粒排出オーガの向きを操作し、後ろを向いたまま穀粒排出オーガを駆動したり、後ろを向いたままエンジン回転計を見ながら容易にエンジン回転数の調節を行うことができる。したがって、穀粒回収タンク内の穀粒を排出する操作を容易に行うことができ作業性を向上させることができる。
【0013】
〔第2発明の構成〕
第2発明は、第1発明の構成において、前記エンジン回転計の表示面を前向きに形成してある。
【0014】
〔第3発明の構成〕
第3発明は、第1発明の構成において、前記エンジン回転計の表示面を上方ほど後方に位置する斜め前向きに形成してある。
【0015】
〔第2発明及び第3発明の作用効果〕
例えば、エンジン回転計を運転座席の後部の搭乗口とは反対側の横側部のサイドパネルに上向きに配置した場合は、エンジン回転計を見るときに目線を大きく下に向けなければならないが、第2発明によればエンジン回転計の表示面を前向きに形成してあり、又、第3発明によればエンジン回転計の表示面を上方ほど後方に位置する斜め前向きに形成してあるので、穀粒排出オーガを操作して穀粒排出作業をするときに、作業者は穀粒排出オーガの操作の姿勢と同じ後ろを向いたまま目線を大きく下に向けなくてもエンジン回転計の表示状態を確認することができ、楽な姿勢で操作を行うことができる。
【0016】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明〜第3発明のいずれかの発明の構成において、前記運転座席の後部の前記搭乗口とは反対側の横側部に支持体を立設し、前記支持体の上部にエンジン回転計を備えてある。
【0017】
〔第4発明の作用効果〕
第4発明によれば、搭乗口とは反対側の運転席後部の横側部に支持体を立設し、この支持体の上部にエンジン回転計を備えたので、エンジン回転計が目の高さに近づけて配設することができ、エンジン回転計を見やすい状態でエンジン回転数の調節を行うことができる。
【0018】
〔第5発明の構成〕
第5発明は、第1発明〜第4発明のいずれかの発明の構成において、前記エンジン回転計の表示部に、エンジンの稼働時間の積算値を表示するアワメータを付設してある。
【0019】
〔第5発明の作用効果〕
第5発明によれば、エンジン回転計の表示部にアワメータを付設してあるので、それによってエンジンの稼働時間を容易に確認をすることができ、エンジンのオイル交換やその他の機器のメンテナンスに資することができる。
【0020】
〔第6発明の構成〕
第6発明は、第4発明の構成において、前記支持体の下方に走行機体の左右傾斜を検出するセンサーを備えてある。
【0021】
〔第6発明の作用効果〕
第6発明によれば、前記支持体は搭乗口とは反対側の運転席の横側部に配置してあり、この支持体の配設位置は走行機体の左右方向中央に近い位置となり、この位置に配設した支持体の下方に走行機体の左右傾斜を検出するセンサーを備えてあるので、エンジン回転計の配置スペースを利用しながら走行機体が揺れたときにセンサーを大きく上下移動させないで左右傾斜を良好に検出することができた。
【0022】
〔第7発明の構成〕
第7発明は、第6発明の構成において、前記支持体に前記センサーの検出に基づいて警報音を発する警報器を備えてある。
【0023】
〔第7発明の作用効果〕
第7発明によれば、左右の傾斜を検出するセンサーによって警報を発する警報器を前記支持体に備えてあるので、警報器とセンサーとが近くに配設されることとなり、両者を結線する配線が短くできるとともに、メンテナンスも容易に行うことができるに至った。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの全体左側面図である。
【図2】コンバインの全体右側面図である。
【図3】コンバインの全体平面図である。
【図4】コンバインの正面図である。
【図5】運転座席の左側の取付け台に配設したエンジン回転計を示す正面図である。
【図6】取付け台に取り付けたエンジン回転計を示す一部縦断右側面図である。
【図7】エンジン回転計の正面図である。
【図8】ブロック図である。
【図9】刈取り前処理部の一部省略平面図である。
【図10】左側の引起し装置及び引起しフレームの上部に備えたバックミラーを示す左側面図である。
【図11】引起し装置の縦断正面図である。
【図12】作物とデバイダの関係を示す概略平面図である。
