説明

シート切断方法

【課題】ウエハ等の被着体に接着シートを貼付して当該接着シートを被着体に合わせて切断した後に、再接着によってその切断端面間に接着剤が延びて糸を引くような現象が発生し、この糸引き部分が意図しない部分に付着してしまうことを防止できるシート切断方法を提供すること。
【解決手段】内側テーブルT2に被着体としてのウエハWを支持した状態で、当該ウエハWの外周からはみ出す大きさの接着シートSを貼付する。この接着シートSは、切断手段16を介してウエハWの大きさに合わせて切断される。切断を行った後に、内側テーブルT2を外側テーブルT1に対して接着シートSの貼付面に直交する軸を回転中心として相対回転させた後、ウエハWに貼付された接着シートSと、外側の不要接着シートS1とを分離することで、接着シートSの切断端面間の糸引き現象を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート切断方法に係り、更に詳しくは、被着体の外周からはみ出す大きさの接着シートを被着体に貼付した後、当該接着シートを被着体の大きさに合わせて切断するシート切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する)には、その回路面形成側に保護シートとしての接着シートが貼付され、当該接着シートを貼付した状態で、裏面研削等、種々の処理を施すものとなっている。
接着シートをウエハに貼付する場合には、ウエハの外周からはみ出す大きさを備えた帯状の接着シートをウエハ上に繰り出して貼付し、その後に、ウエハの大きさに合わせて接着シートを切断する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、特許文献1に記載された接着シート(ダイボンディングテープ)の切断方法は、外側テーブル(テープサポートテーブル)に吸引凹溝が形成されており、ウエハの大きさに合わせて接着シートを切断したときに、吸引凹溝を減圧してウエハ上に貼付された接着シートの外側にはみ出る不要接着シート部分を立ち上げて切断部位の再接着を防止する手法が採用されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−134438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近のウエハは、極薄(数十μm)の厚みとなるように裏面研削が要求されており、研削後のウエハが搬送工程等において衝撃によって割れてしまわないように、剛性を備えた接着シートや、厚手の接着シートを用いることが必要となる。
そのため、特許文献1に記載された方法では、前記吸引凹溝に沿って接着シートが立ち上がり難くなり、切断部位での再接着を生じてしまう、という不都合を招来する。
また、吸引凹溝を外側テーブルに形成しなければならないため、当該外側テーブル自体の構造も複雑になるばかりでなく、製造コストが高騰する、という不都合もある。
【0005】
図4は、従来の切断方法で接着シートSを切断し、搬送アームHによりウエハWを持ち上げた状態を示す。
しかしながら、このようなシート切断方法では、切断後にウエハWに貼付された接着シートSと、その外側に位置する不要接着シートS1とが時間と共に再接着してしまう場合があり、そのような状態で搬送アームHによりウエハWを持ち上げると、その切断端面間に接着剤Aが延びて糸を引くような現象(以下、「糸引き現象」という)が発生する。このような状態で、ウエハWの裏面研削が行われると、糸状の接着剤Aが砥石に巻き込まれて、ウエハWを破損させたり、砥石に纏わり付いて研削精度を低下させる要因となる。
更に、前述のような剛性を備えた接着シートや、厚手の接着シートを採用した場合には、通常のカッターでは切断が困難なため、カッター刃等を加熱して接着シートを溶かしながら切断する場合がある。このような場合、接着剤に加え、基材シートの再接着が原因で糸引き現象が発生する場合がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ウエハ等の被着体に貼付された接着シートと、外側の不要接着シートとが再接着しても糸引き現象を発生しないシート切断方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、被着体を支持するテーブル上面に特別な加工を施す必要性のないシート切断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、外側テーブルの内周側に設けられた内側テーブルに被着体を支持した状態で、当該被着体の外周からはみ出す大きさの接着シートを貼付し、接着シートを被着体の大きさに合わせて切断するシート切断方法において、前記接着シートを切断した後に、前記外側テーブルと内側テーブルとを接着シートの貼付面に直行する軸を中心として相対回転させ、次いで、被着体に貼付された接着シートと、外側の不要接着シートとを分離する、という手法を採っている。
