説明

ショーケース

【課題】エアーカーテンが形成される取出口の状態を変えることができるショーケースを提供する。
【解決手段】ハウジング10は、前方が取出口16となった陳列室17と、この陳列室17に対し、取出口16にエアーカーテンが形成されるような風を供給するようにアレンジされたダクト18aおよび18bとを含む。風供給ユニット30は、ダクト18aおよび18bを介して風を供給可能である。扉ユニット50は、取出口16に対応する形状に形成されたフレーム部材51と、透明部材55を具備し、フレーム部材51に対して動くように支持された2つの扉部材52aおよび52bとを含む。この扉ユニット50は、一体でハウジング10の取出口16に着脱自在に取り付けられる。この扉ユニット50が取出口16に取り付けられた状態では、2つの扉部材52aおよび52bにより取出口16の一部が開閉可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品や飲料缶などの商品を陳列することができるショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、卓上に設置するための冷蔵ショーケースが開示されている。この冷蔵ショーケースは、上面および左右両側面が透明板により閉塞され、前後両面が透明扉で閉塞された、縦長の展示箱を有しており、前後の透明扉を旋回して開閉するようになっている。
【特許文献1】特開昭64−46556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ショーケースとしては、商品を取り出し易くするためなどの目的で、陳列室が外界に開放するように前方の一部に取出口が形成されたもの(以下、オープンタイプという)が知られている。このようなオープンタイプのショーケースでは、外界と陳列室とが取出口を介して連通した状態となるため、外界と陳列室内との間で温度や湿度などの条件を保ちにくく、取出口にエアーカーテンを形成するなどの方法が検討されている。
【0004】
一方、ショーケースとしては、取出口に扉を設け、通常では取出口を閉塞させておき、商品を取り出すときや商品を補充するときなどにのみ扉を開いて、取出口の一部を開放させるもの(以下、クローズタイプ(クローズドタイプ)という)もある。このようなクローズタイプのショーケースは、陳列室内を冷蔵状態にする場合などのように、外界と陳列室内との環境差が比較的大きいときに特に有効である。また、このようなクローズタイプのショーケースは、オープンタイプのショーケースよりも、少ないエネルギーで、陳列室内の環境を保持できるというメリットもある。しかし、クローズタイプは扉があるため利用者が商品を取りにくいというデメリットがある。
【0005】
したがって、展示する商品、季節、さらに、客の流れなどの条件に応じて、オープンタイプのショーケースと、クローズタイプのショーケースとを使い分けることができれば、商品の展示のバリエーションが増加する。しかしながら、オープンタイプのショーケースと、クローズタイプのショーケースとを用意し、これらを必要に応じて店内に配置しなおしたり、入れ替えたりすることは面倒であり、また、経済的であるとも言えない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、ハウジングと風供給ユニットと扉ユニットとを有するショーケースである。ハウジングは、前方の少なくとも一部が取出口となった陳列室と、取出口にエアーカーテンが形成されるような風をこの陳列室に対し供給するようにアレンジされたダクトとを含む。風供給ユニットは、ハウジングのダクトを介して風を供給可能である。扉ユニットは、取出口に対応する形状に形成されたフレーム部材と、少なくとも1つの扉部材とを含む。扉部材は、透明部材を具備し、フレーム部材に対して動くように支持されている。この扉ユニットは、一体でハウジングの取出口に着脱自在に取り付けられる。この扉ユニットが取出口に取り付けられた状態では、少なくとも1つの扉部材がフレームに対して動くことにより取出口の一部が開閉可能となる。
【0007】
このショーケースによれば、一体に形成された扉ユニットを、ハウジングに対して、取り付けたり、取り外したりすることができる。したがって、オープンタイプのショーケースとクローズタイプのショーケースとの双方を用意することなく、一体に形成された扉ユニットをハウジングに対し着脱するだけで、展示する商品、季節、および客の流れなどの条件に応じて、オープンタイプのショーケースのように使用したり、クローズタイプのショーケースのように使用したりすることができる。したがって、ショーケースを店内で配置しなおしたり、入れ替えたりすることを省くことができ、また、経済的である。
