シートロールの製造方法、シートロールおよびシートロールの製造装置
【課題】
比較的靭性の低いシートであっても、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがなく、しかも安価かつ調整が容易で別異の欠陥を誘発することの少ないシートロールの製造方法、シートロール、およびシートロールの製造装置を提供する。
【解決手段】
走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシート3の幅方向の所定の位置におけるシート3の両面または片面の照射部位18に、シート3に吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、照射部位18および/またはその周辺部においてシート3を変形させ、その後、シート3をロール状に巻き取る。
比較的靭性の低いシートであっても、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがなく、しかも安価かつ調整が容易で別異の欠陥を誘発することの少ないシートロールの製造方法、シートロール、およびシートロールの製造装置を提供する。
【解決手段】
走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシート3の幅方向の所定の位置におけるシート3の両面または片面の照射部位18に、シート3に吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、照射部位18および/またはその周辺部においてシート3を変形させ、その後、シート3をロール状に巻き取る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートロールの製造方法、シートロールおよびシートロールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂フィルムは、透明性や表面光沢性および耐光性に優れているため、液晶ディスプレイ用シートまたはフィルム、導光板などの光学材料、車両用内装材および外装材、自動販売機の外装材、電化製品、建材用内装および外装材等の表面表皮に用いられたり、ポリカーボネート、塩化ビニルなどの表皮保護等の広範な分野で使用されている。しかしながら、一般にアクリル樹脂フィルムはポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムに比べて、靱性が低いために製膜時や加工時に割れ易く、破れ易いという問題があった。また、近年、ディスプレイ用シートに用いられることが多く、シート表面に擦り傷等の欠点の無いシートが所望されている。
【0003】
一方、従来より、シートロールの製造方法においては、シートロールの端面ズレによる巻姿不良や、シート同士の擦れによるスリキズを防止するために、シートの幅方向の端部近傍に、特許文献1に開示されたようなエンボス加工や特許文献2に開示されたような帯電処理などの表面処理を施すことで、シート同士間の摩擦係数を増大させ、シート同士の密着力を高める方法が、知られている。
【0004】
また、特許文献3には、表面処理の効果をより高めるために、シートを加熱しながらエンボス加工する方法、特許文献4にはエンボス自体を加熱しながらエンボス加工する方法も提案されている。
【0005】
エンボス加工では、図1に示すように、エンボスリング1と対極リング2とでシート3を挟み、エンボスリング1を対極リング2に押し付け、エンボスリング1表面のエンボスパターンをシートに転写させる方法が一般的である。
【0006】
しかし、この方法では、所望の転写跡を得るためには、エンボスリングと対極リングを均一かつ一定圧力で押し付けることが必要であり、調整が非常に困難という不具合があった。またエンボスリングとシートが擦れて発生する粉が原因となりシートに新たなキズを発生させるという不具合もあった。また、エンボスパターンを転写させるため、変形部が経時で変形前の状態に復元してしまうことがあり、シート同士の密着力を長時間維持できないという課題もあった。さらに、シートがアクリル樹脂フィルムやセルロースアシレートフィルムなど靭性が低いため割れ易く、破れ易いフィルムにおいては、エンボスリングを接触、押し付けることでエンボス加工を施す上記手法は、フィルム破れを生じやすく不適であった。また、シートやエンボスリングを加熱し、熱によるシートの塑性変形を利用したエンボス加工方法の場合は、上記不具合に加えて、温度調整が困難という不具合もあった。また、加熱したエンボスリングを接触させるため、エンボス加工を施す周辺部のフィルムも加熱される。そのため上記周辺部フィルムが軟化し、破れの原因となったり、フィルムの軟化範囲が広く、所望のエンボス加工を施すことが出来ない等の不具合もあった。
【0007】
また帯電処理は、静電気のみでシート同士の間の密着力を高めるものであるため、新たなその密着力がエンボス加工に比べて弱く、特に厚番手のシートでは、シート同士のズレや擦れを防止する効果が不十分なことが多かった。また静電気が新たな帯電欠点を誘発するという場合もあった。
【特許文献1】特許第3479662号公報
【特許文献2】特開平9−202496号公報
【特許文献3】特開昭49−132155号公報
【特許文献4】特開昭52−96678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記問題点を解決し、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがなく、しかも調整が容易で別異の欠陥を誘発することの少ないシートロールの製造方法、シートロールおよびシートロールの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の別の形態によれば、走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法また、本発明の好ましい形態によれば、前記照射により形成された変形部位における最大シート厚みが、前記照射前のシート厚みの105%以上150%以下となるように前記エネルギー線を照射することを特徴とするシートロールの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記変形部位を、前記シートの幅方向端部から前記シート幅方向に距離50mmの範囲内の領域に形成することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記エネルギー線を前記シートに対してシート幅方向に走査しながら前記照射部位に照射することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記エネルギー線として、エネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割したものを用いることを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記変形部位を、断続的に形成することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートの走行速度に応じて、前記エネルギー線の出力を変化させながら前記照射部位に照射することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記エネルギー線としてレーザ光を用いることを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の別の形態によれば、走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロールが提供される。
【0018】
また、本発明の別の形態によれば、走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロールが提供される。また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートロールがアクリル樹脂フィルムロールからなることを特徴とするシートロールが提供される。
【0019】
また、本発明の別の形態によれば、破断伸度が2%以上70%以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置が提供される。
