説明

ストロー包装体の開封溝加工方法及びストロー包装体

【課題】ストロー包装体の開封溝を高精度で形成する技術の提供。
【解決手段】前面フィルム14と背面フィルム12との間にストロー16を封入したストロー包装体10に対して、ハーフカット線よりなる開封溝を形成する方法であって、背面フィルム12の表面上に遮蔽部材52を配置し、まずレーザビームL1を第1の遮蔽板52aに照射し、その後レーザビームL1の照射位置をストロー16と交差する方向に必要量移動させることにより、背面フィルム12におけるストロー16の上端部16a近傍に第1のハーフカット線30を形成するストロー包装体の開封溝加工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲料容器に接着されるストロー包装体に係るものであり、特に、ストロー包装体からストローを取り出す際に利用する開封溝を高精度で形成する技術、及びストロー包装体内におけるストローの位置を安定化させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ストローを樹脂フィルム内に封入したストロー包装体を飲料容器の外面に接着したものが広く普及しており、このストロー包装体からストローを容易に取り出すための技術も種々提案されている。
例えば以下の特許文献1においては、ストロー包装体の背面フィルムにハーフカット線を形成しておくことにより、ストロー包装体を容器から剥離することなく、ストローを取り出しやすくする技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−200935
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、元々フィルムの厚さ自体が20μm程度と極めて薄いため、レーザビームの照射によってハーフカット線を形成する場合、その深さを安定化させることが課題として残されていた。
すなわち、レーザ加工の特性として入射直後のレーザ出力が大きくなる傾向があるため、ハーフカット線の開始部分が深くなり過ぎて貫通してしまうことがあった。また、ストロー自体に傷が付いてしまうこともあった。これを避けるためにレーザ出力を絞ると、今度は他の部分の深さが不足し、開封時にうまく切断できないといった事態が生じてしまう。
【0005】
また、せっかくハーフカット線をストロー包装体に形成しておいても、飲料容器の搬送中にストローの位置が動いてしまい、ハーフカット線がストロー端部に当接しないためにスムーズな取り出しが困難となる場合があった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題を解決するために案出されたものであり、ストロー包装体の開封溝を高精度で形成可能とする技術の提供を第1の目的としている。
またこの発明は、開封時におけるストローの位置ズレを有効に防止可能な技術の提供を第2の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、前面フィルムと背面フィルムとの間にストローを封入したストロー包装体に対して、ハーフカット線よりなる開封溝を形成する方法であって、上記背面フィルムの表面上に遮蔽板を配置し、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向(例えば上記ストローと交差する方向、あるいは長手方向)に必要量移動させることにより、背面フィルムにおけるストローの上端部および/または下端部近傍にハーフカット線を形成することを特徴としている。「ハーフカット線」とは、ストロー包装体の開封溝として機能する非貫通溝を意味し、その深さは特に限定されない。このハーフカット線は、例えば、ストローの上端部および/または下端部と、前面フィルム及び背面フィルムの封着部との間の領域に形成される。
【0008】
請求項2に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、長尺な前面フィルムと背面フィルムとの間に複数本のストローを所定の間隔をおいて平行に配列させ、各ストローの周縁を封止したストロー包装体に対して、ハーフカット線よりなる開封溝を各ストロー毎に形成する方法であって、上記背面フィルムの表面上に遮蔽板を配置し、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向(例えば一のストローと交差する方向、あるいは長手方向)に必要量移動させることにより、背面フィルムにおける一のストローの上端部および/または下端部近傍にハーフカット線を形成し、つぎに上記遮蔽板を他のストローの近傍位置まで相対移動させ、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向(例えば上記ストローと交差する方向、あるいは長手方向)に必要量移動させることにより、背面フィルムにおける当該ストローの上端部および/または下端部近傍にハーフカット線を形成する処理を、必要回数繰り返すことを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、請求項2に記載の加工方法であって、外周面に複数のストロー収納溝が形成された回転ドラム上の所定位置(例えば回転ドラムの最上部近傍)に上記遮蔽板を固定配置させ、上記ストロー包装体の各ストローを上記回転ドラムの収納溝に装填させた状態で回転ドラムを所定の角度ピッチで回転させることにより、上記遮蔽板の相対移動が実現されることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、請求項1〜3の加工方法であって、上記ハーフカット線を背面フィルム上に複数本形成することを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、請求項4の加工方法であって、上記背面フィルム上に複数のレーザビームを同時に照射することにより、上記ハーフカット線を複数本形成することを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、請求項4または5の加工方法であって、上記背面フィルム上においてレーザビームの照射位置を平行移動させることにより、上記ハーフカット線を複数本形成することを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、請求項1〜6の加工方法であって、上記背面フィルムの表面上に遮蔽板を配置し、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向に必要量移動させることにより、背面フィルムと上記ストローの表面との間に融着部を形成することを特徴としている。
【0014】
請求項8に記載のストロー包装体の開封溝加工方法は、請求項1〜7の加工方法であって、上記レーザビームの照射位置の終着点が、上記遮蔽板または上記背面フィルムの表面上に配置された他の遮蔽板上に設定されていることを特徴としている。
【0015】
請求項9に記載のストロー包装体は、前面フィルムと背面フィルムとの間にストローを封入したストロー包装体であって、上記背面フィルムにおけるストローの上端部および/または下端部近傍に、ハーフカット線が設けられており、かつ、上記背面フィルムとストローの表面との間に、レーザ照射による融着部が形成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項10に記載のストロー包装体は、長尺な前面フィルムと背面フィルムとの間に複数本のストローを所定の間隔をおいて平行に配列させ、各ストローの周縁を封止したストロー包装体であって、上記背面フィルムにおける各ストローの上端部および/または下端部近傍に、ハーフカット線が設けられており、かつ、上記背面フィルムと各ストローの表面との間に、レーザ照射による融着部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜6に記載したストロー包装体の開封溝加工方法によれば、レーザビームがまず遮蔽板に入射し、その後に照射位置が移動して背面フィルムに到達する仕組みであるため、出力の安定したレーザビームを用いて均一な深さを備えた開封溝(ハーフカット線)を形成することができる。
【0018】
請求項7に記載したストロー包装体の開封溝加工方法によれば、背面フィルムとストローの表面との間に融着部が形成されるため、ストローの位置ズレが有効に防止され、開封時にはストローの端部が背面フィルムのハーフカット線に確実に当接することとなり、スムーズな開封が実現できる。また、ストロー包装体の上端部および/または下端部を容易に把持できるようにストローの固定位置を調整して融着部を形成することにより、ストロー包装体の開封性を向上することができる。
この融着部は、ハーフカット線の形成よりもより高度な照射量の管理(より少ない照射量)が要求されるため、これまで融着部を備えたストロー包装体は存在しなかった。これに対し本発明の場合は、遮蔽板を使うことで照射量を安定かつ均一にコントロールすることができ、ハーフカット線の形成と融着部の形成を同時に達成することを可能としたものである。
【0019】
レーザ加工の特性として、照射開始時だけではなく、照射終了時においてもレーザ出力が増大する傾向があるが、請求項8に記載したストロー包装体の開封溝加工方法の場合には、レーザビーム照射の終着点がレーザを入射した遮蔽板または背面フィルムを通り越した他の遮蔽板上に設定されているため、ハーフカット線や融着部の終端部が過剰加工となることを有効に防止できる。
【0020】
請求項9及び10に記載したストロー包装体の場合、背面フィルムとストローの表面との間に融着部が形成されるため、ストローの位置ズレが有効に防止され、開封時にはストローの端部が背面フィルムのハーフカット線に確実に当接することとなり、スムーズな開封が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、この発明に係るストロー包装体10を示す断面図であり、ポリプロピレン等の樹脂よりなる背面フィルム12と、同じくポリプロピレン等の樹脂よりなる前面フィルム14との間にストロー16を挟み込み、ストロー16の周縁を熱圧着により気密に接合した構造を備えている。
【0022】
