説明

スピーカ用振動板及びこれを用いたスピーカと携帯端末装置

【課題】携帯端末装置などに使われる特に受話用レシーバにおいて、携帯端末装置の防水化を図ろうとすると、薄い振動板であるために、浸水に対して十分な強度が確保できず、振動板が破損して水が浸入する。
【解決手段】振動板のボディとエッジを二色樹脂成形で構成し、エッジ外周部の上側に、エッジと同じ材料でなる凸部を設け、エッジ外周部の下側にボディと同じ材料でなるガスケットを設けた構成とすることで、振動板とエッジは従来の薄い樹脂フィルムよりも強度が確保できるので、水の浸入によって振動板が破損することを防止する。
さらに、エッジと同じ材料でなる凸部が防水パッキンの役割を果たし、振動板外周から水が機器内部に浸入することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種携帯端末装置に用いられるスピーカに関するものである。
【0002】
さらに特定するならば、スピーカや受話用レシーバの防水技術に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来、この種の受話用レシーバは図5のような構成を有していた。
【0004】
図5は従来のレシーバの断面図である。図5において、31は薄いフィルム素材から成る振動板である。
【0005】
なお、図1、2に示した本発明のスピーカと同じ構成部品には同じ番号を付して説明は省略する。
【0006】
図6は、この種のレシーバを用いて防水性を持たせた携帯電話の概略構造断面図であり、放音孔17から水が浸入しないように透湿防水性素材などからなる防水シート32を貼付しているものである。
【0007】
この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−201396号公報
【特許文献2】特開平8−079865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成で、携帯端末装置の防水化を図ろうとすると、薄いフィルム素材から成る振動板であるために、浸水に対して十分な強度が確保できず、振動板が破損して水が浸入するという課題を有するものであった。
【0010】
従って、レシーバを防水構造とするために、透湿防水性素材に代表される防水シートでレシーバの放音孔をシーリングする必要があった。
【0011】
しかし、その構造では、防水シートが振動板からの音圧であおりを受けて、ビリつき異常音が発生したり、放射音が阻害されて音響特性が劣化するという課題を有するものであった。
【0012】
また、防水シートをセットあるいはレシーバに精度よく貼り付ける作業が困難で、歩留まり、及び、防水信頼性を悪化させるという問題を有するものでもあった。
【0013】
さらに、防水シートによりコストアップが生じるという問題を有するものでもあった。
【0014】
本発明は上記課題を解決するもので、防水シートを用いなくとも、レシーバ単体で防水機構を確立することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の振動板はボディとエッジを二色樹脂成形で構成し、エッジ外周部の上側に、エッジと同じ材料でなる凸部を設け、エッジ外周部の下側にボディと同じ材料でなるガスケットを設けたものである。
【0016】
この構成により、図5の従来のスピーカあるいはレシーバ用振動板と異なり、エッジとボディが別材料で構成されることで、ボディは高剛性、エッジは低スティフネスを実現できる。
【0017】
従って、水をかけられたり、水中に沈められて、水圧をかけられても、振動板が薄いフィルム素材から成るものではなく、射出成形により得られた適度な材厚を有する剛性に富む振動板であるため、変形や破断がしにくく、防水性能を向上させることができる。
【0018】
さらに、エッジは、従来のレシーバ用振動板に使用されるフィルム素材に比べて、非常に低い弾性率であるエラストマーなどで成形されるので、同じスティフネスであっても、エッジの材厚を厚くすることができ、エッジも従来と比べ堅牢で、水圧に対する信頼性を向上させることができる。
【0019】
また、もし、エッジとボディ間を接着剤で固定しようとすると、接着剤を完全に均一に隙間なく塗布して貼り付けることは困難であり、経時変化による劣化の可能性もあり、隙間が生じて水をかけられると浸入する恐れがある。
【0020】
本発明は、二色成形で振動板を成形することで、エッジとボディ間が熱融着されるため、水をかけられても、そこから水が浸入することがなく、防水の信頼性を向上させることができる。
【0021】
さらに、エッジと同じ材料でなる凸部が防水パッキンの役割を果たし、水が振動板外周から、スピーカを取り付けた携帯端末装置内部に浸入することを防止する防水効果が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、振動板とエッジが、従来の薄い樹脂フィルムよりも強度が確保できるので、水の浸入によって振動板が破損することを防止する効果を奏するものである。
【0023】
さらに、エッジと同じ材料でなる凸部が防水パッキンの役割を果たし、水が振動板外周から、スピーカを取り付けた機器内部に浸入することを防止する効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のスピーカ用振動板の断面図
【図2】本発明のスピーカの断面図
【図3】本発明のスピーカの側面図
【図4】本発明のスピーカを搭載した携帯端末装置の概略断面図
