説明

コンバイン

【課題】脱穀装置に供給される穀稈の搬送姿勢を安定させ、この穀稈の搬送姿勢を確認しやすいコンバインを提供する。
【解決手段】刈取装置(34)に設けた穀稈搬送装置(29)から脱穀装置(1)の一側に設けたフィードチェン(5)に穀稈の株元側を引継いで脱穀装置(1)の穀稈供給口(2)に供給するコンバインにおいて、穀稈供給口(2)と穀稈搬送装置(29)の間に、該穀稈搬送装置(29)から引継いだ穀稈の穂先側を穀稈供給口(2)に直接送り込む回転掻込体(4)を設け、穀稈供給口(2)を操縦席(30)の前後中心(C)より前側に設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、機体の前部に穀稈を刈り取る刈取装置を設け、機体の左右片側に脱穀装置を配置し、前記刈取装置で刈り取った穀稈を穀稈搬送装置で直立姿勢から横倒し姿勢に倒しながら脱穀装置の供給口に穀稈の穂先側を挿入して脱穀する。機体の左右方向で脱穀装置側と反対側には、作業者が搭乗する操縦台が前側で脱穀済穀粒を一時的に貯留するグレンタンクが後側に配置している。
【0003】
機体の前部下方に設ける刈取装置で圃場に植立した穀稈の株元を刈り取って搬送供給装置で穀稈の株元側と穂先側を挟持搬送して穀稈の穂先側を脱穀装置に供給して脱穀装置内の扱胴で穀粒を脱穀し選別部で選別して収穫する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−119368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のコンバインは特許文献1に示すように、穀稈搬送装置の終端から脱穀装置の穀稈供給口の間に穀稈の穂先側を穀稈供給口に案内する幅の広い穂先ガイド板が設けられている。そのため、穂先ガイド板上を移送される穀稈の穂先側は搬送作用が働かず穀稈の搬送姿勢が乱れたり、搬送姿勢が乱れた穀稈が穂先ガイド板上で停滞することで、詰まりを発生する問題があった。また、脱穀装置の前端に開口した穀稈供給口の位置が後方にあり、脱穀装置に供給される穀稈の状態を確認するためには、後方へ振り向かねばならず、進行方向から目を離す時間が長くなる虞があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消し、作業効率の良いコンバインを構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1記載の発明は、走行車台(28)の下側に走行装置(27)を設け、走行車台(28)の上側左右一側に脱穀装置(1)を設け、左右他側には操縦席(30)を有した操縦部(35)を設け、該操縦部(35)及び脱穀装置(1)の前側に刈取装置(34)を設け、該刈取装置(34)に設けた穀稈搬送装置(29)から脱穀装置(1)の一側に設けたフィードチェン(5)に穀稈の株元側を引継いで脱穀装置(1)の穀稈供給口(2)に供給するコンバインにおいて、前記穀稈搬送装置(29)の搬送終端部と穀稈供給口(2)の間に、該穀稈搬送装置(29)からフィードチェン(5)に引継いだ穀稈の穂先側を穀稈供給口(2)に送り込む回転掻込体(4)を設けると共に、前記穀稈供給口(2)を操縦席(30)の前後方向幅の中心部(C)よりも前側の部位に配置したことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記走行装置(27)の駆動速度を変速する変速レバー(31)と脱穀装置(1)の駆動を断続する脱穀クラッチレバー(32)を、操縦席(30)と回転掻込体(4)の間に設けるサイドパネル(33)に設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記フィードチェン(5)の搬送速度と回転掻込体(4)の回転速度とを、走行装置(27)の駆動速度に応じて変速させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインとした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記掻込回転掻込体(4)の上側に補助掻込回転体(6)を設け、該補助掻込回転体(6)の回転速度を走行装置(27)の駆動速度に応じて変速させ、該補助掻込回転体(6)と回転掻込体(4)で穀稈の穂先側を上下から挟み込みながら穀稈供給口(2)に送り込む構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のコンバインとした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記回転掻込体(4)を円筒状のブラシとしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバインとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、穀稈搬送装置(29)の搬送終端部と穀稈供給口(2)との間に、該穀稈搬送装置(29)からフィードチェン(5)に引継いだ穀稈の穂先側を穀稈供給口(2)に送り込む回転掻込体(4)を設けたので、穀稈を回転掻込体(4)により適正な搬送姿勢で穀稈供給口(2)に送り込むことができるので、コンバインによる刈取脱穀作業の能率が向上する。
