説明

スピーカ装置

【課題】低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供する。
【解決手段】円筒状の連結フレーム3で連結された対向する第1及び第2スピーカ部2a、2bを備えるスピーカ装置1であって、振動板34a、36a及び振動板34b、36bは、それぞれ第2振動伝播桿33bが遊嵌する貫通孔60a、62a及び第1振動伝播桿33aが遊嵌する貫通孔60b、62bを有しており、連結フレーム3は、第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bで等間隔に交互に同心に連結されたそれぞれ同径の複数の振動板32a〜36a及び振動板32b〜36bを備える。連結フレーム3は各振動板32a〜36bが振動可能に、各振動板32a〜36bの周縁を保持しており、振動板32a〜36bは中心と重心とを一致させて重量均衡をとるように構成されてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低音再生能力に優れるスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカシステムは、スピーカボックスと、スピーカユニットと、アンプからの信号を低音、中音、高音の各周波数成分に分けるディバイディングネットワークとからなっており、スピーカユニットには、一つで可能な限り可聴域をカバーするフルレンジスピーカユニットと、可聴域の周波数域を分けて専用にしてある、ウーファ(低音域用)、スコーカー(中音域用)及びツィーター(高音域用)などがある。
【0003】
スピーカユニットは一般的に動電型スピーカユニットが使用されており、動電型スピーカユニットは磁気回路の構造により、外磁型と内磁型とがあり、内磁型はボイスコイルを円筒状の永久磁石に被せるようにしたものであり、小型化が容易な構造の外磁型が多く使用されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、スピーカユニットの低音再生能力は、スピーカユニットが1ストロークで動かすことのできる空気の体積に比例するため、大口径のスピーカユニットが低音域再生に有利であるが、小口径では十分な低音再生ができない。
また、小口径スピーカユニットで大口径スピーカユニットと同等の振動体積を得るために、複数の小口径スピーカユニットを同時に駆動させる方法があるが、大がかりで高価になる。
例えば38cm径ウーファと同質の低音域を得るためには、30cm径スピーカユニットで2本、25cm径スピーカユニットで4本、20cm径スピーカユニットで7本、10cm径スピーカユニットでは50本以上のスピーカユニットが必要になる。
【0005】
小口径であっても十分な低音再生を可能にするスピーカユニットとして、特許文献2の提案がある。
スピーカユニットは、縦向きに配置したボビンの上部及び下部の外周に上部ボイスコイル及び下部ボイスコイルが配置され、ボビンの上端に振動板が配設されている。円盤状の永久磁石を挟持する二つの円盤状のプレートがボビンの内側に間隙を有して配設され、ボビンの外側に間隙を有して円筒状のヨークが配設されて、上部及び下部に磁気ギャップが形成されている。上部の磁気ギャップに上部ボイスコイルが配置され、下部の磁気ギャップに下部ボイスコイルが配置されている。スピーカユニットは、ボビンを上部及び下部のダンパで支持することにより、大きなストロークに対して十分な耐入力を得て、ボビンに作用する駆動力の均一な範囲を長くし、振動板の振幅範囲の増加を図り、低音再生を可能にしている。
【特許文献1】特開2005−348389号公報
【特許文献2】特開平9−182188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の特許文献2のような小口径のスピーカユニットは、空気を振動させて音を発生させる振動板が従来と同様に一枚であるため、低音再生能力の向上には限界があり、改善の余地がある。
またスピーカユニットの発生する音の歪みは、振動板の振幅が許容振幅の限界に近くなるほど増える傾向があり、大振幅再生は音の歪みの増加につながるが、小口径スピーカユニットで大口径スピーカユニットに等しい低音域を得ようとして振幅の増加を図っている特許文献2のような小口径スピーカユニットでは、音の歪みが発生し易い。
本発明者らは複数の振動板を振動伝播桿で連結して振動させるスピーカ装置を提案しているが、振動に伴い振動伝播桿がぶれて、振動伝播桿と振動板の接触により、異音が発生することが懸念されている。
なお、特許文献1は、磁気回路内部の空間と外部との間で通気を行う通気路を設けて、ボイスコイルの温度上昇を効率的に抑制するようにしたものであり、小口径スピーカユニットの低音再生能力を向上させる技術を開示してはいない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、第1及び第2スピーカ部により各駆動されて各振動する複数の振動板が重量補償部を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0008】