【0008】
また、このショーケースによれば、扉ユニットは、取出口に対応する形状に形成されたフレーム部材と、フレーム部材に対して動くように支持された少なくとも1つの扉部材とを含んで、一体で取出口に着脱できる。このため、フレーム部材などの各パーツを分解・組立てしたり、パーツの状態で保管したりすることを省くことができる。例えば、扉をフレームから取り外した後、ねじ止めされたようなフレームをハウジングから取り外すといった、複数段階の手間をかけることなく、扉ユニットをハウジングから容易に取り外すだけで、取出口を開放させることができる。取り付けの際も同様に、この扉ユニットは、ハウジングに容易に取り付けることができる。
【0009】
また、このショーケースによれば、扉部材を外した後、取出口の近傍にフレーム部材が残るようなことがない。取出口の近傍にフレーム部材が残ると、オープンタイプのショーケースとしては、外観上好ましくないだけではなく、汚れの除去も難しくなるので衛生上も好ましいとは言えない。まして、取出口の近傍は、客などの目に留まり易い部分である。
【0010】
すなわち、このショーケースによれば、扉ユニットを取り付けている状態においては、外観も機能もクローズタイプとほぼ同様である。一方、扉ユニットをハウジングから取り外した状態においては、外観も機能もオープンタイプとほぼ同様である。したがって、扉ユニットを取り付けているときと、扉ユニットを外したときとにおいて、外観も機能もそれぞれのタイプの専用のショーケースと同様に取り扱うことができる。
【0011】
さらに、扉ユニットは、フレーム部材に対して動くように支持された少なくとも1つの扉部材を含んでいる。このため、この扉ユニットをハウジングに取り付けた状態であっても、少なくとも1つの扉部材をフレームに対して動かすことにより、取出口の一部を開閉させることができる。したがって、陳列室内からの商品の取り出しや、陳列室内への商品の搬入を、クローズタイプのショーケースと同様に行うことができる。さらに、この扉ユニットは、エアーカーテンが形成される取出口に取り付けられているので、扉部材を動かして取出口の一部を開けたときにもエアーカーテンの効果は得られる。したがって、単に扉により開閉されるクローズタイプのショーケースに対して、陳列室内を外界に対してより隔離し易いショーケースを提供できる。
【0012】
このショーケースにおいて、ダクトが、取出口の近傍の空気の吸込みまたは取出口近傍への風の吹出しのための開口を備えている場合、扉ユニットをハウジングから取り外した(離脱させた)状態において、上記開口を全開とし、扉ユニットをハウジングに取り付けた(装着した)ときに、上記開口の一部を閉塞させるようにすることが好ましい。
【0013】
これは、例えば、上記開口の開度を調節するためのスイッチを設けておき、扉ユニットの着脱によって、このスイッチがオン・オフされるような構造としておくことにより実現可能である。好ましくは、扉ユニットをハウジングに取り付けることにより、扉ユニットの一部が上記開口の少なくとも一部と干渉し、上記開口の有効開口面積が減るようにするとよい。この場合、スイッチや電気的な配線などが不要であり、シンプルな構造で、上記開口の開度を調節できる。
【0014】
扉ユニットをハウジングから取り外した状態において、上記開口が全開となり、扉ユニットをハウジングに取り付けたときに、上記開口の一部を閉塞するように構成したショーケースや、扉ユニットをハウジングに取り付けることにより、扉ユニットの一部が上記開口の少なくとも一部と干渉し、上記開口の有効開口面積が減るように構成したショーケースは、陳列室内を外界に対してある程度隔離し、陳列室内の温度あるいは湿度などの条件を一定に保つためのショーケースに好適である。例えば、冷風あるいは温風を吹き出すことにより温度調節されたショーケースである。
【0015】
冷蔵ショーケースを例にすると、オープンタイプのショーケースのように使用する場合、外界と陳列室との間に隔たりが無いため、エアーカーテンの風量を、比較的大きくする必要がある。一方、クローズタイプのショーケースとして使用する場合、通常は、扉ユニットにより外界と陳列室との間が隔てられているため、エアーカーテンの風量がさほど大きくなくても、陳列室内の温度を比較的低温に保持することができる。さらに、ダクトを介して循環する風量を小さくすることにより、より低温の風を陳列室内に供給できる。したがって、クローズタイプにすることにより、外界との遮断性能が向上するだけではなく、陳列室内の温度をさらに低く保つことが可能となる。
【0016】
上記開口が取出口の下方に設けられている場合、上記開口は、陳列室の底の高さよりも低い位置に設けることが好ましい。このようにすることにより、扉ユニットをハウジングに取り付けた状態において、扉ユニットが結露しても、陳列室内にその結露水が流れ込むことを抑制できる。
