説明

スパッタリング装置

【課題】給電端子がそれぞれの接続端子への接触と離間を繰り返したとしても、給電端子と接続端子の接触面に発生した異物を挟んでしまうことを低減させることができ、その結果、接触抵抗の増加による温度上昇を回避することができるスパッタリング装置を提供する。
【解決手段】スパッタリング装置の接電端子は、その深さ方向に所定のテーパー角を有する凹部が形成され、給電端子22が凹部に進入して電気的に接続された時、該凹部の最底部は該給電端子の先端部が接することのできない空間を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットへの電力供給が安定に行えるスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、成膜する基板に対して、ターゲット(またはカソード)を所定の角度に配置し、スパッタリングを行うことがある。このようにして、基板に形成される膜の膜質が改善できることが知られている。このような成膜装置に、例えば、特開2003−147519号公報(特許文献1)がある。
【0003】
また、例えば、1mを越える大型のガラス等の基板に成膜を行うスパッタリング装置では、複数のターゲットを基板に対向させることがある。この場合、膜厚の分布を整えるために、基板に対してそれぞれのターゲットを所定の角度に調整する技術が重要になりつつある。
【0004】
図2は、一例として、成膜する基板に対して、ターゲット(またはカソード)を所定の角度に配置することができるスパッタリング装置の上面図(回転軸に沿った方向から見た平面図)である。
図2に示すスパッタリング装置には、回転部材20a,20b,20c,20dが、チャンバー11内に4つ配された構成である。4つの回転部材20a,20b,20c,20dは並んで配置されている。それぞれの回転部材20a,20b,20c,20dに備えられたカソードの1つが、基体ホルダー13と対向可能になっている。
図2では、回転部材は4つであるが、回転部材の数はいくつであっても良い。
【0005】
図3は、図2に記載のスパッタリング装置において、ターゲットが装着される回転部材を中心にした断面図を表す。
図3に示すスパッタリング装置は、チャンバー11と、回転自在な回転部材20と、基体(不図示)を保持する基体ホルダー13とを有している。
回転部材20は、例えば、略正三角柱形状であり、三角柱の中心軸が回転の回転軸10となっている。この回転部材20の回転軸10に沿った3つの側面は、それぞれ、カソードとなっている。これらの側面に、スパッタされる材料であるターゲット12,及び,不図示のターゲット12b,12c(以下、3つのターゲットをターゲット12等という)が、着脱自在に取り付けられる。
【0006】
また、図3に示すスパッタリング装置では、回転部材20の内部に、マグネトロンスパッタリング用のマグネット14が配されている。回転部材20の側面に取り付けられ、基体ホルダー13と対向しているターゲット12の裏側(つまり、スパッタされる面とは反対側)に、マグネット14は位置している。
【0007】
ターゲット12等は、回転部材20の回転軸10に沿った側面に取り付けられる。回転部材20は、モータ19を動力源にして、複数個のギア18とベアリング15等により、回転する。これにより、ターゲット12等は、回転部材20の回転軸10の周りを回動する。そして、回転部材20に取り付けられているターゲット12等のうち、任意の1つを、基体ホルダー13に取り付けられた基体(不図示)に対向させた状態で、スパッタリングを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−147519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3に示すスパッタリング装置について、回転部材20からターゲット12等へ、電源16からの電力を供給するための構造をさらに説明する。
【0010】
ターゲット12等は、それぞれ3つのターゲットに対応する3つの電極と導通している(ターゲット12aは電極26と導通している)。しかし、各電極同士は絶縁体29によって、互いに絶縁されている。
それぞれの電極と導通する接続端子(電極26は接続端子25と導通している)は、回転部材20の回転軸10に沿った方向の端部に露出している。
【0011】
回転部材20の回転軸10に沿った方向の端部には、3組ある接続端子のうち、接続端子25が露出している。各組の接続端子は、それぞれ、回転部材20に取り付けられるターゲット12等と電気的に接続される。異なる組の接続端子が、給電端子22と同時に接続されることはない。つまり、給電端子22は、1度に1つのターゲットにのみ電力を供給する。そして、給電端子22から、給電端子22と接続されている接続端子を介して、ターゲットに電力が供給される。
【0012】
給電端子22は、シリンダ21により回転軸10に沿った方向に往復移動可能に構成されており、回転部材20の端部と接触、離間可能になっている。
具体的には、シリンダ21の動力が給電端子固定板24に伝えられることにより、給電端子22が回転軸10に沿った方向に移動可能となっている。
シリンダ21に固定された給電端子固定板24には、回転軸10を挟んで相対する位置
に、2つの給電端子22が備えられている。この給電端子22は、高圧線17によって電
源16と繋がっている。
【0013】
このように、ターゲットへの電力供給は、給電端子と接続端子の接触を繰り返すことにより行われるが、このようなスパッタリング装置では、カソードへの電力の安定供給については改善の余地が残されていた。
すなわち、両者の接触面に、例えば、磨耗により生じた異物の挟み込みが発生することは皆無ではなく、よって接触抵抗の増加をまねいてその箇所の昇温に結びつく可能性が残されていた。
