説明

スピーカ

【課題】所望の形状に簡単に加工できるプラスチックマグネットの特性を生かして、量産性の高い、小型・薄型のスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1は、磁気回路3と、ボイスコイル21に振動板22を付けた振動系4と、これら磁気回路3と振動系4を支えるフレーム2を備え、磁気ギャップ17にボイスコイル21を配置してなり、磁気回路3を、断面T字形のプラスチックマグネット16と、プラスチックマグネット16の底部側および周囲に連続して設けるヨーク10で構成し、従来3ピース構造であった磁気回路の部品点数の削減によって、小型・薄型のスピーカの量産性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などに使用する小型・薄型のスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気回路にプラスチックマグネットを使用したスピーカ(ダイナミック型スピーカ)は、たとえば特許文献1などで知られている。しかし、磁気回路の部品構成及び組み立てについてみれば、一般(フェライト,アルニコ,希土類など)の金属系マグネットを使用したスピーカと同じであった。磁気回路はマグネットの種類にかかわらず、マグネットとヨークおよびポールピースの3部品を接着して組み立てられていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−32589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスピーカでは磁気回路の組み立てに使用する接着剤の影響が非常に大きく量産性を高めにくいという課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、所望の形状に簡単に加工できるプラスチックマグネットの特性を生かして、量産性の高い、小型・薄型のスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明は、磁気回路と、ボイスコイルに振動板を付けた振動系と、これら磁気回路と振動系を支えるフレームを備え、磁気ギャップに前記ボイスコイルを配置してなるスピーカであって、前記磁気回路を、断面T字形のプラスチックマグネットと、前記プラスチックマグネットの底部側および周囲に連続して設けるヨークで構成するもので、ポールピースの役目をマグネット自体に持たせ、3ピース構造の従来磁気回路に比べて省スペースに、より大きな体積のマグネットを使用し、ボイスコイルの駆動力を高めながら、従来3ピース構造であった磁気回路の2ピース構造化、すなわち、部品点数を削減するものである。
【0007】
本発明では、前記プラスチックマグネットの天面を凹面に形成し、振動板の中央部を逆ドーム状に形成することが好ましい。
【0008】
本発明では、前記プラスチックマグネットの底部側にあるヨークよりバーリング加工で立ち上げた筒部と、前記筒部を前記プラスチックマグネットの中心部に貫通させる貫通孔を設け、前記プラスチックマグネットを、前記筒部の先端部をつぶし加工することによって前記ヨークと結合することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁気回路を、断面T字形のプラスチックマグネットと、前記プラスチックマグネットの底部側および周囲に連続して設けるヨークで構成するので、従来3ピース構造であった磁気回路の部品点数の削減によって、小型・薄型のスピーカの量産性を高めることができる。
【0010】
本発明では、前記プラスチックマグネットの天面を凹面に形成し、振動板の中央部を逆ドーム状に形成するので、振動系の十分な振幅を確保し、音響性能を劣化させることなく、小型・薄型のスピーカのさらなる薄型化を実現することができる。
【0011】
本発明では、前記プラスチックマグネットの底部側にあるヨークよりバーリング加工で立ち上げた筒部と、前記筒部を前記プラスチックマグネットの中心部に貫通させる貫通孔を設け、前記プラスチックマグネットを、前記筒部の先端部をつぶし加工することによって前記ヨークと結合するので、磁気回路の組み立てに接着剤を使用しなくても済み、小型・薄型のスピーカの量産性をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態にかかるスピーカの断面図、図2は本発明の実施の形態にかかるスピーカの振動板を透明化した平面図である。
【0013】
図1,2に示すスピーカ1は、磁性材料からなるヨーク一体型のフレーム2と、磁気回路3と、振動系4で構成されている。
【0014】
フレーム2は、低背な有底円筒状に形成され、円形の底板5と、底板5の外周縁から立ち上げる外壁6を有している。外壁6には、水平な段差面7を設け、段差面7によって外壁6の上部を下部より大径に形成している。
【0015】
底板5からは、外壁6の下部と所定の隙間を設けて相対する内壁であるヨーク側壁8が立ち上げられ、ヨーク側壁8と、ヨーク側壁8の内側にある底板5の中央部でなる円形のヨーク底板9で、フレーム2より低背な有底円筒状のヨーク10を形成している。
【0016】
ヨーク側壁8の左右2箇所には、ヨーク側壁8を下端まで切り欠く一対のリード線引出口11を設け、リード線引出位置の底部側にある底板5にリード線フォーミングジグ挿入用の一対の円孔12を設けるとともに、外壁6とヨーク側壁8の間にある底板5の外側部であって、リード線引出位置以外の底部側にある底板5に略半円弧状の一対の背面音孔13を設けている。図2の上側の背面音孔13は底板5から外壁6の下部と段差面7を連続的に開口している。
【0017】
図2の上側の背面音孔13で開口された段差面7の裏側には、内周縁をヨーク側壁8に当接させる略半円弧状の絶縁性の端子板14が固定され、端子板14を介してスピーカ1の背面側に一対の外部接続端子(図示省略)を取付けるとともに、外部接続端子と導通のある一対のリード線接触パッド部15を端子板14の両端部表面に露出形成し、図2の上側の背面音孔13を介してリード線接触パッド部15をフレーム2内に露出させている。
【0018】
磁気回路3は、プラスチックマグネット16と、ヨーク10で構成されている。
【0019】
