説明

サイドディスチャージモーア

【課題】モーアデッキ内部における風の乱流や逆流を抑えて、刈草がスムーズに排出されるサイドディスチャージモーアを提供すること。
【解決手段】隣接する一対の回転ブレード22L,22Cの間に位置するバキュームプレートの部分51から、排出口23側に位置する下手側回転ブレード22Cの回転方向Aに沿って前方に案内部53aを延出し、下手側回転ブレード22Cの縦軸心XC側に湾曲して平面視で下手側回転ブレード22Cの回転軌跡に入り込むように、案内部53aを下手側回転ブレード22Cの上方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦軸心周りに回転駆動される複数の回転ブレードを、モーアデッキの内部に並列配置し、前記モーアデッキの内部後側に、前記各回転ブレードの先端が描く回転軌跡の後部側に沿うように形成したバキュームプレートを設け、前記モーアデッキの左右一側端に刈草の排出口を形成して、刈草が前記各回転ブレードの前側を前記排出口に向かって流動して排出されるサイドディスチャージモーアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種類のモーアでは、モーアデッキの内部に配置された隣接する一対の回転ブレードのうちの刈草流動方向で上手側に位置する回転ブレードによる風は、下手側に位置する他方の回転ブレードによる風と合流しながら、下手側の回転ブレードの回転領域を通過して、排出口に向けて流動するように構成されている。回転ブレードによって刈り取られた刈草は、回転ブレードによる風に乗って、各回転ブレードの前側を排出口に向かって流動して排出される(特許文献1参照)。尚、各回転ブレードの先端が描く回転軌跡の後部側に沿うように形成したバキュームプレートは、各回転ブレードの回転中心(縦軸心)と同心の円弧が並設配置された形状を有しており、円弧同士の境付近は略左右対称の山形状をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−72960号公報(図3及び図6の50,51,52参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バキュームプレートの山形状部は隣接する一対の回転ブレードの間に位置しており、下手側の回転ブレードによる風の一部は山形状部の先端部分の接線方向に沿って上手側の回転ブレードの回転領域側に流れようとする。このため、上手側の回転ブレードによる風と衝突して乱流が生じたり、あるいは風が逆流して風抜けが悪くなるという問題が生じていた。
風抜けが悪くなると風速が低下するため、刈草が滞留して塊を形成し易くなる。その結果、刈草の放出性が悪化して消費馬力の増大を招くと共に、刈草の塊が刈跡地に散在して見栄えも悪くなる。
従って本発明の目的は、モーアデッキ内部における風の乱流や逆流を抑えて、刈草がスムーズに排出されるサイドディスチャージモーアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る第1特徴構成は、縦軸心周りに回転駆動される複数の回転ブレードを、モーアデッキの内部に並列配置し、前記モーアデッキの内部後側に、前記各回転ブレードの先端が描く回転軌跡の後部側に沿うように形成したバキュームプレートを設け、前記モーアデッキの左右一側端に刈草の排出口を形成して、刈草が前記各回転ブレードの前側を前記排出口に向かって流動して排出されるサイドディスチャージモーアであって、隣接する一対の前記回転ブレードの間に位置する前記バキュームプレートの部分から、前記排出口側に位置する下手側回転ブレードの回転方向に沿って前方に案内部を延出し、前記下手側回転ブレードの縦軸心側に湾曲して平面視で前記下手側回転ブレードの回転軌跡に入り込むように、前記案内部を前記下手側回転ブレードの上方に配置してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、案内部が下手側回転ブレードの回転軌跡に入り込んでいるので、下手側回転ブレードによる風は、バキュームプレートから案内部に沿って下手側回転ブレードの回転領域側に流れ易くなる。言い換えれば、下手側回転ブレードによる風は、下手側回転ブレードと隣接する上手側回転ブレードの回転領域側に流れ難くなる。その結果、上手側回転ブレードによる風と下手側回転ブレードによる風との衝突が生じ難く、風の乱流や逆流の発生が抑えられるため、風抜けが悪化することはなく、刈草は塊を形成することなくスムーズに排出される。