また本発明の他の目的とするところは、振動板が振動板の中心と重心とを一致させて振動させる重量補償部を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の他の目的とするところは、振動板が錘となる部材の重量補償部を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的とするところは、振動板が貫通孔の削孔重量に対応する重量の重量補償部を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的とするところは、振動板に重量補償部を接着する接着剤自体の重量を考慮して重量均衡をとる構成を備えることにより、低音再生能力に優れ、正確に重量均衡をとることができ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的とするところは、振動伝播桿又は貫通孔の位置に対応して振動板の一部を厚く又は薄く形成してなる重量補償部を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的とするところは、貫通孔の削孔重量及び貫通孔のある位置に対応して振動板の一部を厚く又は薄くして重量均衡をとるようにした対称な重量補償部を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないスピーカ装置を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的とするところは、複数の振動板の各表裏で発生する音をそれぞれ分けて出力する音響出力孔を備えることにより、低音再生能力に優れ、振動板の表裏の音が混じらず、音量を増大させることができるスピーカ装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的とするところは、振動伝播桿が貫通する振動板の貫通孔が、同形かつ同軸に設けられている構成を備えることにより、各振動板及び各振動伝播桿が中心対称に極めて近くなり、低音再生能力に優れ、大振幅再生時、歪みが小さいスピーカ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のスピーカ装置は、往復運動する第1起振手段を有する第1スピーカ部を収容し、該第1起振手段の周縁を保持する第1フレームと、該第1起振手段に対向して往復運動する第2起振手段を有する第2スピーカ部を収容し、該第2起振手段の周縁を保持する第2フレームとを備えるスピーカ装置であって、第1振動伝播桿で連結された複数の平板状の振動板と、第2振動伝播桿で連結された複数の平板状の振動板とを有し、前記第1及び第2振動伝播桿で各連結された前記振動板は、各前記第2及び第1振動伝播桿が遊嵌している貫通孔を有しており、前記第1及び第2振動伝播桿で各連結された前記振動板は、交互に配設されており、前記第1及び第2起振手段に各近接している各一の前記振動板の周縁は、該第1及び第2起振手段の各周縁に接合されており、前記振動板は、重量補償部を有することを特徴とする。
【0017】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、第1及び第2スピーカ部を同時に駆動して、第1及び第2起振手段が往復運動をし、第1及び第2起振手段の周縁に接合している各振動板が振動する。複数の他の振動板は、第1及び第2振動伝播桿をそれぞれ経由して振動する。第1及び第2振動伝播桿で連結しているそれぞれの複数の振動板は、重量均衡して相互に逆方向に振動する。
したがって、第1及び第2振動伝播桿の振動のぶれが生じず、異音の発生がない。
また、本発明のスピーカ装置は、全振動板の一振幅当たりの振動体積は振動板の枚数に比例して増大し、所要枚数の振動板で大口径スピーカ部と同等の振動体積になる。
【0018】
本発明のスピーカ装置は、前記振動板は、前記重量補償部により該振動板の中心と重心とを一致させてあることを特徴とする。
【0019】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、第1及び第2振動伝播桿で各連結しているそれぞれの複数の振動板は、振動板の中心と重心とが一致して相互に逆方向に振動し、第1及び第2振動伝播桿の振動のぶれが生じず、異音の発生がない。
【0020】
本発明のスピーカ装置は、前記重量補償部は、錘となる部材からなることを特徴とする。
【0021】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、第1及び第2振動伝播桿で各連結しているそれぞれの複数の振動板は、第1及び第2振動伝播桿の振動に対応して各振動板が相互に逆方向に振動し、第1及び第2振動伝播桿の振動のぶれが生じず、異音の発生がない。
【0022】
本発明のスピーカ装置は、前記重量補償部は、前記貫通孔の削孔重量に対応する重量を有しており、前記振動板の中心と該貫通孔の中心とを通る直線上に設け又は該直線に対して対称な位置に振り分けて設けてあることを特徴とする。
【0023】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、各複数の振動板は、重量均衡して相互に逆方向に振動し、第1及び第2振動伝播桿のぶれが生じず、異音の発生がない。
【0024】
本発明のスピーカ装置は、前記重量補償部は、前記振動板と同材料で、該振動板に接着剤で接着されており、前記重量補償部及び前記接着剤により重量均衡をとるようにしてあることを特徴とする。
【0025】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、各複数の振動板は、正確に重量均衡し、相互に逆方向に振動し、第1及び第2振動伝播桿のぶれが生じず、異音の発生がない。
【0026】
本発明のスピーカ装置は、前記重量補償部は、前記複数の振動板が前記第1及び第2振動伝播桿に各連結する位置又は前記貫通孔の位置に対応して、各該振動板の一部を厚く又は薄く形成してなることを特徴とする。
【0027】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、第1及び第2振動伝播桿で連結しているそれぞれの複数の振動板は、第1及び第2振動伝播桿の振動に対応して各振動板が相互に逆方向に振動し、第1及び第2振動伝播桿の振動のぶれが生じず、異音の発生がない。
【0028】
本発明のスピーカ装置は、前記重量補償部は、前記貫通孔の削孔重量及び該貫通孔のある位置に対応して、前記振動板の一部を厚く又は薄くして重量均衡をとるように形成されており、該振動板の中心と該貫通孔の中心とを通る直線に対して対称にしてあることを特徴とする。