【0020】
また、本発明の別の形態によれば、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置が提供される。また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートロールを製造する製造装置がアクリル樹脂フィルムロールを製造する装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置が提供される。
【0021】
本発明において、シートとしては、破断伸度が2%以上70%以下の樹脂シート、または破断強度が30MPa以上120MPa以下の樹脂シートが用いられる。もちろん、破断伸度が2%以上70%以下でかつ、破断強度が30MPa以上120MPa以下の樹脂シートであっても良い。中でも、アクリル樹脂フィルムやセルロースアシレートフィルムなどのフィルムに有効である。また、これらの樹脂の混合物や共重合物であってもよい。また各種の添加剤、例えば帯電防止剤や、耐候剤や、無機または有機の粒子や、ワックス等の滑剤や、顔料を含むものであってもよい。
【0022】
樹脂シートの破断伸度および破断強度は、JIS K7127/2/10−1999に規定された方法により求める。破断伸度とは、引っ張り試験機を用いて樹脂シート引っ張り、試料が破断したときの引っ張り伸び率のことであり、上記規定の方法に基づき、試験前の試料長さをL0、破断時の試料長さをLとしたとき、破断伸度=(L−L0)/L0を百分率(%)で表した値である。また、破断強度とは上記試験における破断時の荷重を試料の断面積で除した値を言う。破断伸度が2%より小さい、および/または破断強度が30MPaより小さいと、シートの靭性が非常に低く、巻き取り時に破れが発生する場合がある。逆に破断伸度および破断強度が高い場合、つまり靭性が大きい場合は、シートの割れや破れを防止するという観点から従来の技術とそれほど大きな差異は生じないが、比較的靭性の低いシート、すなわち破断伸度70%以下および/または破断強度120MPa以下のシートにおいて、特に従来の技術と比べてシートの割れや破れを防止出来るため、本発明が好適となる。
【0023】
本発明において、照射部位とは、エネルギー線が照射されるシートの位置のことであり、特に広幅シートの場合は両端2ヶ所に照射部位を設けることが好ましい。
【0024】
本発明において、エネルギー線とは紫外線、可視光線、赤外線、レーザ光線、放射線など波長成分を含む、シートに対して非接触的な指向性のあるエネルギー伝播をいう。シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線とは、典型的には、シートに吸収されやすい波長成分が含まれている光線等であれば良く、例えばシートが樹脂である場合は気体レーザや固体レーザや半導体レーザなどのレーザ光が好ましい。
【0025】
本発明において、シートの変形とは、変形部位においてシートが分割されることがなく、変形後もシートの一体性が維持される範囲で、かつシートをロール状に巻き取ったときに、変形部位のあるシートの面とこれに重ねて巻き取られたシートの層の面との間の摩擦を増大させる形状、化学的な表面改質等の性質の変化をいう。特にシート表面が熱により塑性変形したものが好ましい。
【0026】
本発明において、照射前のシート厚みとは、エネルギー線を照射する前の幅方向の平均厚みである。
【0027】
本発明において、エネルギー線の照射部位と、エネルギー線の照射によって形成された変形部位とが完全に一致する必要はなく、変形部位には照射部位だけでなく、例えば照射部位に囲まれた部位や、照射部位の周辺部など、照射が原因で変形する全ての部位が含まれる。
【0028】
本発明において、シートの幅方向とは、シートの走行方向とシート面の法線方向とに対してそれぞれ直交する方向をいう。
【0029】
本発明において、エネルギー線をシートの幅方向に走査する方法としては、例えば光学的な手段でエネルギー線をシートの幅方向にトラバースしながら照射する方法がある。ここで、幅方向に走査するとは、エネルギー線がシートの幅方向にトラバースする成分を有していればよいことをいい、走査する方向が必ずしも幅方向に完全に一致している必要はない。
【0030】
本発明において、変形部位を断続的に形成するとは、複数の変形部位の集合状態をマクロ的に見た時に、例えば変形部位が点線や破線状に配置することを意味する。
【0031】
本発明において、変形部位の形状や大きさ、個数は特に規定されないが、例えば面積0.01〜1mm2程度の変形部位が、1個/1cm2以上の密度で、適宜規則的に配列されているのが好ましい。
【0032】
本発明において、エネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割するとは、1本のエネルギー線を複数のエネルギー線に分岐することをいう。分割する手段としては、1本エネルギー線を拡散させ、複数のエネルギー線に再度集光させる方法が好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るシートロールの製造方法によれば、シート同士の摩擦係数を増大させるために有効なシートへの表面処理として、効果を長時間維持できる塑性変形を利用した変形部位を、非接触な手段でシート上に形成することができるため、エンボス加工で課題となっていた、エンボスロールの対極ロールへの押し付け圧を均一に調整する必要もなくなる。またエンボスリングとシートの擦れによる粉の発生も防止でき、新たなキズを発生させる懸念も解消できる。またエンボスリングやシートを加熱する際の温度調整も不要となる。また帯電処理とは異なり、帯電欠点を誘発する懸念も小さい。さらには、比較的靭性が低く、割れや破れが発生し易い樹脂シートにおいて、上記変形部位を非接触で形成するため、加熱されるのがほぼ変形部位のみであり、変形部位周辺の加熱は極力抑えられ、変形部位周辺において割れや破れを生じることが少なく、生産性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい形態について説明する。
【0035】
エネルギー線の照射により形成された変形部位における最大シート厚みは、シート同士がズレないだけの密着力を確保することができれば特に規制されないが、薄すぎるとシート同士がズレないだけの密着力を確保することができず、逆に厚すぎるとロール状に巻き取る際に積層され形成されるコブも大きくなり、コブ周辺に新たなシワを誘発したり、コンタクトロールにダメージを与えるという新たな不具合も発生するため、照射により形成された変形部位における最大シート厚みが、照射前のシート厚みの105%以上150%以下となるようエネルギー線を照射することが好ましい。照射前のシートの厚みの105%未満の場合は、シート同士の密着力が低く、150%よりも大きい場合はシワを誘発したり、コンタクトロールにダメージを与えるので好ましくない。なおコンタクトロールとは、シートをロール状に巻き取る際に、シート層間に噛み込む随伴エアを排除するため巻取ロールに押し当てるロールのことであり、一般的に表面がゴム被覆されたロールを用いる。
【0036】
照射により形成された変形部位は、後工程において品質上の観点から屑として処理されることが一般的であるため、変形部位はシートの端部近傍に配置することが好ましく、特に後工程での歩留まり低下を防止するためには、変形部位は、シートの幅方向端部からシート幅方向に距離50mmの範囲内の領域に形成されていることが好ましい。変形部位がシートの幅方向端部から距離50mm以上の場合は、歩留まりが低下して好ましくない。なお広巾シートの場合は変形部位を両端付近に2ヶ所に各々配置しても良い。
【0037】
変形部位を幅方向において広範囲に形成すれば、フィルム同士の密着力をより高めることができる。変形部位を広範囲に分散して形成する手段としては、エネルギー線をシートに対してシート幅方向に走査しながら照射部位に照射することが、エネルギー線源を幅方向に多数並べて設置する必要がなくなり、本発明の目的が安価で達成できるため、好ましい。
【0038】
照射により形成された変形部位を広範囲に形成する別の手段としては、エネルギー線としてエネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割してから照射部位に照射することが、やはりエネルギー線源を幅方向に多数並べて設置する必要がなくなり、本発明の目的が安価で達成できるため、好ましい。
