説明

ジェットファン

【課題】正転および逆転時においていずれの場合にも空力性能が高く、経済性に優れたジェットファンを提供する。
【解決手段】正逆方向に回転方向が切り替え可能な電動機軸5にこの電動機軸に対して垂直な円形のディスク10とその先方に電動機軸かさ歯車11が取り付けられているとともに、複数の動翼6を所定の間隔で立設させた環状の動翼支持部12がボス軸受13を介してディスクの外周面に回動可能に支持されており、各動翼は非対称な断面形状を有するとともにその基端に形成された支持軸6aが動翼支持部に回動可能に挿入支持されており、且つ、各動翼の支持軸端に動翼の回動角度を制限するためのつめが外周の一部に突設されたストッパリング15と動翼かさ歯車16を備え、電動機軸を逆転させるだけでまず動翼の向きが反転し、ストッパリングのつめが制止突起14に当接することで動翼の反転が止まるとついで羽根車全体が逆転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路トンネル内の換気を行うためにトンネルの天井に設置されるジェットファンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に道路トンネルでは、自動車の排気ガスに含まれる煤煙、一酸化炭素、窒素酸化物等の有害物質をトンネル外に排出し、新鮮な外気を取り込むため、更には火災時などの排気に換気装置が必要であり、現在普及している換気装置としてトンネル内における天井や側壁に道路の延長方向に沿って取付けられジェットファンが知られている。
【0003】
ジェットファンはトンネル施工後でも安価なコストで容易にトンネルに設置することが可能であり、長距離のトンネルでも複数のジェットファンを組み合わせて適用することができるという利点を有しており現在多用されている。
【0004】
図1は従来から周知のジェットファンの一例を示すものであり、両端に筒状のサイレンサ1,1を接続した筒状のケーシング2の内部に支柱3により電動機4が支持されているとともに、前記電動機4の両端に突出した電動機軸5に複数の動翼6及び羽根車キャップ7を配置した羽根車8取り付けたものである。
【0005】
ところで、ジェットファンは各進行方向における交通量の違いやや坑口間の気圧の差に従って送風方向を変えることが必要であることからトンネルの双方向に換気をすることが要求されているが、従来のジェットファンでは、軸対称翼形状を有する動翼6を同位相で取り付けられており、逆回転をするときに効率が低くなるという問題があった。
【0006】
従って、ジェットファン自体を回転させて送風方向を切り替える手段も実施されているが大型で重量のあるジェットファン自体を回転させるには容量の大きな電動機や複雑な構成が必要であり、価格が高くなるばかりか保守や点検も必要であるという問題点がある。
【0007】
そこで、ジェットファン自体を回転させることなく正逆回転において何れの場合にも所望の送風量を得られるジェットファンが 例えば特開平5−280489号公報(特許文献1)に記載されている。この公報に提示されているジェットファンは、図7に示すように、電動機軸5の回転方向が相反する場合は、翼形状において羽根車8が正転方向に回転する状態で動翼6の取り付け角度が位相を変えて構成され、流れ方向を変える場合(つまり正転から逆転へあるいは逆転から正転へ変える場合)は動翼6の取り付け角を逆にするための動翼角反転機構9が設けられている。
【0008】
ところが、前記公報に提示されているジェットファンは二つの電動機を用いるものに限定されており、また、動翼反転機構9が別の回転軸や歯車、さらには油などを用いるなどきわめて複雑な機構が必要で、高精度な製作技術を必要となり、調整に手間がかかると同時に過酷な使用環境下での信頼性が低くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−280489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は従来のジェットファンが有する前記問題点を解決するために成されたものであり、正転および逆転時においていずれの場合にも空力性能が高く、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明であるジェットファンは、正逆方向に回転方向が切り替え可能な電動機の少なくとも一端に突設した電動機電動機軸に羽根車を回動可能に取り付けたジェツトファンであって、前記羽根車が、前記電動機軸にこの電動機軸に対して垂直な平面に沿って配置される円形のディスクとその先方に電動機軸かさ歯車が取り付けられているとともに、複数の動翼を所定の間隔で立設させた環状の動翼支持部がボス軸受を介して前記ディスクの外周面に回動可能に支持されており、前記各動翼は前記羽根車の回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形の断面形状を有するとともにその基端に形成された支持軸が前記動翼支持部にその中心から放射状に所定の角度を有して貫通形成した取付孔に軸受を介して回動