説明

スクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法

【課題】本発明は、電子部品の一面にフラックス等を所定のパターンで印刷するスクリーン印刷装置おいて、印刷過程のマスクの離版角度を一定化できるスクリーン印刷装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、印刷パターンに対応する開口部と前記開口部を含み前記印刷材料が供給される印刷領域とを備え弾性を具備するマスクと、前記被印刷体に位置合わせされた前記マスクを押圧しつつ前記マスクの上方を少なくとも一方向に移動可能に配設された供給手段と、前記供給手段の移動方向に対し前記供給手段の後方に配設され、前記供給手段と同期して移動する引上手段と、前記供給手段の移動方向に対し鉛直な方向において前記マスクの上面と該マスクと相対する引上手段の一面との間で、当該移動方向において該供給手段の後方に位置するマスク受止面を備え、前記供給手段と同期して移動するマスク受止手段とを有するスクリーン印刷装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷材料を被印刷体に印刷するスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に係り、特に半導体装置のウエハ又は電子部品が実装される回路基板等に半田ペースト、フラックス等を所定のパターンで印刷するのに好適なスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、半田ペーストやフラックス等の印刷材料を電子部品に印刷する技術に基づいて本発明の背景を説明するが、本発明は、以下の説明のみに限定されるものではない。
【0003】
例えば、LSI・コンデンサ素子・抵抗素子等の電子部品を回路基板に実装するときには、まず、回路基板に半田ペーストを印刷し、その後、半田ペーストの上に電子部品を装着し、リフロによって半田ペーストを溶融して回路基板に接合している。また、半田ボールを用いてウエハ等に半田バンプを形成する場合には、まず、ウエハにフラックスを印刷し、次いで、フラックスの上に半田ボールを装着し、リフロによって半田ボールを溶融して半田バンプを形成している。
【0004】
上記半田ペーストやフラックス等(以下半田ペースト、フラックスも含めてペーストと言う場合がある。)を回路基板等に印刷する工程で使用されるスクリーン印刷装置は、印刷パターンに対応した開口部が形成された金属スクリーンや金属薄板(以降、マスクと称する)を回路基板上に位置合わせし、次いでマスクの上面に供給されたペーストをスキージで塗り広げることにより開口部に充填し、その後マスクを回路基板から離版してペーストを回路基板に転写するように構成されており、オフコンタクト方式とコンタクト方式の2方式が知られている。
【0005】
ここで前者は、図7(a)に示すように、マスク911をその下面が回路基板Wの上面との間に所定の初期間隙G(以下スナップオフと言う場合がある。)を有するように位置合わせし、スキージ92で前記初期隙間Gを塞ぐように押付ながら移動しつつペーストfを塗り広げ、開口部913を通して回路基板Wに印刷する方式である。この方式では、スキージ92で押し付けられ撓み量相当分伸びたマスク911の張力により、スキージ92が通過した直後のマスク911は回路基板Wから離版する。ここで、この方式では、スキージ92の移動に伴い回路基板Wからマスク911の離版する際の角度(離版角度)Θが変化するためマスク911の離版状態が不安定となり、印刷されたペーストfのピッチや寸法などの印刷精度にバラツキが生じる等の印刷品質に問題を有していた。
【0006】
また後者は、図7(b)に示すように、マスク911を回路基板Wと接触させて位置合せを行う方式であるので、前述した印刷品質、精度に関しては有利であり、最近の電気素子の実装高密度化に伴う配線の狭ピッチ化等に対応できる方式として用いられるようになってきている。しかしながら、この方式では、印刷工程が終了した後に回路基板Wを降下させてマスク911を離版するため、離版工程が別途必要になるうえ、安定した印刷品質を得るためには回路基板Wを1mm/秒以下の低速で下降させる必要があり、印刷作業に時間がかかるという問題があった。また、この方式でも版離れはマスク911の張力で行われるので、マスク911の開口部913の形成状態(開口部の内壁の粗さ等)やペーストfの粘着力の違いにより回路基板Wとマスク911との密着力が各部で異なっている場合にはマスク911の離版角度Θが一定せず、オフコンタクト印刷と同様に印刷品質に問題が生じていた。