【図13】左側の引起しフレームの上部に固定する補強フレームとバックミラーのアームの共締め構造を示す分解斜視図である。
【0025】
〔コンバインの全体構成〕
図1〜図4に基づいて、本発明に係る自脱型コンバインの全体構成について説明する。図1及び図2は、コンバインの全体左側面図及び全体右側面図をそれぞれ示し、図3及び図4は、コンバインの全体平面図及び全体正面図を示す。図1〜図4に示すように、コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の左側前部に、刈取り前処理部3が揺動昇降自在に連結されており、走行機体2の右側前部に運転部4が設けられている。走行機体2の左側後部に脱穀装置5が搭載され、走行機体2の右側後部に穀粒排出オーガ7を備えた穀粒回収タンク6が搭載されている。走行機体2の後部には、排ワラ処理装置8が搭載されており、脱穀装置5による脱穀処理により発生した排ワラの処理ができるように構成されている。
【0026】
穀粒排出オーガ7は、長手方向の前後中間部で折り畳み可能に構成されており、コンバインを移動させる場合や保管する場合には、この穀粒排出オーガ7を折り畳んで、走行機体2から穀粒排出オーガ7が突出することがないように構成されている。尚、穀粒排出オーガ7をスライドさせることにより伸縮可能に構成してもよい。
【0027】
図4に示すように、穀粒回収タンク6の左側前部には、穀粒排出オーガ7を支持するオーガ受け台44が設けられている。このオーガ受け台44の支柱44aにはオーガ操作盤46を取り付けてある。オーガ操作盤46には、穀粒排出オーガ7を旋回操作する旋回用スイッチ47と穀粒排出オーガ7を昇降操作する昇降用スイッチ48を備えている。又、オーガ操作盤46の前方に突出させた穀粒排出オーガ7を駆動及び停止させるためのクラッチレバー49を備えてある。
【0028】
刈取り前処理部3には、植立作物を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の右側引起し装置9R及び左側引起し装置9Lと、引起し装置9R,9Lにより引起した植立作物を切断するバリカン型の刈取装置10と、引起し中の作物を係止搬送する左右一対の右側及び左側の補助搬送装置11R,11Lと、作物の株元を掻き込み合流する左右一対の掻き込み回転パッカ12R,12Lと、合流された刈取り作物を後方上方に向けて挟持搬送する供給搬送装置13とを備えて構成されており、油圧シリンダ14を操作することにより刈取り前処理部3全体が刈取り前処理部3後部上部の横向きの支点p周りに上下に揺動して、刈取り前処理部3を昇降できるように構成されている。
【0029】
供給搬送装置13は、作物の株元側を挟持して搬送する株元挟持搬送機構13aと作物の穂先側を係止して搬送する穂先係止搬送機構13bとを備えて構成されており、この供給搬送装置13全体を支点p中心に上下に揺動調節することで、搬送される作物の挟持位置を変更して、脱穀装置5に備えられたフィードチェーン15への作物の受け渡し位置を作物の稈長方向に変更調節する扱き深さ調節機能が備えられている。
【0030】
刈取り前処理部3から供給された作物は、脱穀装置5において脱穀処理された穀粒が穀粒回収タンク6に貯留され、脱穀処理によって発生した排ワラが排ワラ処理装置8によって処理されて、走行機体2の後方に処理されたワラ屑が排出されるように構成されている。
【0031】
走行機体2の右側部には、前後に長い平面視での形状が縦長の長方形状のデッキ部2aが形成されており、このデッキ部2aの上面側の前後中央部に運転座席4aを支持する座席支持部材4bが載置されており、デッキ部2aの上面側の後部に穀粒回収タンク6が載置されて固定されている。デッキ部2aの前端には、斜め後方上方に傾斜したアーチ状の補助具16及びこの補助具16を前方から覆う前部カバー17が装着されており、この補助具16及び前部カバー17と座席支持部材4bとの間に作業者が搭乗する搭乗空間が形成されている。
【0032】
穀粒回収タンク6の前部下部には、後方に凹入した凹入部6Aが形成されており、この凹入部6Aに座席支持部材4bの後部が位置するように配設されている。その結果、運転座席4a後方の空間を有効に活用して穀粒回収タンク6の容量を大きく確保しながら、運転座席4aを後方に位置させることができるように構成されている。
【0033】