【0029】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、各複数の振動板は、重量均衡して相互に逆方向に振動し、第1及び第2振動伝播桿のぶれが生じず、異音の発生がない。
【0030】
本発明のスピーカ装置は、前記第1及び第2フレームを連結する連結フレームを有し、該連結フレームは複数の音響出力孔を有しており、該音響出力孔は、前記振動板の表裏で発生する音を、表の音と裏の音とに分けて出力するようにしてあることを特徴とする。
【0031】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、振動板の表の音を一方の音響出力孔が出力し、振動板の裏の音を他方の音響出力孔が出力し、振動板の表の音と裏の音とが混じらず、音量が増大する。
【0032】
本発明のスピーカ装置は、前記貫通孔は同形かつ同軸に設けられていることを特徴とする。
【0033】
このような構成の本発明のスピーカ装置では、各振動板及び各振動伝播桿が中心対称に極めて近くなり、大振幅再生でも歪みが小さい。
【発明の効果】
【0034】
本発明のスピーカ装置は、第1及び第2スピーカ部により各駆動されて各振動する複数の振動板が振動するようにしているので、複数の振動板で大口径スピーカユニットと同等の振動体積を得ることができ、低音再生能力に優れるという効果を有する。
さらに本発明のスピーカ装置は、振動板が重量補償部を有しているので、振動板に振動を伝播する振動伝播桿のぶれが生じず、異音が発生しないという効果を有する。
したがって、本発明のスピーカ装置は、振動板同士の間隙を狭くしても、振動板同士が接触しないように自由に設計できるようになる。
【0035】
本発明のスピーカ装置は、振動板が複数の振動板のそれぞれの中心と重心とを一致させて振動させる重量補償部を有しているので、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないという効果を有する。
【0036】
本発明のスピーカ装置は、振動板が複数の振動板を連結する振動伝播桿に対応して錘となる部材の補償部を有しているので、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないという効果を有する。
【0037】
本発明のスピーカ装置は、振動板が貫通孔の削孔重量の重量補償部を有しているので、低音再生能力に優れ、容易に振動板の中心と重心とを一致させることができ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないという効果を有する。
【0038】
本発明のスピーカ装置は、振動板に重量補償部を接着する接着剤自体の重量を考慮して重量均衡をとるようにしているので、低音再生能力に優れ、正確な重量均衡をとることができ、振動板の振動伝播桿のぶれが生じず、異音が発生しないという効果を有する。
【0039】
本発明のスピーカ装置は、複数の振動板を連結する振動伝播桿に対応して各振動板の一部を厚く又は薄く形成してなる重量補償部を備えているので、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿がぶれず、異音が発生しないという効果を有する。
【0040】
本発明のスピーカ装置は、貫通孔の削孔重量又は貫通孔のある位置に対応して振動板を厚くして重量均衡をとるようにした対称な重量補償部を備えているので、低音再生能力に優れ、振動板の振動伝播桿のぶれが生じず、異音が発生しないという効果を有する。
【0041】
本発明のスピーカ装置は、複数の振動板の各表裏で発生する音をそれぞれ分けて出力する音響出力孔を備えているので、振動板の表裏の音が混じらず、音量が増大するという効果を有する。
【0042】
本発明のスピーカ装置は、振動伝播桿が貫通する振動板の貫通孔が、同形かつ同軸に設けられているので、各振動板及び各振動伝播桿が中心対称に極めて近くなり、大振幅再生時、歪みが小さいという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面に基づき、本発明によるスピーカ装置の好適な実施の形態を説明する。本発明のスピーカ装置は、通常、水平にしてスピーカボックスに配設するが、便宜上、鉛直方向に配設した場合で説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るスピーカ装置を示す上方向からの斜視図、図2は図1のII−II断面を示す側断面図である。
なお、図2において第1スピーカ部2a及び第2スピーカ部2bに係る振動板を区別するために、一部ハッチングを省略した。また図1及び図2において(後述の図3も同様)第1スピーカ部2aに関連する部材には符号にaを、第2スピーカ部2bに関連する部材には符号にbを付した。ただし、音響出力孔(5b)は除く。
実施の形態1に係るスピーカ装置1は、直径65mm程度のスピーカユニットであり、コーン型に類似する第1及び第2スピーカ部2a、2bを、下側の第1スピーカ部2aを上方に、上側の第2スピーカ2bを下方に向けて鉛直に対向させ、円筒状の連結フレーム3で連結されたものである。連結フレーム3周壁にはスリット状の音響出力孔5a、5b、5c、5d、5eが形成されており、連結フレーム3内に、複数の振動板32a、34a、36a、32b、34b、36bが周縁を保持されて、等間隔に配設されている。
【0044】
第1スピーカ部2aは、外向きに二箇所の段差を有する略末広がりの円錐台筒状の第1フレーム14a内に収容されている。第1フレーム14aは、上方側の段差の内周面に棚部14a1が形成され、下方側の段差の内周面に棚部14a2が形成されており、棚部14a1の少し下に内周に沿って突起部14a3が形成されている。
