説明

シリンダ装置の製造方法

【課題】油圧緩衝器等のシリンダ装置において、シール部材が固着されたディスクバルブの平面度のばらつきを低減して安定した減衰力特性を得る。
【解決手段】筒型の油圧緩衝器において、一側にリング状の弾性シール部材15が固着されたディスクバルブ14を製造する際、板材から打抜き加工されたディスクバルブ14を下型41の一側が凸となるように湾曲れた底部にセットする。型締めして円筒型部44によってキャビティCを形成すると共に、押え金45でディスクバルブ14を押圧して一側に凸となるように成形する。この状態で通路46からキャビティCにゴム材料を充填して加硫、硬化させ、弾性シール部材15を成形してディスクバルブ14に固着させる。このとき、ゴム材料の収縮により、ディスクバルブ14は、湾曲が減少する方向に変形するので、平面度のばらつきを低減して、安定した減衰力特性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧緩衝器等のシリンダ装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両のサスペンション装置に装着されるシリンダ装置である筒型の油圧緩衝器は、一般的に、流体が封入されたシリンダ内にピストンロッドが連結されたピストンを摺動可能に嵌装し、ピストンロッドのストロークに対して、シリンダ内のピストンの摺動によって生じる流体の流れをオリフィス、ディスクバルブ等からなる減衰力調整機構によって制御して減衰力を発生させる構造となっている。
【0003】
また、特許文献1に記載された油圧緩衝器では、減衰力発生機構であるディスクバルブの背部に背圧室(パイロット室)を形成し、流体の流れの一部を背圧室に導入し、背圧室の内圧をディスクバルブの閉弁方向に作用させ、パイロット弁によって背圧室の内圧を調整することにより、ディスクバルブの開弁を制御するようにしている。これにより、減衰力特性の調整の自由度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−38097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された緩衝器では、ディスクバルブの背面外周部に、ゴム等の弾性体からなるリング状のシール部材を加硫、接着等により固着し、このシール部材をディスクバルブの背部に配置された有底円筒状の部材の円筒部に摺動可能かつ液密的に嵌合することにより、背圧室を形成している。
【0006】
このような一側にリング状のシール部材を固着した構造のディスクバルブを用いた緩衝器の減衰力特性を測定したところ、緩衝器毎にばらつきが生じることがわかった。ばらつきの原因を研究したところ、ディスクバルブの平面度にばらつきが生じていることがわかった。
【0007】
本発明は、シール部材が固着されたディスクバルブの平面度のばらつきを低減して安定した減衰力特性が得られるようにしたシリンダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる流体の流れを規制して圧力差を生じさせるバルブとを備え、前記バルブは、少なくとも一側に環状の弾性シール部材を固着した環状のディスクバルブを含むシリンダ装置の製造方法において、
前記ディスクバルブに前記弾性シール部材を固着する工程は、前記ディスクバルブを一側が凸となるように変形させる変形工程と、該変形工程で変形させた状態の前記ディスクバルブに前記弾性シール部材を固着する固着工程とを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るシリンダ装置によれば、シール部材が固着されたディスクバルブの平面度のばらつきを低減して安定した減衰力特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る緩衝器の要部の縦断面図である。
【図2】図1に示す緩衝器のディスクバルブにシール部材を加硫、接着するための金型の概略構成を示す縦断面図である。
【図3】シール部材が固着されたディスクバルブの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下で説明の実施の形態は、上述の発明が解決しようとする課題の欄や発明の効果の欄に記載した内容に止まること無くその他にもいろいろな課題を解決し、効果を呈している。以下の実施の形態が解決する課題の主なものを、上述の欄に記載した内容をも含め、次に列挙する。
【0012】
〔特性改善〕