このストロー包装体10は、図2に示すように、長尺な背面フィルム12と前面フィルム14との間に、複数本のストロー16を一定の間隔をおいて平行に配列させ、各ストローの周縁を気密に接合したラダーストロー包装体22を形成した後、各ストロー16, 16間の封着部を縦方向にカットすることにより、個々のストロー包装体10として取り出される。
【0023】
個々のストロー包装体10の上部には、図3に示すように、開封溝として機能する第1のハーフカット線30がレーザ加工により形成されている。この第1のハーフカット線30は、背面フィルム12の表面にレーザビームをストロー16の軸方向と直交する方向に直線状に照射することによって形成されるものであり、ストロー16の上端部16aの近傍に位置決めされている。
【0024】
また、この第1のハーフカット線30よりも上方で、かつ封着部31よりも下方の領域に、開封溝として機能する第2のハーフカット線32が形成されている。この第2のハーフカット線32は、背面フィルム12の表面にレーザビームを第1のハーフカット線30と平行する方向に直線状に照射することによって形成されるものであり、第1のハーフカット線30との間隔は特に限定されないが、例えば0.1〜3mm、好ましくは0.1〜1mmである。
【0025】
さらに、ストロー16の上部と背面フィルム12との間には、線状融着部34が形成されている。この線状融着部34は、背面フィルム12の表面にレーザビームを第1のハーフカット線30と平行する方向に直線状に照射することにより、ストロー16の表面を加熱溶融させ、背面フィルム12の裏面に被着させることによって形成される。この線状融着部34は2本以上形成されてもよい。この線状融着部34と第1のハーフカット線30との間隔は特に限定されないが、例えば、2〜12mmである。
【0026】
第1のハーフカット線30、第2のハーフカット線32及び線状融着部34は、図2に示したラダーストロー包装体22に対してレーザビームを照射することにより、個々のストロー包装体10を切り出す前にまとめて形成される。
以下において、これらの形成方法について説明する。
【0027】
図4は、加工装置40の全体構成を示す概念図であり、制御部42と、3台のレーザ発振機44と、3台のビーム走査装置46と、インデックス装置48と、回転ドラム50と、遮蔽部材52とを備えている。
【0028】
制御部42は、少なくともCPUと記憶装置(RAM、ROM等)、インターフェイス回路を備えている。
CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従い、レーザ発振機44やビーム走査装置46、インデックス装置48の動作を制御する。
【0029】
ビーム走査装置46は、ガルバノミラーやポリゴンミラー等を内蔵しており、制御部42から出力された制御信号に応じて、レーザ発振機44から出射されたレーザビームの照射位置を所定パターンに沿って移動させる機能を備えている。
【0030】
インデックス装置48は、ステッピングモータやインデキシングドライブ(間欠割出装置)を内蔵しており、制御部42から出力された制御信号に応じて、出力軸54を所定の角度ピッチで間欠的に回転させる機能を備えている。
【0031】
回転ドラム50は、図5に示すように、その外周面に多数のストロー収納溝55が等間隔をおいて形成されており、インデックス装置48の出力軸54が中心に挿通固定されている。
【0032】
遮蔽部材52はアルミニウム合金やステンレス合金等よりなり、第1の遮蔽板52aと第2の遮蔽板52bを備えている。また、第1の遮蔽板52aと第2の遮蔽板52bとの間には、レーザビーム通過用の間隙52cが設けられている。この間隙52cの幅は特に限定されないが、例えば2〜4mmである。なお、遮蔽部材52は図6に示すように背面フィルムの表面上に配置されており、図5に示すように回転ドラム50上の所定位置に固定配置されていることが望ましい。
【0033】
この加工装置40を用いた加工を行う場合、まずラダーストロー包装体22を回転ドラム50の下方に設けられたガイド板56上に載置し、回転ドラム50のストロー収納溝55に個々のストロー包装体10を装填していく。この際、適当な器具を用いて、各ストロー16のストロー包装体10内における位置を揃えておくことが望ましい。
【0034】
そして、ラダーストロー包装体22の先頭のストロー包装体10が、回転ドラム50の最上部のストロー収納溝55に装填されたことを確認した上で、各レーザ発振機44からレーザビームL1, L2, L3を出射させる。
【0035】
これらのレーザビームL1, L2, L3は、各ビーム走査装置46において必要方向に偏向され、図6に示すように、まず遮蔽部材52の第1の遮蔽板52aに入射する。
つぎにレーザビームL1, L2, L3は、各ビーム走査装置46によって図面右方向に走査される結果、遮蔽部材52の間隙52cを通過して背面フィルム12に到達し、第1のハーフカット線30、第2のハーフカット線32及び線状融着部34が形成される(図6においては、第1のハーフカット線30のみが描かれている)。
【0036】
レーザビームの走査速度は、例えば毎秒770mmに設定される。
また、第1のハーフカット線30及び第2のハーフカット線32の深さは、背面フィルム12の厚さを20μm程度とした場合に、それぞれ13〜17μmに形成される。