【0017】
ペルチェ素子を備えた風供給ユニットは、冷風あるいは温風を供給可能なコンパクトな風供給ユニットに適している。したがって、冷蔵あるいは温蔵のショーケースを小型化することができる。したがって、例えば、コンビニエンスストアなどの棚に設置するのに適当な小型の冷蔵ショーケースを提供することが可能である。
【0018】
さらに、このショーケースによれば、ハウジングのダクトが、陳列室の下方および後方に配置され、取出口の下端と陳列室の上方後側にそれぞれ開口(例えば、一方が空気を吸込むための開口であって、他方が風(空気)を吹出すための開口)が形成されている場合、ハウジングは、さらに、陳列室の上方後側から取出口の上端に達する透明な天蓋を有し、この天蓋により、陳列室の上方後側に設けられたダクトの開口と取出口との間の送風をガイドさせるようにすることが好ましい。上述のような透明な天蓋は、室内光を陳列室の内部に導いて商品を見やすくする機能と、陳列室の上方(上方後側)に設けられたダクトの開口と取出口との間の送風をガイドする機能とを兼ね備えるため、このショーケースの好ましい実施形態の一つといえる。
【0019】
このショーケースによれば、扉ユニットの形状や様式などは任意である。したがって、扉ユニットが備える少なくとも1つの扉部材は、例えば、スイングタイプのものであってもよい。扉ユニットの好ましい実施形態の一つとしては、透明部材と、この透明部材を保持する枠体と、この枠体の外周に取り付けられたローラーとを具備する複数の扉部材を備えたものを挙げることができる。この場合、フレーム部材の上部内面および下部内面に、それぞれ、複数の扉部材に相当するような複数のガイド溝を形成し、扉部材を、それぞれ、フレーム部材にスライド自在に保持させるとよい。このようにすることにより、比較的簡単な構成で、スライドタイプの扉を実現できる。
【0020】
さらに、このショーケースにおいて、扉ユニットをハウジングに取り付ける機構は、はめ込みやネジ止めなどの他、どのような機構であってもよい。着脱の容易さと、ハウジング側に取り付けのための構造が残りにくいことを考えると、扉ユニットをハウジングに取り付ける機構は、はめ込みが好ましい。扉ユニットをハウジングにはめ込みにより取り付ける場合、フレーム部材の外周にシール部材を設けておくことが好ましい。フレーム部材の外周にシール部材を設けることにより、扉ユニットをハウジングの取出口に取り付けたときに、シール部材がフレーム部材と取出口を規定する内面との間に位置する。このため、はめ込みであっても、扉ユニットをハウジングに安定して取り付けることができ、しかも、これらの間の気密性を高めることができる。
【0021】
すなわち、本発明の他の形態は、前方の少なくとも一部が取出口となった陳列室を含むハウジングを有し、取出口にエアーカーテンを形成可能なショーケースの取出口に、着脱自在に嵌め込まれる(取り付けられる)扉ユニットである。この扉ユニットは、取出口に対応する形状に形成されたフレーム部材と、透明部材を具備し、フレーム部材に対して動くように支持された少なくとも1つの扉部材と、フレーム部材の外周に設けられたシール部材とを有して、一体に形成されている。この扉ユニットは、シール部材がフレーム部材と取出口を規定する内面との間に位置するように、ハウジングの取出口に取り付け可能である。
【0022】
本発明の他の態様の1つは、取出口に着脱可能な扉ユニットである。例えば、既存のオープンタイプのショーケースの取出口に着脱できるものは、ショーケース自体を取り替えずに、クローズタイプとしての機能を得ることが可能となり、経済的である。
【0023】
なお、シール部材は、フレームの外周を囲むように全域に設けてもよく、また、フレームの外周の一部に設けてもよい。シール部材は、例えば、フレームの上端および下端、フレームの左右の両側、あるいは、フレームの外周に断続的に設けるなどしてもよい。
【0024】
本発明のさらに他の形態は、エアーカーテンを形成可能なショーケースの風量調節方法である。ショーケースは、前方の少なくとも一部が取出口となった陳列室と、この陳列室に対し、取出口にエアーカーテンが形成されるような風を供給するようにアレンジされたダクトとを含むハウジングと、ダクトを介して風を供給可能な風供給ユニットと、一体でハウジングの取出口に着脱自在に取り付けられる扉ユニットとを有する。ダクトは、取出口の近傍の空気の吸込みまたは取出口近傍への風の吹出しのための開口を備えている。当該風量調節方法は、扉ユニットをハウジングに取り付けることにより、扉ユニットの一部を開口の少なくとも一部と干渉させ、開口の有効開口面積を減らすことを含む。
【0025】