第1スピーカ部2aは、円筒状のボイスコイルボビン4a上部の外周縁に円錐台筒の第1振動伝播部8a(起振手段)が上方向へ末広がりに接合され、ボイスコイルボビン4aの下部の外周壁に銅線を筒状の絶縁体に巻回したボイスコイル6aが嵌合されている。
第1振動伝播部8aの外周縁に第1ロールエッジ10aが設けられ、第1ロールエッジ10aの湾曲部が上方を向いており、第1ロールエッジ10aから外向きに延出された周縁部12aが、第1フレーム14aの棚部14a1に接着されている。
【0045】
ボイスコイルボビン4aには、紙を素材としたペーパーボビン又は不燃布に耐熱性ボンドを含浸させたクロスボビンを使用している。
第1ロールエッジ10aの素材としては、ウレタンフォーム、ラバー、クロス、発泡性ゴム等を使用することができる。
【0046】
輪状のダンパ16aが設けられ、ボイスコイルボビン4aを支えている。ダンパ16aの内周縁は、第1振動伝播部8a下部で、ボイスコイルボビン4a外周縁近傍の外周壁に接合されており、ダンパ16aの外周縁が、第1フレーム14aの棚部14a2に接着されている。
さらにダンパ16aの外周縁には、第1振動伝播部8aの下面(背部)を、空間Cを介して囲う上方向へ末広がりの円錐台筒状の隔壁17a(第2スピーカ部2bの場合、隔壁17b)が、上方の第1ロールエッジ10aに向けて設けられており、隔壁17aの外周縁が外側へ延出して第1フレーム14aの突起部14a3に接着されている。
隔壁17aの外周面と第1フレーム14aの内周面との間には、空間Dが形成されており、第1フレーム14aの適宜の箇所に、空間Dと外空間とを連通する矩形状の音抜き孔15aが形成されている。なお、音抜き孔15aは、後述する第1振動板32aの裏の音を、スピーカボックス内に出力する音響出力孔の一つをなしている。
【0047】
ダンパ16aの素材には、フェノール樹脂などの熱硬化樹脂を含浸させた布を加熱成形したものを使用できる。
【0048】
ボイスコイルボビン4a下部のボイスコイル6aが、磁気ギャップG内に配設されている。
磁気ギャップGは、輪状のトッププレート20a(第2スピーカ部2bの場合、トッププレート20b)の中央に形成されている開口21a(第2スピーカ部2bの場合、開口21b)に、円盤22a(第2スピーカ部2bの場合、円盤22b)の中央に立設された円柱状のセンターポール24a(第2スピーカ部2bの場合、センターポール24b)が遊嵌する隙間を等間隔にして形成されており、ボイスコイル6aは空隙を介してセンターポール24aに被さるように磁気ギャップG中に保持されている。トッププレート20aの上面及びセンターポール24aの上面は、同一平面にあるようにしてある。
【0049】
トッププレート20a及び円盤22aは、環状の永久磁石26a(第2スピーカ部2bの場合、永久磁石26b)を挟持して磁気回路を形成しており、永久磁石26aが発生する磁束を、円盤22a及びセンターポール24aからなるヨーク28a(第2スピーカ部2bの場合、ヨーク28b)で磁気ギャップGまで導くようにしてある。
実施の形態1の磁気ギャップGの構造は、磁気ギャップGの深さよりも長いボイスコイル長を持つ構造であり、磁気ギャップGの外までボイスコイル6aの動作領域を持つため、大きな振幅特性を確保することができる。
【0050】
開口21aの内径は、永久磁石26aの内径よりも少し小さく形成されており、トッププレート20aの内周縁をポールピースにしている。
トッププレート20aのポールピースに対向するセンターポール24aの上部をトッププレート20aと同厚のポールピースに形成するのが好ましく、同厚のポールピースで囲まれた磁気ギャップGには上下対称形の磁界が形成される。磁気ギャップGに上下対称形の磁界が形成されている場合には、第1振動伝播部8aの上下動作の非対称性を生み出すことが無く、特に振幅の激しい100Hz以下の低周波数において二次高調波歪みを発生させることがない。
【0051】
第1ロールエッジ10aの周縁部12a、ダンパ16aの外周縁及び隔壁17aの外周縁を接合かつ支持する第1フレーム14aの下部は、トッププレート20aの上面に接合され、かつ、支持されている。
第1フレーム14aは、第1ロールエッジ10aの周縁部12a、ダンパ16aの外周縁等を接合する箇所で外側に突出する段部を有している。
【0052】
ところで、円筒状のボイスコイルボビン4aの内部空間と、外周縁を円板の第1振動板32aで密閉された第1振動伝播部8aの内部空間とは、空間Aを形成する。ボイスコイルボビン4a外周面、ダンパ16a下面、第1フレーム14aの一部内周面及びトッププレート20a一部上面で囲われる空間は、空間Bを形成する。空間Aは、センターポール24a側面、永久磁石26aの内周面及び円盤22aの一部上面でつくる空間E及び磁気ギャップGを介して、空間Bと連通している。
空間A、B、Cにより、ボイスコイルボビン4a、第1振動伝播部8a及びダンパ16aの移動域が確保され、また空間Dにより第1振動板32aの裏面の音が音抜き孔15aからスピーカボックス内へ出力されるようにしている。
【0053】
次に、第1スピーカ部2aの振動部30a及び第2スピーカ部2bの振動部30b、さらに振動部30a、30bが配設される連結フレーム3について説明する。
振動部30a、30bは、同径の円板でなる第1振動板32a、32b、第2振動板34a、34b及び第3振動板36a、36bが、各振動板の中心からわずかにずれた位置にある柱状の第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bでそれぞれ連結されている。
振動板の中心は、円板の中心点であり、円板の上面及び下面から等距離の位置にある。
【0054】
第2振動板34b及び第3振動板36bには、それぞれ貫通孔60b、62bが形成され、振動部30aの第1振動伝播桿33aが貫通している。また振動部30aの第2振動板34a及び第3振動板36aには、それぞれ貫通孔60a、62aが形成され、振動部30bの第2振動伝播桿33bが貫通している。