【0037】
レーザビームL1, L2, L3が第2の遮蔽板52bに到達した時点で、各レーザ発振機44が停止し、レーザビームL1, L2, L3の供給が止まる。
一つのストロー包装体10に対する加工が終了すると、回転ドラム50が所定の角度ピッチで回転し、次のストロー包装体10が最上部に到達した時点で停止すると同時に、各レーザ発振機44からレーザビームL1, L2, L3が出射され、上記のレーザ加工が繰り返される。
【0038】
図7は、レーザ加工の様子を上方から観察した状態を表しており、3本のレーザビームL1, L2, L3が背面フィルム12に対し同時に照射されることが示されている。
各レーザ発振機44からは、例えば9.3μm波長のレーザビームが出射される。この際、各レーザビームの出力について特に限定はないが、一例として以下のように設定されている。
(1)第1のハーフカット線形成用のレーザビームL1・・・12〜15w
(2)第2のハーフカット線形成用のレーザビームL2・・・12〜15w
(3)線状融着部形成用のレーザビームL3・・・9〜11w
【0039】
このように3本のレーザビームL1, L2, L3によって同時並行的な処理を実現することにより、加工速度を向上させることができるのであるが、1本のレーザビームを用いて3本の加工線を順次形成することもできる(詳細は後述)。
【0040】
ラダーストロー包装体22に含まれる個々のストロー包装体10は、ストロー収納溝55の底部に密着するように装填され、背面フィルム12が引っ張られて皺が伸ばされた状態となっており、またレーザビームの照射時には回転ドラム50が停止しているため、第1のハーフカット線30及び第2のハーフカット線32を正確な位置に形成することが可能となる。
【0041】
しかも、上記のようにレーザビームL1, L2, L3はまず遮蔽部材52の第1の遮蔽板52aに入射し、そこで反射あるいは吸収される結果、照射開始直後の過度に高出力のレーザショットによって背面フィルム12に貫通孔が形成されることを防止できる。またレーザ加工の特性として、照射開始時だけではなく、照射終了時のレーザ出力も大きくなる傾向があるが、レーザビームL1, L2, L3の照射は遮蔽部材52の第2の遮蔽板52bに入射した時点で停止されるため、照射終了時の過度に高出力のレーザショットによって背面フィルム12に貫通孔が形成されることも有効に防止できる。このように、第1の遮蔽板52a及び第2の遮蔽板52bを備えた遮蔽部材52を用いることにより、安定した出力のレーザビームのみを間隙52cを通して背面フィルム12に照射することが可能となり、第1のハーフカット線30及び第2のハーフカット線32の深さの均一化や、線状融着部34による接合の確実化を実現することができる。
また遮蔽部材52を用いることにより、第1のハーフカット線30、第2のハーフカット線32及び線状融着部34の幅を一定(例えば3mm)に保つことも可能となる。
【0042】
ラダーストロー包装体22に含まれる全ストロー包装体10に関して、第1のハーフカット線30、第2のハーフカット線32及び線状融着部34の形成が完了した時点で、回転ドラム50からラダーストロー包装体22が取り外される。
つぎに、各ストロー16,16間の封着部がカットされ、個々のストロー包装体10が切り出される。
このようにして、本発明の開封溝加工方法が施されたストロー包装体を得ることができる。
このストロー包装体10の背面フィルム12は、図1に示すように、ホットメルト等の接着剤58を介して、飲料容器60の表面に固着される。
【0043】
このストロー包装体10からストロー16を取り出す場合、図8に示すように、ストロー包装体10の上端背面に指を差し入れ、前面フィルム14と背面フィルム12との封着部31を指で摘んだ後、そのまま手前に引き出す。
この結果、図9に示すように、ストロー16の上端部16aが背面フィルム12の第1のハーフカット線30に当接し、この脆弱部分から封着部31及び前面フィルム14が切り裂かれ、中のストロー16を取り出すことが可能となる。
【0044】
このストロー包装体10の場合、背面フィルム12とストロー16との間に線状融着部34が形成され、ストロー16がストロー包装体10内において位置決め固定されている。
このため、飲料容器60の搬送中にストロー包装体10の中でストロー16が動くことがなくなり、ストロー16の取り出し時にはストローの上端部16aが第1のハーフカット線30に確実に当接することとなる。
【0045】
なお、ストロー16の寸法が規格よりも長く、封着部31を前に引き出した際にストロー16の上端部16aが第1のハーフカット線30に当接しない場合であっても、第2のハーフカット線32に当接するため、上記と同様、極めて容易に封着部31及び前面フィルム14が引き裂かれ、ストロー16を確実に取り出すことができる。
【0046】
一般に、ストロー16の寸法精度はそれほど高くないため、上記のように第1のハーフカット線30の他に第2のハーフカット線32を設けているが、ストロー16の寸法精度を高く維持できる場合には、第1のハーフカット線30のみを形成すれば足りる。