扉ユニットをハウジングに取り付けて使用する場合、通常は、扉ユニットにより外界と陳列室との間が隔てられているため、扉ユニットをハウジングから取り外して使用する場合と比べ、エアーカーテンの風量が減り、冷蔵の場合は供給される風の温度を下げて陳列室内をさらに低温の所望の環境に保持することができる。すなわち、この風量調整方法によれば、冷蔵用のショーケースにおいては、扉ユニットを取り付けるという一つのアクションで、陳列室内の条件を、さらに低温冷蔵に適した状態にセットできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、図面を参照して本発明の一実施形態について詳しく説明する。図1に、本発明の一実施形態に係るショーケースの外観を斜視図により示している。図2に、図1のショーケースを分解斜視図により示している。図3に、図1のショーケースを扉ユニットが取り付けられた状態で断面図により示している。図4に、図1のショーケースを扉ユニットが取り外された状態で断面図により示している。このショーケース1は、コンビニエンスストアでゴンドラと称される常温で展示される商品の棚に設置できるサイズおよび重量のショーケースであり、食料品や飲料缶などの商品を冷蔵する装置としての機能と、商品を展示するショーケースとしての機能を兼ね備えている。
【0027】
このショーケース1は、陳列室17を含むハウジング10と、陳列室17に冷風を供給するための風供給ユニット30と、陳列室17の取出口16に取り付けられる扉ユニット50とを有している。ハウジング10は、陳列室17の上部を覆う透明な天蓋(天井)11と、陳列室17の両側壁12および13、後壁14、および下壁15とを有して、横長に形成されている。透明な天蓋11は、軽量で、強度もあり、断熱性能も高い、中空の二重アクリル構造の壁体が採用されている。透明な天蓋11は、上壁となる部分11aがほぼ平らであって、前側の部分11bが下側に湾曲した形状に形成され、取出口16の上端を形成している。
【0028】
ハウジング10の前方は、その一部が開放されて商品の取出口16となり、内部に横長の陳列室17が形成されている。さらに、ハウジング10は、取出口16にエアーカーテンが形成されるような風をこの陳列室17に対し供給するようにアレンジされたダクト18aおよび18bとを含んでいる。陳列室17の内部には、第1および第2の陳列棚19aおよび19bが配置されている。第2の陳列棚19bは、陳列室17の底(床)17aを兼ねている。
【0029】
ダクト18aおよび18bは、それぞれ、陳列室17の下方および後方に延びている。ダクト18aは、取出口16の下端(陳列室17の前端部の下側)に形成された複数の第1の開口21を有する。ダクト18bは、陳列室17の上方後側(陳列室17の上端部の後側)に形成された複数の第2の開口22を有する。第1の開口21は、取出口16の下方であって、陳列室17の底の高さよりも低い位置に設けられている。ダクト18aおよび18bの下方および後方には、それぞれ、断熱材23aおよび23bが設けられており、断熱材23bの後方(ハウジング10の後方)には、排熱路24がハウジング10の内部を上下に延びている。排熱路24の下方には、制御ユニットを含む基板25が配置されている。
【0030】
本例のショーケース1では、複数の第1の開口21が、空気を吸込むための吸込み口であり、複数の第2の開口22が風(空気)を吹出すための吹出し口である。また、上述した透明な屋根11は、前側の部分11bの先端部11cが、取出口16の上端を構成しており、店舗室内光を陳列室17の内部に導いて商品を見やすくすると共に、陳列室17の上方に設けられた複数の吹出し口22と取出口16の間の送風をガイドする機能を果たしている。
【0031】
風供給ユニット30は、ペルチェ素子ユニット31と、送風用のクロスフローファン32と有しており、ダクト18aおよび18bを介して取出口16に上方から下方に流れるエアーカーテンを形成するための冷風を供給する。クロスフローファン32は、上下に延びるダクト18bの上部の開口22から冷風を吹き出すことにより、ダクト18aおよびダクト18bの内に、ダクト18aの先端の開口(吸込み口)21から吸い込まれた空気がダクト18bの上端の開口(吹出し口)22に向かう流れを形成する。ペルチェ素子ユニット31は、ダクト18bの途上に配置されており、ダクト18aおよび18bを流れて、ダクト18bの上端の開口22から吹出される空気を冷却する。この風供給ユニット30は複数のペルチェ素子(図では1つのみ図示)31aを備えており、ペルチェ素子31aに接続された第1のフィン31bは、上下に延びるダクト18bに突き出しており、第2のフィン31cは、排熱路24に突き出している。排熱路24内には、第2のフィン31cの後方に、排熱ファン40が配置され、排熱ファン40の下方には、風向ガイド41が設けられている。ペルチェ素子ユニット31により、第1のフィン31bにより吸熱された熱は、第2のフィン31cによって排熱路24を通ってハウジング10の外部に放出される。