【0007】
上記問題を解決するため種々の検討がなされており、その一例が下記特許文献1に記載されている。特許文献1には、回路基板の表面に接触するようにセットされたマスクに対し、先端がマスクの上面に当接しかつマスク上面に平行なX軸の一端側から他端側へ移動してはんだペーストをマスクの開口部に押し出すスキージがマスクの上方に設けられ、マスクの一端側を上方へ持ち上げて回路基板から順次剥離させる持ち上げ手段と、スキージの先端を中心とした回路基板に対するマスクの一端側の傾斜角度(離版角度)がほぼ一定になるように上記持ち上げ手段を昇降させる昇降手段とが備えられ、スキージの先端と持ち上げ手段とはそれぞれ、マスク上面に平行でかつX軸に直交するY軸方向にわたって延設されているコンタクト方式のスクリーン印刷装置が開示されている。
【0008】
このスクリーン印刷装置によれば、スキージがX軸の一端側から他端側へ移動してはんだをマスクの開口部に押し出すとともに、昇降装置が持ち上げ手段を上昇させることによって、マスクの一端側が持ち上げ手段で上方へ持ち上げられて回路基板から順次剥離される。そして、持ち上げ手段により、マスクに当接しているスキージの先端を起点として他端側から回路基板の表面に対し斜め上方へ強制的にマスクを剥離するため、マスクの離版角度が一定となりマスクの離版状態が安定するという利点がある。
【特許文献1】特開2000−85012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のスクリーン印刷装置には以下の解決すべき問題がある。特許文献1の持ち上げ手段はマスクを機械的に持ち上げるよう構成されているため、マスクを回路基板に位置決めしたとき回路基板の存在しない位置、具体的にはマスクの端部に対応する位置のみ配置することが可能である。したがって、マスクと回路基板との大きさの関係で持ち上げ手段を配置する余地が無い場合には持ち上げ手段を配することができないという問題がある。また、特許文献1の持ち上げ手段はマスクの端部を持ち上げる構成である。したがって、マスクに供給されたペースト等をスキージで塗り広げつつマスクの端部を持ち上げ手段で持ち上げると、スキージの長手方向(スキージの移動方向に対し交差又は直交する方向)においてマスクの端部は中央部に対し早く離反する。通常、スクリーン印刷で使用されるマスクは、その厚みが数十〜数百μmと非常に薄く可撓性(弾性)があるためである。このため、マスクの離版角度は最終的には同じ角度になるものの、スキージの中央に行くほど該角度に到るまでの時間が余計にかかることになり、スキージの長手方向におけるマスクの離版状態にバラツキが生じることになる。そして、この離版状態のバラツキは上記と同様に印刷品質に悪影響を及ぼす。この問題は、近年の配線パターンのファインピッチ化及び回路基板やウエハの大型化に対応したマスクにおいて、より顕在化している。
【0010】
本発明は、上記従来の技術の問題を鑑みてなされたものであり、電子部品等の被印刷体の一面に、半田ペーストやフラックス等の印刷材料を所定のパターンで印刷するスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法において、印刷材料を印刷している過程において一定の離版角度でマスクを離版できる新規なスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを第1目的としている。さらに、本発明は、マスクの離版状態を一様にできるスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供することを第2目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷装置において、前記パターンに対応する開口部と前記開口部を含み前記印刷材料が供給される印刷領域とを備え弾性を具備するマスクと、前記被印刷体に位置合わせされた前記マスクを押圧しつつ前記マスクの上方を少なくとも一方向に移動可能に配設され印刷材料を前記印刷領域に供給する供給手段と、前記供給手段の移動方向に対し前記供給手段の後方に配設され、前記供給手段と同期して移動しつつ前記マスクを引上げる引上手段と、前記供給手段の移動方向に対し鉛直な方向において前記マスクの上面と該マスクと相対する引上手段の一面との間に位置するとともに、供給手段の移動方向において該供給手段の後方に位置するマスク受止面を備え、前記供給手段と同期して移動するマスク受止手段とを有することを特徴とするスクリーン印刷装置である。なお、「印刷材料」とは主に液状のものであり、ペースト状又はゲル状等の粘性のある印刷材料が含まれる。