逆にストロー16の寸法のバラツキが大きい場合には、3本以上のハーフカット線を設けるようにすればよい。また、ハーフカット線はストロー16の下端部近傍に形成することもでき、上端部および下端部近傍に形成することもできる。
【0047】
上記おいては、2本のレーザビームL1, L2によって第1のハーフカット線30及び第2ハーフカット線32を同時に形成する例を示したが、1本のレーザビームを用いて複数本のハーフカット線を順次形成することもできる。
【0048】
図10はその一例を示すものであり、第1の遮蔽板52aの表面P1に一旦入射させたレーザビームL4が、以下の経路を辿って第2の遮蔽板52bの表面P6に到達するまでの軌跡が描かれている。
(1) レーザビームL4の照射位置を、第1の遮蔽板52aの表面P1から右方向に移動させ、遮蔽部材52の間隙52cに露出している背面フィルム12に第1のハーフカット線62を形成する。
(2) 第2の遮蔽板52bの表面P2に到達した時点で、レーザビームL4の走査方向を下に90度変化させて、そのまま所定距離移動させる。
(3) 第2の遮蔽板52bの表面P3に到達した時点で、レーザビームL4の走査方向を左に90度変化させて、遮蔽部材52の間隙52cに露出している背面フィルム12に第2のハーフカット線64を形成する。
(4) 第1の遮蔽板52aの表面P4に到達した時点で、レーザビームL4の走査方向を下に90度変化させて、そのまま所定距離移動させる。
(5) 第2の遮蔽板52bの表面P5に到達した時点で、レーザビームL4の走査方向を右に90度変化させて、遮蔽部材52の間隙52cに露出している背面フィルム12に第3のハーフカット線66を形成する。
(6) 第2の遮蔽板52bの表面P6に到達した時点で、レーザビームL4の照射を停止する。
【0049】
以上のように、1本のレーザビームL4の照射位置を平行移動させる、すなわち、複数本の平行線が所定の間隔をおいて描かれるように、一筆書き状に往復移動させることにより、背面フィルム12の表面に複数本のハーフカット線を効率よく形成することが可能となる。レーザビームL4の移動方向の変更ポイントは、常に第1の遮蔽板52aまたは第2の遮蔽板52b上に置かれているため、出力の不安定化に起因して加工精度が低下することがなく、常に安定したレーザ出力によってハーフカット線を形成することが可能となる。
【0050】
図示は省略したが、複数本のレーザビームを同時に照射し、それぞれが上記のように複数本のハーフカット線を形成するように走査させることにより、一度により多くのハーフカット線を形成することが可能となる。
例えば、1つのストロー包装体10について、所定の間隔をおいて平行に並ぶ3本以上が好ましく、より好ましくは6本以上、さらに好ましくは10本以上のハーフカット線を形成しておくことにより、開封可能範囲が拡大し、ストロー16をより確実かつ容易に取り出すことが可能となる。一方で、ハーフカット線を多く形成し過ぎるとコストが高くなり、作業効率も悪くなり、さらにストロー包装体の強度が弱くなるため、好ましくは15本以下、より好ましくは12本以下とするのがよい。したがって、ハーフカット線の本数は、好ましくは3〜20本、より好ましくは3〜15本である。また、その際のハーフカット線同士の間隔は特に限定されないが、例えば、0.1〜3mm、好ましくは0.1〜1mmである。
【0051】
上記においては、ハーフカット線と線状融着部とを別個に形成する例を説明したが、レーザビームの出力や照射パターンを調整することにより、両者の機能を兼ね備えた被加工部を形成することもできる。この被加工部の場合、背面フィルムの表面側にハーフカット線が形成され、開封の容易化が実現されると同時に、背面フィルムの裏面側はストロー表面に被着され、ストローの位置ズレが有効に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係るストロー包装体を示す断面図である。
【図2】この発明に係るラダーストロー包装体を示す平面図である。
【図3】ストロー包装体の上部を示す拡大平面図である。
【図4】加工装置の全体構成を示す概念図である。
【図5】回転ドラムにラダーストロー包装体を係合させた状態を示す模式図である。
【図6】ラダーストロー包装体に対する加工の様子を示す拡大断面図である。
【図7】ラダーストロー包装体に対する加工の様子を示す拡大平面図である。
【図8】ストロー包装体を飲料容器に固着させた状態を示す正面図である。
【図9】ストロー包装体からストローを取り出す際の状態を示す拡大断面図である。
【図10】1本のレーザビームによって複数本のハーフカット線が形成される様子を示す拡大平面図である。
【符号の説明】
【0053】
10 ストロー包装体
12 背面フィルム
14 前面フィルム
16 ストロー
22 ラダーストロー包装体
30 第1のハーフカット線
31 封着部
32 第2のハーフカット線
34 線状融着部
40 加工装置
42 制御部
44 レーザ発振機
46 ビーム走査装置
48 インデックス装置
50 回転ドラム
52 遮蔽部材
52a 遮蔽板
52b 遮蔽板
52c 間隙
54 出力軸
55 ストロー収納溝
56 ガイド板
58 接着剤
60 飲料容器
62 第1のハーフカット線
64 第2のハーフカット線
66 第3のハーフカット線
L1 レーザビーム