図3に示すように、ディスクバルブ14に、ゴム製のリング状の弾性シール部材15を加硫、接着した場合、ゴムの収縮により、ディスクバルブ14が弾性シール部材15の反対側が凸となるように僅かに変形することがわかった。(なお、本願明細書で、凸とは、内周側が外周側に比して突出した状態をいう。)また、一側に凸となるように変形したディスクバルブ14に弾性シール部材15を加硫接着する際、シール部材をディスクバルブ14の凸側の面に加硫、接着すると、弾性シール部材15の収縮により、ディスクバルブ14の変形が小さくなり、弾性シール部材15をディスクバルブの凹側(凸側の反対側)の面に加硫、接着すると、弾性シール部材15の収縮により、ディスクバルブ14の変形が助長されることがわかった。さらに弾性シール部材15をディスクバルブの凹側(凸側の反対側)の面に加硫、接着されたディスクバルブ14を図1に示すように配置して用いると、シート部12に当接される荷重が小さく、所望の減衰力特性とならない可能性がある。
【0013】
〔生産性の向上〕
一般的に、ディスクバルブ14は、金属製の板材を打抜き加工することにより成形されているが、打抜きの方向により、一側に凸となるように僅かに変形する。弾性シール部材15が必ずディスクバルブ14の凸側の面に加硫、接着されるように製造工程の管理することにより、ディスクバルブ14の平面度のばらつきをある程度解消することが考えられるが、打抜き加工されたディスクバルブ14は、その後の研磨工程等を経ることにより、いずれの面が凸側であるかを一見して判別することは非常に困難である。また、一側に凸とならないようディスクバルブ14を金属製の板材をワイヤーカット加工により成形することも考えられるが、生産性が悪く、量産には適さない。また、ワイヤーカット加工したとしても、ディスクバルブ14に弾性シール部材15を加硫、接着すると、条件によっては平面度にばらつきが生じることが考えられ、課題解決には至らない。
【0014】
以下、本発明に係る各実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るシリンダ装置である緩衝器1は、自動車等の車両の懸架装置に装着される筒型油圧緩衝器であって、作動流体として油液が封入されたシリンダ2(側壁の一部のみ図示する)内に、ピストン3が摺動可能に嵌装され、このピストン3によってシリンダ2内がシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に画成されている。ピストン3には、ピストンロッド4の一端の軸部4Aがナット5によって連結されており、ピストンロッド4の他端側は、シリンダ2の上端部に装着されたロッドガイド(図示せず)およびオイルシール(図示せず)に挿通されて外部へ延出されている。シリンダ下室2Bは、適度な流通抵抗を有するベースバルブ(図示せず)を介して、リザーバ(図示せず)に接続されており、リザーバ内には、油液及びガスが封入されている。
【0015】
ピストン3には、シリンダ上下室2A、2B間を連通させるための伸び側通路6及び縮み側通路7が設けられている。ピストン3のシリンダ下室2B側の端部には、伸び側通路6の油液の流動を制御して減衰力を発生させる伸び側減衰力発生機構8が設けられ、シリンダ上室2A側の端部には、縮み側通路7の油液流動を制御して減衰力を発生させる縮み側減衰力発生機構9が設けられている。
【0016】
伸び側減衰力発生機構8について説明する。
ピストン3のシリンダ下室2B側の端部には、有底筒状のバルブ部材10が取付けられている。バルブ部材10は、その底部の内側中央部に立設された円筒状の保持部11に、ピストンロッド4の基端部に形成された外周が円形の小径の軸部4Aが挿通されて、ナット5によって固定されている。ピストン3のシリンダ下室2B側の端面には、外周側に環状のシート部12が突出され、内周側に環状のクランプ部13が突出されており、シート部12とクランプ部13との間の環状空間に伸び側通路6が開口している。保持部11とクランプ部13との間に可撓性を有する環状のディスクバルブ14の内周部がクランプされ、ディスクバルブ14の外周部がシート部12に着座している。ディスクバルブ14の背面の外周部には、円環状の弾性シール部材15が一体的に設けられており、弾性シール部材15の外周部がバルブ部材10の円筒部の内周面10Aに、摺動可能かつ気密的に当接して、バルブ部材10の内部に背圧室16が形成されている。
【0017】
ディスクバルブ14の内周部には、開口部17が設けられ、この開口部17に対向する部位に、複数の切欠18(オリフィス)を有する切欠ディスク部材19及びディスク部材20が積層されて、開口部17及び切欠18によって、伸び側通路6と背圧室16とを常時連通させる背圧室入口通路21が形成されている。そして、ディスクバルブ14は、撓んでシート部12からリフトすると、同時に、切欠ディスク部材19からもリフトすることになり、これにより、背圧室入口通路21の流路面積が増大する。切欠きディスク19及びディスク部材20は、ディスクバルブ14と共に、ピストン3のクランプ部13とバルブ部材10の保持部11の先端部との間で軸方向にクランプされて固定されている。