補助具16及び前部カバー17は、刈取り前処理部3の引起し装置9Rに沿って斜め後方上方に傾斜する形状に構成されており、搭乗空間の前部に位置する前部カバー17の右側上部を前部カバー17の左側上端高さよりも上方に立ち上げた立上げ部17aを形成して操縦パネル50を形成し、操縦パネル50に操作レバー68を備えている。操縦パネル50の左側の前部カバー17の上端は、操縦パネル50よりも低く形成されており、運転座席4aに着座した運転者から見て、操縦パネル50を形成する立上げ部17aの左端部と右側の引起し装置9Lの右端部との間の前部カバー17の上方が刈取り前処理部3の前方を監視する見通し空間Sとしての空間が形成されている。
【0034】
前記操作レバー68は、走行機体横方向に揺動操作されることにより、操向クラッチ(図示せず)を操作して左右一対の走行装置1,1を各別に駆動、停止操作して走行機体の操向操作を行う。搭乗空間の前部に位置する前部カバー17の下部に駐車ペダル18が配設されている。その結果、駐車ペダル18を配設する空間を確保しながら、刈取り前処理部3を後方に位置させることができるように構成されている。
【0035】
図3、図5〜図7に示すように、運転座席4aの運転部4の搭乗口45とは反対側の横側部(運転座席4aの左側)に位置するサイドパネル51には、エンジン(図示せず)の回転数を調節するアクセルレバー52と、静油圧式無段変速装置(図示せず)を変速操作する主操作レバー53を備えている。サイドパネル51の後部には、計器類の支持体としての取付け台54を設けてある。取付け台54は前方下り傾斜(上方ほど後方に位置する後上がり傾斜)の傾斜面55を有する板枠状に形成してある。前記傾斜面55にエンジン回転計56を取り付けてあり、エンジン回転計56の表示面57は、後上がりで前方斜め上方を向いている。取付け台54は、サイドパネル51の上部から運転座席4aの上下中間部の高さにまで立設され、エンジン回転計56を高く見易い位置に配置できるように構成されている。エンジン回転計56の表示面57には、エンジン(図示せず)の稼働時間の積算値を表示する積算回転式のアワメータ58を付設してある。アワメータ58は定格回転で一時間駆動した場合の設定エンジン回転数を時間表示で1(hour)としてこれを積算表示して、オイル交換時、機器の点検、部品の交換時期を知るためのものである。
【0036】
エンジン回転計56は、運転座席4aの後部の前記運転部4の搭乗口45とは反対側の横側部(運転座席4aと穀粒回収タンク6との間の空間の機体内側部分)に配置してあるので、刈取り作業の運転中、運転者がエンジン回転計56のエンジン回転数を確認したいときは、運転座席4aに座った状態で左後ろを振り向くことで確認することができる。
【0037】
図6、図8に示すように、取付け台54の内側下部59には、左右の傾きを検出する傾斜センサ60を配置してある。傾斜センサ60を取り付けている取付け面61は、サイドパネル51の後方延長部のパネル面である。取付け台54の後向きの内壁62には、傾斜センサ60による機体の左右の傾倒角度が設定角度以上であると制御装置からの出力により警報を発する警報ブザー63を取り付けてある。
【0038】
エンジンの駆動により発電されるダイナモ64による電力をレギュレータ65で制御してバッテリー66に給電するが、エンジンの駆動中に何らかの原因でバッテリー66が充電されなくなると(又はバッテリー66の充電が不十分な状態であると)、レギュレータ65からの入力に基づいて制御装置から出力して取付け台54の傾斜面55に付設してある警報ランプ67を点灯させ、バッテリー66が充電されていない状態であること(バッテリー66が十分に充電されない状態であること)を表示するようにしてある。
【0039】
刈取り作業中に、穀粒回収タンク6が満タン状態になったときは、穀粒回収用のトラックの側の圃場端によって、穀粒回収タンク6内の穀粒を排出するために、デッキ部2aにおける運転座席4aと補助具16との間に、運転者は立って後向きの姿勢になって昇降用スイッチ48及び旋回用スイッチ47を操作し、穀粒排出オーガ7をトラックの荷台に向けて回動させ、穀粒排出オーガ7がトラックの荷台にセットされた状態で、トラックの荷台に設けた回収容器に直接、又はトラックの荷台上で補助作業者が用意した籾袋に袋詰めすべく、穀粒排出オーガ7を作動させる。このとき穀粒が脱ぷしやすい場合には穀粒排出オーガ7のスクリュー(図示せず)の回転速度を低下させるべく、エンジン回転速度を低下させる。又、袋詰めのときには、穀粒が満杯近くになったときに、補助作業者の合図で穀粒排出できるエンジン回転数の範囲を逸脱しない程度にエンジン回転計56を見ながら、アクセルレバー52によりエンジン回転数を調節する。
