説明

ジェットファン

【課題】送風方向を反転させるだけでなく、いずれの送風方向の場合にも空力性能が高く、また、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンを提供する。
【解決手段】一方向に回転する電動機が支持柱を兼ねる複数の静翼を介して筒状のケーシングの内部に支持されているとともに、電動機ケースにおける一方の側端から突出させた電動機軸に軸非対称翼形状の翼断面を有する複数の動翼が備えられた羽根車が回動可能に取り付けられて羽根車の回転により昇圧された気流を静翼により平行な流れに整流して送風するジェットファンにおいて、ケーシングが静翼を支持する内側ケーシングとその外側に配置されるケーシング本体とからなるとともに、内側ケーシングの頂部と底部の平面中央にそれぞれ配置した反転軸において内側ケーシングを水平面において180度の角度に反転可能に軸着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路トンネル内の換気を行うためにトンネルの天井に設置されるジェットファンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に道路トンネルでは、自動車の排気ガスに含まれる煤煙、一酸化炭素、窒素酸化物等の有害物質をトンネル外に排出し、新鮮な外気を取り込むため、更には火災時などの排気に換気装置が必要であり、現在普及している換気装置としてトンネル内における天井や側壁に道路の延長方向に沿って取付けられジェットファンが知られている。
【0003】
ジェットファンはトンネル施工後でも安価なコストで容易にトンネルに設置することが可能であり、長距離のトンネルでも複数のジェットファンを組み合わせて適用することができるという利点を有しており現在多用されている。
【0004】
ところで、ジェットファンは各進行方向における交通量の違いやや坑口間の気圧の差に従って送風方向を変えることが必要であることからトンネルの双方向に換気をすることが要求されているが、従来のジェットファンでは、軸対称翼形状を有する動翼が同位相で取り付けられており、逆回転をするときに効率が低くなるという問題があった。
【0005】
従って、ジェットファン自体を回転させることにより送風方向を切り替える手段も実施されているが大型で重量のあるジェットファン自体を回転させるには容量の大きな電動機や複雑な構成が必要であり、価格が高くなるばかりか保守や点検も必要であるという問題点がある。
【0006】
そこで、ジェットファン自体を回転させることなく送風方向を切り替える手段を備えたジェットファンが、例えば、特開平8−312588号公報(特許文献1)、特開2004−278349号公報(特許文献2)などに提示されている。
【0007】
これらの公報に提示されているジェットファンは、図4(a)に示すように、両端に筒状のサイレンサ1,1を接続した筒状の電動機ケーシング2の内部に支柱3により電動機(図示せず)を収容した電動機4が電動機ケーシング2に対して回転可能に支持されているとともに、前記電動機4から突出させた電動機軸に複数の動翼5及び羽根車キャップ6を配置した羽根車7取り付けたものであり、支柱3の上端に配置した駆動機構8により図4(b)に示すように180度反転させてジェットファン自体を回転させることなく送風方向を切り替えるものである。
【0008】
ところが、前記公報に提示されているジェットファンにあっては、電動機ケーシングを回転させることから電動機4と電動機ケーシング2との間に形成される送風路に静翼を設けることができない。
【0009】
そのため、動翼5で昇圧された気流の向きが軸方向に対して周方向に傾いたままサイレンサ1内を旋回するので、旋回流の軸方向成分しか換気に寄与しないことに加えサイレンサ1の壁面摩擦により送風効率が低くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−312588号公報
【特許文献2】特開2004−278349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は従来のジェットファンが有する前記問題点を解決するために成されたものであり、送風方向を反転させるだけでなく、いずれの送風方向の場合にも空力性能が高く、また、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明であるジェットファンは、一方向に回転する電動機が支持柱を兼ねる複数の静翼を介して筒状のケーシングの内部に支持されているとともに、前記電動機における一方の側端から突出させた電動機軸に軸非対称翼形状の翼断面を有する複数の動翼が備えられた羽根車が回動可能に取り付けられて前記羽根車の回転により昇圧された気流を前記静翼により平行な流れに整流して送風するジェットファンにおいて、前記ケーシングが、前記静翼を支持する内側ケーシングとその外側に配置されるケーシング本体とからなるとともに、前記内側ケーシングの頂部と底部の平面中央にそれぞれ配置した反転軸において前記内側ケーシングが水平面において180度の角度に反転可能に軸着されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、簡単な構造であっても、送風方向を反転させるだけでなく、いずれの送風方向の場合にも静翼を含めて反転できるので、動翼で昇圧された旋回流が整流されて殆どが軸方向成分となるので送風効率が低下することがない。
【0014】
また、本発明において、前記ケーシング本体に前記反転軸を回転させる駆動機構が設置されている場合には、駆動機構を制御することにより簡単且つ自動的に反転を制御することもできる。
【0015】
更に、前記ケーシング本体と内側ケーシングとの間に位置決め機構が備えられている場合には、正確に反転させることができ、特に、自動化する場合に有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、送風方向の反転が簡単で、空力性能が高く、ランニングコストと製造コストが低く、信頼性に優れたジェットファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における実施の形態を示す一部を断面とした外観斜視図。
【図2】図1に示した実施の形態における縦断面図。