【0013】
また、穀稈供給口(2)を操縦席(30)の前後方向幅の中心部(C)より前側の部位に配置したので、操縦席(30)に座った作業者が、後方へ振り向かなくても穀稈供給口(2)に供給される穀稈の状態を確認することができ、コンバインを安全に操縦できる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加えて、穀稈の搬送姿勢を確認しながら、変速レバー31の変速位置を確認しながら変速したり、脱穀クラッチレバー32の入・切位置を確認しながら脱穀装置1の駆動の断続を行なう操作も容易に行え、穀稈の搬送姿勢が乱れたり、穀稈供給口(2)に詰まりが生じたりした場合に、走行装置(2)の駆動速度を低下させて、脱穀装置(1)に供給される穀稈の量を減少させたり、脱穀装置の駆動を停止して、詰まりや搬送姿勢の乱れに早期に対応し、問題の悪化を防止することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2記載のは発明による効果に加えて、コンバインの刈取速度が速くなって刈取穀稈が多くなっても回転掻込体4で滞ることなく脱穀装置1に穀稈を滞りなく送り込むので穀稈の詰まりや搬送姿勢の乱れを防止できる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果に加えて、穀稈搬送装置(29)の終端まで送られた穀稈の穂先側が回転掻込体(4)と補助掻込回転体(6)で挟み込んだ状態で確実に脱穀装置(1)に供給することができる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明による効果に加えて、刈取穀稈をブラシで確実に捉えて穀稈供給口(2)から脱穀装置(1)内へ送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明実施例を示すコンバイン全体の右側面図である。
【図2】本発明実施例を示す脱穀装置の正断面図である。
【図3】本発明実施例を示す脱穀装置の平断面図である。
【図4】本発明実施例を示す脱穀装置の側断面図である。
【図5】本発明実施例を示す一部を破断したコンバイン全体右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
コンバインは、クローラによる走行装置27を備えた走行車台28上の左側に脱穀装置1を搭載し、この脱穀装置1の右側前に作業者が搭乗して操縦操作を行う操縦部35を構成し、操縦部35の後に穀粒を貯留するグレンタンク36を搭載している。
【0020】
操縦部35には、操縦席30を設け、フロントパネル38に操向レバー37を立設し、脱穀装置1側のサイドパネル33に変速レバー31と脱穀クラッチレバー32を立設している。
【0021】
植立穀稈を刈取って後方へ搬送する刈取装置34を走行車台28の前側に油圧シリンダ39で昇降可能に装着している。
刈取装置34で刈り取った刈取穀稈が穀稈搬送装置29で脱穀装置1のフィードチェン5に受け渡され、刈取穀稈の穂先側が脱穀装置1の穀稈供給口2下方に設ける後述する回転掻込体4で脱穀装置1の内部に掻き込まれる。
【0022】
回転掻込体4の位置は、その回転掻込体4の前端4aが操縦席30の前後方向における幅の中心部Cよりも前側になるようにしている。
脱穀装置1の内部には扱胴7を機体の前後方向に軸支し、この扱胴7の下側に形成する穀稈供給口2から刈取穀稈の穂先側を供給して脱穀機枠8の側部に設けるフィードチェン5で穀稈の株元側を挟持して後方へ搬送しながら脱穀するようにしている。
【0023】
機体前部下方に設ける刈取装置34で刈り取った穀稈は、株元搬送装置(図示省略)と穂先搬送装置3からなる穀稈搬送装置29で直立姿勢から横倒し姿勢に倒されて、株元側が株元搬送装置からフィードチェン5に引き継がれ、穂先側が穂先搬送装置3の終端から穀稈供給口2に供給される。
【0024】
穀稈供給口2の外側には、該穀稈供給口2を上下に挟む状態で下側の回転掻込体4と上側の補助掻込回転体6が設けられて、穀稈の穂先側を挟み込むように回転掻込体4と補助掻込回転体6が回転する。
【0025】
回転掻込体4と補助掻込回転体6は回転軸の外周へ円柱状にブラシを植立して、扱胴7の軸心の真下で回転掻込体4が穂先側回転掻込体4aと株元側回転掻込体4bに分割して軸支され、補助掻込回転体6が穂先側補助掻込回転体6aと株元側補助掻込回転体6bに分割して軸支され、それぞれ回転方向は回転掻込体4と補助掻込回転体6の前側で穀稈を取り込むように逆回転し、回転速度は、穂先側回転掻込体4aと穂先側補助掻込回転体6aが株元側回転掻込体4bと株元側補助掻込回転体6bよりも速くして穀稈の穂先側を先行して脱穀装置1に取り込むようにしている。また、回転掻込体4と補助掻込回転体6の回転速度は、コンバインの刈取走行速度に追従して速くなるようにしている。