【0032】
クロスフローファン32により吹出し口22から陳列室17に水平方向前向きに吹出された冷風は、天蓋11前側の先端部分が下側に湾曲した形状となっているため、天蓋11の先端部分に沿って冷風は下方に向けて流れる。取出口16の下側に配置された、ダクト18aの吸込み口21は、取出口16の下側の空気を吸い込む。その結果、取出口16に上方から下方に向いて冷風が流れ、エアーカーテンが形成される。
【0033】
図5に、ハウジング10の取出口16の着脱可能な扉ユニット50を正面図により示している。図6に、図5中のVI-VI線に沿って切断した断面図を示している。この扉ユニット50は、図3に示すように取出口16に取り付けることにより陳列室17をクローズタイプにすることができる。また、図4に示すように、扉ユニット50を取出口16から取り外すと、陳列室17をオープンタイプにすることができる。扉ユニット50は、取出口16に対応する形状に形成されたフレーム部材51と、フレーム部材51に対して動くように支持された2つの扉部材52aおよび52bとを含み、一体で取出口16に装着できるように組み立てられている。フレーム部材51は、上部材51aと、上部材51aに対し平行に配置される下部材51bと、互いに平行に配置される左右の側部材51cおよび51dとを有して、枠状に一体化に形成されている。上部材51aおよび下部材51bとしては、例えば、合成樹脂材料により形成されたものを用いることができる。左右の側部材51cおよび51dとしては、例えば、アルミニウムの押し出し成形物、あるいは、合成樹脂材料により形成されたものを用いることができる。
【0034】
フレーム部材51には、その外周を囲むように、断面が略長円状のシール部材53が設けられている。シール部材53としては、例えば、シリコンゴムの押し出し成形物、シリコン発泡材、あるいは、発泡ポリウレタン材料などにより形成されたものを用いることができる。フレーム部材51の上部内面となる上部材51aの内面と、フレーム部材51の下部内面となる下部材51bの内面とには、2つの扉部材52aおよび52bと対応するように、2つのガイド溝54aおよび54bが形成されている。
【0035】
2つの扉部材52aおよび52bは、それぞれ、透明部材55と、透明部材55を保持する枠体56と、この枠体56の外周に取り付けられた複数のローラーユニット57とを有している。透明部材55は、軽量で、強度もあり、断熱性能も高いアクリル板を、2枚合わせてなる壁体が採用されている。扉ユニット50をハウジング10に取り付けても、透明部材55を介して、陳列室17内の商品を外界から視認することができる。また、透明部材55を介して、陳列室17内に外界からの光を取り込んで、陳列室17内を明るくすることができる。
【0036】
複数のローラーユニット57は、それぞれ、ローラー57aと、ローラー57aを回転自在に支持する支持部材57bとを有している。枠体56は、透明部材55を挟み込んで、これを保持するとともに、複数のローラーユニット57の支持部材57bを挟み込んで、これらを保持している。2つの扉部材52aおよび52bは、それぞれ、フレーム部材51に形成された2つのガイド溝54aおよび54bにスライド自在に保持されている。
【0037】
この扉ユニット50は、一体でハウジング10の取出口16に着脱される。図1および図3に示すように、扉ユニット50をハウジング10の取出口16に取り付けた状態では、2つの扉部材52aおよび52bをフレーム部材51に対してスライドさせることにより、取出口16の一部が開閉される。この場合、このショーケース1は、クローズタイプのショーケースのように使用することができる。一方、図2および図4に示すように、一体でハウジング10の取出口16から取り外すこともできる。この場合、このショーケース1は、オープンタイプのショーケースのように使用することができる。
【0038】
図7に、図3中の一点鎖線VIIで囲まれた領域を拡大して示している。図8に、図4中の一点鎖線VIIIで囲まれた領域を拡大して示している。本例のショーケース1は、上述のように、陳列室17内(庫内)を冷蔵状態に保持可能な冷蔵ショーケースである。オープンタイプのショーケース1のように使用する場合、外界と陳列室17との間に壁などの隔たりが無い。このため、外界から陳列室17を有効に遮断し陳列室17の条件を維持するにはエアーカーテンの風量を、比較的大きくする必要がある。一方、クローズタイプのショーケース1として使用する場合、通常は、扉ユニット50により外界と陳列室17との間が隔てられている。このため、エアーカーテンの風量がさほど大きくなくても、陳列室17内の温度を比較的低温に保持することができる。
