説明

スピーカ装置

【課題】より軽量で薄型な「スピーカ装置」を提供することである。
【解決手段】フレーム部材10と、磁気回路20と、フレーム部材10の底部11に設けられ、磁気回路20を、第1ヨーク21の周壁部212のプレート部211と逆側の周端部にて固定支持する支持部材14と、磁気回路20の磁気ギャッGpプ内に配置されるボイスコイルユニット31と、第1ヨーク21の周壁部212の外側に配置される連結部材32と、内周端部が連結部材32に連結される振動板40と、を有し、ボイスコイルユニット31と連結部材32とは、第1ヨーク21の記周壁部212を横切る方向に延びる接合部材33aにより接合され、第1ヨーク21の周壁部212及び支持部材14のそれぞれにボイスコイルユニット31と連結部材32とを接合する接合部材33aが移動可能となるスペース213a、15aが形成された構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気回路にて発生する磁界とボイスコイルを流れる音声信号電流との相互作用によってボイスコイルに連結される振動板を振動させて音を出力するスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーン状の振動板に囲まれた空間内の略中央部に磁気回路を配置した構造の、所謂、カウンター・ドライブ方式のスピーカ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種のスピーカ装置では、振動板やダンパー等の各部品を収容するフレーム(プラスチック製かご型後部部分)のほかに、振動板の前方に他のフレーム(プラスチック製かご型前部部分)が設けられ、この前方のフレームに磁気回路が固定支持されている。そして、磁気回路内の磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルユニットが前記振動板の内周縁に連結されている。このようなスピーカ装置によれば、コーン状の振動板に囲まれた空間内に磁気回路が配置されるので、その空間が有効に利用できる分、薄型化が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−136196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のスピーカ装置では、振動板やダンパー等の取り付け収容するためのフレームのほかに、磁気回路を取り付けるための他のフレームを振動板の前方に設けなければならず、重量がかさんでしまうという欠点がある。
【0005】
また、磁気回路に形成され磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルユニットの当該磁気ギャップから出た部分に振動板が結合されるので、ボイスコイルユニットの当該磁気ギャップから出る部分を確保するために、振動板で囲まれるコーン状の空間の深さを比較的大きく設定しなければならない。更に、振動板が結合される前記ボイスコイルの前記磁気ギャップから出る部分の長さは、振動板の振動量(最大振動量)を考慮して設計しなければならず、むやみに小さくすることもできない。このように振動板で囲まれるコーン状の空間の深さをある程度大きくする必要があること、また、ボイスコイルユニットの磁気ギャップから出る部分の長さが振動板の振動量を考慮して設計しなければならないこと等によって、薄型化にも限界がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、より軽量で薄型なスピーカ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスピーカ装置は、底部から外方に向けて立ち上がる形状のフレーム部材と、プレート部及び該プレート部を囲む周壁部からなる凹形状の第1ヨーク、該第1ヨーク内に設けられた磁石、及び前記第1ヨークの前記プレート部とで前記磁石を挟むとともに前記周壁部との間に環状の磁気ギャップが形成されるように設けられた第2ヨークを備えた磁気回路と、前記フレーム部材の前記底部に設けられ、前記磁気回路を、前記第1ヨークの前記周壁部の前記プレート部と逆側の周端部にて固定支持する支持部材と、前記磁気回路の前記磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルユニットと、前記第1ヨークの前記周壁部の外側に配置される連結部材と、外周端部が前記フレーム部材に連結されるとともに内周端部が前記連結部材に連結される振動板と、を有し、前記ボイスコイルユニットと前記連結部材とは、前記第1ヨークの前記周壁部を横切る方向に延びる接合部材により接合され、前記第1ヨークの前記周壁部及び該周壁部を固定支持する前記支持部材のそれぞれの、前記ボイスコイルユニットの進退動に伴う当該ボイスコイルユニットと前記連結部とを接合する前記接合部材の移動領域を含む所定部位に空きスペースが形成された構成となる。