【0040】
すなわち、穀粒回収タンク6内の穀粒を排出するときは、運転者が後ろ向きになった状態で、穀粒排出オーガ7の操作を行うので、脱ぷしやすい穀粒の場合に低下させるべきエンジン回転数を予め決めておけば、エンジン回転計56を見ながら速やかに所望のエンジン回転数に調節を行うことができるので、穀粒回収タンク6内の穀粒を排出する操作を容易に行え、作業性が向上する。
【0041】
図9〜図11に示すように、刈取り前処理部フレーム19の前端部には、横方向に延びるベベルギアケース20が装着されており、ベベルギアケース20の左側端部には、カウンタケース21が装着されている。
【0042】
カウンタケース21の左側部には、筒状のカウンタブラケット22が装着されており、このカウンタブラケット22に内装された左側引起伝動軸23がカウンタケース21に内装された伝達機構を介して連動連結されている。カウンタブラケット22の上端部には、左側ベベルギアケース24が装着されており、前向きの左側引起し入力軸25が左側引起伝動軸23と連動連結されている。
【0043】
左側ベベルギアケース24が左側引起し装置9Lの引起しケース26に連結されており、前側引起しフレーム26Fと後側引起しフレーム26Rとを接合して構成される引起しケース26の内部に位置するように、左側ベベルギアケース24から前方上方に左側引起し入力軸25が延出されている。前側引起しフレーム26Fには、フレームカバー26Cが装着されている。左側引起し入力軸25の先端部には、駆動スプロケット27が連動連結されており、この駆動スプロケット27と、その横において上下変位可能かつ上方にバネ付勢して配備されたテンション用の輪体としてのテンションスプロケット28と、引起しケース26の下部に配備されたチェーンを案内する輪体としてのチェーン案内ローラ29とに亘って無端体としての引起しチェーン30が横回し状に巻回張設されている。
【0044】
引起しチェーン30には引起し爪31が起伏揺動可能に等ピッチで枢支連結されており、引起しチェーン30に沿った倒伏姿勢で下方へ移動してきた引起し爪31は、チェーン案内ローラ29の外周に案内されて起立しながら引起し径路に回り込み移行し、引起し径路脇に固定配備された案内レール32によって起立案内された状態で上方へ移動するよう構成されている。
【0045】
図11に示すように、右側引起し装置9Rは、右側の引起し入力軸25に連結された駆動用の輪体としての駆動スプロケット27と、その横において上下変位可能かつ上方にバネ付勢して配備されたテンション用の輪体としてのテンションスプロケット28と、引起しケース26の下部に並列配備されたチェーン案内用の輪体としての第1及び第2チェーン案内ローラ29,33とに亘って、無端体としての引起しチェーン30を横回し状に巻回張設して構成されている。
【0046】
引起しチェーン30には引起し爪31が起伏揺動可能に等ピッチで枢支連結されており、引起しチェーン30が下方へ移動する戻り径路では、引起し爪31が引起しチェーン30に沿った倒伏姿勢で下方へ移動し、第1チェーン案内ローラ33の外周に案内されて起立しながら横移動径路に回り込み、引き続き固定配備された補助案内レール34によって起立姿勢を維持された状態で横移動するよう構成されている。横移動径路に沿って起立姿勢で横移動してきた引起し爪31は、第2チェーン案内ローラ29の外周に案内されて起立姿勢を維持しながら引起し径路に導かれ、引起し径路脇に固定配備された案内レール32によって起立案内された状態で上方へ移動し、案内レール32の上端から外れた引起し爪31は倒伏して戻り径路に回り込んでゆくよう構成されている。
【0047】
引起し装置9R,9Lの引起し径路は互いに対向して隣接するように配置され、各引起しチェーン30,30が同速度で回動駆動されることで、各引起し装置9R,9Lの引起し爪31,31が引起し径路において互いに突き合わせ状態を維持して上方へ移動して、作物を逃がすことなく引き起こすようになっている。
【0048】
