説明

サイドウォール用ゴム組成物および空気入りタイヤ

【課題】加硫ゴムのゴム物性を低下させることなく、弾性率、耐疲労性および耐破壊特性をバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上することにより転がり抵抗の低減が可能なサイドウォール用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも1つを40〜70質量部、ポリブタジエンゴムを30〜60質量部含有するものであり、無機充填材は、その安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)(m/g)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であり、ゴム成分100質量部に対する無機充填材の含有量が、0.5〜15質量部であることを特徴とするサイドウォール用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともゴム成分および無機充填材を含有するサイドウォール用ゴム組成物および空気入りタイヤであって、加硫ゴムのゴム物性を低下させることなく、弾性率、耐疲労性および耐破壊特性をバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上させることにより転がり抵抗の低減が可能なサイドウォール用ゴム組成物および空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーボンブラックやシリカなどの補強用充填材で補強した加硫ゴムの弾性率(硬さ)や耐破壊特性(破断強度や引裂強度)を改良する手法として、特殊なカーボンブラックを使用したり、カーボンブラックの一部をシリカで置換する手法が挙げられる。これらの手法では、弾性率や耐破壊特性の改善効果は見られるが、未加硫時のゴム組成物の粘度が上昇するなど、加工性が劣るという不具合があった。また、ゴム組成物の加工性や、加硫ゴムの引裂強度を改善する手法として加工助剤やロジン系樹脂を添加する手法も提案されているが、加硫ゴムの弾性率や低発熱性が悪化し、タイヤの耐久力や転がり抵抗が上昇(悪化)する傾向があった。
【0003】
下記特許文献1では、タイヤのインナーライナー用ゴム組成物の加硫ゴムにおいて、良好な気密性を維持しつつ、引裂強度および耐疲労性を向上することを目的として、該ゴム組成物中に、所定のカーボンブラックと共に、扁平度合いの高いタルクを配合する手法が記載されている。しかしながら、かかる手法では、気密性は向上するが、引裂強度および耐疲労性の向上が不十分であり、この点でさらなる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−528739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加硫ゴムのゴム物性を低下させることなく、弾性率、耐疲労性および耐破壊特性をバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上することにより転がり抵抗の低減が可能なサイドウォール用ゴム組成物および空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。即ち、本発明に係るサイドウォール用ゴム組成物は、少なくともゴム成分および無機充填材を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、前記ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも1つを40〜70質量部、ポリブタジエンゴムを30〜60質量部含有するものであり、前記無機充填材は、その安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)(m/g)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であり、前記ゴム成分100質量部に対する前記無機充填材の含有量が、0.5〜15質量部であることを特徴とする。
【0007】
上記サイドウォール用ゴム組成物によれば、特定の扁平度合い(安息角)、特定の比表面積(BET5)、特定のストラクチャーの発達度合い((DBP)/(BET5))、および特定のモース硬度を有する無機充填材を0.5〜15質量部含有するため、その加硫ゴムのゴム物性が良好に維持されつつ、弾性率、耐疲労性および耐破壊特性がバランス良く向上し、かつ低発熱性が向上する。また、低発熱性の向上に伴い、かかるゴム組成物を用いた空気入りタイヤでは、転がり抵抗の低減が可能となる。
【0008】
上記サイドウォール用ゴム組成物において、前記無機充填材がタルクであることが好ましい。無機充填材としてタルクを使用した場合、加硫ゴムの弾性率、耐破壊特性、耐疲労性および低発熱性がよりバランス良く向上する。また、タルクは天然鉱物であり、かつ低コストであることから、環境面およびコスト面の両方から好ましい。
【0009】