【0039】
変形部位を断続的に形成すれば、シート同士間の摩擦係数をより増大させ、シート同士の密着力を高めることができるため、好ましい。変形部位を断続的に形成する手段としては、例えばエネルギー線をパルス照射すれば良い。なお同出力のエネルギー線源でも連続照射よりパルス照射のほうが高いピーク出力を得られるため、変形部位を形成するために必要なエネルギー線源の出力を低くすることができ、本発明の目的が安価で達成できるという利点もある。
【0040】
シートの走行速度に応じて、エネルギー線の出力を変化させながら照射部位に照射することも好ましい。シートを巻き取る際は走行速度に加減速が伴うため、シートの走行速度に応じて、エネルギー線源の出力を変化させながらシートに照射することで、シートの長手方向全域における変形部位におけるシート厚みの分布を例えば一定にするなど任意に調整することが容易に可能となる。
【0041】
エネルギー線としてレーザ光を用いることで、照射部位に効率的に熱エネルギーを発生させ変形させることができるため、好ましい。レーザの種類は特に限定されないが、例えば樹脂シートを変形させるレーザとしては、樹脂への吸収率やレーザの出力安定性、レーザ発振器の価格などを考慮すると、CO2レーザが好ましい。波長は、特にプラスチックフィルムにおける吸収率の高い赤外線(0.8〜20μm)の範囲内が好ましい。アクリル樹脂フィルムにおいては5.0〜15.0μmの波長が吸収率が高いため、より好適である。実用的には10μm付近の波長を持つCO2レーザが最適である。
【0042】
本発明のシートロールは、変形部位によってシート同士間の摩擦係数が増大しシート同士の密着力が高まるため、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがなく、好ましい。
【0043】
本発明によれば、前記記載のシートロール製造装置を用いると、照射部位の変形によってシート同士間の摩擦係数が増大しシート同士の密着力が高まり、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがないシートを製造することができるため、好ましい。
【0044】
図2は、アクリル樹脂フィルムの広幅シートを狭幅に分割し複数の巻取ロールを巻き取る装置(スリッタ)に、本実施形態に係るシートロール製造方法を適用した場合の例を示すものである。
【0045】
図2において、巻出ロール4より巻き出された広幅のアクリル樹脂フィルム9は、スリット部6で所定の小幅に分割スリットされ、レーザ照射部7で狭幅フィルムの各両端部近傍にレーザ照射された後に、巻取ロール5として巻き取られる。なお図2において、本発明に直接関係ない搬送ロール等は省略している。図3はレーザ照射部7をフィルム走行方向の鉛直上方から見た上面図、図4はレーザ照射部7をフィルムの走行方向上流から見た側断面図である。レーザ照射部7には、モータで回転する多角形のポリゴンミラー11が設けられており、スリッタの側面に設置された市販のCO2レーザ発振器15からパルス波で出力されたCO2レーザ光16は、光路の途中に設けられた複数のミラー14で光路を屈曲された後に、ポリゴンミラー11の多角形面に入射される。なおミラーは平面鏡や曲面鏡など、レーザ光を反射できるものであれば特に限定されない。ポリゴンミラー11が回転すると、CO2レーザ光16の多角形面に対する入射角及び反射角が、多角形面のピッチで変化するため、反射したCO2レーザ光16は、ポリゴンミラー11の回転に応じて光路がフィルム幅方向に走査され、アクリル樹脂フィルム9のフィルム端8近傍に変形部位13aが形成される。なおCO2レーザ発振器15からフィルムに照射される直前まで、CO2レーザ光16の光路は、周囲にレーザ光が漏れないようにパイプやシールボックスなどで囲まれていることが好ましい。
【0046】
図5にフィルム上に形成された変形部位の例を示す。アクリル樹脂フィルム9のフィルム端8近傍10mm〜20mmの範囲内には断続的な変形部位13aが形成される。また、パルス発振周波数を大きくすることで、形成される断続的な変形部位の一部が繋がって、一部連続的な変形部位を形成することも可能である。
【0047】
図6に変形部位13aの断面図を示す。CO2レーザ光はポリエステルフィルムに吸収され照射部位18には熱エネルギーが発生するため、フィルムが溶融し、その表面張力によって、図6に示すように照射部位18の周縁部にはビード状の盛り上がり17が形成される。なお変形部位13aの盛り上がり17の高さが、アクリル樹脂フィルム9の走行速度に応じた最適値となるようにCO2レーザ発振器15の出力はアクリル樹脂フィルム9の走行速度に応じて適宜変更可能である。レーザ照射部はフィルムの両端2ヶ所に設けられており(上記説明では片側を省略)、フィルム両端2ヶ所にレーザ照射されたフィルムは、ロール状に巻き取られる際にフィルム同士がずれないため、端面ズレやスリキズを防止できる。
【0048】
なおレーザ光の光路をフィルム幅方向に走査させる手段としては、ポリゴンミラーのかわりに、平面ミラーをモータで振動させてレーザ光16を幅方向に走査させるガルバノミラー方式を用いても良い。また、図7に示すように、プリズムレンズ19等の分割手段でレーザの光路をフィルム幅方向に複数に分割し、分割したレーザ光をフィルムに照射することで、図8に示すような変形部位13bを形成しても良い。
【0049】
なおシートをロール状に巻き取る工程の上流において、シートの端部近傍にレーザ照射による変形部位を形成できれば、レーザ照射部の場所は特に規制されない。図2ではレーザ照射部の下流にスリット部を設けているが、スリット部の下流にレーザ照射部を設けても良いし、図9に示すように、巻出ロール4上や巻取ロール5上にレーザ照射部を設けても良い。また製膜工程で成形されたシートを、中間製品として広幅のままロール状に巻き取る工程の途中にレーザ照射部を設けても良い。
【実施例】
【0050】
以上のシートロール製造方法を、樹脂シートのスリッタに適用する具体例について説明する。樹脂シートには厚み80μmのアクリル樹脂フィルムを用いる。スリッタは幅2000mmのフィルムロールを巻き出す巻出部、フィルムを幅1000mmの小幅に2分割スリットするスリット部、狭幅フィルムの各両端部にCO2レーザを照射するレーザ照射部、狭幅フィルムをロール状に巻き取る巻取部から構成される。なおフィルムの走行速度は60m/分である。レーザ照射部では、スリッタの側部に設けられた出力10〜30Wの範囲で可変のCO2レーザ発振器(波長10.6μm)から2000Hzの周波数でパルス発振されたCO2レーザ光が、ミラーで光路を屈曲されポリゴンミラーに入射された後、ポリゴンミラーからの反射光がフィルム端部近傍の幅方向10mmの範囲を所定の速度で走査しながらフィルムに照射されるように、ポリゴンミラーがモータで回転されている。なおレーザがフィルムに照射される際のスポット径は0.1mmである。なおシートの蛇行などでレーザ光の照射位置からシートが外れ、シート端面を変形させてしまう可能性があるため、フィルム端部より幅方向に少なくとも5mm程度内側の場所から、さらに内側の範囲を幅方向にトラバースしている。
ここで、アクリル樹脂フィルムの破断伸度および破断強度をJIS K7127/2/10−1999に規定された方法により、商品名:ロボットテンシロンRTA100(オリエンテック社製)を用いて、25℃、65%RH雰囲気で5回測定を行い、平均値を求めた。ただし、試験片は上記JIS規格における試験片タイプ2であり、幅10mmで長さ150mm(標線間距離は50mm)の試料とした。また、試験速度は10mm/minとした。試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
[実施例1]
上記試験の結果、破断伸度35%、破断強度75MPaであったフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を10W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を0.5m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図10に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは85μm(照射前の厚み80μmに対して106%)であった。
[実施例2]