【0007】
本発明に係る第2特徴構成は、前記下手側回転ブレードの回転軌跡に沿う円弧状の下手側案内部を、前記案内部の端部から前方への延長線の近傍に前記下手側案内部の前記排出口とは反対側の端部が位置するように、前記下手側回転ブレードの前側に備えてある点にある。
【0008】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、下手側回転ブレードにより案内部の端部から前方に流れた風は、下手側案内部の排出口とは反対側の端部の近傍に到達して、そのまま下手側案内部に沿って排出口側に案内されるため、下手側回転ブレードの回転領域内に流れ易くなる。その結果、下手側回転ブレードによる風が、上手側回転ブレードの回転領域側に流れることがより一層防止されて、上手側回転ブレードによる風との衝突が回避されるため乱流や逆流の発生がさらにより効果的に抑えられる。尚、案内部の延長方向は、必ずしも下手側案内部の端部に向いている必要はなく、案内部によって誘導された風が、下手側案内部の端部の近傍に到達すれば円滑な風の流れが確保できる。即ち、上記「案内部の延長線の近傍に、下手側案内部の排出口とは反対側の端部が位置する」とは、下手側案内部の端部を、案内部によって誘導された風の円滑な流れを確保するような位置に配置すること意味するものであり、滑らかな風の流れが確保される範囲で、その位置を適宜設定変更することができる。
【0009】
本発明に係る第3特徴構成は、隣接する一対の前記回転ブレードにおける前記排出口とは反対側の上手側回転ブレードの前側に、前記上手側回転ブレードの回転軌跡に沿った円弧状の上手側案内部を備え、前記上手側案内部の前記排出口側の端部から排出口側への延長線が、前記下手側回転ブレードの縦軸心と前記下手側回転ブレードの回転領域の前端との間に位置するように、前記上手側案内部を構成してある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、上手側回転ブレードによる風が上手側案内部に沿って、下手側回転ブレードの縦軸心と下手側回転ブレードの回転領域の前端との間の空間に流れ易くなる。この場合、上手側回転ブレードにより上手側案内部から下手側回転ブレードの回転領域に流入する風は、下手側回転ブレードの回転によって生じている風に対して鋭角に合流するので、上手側回転ブレードによる風と、下手側回転ブレードによる風との合流がスムーズに行われて、風抜けが良くなり刈草が効率良く排出される。
【0011】
本発明に係る第4特徴構成は、前記案内部の先端から、前記上手側回転ブレードの回転軌跡の内側であって前記上手側回転ブレードの縦軸心の前側に延設される延長案内部を備える点にある。
【0012】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、上手側回転ブレードによる風の一部が、延長案内部に当たり、延長案内部に沿って、下手側回転ブレードの回転領域(下手側回転ブレードの縦軸心よりも前側)に流入する。これにより、案内部に沿って流れる下手側回転ブレードによる風に対して、上手側回転ブレードによる延長案内部からの風が鋭角に合流して、風抜けが良くなり刈草がより効率良く排出される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】乗用型草刈機の全体側面図
【図2】乗用型草刈機の全体平面図
【図3】モーアの平面図
【図4】モーアの底面図
【図5】モーアの縦断側面図
【図6】モーアデッキを底面から見た斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(乗用型草刈機)
図1及び図2に示すように、乗用型草刈機は、左右一対の前車輪1,1と左右一対の後車輪2,2とを有した自走車体と、この自走車体の車体フレーム3の前車輪1と後車輪2との間にリンク機構4を介して装着された本発明に係るサイドディスチャージモーア20(以下、単にモーア20と称する)とを備えている。
【0015】
この乗用型草刈機は、草刈りや芝刈り作業を行うものである。すなわち、リンク機構4の左右一対の後揺動リンク4b,4bを一体揺動自在に支持している支軸4dに連結された昇降シリンダ14を操作すると、リンク機構4が昇降シリンダ14によって車体フレーム3に対して上下に揺動操作され、モーア20をゲージ輪25が地面に略接地した下降作業状態と、ゲージ輪25が地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。