振動部30a及び振動部30bの各振動板は、等間隔に交互に同心に配設されて、各振動板の周縁が連結フレーム3内に保持されている。第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bは各貫通孔に遊嵌するようにしてある。
【0055】
振動部30a、30bは、説明の便宜上、第1振動板32a、32b、第2振動板34a、34b及び第3振動板36a、36bの各3枚の振動板を有しているが、実施の形態1では、振動板の枚数を所定枚数にして、大口径スピーカユニットと同等程度の振動体積を得るように設計可能である。
【0056】
図2ではデフォルメされているが、第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bはスピーカ装置の中心軸からわずかにずれた位置にあり、スピーカ装置1の中心軸と、各振動板の中心とは同軸となるようにしてある。
【0057】
第1振動伝播部8a及び第2振動伝播部8b(起振手段)それぞれの第1ロールエッジ10a、10b内周部11a、11bには、第1振動板32a、32bが嵌合し、かつ、接着されており、第1振動板32aが第1振動伝播部8aの上方向に向いた開放端を密閉し、第1振動板32bが振動伝播部8bの下方向を向いた開放端を密閉している。第1振動伝播部8a及び第2振動伝播部8bそれぞれの往復運動(振動)は、第1振動板32a、32bにそれぞれ伝播するようになっている。
【0058】
実施の形態1に係る振動板の素材は、紙、金属箔などの軽いものを使用している。
【0059】
連結フレーム3の一端は、第1スピーカ部2aの第1フレーム14aの外周縁に接着剤で接着されており、他端は第2スピーカ部2bの第2フレーム14bの外周縁に接着剤で接着されている。
【0060】
図2に示すように、連結フレーム3の一側面には、音響出力孔5a、5c、5eが等間隔に縦並びに三個形成されており、他側面には音響出力孔5b、5dが縦並びに二個形成され、各音響出力孔は横方向に等間隔で交互にスリット状に形成されている。
音響出力孔5aと音響出力孔5cとの間に、音響出力孔5bが音響出力孔5a、5cと逆方向に開口し、音響出力孔5cと音響出力孔5eとの間に、音響出力孔5dが音響出力孔5c、5eと逆方向に開口して音響を出力するようにしてある。
【0061】
第2ロールエッジ50aに接合された第2振動板34aの裏の面及び第3ロールエッジ52bに接合された第3振動板36bの裏の面が、それぞれ音響出力孔5bの上壁及び下壁になっており、第2ロールエッジ50bに接合された第2振動板34bの裏の面及び第3ロールエッジ52aに接合された第3振動板36aの裏の面が、それぞれ音響出力孔5dの上壁及び下壁になっている。
【0062】
さらに、第1ロールエッジ10aに接合された第1振動板32aの表の面及び第3ロールエッジ52bに接合された第3振動板36bの表の面が、それぞれ音響出力孔5aの上壁及び下壁になっており、第2ロールエッジ50aに接合された第2振動板34aの表の面及び第2ロールエッジ50bに接合された第2振動板34bの表の面が、それぞれ音響出力孔5cの上壁及び下壁になっている。また、第3ロールエッジ52aに接合された第3振動板36aの表の面及び第1ロールエッジ10bに接合された第1振動板32bの表の面が、それぞれ音響出力孔5eの上壁及び下壁になっている。
第2ロールエッジ50a、50b及び第3ロールエッジ52a、52bは、ハーフロールエッジである。
【0063】
なお、振動板には表裏があり、第1及び第2スピーカ部2a、2bに対する位置関係で表裏を定義する。即ち、振動部30aでは上向きの面を表とし、下向きの面を裏としており、振動部30bでは下向きの面を表とし、上向きの面を裏としている。
【0064】
連結フレーム3は、振動部30a用に、第1ロールエッジ10aの周縁部12aが第1フレーム14aに接合されている位置から上方へ等間隔に、内周壁に輪状のブラケット40a、42aが二個突設されている。
第2ロールエッジ50aから外向きに延出された周縁部51aが、ブラケット40aに接合かつ支持され、第3ロールエッジ52aから外向きに延出された周縁部53aがブラケット42aに接合かつ支持されている。
【0065】
振動部30aでは、第2ロールエッジ50aの内周部49aに、第2振動板34aが嵌合し、かつ、接着され、第3ロールエッジ52aの内周部54aに、第3振動板36aが嵌合し、かつ、接着されており、各ロールエッジの湾曲部は上方を向いている。
【0066】
連結フレーム3は、さらに振動部30b用の第1ロールエッジ10bの周縁部12bが第2フレーム14bに接合されている位置から下方へ等間隔に、内周壁に突設された輪状のブラケット40b、42bが二個形成されている。
第2ロールエッジ50bから外向きに延出された周縁部51bがブラケット40bに接合かつ支持され、第3ロールエッジ52bから外向きに延出された周縁部53bがブラケット42bに接合かつ支持されている。
【0067】
振動部30bでは、第1ロールエッジ10bの内周部11bに、第1振動板32bが嵌合し、かつ、接着され、第2ロールエッジ50bの内周部49bに、第2振動板34bが嵌合し、かつ、接着され、第3ロールエッジ52bの内周部54bに、第3振動板36bが嵌合し、かつ、接着されており、各ロールエッジの湾曲部は下方を向いている。
【0068】
連結フレーム3の素材は、鉄、アルミニウム等の金属又は硬化プラスチック等を使用でき、第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bの素材はアルミニウム、真鍮等の金属を使用できるが、振動板の重量均衡を考慮して決定している。
【0069】