実施例1と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を21W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは88μm(照射前の厚み80μmに対して110%)であった。
[実施例3]
実施例1と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を27W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは98μm(照射前の厚み80μmに対して123%)であった。
[実施例4]
上記試験の結果、破断伸度11%、破断強度50MPaのフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を21W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは87μm(照射前の厚み80μmに対して109%)であった。
[実施例5]
上記試験の結果、破断伸度4%、破断強度40MPaのフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を21W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは87μm(照射前の厚み80μmに対して109%)であった。
[比較例1]
実施例1と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、図1に示す方法で、エンボスリングと対極リングの間に上記フィルムを挟みながら走行させた。ここで、エンボスリングとしては外径が120mm、面長が100mmの金属製リングであり、回転可能に支持されている。リング表面の面長中央部の位置に幅10mmでエンボス模様が形成されている。エンボス模様としては、底面径が0.9mm、頂面が約0.3mm、高さが0.6mmの台形型の円柱形状からなる模様が一様に配置されている。また、対極リングは外径が120mm、面長が100mmの金属製リングで、回転可能に支持されている。なお、エンボスリングの押圧は2kN/mとし、エンボスリングの表面温度は200℃とした。エンボスリング接触後10mは走行したものの、エンボスリング接触部からフィルムが破れ、ロール状に巻き取ることは出来なかった。なお、変形部位の最大厚みは92μm(エンボスリング接触前の厚み80μmに対して115%)であった。
【0051】
[比較例2]
実施例4と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、図1に示す方法で、エンボスリングと対極リングの間に上記フィルムを挟みながら走行させた。なお、エンボスリングと対極リングの構成は比較例1と同じとし、エンボスリングの押圧は2kN/mとし、エンボスリングの表面温度は200℃とした。エンボスリング接触後すぐにエンボスリング接触部からフィルムが破れ、ロール状に巻き取ることは出来なかった。
【0052】
[比較例3]
実施例5と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、図1に示す方法で、エンボスリングと対極リングの間に上記フィルムを挟みながら走行させた。なお、なお、エンボスリングと対極リングの構成は比較例1と同じとし、エンボスリングの押圧は1.5kN/mとし、エンボスリングの表面温度は200℃とした。エンボスリング接触後すぐにエンボスリング接触部からフィルムが破れ、ロール状に巻き取ることは出来なかった。
【0053】
フィルム端部近傍に実施例1〜5に示すような変形部位を形成したフィルムはいずれも、ロール状に巻き取られる際にフィルム同士がずれないため、端面ズレやスリキズを防止できる。一方、比較例1〜3に示すような方法では、安定してフィルムに変形部位を形成できず、ロール状に巻き取ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、シートが樹脂シートの場合に特に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来のエンボス加工を示す構成概略図である。
【図2】本発明のシートロール製造方法の一実施形態を示す構成概略図である。
【図3】図2のレーザ照射部をフィルムの走行方向の鉛直上方から見た上面図である。
【図4】図2のレーザ照射部をフィルムの走行方向上流から見た側面図である。
【図5】図2においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【図6】図5の変形部位のA−A′縦断面図である。
【図7】本発明のシートロール製造方法の別の一実施形態におけるレーザ照射部をフィルム走行方向上流から見た側面図である。
【図8】図7においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【図9】本発明のシートロール製造方法の別の一実施形態を示す構成概略図である。
【図10】実施例1においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【図11】実施例2〜5においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンボスリング
2 対極リング
3 シート
4 巻出ロール
5 巻取ロール
6 スリット部
7 レーザ照射部
8 フィルム端
9 アクリル樹脂フィルム
10 モータ
11 ポリゴンミラー
12 カバー
13a,13b 変形部位
14 ミラー
15 CO2レーザ発振器
16 CO2レーザ光
17 盛り上がり
18 照射部位
19 プリズムレンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートロールの製造方法、シートロールおよびシートロールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル樹脂フィルムは、透明性や表面光沢性および耐光性に優れているため、液晶ディスプレイ用シートまたはフィルム、導光板などの光学材料、車両用内装材および外装材、自動販売機の外装材、電化製品、建材用内装および外装材等の表面表皮に用いられたり、ポリカーボネート、塩化ビニルなどの表皮保護等の広範な分野で使用されている。しかしながら、一般にアクリル樹脂フィルムはポリエステルフィルムやポリプロピレンフィルムに比べて、靱性が低いために製膜時や加工時に割れ易く、破れ易いという問題があった。また、近年、ディスプレイ用シートに用いられることが多く、シート表面に擦り傷等の欠点の無いシートが所望されている。
【0003】
一方、従来より、シートロールの製造方法においては、シートロールの端面ズレによる巻姿不良や、シート同士の擦れによるスリキズを防止するために、シートの幅方向の端部近傍に、特許文献1に開示されたようなエンボス加工や特許文献2に開示されたような帯電処理などの表面処理を施すことで、シート同士間の摩擦係数を増大させ、シート同士の密着力を高める方法が、知られている。
【0004】
また、特許文献3には、表面処理の効果をより高めるために、シートを加熱しながらエンボス加工する方法、特許文献4にはエンボス自体を加熱しながらエンボス加工する方法も提案されている。
【0005】
エンボス加工では、図1に示すように、エンボスリング1と対極リング2とでシート3を挟み、エンボスリング1を対極リング2に押し付け、エンボスリング1表面のエンボスパターンをシートに転写させる方法が一般的である。
【0006】
しかし、この方法では、所望の転写跡を得るためには、エンボスリングと対極リングを均一かつ一定圧力で押し付けることが必要であり、調整が非常に困難という不具合があった。またエンボスリングとシートが擦れて発生する粉が原因となりシートに新たなキズを発生させるという不具合もあった。また、エンボスパターンを転写させるため、変形部が経時で変形前の状態に復元してしまうことがあり、シート同士の密着力を長時間維持できないという課題もあった。さらに、シートがアクリル樹脂フィルムやセルロースアシレートフィルムなど靭性が低いため割れ易く、破れ易いフィルムにおいては、エンボスリングを接触、押し付けることでエンボス加工を施す上記手法は、フィルム破れを生じやすく不適であった。また、シートやエンボスリングを加熱し、熱によるシートの塑性変形を利用したエンボス加工方法の場合は、上記不具合に加えて、温度調整が困難という不具合もあった。また、加熱したエンボスリングを接触させるため、エンボス加工を施す周辺部のフィルムも加熱される。そのため上記周辺部フィルムが軟化し、破れの原因となったり、フィルムの軟化範囲が広く、所望のエンボス加工を施すことが出来ない等の不具合もあった。