【0008】
本発明において、前記外側テーブルと内側テーブルとを前記回転中心軸方向に相対変位させて被着体に貼付された接着シートと、外側の不要接着シートとを分離するようにしてもよい。
【0009】
更に、前記外側テーブルと内側テーブルとを相対回転又は相対変位させるときに、前記接着シートを外側テーブルに押さえ付けることが好ましい。
【0010】
また、前記切断手段、外側テーブル、内側テーブルの少なくとも1つを加熱した状態で前記切断を行う、という手法を採ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接着シートの切断後に、前記外側テーブルと内側テーブルとが接着シートの貼付面に直交する軸を中心として相対回転することで、切断後に再接着が起こっても、その再接着部分は横方向に延びて切れてしまい、被着体に貼付された接着シートと、外側の不要接着シートとが完全に縁が切れた状態となる。このような状態で、被着体に貼付された接着シートと外側の不要接着シートとが分離されるので、糸引き現象が発生することを防止することができる。そのため、例えば、被着体をウエハとして当該ウエハの回路面を保護する接着シートが糸引き現象を起こして砥石に巻き込まれてしまうような不都合を解消することができる。
また、前記接着シートを外側テーブルに押さえ付ける方法を採用すれば、外側テーブルと内側テーブルとを相対回転又は相対変位させたときに、接着シートの捻れや捲れ上がりを確実に解消することができる。
更に、前記切断手段等を加熱させた状態で切断を行えるように構成した場合には、剛性を備えた接着シートや、厚手の接着シートが適用されても、接着シートを溶かして切断することができる。この場合、接着シートを溶かしながら切断した後、この基材シートが再接着して糸引き現象を起こす虞があってもそれを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1には、本実施形態に係るシート貼付方法が適用されたシート貼付装置の概略正面図が示されている。この図において、シート貼付装置10は、帯状の剥離シートRLの一方の面に接着剤Aと基材シートBからなる帯状の接着シートSが仮着された原反Rを繰出可能に支持する支持ローラ11と、剥離シートRLを回収する回収手段12と、原反Rから剥離シートRLを剥離するピールプレート13と、被着体としてのウエハWを支持するテーブル15と、接着シートSをウエハWの大きさに合わせて切断する切断手段16と、接着シートSの繰り出しを兼ねるとともに、前記切断によってウエハWの外側に生ずる不要接着シートS1を巻き取る巻取手段17とを備えて構成されている。
【0014】
前記回収手段12は、駆動ローラ20と、この駆動ローラ20との間に剥離シートRLを挟み込むピンチローラ21と、剥離シートRLを巻き取る回収ローラ14とからなり、図示しないモータの出力軸に連結されて駆動ローラ20と回収ローラ14とが同期回転するようになっている。
【0015】
前記テーブル15は、外側テーブルT1と内側テーブルT2とからなる。外側テーブルT1は、図1及び図2に示されるように、平面形状が略方形の底部23と、当該底部23の外周に連なる4辺の側部24とを含み、これら側部24の内側を円形の凹部25とした有底容器状に設けられている。この一方、内側テーブルT2は、側部24の内周面との間に隙間Cを形成する大きさを備えた円形をなし、その上面は、ウエハWを吸着保持する吸着面として形成されている。
また、内側テーブルT2は、前記底部23上に配置されたモータ27と直動モータ28とを介して前記凹部25内に配置される。モータ27は、接着シートSの貼付面と直交する軸を回転中心として外側テーブルT1と内側テーブルT2とを平面内で相対回転可能とする一方、直動モータ28は、外側テーブルT1と内側テーブルT2とを前記平面に対して直交方向すなわち前記回転中心の軸方向に相対変位させるようになっている。なお、本実施形態では、外側テーブルT1及び/又は内側テーブルT2の内部には、図示しないヒータを内蔵することができ、これにより、前記接着シートSを柔らかくして切断しやすくすることができる。
【0016】
前記切断手段16は、図示しないヒータによって加熱されるカッター刃30と、当該カッター刃30を保持するアーム31と、このアーム31を平面内で回転させる回転軸32と、当該回転軸32及びアーム31を介してカッター刃30をウエハWの外周に沿って回転させる図示しないモータとを含む。これにより、剛性を備えた基材シートBや厚手の基材シートBを有する接着シートSが採用されても、基材シートBを溶かしながら切断することができる。
【0017】
前記巻取手段17は、図1中左右方向に沿って移動可能に設けられたフレームFと、当該フレームFに支持された駆動ローラ35と、この駆動ローラ35との間に接着シートSを挟み込むピンチローラ36と、不要接着シートS1を巻き取る巻取ローラ37とからなり、図示しないモータの出力軸に連結されて駆動ローラ35と巻取ローラ37とが同期回転するようになっている。また、駆動ローラ35の近傍には、プレスローラ40が配置されており、当該プレスローラ40は、上下方向に移動可能に設けられているとともに、前記外側テーブルT1及び内側テーブルT2の上面に沿って移動可能に設けられている。
【0018】
次に、本実施形態におけるシート切断方法について、図3をも参照しながら説明する。
【0019】
初期作業として、支持ローラ11から原反Rを引き出し、ピールプレート13の先端位置で剥離シートRLを剥離し、当該剥離シートRLのリード端を回収ローラ14に固定する。この一方、剥離シートRLが剥離された接着シートSは、そのリード端が巻取ローラ37に固定される。また、内側テーブルT2は、図1に示されるように、載置されるウエハWの上面が外側テーブルT1の上面と同レベルとなるように、図示しないセンサと直動モータ28によって駆動制御される。
【0020】
図示しない搬送アームを介してウエハWが内側テーブルT2に移載されると、フレームF及びプレスローラ40が図1中実線位置から二点鎖線位置に下降する。そして、プレスローラ40が回転して接着シートSに押圧力を付与しながら左側に移動し、図中左側の側部24の上まで移動するとともに、駆動ローラ35は接着シートSを巻き取りながら右側の側部24の上まで移動する(図2参照)。これにより、接着シートSは、外側テーブルT1とウエハWの上面に接着され、且つ、プレスローラ40、駆動ローラ35により接着シートSが外側テーブルT1に押さえ付けられた状態に保たれる。
【0021】
次いで、切断手段16が下降し、カッター刃30が接着シートSを突き刺す位置まで下降した後、ウエハWの外周に沿って回転することで接着シートSがウエハWの大きさに合わせて切断される。
【0022】
接着シートSの切断が行われた後、切断手段16が上方に退避し、内側テーブルT2がモータ27を介して平面内で回転する。この回転により、接着剤Aや溶けた基材シートBが再接着していても、図3に示されるように、再接着した接着剤Aや基材シートBの一部は横方向へ延びて(図中A1、B1参照)不要シートS1と完全に縁が切れる。なお、内側テーブルT2が回転するときは、前記プレスローラ40と駆動ローラ35とが接着シートSを外側テーブルT1の上面に押さえ付けた状態を保ち、接着シートSが捻れたり捲れ上がったりすることはない。内側テーブルT2が平面内で回転した後は、直動モータ28を介して内側テーブルT2が上昇し、ウエハW上の接着シートSと、外側テーブルT1上の不要接着シートS1との間に糸引き現象が発生することなく分離される。
【0023】
次いで、図示しない搬送アームを介してウエハWが内側テーブルT2上から取り去られて所定位置に搬送され、内側テーブルT2が初期の平面高さ位置まで復帰動作する。
【0024】
この後、支持ローラ11が回転をロックされた状態で、フレームFが左方向に移動するとともに、駆動ローラ35及び巻取ローラ37が不要接着シートS1を巻き取る方向に回転して不要接着シートS1の巻き取りを行った後に上昇する。そして、駆動ローラ35の回転をロックする一方、繰出ローラ11の回転ロックを解除してフレームFが右方向に移動し、図1中実線位置に復帰動作して次のシート貼付に備えて接着シートSの引き出しが行われる。
以後、同様の動作により、接着シートSの貼付、切断を行うことができる。
【0025】
従って、このような実施形態によれば、接着シートSの切断を行った後に、内側テーブルT2の平面内での回転により、糸引き現象を防止することができ、その後のウエハWの裏面研削に際して、糸引き部分が砥石に巻き込まれるような不都合を解消することができる。