上記サイドウォール用ゴム組成物において、さらに、カーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種からなる補強用充填材を含有し、前記補強用充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して30〜50質量部であることが好ましい。特定の扁平度合い、特定のストラクチャーの発達度合い、特定の比表面積、および特定のモース硬度を有する無機充填材と共に、カーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種からなる補強用充填材を、ゴム組成物中に30〜50質量部含有する場合、無機充填材の影響により、補強用充填材単独で含有する場合に比べて、ゴム組成物中での補強用充填材の分散性が向上する。このため、加硫ゴムの弾性率、耐破壊特性、耐疲労性、耐疲労性および低発熱性が特にバランス良く向上する。無機充填材と併用した場合に、補強用充填材の分散性が向上する原因については明らかではないが、無機充填材および補強用充填材をゴム成分と共に混練する際、無機充填材がゴム成分のポリマー中で滑るため、ポリマー内での補強用充填材の分散を補助する機能を果たすことが考えられる。
【0010】
上記サイドウォール用ゴム組成物において、ゴム組成物の加工性を維持しつつ、加硫ゴムの弾性率、耐破壊特性、耐疲労性および低発熱性をバランス良く向上するためには、補強用充填材として前記カーボンブラックを含有し、前記カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)(mg/g)が30〜100であり、ジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)が95〜160であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は前記いずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物を用いて製造されたサイドウォールを備える空気入りタイヤに関する。上述のとおり、本発明に係るゴム組成物の加硫ゴムは、弾性率、耐疲労性および耐破壊特性がバランス良く向上し、かつ低発熱性が向上する。したがって、かかるサイドウォール用ゴム組成物を原料として製造されたサイドウォールを備える空気入りタイヤは、耐久性に優れると共に、転がり抵抗の低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】無機充填材の安息角および高さ(H)を測定する器具および方法について示す側面図
【図2】本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るサイドウォール用ゴム組成物は、ゴム成分と無機充填材とを含有する。本発明においては、ゴム成分として、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも1つを40〜70質量部、ポリブタジエンゴムを30〜60質量部含有する。耐疲労性、耐破壊特性および低発熱性をバランス良く向上するためには、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも1つを60〜40質量部、ポリブタジエンゴムを40〜60質量部含有することが好ましい。
【0014】
天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)としては、必要に応じて、末端を変性したもの(例えば、末端変性BRなど)、あるいは所望の特性を付与すべく改質したもの(例えば、改質NR)も使用可能である。また、ポリブタジエンゴム(BR)については、コバルト(Co)触媒、ネオジム(Nd)触媒、ニッケル(Ni)触媒、チタン(Ti)触媒、リチウム(Li)触媒を用いて合成したものに加えて、WO2007−129670に記載のメタロセン錯体を含む重合触媒組成物を用いて合成したものも使用可能である。ポリブタジエンゴム(BR)としては、特にシス−1,4結合含有量が96%以上であるもの、あるいは末端変性されたものを好適に使用可能である。
【0015】
本発明に係るサイドウォール用ゴム組成物は、ゴム成分に加えて、安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上である無機充填材を含有する。無機充填材の安息角が40度未満であると、扁平率が高すぎる、あるいは粒子径が大きすぎるため、加硫ゴムの耐破壊特性および耐疲労性が低下する。また、無機充填材のモース硬度が2を超えると、ゴム中での分散性の低下や応力集中の原因となり、耐破壊特性、耐疲労性および低発熱性が悪化する。さらに、(DBP)/(BET5)が2未満であると、十分な補強効果が得られず、弾性率が低下する。加硫ゴムの弾性率、耐疲労性および耐破壊特性をバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上するためには、安息角を42度以上、モース硬度を1以下、BET5を10m/g以上、および/または(DBP)/(BET5)を3.0以上とすることが好ましい。なお、安息角の上限については50度以下、BET5の上限については30m/g以下、および/または(DBP)/(BET5)の上限については10以下が例示される。
【0016】
無機充填材の安息角は、以下の方法により測定可能である。
【0017】
(無機充填材の安息角および高さ(H)を測定する器具および方法)
図1に示すように、10gの粉末試料1、強化ガラス製の漏斗2(口径45mm、脚内径5mm、全長90mm、脚長さ45mm)、漏斗2を支持して固定する漏斗架台3、及び、漏斗2の脚の下端の排出口21を塞(ふさ)ぐためのゴム栓を用いる。漏斗架台3の高さ調整により、水平台板4から、漏斗2の排出口21までの高さが4cmとなるようにする。漏斗2の排出口21をゴム栓で塞いだ状態で10gの粉末試料をガラス製漏斗中に注いだ後、静かにゴム栓を抜く。粉末試料1が水平台板4上に、ほぼ正確な円錐形状の山をなしたことを確認した上で、この円錐形状の山の高さ(H)及び径(D)を測定する。また、この測定に基づき、下記式(1):