振動部30a及び振動部30bの同径かつ同心の各振動板をそれぞれ連結する第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bは、構造上振動板の中心からずれた位置にあり、また各振動板を振動させる第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bの重量により、振動板の中心と重心とがずれている。このような状態で第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bが往復運動するように駆動して振動板を振動(往復運動)させたとき、第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bのぶれが生じ、例えば第1振動伝播桿33aと第2振動板34b及び第3振動板36bとの接触により、異音が発生する懸念がある。
したがって、本発明に係る実施の形態1では、振動板の中心と重心とが同一になるように重量均衡をとった構造としている。
【0070】
振動部30aでは、第1振動板32aが第1振動伝播桿33aの重量により、第1振動板32aの中心と重心とが一致しておらず、重量均衡が崩れているので、第1振動板32aの中心と第1振動伝播桿33aの中心とを通る直線上の第1振動伝播桿33aと反対側の第1振動板32a周縁に重量補償部70aを設けている。重量補償部70aの形態は特に制限はないが、第1振動板32aの直径に対して対称形であればよい。
振動板が紙の場合、紙を追加して糊付けするが、糊の重量も考慮して重量補償部とし、金属箔の場合にも糊又は接着剤等で金属箔片を接着して、振動板の中心と重心とが同一になるように重量均衡をとる。
【0071】
第2振動板34aは、第2振動伝播桿33bを遊嵌するための貫通孔60aが形成されているため、削孔された分だけ重量が軽いので、貫通孔60aの中心、第2振動板34aの中心及び第1振動伝播桿33aの中心を通る直線上の貫通孔60a側の第2振動板34a周縁に重量補償部72aを設けている。重量補償部72aの形態は特に制限はないが、第2振動板34aの直径に対して対称形であればよい。
【0072】
第3振動板36aは、第2振動伝播桿33bを遊嵌するための貫通孔62aが形成されているため、削孔された分だけ重量が軽いので、貫通孔62aの中心、第3振動板36aの中心及び第1振動伝播桿33aの中心を通る直線上の貫通孔62a側の第3振動板36a周縁に重量補償部74aを設けている。重量補償部74aの形態についても同様に第3振動板36aの直径に対して対称形であればよい。
【0073】
振動部30bにおける第1振動板32b、第2振動板34b及び第3振動板36bについても同様に重量均衡をとるために重量補償部70b、72b、74bを設けおり、それぞれ振動板の直径に対して対称形にしてある。
【0074】
重量補償部は振動板周縁に設けたが、振動板の中心と貫通孔の中心とを結ぶ直線上であって、貫通孔の内側方向又は外側方向のいずれに設けても良い。
また複数の重量補償部を設けても良いが、振動板の中心と貫通孔の中心とを通る直線に対して対称の位置に設けて重量均衡をとるようにする。
このように重量補償部を設けることにより、振動板の中心と重心とが一致し、各第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bの首振り現象が生じないようにすることができる。
【0075】
次にスピーカ装置の作用について説明する。
スピーカ装置では第1及び第2スピーカ部2a、2bが同時に駆動し、第1及び第2スピーカ部2a、2bのボイスコイル6a、6bに電圧を加えたとき、ボイスコイル6a、6bの各振動速度(往復運動速度)がボイスコイル6a、6bに流れる電流I、Iと磁気回路の磁束密度B、Bの相互作用による電磁力、即ち駆動力F、Fに比例するように質量制御されており、ボイスコイル6a、6bで発生した振動は、ボイスコイルボビン4a、4bからそれぞれの第1振動伝播部8a及び第2振動伝播部8bへ、第1振動伝播部8a及び第2振動伝播部8bのそれぞれから第1振動板32a、32bへ伝播していく。第1振動板32a、32bの振動は、第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bのそれぞれにより第2振動板34a、34b及び第3振動板36a、36bに伝播する。各振動板による振動体積は周波数に関係なく入力電圧に比例し、スピーカ装置は電気から音響にエネルギー変換する。
【0076】
ダンパ16a、16bは、それぞれの第1振動伝播部8a及び第2振動伝播部8bがスピーカ装置の中心軸方向に沿った往復運動を行えるように、ボイスコイルボビン4a、4bを中心位置に保持する。
第1振動板32a、32b、第2振動板34a、34b及び第3振動板36a、36bは、振動板の中心と重心とが一致して振動し、第1振動伝播桿33a及び第2振動伝播桿33bがぶれず、振動板同士が衝突しない。
【0077】
実施の形態1では、ボイスコイル6a、6bの各1ストロークで第1振動板32a、第2振動板34a及び第3振動板36aと、第1振動板32b、第2振動板34b及び第3振動板36bとが振動し、振動板の枚数に比例した振動体積を得る。
したがって、所要枚数の振動板で大口径スピーカユニットと同等の振動体積になる。
【0078】
また第1振動板32aの表の音及び第3振動板36bの表の音は音響出力孔5aから出力し、第2振動板34aの裏の音及び第3振動板36bの裏の音は音響出力孔5bから出力する。さらに、第2振動板34aの表の音及び第2振動板34bの表の音は音響出力孔5cから出力し、第3振動板36aの裏の音及び第2振動板34bの裏の音は音響出力孔5dから出力する。
第3振動板36aの表の音及び第1振動板32bの表の音は音響出力孔5eから出力し、第1振動板32aの裏の音及び第1振動板32bの裏の音はそれぞれ音抜き孔15a、15bからスピーカボックス内(図示せず)に出力し閉じこめる。