【0008】
このような構成により、第1ヨーク部、磁石及び第2ヨーク部を備えた磁気回路が、振動板の外周部が連結されるフレーム部材の底部に設けられた支持部材に固定支持されるので、振動板の前方に前記磁気回路を固定支持するための他のフレーム部材を設ける必要がない。
【0009】
また、磁気回路における第1ヨークの周壁部の内側に形成された磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルユニットと第1ヨークの外側に配置される連結部とが接合部材によって一体的に接合されるともに、前記第1ヨークの周壁部及び第1ヨークを該周壁部の周端部にて固定支持する支持部材のそれぞれの、前記ボイスコイルユニットの進退動に伴う該ボイスコイルユニットと前記連結部材とを接合する前記接合部材の移動領域を含む所定部位に空きスペースが形成されているので、ボイスコイルユニットが進退動する際に、前記接合部材が前記空きスペース内で移動可能となり、振動板の内周部が連結する前記連結部材が前記ボイスコイルユニットの進退動に伴って進退動(振動)するようになる。そして、振動板の内周部の位置をボイスコイルユニットの振動方向において比較的磁気ギャップに近く設定することができる。
【0010】
本発明に係るスピーカ装置において、前記ボイスコイルユニットと前記連結部材とを接合する前記接合部材は、前記第1ヨークの前記周壁部を横切る方向に延びる複数の接合片を含む構成とすることができる。そして、この場合、前記第1ヨークの前記周壁部及び前記支持部材のそれぞれに、前記複数の接合片のそれぞれが通過するスリットを前記空きスペースとして形成することができる。
【0011】
また、本発明に係るスピーカ装置において、前記ボイスコイルユニットと前記連結部材とは、前記第1ヨークの前記周壁部を挟んで正対している構成とすることができる。
【0012】
このような構成により、ボイスコイルユニットと、振動板の内周部が連結される連結部材とが第1ヨークの周壁部を挟んで正対しているので、振動板の内周部の位置を磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルユニットの振動方向においてより磁気ギャップに近く設定することができる。その分、ボイスコイルユニットの振動方向における余分なスペースを有効に省くことができるようになる。
【0013】
また、本発明に係るスピーカ装置において、前記支持部材は、前記フレーム部材の底部を切り起こして形成された構成とすることができる。
【0014】
このような構成により、支持部材を別部材にてフレーム部材の底部に設ける必要がなく、より軽量化を図ることができるようになる。
【0015】
更に、本発明に係るスピーカ装置において、前記フレーム部材の前記底部及び前記支持部材を貫通する孔が形成された構成とすることができる。

前記磁気回路を構成する前記第1ヨーク、前記磁石及び前記第2ヨークと前記ボイスコイルユニットとが取り外し可能に組付けられたジグが通る孔が形成された構成とすることができる。
【0016】
このような構成により、フレーム部材の底部及び支持部材を貫通する孔に、磁気回路を構成する第1ヨーク、磁石及び第2ヨークとボイスコイルユニットとを組付けたジグを通すことができるようになるので、このジグを用いて磁気回路ユニット及びボイスコイルユニットをフレーム部材にセットすることができるようになる。その結果、前記ジグに組付けられた磁気回路等の部品を振動板等の他の部品とともに精度良く容易に組み立てることができるようになる。
【0017】
また、本発明に係るスピーカ装置において、前記孔を前記フレーム部材の前記底部の外側から閉ざす孔閉鎖部材を有する構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、組み立てが終了したてジグを取り外ことによって表れるフレーム部材の底部に形成された孔が孔閉鎖部材によって閉ざされるので、前記孔からの異物の混入を有効に防止することができるようになる。
【0019】
更に、本発明に係るスピーカ装置において、前記孔閉鎖部材は、閉鎖板部と前記孔に嵌合する嵌合部とを有し、前記嵌合部には、前記支持部材に形成された空きスペースに合致する空きスペースが形成された構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、孔閉鎖部材の嵌合部をフレーム部材の底部及び支持部材に形成された孔に嵌合させて閉鎖板部にて前記孔を閉ざしたときに、前記嵌合部に形成された空きスペースが前記支持部材に形成された空きスペースに合致するようになるので、ボイスコイルユニットと連結部材とを接合する接合部材の前記支持部材に至る移動が妨げられることがない。即ち、ボイスコイルユニットのより大きい振動範囲を維持することができる。