【0039】
本例のショーケース1では、複数の第1の開口21は、取出口16の下端(陳列室17の前端部の下側)に形成されており、扉ユニット50をハウジング10から取り外した(離脱させた)状態において、複数の第1の開口21が全開となる。一方、扉ユニット50をハウジング10に取り付けた(装着した)ときに、扉ユニット50の一部が複数の第1の開口21の一部と干渉し、これら第1の開口21の有効開口面積が減るようになっている。このため、第1の開口21の圧力損失が増大するので、風供給ユニット30に吸い込まれる空気量が減り、陳列室17の内部を循環する冷風の量が減る。
【0040】
すなわち、本例のショーケース1は、扉ユニット50を取り付けた状態と、扉ユニット50を取り外した状態とにおいて、用途や、外見だけでなく、陳列室17内の温度条件も異ならせることができる。本例のショーケース1では、扉ユニット50をハウジング10の取出口16に取り付けた状態では、図7に示すように、開口21は幅bになる。したがって、開口21の有効開口面積は、全開の状態の幅aに対して、開口面積がb/aとなり、(a−b)/aだけ減る。風供給ユニット30の吸込み量が減り、エアーカーテンを形成するために風供給ユニット30から供給される風量が減る。さらに、風供給ユニット30のペルチェ素子ユニット31により冷却される風量が減るので、風供給ユニット30から陳列室17に供給される冷風の温度は低下する。本例では、例えば、外気温度が25℃程度のとき、陳列室17内を8℃以下程度に保持できる。
【0041】
一方、扉ユニット50をハウジング10の取出口16から取り外した状態では、図8に示すように、開口21は幅aの状態なので、有効開口面積は全開時の状態となる。したがって、風供給ユニット30から陳列室17に供給される風量は増え、冷風の温度はクローズドの状態のようには低下しない。本例のショーケース1では、オープン状態では、外気温度が25℃程度のとき、陳列室17内を15℃以下程度に保持できるように設計されている。これらのオープン状態の陳列室内の条件、およびクローズ状態の陳列室内の条件は一例であり、ペルチェ素子31aを含む風供給ユニット30の性能や、扉ユニット50をハウジング10に取り付けたときに、扉ユニット50と複数の第1の開口21との干渉により有効開効率が変化する割合などにより変更することが可能である。
【0042】
以上のように、本例のショーケース1によれば、オープンタイプのショーケース1として使用する場合には、扉ユニット50をハウジング10から取り外すことにより、複数の第1の開口21を全開とすることができるため、比較的大きな風量が確保できる。すなわち、ショーケース1では、扉ユニット50が装着されていないオープンタイプの状態では、風供給ユニット30の状態が自動的に温度を下げることよりもエアーカーテンを形成するための風量を確保することが選択され、陳列室17内が飲み物などの商品を冷蔵するのに適した温度程度に保持される。
【0043】
一方、クローズタイプのショーケース1として使用する場合には、扉ユニット50をハウジング10に取り付けることにより、扉ユニット50の一部を複数の第1の開口21の少なくとも一部と干渉させ、これら開口の有効開口面積を減らし、温度を下げることができる。すなわち、ショーケース1では、扉ユニット50が装着されたクローズタイプの状態では、風供給ユニット30の状態が自動的に風量を確保するよりも温度を下げることが選択され、陳列室17内がさらに低温で収納することが望ましい食品を冷蔵するのに適した温度程度に保持される。
【0044】
また、本例のショーケース1によれば、一体に組み立てられた扉ユニット50を、ハウジング10に対して、取り付けたり、取り外したりすることができる。したがって、オープンタイプのショーケースとクローズタイプのショーケースとの双方を用意することなく、一体に形成された扉ユニット50をハウジング10から着脱するだけで、季節や、客の流れなどの条件に応じて、オープンタイプのショーケースのように使用したり、クローズタイプのショーケースのように使用したりすることができる。しかも、本例のショーケース1によれば、扉ユニット50が一体で取り付けできるため、ハウジング10への着脱が容易である。このため、ショーケース1のタイプ変更は手間がかからず、工具を用いずにユーザあるいは店員が手動で、例えばワンタッチあるいは数タッチで扉ユニット50を着脱するだけの作業となる。さらに、取り外した扉ユニット50は部品単位に分解せずに保管できるので、収納および管理も容易である。また、扉部材が汚れたり損傷したときも扉ユニット50を外せるので、メンテナンスが容易であり、スペアと交換することも容易である。