したがって、振動板の表の音は一方の音響出力孔が出力し、振動板の裏の音は他方の音響出力孔が出力し、振動板の表の音と裏の音とが混じらず、音量が減じない。
【0079】
このような構成の本発明のスピーカ装置は、振動板の中心と重心とを一致させることができ、振動伝播桿のぶれが生じず、振動板同士の衝突が生じない。さらに、二台のスピーカ部が対向して複数の振動板を振動させているので、所要枚数の振動板を備えることにより大口径スピーカユニットと同程度の振動体積を得ることができ、低音再生能力に優れる。
また本発明のスピーカ装置は、振動板の表裏の音を別の音響出力孔から出力しているので、振動板の表裏の音が混じらず、音量を減じることがない。
【0080】
(実施の形態2)
実施の形態1では重量補償部を設けて重量均衡をとることにより、振動板の中心と重心とを一致させたが、実施の形態2では、振動板自体の厚さを調節することにより重量均衡をとるようにしたものである。
図3は実施の形態2に係るスピーカ装置の側断面図、図4は実施の形態2に係る第2振動板を示す図であり、(a)は第2振動板の下面図、(b)は第2振動板の側面図である。なお、図4(a)及び(b)中のyは振動板の中心を示す。振動板の中心は円板の中心点であり、円板の厚さDの1/2の距離にある。
実施の形態2の構成は、振動部30a及び振動部30bの各振動板の構成を除き、実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一部材には同一符号を付した。
振動部30aの第1振動板32a1は、第1振動伝播桿33aの位置により、第1振動板32a1の中心と重心とが一致しておらず、重量均衡が崩れているので、厚さDの第1振動板32a1の中心と第1振動伝播桿33aの中心とを通る直線Pに対して、直線Pに垂直な直線Qから第1振動板32a1周縁に至る厚さ調節領域82a1を厚さwに薄くすることにより、重量均衡をとっている。
【0081】
第2振動板34a1は、第2振動伝播桿33bを遊嵌するための貫通孔60aが形成されているため、削孔された分だけ重量が軽くなっており、第2振動板34a1の中心と重心とが一致しておらず、重量均衡がくずれているので、貫通孔60aの中心、第2振動板34a1の中心及び第1振動伝播桿33aの中心を通る直線Pに対して、直線Pに垂直な直線Qから第2振動板34a1周縁に至る厚さ調節領域84a1を厚さwに薄くすることにより、重量均衡をとっている。
第3振動板36a1は、第2振動伝播桿33bを遊嵌するための貫通孔62aが形成されているため、削孔された分だけ重量が軽くなっており、第3振動板36a1の中心と重心とが一致しておらず、重量均衡がくずれているので、貫通孔62aの中心、第3振動板36a1の中心及び第1振動伝播桿33aの中心を通る直線Pに対して、直線Pに垂直な直線Qから第3振動板36a1周縁に至る厚さ調節領域86a1を厚さwに薄くすることにより、重量均衡をとっている。
【0082】
振動部30bにおける第1振動板32b1、第2振動板34b1及び第3振動板36b1についても同様に重量均衡をとるために、振動部30aと同様にして、直線Qから各振動板周縁に至る厚さ調節領域82b1、84b1、86b1を厚さwに薄くしている。
厚さwにする領域は、図4で示すような、直線Qから振動板の周縁に至る領域に限られず、振動板の周縁までに至らない一部の領域でもよいが、直線Pに対して対称な領域であることを要する。
【0083】
厚さ調節領域82a1、84a1、86a1は直線Qから矢印(例えば第2振動板34a1では、厚さ調節領域84a1を例示する図4を参照)で示す周縁までの領域の厚さを薄く調節したが、直線Qよりも周縁側の直線Q2から矢印で示す周縁までの領域の厚さを薄く調節する場合、第2振動板34a2の厚さ調節領域84a2は、厚さ調節領域84a1の厚さwよりもさらに薄く形成する。第1振動板32a2の厚さ調節領域82a2、第3振動板36a2の厚さ調節領域86a2(以上、図示せず)についても同様であるので詳細な説明は省略する。
なお、第2スピーカ部2bにおける第1振動板32b2の厚さ調整領域82b2、第2振動板34b2の厚さ調整領域84b2、第3振動板36b2の厚さ調整領域86b2(以上、図示せず)についても同様である。
このように厚さ調節領域は、適宜厚さを変更して、重量均衡をとるようにしている。
【0084】
図5は実施の形態2に係る変形例を示す図であり、(a)は変形例に係る第2振動板の下面図、(b)は第2振動板の側面図である。なお、図5(a)及び(b)中のyは振動板の中心を示す。振動板の中心は、円板の中心点であり、円板の厚さDの1/2の距離にある。
図5に示す実施の形態2に係る変形例は、重量が軽くなっている側の重量を重くなるようにしたものである。
振動部30aの第1振動板32a1は、第1振動伝播桿33aの重量により、第1振動板32a1の中心と重心とが一致しておらず、重量均衡が崩れているので、厚さDの第1振動板32a1の中心と第1振動伝播桿33aの中心とを通る直線Pに対して、貫通孔60aの近傍に、直線Pに垂直にひいた直線Qから第1振動板32a1周縁に至る厚さ調節領域92a1を厚さWに厚くすることにより、重量均衡をとっている(図示せず)。
【0085】
図5(a)、(b)に示すように、第2振動板34a1は、第2振動伝播桿33bを遊嵌するための貫通孔60aが形成されているため、削孔された分だけ重量が軽くなっており、第2振動板34a1の中心と重心とが一致しておらず、重量均衡がくずれているので、貫通孔60aの中心、第2振動板34a1の中心及び第1振動伝播桿33aの中心を通る直線Pに対して、直線Pに垂直な直線Qから第2振動板34a1周縁に至る厚さ調節領域94a1を厚さWに厚くすることにより、重量均衡をとっている。
第1振動板32a1の厚さ調整領域92a1及び第3振動板36a1の厚さ調節領域96a1(以上、図示せず)についても同様であるので詳細な説明を省略する。