プラスチックマグネット16は、ヨーク側壁8と略同じ高さで、ヨーク側壁8の内径よりやや小径の外径を有する円柱状に成型され、ヨーク底板9の上に同心状に配置され、ヨーク側壁8の上部内周面に磁気ギャップ17を隔ててプラスチックマグネット16の上部外周面を対向させている。
【0020】
ここで、所望の形状に簡単に加工できるというプラスチックマグネット16の特性を生かし、プラスチックマグネット16は、上部が下部より大径になるように、断面T字形に成型されている。これによりプラスチックマグネット16の上部を下部よりもヨーク側壁8に対して接近させ、磁気ギャップ17に磁束を集中させるようにしている。すなわち、プラスチックマグネット16の上部がポールピースの役目を果たし、3ピース構造の従来磁気回路に比べて省スペースに、より大きな体積のマグネットを使用し、後述するボイスコイル21の駆動力を高めながら、従来3ピース構造であった磁気回路の2ピース構造化、すなわち、部品点数を削減するものである。
【0021】
また、プラスチックマグネット16の天面(上面)は、スピーカ1のさらなる薄型化を実現するため平坦面ではなく逆ドーム状の凹面18に形成している。
【0022】
さらに、プラスチックマグネット16とヨーク10の結合を接着剤を用いずに行うため、プラスチックマグネット16の中心部に上下貫通の円形の貫通孔19を設ける一方、ヨーク底板9の中心部にバーリング加工で円筒状の筒部20を立ち上げ、プラスチックマグネット16をヨーク10に装着する際、筒部20を下側から貫通孔19に嵌合させて、筒部20の先端部をプラスチックマグネット16の凹面18の中心部(最深部)で上方に突出させ、筒部20の先端部をつぶし加工することによってプラスチックマグネット16とヨーク10を結合一体化している。
【0023】
振動系4は、金属やプラスチック製のフィルムでなる円筒状のボイスコイルボビンに導線を巻き付けて形成したボイスコイル21と、金属やプラスチック製のフィルムでなり、ボイスコイル21の上部に同心状に貼り付けた円形の振動板22で構成されている。
【0024】
ここで、振動板22は、スピーカ1のさらなる薄型化を実現するためボイスコイル21の貼り付け位置より内側の中央部を上方に膨らむドーム状ではなく下方に膨らむ逆ドーム状に形成している。
【0025】
そして、振動板22の逆ドーム部23の周囲にある円環状のエッジ部24の外周縁部裏面を断面L字形の振動板リング25を介してフレーム2の外側部にある外壁6の段差面7に接着固定し、ボイスコイル21を磁気回路3の磁気ギャップ17内に上下動自在に配置している。
【0026】
ボイスコイル21の巻き始め端と巻き終わり端から引き出すリード線26は、それぞれ、リード線引出口11からヨーク10の外側に引き出され、フレーム2の下側から円孔12を通してリード線引出位置に挿入する丸棒状のフォーミングジグに引っ掛けられて略U字状に曲げられ(フォーミング)、接続対象のリード線接触パッド部15に導かれ、リード線26の先端部がスポット溶接で接続対象のリード線接触パッド部15に接続されている。
【0027】
上記のように構成されたスピーカ1は、外部回路から一対の外部接続端子を通じてボイスコイル21に音声信号が入力されると、磁気回路3に生じている磁界とボイスコイル21に流れる電流との相互作用で、ボイスコイル21が上下に振動し、それに連動して上下に振動する振動板22で回りの空気を振動させて音を出す。
【0028】
この際、磁気回路3を、断面T字形のプラスチックマグネット16と、プラスチックマグネット16の底部側および周囲に連続して設けるヨーク10で構成するので、従来3ピース構造であった磁気回路の部品点数の削減によって、小型・薄型のスピーカの量産性を高めることができる。
【0029】
また、プラスチックマグネット16の天面を凹面18に形成し、振動板22の中央部を逆ドーム状に形成するので、振動系4の十分な振幅を確保し、音響性能を劣化させることなく、小型・薄型のスピーカのさらなる薄型化を実現することができる。
【0030】
さらに、プラスチックマグネット16の底部側にあるヨーク10よりバーリング加工で立ち上げた筒部20と、筒部20をプラスチックマグネット16の中心部に貫通させる貫通孔19を設け、プラスチックマグネット16を、筒部20の先端部をつぶし加工することによってヨーク10と結合するので、磁気回路3の組み立てに接着剤を使用しなくても済み、小型・薄型のスピーカの量産性をさらに高めることができる。
【0031】
なお、本実施の形態では丸型のスピーカ1で本発明の一実施の形態を説明したが、角型のスピーカでもよい。本発明は本実施の形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるスピーカの断面図
【図2】本発明の一実施の形態にかかるスピーカの振動板を透明化した状態の平面図
【符号の説明】
【0033】
1 スピーカ
2 フレーム
3 磁気回路
4 振動系
10 ヨーク
16 プラスチックマグネット
17 磁気ギャップ
18 凹面
19 貫通孔
20 筒部
21 ボイスコイル
22 振動板
23 逆ドーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路と、ボイスコイルに振動板を付けた振動系と、これら磁気回路と振動系を支えるフレームを備え、磁気ギャップに前記ボイスコイルを配置してなるスピーカであって、前記磁気回路を、断面T字形のプラスチックマグネットと、前記プラスチックマグネットの底部側および周囲に連続して設けるヨークで構成するスピーカ。
【請求項2】
前記プラスチックマグネットの天面を凹面に形成し、前記振動板の中央部を逆ドーム状に形成する請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
前記プラスチックマグネットの底部側にある前記ヨークよりバーリング加工で立ち上げた筒部と、前記筒部を前記プラスチックマグネットの中心部に貫通させる貫通孔を設け、前記プラスチックマグネットを、前記筒部の先端部をつぶし加工することによって前記ヨークと結合する請求項2記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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