【0012】
上述したスクリーン印刷装置によれば、マスクは、所定の位置関係となるように被印刷体の一面に対し位置合わせされる。供給手段は、被印刷体に位置合わせされ印刷材料が供給されたマスクの上方をマスクを押圧しつつ移動して印刷材料を印刷領域に塗り広げることにより、該印刷領域に含まれる開口部に印刷材料を押圧し充填する。そして、供給手段の後方に配設され供給手段と同期して移動する引上手段は、印刷材料が開口部に充填された後に供給手段の後方のマスクを引上げるので、マスクは被印刷体から離版する。このとき、マスク受止手段のマスク受止面は、供給手段の移動方向に対し鉛直な方向において前記マスクの上面と該マスクに相対する引上手段の一面との間に位置するとともに供給手段の移動方向において供給手段の後方に位置し、そして、マスク受止手段は供給手段と同期して移動するので、引上手段で引上げられたマスクは供給手段との位置関係において常に一定の位置にあるマスク受止面で受け止められる。すなわち、印刷材料を印刷している過程において、マスクと当接している供給手段の当接部とマスク受止面との位置関係は常に一定であるので、上記当接部を起点としたマスクの剥離角度は常に一定に保持される。
【0013】
なお、引上手段とほぼ同じ位置、具体的には引上手段の直下にマスク受止面が位置するようにすれば、マスクの離版角度を一定にしつつマスクの損傷を確実に防止できる点及び装置構成を単純に出来る点で好適である。この態様は、例えば引上手段の一端にマスク受止手段を接合したり、引上手段自体にマスク受止面を設けマスク受止手段の機能を付与することにより構成することができる。
【0014】
さらに、少なくともマスク受止面は、マスクに損傷が生じないようプラスチック又はゴムその他樹脂等の軟質材料で構成されていることが好ましい。なお、上記のように引上手段自体にマスク受止手段の機能を付与する構成とする場合には、引上手段自身を軟質材料で形成してもよい。さらに、マスクの損傷を回避するためには、マスク受止面は曲面で構成されていることが好ましい。
【0015】
引上手段としては、真空を利用してマスクを吸引し引上げる真空吸着方式、静電気によりマスクを吸引し引上げる静電方式等の引上手段を採用することができるが、磁力によりマスクを引上げる磁力方式を用いた引上手段(磁力発生手段)であることが望ましい。この場合、マスクは軟磁性材で構成する。例えば磁力発生手段として永久磁石を使用しマスクを磁力で引上げる構成とすれば装置構成がシンプルとなる。また、全体的に均一な磁力を生じうる永久磁石は比較的得やすく、マスクの版離を一様にすることができる。なお、マスクを構成する軟磁性材としては、例えば磁性ステンレスやニッケルなどの金属材料又は軟磁性粉を含む樹脂材料等を使用することができる。なお、マスクの離版状態を一様とするためには、引上手段の大きさを前記印刷領域の大きさ以上とすることが好ましい。
【0016】
本発明の別の態様は、被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷方法において、前記パターンに対応する開口部を有する弾性のあるマスクを被印刷体と位置合わせし、マスクを押圧しつつマスクの一端から他端へ移動して印刷材料を開口部に供給し、開口部に印刷材料が供給された後のマスクを引上げるとともにマスクの押圧位置と一定の関係にある位置で引上げられたマスクを受け止めるスクリーン印刷方法である。
【発明の効果】
【0017】
上記説明のように、本発明によれば、被印刷体の一面に対し位置合わせされたマスクに供給された印刷材料を供給手段で開口部に押圧し充填し、移動する供給手段との位置関係において常に一定の位置にある引上手段により印刷材料が開口部に充填された後のマスクを引上げるとともに、該供給手段との位置関係において常に一定の位置にあるマスク受止手段のマスク受止面により引上げられたマスクを受け止める構成としたので、印刷材料を印刷する過程において常に一定の離版角度でマスクを離版させることができ、その結果、マスクの離版状態が安定して極めて印刷品質の高いスクリーン印刷装置及びスクリーン印刷方法を提供できる。また、引上手段の大きさを印刷領域の大きさ以上とすることにより、マスクの離版状態を一様とすることができ、さらに印刷品質の高いスクリーン印刷装置およびスクリーン印刷方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明について、その具体的態様に基づき図1〜6を参照しつつ説明する。図1は本発明の一態様のスクリーン印刷装置の概略構成を示す斜視図、図2は図1のスクリーン印刷装置の対象であるウエハの斜視図、図3は図1のスクリーン印刷装置の拡大断面図及び平面図、図4、5は図1のスクリーン印刷装置の変形態様を示す断面図、図6は図1のスクリーン印刷装置の動作を説明する図である。