なお、第2スピーカ部2bにおける第1振動板32b1の厚さ調節領域92b1、第2振動板34b1の厚さ調節領域94b1及び第3振動板36b1の厚さ調節領域96b1(以上、図示せず)についても同様である。
【0086】
厚さWに厚くする厚さ調節領域は、図5に示した領域に限られないが、直線Pに対して対称な領域であることを要する。
【0087】
このような構成の実施の形態2に係るスピーカ装置では、振動板の中心と重心とを一致させているので、振動板の振動伝播桿がぶれることがない。
したがって、実施の形態2に係るスピーカ装置は、振動板がスピーカ装置の中心軸に沿った振動をすることができる。
【0088】
なお、実施の形態2に係る厚さ調節領域は、連続した領域である必要はなく、直線Pに対して対称に振り分けた領域であってもよい。
【0089】
実施の形態1及び2に係る第1スピーカ部2aと第2スピーカ部2bとは、スピーカ装置1を天地逆又は左右逆にしたとき同一となり、同一の構造を備えている。
本発明に係るスピーカ装置は、振動板を50枚程度備えれば、大口径ウーファと同程度の振動体積が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスピーカ装置を示す上方向からの斜視図である。
【図2】図1のII−II断面を示す側断面図である。
【図3】実施の形態2に係るスピーカ装置の側断面図である。
【図4】実施の形態2に係る第2振動板を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1 スピーカ装置
2a 第1スピーカ部
2b 第2スピーカ部
3 連結フレーム
5a、5b、5c、5d、5e 音響出力孔
8a 第1振動伝播部(第1起振手段)
8b 第2振動伝播部(第2起振手段)
15a、15b 音抜き孔
32a、34a、36a、32b、34b、36b 振動板
32a1、34a1、36a1、32b1、34b1、36b1 振動板
32a2、34a2、36a2、32b2、34b2、36b2 振動板
33a 第1振動伝播桿
33b 第2振動伝播桿
60a、60b、62a、62b 貫通孔
70a、72a、74a、70b、72b、74b 重量補償部
82a1、84a1、86a1、82b1、84b1、86b1 厚さ調節領域
82a2、84a2、86a2、82b2、84b2、86b2 厚さ調節領域
92a1、94a1、96a1、92b1、94b1、96b1 厚さ調節領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動する第1起振手段を有する第1スピーカ部を収容し、該第1起振手段の周縁を保持する第1フレームと、
該第1起振手段に対向して往復運動する第2起振手段を有する第2スピーカ部を収容し、該第2起振手段の周縁を保持する第2フレームと
を備えるスピーカ装置であって、
第1振動伝播桿で連結された複数の平板状の振動板と、
第2振動伝播桿で連結された複数の平板状の振動板とを有し、
前記第1及び第2振動伝播桿で各連結された前記振動板は、各前記第2及び第1振動伝播桿が遊嵌している貫通孔を有しており、
前記第1及び第2振動伝播桿で各連結された前記振動板は、交互に配設されており、
前記第1及び第2起振手段に各近接している各一の前記振動板の周縁は、該第1及び第2起振手段の各周縁に接合されており、
前記振動板は、重量補償部を有することを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記振動板は、前記重量補償部により該振動板の中心と重心とを一致させてあることを特徴とする請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記重量補償部は、錘となる部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記重量補償部は、前記貫通孔の削孔重量に対応する重量を有しており、前記振動板の中心と該貫通孔の中心とを通る直線上に設け又は該直線に対して対称な位置に振り分けて設けてあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記重量補償部は、前記振動板と同材料で、該振動板に接着剤で接着されており、
前記重量補償部及び前記接着剤により重量均衡をとるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記重量補償部は、前記複数の振動板が前記第1及び第2振動伝播桿に各連結する位置又は前記貫通孔の位置に対応して、各該振動板の一部を厚く又は薄く形成してなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記重量補償部は、前記貫通孔の削孔重量及び該貫通孔のある位置に対応して、前記振動板の一部を厚く又は薄くして重量均衡をとるように形成されており、該振動板の中心と該貫通孔の中心とを通る直線に対して対称にしてあることを特徴とする請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記第1及び第2フレームを連結する連結フレームを有し、
該連結フレームは複数の音響出力孔を有しており、
該音響出力孔は、前記振動板の表裏で発生する音を、表の音と裏の音とに分けて出力するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記貫通孔は同形かつ同軸に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一つに記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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