【0021】
また、本発明に係るスピーカ装置において、前記第1ヨークに接合して、前記振動板の前記内周部を弾性支持する内エッジ部と、前記フレーム部材の外縁部に接合して、前記振動板の前記外周部を弾性支持する外エッジ部とを有する構成とすることができる。
【0022】
このような構成により、振動板がフレーム部材の外縁部と磁気回路を構成する第1ヨークとの間に弾性支持された状態で延在するようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るスピーカ装置によれば、振動板の前方の磁気回路を固定支持するための他のフレーム部材を設ける必要がないので、その分、軽くすることができる。
【0024】
また、ボイスコイルユニットが進退動する際に、ボイスコイルユニットと連結部材とを第1ヨークの周壁部を横切って接合する前記接合部材が前記周壁部及び支持部材に形成された空きスペース内で移動可能となり、振動板の内周部が連結する前記連結部材が前記ボイスコイルユニットの進退動に伴って進退動(振動)するようになる。そして、前記振動板の内周部が、ボイスコイルユニットの振動方向において比較的磁気ギャップに近い位置となるので、その分、ボイスコイルユニットの振動方向における余分なスペースを少なくすることができる。よって、薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の前方からの外観を示す斜視図である。
【図1B】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の後方からの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置を構成する部品を示す分解斜視図である。
【図3】底部に支持部材の形成されたフレーム部材、磁気回路アッセンブリ、ボイスコイルアッセンブリ、及びボトムキャップの関係を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の断面構造を示す断面図である。
【図5】図4における領域Eを拡大して示す拡大部分断面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その1)を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その2)を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その3)を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その4)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その5)を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その6)を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その7)を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その8)を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(その9)を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の組み立て手順(そ10)を示す図である。
【図16】ボイスコイルユニットと連結ボビンとの相対的な位置関係と、振動板の内周端部の固定構造とを切り欠いて示す部分破断斜視図である。
【図17】振動板の内周端部が連結される連結ボビンとボイスコイルユニットとを接合する接合片の配置関係を示す部分破断斜視図である。
【図18】ボイスコイルユニットが静止している状態での、連結ボビンの状態を示す部分斜視図である。
【図19】ボイスコイルユニットが最大に進出した状態での、連結ボビンの状態を示す部分斜視図である。
【図20】ボイスコイルユニットが最大に後退した状態での、連結ボビンの状態を示す部分斜視図である。
【図21】磁気回路アッセンブリの他の支持構造を示す断面図である。
【図22】図21における領域Eを拡大して示す拡大部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0027】
本発明の実施の形態に係るスピーカ装置の前方からの外観及び後方からの外観は図1A及び図1Bに示すようになっている。このスピーカ装置100は、図2及び図3に示す部品にて構成され、図4及び図5に示す断面構造を有する。具体的には、フレーム部材10、磁気回路アッセンブリ20、ボイスコイルアッセンブリ30、振動板40、外エッジ部41、内エッジ部42、ダンパー43及びボトムキャップ50の各部品を組み立てることによってスピーカ装置100が形成される。