【0019】
本態様のスクリーン印刷装置で対象とする被印刷体は、図2に示すように、所定パターンで配列された平板状電極pに直径が80〜150μm程度の半田ボールBが搭載されるウエハWであり、印刷材料であるペースト状のフラックスが平板状電極pにスクリーン印刷で印刷される。
【0020】
第1態様のスクリーン印刷装置1において符号11は印刷手段である。印刷手段11は弾性を有する又は弾性を有する部材によって周囲から張設された平板状のマスク111と該マスク111を支持する枠状の支持部112を有している。マスク111には、上記ウエハWの平板状電極pの配列パターンに対応する複数の開口部113が形成されている。また、マスク111は、フラックスfが充填される複数の開口部113を含みフラックスfが塗り広げられる領域である印刷領域114と、平板状電極pが配列されたウエハWの上面(一面)に対し所定の位置関係にて位置合わせされる裏面(一面)115とを有している。マスク111は磁性ステンレス鋼で構成されており、その厚みは50μm程度である。なお、マスク111の厚みは半田ボールの大きさや平板状電極pの大きさ等を考慮し適宜設定される。開口部113は、例えばレーザ加工やエッチング加工、精密電気鋳造法など周知の加工方法で形成することができる。ここで、スクリーン印刷装置1はオフコンタクト方式を採用している。そこで、図3(a)に示すように、第1態様のマスク111は、ウエハWの上面に対し裏面115が所定の間隙すなわちスナップオフGを有するように位置合わせされる。
【0021】
図1における符号15は上記ウエハWを載置する平板状のテーブルである。このテーブル15にウエハWを真空吸着する真空吸着手段等を組込めば、載置されたウエハWはテーブル15に吸着され固定されるので好ましい。
【0022】
符号12は、本態様の供給手段であるプラスチック系やゴム系の材料から成る平板状のスキージである。スキージ12は、ウエハWに対して位置合わせされたマスク111の上面にその下端が当接してマスク111を下方に押圧するよう構成されている。スキージ12は、図3において矢示するように、マスク111の一端から他端に向かい水平に移動可能な水平移動手段14に取付けられている。ここで、図1に示すように、スキージ12の移動方向をX軸、水平面内で当該X軸に直行する方向をY軸、X軸及びY軸にともに直交する方向(鉛直方向)をZ軸と定義する。
【0023】
スキージ12は、図3(b)に示すように、Y軸方向において印刷領域114を包含可能な大きさを有し、印刷領域114をカバーできる位置に配設される。したがって、スキージ12は、そのX軸方向への移動により、マスク111の上面に供給されたフラックスfを印刷領域114に塗り広げ、開口部113にフラックスfを押圧し充填する。
【0024】
符号13は、図3(a)において矢示するように、マスク111を上方に引上げる引上手段である永久磁石(磁力発生手段)である。永久磁石13は、X軸方向においてスキージ12の後方であって、Z軸方向においてマスク111の上方に位置するよう水平移動手段14に固定されており、スキージ12と所定の間隔を維持しつつスキージ12と同期して移動する。なお、本態様の永久磁石13は、Y軸方向、すなわちスキージ12の長手方向に沿うマスク111の離版状態を一様にするため、図3(b)に示すように、Y軸方向においてスキージ12とほぼ同じ大きさで、マスク111の印刷領域114を包含可能に構成されている。また、永久磁石13は、X軸方向において印刷領域114の一部を含むように構成されている。
【0025】