【0018】
弾性シール部材15は、ゴム等の弾性体からなり、加硫、接着等によってディスクバルブ14に固着されている。弾性シール部材15の外周部は、固着されたディスクバルブ14側から離れるにしたがって拡径するテーパ状に形成されている。バルブ部材10の円筒部の内周面10Aに摺接する外周部には、同心上に配置された複数の段部が形成され、内周面10Aとの摺動部を多段シールしている。ディスクバルブ14は、ナット5の締付によって内周部が軸方向にクランプされて固定される。
【0019】
バルブ部材10の底部には、背圧室16とシリンダ下室2Bとを連通させるための通路22が設けられ、通路22には、所定圧力に達した背圧室16内の油液をシリンダ下室2Bへリリーフする常閉のディスクバルブであるリリーフ弁23が設けられ、リリーフ弁23には、背圧室16とシリンダ下室2Bとを常時連通させる下流側オリフィス24(切欠)が設けられている。また、リリーフ弁23には、シリンダ下室2B側から背圧室16側への油液の流通のみを許容する逆止弁25が設けられている。下流側オリフィス24は、例えば、リリーフ弁23のうち、バルブ部材10のシート部10Cと当接しているディスクバルブに切欠を設け、あるいは、シート部10Cにコイニングすることによって形成することができる。
【0020】
次に、縮み側減衰力発生機構9について説明する。
ピストン3のシリンダ上室2A側の端面に環状に突出された外周側のシート部30と内周側のクランプ部31との間の環状空間に縮み側通路7が開口している。クランプ部31と、ピストンロッド3の軸部4Aの基部に形成された段部との間に、環状のリテーナ32を介して、ディスクバルブ33の内周部が軸方向にクランプされて、ディスクバルブ33の外周部がシート部30に着座している。ディスクバルブ33は、複数積層された円板状のディスクからなり、縮み側通路7によってシリンダ下室側の圧力を受けて、撓んでシート部30からリフトすることによって開弁し、その開度によって縮み側通路7の流路面積を調整する。ディスクバルブ33には、シリンダ上下室2A、2B間を常時連通するオリフィス33A(切欠)が設けられている。オリフィス33Aは、例えば、ディスクバルブ33に切欠を形成し、あるいは、シート部30をコイニングすることにより流路を形成してもよい。
【0021】
以上のように構成した緩衝器1の作動について説明する。
ピストンロッド4の伸び行程時には、シリンダ2内のピストン3の摺動にともない、シリンダ上室2A側の油液がピストン3の伸び側通路6を通ってシリンダ下室2B側へ流れ、伸び側減衰力発生機構8によって減衰力が発生する。このとき、ピストンロッド4がシリンダ2から退出した分の油液がリザーバからベースバルブを介してシリンダ下室2Bへ流れ、リザーバ内のガスが膨張することによってシリンダ2内の油液の体積補償を行なう。
【0022】
伸び側減衰力発生機構8では、ピストン速度の極低速域(ピストンロッド4の初期ストローク域)においては、背圧室入口通路21及び下流側オリフィス24によってオリフィス特性の減衰力が発生する。ピストン速度が上昇すると、ディスクバルブ14が開き、バルブ特性の減衰力が発生する。ディスクバルブ14が開弁すると、同時に、背圧室入口通路31の流路面積が増大して、背圧室16の背圧が上昇する。これにより、ピストン速度の上昇にともなって、ディスクバルブ14の開弁圧力が上昇して、減衰力が大きくなる。そして、背圧室16の圧力が所定圧力に達すると、リリーフ弁23が開弁して背圧室16の圧力をシリンダ下室2B側へリリーフして、ディスクバルブ14の開弁圧力、すなわち伸び側減衰力の過度の上昇を防止する。
【0023】
また、ピストンロッド4の縮み行程時には、シリンダ2内のピストン3の摺動にともない、シリンダ下室2Bの油液がピストン3の縮み側通路7を通ってシリンダ上室2Aへ流れ、縮み側減衰力発生機構9によって減衰力が発生する。このとき、ピストンロッド4がシリンダ2内に侵入した分の油液がベースバルブを介してリザーバへ流れ、リザーバ内のガスを圧縮することによって、シリンダ2内の油液の体積補償を行なう。
【0024】
縮み側減衰力発生機構9では、ピストン速度の低速域(ディスクバルブ33の開弁前)においては、オリフィス33Aによってオリフィス特性の減衰力が発生する。ピストン速度が上昇してディスクバルブ33の開弁圧力に達すると、ディスクバルブ33が開き、その開度に応じてバルブ特性の減衰力が発生する。
【0025】
ピストンロッド4の縮み行程時において、伸び側減衰力発生機構8では、逆止弁25が開いて、シリンダ下室2Bの圧力を背圧室16に導入する。これにより、背圧室16の圧力によりディスクバルブ14を閉弁方向に作用する力が、シリンダ下室2Bの圧力による開弁方向に作用する力よりも大きくなり、伸び側のディスクバルブ14を確実に閉弁状態に維持することができ、安定した減衰力を得ることができる。