tan(安息角)=H/(D/2) (1)
から「安息角」(度)を求める。
【0018】
本発明において使用する無機充填材は、前記の方法により測定した安息角が小さいほど、扁平度合いが高い(高扁平)。高扁平である無機充填材をゴム組成物中に配合した場合、特に耐疲労性および耐破壊特性が悪化する。同様に、前記の方法により測定した高さ(H)が低いほど、無機充填材の扁平度合いが高くなる(高扁平となる)。このため、前記の方法により測定した高さ(H)が30mm以上となる、低扁平の無機充填材をゴム組成物中に配合した場合、特に加硫ゴムの耐疲労性および耐破壊特性が向上するため好ましい。
【0019】
本発明に係るサイドウォール用ゴム組成物中の無機充填材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5〜15質量部に設定する。無機充填材の含有量をかかる範囲内に設定することにより、加硫ゴムの弾性率、耐破壊特性、耐疲労性および低発熱性をバランス良く向上することができる。加硫ゴムの前記物性をよりバランス良く向上するためには、ゴム成分100質量部に対する無機充填材の含有量を0.5〜10質量部とすることが好ましい。
【0020】
無機充填材としては、例えばタルクが挙げられる。無機充填材としてタルクを使用した場合、加硫ゴムの弾性率、耐破壊特性、耐疲労性および低発熱性がバランス良く向上する。
【0021】
タルクは、天然滑石という鉱石を微粉砕して得られる無機粉末であって、含水珪酸マグネシウム[MgSi10(OH)]を主成分とする。本発明においては、市販品のタルクも好適に使用可能であり、例えば日本ミストロン社製の「MISTRON VAPOR RE」(安息角44度、モース硬度1、(BET5)13.4m/g、(DBP)/(BET5)3.7)、日本タルク社製の「P−6」(安息角44度、モース硬度1、(BET5)10.5m/g、(DBP)/(BET5)4.3)などを好適に使用できる。
【0022】
補強用充填材として、本発明においてはカーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種を使用する。カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられ、特に含水珪酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。補強用充填材の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して20〜50質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。
【0023】
本発明においては、サイドウォールの耐疲労性を向上するために、ゴム組成物中に老化防止剤を配合することが好ましい。老化防止剤としては、ゴム用として通常用いられる、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などの老化防止剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。ただし、老化防止剤の配合量が多すぎると、老化防止剤のブリードに伴い、サイドウォールの外観性が悪化する恐れがあるため、ゴム成分100質量部に対する老化防止剤の配合量は、2〜7質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。
【0024】
本発明に係るゴム組成物は、上記ゴム成分、カーボンブラックおよびシリカなどの充填材、老化防止剤とともに、硫黄、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲において適宜配合し用いることができる。ただし、サイドウォールの外観性を考慮した場合、ゴム組成物中にオイルを含有しないことが好ましい。
【0025】
硫黄は通常のゴム用硫黄であればよく、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する硫黄の配合量は、硫黄分換算で0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜3質量部がより好ましい。
【0026】
加硫促進剤としては、ゴム加硫用として通常用いられる、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などの加硫促進剤を単独、または適宜混合して使用しても良い。加硫後のゴム物性や耐久性などを考慮した場合、ゴム成分100質量部に対する加硫促進剤の配合量は、0.1〜5質量部が好ましい。
【0027】
本発明に係るゴム組成物は、上記ゴム成分、無機充填材、補強用充填材、老化防止剤、必要に応じて硫黄、シラン系カップリング剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などの通常ゴム工業で使用される配合剤を、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練りすることにより得られる。
【0028】