L2 レーザビーム
L3 レーザビーム
L4 レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面フィルムと背面フィルムとの間にストローを封入したストロー包装体に対して、ハーフカット線よりなる開封溝を形成する方法であって、
上記背面フィルムの表面上に遮蔽板を配置し、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向に必要量移動させることにより、背面フィルムにおけるストローの上端部および/または下端部近傍にハーフカット線を形成することを特徴とするストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項2】
長尺な前面フィルムと背面フィルムとの間に複数本のストローを所定の間隔をおいて平行に配列させ、各ストローの周縁を封止したストロー包装体に対して、ハーフカット線よりなる開封溝を各ストロー毎に形成する方法であって、
上記背面フィルムの表面上に遮蔽板を配置し、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向に必要量移動させることにより、背面フィルムにおける一のストローの上端部および/または下端部近傍にハーフカット線を形成し、
つぎに上記遮蔽板を他のストローの近傍位置まで相対移動させ、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向に必要量移動させることにより、背面フィルムにおける当該ストローの上端部および/または下端部近傍にハーフカット線を形成する処理を、必要回数繰り返すことを特徴とするストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項3】
外周面に複数のストロー収納溝が形成された回転ドラム上の所定位置に上記遮蔽板を固定配置させ、上記ストロー包装体の各ストローを上記回転ドラムの収納溝に装填させた状態で回転ドラムを所定の角度ピッチで回転させることにより、上記遮蔽板の相対移動が実現されることを特徴とする請求項2に記載のストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項4】
上記ハーフカット線を背面フィルム上に複数本形成することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項5】
上記背面フィルム上に複数のレーザビームを同時に照射することにより、上記ハーフカット線を複数本形成することを特徴とする請求項4に記載のストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項6】
上記背面フィルム上においてレーザビームの照射位置を平行移動させることにより、上記ハーフカット線を複数本形成することを特徴とする請求項4または5に記載のストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項7】
上記背面フィルムの表面上に遮蔽板を配置し、まずレーザビームをこの遮蔽板に照射し、その後レーザビームの照射位置を所定方向に必要量移動させることにより、背面フィルムと上記ストローの表面との間に融着部を形成することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項8】
上記レーザビームの照射位置の終着点が、上記遮蔽板または上記背面フィルムの表面上に配置された他の遮蔽板上に設定されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のストロー包装体の開封溝加工方法。
【請求項9】
前面フィルムと背面フィルムとの間にストローを封入したストロー包装体であって、
上記背面フィルムにおけるストローの上端部および/または下端部近傍に、ハーフカット線が設けられており、
かつ、上記背面フィルムとストローの表面との間に、レーザ照射による融着部が形成されていることを特徴とするストロー包装体。
【請求項10】
長尺な前面フィルムと背面フィルムとの間に複数本のストローを所定の間隔をおいて平行に配列させ、各ストローの周縁を封止したストロー包装体であって、
上記背面フィルムにおける各ストローの上端部および/または下端部近傍に、ハーフカット線が設けられており、
かつ、上記背面フィルムと各ストローの表面との間に、レーザ照射による融着部が形成されていることを特徴とするストロー包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−240994(P2011−240994A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93202(P2011−93202)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(308015784)株式会社テクノプラス (4)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【出願人】(593205831)東邦商事株式会社 (14)
【Fターム(参考)】