【0026】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、材料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それら形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0027】
例えば、前記実施形態では、外側テーブルT1を固定し、内側テーブルT2を回転させる構成を図示説明したが、枚葉の接着シートをウエハWに貼付して切断する構成とした場合には、内側テーブルT1を固定し、外側テーブルT1を平面内で回転させてもよい。
また、外側テーブルT2を変位させる構成とし、内側テーブルT2が相対的に上昇又は下降するように構成してもよい。但し、この場合には、内側テーブルT2の支持を外側テーブルT1に対して独立して支持する必要を生ずる。
【0028】
また、切断手段16としては、移動軌跡が数値制御される多関節型ロボットを用い、当該ロボットのアーム先端にカッター刃を着脱自在に構成してもよい。この構成を採用した場合には、搬送アームをカッター刃に持ち替える構成も採用でき、ウエハWの搬送をも行うことができる。
【0029】
また、被着体はウエハWに限定されるものではなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他の板状部材も対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコンウエハや化合物ウエハであってもよい。
【0030】
更に、外側テーブルT1と内側テーブルT2とを相対回転又は相対変位させるときに、接着シートSを外側テーブルに押さえ付けるものは、プレスローラ40と駆動ローラ35以外に、別の押え付け部材を使用してもよい。
【0031】
また、内側テーブルT2は、外側テーブルT1に対して相対回転しながら相対変位するようにしてもよく、相対回転の角度は任意に設定することができる。
【0032】
更に、内側テーブルT2の相対回転の後、巻取手段17によって不要接着シートS1を巻き取るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施形態におけるシート切断方法が適用されたシート貼付装置の概略正面図。
【図2】図1の一部概略斜視図。
【図3】内側テーブルを平面内で回転させて上昇させた状態を示す要部拡大図。
【図4】従来の不都合を説明するための図。
【符号の説明】
【0034】
10 シート貼付装置
16 切断手段
27 モータ
28 直動モータ
30 カッター刃
T1 外側テーブル
T2 内側テーブル
A 接着剤
S 接着シート
S1 不要接着シート
RL 剥離シート
W 半導体ウエハ(被着体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側テーブルの内周側に設けられた内側テーブルに被着体を支持した状態で、当該被着体の外周からはみ出す大きさの接着シートを貼付し、接着シートを被着体の大きさに合わせて切断するシート切断方法において、
前記接着シートを切断した後に、前記外側テーブルと内側テーブルとを接着シートの貼付面に直交する軸を回転中心として相対回転させ、次いで、被着体に貼付された接着シートと、外側の不要接着シートとを分離することを特徴とするシート切断方法。
【請求項2】
前記外側テーブルと内側テーブルとを前記回転中心軸方向に相対変位させて被着体に貼付された接着シートと、外側の不要接着シートとを分離することを特徴とする請求項1記載のシート切断方法。
【請求項3】
前記外側テーブルと内側テーブルとを相対回転又は相対変位させるときに、前記接着シートを外側テーブルに押さえ付けることを特徴とする請求項1又は2記載のシート切断方法。
【請求項4】
前記切断手段、外側テーブル、内側テーブルの少なくとも1つを加熱した状態で前記切断を行うことを特徴とする請求項1、2又は3記載のシート切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−142900(P2009−142900A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319336(P2007−319336)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】