【0016】
リンク機構4は、車体フレーム3とモーア20のモーアデッキ21の前端側とにわたって連結されて、モーア20の前端側を車体フレーム3に昇降自在に連結している左右一対の前揺動リンク4a,4aと、車体フレーム3とモーアデッキ21の後端側とにわたって連結されて、モーア20の後端側を車体フレーム3に昇降自在に連結している左右一対の後揺動リンク4b,4bと、左右両側において前揺動リンク4aと後揺動リンク4bとにわたって連結された連動リンク4cとを備えている。
【0017】
モーア20を下降作業状態にして自走車体を走行させると、モーア20は、モーアデッキ21の内部に位置する3枚の回転ブレード22L,22C,22Rによって草や芝の刈り処理を行い、刈草を各回転ブレード22L,22C,22Rの回転によって発生した風によってモーアデッキ21の内部をモーアデッキ21の右端に位置する排出口23に搬送し、この排出口23から放出ガイド24によって案内させながら自走車体横外側に放出する。
【0018】
自走車体は、左右一対の前車輪1,1と左右一対の後車輪2,2とを備える他、車体後部に設けたエンジン5を有した原動部と、運転座席6及び左右一対の操縦レバー7,7を有した運転部と、運転座席6の後側近くに位置した転倒保護枠8と、左右の後車輪2,2を支持する伝動装置9と、伝動装置9の前部に位置する動力取り出し軸10の駆動力をモーア20の回転ブレード駆動機構30に伝達する回転軸11とを備えている。
【0019】
左右の前車輪1は、車体フレーム3の前部に連結された前輪支持フレーム12の端部に前輪支持フォーク13を介して縦軸心周りに遊転自在に支持されている。左右の前車輪1は、前輪支持フォーク13と共に前輪支持フレーム12に対して自由に揺動する。左右の後車輪2,2は、伝動装置9が備える一対の静油圧式無段変速装置(図示せず)によって各別に駆動され、左右一対の操縦レバー7,7による一対の静油圧式無段変速装置の各別な変速操作によって各別に前進側及び後進側に変速され、かつ停止操作される。
【0020】
図3に示すように、モーア20は、モーアデッキ21の横方向での中央部の前側と後側とにモーアデッキ21の横方向に並べて設けた一対の接地ローラ61,61,62,62を備えている。
【0021】
前側の左右一対の接地ローラ61,61は、モーアデッキ21の前縦壁21bに連結された左右一対の支持部材63に支軸64を介して遊転自在に支持されている。前側の左右一対の接地ローラ61,61は、地面に隆起部などの障害物があると、この障害物に乗り上がってモーアデッキ21の前端側を障害物に突っ込まないように接地支持しながら障害物を乗り越えていく。
【0022】
後側の左右一対の接地ローラ62,62は、バキュームプレート50と後縦壁21cとにわたって連結された左右一対の支持部材60,60の通気口33(図6参照)から後方に突出した部位に支軸65を介して遊転自在に支持されている。後側の左右一対の接地ローラ62,62は、地面に隆起部などの障害物があると、この障害物に乗り上がってモーアデッキ21の後端側を障害物に突っ込まないように接地支持しながら障害物を乗り越えていく。この左右一対の接地ローラ62,62は、通気口33の通気障害になりにくいように接地ローラ62の全体が通気口33から後方に突出した配置で支持されている。
【0023】
(モーア)
図3及び図4に示すように、モーア20は、モーアデッキ21と、3枚の回転ブレード22R,22C,22Lと、ゲージ輪25とを備える他、モーアデッキ21の内部に各回転ブレード22R,22C,22Lよりも前側に設けたバッフルプレート40と、モーアデッキ21の内部後側に各回転ブレード22R,22C,22Lの先端が描く回転軌跡の後部側に沿うように形成したバキュームプレート50と、モーアデッキ21の右端に形成された排出口23とを備えている。
【0024】
モーアデッキ21は、天板21aと、この天板21aの前縁部からモーアデッキ21の下方向きに延出した前縦壁21bと、天板21aの後縁部からモーアデッキ21の下向きに延出した後縦壁21cと、天板21aの横端部からモーアデッキ21の下向きに延出した横縦壁21dとによって構成され、自走機体の下方向きに開口した容器形になっている。
【0025】