【0028】
フレーム部材10は、図2に示すように、底部11から外方に向けて立ち上がる広がり部12を経て外縁部13に至る円形コーン状の構造となっている。また、図3に示すように、フレーム部材10における底部11の中央部に切り起こしによって、先端に内フランジ14aを有する略円筒状の支持部14(支持部材)が形成され、その支持部14の内側には底部11を貫通する孔16が形成されている。支持部14には、その高さ方向に延びる3つのスリット15a、15b、15cが均等な間隔にて形成されている。磁気回路アッセンブリ20は、図2に示すように、カップ状(凹形状)の第1ヨーク21、円板状の磁石22及び円板状の第2ヨーク23から構成されている。ボイスコイルアッセンブリ30は、図3に示すように、ボイスコイルユニット31とその外側に同心的に配置される連結ボビン32とによって構成され、ボイスコイルユニット31と連結ボビン32とが均等な間隔にて配置される接合片33a、33b、33c、33dによって接合され一体化されている。ボトムキャップ50は、フレーム部材10の底部11に形成された孔16に嵌合して当該孔16を閉ざすものであって、図3に示すように、円板状の閉鎖プレート部51と、この閉鎖プレート部51を壁状に囲む嵌合部52とから構成されている。ボトムキャップ50の嵌合部52には、高さ方向に延びる3つのスリット53a、53b、53cが均等な間隔にて形成されている。
【0029】
断面構造を示す図4及び図5とともに、図6乃至図17を参照して、各部品の組み立て手順及び更にその詳細な構造について説明する。
【0030】
磁気回路アッセンブリ20を構成する第1ヨーク21は、図6(a)に示すように、円板状のプレート部211と、プレート部211を囲む周壁部212とによってカップ状(凹形状)に形成されている。周壁部212には、その周端面からプレート部211に至る高さ方向に3つのスリット213a、213b、213cが均等な間隔で形成されている。図6(b)に示すように、第1ヨーク21内にそのプレート部211より僅かに小さい円板状の磁石22がセットされ、更に、図6(c)に示すように、第1ヨーク21の周壁部212の内側断面積より僅かに小さい面積の円板状の第2ヨーク23が、プレート部211とで磁石22を挟み込むようにセットされる。これにより、第1ヨーク21の周壁部212の内周面と、第2ヨーク23の外周面との間に磁気ギャップGpの形成された磁気回路アッセンブリ20が形成される。なお、第1ヨーク21の周壁部212の周端面と第2ヨーク23の磁石22と逆側の面とが同一面内になるように、第1ヨーク21の周壁部212の高さ、磁石22の厚さ及び第2ヨーク23の厚さが設定されている(図4及び図5参照)。また、これら第1ヨーク21、磁石22及び第2ヨーク23は、磁気ギャップGpを維持するためのジグを用いて組み立てられ、接着剤により固定される。
【0031】
ボイスコイルアッセンブリ30は、図7(a)に示すように、円環状のボビンにボイスコイルが巻かれた構造となるボイスコイルユニット31と、ボイスコイルユニット31と同じ高さの円環状の連結ボビン32(連結部材)とを有している。連結ボビン32の内周面には、3つの接合片33a、33b、33c(接合部材)が均等な間隔で形成されている。これら3つの接合片33a、33b、33cそれぞれの連結ボビン32の内周面から突出する長さは、連結ボビン32内にセットされたボイスコイルユニット31の外周面に3つの接合片33a、33b、33cの先端が当接するように設定されている。そして、図7(b)に示すように、連結ボビン32内にボイスコイルユニット31が同心的にセットされ、3つの接合片33a、33b、33cの先端とボイスコイルユニット31とが接着剤によって接着固定される。これにより、ボイスコイルユニット31と連結ボビン32とが3つの接合片33a、33b、33cによって接合された構造のボイスコイルアッセンブリ30が形成される。
【0032】
次に、図7(b)に示すように、円筒状のジグ60が用意され、図7(c)に示すように、該ジグ60が円環状のボイスコイルユニット31内に嵌め込まれる。
【0033】
このようにしてボイスコイルアッセンブリ30がジグ60にセットされると、図8に示すように、ジグ60とともにボイスコイルアッセンブリ30が磁気回路アッセンブリ20にセットされる。この状態で、ボイスコイルユニット31が磁気回路アッセンブリ20における第1ヨーク21の周壁部212の内側に形成された磁気ギャップGp内に配置されるとともに、連結ボビン32がその周壁部212の外側に配置され、それらボイスコイルユニット31と連結ボビン32とは、第1ヨーク21の周壁部212を挟んで正対する(図4及び図5参照)。また、ボイスコイルユニット31と連結ボビン32とを接合する3つの接合片33a、33b、33cはスリット213a、213b、213cを通してその第1ヨーク21の周壁部212を横切っている(図4及び図5参照)。