【0045】
さらに、本例のショーケース1によれば、扉ユニット50にフレーム部材51が設けられているため、扉ユニット50を外した状態において、取出口16の近傍にフレーム部材51が残るようなことがない。したがって、オープンタイプのショーケース1のように使用しても、外観が良好である。また、汚れなどの付着する部分が少ないので、清掃も容易であり、衛生上も好ましく、突起なども少ないので安全上も好ましい形態である。そして、取出口16は開放しているため、陳列室からの商品を取り出し易いショーケース1を提供できる。
【0046】
一方、クローズタイプのときは、扉ユニット50をハウジング10に取り付けた状態であっても、2つの扉部材52aおよび52bをフレームに対して動かすことにより、取出口16の一部を開閉させることができる。したがって、陳列室17内からの商品の取り出や、陳列室17内への商品の搬入が容易である。さらに、クローズ状態のときも、冷風供給ユニット30により、扉ユニット50の内側の取出口16の部分に冷風のエアーカーテンが形成される。このため、扉部材52aあるいは52bを開けたときも、エアーカーテンによる外界との遮断効果を得ることができる。このため、単に扉により取出し口が遮断されているだけのショーケースに対して、保冷効果の向上が図られ、低温保存に適したショーケースを提供できる。
【0047】
さらに、本例のショーケース1によれば、第1の開口21を取出口16の下端であって、陳列室17の底の高さよりも低い位置に設けているため、仮に、扉ユニット50に結露が生じたとしても、陳列室17内に結露水が流れ難い。
【0048】
なお、本例のショーケース1では、第1の開口21を吸込み口とし、第2の開口22を吹出し口とし、取出口16に上方から下方に向いて流れる風によりエアーカーテンを形成するようにしているが、エアーカーテンの向きは、これに限定されるものではない。例えば、第1の開口21を吹出し口とし、第2の開口22を吸込み口とし、取出口16に下方から上方に向いて流れる風によりエアーカーテンを形成してもよい。
【0049】
さらに、本例のショーケース1では、第1の開口21を取出口16の下端であって、陳列室17の底の高さよりも低い位置に設け、第2の開口22を陳列室17の上方後側に設けているが、および第2の開口22の位置もまた、これに限定されるものではない。第1の開口21または第2の開口22の少なくとも一方を取出口16の近傍に配置し、ハウジング10に取り付けることにより、扉ユニット50の一部が第1の開口21または第2の開口22の少なくとも一部と干渉するように設定することにより、エアーカーテンの風量を簡単に調節することができる。
【0050】
また、本例のショーケースでは、扉ユニット50が2つの扉部材52aおよび52bを備えるようになっているが、扉ユニットが備える扉部材の数は、1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。
【0051】
本発明のショーケースは、冷蔵ショーケースに限定されるものではない。本発明のショーケースによれば、外界に対して高い温度で陳列室を保持するような温蔵ショーケース、あるいは、外界とは異なる湿度に調整するようなショーケースなどにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るショーケースの外観を示す斜視図。
【図2】図1のショーケースを示す分解斜視図。
【図3】図1のショーケースを扉ユニットが取り付けられた状態で示す断面図。
【図4】図1のショーケースを扉ユニットが取り外された状態で示す断面図。
【図5】図1のショーケースが有する扉ユニットを示す正面図。
【図6】図5中のVI-VI線に沿って切断して示す断面図。
【図7】図3中の一点鎖線VIIで囲まれた領域を拡大して示す図。
【図8】図4中の一点鎖線VIIIで囲まれた領域を拡大して示す図。
【符号の説明】
【0053】
1 ショーケース、 10 ハウジング
11 天蓋、 16 取出口
17 陳列室、 18a、18b ダクト
21 開口、 30 風供給ユニット
31a ペルチェ素子、 50 扉ユニット
51 フレーム部材、 52a、52b 扉部材
53 シール部材、 55 透明部材
56 枠体、 57a ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の少なくとも一部が取出口となっている陳列室と、前記取出口にエアーカーテンが形成されるような風を前記陳列室に対し供給するようにアレンジされたダクトとを含むハウジングと、