【0007】
また帯電処理は、静電気のみでシート同士の間の密着力を高めるものであるため、新たなその密着力がエンボス加工に比べて弱く、特に厚番手のシートでは、シート同士のズレや擦れを防止する効果が不十分なことが多かった。また静電気が新たな帯電欠点を誘発するという場合もあった。
【特許文献1】特許第3479662号公報
【特許文献2】特開平9−202496号公報
【特許文献3】特開昭49−132155号公報
【特許文献4】特開昭52−96678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、上記問題点を解決し、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがなく、しかも調整が容易で別異の欠陥を誘発することの少ないシートロールの製造方法、シートロールおよびシートロールの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の別の形態によれば、走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法また、本発明の好ましい形態によれば、前記照射により形成された変形部位における最大シート厚みが、前記照射前のシート厚みの105%以上150%以下となるように前記エネルギー線を照射することを特徴とするシートロールの製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記変形部位を、前記シートの幅方向端部から前記シート幅方向に距離50mmの範囲内の領域に形成することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記エネルギー線を前記シートに対してシート幅方向に走査しながら前記照射部位に照射することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記エネルギー線として、エネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割したものを用いることを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記変形部位を、断続的に形成することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートの走行速度に応じて、前記エネルギー線の出力を変化させながら前記照射部位に照射することを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記エネルギー線としてレーザ光を用いることを特徴とするシートロール製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の別の形態によれば、走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロールが提供される。
【0018】
また、本発明の別の形態によれば、走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロールが提供される。また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートロールがアクリル樹脂フィルムロールからなることを特徴とするシートロールが提供される。
【0019】
また、本発明の別の形態によれば、破断伸度が2%以上70%以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置が提供される。
【0020】
また、本発明の別の形態によれば、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置が提供される。また、本発明の好ましい形態によれば、前記シートロールを製造する製造装置がアクリル樹脂フィルムロールを製造する装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置が提供される。
【0021】
本発明において、シートとしては、破断伸度が2%以上70%以下の樹脂シート、または破断強度が30MPa以上120MPa以下の樹脂シートが用いられる。もちろん、破断伸度が2%以上70%以下でかつ、破断強度が30MPa以上120MPa以下の樹脂シートであっても良い。中でも、アクリル樹脂フィルムやセルロースアシレートフィルムなどのフィルムに有効である。また、これらの樹脂の混合物や共重合物であってもよい。また各種の添加剤、例えば帯電防止剤や、耐候剤や、無機または有機の粒子や、ワックス等の滑剤や、顔料を含むものであってもよい。
【0022】
樹脂シートの破断伸度および破断強度は、JIS K7127/2/10−1999に規定された方法により求める。破断伸度とは、引っ張り試験機を用いて樹脂シート引っ張り、試料が破断したときの引っ張り伸び率のことであり、上記規定の方法に基づき、試験前の試料長さをL0、破断時の試料長さをLとしたとき、破断伸度=(L−L0)/L0を百分率(%)で表した値である。また、破断強度とは上記試験における破断時の荷重を試料の断面積で除した値を言う。破断伸度が2%より小さい、および/または破断強度が30MPaより小さいと、シートの靭性が非常に低く、巻き取り時に破れが発生する場合がある。逆に破断伸度および破断強度が高い場合、つまり靭性が大きい場合は、シートの割れや破れを防止するという観点から従来の技術とそれほど大きな差異は生じないが、比較的靭性の低いシート、すなわち破断伸度70%以下および/または破断強度120MPa以下のシートにおいて、特に従来の技術と比べてシートの割れや破れを防止出来るため、本発明が好適となる。
【0023】
本発明において、照射部位とは、エネルギー線が照射されるシートの位置のことであり、特に広幅シートの場合は両端2ヶ所に照射部位を設けることが好ましい。
【0024】
本発明において、エネルギー線とは紫外線、可視光線、赤外線、レーザ光線、放射線など波長成分を含む、シートに対して非接触的な指向性のあるエネルギー伝播をいう。シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線とは、典型的には、シートに吸収されやすい波長成分が含まれている光線等であれば良く、例えばシートが樹脂である場合は気体レーザや固体レーザや半導体レーザなどのレーザ光が好ましい。
【0025】
本発明において、シートの変形とは、変形部位においてシートが分割されることがなく、変形後もシートの一体性が維持される範囲で、かつシートをロール状に巻き取ったときに、変形部位のあるシートの面とこれに重ねて巻き取られたシートの層の面との間の摩擦を増大させる形状、化学的な表面改質等の性質の変化をいう。特にシート表面が熱により塑性変形したものが好ましい。
【0026】
本発明において、照射前のシート厚みとは、エネルギー線を照射する前の幅方向の平均厚みである。
【0027】
本発明において、エネルギー線の照射部位と、エネルギー線の照射によって形成された変形部位とが完全に一致する必要はなく、変形部位には照射部位だけでなく、例えば照射部位に囲まれた部位や、照射部位の周辺部など、照射が原因で変形する全ての部位が含まれる。
【0028】
本発明において、シートの幅方向とは、シートの走行方向とシート面の法線方向とに対してそれぞれ直交する方向をいう。
【0029】
本発明において、エネルギー線をシートの幅方向に走査する方法としては、例えば光学的な手段でエネルギー線をシートの幅方向にトラバースしながら照射する方法がある。ここで、幅方向に走査するとは、エネルギー線がシートの幅方向にトラバースする成分を有していればよいことをいい、走査する方向が必ずしも幅方向に完全に一致している必要はない。
【0030】
本発明において、変形部位を断続的に形成するとは、複数の変形部位の集合状態をマクロ的に見た時に、例えば変形部位が点線や破線状に配置することを意味する。
【0031】