【図5】従来のレシーバの断面図
【図6】従来のレシーバを搭載した携帯端末装置の概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1に記載の発明について説明する。
【0027】
図1は本発明のスピーカ用振動板の断面図である。
【0028】
図1において、1は振動板、2はボディ、3はエッジ、4はガスケット、5はエッジ上面に設けた凸部(以下「凸部」)である。
【0029】
振動板1は二色成形で成形されている。
【0030】
まず、ボディ2とガスケット4を一次成形したのち、エッジ3、凸部5を二次成形する。ボディとガスケットには、例えば、ポリプロピレンに代表される樹脂材料を用い、エッジと凸部には低弾性率材料のエラストマーなどを用い、それぞれの使用上の要求に合わせてその柔軟性や気密保持性、音質上の特徴等を考慮して選択される。
【0031】
本スピーカ用振動板の作用と効果について説明する。
【0032】
図5の従来のスピーカあるいはレシーバ用振動板と異なり、エッジとボディが別材料で構成されることで、ボディは高剛性、エッジは低スティフネスを実現できる。
【0033】
従って、水をかけられたり、水中に沈められて、水圧をかけられても、変形や破断しにくく、防水性能を向上させることができる。
【0034】
さらに、エッジは、従来のレシーバ用振動板に使用されるフィルム素材に比べて、非常に低い弾性率であるエラストマーなどで成形されるので、同じスティフネスであっても、エッジ厚さを厚くすることができる。
【0035】
従って、エッジも従来と比べ堅牢で、水圧に対する信頼性を向上させることができる。
【0036】
もし、エッジとボディ間を接着剤で固定しようとすると、接着剤を完全に均一に隙間なく塗布して貼り付けることは困難であり、経時変化による劣化の可能性もあり、隙間が生じて水をかけられると浸入する恐れがある。
【0037】
本発明は、二色成形で振動板を成形することで、エッジとボディ間が熱融着されるため、水をかけられても、そこから水が浸入することがなく、防水の信頼性を向上させることができる。
【0038】
ガスケットは、エッジが低弾性材料で形成されるため、非常に柔らかく、ハンドリングが困難になるので、ハンドリングを主目的として設けられる。ガスケットとエッジ間も熱融着されるため、剥がれに対する信頼性が高く、結果、スティフネスが安定し、スピーカのf0(最低共振周波数)を安定させることができる。
【0039】
凸部は、スピーカ構成時に加圧圧縮されて、パッキンの役割を果たし、振動板上面側から水が浸入してきても、凸部で堰き止められて、凸部の外側へ水が浸入することを防止している。
【0040】
なお、図1において、凸部は略半円状に描かれているが、楕円、四角、三角形状といった形状でもよく、防水の効果を鑑みて設計者が任意に選ぶことができる。
【0041】
凸部も、エッジと同材料で、かつ同時に二色成形されており、エッジと凸部間にはいかなる隙間も生じない。従って、凸部をシーリング材などで別構成とする構成よりも、浸水に対し信頼性を向上させることができる。
【0042】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2に記載の発明について説明する。
【0043】
図2は図1に示した本発明のスピーカ用振動板を用いたスピーカの断面図である。
【0044】
図1に示した振動板の構成部品には同じ番号を付して、説明は省略する。
【0045】
6はスピーカ、7はフレーム、8はヨーク、9はマグネット、10はプレート、14はボイスコイル、15はプロテクタ、16は防水性能を有するパッキン(以下「防水パッキン」)、17は放音孔である。
【0046】
図3は図2のスピーカの側面図の一例である。18はプロテクタに設けた勘合孔(以下「嵌合孔」)、19はフレームに設けた勘合部(以下「勘合部」)である。
【0047】
本発明のスピーカの構成と動作について説明する。
【0048】
ヨーク8、マグネット9、プレート10により磁気回路11が構成される。
【0049】
磁気回路11には磁場を発生させる磁気ギャップ12が形成され、磁気ギャップ12にボイスコイル14が挿入される。
【0050】
ボイスコイル14に音声信号が流れると、フレミングの左手の法則により、磁気ギャップ12の磁場が作用して、ボイスコイル14が上下に振動する。
【0051】
ボイスコイル14はボディ下面に固着され、ボイスコイル14の振動がボディ2を介して、空気に作用することで音を放射する。
【0052】
エッジ3は、ボディ2が上下に正しく振動するようにボディ2を支持するとともに、ボディ背面の逆位相音が回折によってボディ表面の音と干渉しないように、ボディ背面音を遮断している。
【0053】
本発明のスピーカの作用と効果について説明する。
【0054】
凸部5はガスケット4とプロテクタ15に挟持されて適度に圧縮され、プロテクタ15と密着する。このことにより、放音孔17から水が浸入しても、凸部により堰き止められる。
【0055】
もし、水が凸部5とプロテクタ15の間から、スピーカを取り付けた携帯端末装置内部に浸入すると、電気回路がショートしたり、腐食したりして破壊される恐れがある。
【0056】
本構成によれば、水が凸部を乗り越えて、スピーカを取り付けた携帯端末装置内部に浸入することがなくなる。
【0057】
プロテクタ15とフレーム7の接合方法、及び、凸部5の圧縮の方法は、例えば、図3のように、フレーム7に設けた勘合部19に対し、プロテクタ15に設けた勘合孔18を引っ掛けるように嵌めあうことで、凸部5を確実に圧縮することができる。