右側引起し装置9Rにおける引起しチェーン30の巻回周長は、左側引起し装置9Lにおける引起しチェーン30の巻回周長よりも、引起し爪31,31の爪ピッチの整数倍だけ長いものとなっている。この例では、右側引起し装置9Rにおける引起しチェーン30の巻回径路上端に位置する駆動スプロケット27の軸心位置を、左側引起し装置9Lにおける引起しチェーン30の巻回径路上端に位置する駆動スプロケット27の軸心位置より高く設定することで、長い周長の引起しチェーン30と短い周長の引起しチェーン30とを引起し爪31,31の突き合せ状態で同調駆動できるように構成されている。左右の引起しケース26における後側引起しフレーム26Rの背面に亘ってアーチ形の補強フレーム35で架橋連結されている。補強フレーム35は引き起こした穀稈が長稈であっても潜り抜けられるように、左右の引起し装置9L,9Rの上端よりも上位の高さに設定してある。
【0049】
図3、図4、図9及び図10に示すように、このコンバインのデバイダ36は、運転部4側に位置する右側デバイダ36Rと、運転部4側とは逆側に位置する左側デバイダ36Lと、右側デバイダ36Rと左側デバイダ36Lの間に位置する中央デバイダ36Cとを備えて構成されている。各デバイダ36L,36R,36Cは、刈取り前処理部3の刈取りフレーム19に支持されて前方に延出された左右の刈取フレーム71,73及び中央刈取フレーム72の前端部に固定されている。
【0050】
図4に示すように、正面視で左側デバイダ36Lの先端部がクローラ走行装置1の左側のクローラベルト1aの外端と部分的に重なるように、左側デバイダ36Lが配設されており、正面視で右側デバイダ36Rの先端部がクローラ走行装置1の右側のクローラベルト1aの外端部と重なるように、右側デバイダ36Rが配設されている。中央デバイダ36Cは、クローラ走行装置1の左右のクローラベルト1aの間に位置するように配設されており、右側引起し装置9Rと左側引起し装置9Lの左右中間位置に中央デバイダ36Cの先端部が位置するように配設されている。
【0051】
図12に示すように、刈取り前処理部3の刈り幅(左右のデバイダ36L,36Rの先端の左右幅W)は、左右のクローラ走行装置1のクローラベルト1aの左右外幅Hと略同じ寸法(クローラベルト1aの左右外幅間寸法Hより少し小さい寸法W)に設定されている。左側のデバイダ36Lの外側には、デバイダ36Lを支持する分草フレーム73の先端部近くから後方やや斜め上方に向けて分草杆38を取り付けてある。
【0052】
図12(a)に示すように、右側が既刈り地跡である場合の2条刈り作業時には、両引起し装置9R,9Lのそれぞれで1条づつ引き起しを行い、図12(b)に示すように、3条刈り作業時には両引起し装置9R,9Lで3条の引き起しを行う。
【0053】
図3、図4、図10及び図13に示すように、走行用のバックミラー39が、左側引起し装置9Lの上部に取り付けられている。バックミラー39はボルト孔を形成した取付けブラケット40とアーム41とを備え、取付けブラケット40は左側の後側引起しフレーム26Rの上部に、補強フレーム35を固定するボルト42で共締めしてある。ボルト42は、ネジ部のみが後向きに突出する状態で後側引起しフレーム26Rの上部に2本固定してあり、2本のボルト42に補強フレーム35の端部とバックミラー39の取付けブラケット40とを挿通して、補強フレーム35とバックミラー39のブラケット40とを共締めしてあるので、バックミラー39の取り付け強度が高く、新たな取付部材が不要で生産性が向上する。
【0054】
図3に示すように、バックミラー39の鏡43は、平面視で左デバイダ36Lよりも外側で、且つ機体の左最外側(脱穀装置5の運転部4とは反対側の横外側端69)よりも内側に位置し、後側引起しフレーム26Rへの取付けブラケット40の取付け位置よりも後方に位置するように配置してある。また、図4に示すように、バックミラー39の鏡43は、正面視で引起し装置9Lの上端位置よりも上方で、鏡43の上下中間部が略補強フレーム35の横杆部(脱穀装置5の上面)の位置となるように配置してある。つまり、バックミラー39のアーム41を後側引起しフレーム26Rの背面上方位置より側面視で左側引起し装置9Lの向きに沿った後方上方に向く姿勢でかつ正面視で外方上方に向く姿勢で延出してある。バックミラー39の位置は、路上走行において、刈取り前処理部3を支点p周りで上昇させた状態で、機体左側後方が見やすく、作業中はフィードチェーン15による穀稈の搬送状態や、フィードチェーン15の外側下方を見ることができるように設定されている。