本発明において、変形部位の形状や大きさ、個数は特に規定されないが、例えば面積0.01〜1mm2程度の変形部位が、1個/1cm2以上の密度で、適宜規則的に配列されているのが好ましい。
【0032】
本発明において、エネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割するとは、1本のエネルギー線を複数のエネルギー線に分岐することをいう。分割する手段としては、1本エネルギー線を拡散させ、複数のエネルギー線に再度集光させる方法が好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係るシートロールの製造方法によれば、シート同士の摩擦係数を増大させるために有効なシートへの表面処理として、効果を長時間維持できる塑性変形を利用した変形部位を、非接触な手段でシート上に形成することができるため、エンボス加工で課題となっていた、エンボスロールの対極ロールへの押し付け圧を均一に調整する必要もなくなる。またエンボスリングとシートの擦れによる粉の発生も防止でき、新たなキズを発生させる懸念も解消できる。またエンボスリングやシートを加熱する際の温度調整も不要となる。また帯電処理とは異なり、帯電欠点を誘発する懸念も小さい。さらには、比較的靭性が低く、割れや破れが発生し易い樹脂シートにおいて、上記変形部位を非接触で形成するため、加熱されるのがほぼ変形部位のみであり、変形部位周辺の加熱は極力抑えられ、変形部位周辺において割れや破れを生じることが少なく、生産性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の好ましい形態について説明する。
【0035】
エネルギー線の照射により形成された変形部位における最大シート厚みは、シート同士がズレないだけの密着力を確保することができれば特に規制されないが、薄すぎるとシート同士がズレないだけの密着力を確保することができず、逆に厚すぎるとロール状に巻き取る際に積層され形成されるコブも大きくなり、コブ周辺に新たなシワを誘発したり、コンタクトロールにダメージを与えるという新たな不具合も発生するため、照射により形成された変形部位における最大シート厚みが、照射前のシート厚みの105%以上150%以下となるようエネルギー線を照射することが好ましい。照射前のシートの厚みの105%未満の場合は、シート同士の密着力が低く、150%よりも大きい場合はシワを誘発したり、コンタクトロールにダメージを与えるので好ましくない。なおコンタクトロールとは、シートをロール状に巻き取る際に、シート層間に噛み込む随伴エアを排除するため巻取ロールに押し当てるロールのことであり、一般的に表面がゴム被覆されたロールを用いる。
【0036】
照射により形成された変形部位は、後工程において品質上の観点から屑として処理されることが一般的であるため、変形部位はシートの端部近傍に配置することが好ましく、特に後工程での歩留まり低下を防止するためには、変形部位は、シートの幅方向端部からシート幅方向に距離50mmの範囲内の領域に形成されていることが好ましい。変形部位がシートの幅方向端部から距離50mm以上の場合は、歩留まりが低下して好ましくない。なお広巾シートの場合は変形部位を両端付近に2ヶ所に各々配置しても良い。
【0037】
変形部位を幅方向において広範囲に形成すれば、フィルム同士の密着力をより高めることができる。変形部位を広範囲に分散して形成する手段としては、エネルギー線をシートに対してシート幅方向に走査しながら照射部位に照射することが、エネルギー線源を幅方向に多数並べて設置する必要がなくなり、本発明の目的が安価で達成できるため、好ましい。
【0038】
照射により形成された変形部位を広範囲に形成する別の手段としては、エネルギー線としてエネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割してから照射部位に照射することが、やはりエネルギー線源を幅方向に多数並べて設置する必要がなくなり、本発明の目的が安価で達成できるため、好ましい。
【0039】
変形部位を断続的に形成すれば、シート同士間の摩擦係数をより増大させ、シート同士の密着力を高めることができるため、好ましい。変形部位を断続的に形成する手段としては、例えばエネルギー線をパルス照射すれば良い。なお同出力のエネルギー線源でも連続照射よりパルス照射のほうが高いピーク出力を得られるため、変形部位を形成するために必要なエネルギー線源の出力を低くすることができ、本発明の目的が安価で達成できるという利点もある。
【0040】
シートの走行速度に応じて、エネルギー線の出力を変化させながら照射部位に照射することも好ましい。シートを巻き取る際は走行速度に加減速が伴うため、シートの走行速度に応じて、エネルギー線源の出力を変化させながらシートに照射することで、シートの長手方向全域における変形部位におけるシート厚みの分布を例えば一定にするなど任意に調整することが容易に可能となる。
【0041】
エネルギー線としてレーザ光を用いることで、照射部位に効率的に熱エネルギーを発生させ変形させることができるため、好ましい。レーザの種類は特に限定されないが、例えば樹脂シートを変形させるレーザとしては、樹脂への吸収率やレーザの出力安定性、レーザ発振器の価格などを考慮すると、CO2レーザが好ましい。波長は、特にプラスチックフィルムにおける吸収率の高い赤外線(0.8〜20μm)の範囲内が好ましい。アクリル樹脂フィルムにおいては5.0〜15.0μmの波長が吸収率が高いため、より好適である。実用的には10μm付近の波長を持つCO2レーザが最適である。
【0042】
本発明のシートロールは、変形部位によってシート同士間の摩擦係数が増大しシート同士の密着力が高まるため、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがなく、好ましい。
【0043】
本発明によれば、前記記載のシートロール製造装置を用いると、照射部位の変形によってシート同士間の摩擦係数が増大しシート同士の密着力が高まり、ロール状に巻き取る際に端面ズレやスリキズがないシートを製造することができるため、好ましい。
【0044】
図2は、アクリル樹脂フィルムの広幅シートを狭幅に分割し複数の巻取ロールを巻き取る装置(スリッタ)に、本実施形態に係るシートロール製造方法を適用した場合の例を示すものである。
【0045】
図2において、巻出ロール4より巻き出された広幅のアクリル樹脂フィルム9は、スリット部6で所定の小幅に分割スリットされ、レーザ照射部7で狭幅フィルムの各両端部近傍にレーザ照射された後に、巻取ロール5として巻き取られる。なお図2において、本発明に直接関係ない搬送ロール等は省略している。図3はレーザ照射部7をフィルム走行方向の鉛直上方から見た上面図、図4はレーザ照射部7をフィルムの走行方向上流から見た側断面図である。レーザ照射部7には、モータで回転する多角形のポリゴンミラー11が設けられており、スリッタの側面に設置された市販のCO2レーザ発振器15からパルス波で出力されたCO2レーザ光16は、光路の途中に設けられた複数のミラー14で光路を屈曲された後に、ポリゴンミラー11の多角形面に入射される。なおミラーは平面鏡や曲面鏡など、レーザ光を反射できるものであれば特に限定されない。ポリゴンミラー11が回転すると、CO2レーザ光16の多角形面に対する入射角及び反射角が、多角形面のピッチで変化するため、反射したCO2レーザ光16は、ポリゴンミラー11の回転に応じて光路がフィルム幅方向に走査され、アクリル樹脂フィルム9のフィルム端8近傍に変形部位13aが形成される。なおCO2レーザ発振器15からフィルムに照射される直前まで、CO2レーザ光16の光路は、周囲にレーザ光が漏れないようにパイプやシールボックスなどで囲まれていることが好ましい。
【0046】
図5にフィルム上に形成された変形部位の例を示す。アクリル樹脂フィルム9のフィルム端8近傍10mm〜20mmの範囲内には断続的な変形部位13aが形成される。また、パルス発振周波数を大きくすることで、形成される断続的な変形部位の一部が繋がって、一部連続的な変形部位を形成することも可能である。
【0047】