【0034】
次いで、図8に示すようにボイスコイルアッセンブリ30及び磁気回路アッセンブリ20が組付けられたジグ60が、図9に示すように、フレーム部材10の底部11から孔16を通してフレーム部材10内にセットされる。この状態で、磁気回路アッセンブリ20が、図6(c)に示す状態と逆向きの第2ヨーク23が支持部14に対向する状態で、フレーム部材10の底部11に形成された支持部14に当接する。即ち、磁気回路アッセンブリ20における第1ヨーク21の周壁部212の周端面がフレーム部材10の底部11に形成された支持部14の内フランジ14aに当接する。その周壁部212の周端面が支持部14の内フランジ14aに接着固定されることにより、磁気回路アッセンブリ20が支持部14に固定支持される(図4及び図5参照)。磁気回路アッセンブリ20における第1ヨーク21の周壁部212に形成された3つのスリット213a、213b、212cは、支持部14に形成された3つのスリット15a、15b、15cにつながって、第1ヨーク21の周壁部212から支持部14まで続く3つのスリット(213a、15a)、(213b、15b)、(213c、15c)が形成される。
【0035】
上記のようにしてボイスコイルアッセンブリ30及び磁気回路アッセンブリ20が組付けられたジグ60がセットされたフレーム部材10が図9に示す状態から図10に示すように反転させられる。この状態で、フレーム部材10の底部11に形成された支持部14に固定支持される磁気回路アッセンブリ20と、磁気回路アッセンブリ20の外側に配置されるボイスコイルアッセンブリ30の連結ボビン32が表れる。
【0036】
次に、図11に示すように、ダンパー43の外周端部がフレーム部材10における広がり部12の所定部位に接着固定されるとともに、当該ダンパー43の内周端部が磁気回路アッセンブリ20の外側に配置される連結ボビン32に接着固定される。これにより、連結ボビン32に対して3つの接合片33a、33b、33cによって接合されるボイスコイルユニット31がダンパー43によって弾性支持された構造となる(図4及び図5参照)。
【0037】
振動板40は、図2及び図4に示すように、外周端部から内側にむけて平坦に続きその内側の所定部位から内周端部に向けて立ち下がった構造となっている。このような構造の振動板40の外周端部には、図12に示すように、外エッジ部41の内側端部が接着固定され、外エッジ部41の外側端部がフレーム部材10の外縁部13に接着固定される。これにより、振動板40の外周端部が外エッジ部41によって弾性支持される。また、振動板40の内周端部は、磁気回路アッセンブリ20の外側に配置される連結ボビン32に接着固定される(図4及び図5参照)。これにより、ボイスコイルユニット31の磁気ギャップGp内での進退動(振動)に伴う連結ボビン32の進退動(振動)によって振動板40が振動するようになる。
【0038】
次いで、図13に示すように、内エッジ部42の内側端部が磁気回路アッセンブリ20における第1ヨーク21のプレート部211と周壁部212との境界部分に接着固定され、内エッジ部42の外側端部が振動板40の平坦部分の縁部に接着固定される(図4参照)。これにより、振動板40の連結ボビン31に連結される内側端部の近傍部位が内エッジ部42によって弾性支持される。
【0039】
この状態で、フレーム部材10が反転されて、ジグ60が孔16から引き抜かれると、図14に示すように、フレーム部材10の底部11に形成された孔16が表れる。この状態で、ボイスコイルアッセンブリ30が一体的に組付けられた磁気回路アッセンブリ20が底部11の支持部14に固定支持された状態が維持されている(図4及び図5参照)。そして、ボトムキャップ50が、スリット53a、53b、53cが支持部14のスリット15a、15b、15cに合致するように位置合わせされた状態で、孔16に嵌め込まれる。これにより、フレーム部材10の底部11に形成された孔16が閉鎖される。
【0040】
このようにして、図1A及び図1Bに示すような外観で、図4及び図5に示すような内部構造となるスピーカ装置100が完成する。
【0041】
このようなスピーカ装置100において、ボイスコイルユニット31のボイスコイルに音声信号が供給されると、ボイスコイルを流れる音声信号電流と、磁気回路アッセンブリ20における磁気ギャップGpを横切る磁束との相互作用によって、ボイスコイルユニット31が磁気ギャップGp内で進退動(振動)するような力を受ける。このとき、図16に示すように、磁気回路アッセンブリ20における第1ヨーク21の周壁部212を挟んでボイスコイルユニット31に正対する連結ボビン32には、接合片33a、33b、33cを介して同様の力が作用する。そして、図17に示すように、各接合片33a(33b、33c)は、第1ヨーク21の周壁部212に形成されたスリット213a(213b、213c)及び支持部14に形成されたスリット15a(15b、15c)内を移動可能となっていることから、ボイスコイルユニット31が音声信号に応じた力を受けると、ボイスコイルユニット31とそれに接合片33a、33b、33cによって接合される連結ボビン32とが一体となって進退動(振動)する。そして、この連結ボビン32の振動によって振動板40が振動し、音声信号に応じた音が出力される。