【0026】
次に、緩衝器1の弾性シール部材15が固着されたディスクバルブ14の製造方法について図2及び図3を参照して説明する。
ディスクバルブ14にゴム製の弾性シール部材15を加硫、接着するための金型を図2に示す。図2に示すように、金型40は、下型41及び上型42とを備えている。下型41は、ディスクバルブ14をインサートして弾性シール部材を成形するためのキャビティCの底部及び外周部を形成するように略有底円筒状に形成され、底部の中央にディスクバルブ14を位置決めするための芯金43が立設されている。なお、外周部で径方向の位置決めをすることも可能であるため、芯金43を省略することもできる。芯金43があると、ディスクバルブ14の外周にもゴム材料を成形することができるので、より望ましい。下型の底部は、中央部が凸となるように所定の曲率で湾曲又は所定の角度で傾斜されている。底部の中央部に立設された芯金43は、ディスクバルブ14の開口部に挿通することにより、キャビティCに対してディスクバルブ14を同心に位置決めする。下型41の底部は、ディスクバルブ14よりもやや大径で、キャビティC内で弾性シール部材15がディスクバルブ14の外周部を覆うように形成されて、ディスクバルブ14の外周部にも接着されるようになっている。
【0027】
上型42は、下型41の円筒部内に嵌合する円筒型部44と、この円筒型部44と下型41の芯金43との間に挿入されて、下型41にセットされたディスクバルブ14に当接する円筒状の押え金45とを有している。円筒型部44は、先端部が下型41にセットされたディスクバルブ14に当接してキャビティCを形成し、弾性シール部材15のテーパ状の内周部及び平坦な先端部を成形する。上型42には、弾性シール部材15を形成するゴム材料をキャビティCに充填するための通路46が設けられている。円筒型部44及び押え金45のディスクバルブ14に当接する先端部は、下型41の底部の曲率に合せて湾曲され、又は、角度に合せて傾斜されている。
【0028】
次に、金型40による弾性シール部材15が固着されたディスクバルブ14の製造工程について説明する。
金属製の板材を打抜き加工し、必要な研磨等の処理を行なうことにより、ディスクバルブ14を製造する。このとき、ディスクバルブ14は、打抜き加工時の変形により、一側が凸の状態に僅かに湾曲している。ディスクバルブ14の開口に芯金43を挿入してディスクバルブ14を下型41にセットする。このとき、ディスクバルブ14の凸側の面は、下型41側又は上型42側のいずれの側に向いていてもよい。なお、打抜き加工に限らず、ワイヤーカット加工によりディスクバルブ14を製造してもよい。
【0029】
上型42の円筒型部44を下型41の円筒部に嵌合し、円筒型部44及び押え金45を下型41にセットされたディスクバルブ14に当接させて型締めし、キャビティCを形成すると共に、ディスクバルブ14を下型の底部に押圧して一側に凸の形状に成形する。この状態で、通路46からゴム材料をキャビティCに充填する。そして、キャビティC内でゴム材料を加硫、硬化させて弾性シール部材15を成形してディスクバルブ14に接着する。
【0030】
キャビティC内のゴム材料が硬化した後、金型40を開いて、弾性シール部材15が固着されたディスクバルブ14を取り出す。このとき、図3に示すように、弾性シール部材15のゴム材料の収縮により、ディスクバルブ14には、弾性シール部材15の固着側とは反対側が凸となるように変形させようとする力が作用するが、ディスクバルブ14は、下方41の湾曲又は傾斜された底部に押圧されて弾性シール部材15の固着側が凸となるように変形されているので、これらの変形が相殺されることにより略平坦になる。これにより、ディスクバルブ14の平面度のばらつきを低減して安定した減衰力特性を得ることができる。ディスクバルブ14は、下型41にセットされたときの凸側の面の方向にかかわらず、金型41によって弾性シール部材15が固着される側が凸となるように成形されるので、金型41にセットする際の凸側の面の方向を管理する必要がなく、製造工程が煩雑になることもない。よって、生産性を大幅に向上させることができる。なお、ディスクバルブ14を下型の底部に押圧して凸の形状に成形する矯正力は、本製造方法により成形したディスクバルブ14をシリンダ装置に適用し、その後ばらしてディスクバルブ14を取り出し、弾性シール部材15を剥がすと、一側が凸に変形している程度である。
【0031】