前記ダクトを介して風を供給可能な風供給ユニットと、
前記取出口に対応する形状に形成されたフレーム部材と、前記フレーム部材に対して動くように支持され、透明部材を具備した少なくとも1つの扉部材とを含み、一体で前記ハウジングの前記取出口に着脱自在に取り付けられる扉ユニットとを有し、
前記扉ユニットが前記取出口に取り付けられた状態では、前記少なくとも1つの扉部材が前記フレーム部材に対して動くことにより前記取出口の少なくとも一部が開閉可能となる、ショーケース。
【請求項2】
請求項1において、前記ダクトは、前記取出口の近傍の空気の吸込み、または前記取出口近傍への風の吹出しのための開口を備えており、
前記扉ユニットを前記ハウジングから取り外した状態においては、前記開口が全開であり、前記扉ユニットを前記ハウジングに取り付けたときに、前記開口の一部が閉塞される、ショーケース。
【請求項3】
請求項1において、前記ダクトは、前記取出口の近傍の空気の吸込み、または前記取出口近傍への風の吹出しのための開口を備えており、
前記扉ユニットを前記ハウジングに取り付けることにより、前記扉ユニットの一部が前記開口の少なくとも一部と干渉し、前記開口の有効開口面積が減る、ショーケース。
【請求項4】
請求項2または3において、前記取出口の近傍の空気の吸込み、または前記取出口近傍への風の吹出しのための前記開口は、前記取出口の下方であって、前記陳列室の底の高さよりも低い位置に設けられている、ショーケース。
【請求項5】
請求項1において、前記風供給ユニットは、ペルチェ素子を備えており、前記ダクトを介して冷風または温風を供給する、ショーケース。
【請求項6】
請求項1において、前記ハウジングの前記ダクトは、前記陳列室の下方および後方に配置され、前記取出口の下端と前記陳列室の上方後側にそれぞれ開口が形成されており、
前記ハウジングは、さらに、前記陳列室の上方後側から前記取出口の上端に達する透明な天蓋を有し、
この天蓋は、前記陳列室の上方後側に設けられた前記ダクトの前記開口と前記取出口との間の送風をガイドする、ショーケース。
【請求項7】
請求項1において、前記扉ユニットの前記フレーム部材の上部内面および下部内面には、それぞれ、複数のガイド溝が形成されており、
前記扉ユニットは、前記透明部材を保持する枠体と、この枠体の外周に取り付けられたローラーとをさらに具備する複数の前記扉部材を備え、
これら扉部材は、それぞれ、前記フレーム部材にスライド自在に保持されている、ショーケース。
【請求項8】
請求項1において、前記フレーム部材には、その外周にシール部材が設けられており、このシール部材は、前記扉ユニットを前記ハウジングの前記取出口に取り付けたときに、前記フレーム部材と前記取出口を規定する内面との間に位置して、これらの間の気密性を高める、ショーケース。
【請求項9】
エアーカーテンを形成可能なショーケースの風量調節方法であって、
前記ショーケースは、
前方の少なくとも一部が取出口となっている陳列室と、前記取出口にエアーカーテンが形成されるような風を前記陳列室に対し供給するようにアレンジされたダクトとを含むハウジングと、
前記ダクトを介して風を供給可能な風供給ユニットと、
一体で前記ハウジングの前記取出口に着脱自在に取り付けられる扉ユニットとを有し、
前記ダクトは、前記取出口の近傍の空気の吸込みまたは前記取出口近傍への風の吹出しのための開口を備えており、
当該風量調節方法は、
前記扉ユニットを前記ハウジングに取り付けることにより、前記扉ユニットの一部を前記開口の少なくとも一部と干渉させ、前記開口の有効開口面積を減らすことを含む、風量調節方法。
【請求項10】
前方の少なくとも一部が取出口となっている陳列室を含むハウジングを有し、前記取出口にエアーカーテンを形成可能なショーケースの前記取出口に、着脱自在に取り付けられる扉ユニットであって、
前記取出口に対応する形状に形成されたフレーム部材と、
透明部材を具備し、前記フレーム部材に対して動くように支持された少なくとも1つの扉部材と、
前記フレーム部材の外周に設けられたシール部材とを有し、
当該扉ユニットは一体で前記取出口に取り付けられ、前記シール部材が前記フレーム部材と前記取出口を規定する内面との間に位置する、扉ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−330463(P2007−330463A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165067(P2006−165067)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(591150797)GAC株式会社 (69)
【Fターム(参考)】