可能に挿入支持されて前記動翼支持部に立設されており、且つ、前記各動翼の動翼支持部内へ突出させた支持端に、前記動翼支持部の内周における前記各取付孔の周囲に沿って互いに対向して突設された一対の制止突起に当接して前記動翼の回動角度を制限するためのつめが外周の一部に突設されたストッパリングと前記電動機軸に取り付けられた電動機軸かさ歯車に噛み合い電動機軸かさ歯車の回転により各動翼を回動させる動翼かさ歯車が備えられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、羽根車に電動機軸の他に静止部分との間に(例えば特許文献1のような)軸が不要になり、高精度な製作技術も不要になるため、調整に手間がかからないと同時に過酷な使用環境下での信頼性を高めることができるため、空力性能が高く、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンが提供できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、空力性能が高く、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファン及びトンネル換気システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における実施の形態および従来のジェットファンの全体構造を示す断面概略図。
【図2】図1におけるA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】図1におけるB−B線に沿う拡大断面図。
【図4】図3におけるC−C線に沿う拡大断面図。
【図5】図3におけるしD−D線に沿う拡大断面図。
【図6】本発明の異なる実施の形態を図3におけるD−D線に沿う拡大断面図。
【図7】異なる従来例の羽根車の構成を示す断面部分図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0016】
図1は本発明を1つの電動機の1側に羽根車8を備えたジェットファン(単段ジェットファン)において実施した場合の実施の形態を示すものである。
【0017】
そして、前記羽根車8は、図2乃至図5に示すように、道路トンネルの天井など(図示せず)に吊設置されるケーシング2に支柱3により支持される電動機4(図1参照)の電動機軸5の先端にこの電動機軸5に対して垂直な平面に沿って配置される円形のディスク10とその先方に電動機軸かさ歯車11が固定されて取り付けられている。
【0018】
また、前記ディスク11の外周面11aに外周に複数の動翼6を所定の間隔で立設させた環状の動翼支持部12がボス軸受13を介して回動可能に支持されており、前記各動翼6はその基端に形成された支持軸6aを前記動翼支持部12にその中心から放射状に所定の角度を有して貫通形成した取付孔12aに回動可能に挿入支持されて動翼支持部12に立設されており、各動翼6の動翼支持部12内へ突出させた支持軸6aに前記動翼支持部12の内周における前記各取付孔12aの周囲に沿って突設された一対の制止突起14,14に当接して前記動翼6の回動角度を制限するためのつめ15aが外周の一部に突設されたストッパリング15ならびに電動機軸5に取り付けられた電動機軸かさ歯車11に噛み合い電動機軸かさ歯車11の回転により動翼6を回動させる動翼かさ歯車16とが備えられている。
【0019】
尚、本実施の形態では、前記一対の制止突起14,14は互いに対向した位置(180度)の角度に配置されている。
【0020】
尚、図面中、符号17は前記各動翼6の基端に形成された支持軸6aと動翼支持部12に形成された取付孔12aとの間に介装された動翼の回動を円滑にするための動翼軸受、符号18は前記各動翼7の基端形成された支持軸6aの先方に形成されたねじ部に螺締されて動翼6、動翼軸受17、ストッパリング15が動翼支持部12から外れないようにするための動翼締付ナットである。
【0021】
次に本実施の形態について、特に、羽根車9内部の機能について以下に説明する。
【0022】
先ず、電動機4が羽根車8を正転方向に回転させた場合、電動機軸5が円形ディスク10および電動機軸かさ歯車11を同調させて回転させる。この時、動翼支持部12には、複数の動翼6、動翼軸受17、ストッパリング15、動翼締付ナット18および動翼軸かさ歯車16が取り付けられているが、回転開始時にはこれらの部品の慣性により動翼支持部12は円形ディスク10の回転に同調せずほぼ停止している。
【0023】
そのため、電動機軸かさ歯車11と噛み合っている動翼軸かさ歯車16は動翼6の翼中心軸を軸として図4に示す矢印L方向へ反時計回りに回転する。そして電動機軸かさ歯車11と同調して、動翼6、動翼軸受17、ストッパリング15および動翼締付ナット18が回転するが、そのうち図5に示すようにストッパリング15のつめ15sが図示する下側位置の制止突起14に衝突して、動翼6、動翼軸受17、ストッパリング15および動翼締付ナット18の回転が止まる。この位置で動翼支持部16の回転が止まった後は動翼支持部17はディスク14と同調して回転するようになり、電動機4の正回転に合わせて所望の回動位置とした動翼6を有する羽根車8を回転させることにより所望の風量の空気を所望の方向へ送ることができる。