【0042】
このスピーカ装置100によれば、磁気回路アッセンブリ20がフレーム部材10の底部11に形成された支持部14に固定支持される構造であるので、従来の所謂カウンター・ドライブ方式のスピーカ装置のように、振動板の前方に他のフレーム部材を設ける必要がなく、その分、軽量化を図ることができる。
【0043】
また、図16に示すように、振動板40の内周端部が固定される連結ボビン32が、磁気回路アッセンブリ20の磁気ギャップGp内に配置されるボイスコイルユニット31と正対しているので、振動板40の内周端部の位置がボイスコイルユニット31の振動方向において略磁気ギャップGpと略同位置となる。このため、ボイスコイルユニット31の振動方向における余分なスペースを極力小さくすることができる。
【0044】
また、ボイスコイルユニット31の進退動に伴う連結ボビン32の進退動の範囲は、例えば、図18乃至図20に示すようになる。即ち、ボイスコイルユニット31が静止した状態では、図18に示すように、連結ボビン32(ボイスコイルユニット31)は、磁気回路アッセンブリ20における第1ヨーク21の周壁部212の支持部14との境界部分に位置し、ボイスコイルユニット31が最大に進出した状態では、図19に示すように、連結ボビン32(ボイスコイルユニット31)は、第1ヨーク21の周壁部212のプレート部211側の端部近傍に位置する。また、ボイルコイルユニット31が最大に後退した状態では、図20に示すように、連結ボビン32(ボイスコイルユニット31)は、磁気回路アッセンブリ20を固定支持する支持部14の外側に位置する。
【0045】
このスピーカ装置100における厚さは、前述したようにボイスコイルユニット31の振動方向における余分なスペースを極力小さくさせた状態において、更に、連結ボビン32が図18乃至図20の範囲で進退動した際の振動板40のボイスコイルユニット31の振動方向における変形量を考慮したものとなる。その結果、スピーカ装置100をより薄型にすることが可能となる。
【0046】
また、スピーカ装置100の前方面が振動板40、外エッジ部41及び内エッジ部42にて覆われるとともに、フレーム部材10の底部11に形成された孔16は、ボトムキャップ50によって閉ざされるので、防塵についても優れたものとなる。
【0047】
なお、磁気回路アッセンブリ20を支持する支持部材は、前述したように、フレーム部材10の底部11を切り起こして形成された支持部14でなくてもよい。フレーム部材10の底部11に、フレーム部材10とは別体となる支持部材を設けるようにしてもよい。また、磁気回路アッセンブリ20は、図21及び図22に示すように構成することによって、フレーム部材10の底部11に形成する支持部14を省くこともできる。
【0048】
図21及び図22において、このスピーカ装置では、磁気回路アッセンブリ20は、基本的には、前述した実施の形態と同様に、カップ状(凹形状)の第1ヨーク21、磁石22及び第2ヨーク23にて構成されている。そして、第1ヨーク21もまた、前述した実施の形態と同様に、プレート部211と周壁部215とによって構成されるが、その周壁部215が前述した実施の形態における周壁部212と構造が異なる。具体的には、周壁部215の高さが、前述した実施の形態における周壁部212の高さより大きい。周壁部215は、第2ヨーク23の磁石22と逆側の面の位置よりも、更に、前述した実施の形態における支持部14の高さに相当する分だけ突出している。そして、この第1ヨーク21の周壁部215の前記突出した部分215a(図22参照)が、本来磁気回路として機能する部分(第2ヨーク23までの部分)を固定支持する支持部材として機能する。
【0049】
第1ヨーク21の周壁部215の周端面が直接フレーム部材10の底部11に接着剤によって接着固定される。これにより、第2ヨーク23とフレーム部材10の底部11との間に、ボイスコイルユニット31の移動を許容する空間(前述した実施の形態における支持部14の高さに相当)が形成される。図21、22には明確には示されていないが、周壁部215には、スリット216aを含む3つのスリットが均等な間隔にて形成されている。そして、前述した実施の形態と同様に、振動板40の内側端部が固定される連結ボビン32とボイスコイルユニット31とを接合する3つの接合片33a(33b、33c)が前記3つのスリット(スリット216aを含む)に配置される。これにより、ボイスコイルユニット31の進退動に伴って連結ボビン32が、図18乃至図20に示す範囲で進退動できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上、説明したように、本発明に係るスピーカ装置は、より軽量で薄型なものとなり、磁気回路にて発生する磁界とボイスコイルを流れる音声信号電流との相互作用によってボイスコイルに連結される振動板を振動させて音を出力するスピーカ装置として有用である。