また、上記各成分の配合方法は特に限定されず、硫黄および加硫促進剤などの加硫系成分以外の配合成分を予め混練してマスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、ゴム成分およびカーボンブラックのみを予め混練マスターバッチとし、残りの成分を添加してさらに混練する方法、各成分を任意の順序で添加し混練する方法、全成分を同時に添加して混練する方法などのいずれでもよい。なお、ゴム成分およびカーボンブラックを予めマスターバッチとする場合、ゴムラテックスにカーボンブラックを混入して得られるウエットマスターバッチを使用してもよい。
【0029】
図2に示すとおり、本発明に係る空気入りタイヤは、一対のビードワイヤー101と、該ビードワイヤー101のタイヤ径方向外側に配されたビードフィラー102と、ビードワイヤー101およびビードフィラー102から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール103と、サイドウォール103の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド104と、一対のビードワイヤー101で端部側がタイヤ幅方向内側から外側に巻き上げられたカーカスプライ105と、カーカスプライ105の外周側(タイヤ径方向外側)に配された複数のベルトプライからなるベルト106と、を備える。トレッド104は、単一のゴム部で構成してもよく、あるいは接地面側のキャップトレッドとタイヤ径方向内側のベーストレッドとの2層で構成してもよい。
【0030】
ビードワイヤー101およびビードフィラー102のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ105を介して、チェーハー107およびリムストリップ108が配され、リムストリップ108がタイヤリム(図示せず)に接するように着座する。ビードフィラー102のタイヤ径方向外側には、チェーハー107を挟み込むようにチェーハーパッド109が配される。一方、カーカスプライ105の内周側には、空気圧保持のためのインナーライナー110が配されている。また、ベルト106の端部側であって、タイヤ径方向内側にはショルダーパッド111が配され、複数のベルトプライ端部の間にはベルトエッジフィラー112が配される。
【0031】
本発明に係るサイドウォール用ゴム組成物を原料として製造されたサイドウォール103を備えた未加硫タイヤを成型した後、公知の方法に従い加硫することで、弾性率、耐疲労性および耐破壊特性をバランス良く向上し、かつ低発熱性を向上することにより転がり抵抗の低減が可能なサイドウォールを備える空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、実施例などにおける評価項目は、各ゴム組成物を150℃にて30分間加熱、加硫して得られたゴムサンプルを下記の評価条件に基づいて評価を行った。
【0033】
(1)ゴム組成物の加工性
JIS K6300に準拠し、100℃にてムーニー粘度(ML1+4)を測定した。評価は、比較例1の測定値と比較して、測定値が同等以上のものを○、劣るものを×とした。
【0034】
(2)破断強度(耐破壊特性)
JIS K6251に準拠し、ダンベル3号を用いてサンプルを作製して引張試験を行い、サンプル破断時の破断強度(MPa)を測定した。破断強度が大きいほど、耐破壊特性が良好であることを意味する。
【0035】
(3)耐疲労性
JIS K6260に準拠してデマチャ屈曲試験機を用い、比較例1の亀裂発生回数と比較して、測定値が同等以上のものを○、劣るものを×とした。
【0036】
(4)低発熱性(tanδ)
UBM社製粘弾性スペクトロメータを用いて、初期歪み15%、動的歪み±2.5%、周波数10Hz、温度60℃で測定したtanδ値に基づいて評価を行った。tanδ値が低いほど、発熱性が低く、良好であることを意味する。
【0037】
(5)外観性
ゴム組成物を使用して、厚み2mmの試験片を作製し、150℃−30分加硫後の試験片を日光に20日間照射した。照射後の試験片を目視により観察し、比較例1を基準として茶色または白色への変色の度合いを、以下の基準に基づき相対的に評価した。
○;比較例1と同程度の変色を示した
△;比較例1よりも変色の度合いが大きい
×;比較例1よりも変色の度合いが大きく、完全に変色している
【0038】
(ゴム組成物の調製)
表1〜表2の配合処方に従い、実施例1〜12および比較例1〜10のゴム組成物を配合し、通常のバンバリーミキサーを用いて混練し、ゴム組成物を調整した。表1〜表2に記載の各配合剤を以下に示す(表1〜表2において、各配合剤の配合量を、ゴム成分100質量部に対する質量部数で示す)。なお、下記無機充填材(A)〜(F)の安息角、高さ(H)(前記「無機充填材の安息角および高さ(H)を測定する方法」により測定された高さ(H))、比表面積(BET5)、ストラクチャーの発達度合い((DBP)/(BET5))、およびモース硬度については、表3に示す。
a)ゴム成分
天然ゴム(NR) 「RSS#3」
ポリブタジエンゴム−(1)(BR−(1)) 「BR150L(cis−1,4結合含有量98%品)」、(宇部興産社製)
ポリブタジエンゴム−(2)(BR−(2)) 「BR1250H(末端スズ変性品)」、(バイエル社製)
b)カーボンブラック
カーボンブラック(HAF) 「シースト3((IA)=80(mg/g)、(DBP吸収量)=101(ml/100g)」、東海カーボン社製
カーボンブラック(FEF) 「シーストSO((IA)=44(mg/g)、(DBP吸収量)=115(ml/100g)」、東海カーボン社製
c)シリカ 「ニップシールAQ」、(日本シリカ工業社製)
d)ロジン樹脂 中国ロジン、荒川化学工業社製
e)無機充填材
無機充填材(A) 「MISTRON VAPOR RE」、日本ミストロン社製