モーアデッキ21の排出口23は、天板21aの右端と前縦壁21bの右端とバキュームプレート50の円弧部50Rの端部とによって形成されている。
【0026】
図6に示すように、後縦壁21cは、その中央部位に設けた通気口33と、その通気口33の両横側に設けた第2通気口34,34とを備えている。
【0027】
図3及び図4に示すように、3枚の回転ブレード22R,22C,22Lは、モーアデッキ21の内部に横方向に並列配置されている。尚、3枚の回転ブレード22R,22C,22Lのうち、モーアデッキ21の横方向での中央に位置する回転ブレード22C(下手側回転ブレード)が、少し前方に偏位するように平面視で三角配置される。回転ブレード22L(上手側回転ブレード)は、排出口23から最も離れて存在し、且つ刈草流動方向での最上手に位置する。回転ブレード22Rは、排出口23の最も近くに位置し、且つ刈草流動方向での最下手に位置する。
【0028】
回転ブレード22R,22C,22Lのそれぞれは、モーアデッキ21の天板21aにベアリング支持ケースで成る支持部材26(図5参照)を介して回転自在に支持された駆動軸27の下端部に回転自在に支持されている。これにより、回転ブレード22R,22C,22Lのそれぞれは、駆動軸27のモーアデッキ21上下方向の縦軸芯XR,XC,XL周りに駆動軸27と共に回転駆動する。尚、回転ブレード22R,22C,22Lのそれぞれは、その両端部に設けた切断刃28と、各切断刃28の背後側に設けた起風羽根29とを備えている。
【0029】
バッフルプレート40は、バッフルプレート40の長手方向での複数箇所に連結された取り付けボルト45によってモーアデッキ21に連結されている。バッフルプレート40は、バッフルプレート40の長手方向に並べて連結ボルト46によって連結された2枚の分割帯板によって構成してある。
【0030】
バキュームプレート50は、回転ブレード22R,22C,22Lの縦軸芯XR,XC,XLのそれぞれと同心の円弧部50R,50C,50Lが並設配置された形状を有しており、円弧部同士の境付近は略左右対称の第1山形状部51及び第2山形状部52をなす。
第1山形状部51は、隣接する回転ブレード22Lと回転ブレード22Cの間に位置し、第2山形状部52は、隣接する回転ブレード22Rと回転ブレード22Cの間に位置する。
【0031】
図4、図5、図6に示すように、第1山形状部51の先端から第1案内部53aが前方に延出されている。第1案内部53aは、回転ブレード22Cの縦軸心XC側に例えば、同じ曲率で湾曲して平面視で回転ブレード22Cの回転軌跡に入り込むように、第1山形状部51の先端から回転ブレード22Cの回転方向に沿って前方に延出される。詳細には、図4に示すように、平面視において第1案内部53aは、回転ブレード22Lの縦軸心XLと回転ブレード22Cの縦軸心XCとを結ぶ直線M1と、回転ブレード22Cの先端が描く回転軌跡との交点P1の近くで、回転ブレード22Cの先端の回転軌跡の外側から内側に交差しており、交点P1から前側に行くほど、回転ブレード22Cの先端の回転軌跡との距離が徐々に遠くなるように入り込んでいる。尚、図5に示すように、第1案内部53aは、モーアデッキ21の天板21aから垂れ下がるように、回転ブレード22Cの上方に配置してある。
【0032】
図4、図5、図6に示すように、第1案内部53aの先端には回転ブレード22C側に湾曲する湾曲部57が設けられており、第1延長案内部54が、湾曲部57から回転ブレード22Lの回転領域22LA内の縦軸心XLの前側まで延設される。尚、第1延長案内部54の端部は、縦軸芯XLを通る前後軸よりも少し右側の位置まで延設すると、回転ブレード22Lによる風が回転領域22CAの側に流れ易くなるため好都合である。
【0033】
図5及び図6に示すように、第1延長案内部54の下辺及び湾曲部57の下辺は、第1案内部53aの下辺よりも高い位置に位置する。第1延長案内部54の先端部分には斜め上向きの傾斜が設けられており、第1案内部53aの下辺と湾曲部57の下辺との間にも斜め上向きの傾斜が設けられている。図4に示すように、平面視で第1延長案内部54から回転ブレード22C側へ延びる延長線L3は、回転ブレード22Cの縦軸心XCの少し前側に位置しており、第2延長案内部55の中間部と交差する。
【0034】