【0058】
なお、図3に示したプロテクタ15の材料は樹脂を想定しているが、金属でも構わない。
【0059】
また、プロテクタ15とフレーム7の接合方法は、従来よく行われる接着でも構わない。
【0060】
さらに、図3では、プロテクタ前面には何もなく、放音孔がむき出しで描かれているが、振動板を保護できるように、複数の放音孔を設けたり、放音孔にメッシュを貼り付けても構わない。
【0061】
図3に示した磁気回路は内磁型であるが、外磁型でも構わない。スピーカの形状は丸型、矩形型、トラック型のいずれの形状でもよい。
【0062】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0063】
図4は図2に示した本発明のスピーカを搭載した携帯端末装置の概略断面図の一例である。
【0064】
20は携帯端末装置、21は携帯端末装置に設けられた放音孔(以下「セット放音孔」)である。
【0065】
図4の携帯端末装置の作用と効果について説明する。
【0066】
スピーカ6は、防水パッキン16を圧縮するように、背面から適度な圧力を加えて接合される。このことにより、セット放音孔から水が浸入したとしても、プロテクタ上面から携帯端末装置内部には水が浸入しない。
【0067】
また、スピーカ6のエッジ外周部も凸部によって防水作用があるので、携帯端末装置内部には水が浸入しない。
【0068】
さらに、ボディは高い剛性を持ち、エッジは低弾性材料で適度な厚さを持ち、振動板は二色成形で成形されているため、エッジとボディ接合面は熱融着で密着されているので、水圧に対し破壊することもなく水が浸入することがない。
【0069】
防水パッキン16は、防水性能を持つ素材なら何でもよく、パッキン、ゴムリング、0リング、シーリング材、接着剤なども使用できる。
【0070】
図4では、セット放音孔はむき出しの状態であるが、振動板保護、防塵効果を考えて、複数の放音孔を持つ構成でもよいし、音質に悪影響を及ぼさないような防塵ネットやメッシュを貼ることも考えられる。
【0071】
なお、ここで表現される携帯端末装置は、携帯電話や携帯情報端末に限らず、ゲームやポータブルオーディオなど発音の機能を持つ全ての端末装置に適用可能である。
【0072】
以上のように、本発明のスピーカ振動板及びスピーカは、振動板を二色成形で構成することで、浸水に対して十分な強度を確保するとともに、エッジとボディの接合が完全密着されているので、水が浸入することがない。
【0073】
従って、レシーバを防水構造とするために、透湿防水性素材に代表される防水シートでレシーバの放音孔をシーリングする必要がなくなり、防水シートが振動板からの音圧であおりを受けて、ビリつき異常音が発生したり、放射音が阻害されて音響特性が劣化するという問題を回避することができる。
【0074】
さらに、防水シートをセットあるいはレシーバに精度よく貼り付ける作業が困難で、歩留まり、及び、防水信頼性を悪化させるという問題も回避することができる。
【0075】
また、防水シートによるコストアップも回避することができる。
【0076】
よって、スピーカ単体の防水化に有用であり、携帯端末装置の防水化に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は防水が必要なスピーカやレシーバ、及び、これらを搭載した携帯端末装置に適用できる。
【符号の説明】
【0078】
1 振動板
2 ボディ
3 エッジ
4 ガスケット
5 エッジ上面に設けた凸部
6 スピーカ
7 フレーム
8 ヨーク
9 マグネット
10 プレート
11 磁気回路
12 磁気ギャップ
14 ボイスコイル
15 プロテクタ
16 防水性能を有するパッキン
17 放音孔
18 プロテクタに設けた勘合孔
19 フレームに設けた勘合部
20 携帯端末装置
21 携帯端末装置に設けられた放音孔
31 フィルム振動板
32 防水シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディと、このボディの外周にエッジを有するスピーカ用振動板であって、
前記ボディと前記エッジが別材料で二色成形され、
前記エッジの外周部上面に、前記エッジと同じ材料でなる凸部を有し、
前記エッジの外周部下面に、前記ボディと同じ材料でなるガスケットを有する、
スピーカ用振動板。
【請求項2】
請求項1記載のスピーカ用振動板を有し、
ボディ下面に固着したボイスコイルを有し、
ヨークとマグネットとプレートから成る磁気回路を有し、
前記磁気回路に磁気ギャップを有し、
前記ボイスコイルが前記磁気ギャップに挿入され、
樹脂もしくは金属からなるプロテクタを有し、
前記プロテクタの外周部上面に防水性能を有するパッキンを有し、
フレームを有し、
前記フレームと前記プロテクタの間に前記振動板を固着し、
エッジ外周部上面の凸部が、ガスケットと前記プロテクタとで圧縮される構造を有するスピーカ。
【請求項3】
請求項2記載のスピーカを有し、
防水性能を有するパッキンが、プロテクタと、携帯端末装置筐体とで圧縮される構造を有する携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−139254(P2011−139254A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297404(P2009−297404)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】