【0024】
このとき、本実施の形態では動翼6が電動機4の正方向へ回転するときに大きな風量の風を図1に示す矢印W1方向に送ることができる。
【0025】
その後引き続き羽根車8が回転方向を変えずに所定の回転数で回転を継続する場合、動翼6によって風を発生させる力の動翼6にかかる反作用の力により、ストッパリング15のつめ15aは図5に示す反矢印R方向の時計回り方向の力を受け続けるため、ストッパリング15を始めとする前記動翼6等の部品はこの位置から時計回りに反転することがなく、動翼取付角度は一定となる。
【0026】
次に電動機4の回転方向を切り替えて羽根車8を逆転方向に回転させることにより、前記正転方向とは逆の方向に力が作用して。各動翼6が動翼支持部16を中心として前記正転方向とは逆の方向へ向くように回動して図1に示す矢印W2方向へ向けて前記正転方向と同等な風量の空気を送風することができる。
【0027】
このような構成の本実施の形態によれば、羽根車6は電動機軸5の他に静止部分との間に(例えば特許文献1のような)軸が不要になり、高精度な製作技術も不要になるため、調整に手間がかからず過酷な使用環境下での信頼性を高めることができるため、空力性能が高く、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンが提供できる。
【0028】
図6は、本発明の異なる実施の形態を示すものであり、前記図1乃至図5に示した実施の形態に加え、羽根車8を電動機4の両端に突出させたジェットファンにについて本発明を実施したものであり、各羽根車8,8の構成は前記図1乃至図5に示した実施の形態と同様であり詳細な説明は省略する。ただ、各羽根車8,8における各動翼6は各羽根車8,8についてそれぞれ異なる位相を呈するように構成しておき(一方の羽根車8における動翼6を前記図4に示す実線で示した位置としたときにもう一方の羽根車8における動翼6を前記図4に示す仮想線で示した位置の位相となるように構成しておき)、電動機4を回転させたときに各羽根車8,8がケース2の同一方向へ向けて風を送るようにする。に合わせてそれぞれ同一方向の位相を持つように配置されている。
【0029】
本実施の形態によれば、電動機の両端に突出させた電動機軸にそれぞれ羽根車を配置した容量の大きなジェットファン(2段式ジェットファン)においても、例えば特許文献1に示したような前記従来例のように、複雑な構成が不要であり、高精度な製作技術も不要になるため、調整に手間がかからず過酷な使用環境下での信頼性を高めることができるため、空力性能が高く、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンが提供できる。
【符号の説明】
【0030】
1 サイレンサ、2 ケーシング、3 支柱、4 電動機、5 電動機軸、6 動翼、6a 支持軸、8 羽根車、10 円形ディスク、11 電動機軸かさ歯車、12 動翼支持部、13 ボス軸受、14 制止突起、15 ストッパリング、15a つめ、16 動翼かさ歯車、17 動翼軸受、18 動翼締付ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正逆方向に回転方向が切り替え可能な電動機の少なくとも一端に突設した電動機電動機軸に羽根車を回動可能に取り付けたジェツトファンであって、前記羽根車が、前記電動機軸にこの電動機軸に対して垂直な平面に沿って配置される円形のディスクとその先方に電動機軸かさ歯車が取り付けられているとともに、複数の動翼を所定の間隔で立設させた環状の動翼支持部がボス軸受を介して前記ディスクの外周面に回動可能に支持されており、前記各動翼は前記羽根車の回転中心から放射方向に延びる翼中心軸に垂直な翼断面での翼断面中心軸に対して非対称な軸非対称翼形の断面形状を有するとともにその基端に形成された支持軸が前記動翼支持部にその中心から放射状に所定の角度を有して貫通形成した取付孔に軸受を介して回動可能に挿入支持されて前記動翼支持部に立設されており、且つ、前記各動翼の動翼支持部内へ突出させた支持端に、前記動翼支持部の内周における前記各取付孔の周囲に沿って互いに対向して突設された一対の制止突起に当接して前記動翼の回動角度を制限するためのつめが外周の一部に突設されたストッパリングと前記電動機軸に取り付けられた電動機軸かさ歯車に噛み合い電動機軸かさ歯車の回転により各動翼を回動させる動翼かさ歯車が備えられていることを特徴とするジェットファン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−12558(P2011−12558A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155064(P2009−155064)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】