また、第2山形状部52の先端から第2案内部53bが前方に延出されている。第2案内部53bは上記第1案内部53aと同形状に構成されており、回転ブレード22Rの縦軸心XR側に例えば、同じ曲率で湾曲して平面視で回転ブレード22Rの回転軌跡に入り込むように、第2山形状部52の先端から回転ブレード22Rの回転方向に沿って前方に延出される。詳細には、図4に示すように、平面視において第2案内部53bは、回転ブレード22Rの縦軸心XRと回転ブレード22Cの縦軸心XCとを結ぶ直線M2と、回転ブレード22Rの先端が描く回転軌跡との交点P2の近くで、回転ブレード22Rの先端の回転軌跡の外側から内側に交差しており、交点P2から前側に行くほど、回転ブレード22Rの先端の回転軌跡との距離が徐々に遠くなるように入り込んでいる。この場合、回転ブレード22Cが上手側回転ブレードとなり、回転ブレード22Rが下手側回転ブレードとなる。
【0035】
第2案内部53bの先端には回転ブレード22R側に湾曲する湾曲部58が設けられており、第2延長案内部55が、湾曲部58から回転ブレード22Cの回転領域22CA内の縦軸心XCの前側であって縦軸芯XCを通る前後軸よりも右側の位置まで延設される。
【0036】
図6に示すように、上述の第1延長案内部54、湾曲部57、及び第1案内部53aと同様に、第2延長案内部55の下辺及び湾曲部58の下辺は、第2案内部53bの下辺よりも高い位置に位置する。第2延長案内部55の先端部分には斜め上向きの傾斜が設けられており、第2案内部53bの下辺と湾曲部58の下辺との間にも斜め上向きの傾斜が設けられている。図4に示すように、第2延長案内部55から回転ブレード22R側へ延びる延長線L4は、回転ブレード22Rの縦軸心XRの少し前側に位置している。
【0037】
図4に示すように、バキュームプレート50の円弧部50Rの右端部に、第3延長案内部56が備えられており、第3延長案内部56は、円弧部50Rの右端から回転ブレード22Rの回転領域22RA内であってその縦軸心XRの前側であって縦軸芯XRを通る前後軸よりも右側の位置まで延設される。
【0038】
バッフルプレート40は、回転ブレード22Lの回転軌跡に沿うように回転ブレード22Lの回転領域22LAの前方に配置される円弧状の上手側案内部40Lと、回転ブレード22Cの回転軌跡に沿うように回転領域22CAの前方に配置される円弧状の第1下手側案内部40Cと、回転ブレード22Rの回転領域22RAの前方に配置されて排出口23側に延びる第2下手側案内部40Rとを備えて構成されている。
【0039】
尚、上手側案内部40Lと第1下手側案内部40Cとの間には、これらの案内部とは逆円弧状の連結部40Sが設けられている。上手側案内部40Lと連結部40Sとの境界付近に変曲点P3が存在し、第1下手側案内部40Cと連結部40Sとの境界付近に変曲点P4が存在する。
【0040】
上手側案内部40Lは、回転ブレード22Lの回転軌跡に沿った円弧形状を有して、回転ブレード22Lの半径よりも大きな半径(曲率)を備えており、回転ブレード22Lの回転領域22LAから少し離れて回転ブレード22Lの前側に配置される。上手側案内部40Lの排出口23側の端部の排出口23側への延長線L1、即ち変曲点P3における接線は、回転ブレード22Cの縦軸心XCと回転ブレード22Cの回転領域22CAの前端との間に位置し、且つ第2延長案内部55の先端部分と接する。
【0041】
第1下手側案内部40Cは、回転ブレード22Cの回転軌跡に沿う円弧形状を有しており、回転ブレード22Cの前側に配置される。このとき図4に示すように、第1案内部53aの端部から前方への延長線L2、即ち、第1案内部53aの端部における前方への接線が連結部40Sと交差しており、その交点P5の近傍に、第1下手側案内部40Cの排出口23とは反対側の端部(変曲点P4)が位置する。
【0042】
エンジン5からの駆動力は、回転軸11によって回転ブレード駆動機構30に伝達される。回転ブレード駆動機構30に伝達された駆動力は、回転ブレード22Cの駆動軸27を駆動すると共に、3つの駆動軸27,27,27にわたって巻き掛けられているベルト31を介して、回転ブレード22R,22Lのそれぞれの駆動軸27,27を駆動する。これにより、各回転ブレード22R,22C,22Lは、それぞれの縦軸芯XL,XC,XR周りで回転方向Aに回転駆動する。
【0043】