上記実施形態において、下型41の底部を凹形状にしてディスクバルブ14を弾性シール部材15の固着側とは反対側が凸になるように成形してもよい。この場合、弾性シール部材15のゴム材料の収縮により、ディスクバルブ14の湾曲が助長されることになるが、ディスクバルブ14の形状のばらつきが低減されるので、その結果として安定した減衰力特性を得ることができる。ただし、ディスクバルブ14の凸側の面にシール部材15を固着したほうが、シート部12に当接される荷重を大きくでき、漏れを低減することができるため、望ましい構成である。弾性シール部材15は、ディスクバルブ14の一側に固着されるもののほか、その一部が他側に固着されるものであってもよい。また、弾性シール部材15は、ゴム材料のほか、エンジニアリングプラスチック等の他のシール材料を用いてもよい。
【0032】
なお、上記実施形態では、伸び側減衰力発生機構8のみが背圧室16を有する背圧型(パイロット型)となっているが、縮み側減衰力発生機構7を伸び側と同様の背圧室を有する背圧型(パイロット型)の減衰力発生機構としてもよい。また、減衰力調整機構は、ピストン部のほか、シリンダの側部に配置したものであってもよい。上記実施形態では、シリンダ装置の一例として油液を作動流体とした緩衝器について説明しているが、本発明は、これに限らず、弾性シール部材を固着したディスクバルブを備えたものであれば、ガススプリング、ロック装置、サスペンション用油圧シリンダ等の他のシリンダ装置にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…緩衝器(シリンダ装置)、2…シリンダ、3…ピストン、4…ピストンロッド、14…ディスクバルブ(バルブ)、15…弾性シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる流体の流れを規制して圧力差を生じさせるバルブとを備え、前記バルブは、少なくとも一側に環状の弾性シール部材を固着した環状のディスクバルブを含むシリンダ装置の製造方法において、
前記ディスクバルブに前記弾性シール部材を固着する工程は、前記ディスクバルブを一側が凸となるように変形させる変形工程と、該変形工程で変形させた状態の前記ディスクバルブに前記弾性シール部材を固着する固着工程とを含んでいることを特徴とするシリンダ装置の製造方法。
【請求項2】
前記変形工程において、前記ディスクバルブは、前記弾性シール部材が固着される側が凸となるように変形されることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置の製造方法。
【請求項3】
前記弾性シール部材は、液密的かつ摺動性を有するゴム材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダ装置の製造方法。
【請求項4】
前記変形工程は、前記ディスクバルブを凹又は凸形状の型に押付ける工程を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシリンダ装置の製造方法。
【請求項5】
前記型は、前記弾性シール部材を成形する金型であることを特徴とする請求項4に記載のシリンダ装置の製造方法。
【請求項6】
前記バルブは、前記ディスクバルブの内周部がクランプされて前記ピストンに着座し、外周部が開く弁体であり、前記ディスクバブルの背部に配置されたバルブ部材に前記弾性シール部材が摺動可能に嵌合して、前記バルブ部材内に背圧室を形成し、該背圧室内の圧力が前記ディスクバルブに閉弁方向に作用することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のシリンダの製造方法。
【請求項7】
前記弾性シール部材の外周部は、前記ディスクバルブから離れるにしたがって大径となるテーパ状に形成されていることを特徴する請求項6に記載のシリンダ装置の製造方法。
【請求項8】
流体が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、該ピストンに連結されたピストンロッドと、前記ピストンの摺動によって生じる流体の流れを制御する減衰バルブとを備え、前記減衰バルブは、一側にゴム材料からなる環状の弾性シール部材を固着した環状のディスクバルブを含む緩衝器の製造方法において、
前記ディスクバルブに前記弾性シール部材を固着する工程は、前記ディスクバルブを一側が凸となるように変形させる変形工程と、該変形工程で変形させた状態の前記ディスクバルブの一側に前記弾性シール部材を固着する固着工程とを含んでいることを特徴とする緩衝器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72509(P2013−72509A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212733(P2011−212733)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】