図6に変形部位13aの断面図を示す。CO2レーザ光はポリエステルフィルムに吸収され照射部位18には熱エネルギーが発生するため、フィルムが溶融し、その表面張力によって、図6に示すように照射部位18の周縁部にはビード状の盛り上がり17が形成される。なお変形部位13aの盛り上がり17の高さが、アクリル樹脂フィルム9の走行速度に応じた最適値となるようにCO2レーザ発振器15の出力はアクリル樹脂フィルム9の走行速度に応じて適宜変更可能である。レーザ照射部はフィルムの両端2ヶ所に設けられており(上記説明では片側を省略)、フィルム両端2ヶ所にレーザ照射されたフィルムは、ロール状に巻き取られる際にフィルム同士がずれないため、端面ズレやスリキズを防止できる。
【0048】
なおレーザ光の光路をフィルム幅方向に走査させる手段としては、ポリゴンミラーのかわりに、平面ミラーをモータで振動させてレーザ光16を幅方向に走査させるガルバノミラー方式を用いても良い。また、図7に示すように、プリズムレンズ19等の分割手段でレーザの光路をフィルム幅方向に複数に分割し、分割したレーザ光をフィルムに照射することで、図8に示すような変形部位13bを形成しても良い。
【0049】
なおシートをロール状に巻き取る工程の上流において、シートの端部近傍にレーザ照射による変形部位を形成できれば、レーザ照射部の場所は特に規制されない。図2ではレーザ照射部の下流にスリット部を設けているが、スリット部の下流にレーザ照射部を設けても良いし、図9に示すように、巻出ロール4上や巻取ロール5上にレーザ照射部を設けても良い。また製膜工程で成形されたシートを、中間製品として広幅のままロール状に巻き取る工程の途中にレーザ照射部を設けても良い。
【実施例】
【0050】
以上のシートロール製造方法を、樹脂シートのスリッタに適用する具体例について説明する。樹脂シートには厚み80μmのアクリル樹脂フィルムを用いる。スリッタは幅2000mmのフィルムロールを巻き出す巻出部、フィルムを幅1000mmの小幅に2分割スリットするスリット部、狭幅フィルムの各両端部にCO2レーザを照射するレーザ照射部、狭幅フィルムをロール状に巻き取る巻取部から構成される。なおフィルムの走行速度は60m/分である。レーザ照射部では、スリッタの側部に設けられた出力10〜30Wの範囲で可変のCO2レーザ発振器(波長10.6μm)から2000Hzの周波数でパルス発振されたCO2レーザ光が、ミラーで光路を屈曲されポリゴンミラーに入射された後、ポリゴンミラーからの反射光がフィルム端部近傍の幅方向10mmの範囲を所定の速度で走査しながらフィルムに照射されるように、ポリゴンミラーがモータで回転されている。なおレーザがフィルムに照射される際のスポット径は0.1mmである。なおシートの蛇行などでレーザ光の照射位置からシートが外れ、シート端面を変形させてしまう可能性があるため、フィルム端部より幅方向に少なくとも5mm程度内側の場所から、さらに内側の範囲を幅方向にトラバースしている。
ここで、アクリル樹脂フィルムの破断伸度および破断強度をJIS K7127/2/10−1999に規定された方法により、商品名:ロボットテンシロンRTA100(オリエンテック社製)を用いて、25℃、65%RH雰囲気で5回測定を行い、平均値を求めた。ただし、試験片は上記JIS規格における試験片タイプ2であり、幅10mmで長さ150mm(標線間距離は50mm)の試料とした。また、試験速度は10mm/minとした。試験を開始してから荷重が1Nを通過した点を伸びの原点とした。
[実施例1]
上記試験の結果、破断伸度35%、破断強度75MPaであったフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を10W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を0.5m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図10に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは85μm(照射前の厚み80μmに対して106%)であった。
[実施例2]
実施例1と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を21W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは88μm(照射前の厚み80μmに対して110%)であった。
[実施例3]
実施例1と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を27W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは98μm(照射前の厚み80μmに対して123%)であった。
[実施例4]
上記試験の結果、破断伸度11%、破断強度50MPaのフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を21W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは87μm(照射前の厚み80μmに対して109%)であった。
[実施例5]
上記試験の結果、破断伸度4%、破断強度40MPaのフィルムに対して、レーザ照射部において、レーザ光の出力を21W、レーザ光のフィルム幅方向走査速度を1m/秒とした場合にフィルム上に形成される断続的な変形部位の概略図は図11に示すとおりである。なお変形部位の最大厚みは87μm(照射前の厚み80μmに対して109%)であった。
[比較例1]
実施例1と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、図1に示す方法で、エンボスリングと対極リングの間に上記フィルムを挟みながら走行させた。ここで、エンボスリングとしては外径が120mm、面長が100mmの金属製リングであり、回転可能に支持されている。リング表面の面長中央部の位置に幅10mmでエンボス模様が形成されている。エンボス模様としては、底面径が0.9mm、頂面が約0.3mm、高さが0.6mmの台形型の円柱形状からなる模様が一様に配置されている。また、対極リングは外径が120mm、面長が100mmの金属製リングで、回転可能に支持されている。なお、エンボスリングの押圧は2kN/mとし、エンボスリングの表面温度は200℃とした。エンボスリング接触後10mは走行したものの、エンボスリング接触部からフィルムが破れ、ロール状に巻き取ることは出来なかった。なお、変形部位の最大厚みは92μm(エンボスリング接触前の厚み80μmに対して115%)であった。
【0051】
[比較例2]
実施例4と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、図1に示す方法で、エンボスリングと対極リングの間に上記フィルムを挟みながら走行させた。なお、エンボスリングと対極リングの構成は比較例1と同じとし、エンボスリングの押圧は2kN/mとし、エンボスリングの表面温度は200℃とした。エンボスリング接触後すぐにエンボスリング接触部からフィルムが破れ、ロール状に巻き取ることは出来なかった。
【0052】
[比較例3]
実施例5と同じ破断伸度および破断強度のフィルムに対して、図1に示す方法で、エンボスリングと対極リングの間に上記フィルムを挟みながら走行させた。なお、なお、エンボスリングと対極リングの構成は比較例1と同じとし、エンボスリングの押圧は1.5kN/mとし、エンボスリングの表面温度は200℃とした。エンボスリング接触後すぐにエンボスリング接触部からフィルムが破れ、ロール状に巻き取ることは出来なかった。
【0053】
フィルム端部近傍に実施例1〜5に示すような変形部位を形成したフィルムはいずれも、ロール状に巻き取られる際にフィルム同士がずれないため、端面ズレやスリキズを防止できる。一方、比較例1〜3に示すような方法では、安定してフィルムに変形部位を形成できず、ロール状に巻き取ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、シートが樹脂シートの場合に特に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来のエンボス加工を示す構成概略図である。
【図2】本発明のシートロール製造方法の一実施形態を示す構成概略図である。
【図3】図2のレーザ照射部をフィルムの走行方向の鉛直上方から見た上面図である。
【図4】図2のレーザ照射部をフィルムの走行方向上流から見た側面図である。
【図5】図2においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【図6】図5の変形部位のA−A′縦断面図である。