【図3】図1に示した実施の形態における横断面図。
【図4】従来例を示す一部を断面とした斜視図。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。
【0019】
図1乃至図3は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、両端に筒状のサイレンサ1,1を接続した筒状の電動機ケーシング2が、前記サイレンサ1,1に連結される外側に配置される筒状のケーシング本体21とその内側に配置される内側ケーシング22とから構成され、内側ケーシング22はその頂面221ならびに底面222の平面中央にそれぞれ配置した反転軸31,32により支持されてケーシング本体21に対して回動可能とされている。
【0020】
内側ケーシング22の内部には、内側ケーシング22の内壁との間に多数の静翼9が架設されて一方向に回転する電動機4が中心軸線に沿って支持されている。
【0021】
また、前記電動機4から突出させた電動機軸に軸非対称翼形状の翼断面を有する複数の動翼5及び羽根車キャップ6を配置した羽根車7が取り付けられており、前記羽根車7の回転により内側ケーシング22の吸気口223から吸い込んだ空気を昇圧された気流にするとともに前記静翼9により平行な流れに整流して排気口224か排気、送風する。
【0022】
更に、前記ケーシング本体21の頂部には前記反転軸31を回転させる駆動機構8が設置されている。この駆動機構は例えば電動機、各種シリンダのような反転軸31を回転可能に且つ少なくとも180度の角度に反転駆動可能なものであればよく、特に、別途に備えた(図示せず)制御装置により遠隔操作により反転制御することが好ましい。
【0023】
更にまた、前記内側ケーシング22の底面222には、ケーシング本体21の底面内側に形成した円弧状の係止溝(図示せず)に嵌挿する係止突起10,10とから構成される位置決め機構が備えられている。
【0024】
加えて、本実施の形態では、ケーシング本体21の両側に補助フレーム23が突設されており、内側ケーシング22を支持するケーシング本体21を補強している。
【0025】
以上の構成を有する本実施の形態は、従来のこの種のジェットファンと同様に、ケーシング本体21の頂部に係止したワイヤーやアンカー部材などにより高速道路などのトンネルの天井に吊下げ支持する。このとき、例えば図2(a)に示すように、内側ケーシング22を羽根車7が電動機4における図示する右側に位置する状態に配置してあり、必要時に電動機を回転させると、羽根車7の回転により昇圧された気流を前記静翼9により平行な流れに整流して図示する右側から左側方向へと送風する。
【0026】
そして、トンネル内の各進行方向における交通量の違いやや坑口間の気圧の差に従って送風方向を変える必要が生じたときに、本実施の形態では、前記駆動機構8を遠隔制御により駆動させて反転軸31を180度回転させて図示する左右方向に反転させる(図2(b)に示す状態)、として、電動機を回転させて羽根車7の回転により昇圧された気流を静翼9により平行な流れに整流して図示する左側から右側方向へと前記図2(a)に示したと反対の方向へ送風することができる。また、逆の操作により元の図2(a)に示した状態へと復帰させることができるので状況に応じて適宜選択することができる。
【0027】
このように、本実施の形態によれば、駆動機構8により反転軸31を反転させるだけのきわめて簡単な操作により羽根車7の回転により昇圧された気流を静翼9により平行な流れに整流して左方向及び右方向へ送風することができ、特に、気流の流れ方向成分が全て換気に寄与することができるばかりか、サイレンサ1の壁面摩擦による効率低下が最小限に抑えられることで、空力性能が高く、ランニングコストおよび製造コストも低く、信頼性にも優れている。
【0028】
尚、本実施の形態では、内側ケーシング22を平面ほぼ円形としたり、ケーシング本体21に補強用の補助フレーム23および側面フレーム24を突設するなど優れた構成を有しているが、本発明は本実施の形態に限るものでなく、一方向に回転するとともに電動機軸に軸非対称翼形状の翼断面を有する複数の動翼が備えられた羽根車が回動可能に取り付けらた電動機が収容された電動機ケースが支持柱を兼ねる複数の静翼を介して筒状の内側ケーシングの内部に支持されているとともに、前記内側ケーシングがその外側に配置されるケーシング本体に水平面において180度の角度に反転可能に軸着されていればよい。
【符号の説明】
【0029】
1 サイレンサ、2 電動機ケーシング、3 支柱、4 電動機ケース、5 動翼、6 羽根車キャップ、7 羽根車、8 駆動機構、9 静翼、21 ケーシング本体、22 内側ケーシング、31 反転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に回転する電動機が支持柱を兼ねる複数の静翼を介して筒状のケーシングの内部に支持されているとともに、前記電動機ケースにおける一方の側端から突出させた電動機軸に軸非対称翼形状の翼断面を有する複数の動翼が備えられた羽根車が回動可能に取り付けられて前記羽根車の回転により昇圧された気流を前記静翼により平行な流れに整流して送風するジェットファンにおいて、前記ケーシングが、前記静翼を支持する内側ケーシングとその外側に配置されるケーシング本体とからなるとともに、前記内側ケーシングの頂部と底部の平面中央にそれぞれ配置した反転軸において前記内側ケーシングが水平面において180度の角度に反転可能に軸着されていることを特徴とするジェットファン。
【請求項2】
前記ケーシング本体に前記回転軸を回転させる駆動機構が設置されていることを特徴とする請求項1記載のジェットファン。
【請求項3】
前記ケーシング本体と内側ケーシングとの間に位置決め機構が備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のジェットファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−38495(P2011−38495A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189206(P2009−189206)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)
【Fターム(参考)】