【0014】
本発明の目的は、上記背景技術の課題を解決するスパッタリング装置を提供することにある。その目的は、ターゲットへの電力供給を安定に行えるスパッタリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明に係るスパッタリング装置は、ターゲットが取り付けられる回転自在な回転部材と、ターゲットと電気的に接続され、回転部材の回転軸に沿った方向の該回転部材の端部に配置された接続端子と、接続端子を介してターゲットに電力を供給する移動可能な給電端子と、を有するスパッタリング装置であって、
接電端子は、その深さ方向に所定のテーパー角を有する凹部が形成され、給電端子が凹部に進入して電気的に接続された時、該凹部の最底部は該給電端子の先端部が接することのできない空間を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ターゲットへの電力供給が行われるごとに接触する給電端子と接続端子は、それらの接触面で、例えば、磨耗により生じた異物が発生したとしても、それらを接触面から排除して回収できる空間を接電端子側に形成したため、この箇所における電力供給の不安定さを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図3の点線で示された領域における、本発明の一実施形態に係る回転部材の端部の拡大図である。
【図2】従来の一実施形態に係るスパッタリング装置の上面図である。
【図3】従来の一実施形態に係るスパッタリング装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1を参照して説明する。
【0019】
図1は、図3のスパッタリング装置において、点線の円で示された領域の拡大図である。尚、図1において図3で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付している。
【0020】
図1は、図3のスパッタリング装置において、回転部材20の回転軸方向の端部が示されている。回転部材20の端部には、電極26と導通している接続端子25が露出している。接続端子25以外の接続端子は、回転部材20の回転軸10上を中心とする円周上に配置されている。3組の接続端子が配置される回転部材20の端部は、例えば、減圧可能なチャンバー11からベアリング15によって隔てられた大気圧下に配置されている(図3図示)。
【0021】
図1は、給電端子22が接続端子25に接続して、ターゲットと導通している接続端子に給電している状態を示す。
【0022】
接続端子25は、電極26と導通する導電体で形成され、その深さ方向に所定の傾斜(テーパー角)を維持しながら開口部を狭めていく凹部の形状をしている。ただし、凹部の形状は、円錐台の形状に限定されるものではなく、回転部材20の回転軸10の円周方向に奥行きを持った溝状の凹部でもかまわない。また、給電端子22の形状は、その目的から接続端子25の凹部の形状に合わせものになっている。
【0023】
ここで、接続端子25は、給電端子が進入して電気的に接続された時、凹部の最底部には給電端子22の先端部が接することのできない空間50を有していることを特徴としている。
【0024】
このような空間50を接続端子25の底部に形成することで、給電端子22と接続端子25とが接続して、仮に、どちらかが磨耗し異物40が発生したとしても、異物40は、接続端子25の傾斜と重力の作用により空間50に落下することで排除されて、給電端子22と接続端子25の接続面に留まりにくく、かつ、除去されやすい構造になっている。
【0025】
従がって、ターゲットを変更するため、給電端子がそれぞれの接続端子への接触と離間を繰り返したとしても、給電端子と接続端子の接触面に発生した異物を挟んでしまうことを低減させることができ、その結果、接触抵抗の増加による温度上昇を回避することができる。
【0026】
以上、本発明の望ましい実施形態について提示し、詳細に説明したが、本発明は、例えば回転部材に配置されるターゲット数等、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り、さまざまな変更及び修正が可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0027】
10 回転軸
12 ターゲット
16 電源
17 高圧線
20 回転部材
22 給電端子
25 接続端子
26 電極
29 絶縁体
40 異物
50 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットが取り付けられる回転自在な回転部材と、 前記ターゲットと電気的に接続され、前記回転部材の回転軸に沿った方向の該回転部材の端部に配置された接続端子と、 前記接続端子を介して前記ターゲットに電力を供給する移動可能な給電端子と、を有するスパッタリング装置であって、 前記接続端子は、その深さ方向に所定のテーパー角を有する凹部が形成され、前記給電端子が前記凹部に進入して電気的に接続された時、該凹部の最底部には、該給電端子の先端部が接することのできない空間を有していることを特徴とするスパッタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−168844(P2011−168844A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34168(P2010−34168)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】