回転ブレード22R,22Lは、それぞれの起風羽根29の起風作用により、モーアデッキ21の外部の空気をモーアデッキ21の前縦壁21b、横縦壁21d、及びバキュームプレート50の下方から回転領域22RA,22LAに導入して空気流を発生させ、芝や草を空気流によって起立させながら切断刃28によって切断処理する。回転ブレード22Cは、その起風羽根29の起風作用により、モーアデッキ21の外部の空気をモーアデッキ21の前縦壁21bの下方から、さらに後縦壁21cの下方と通気口33と各第2通気口34とからバキュームプレート50の下方を通してそれぞれ回転領域22CAに導入して空気流を発生させ、芝、草を空気流によって起立させながら切断刃28によって切断処理する。
【0044】
各回転ブレード22R,22C,22Lによって切断処理された刈草は、各回転ブレード22R,22C,22Lの起風羽根29によって発生した風により、バキュームプレート50及びバッフルプレート40に案内されてモーアデッキ21の内部を排出口23の位置する横一端側に搬送されて、排出口23からモーアデッキ21の横外側に放出される。
【0045】
(モーアデッキ内の風の流動)
図4に示すように、回転ブレード22Lの起風羽根29の回転によって回転領域22LAに発生した風は、白抜きの矢印に示すように上手側案内部40L及び第1延長案内部54によって案内されて、回転ブレード22Cの回転領域22CAに向けて流動する。
【0046】
上手側案内部40Lの排出口23側の端部(変曲点P3)の延長線L1は、回転ブレード22Cの縦軸心XCと回転ブレード22Cの回転領域22CAの前端との間に位置する。
【0047】
このため、回転ブレード22Lによる風は、上手側案内部40Lに沿って、回転ブレード22Cの縦軸心XCと回転ブレード22Cの回転領域22CAの前端との間の空間に流れ易くなる。この場合、回転ブレード22Lにより上手側案内部40Lから回転ブレード22Cの回転領域22CAに流入する風は、回転ブレード22Cの回転によって生じている風に対して鋭角に合流するので、回転ブレード22Lによる風と、回転ブレード22Cによる風との合流がスムーズに行われて、風抜けが良くなり刈草が効率良く排出される。
【0048】
また、第1案内部53aが回転ブレード22Cの回転軌跡に入り込んでいるので、回転ブレード22Cの起風羽根29の回転によって回転領域22CAに発生した風は、バキュームプレート50の円弧部50Cから第1案内部53aに沿って回転ブレード22Cの回転領域22CA側に流れ易くなる。言い換えれば、回転ブレード22Cによる風は、回転ブレード22Cと隣接する回転ブレード22Lの回転領域22LA側に流れ難くなる。
【0049】
そのため、回転ブレード22Lによる風と回転ブレード22Cによる風との衝突が生じ難く、風の乱流や逆流の発生が抑えられるため、風抜けが悪化することはなく、刈草は塊を形成することなくスムーズに排出される。
【0050】
また、回転ブレード22Lによる風の一部は、第1延長案内部54に当たり、第1延長案内部54に沿って、回転ブレード22Cの回転領域22CA(回転ブレード22Cの縦軸心XCよりも前側)に流入する。これにより、第1案内部53aに沿って流れる回転ブレード22Cによる風に対して、回転ブレード22Lによる第1延長案内部54からの風が鋭角に合流して、風抜けが良くなり刈草がより効率良く排出される。
【0051】
第1下手側案内部40C及び第2延長案内部55は、回転ブレード22L,22Cのそれぞれの起風羽根29,29の回転によって発生した風と、回転ブレード22L,22Cのそれぞれの切断刃28,28によって刈り取られた刈草とを、第2下手側案内部40Rと回転ブレード22Rの縦軸心XRとの間の空間に案内する。
【0052】
尚、回転ブレード22Cにより第1案内部53aの端部から前方に流れた風は、第1下手側案内部40Cの排出口23とは反対側の端部(変曲点P4)に到達して、そのまま第1下手側案内部40Cに沿って排出口23側に案内されるため、回転ブレード22Cの回転領域22CA内に流れ易くなる。その結果、回転ブレード22Cによる風が、回転ブレード22Lの回転領域22LA側に流れることがより一層防止されて、回転ブレード22Lによる風との衝突が回避されるため乱流や逆流の発生がさらにより効果的に抑えられる。
【0053】
また、回転ブレード22Cによる風の一部は、第2延長案内部55に当たり、第2延長案内部55に沿って、回転ブレード22Rの回転領域22RA(回転ブレード22Rの縦軸心XRよりも前側)に流入する。これにより、第2案内部53bに沿って流れる回転ブレード22Rによる風が、回転ブレード22Cによる第2延長案内部55からの風に対して鋭角に合流して、風抜けが良くなり刈草がより効率良く排出される。