【図7】本発明のシートロール製造方法の別の一実施形態におけるレーザ照射部をフィルム走行方向上流から見た側面図である。
【図8】図7においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【図9】本発明のシートロール製造方法の別の一実施形態を示す構成概略図である。
【図10】実施例1においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【図11】実施例2〜5においてフィルム上に断続的に形成される変形部位を示す概略図である。
【符号の説明】
【0056】
1 エンボスリング
2 対極リング
3 シート
4 巻出ロール
5 巻取ロール
6 スリット部
7 レーザ照射部
8 フィルム端
9 アクリル樹脂フィルム
10 モータ
11 ポリゴンミラー
12 カバー
13a,13b 変形部位
14 ミラー
15 CO2レーザ発振器
16 CO2レーザ光
17 盛り上がり
18 照射部位
19 プリズムレンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法。
【請求項2】
走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法。
【請求項3】
前記照射により形成された前記変形部位における最大シート厚みが、前記照射前のシート厚みの105%以上150%以下となるよう前記エネルギー線を照射することを特徴とする、請求項1および/または請求項2に記載のシートロールの製造方法。
【請求項4】
前記変形部位を、前記シートの幅方向端部から前記シートの幅方向に距離50mmの範囲内の領域に形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項5】
前記エネルギー線を前記シートに対して前記シートの幅方向に走査しながら前記照射部位に照射することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項6】
前記エネルギー線として、エネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割したものを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項7】
前記変形部位を、断続的に形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項8】
前記シートの走行速度に応じて、前記エネルギー線の出力を変化させながら前記照射部位に照射することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項9】
前記エネルギー線としてレーザ光を用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項10】
前記シートとしてアクリル樹脂フィルムを用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項11】
走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロール。
【請求項12】
走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロール。
【請求項13】
前記シートロールとしてアクリル樹脂フィルムロールを用いることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のシートロール。
【請求項14】
破断伸度が2%以上70%以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置。
【請求項15】
破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置。
【請求項16】
前記シートとしてアクリル樹脂フィルムを用いることを特徴とする請求項14または請求項15に記載のシートロールの製造装置。
【請求項1】
走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法。
【請求項2】
走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取ることを特徴とするシートロールの製造方法。
【請求項3】
前記照射により形成された前記変形部位における最大シート厚みが、前記照射前のシート厚みの105%以上150%以下となるよう前記エネルギー線を照射することを特徴とする、請求項1および/または請求項2に記載のシートロールの製造方法。
【請求項4】
前記変形部位を、前記シートの幅方向端部から前記シートの幅方向に距離50mmの範囲内の領域に形成することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項5】
前記エネルギー線を前記シートに対して前記シートの幅方向に走査しながら前記照射部位に照射することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項6】
前記エネルギー線として、エネルギー線源から発したエネルギー線を複数に分割したものを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項7】
前記変形部位を、断続的に形成することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項8】
前記シートの走行速度に応じて、前記エネルギー線の出力を変化させながら前記照射部位に照射することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項9】
前記エネルギー線としてレーザ光を用いることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項10】
前記シートとしてアクリル樹脂フィルムを用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載のシートロールの製造方法。
【請求項11】
走行する、破断伸度が2%以上70%以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロール。
【請求項12】
走行する、破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートの幅方向の所定の位置における前記シートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射し、前記照射部位および/またはその周辺部において前記シートに変形部位を形成し、その後、前記シートをロール状に巻き取って製造されてなるシートロール。
【請求項13】
前記シートロールとしてアクリル樹脂フィルムロールを用いることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載のシートロール。
【請求項14】
破断伸度が2%以上70%以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置。
【請求項15】
破断強度が30MPa以上120MPa以下のシートからなるシートロールを製造する製造装置であって、シートの幅方向の所定の位置におけるシートの両面または片面の照射部位に、前記シートに吸収されるエネルギーを付与するエネルギー線を照射するエネルギー線照射手段を有することを特徴とするシートロールの製造装置。
【請求項16】
前記シートとしてアクリル樹脂フィルムを用いることを特徴とする請求項14または請求項15に記載のシートロールの製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−201507(P2008−201507A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37497(P2007−37497)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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