【符号の説明】
【0051】
10 フレーム部材
11 底部
12 広がり部
13 外縁部
14 支持部(支持部材)
15a、15b、15c スリット(空きスペース)
16 孔
20 磁気回路アッセンブリ
21 第1ヨーク
211 プレート部
212 周壁部
213a、213b、213c スリット(空きスペース)
22 磁石
23 第2ヨーク
30 ボイスコイルアッセンブリ
31 ボイスコイルユニット
32 連結ボビン(連結部材)
33a、33b、33c 接合片(接合部材)
40 振動板
41 外エッジ部
42 内エッジ部
43 ダンパー
50 ボトムキャップ(閉鎖部材)
51 閉鎖プレート部
52 嵌合部
53a、53b、53c スリット(空きスペース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部から外方に向けて立ち上がる形状のフレーム部材と、
プレート部及び該プレート部を囲む周壁部からなる凹形状の第1ヨーク、該第1ヨーク内に設けられた磁石、及び前記第1ヨークの前記プレート部とで前記磁石を挟むとともに前記周壁部との間に環状の磁気ギャップが形成されるように設けられた第2ヨークを備えた磁気回路と、
前記フレーム部材の前記底部に設けられ、前記磁気回路を、前記第1ヨークの前記周壁部の前記プレート部と逆側の周端部にて固定支持する支持部材と、
前記磁気回路の前記磁気ギャップ内に配置されるボイスコイルユニットと、
前記第1ヨークの前記周壁部の外側に配置される連結部材と、
外周端部が前記フレーム部材に連結されるとともに内周端部が前記連結部材に連結される振動板と、を有し、
前記ボイスコイルユニットと前記連結部材とは、前記第1ヨークの前記周壁部を横切る方向に延びる接合部材により接合され、
前記第1ヨークの前記周壁部及び該周壁部を固定支持する前記支持部材のそれぞれの、前記ボイスコイルユニットの進退動に伴う当該ボイスコイルユニットと前記連結部とを接合する前記接合部材の移動領域を含む所定部位に空きスペースが形成されたスピーカ装置。
【請求項2】
前記ボイスコイルユニットと前記連結部材とを接合する前記接合部材は、前記第1ヨークの前記周壁部を横切る方向に延びる複数の接合片を含む請求項1記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記第1ヨークの前記周壁部及び前記支持部材のそれぞれには、前記複数の接合片のそれぞれが通過するスリットが前記空きスペースとして形成されている請求項2記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記ボイスコイルユニットと前記連結部材とは、前記第1ヨークの前記周壁部を挟んで正対している請求項1乃至3のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記フレーム部材の底部を切り起こして形成された請求項1乃至4のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記フレーム部材の前記底部及び前記支持部材を貫通する孔が形成された請求項1乃至5のいずれかに記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記孔を前記フレーム部材の前記底部の外側から閉ざす孔閉鎖部材を有する請求項6記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記孔閉鎖部材は、閉鎖板部と前記孔に嵌合する嵌合部とを有し、
前記嵌合部には、前記支持部材に形成された空きスペースに合致する空きスペースが形成された請求項7記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記第1ヨークに接合して、前記振動板の内側所定部位を弾性支持する内エッジ部と、
前記フレーム部材の外縁部に接合して、前記振動板の前記外周端部を弾性支持する外エッジ部とを有する請求項1乃至8のいずれかに記載のスピーカ装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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