【0054】
第2下手側案内部40R及び第3延長案内部56は、回転ブレード22L,22C,22Lのそれぞれの起風羽根29,29,29の回転によって発生した風と、回転ブレード22L,22C,22Lのそれぞれの切断刃28,28,28によって刈り取られた刈草とを、排出口23に案内する。
【0055】
尚、回転ブレード22Rにより第2案内部53bの端部から前方に流れた風は、第2下手側案内部40Rに到達して、第2下手側案内部40Rにより排出口23に流れ易くなる。また、回転ブレード22Rによる風の一部は、第3延長案内部56に当たり、第3延長案内部56に沿って排出口23から排出される。
【0056】
〔別実施形態〕
(1)前述の実施形態における第1及び第2案内部53a,53bを第1及び第2山形状部51,52の先端に設けるのではなく、第1及び第2山形状部51,52の先端から少し後側(図4の紙面下側)のバキュームプレート50(円弧部50R,50C,50L)の部分から前方に延出するように構成しても良い。
(2)本発明は、上記実施形態の如く3枚の回転ブレードを備えたモーアの他、2枚の回転ブレードを備えたモーアにも、4枚以上の回転ブレードを備えたモーアにも適応できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、前後輪の間にモーアを支持した乗用型草刈機だけでなく、前輪の前側にモーアを備える乗用型草刈機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
20 モーア
21 モーアデッキ
22L 回転ブレード(上手側回転ブレード)
22C 回転ブレード(下手側回転ブレード)
22CA,22LA 回転領域
23 排出口
40 バッフルプレート
40C 下手側案内部
40L 上手側案内部
50 バキュームプレート
51 第1山形状部(部分)
53a 第1案内部(案内部)
54 第1延長案内部(延長案内部)
XL,XC 縦軸芯
L1,L2 延長線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸心周りに回転駆動される複数の回転ブレードを、モーアデッキの内部に並列配置し、前記モーアデッキの内部後側に、前記各回転ブレードの先端が描く回転軌跡の後部側に沿うように形成したバキュームプレートを設け、前記モーアデッキの左右一側端に刈草の排出口を形成して、刈草が前記各回転ブレードの前側を前記排出口に向かって流動して排出されるサイドディスチャージモーアであって、
隣接する一対の前記回転ブレードの間に位置する前記バキュームプレートの部分から、前記排出口側に位置する下手側回転ブレードの回転方向に沿って前方に案内部を延出し、
前記下手側回転ブレードの縦軸心側に湾曲して平面視で前記下手側回転ブレードの回転軌跡に入り込むように、前記案内部を前記下手側回転ブレードの上方に配置してあるサイドディスチャージモーア。
【請求項2】
前記下手側回転ブレードの回転軌跡に沿う円弧状の下手側案内部を、前記案内部の端部から前方への延長線の近傍に前記下手側案内部の前記排出口とは反対側の端部が位置するように、前記下手側回転ブレードの前側に備えてある請求項1に記載のサイドディスチャージモーア。
【請求項3】
隣接する一対の前記回転ブレードにおける前記排出口とは反対側の上手側回転ブレードの前側に、前記上手側回転ブレードの回転軌跡に沿った円弧状の上手側案内部を備え、
前記上手側案内部の前記排出口側の端部から排出口側への延長線が、前記下手側回転ブレードの縦軸心と前記下手側回転ブレードの回転領域の前端との間に位置するように、前記上手側案内部を構成してある請求項1又は2に記載のサイドディスチャージモーア。
【請求項4】
前記案内部の先端から、前記上手側回転ブレードの回転領域内であって前記上手側回転ブレードの縦軸心の前側に延設される延長案内部を備える請求項3に記載のサイドディスチャージモーア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147390(P2011−147390A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11332(P2010−11332)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】