【0055】
走行機体2の左側は、穀稈が植わっている未刈り側となるが、バックミラー39の位置を前記のように設定することによって、作業中はバックミラー39に植立穀稈に触れて穀粒が脱粒するということが回避でき、且つフィードチェーン15への穀稈の流れをバックミラー39で監視することができながら、路上走行時には後方の見通しがよく、左折時には後方を振り向くことなく走行することができる。
【0056】
〔別実施の形態〕
(1)エンジン回転計56としては、メータ式のものに限らず、エンジンの回転数を表示できる手段であれば、異なるものを採用してもよく、例えば、デジタル式のものや、複数のランプを順次点灯させるものであってもよい。
(2)取付け台54は、サイドパネル51の上部から立設したものに限らず、例えば、座席支持部材4bやデッキ部2a等から立設したものであってもよい。
(3)エンジン回転数56を脱穀装置5の前部の機体内側部分(側面、上面又は前面)から運転座席4a側に延出した取付け台(図示せず)に取り付ける構成を採用してもよい。
(4)エンジン回転計56は、表示面57を上向きに取り付けてもよく、又取付け台54が目線に近い高さであれば、エンジン回転計56の表示面57を前向きに取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、3条分の作物を処理可能に構成した自脱型のコンバインを例に示したが、4条以上の作物を処理可能に構成した自脱型のコンバインに適用してもよく、又普通型のコンバインにおいても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0058】
2 走行機体
3 刈取り前処理部
4 運転部
4a 運転座席
5 脱穀装置
6 穀粒回収タンク
7 穀粒排出オーガ
9L,9R 引起し装置
13 供給搬送装置
15 フィードチェーン
36 デバイダ
45 搭乗口
51 搭乗口とは反対側の横側部(サイドパネルの配設位置)
54 支持体(取付け台)
56 エンジン回転計
57 表示部
57a 表示面
58 アワメータ
60 センサー
62 警報器
p 横軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の左右一側部に運転座席を備えた運転部を配設し、前記運転部とは反対側に複数のデバイダと引起し装置と供給搬送装置を備え、走行機体に対して横軸心周りに昇降自在な刈取り前処理部を配設し、前記刈取り前処理部の後方に前記供給搬送装置で搬送されてきた穀稈をフィードチェーンで挟持搬送しながら脱穀する脱穀装置を配設し、前記脱穀装置の横側部で且つ前記運転座席の後方に、穀粒排出オーガを備えた穀粒回収タンクを配設してあるコンバインにおいて、
前記運転座席の後部の前記運転部の搭乗口とは反対側の横側部に、エンジン回転計を配設してあるコンバイン。
【請求項2】
前記エンジン回転計の表示面を前向きに形成してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記エンジン回転計の表示面を上方ほど後方に位置する斜め前向きに形成してある請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記運転座席の後部の前記搭乗口とは反対側の横側部に支持体を立設し、前記支持体の上部にエンジン回転計を備えてある請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記エンジン回転計の表示部に、エンジンの稼働時間の積算値を表示するアワメータを付設してある請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記支持体の下方に走行機体の左右傾斜を検出するセンサーを備えてある請求項4記載のコンバイン。
【請求項7】
前記支持体に前記センサーの検出に基づいて警報音を発する警報器を備えてある請求項6記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−67111(P2011−67111A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219498(P2009−219498)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】