符号16はマスク受止手段である。符号161はマスク受止手段16の下端部に形成されたマスク受止面であり、Z軸方向、すなわちスキージ12の移動方向に対し鉛直な方向においてマスク111の上面とマスク111に相対する永久磁石13の下端面との間、スキージ12の移動方向においてスキージ12とほぼ同じ位置に位置している。ここで、本態様のマスク受止手段16は、図3(a)に示すように、永久磁石13と一体をなすよう永久磁石13の下端部に固定されている。したがって、マスク受止手段16はスキージ12と同期して移動することができ、またマスク受止面161は永久磁石13の直下に位置することとなる。なお、例えば磁性粉が分散する軟質樹脂を成形した成形磁石を上記永久磁石13とし、該永久磁石13の下端面をマスク受止面161とする構成とすることもできる。かかる構成によれば、上記永久磁石13にマスク受止手段16の機能を受け持たせることができ、装置構成を単純にすることができる。
【0026】
上記マスク受止手段16はプラスチックやゴムなどの樹脂系の軟質材料から成り、また、そのマスク受止面161は、少なくともX軸方向において角部を落として丸みのある形状となるよう形成され、マスク受止面161に当接するマスク111が損傷しないよう工夫されている。なお、マスク受止面161は図3(a)に示した略台形状に限定されることなく、例えば図5(a)〜(c)に示すように、略三角形状(161a)、凹状(161b)又は半円状(161c)とすることができる。
【0027】
上記構成のスクリーン印刷装置1の動作について図6を参照し説明する。まず、図6(a)に示すように、テーブル(不図示)の所定位置にウエハWを載置し、ウエハWの上面とマスク111の裏面115との間に所定のスナップオフGが形成されるようマスク111を位置合わせする。
【0028】
次に、図6(b)に示すように、マスク111の上面にフラックスfを供給し、マスク111の右端(一端)にスキージ12の下端を当接しマスク111をウエハWに押し付ける。マスク111は弾性を有するので、スキージ12が当接している部分は下方に湾曲し、ウエハWの上面に接触する。ここで、スキージ12の後方に設けられた永久磁石13はその下方にあるマスク111を上方に引上げ、マスク受止手段16のマスク受止面161は引上げられたマスク111を受け止める。その結果、マスク111とウエハWの間にはマスク111と当接しているスキージ12の当接部を起点とした離版角度Θが形成される。
【0029】
次に、図6(c)に示すように、マスク111の右端から左端(他端)に向かって水平移動手段14でスキージ12を移動させる。その移動にともないスキージ12はフラックスfを印刷領域114に塗り広げていき、開口部113にフラックスfを押圧しつつ充填する。永久磁石13は、スキージ12に同期してその後方を移動しているので、フラックスfが開口部113に充填された直後のマスク111を上方に引上げる。ここで、永久磁石13は印刷領域114を包含する大きさであるので、永久磁石13の下方にあるマスク111は一様に上方へ引上げられる。そして、マスク受止手段16は永久磁石13とともにスキージ12と同期して移動しているので、そのマスク受止面161は引上げられたマスク111を受け止める。ここで、マスク受止面161は、スキージ12が移動中であっても、X軸方向及びZ軸方向においてスキージ12と一定の位置関係を保持するよう構成されているので、マスク111の離版角度Θを一定に保つことが可能となる。また、上記マスク受止面161は、軟質部材で形成されているのでマスク111に損傷させることがない。そして、マスク受止手段16で受け止められたマスク111は、マスク受止手段16の通過後、マスク111自体の復元力によりスナップオフGを有する初期の状態に復元する。
【0030】
次に、図6(d)に示すように、マスク111の左端までスキージ12を移動し、フラックスfの印刷が終了する。
【0031】
なお、マスク受止手段16は、マスク111を均一に受止められるように印刷領域114の大きさ以上とすることがY軸方向に沿うマスク111の離版角度を一様にする点からは望ましい。しかしながら、例えばマスク111が比較的厚い場合にはマスク111の両端部に対応する位置に設けてもよく、Y軸方向に沿い数個並設するようにしてもよい。また、マスク111の離版状態を一様にするため、上記永久磁石13の長さは印刷領域114の大きさ以上としたが、例えばマスク111が比較的小版で離版状態の均一性を考慮しなくてよい場合には大きさまたは配置に制限はなく、マスク受止手段16との協働により離版角度を一定にできる範囲で適宜選択することが可能である。
【0032】