【0026】
回転掻込体4の穂先側回転掻込体4aは、脱穀駆動軸9に固着の入力プーリ13から処理胴ギヤケース16の入力プーリ14にベルト15で駆動力が伝動し、さらに、入力プーリ14の回転が第一ギヤ17と第二ギヤ18を介して駆動力が伝動される。
【0027】
補助掻込回転体6の穂先側補助掻込回転体6aは、脱穀駆動軸9に固着の第一プーリ10から穂先側回転掻込体4aに固着の穂先プーリ11へ穂先駆動ベルト12で動力伝動される。
【0028】
回転掻込体4の株元側掻込回転体4bは、脱穀駆動軸9に固着の第二プーリ19から中継軸24に固着の株元プーリ20へ株元駆動ベルト21で動力伝動され、さらに第三ギヤ23と第四ギヤ22で動力伝動される。
【0029】
補助掻込回転体6の株元側補助掻込回転体6bは、前記第三ギヤ23に噛み合う第五ギヤ25で動力伝動される。
なお、脱穀駆動軸9の入力プーリ13にはエンジンの駆動力が入力し、脱穀駆動軸9に固着の選別駆動プーリ26から脱穀装置1の選別部へ動力が伝動される。
【0030】
前記実施例では、回転掻込体4と補助掻込回転体6は、穀稈供給口2に対して一定位置に固定されているが、扱ぎ深さを調整して穂先搬送装置3の終端位置が上下に変化する場合は、その穂先搬送装置3の昇降に連動して回転掻込体4と補助掻込回転体6を昇降して常に適正な穀稈取り込み位置になるようにする。
【0031】
株元搬送装置と穂先搬送装置3で穀稈供給口2へ送られた穀稈は、回転掻込体4と補助掻込回転体6の間に供給され、掻込作用を受けて脱穀装置1内へ送り込まれるが、穂先側が株元側よりも速く送り込まれることで穂先側が先行して送り込まれ、雑草が絡みついていても停滞することが無く、穀稈の露が払われて脱穀負荷を軽くし、脱穀装置1内から飛び出そうとする穀粒を回転掻込体4と補助掻込回転体6で遮って穀粒損失を少なく出来る。
【0032】
本実施例では下側に回転掻込体4を上側に補助掻込回転体6を配置しているが、下側の回転掻込体4のみでも良く、また、穂先側回転掻込体4aと株元側回転掻込体4bと二つに分けることなく、株元側から穂先側まで一体にしても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 脱穀装置
2 穀稈供給口
4 回転掻込体
5 フィードチェン
6 補助掻込回転体
27 走行装置
28 走行車台
29 穀稈搬送装置
30 操縦席
31 変速レバー
32 脱穀クラッチレバー
33 サイドパネル
34 刈取装置
C 前後中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車台(28)の下側に走行装置(27)を設け、走行車台(28)の上側左右一側に脱穀装置(1)を設け、左右他側には操縦席(30)を有した操縦部(35)を設け、該操縦部(35)及び脱穀装置(1)の前側に刈取装置(34)を設け、該刈取装置(34)に設けた穀稈搬送装置(29)から脱穀装置(1)の一側に設けたフィードチェン(5)に穀稈の株元側を引継いで脱穀装置(1)の穀稈供給口(2)に供給するコンバインにおいて、前記穀稈搬送装置(29)の搬送終端部と穀稈供給口(2)の間に、該穀稈搬送装置(29)からフィードチェン(5)に引継いだ穀稈の穂先側を穀稈供給口(2)に送り込む回転掻込体(4)を設けると共に、前記穀稈供給口(2)を操縦席(30)の前後方向幅の中心部(C)よりも前側の部位に配置したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記走行装置(27)の駆動速度を変速する変速レバー(31)と脱穀装置(1)の駆動を断続する脱穀クラッチレバー(32)を、操縦席(30)と回転掻込体(4)の間に設けるサイドパネル(33)に設けたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記フィードチェン(5)の搬送速度と回転掻込体(4)の回転速度とを、走行装置(27)の駆動速度に応じて変速させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記掻込回転掻込体(4)の上側に補助掻込回転体(6)を設け、該補助掻込回転体(6)の回転速度を走行装置(27)の駆動速度に応じて変速させ、該補助掻込回転体(6)と回転掻込体(4)で穀稈の穂先側を上下から挟み込みながら穀稈供給口(2)に送り込む構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記回転掻込体(4)を円筒状のブラシとしたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−157254(P2012−157254A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17334(P2011−17334)
【出願日】平成23年1月29日(2011.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】