無機充填材(B) 「P−6」、日本タルク社製
無機充填材(C) 「SW」、日本タルク社製
無機充填材(D) 「HAR」、日本ミストロン社製
無機充填材(E) 「白艶華CC」、白石工業社製
無機充填材(F) 「ハードクレー」、白石工業社製
f)亜鉛華 「亜鉛華1号」、(三井金属鉱業社製)
g)ステアリン酸 「ビーズステアリン酸」、日油社製
h)硫黄 鶴見化学社製
i)加硫促進剤CBS「サンセラーCM−G」、三新化学工業社製
j)シランカップリング剤 「Si75」、Degussa社製
k)オイル 「プロセスP200」、(JOMO社製)
l)ワックス 「OZOACE0355」、(日本精蝋社製)
m)老化防止剤 「アンチゲン6C」、(住友化学工業社製)
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
表1の結果から、実施例1〜12に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、加工性および外観性を維持しつつ、耐疲労性および耐破壊特性がバランス良く向上し、かつ低発熱性が向上することがわかる。一方、表2の結果から、ロジン樹脂を配合した比較例2に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、発熱性および耐破壊特性が悪化することがわかる。また、BET5が大きく、大粒径のタルクを使用した比較例3に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、耐疲労性が悪化することがわかる。また、高扁平のタルクを使用した比較例4に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、耐疲労性および耐破壊特性が悪化することがわかる。
【0042】
また、モース硬度の高い炭酸カルシウムを使用した比較例5に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、低発熱性、耐疲労性および耐破壊特性が悪化することがわかる。また、高扁平のクレーを使用した比較例6に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、耐疲労性および耐破壊特性が悪化することがわかる。また、無機充填材の配合量が多い比較例7に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、加工性、低発熱性、耐疲労性および耐破壊特性が悪化することがわかる。さらに、天然ゴムのみ(比較例8)および天然ゴムの配合量が多い(比較例9)ゴム組成物の加硫ゴムでは、耐疲労性、低発熱性または加工性のいずれかが悪化し、ポリブタジエンゴムの配合量の多い比較例10に係るゴム組成物の加硫ゴムでは、耐疲労性が悪化することがわかる。
【0043】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゴム成分および無機充填材を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、
前記ゴム成分の全量を100質量部としたとき、天然ゴムおよびポリイソプレンゴムの少なくとも1つを40〜70質量部、ポリブタジエンゴムを30〜60質量部含有するものであり、
前記無機充填材は、その安息角が40度以上、モース硬度が2.0以下、BET比表面積(BET5)(m/g)が10m/g以上、かつジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)とBET比表面積(BET5)(m/g)との比(DBP)/(BET5)が2.0以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記無機充填材の含有量が、0.5〜15質量部であることを特徴とするサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記無機充填材がタルクである請求項1に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項3】
さらに、カーボンブラックおよびシリカの少なくとも1種からなる補強用充填材を含有し、前記補強用充填材の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して20〜50質量部である請求項1または2に記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項4】
補強用充填材として前記カーボンブラックを含有し、前記カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)(mg/g)が30〜100であり、ジブチルフタレート(DBP)吸収量(ml/100g)が95〜160である請求項1〜3のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のサイドウォール用ゴム組成物を用いて製造されたサイドウォールを備える空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−10910(P2013−10910A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145946(P2011−145946)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】