本発明は上記態様に限定されることなく、図4に示す態様でも実施することができる。図4のスクリーン印刷装置2は基本的には上記スクリーン印刷装置1と同様な構成であるが、マスク受止手段26が、X軸方向においてスキージ12の後方で永久磁石13よりも前にある点で異なっている。なお、マスク受止手段26は、上記の位置関係となるように水平移動手段14に固定されている。かかる構成のスクリーン印刷装置2でも基本的にはスクリーン印刷装置1と同様に、一定の離版角度Θでマスク111を離版させることができるが、X軸方向においてマスク受止手段26が永久磁石13と離れているため、引上げられたマスク111が永久磁石13に当接し、損傷する可能性もある。しかしながら、例えばマスク111が比較的厚く剛性が有る場合には本態様のスクリーン印刷装置2でも十分に対応することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一態様に係るスクリーン印刷装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1のスクリーン印刷装置の対象であるウエハの斜視図である。
【図3】図1のスクリーン印刷装置の部分断面図及び平面図である。
【図4】図1のスクリーン印刷装置の変形態様を示す部分断面図である。
【図5】図1のスクリーン印刷装置の変形態様を示す部分拡大断面図である。
【図6】図6は図1のスクリーン印刷装置の動作を説明する部分断面図である。
【図7】従来のスクリーン印刷装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1(2、9):スクリーン印刷装置
11(91):印刷手段
111(911):マスク
112(912):支持部
113(913):開口部
114:印刷領域
115:裏面
12:スキージ
13:永久磁石
14:水平移動手段
15:テーブル
16(26):マスク受止手段
G:スナップオフ
W:ウエハ
p:平板状電極
f:フラックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷装置において、
(1)前記パターンに対応する開口部と前記開口部を含み印刷材料が供給される印刷領域とを備え弾性を具備するマスクと、
(2)前記被印刷体に位置合わせされた前記マスクを押圧しつつ前記マスクの上方を少なくとも一方向に移動可能に配設され印刷材料を前記印刷領域に供給する供給手段と、
(3)前記供給手段の移動方向に対し前記供給手段の後方に配設され、前記供給手段と同期して移動しつつ前記マスクを引上げる引上手段と、
(4)前記供給手段の移動方向に対し鉛直な方向において前記マスクの上面と該マスクと相対する引上手段の一面との間に位置するとともに、供給手段の移動方向において該供給手段の後方に位置するマスク受止面を備え、前記供給手段と同期して移動するマスク受止手段と、を有することを特徴とするスクリーン印刷装置。
【請求項2】
前記マスク受止面は、供給手段の移動方向において引上手段とほぼ同じ位置に位置している請求項1又は2のいずれかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項3】
前記マスク受止面は軟質材料からなり、曲面で構成されている請求項1乃至3のいずれかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項4】
前記引上手段の長さは前記印刷領域の大きさ以上である請求項1乃至4のいずれかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項5】
前記引上手段は磁力発生手段であり、前記マスクは軟磁性を有する請求項1乃至5のいずれかに記載のスクリーン印刷装置。
【請求項6】
被印刷体の一面に所定のパターンで印刷材料を印刷するスクリーン印刷方法において、前記パターンに対応する開口部を有する弾性のあるマスクを被印刷体と位置合わせし、マスクを押圧しつつマスクの一端から他端へ移動して印刷材料を開口部に供給し、開口部に印刷材料が供給された後のマスクを引上げるとともにマスクの押圧位置と一定の関係にある位置で引上げられたマスクを受け止めるスクリーン印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−196496(P2007−196496A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−17177(P2006−17177)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】