説明

スピーカ

【課題】部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化および薄型化が可能なスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカ1は、細長形状の振動板2と、振動板2の周囲を取り囲むように配置される細長で環状のエッジ3と、振動板2を振動させるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5と、フレーム6と、振動板2よりも後方側でフレーム6に接合される磁気回路7と、振動板2の裏面に接合される結合部材8とを備えている。結合部材8は、振動板接合部21、ボビン結合部22、中心保持部23および枠体部24からなる複数の部材で構成されるため、振動板2の形状が変わった場合には、それに併せて振動板接合部21の形状のみを変えればよく、その他の部材を共通化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカは家庭用音響機器、車載用音響機器だけでなく、パーソナルコンピュータ、携帯電話、ゲーム機やさまざまな電子機器に広く使用されている。電子機器は軽薄短小化が進んでおり、スピーカに対しても、より小型化、薄型化および高性能化が求められている。高性能化としては、音質が優れている他に、高耐入力が求められている。
【0003】
電子機器は、スピーカの設置スペースが限られていることから、細長形状でありながら、高耐入力であることが要求される。細長形状のスピーカは、短径寸法が限られるため、ボイスコイル径を大きく出来ず、耐入力に対し不利である。スピーカの短径寸法を変えずにボイスコイル口径を大きくすると、その分エッジ幅が狭くなり、振動板の振幅が制限され、結果として耐入力を高くできない。また、エッジ幅が狭くなると、最低共振周波数も上がってしまい、低域の再生能力が劣ってしまう。
【0004】
図16は従来の細長形状のスピーカ121の断面図であり、スピーカ121の短径側の断面構造を左側に、長径側の断面構造を右側に示している。図16のスピーカ121は、フレーム122と、フレーム122に結合された磁気回路123の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイル124と、外周部がエッジ125を介してフレーム122に固定されてボイスコイル124とともに上下方向に振動する振動板126と、ボイスコイル124に内周部が固定されフレーム122に外周部が固定されたダンパー127と、ボイスコイル124の前方を覆うセンターキャップ128とを備えている。
【0005】
図16のスピーカ121において、高耐入力にするためにボイスコイル124の口径を大きくすると、短径側のエッジ125の幅がより狭くなり、最低共振周波数が上がってしまい、低域の再生能力が劣化してしまう。このような問題を解決する一例として特許文献1がある。
【0006】
図17は特許文献1に記載された細長形状のスピーカ231の構造を示す図である。図17(a)はスピーカ231の断面図、図17(b)はスピーカ231の要部の斜視図である。図17(a)では、図16と同様に、スピーカ231の短径側の断面構造を左側に、長径側の断面構造を右側に示している。
【0007】
図17のスピーカ231のボイスコイル232は、短径側において、エッジ233の内周よりも外側に配置されており、エッジ233とボイスコイル232が接触しないように、ボイスコイル232の上端部の一部235を切り欠いている。このため、短径側のエッジ233の幅を狭めずにボイスコイル232の口径を大きくすることができ、高耐入力が確保できる。
【0008】
また、上記問題を解決する他の一例として特許文献2がある。図18は特許文献2に記載されたスピーカ341の断面図である。図18のスピーカ341は、振動板の中央ドーム342の径よりもボイスコイルボビン343の径を大きくして、ボイスコイルボビン343と振動板の中央ドーム342との間に拡張部材344を配置し、この拡張部材344に振動板の外周ドーム345の内周部を接合している。
【0009】
図18のスピーカ341は、拡張部材344を設けることで、ボイスコイルボビン343の口径を大きくしても、振動板の外周ドーム345の幅を狭めなくて済み、耐入力を高くできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3956485号公報
【特許文献2】特開2006−311156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1では、ボイスコイル232の上端部を切り欠くための加工処理が必要となり、また、スピーカ231の組立時にも、ボイスコイル232に方向性があるために作業性が悪くなる。これらは、部品コストと製造コストの上昇の要因となりうる。
【0012】
また、特許文献2では、拡張部材344の形状が略細長のボイスコイル形状であり、かつ平板のリング状であるため、通常の丸形状のボイスコイルを使用する細長形状のスピーカには適応できないという問題がある。また、特許文献2は、ダンパーのないマイクロスピーカであり、低域再生能力が劣るという問題がある。
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化および薄型化が可能なスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、振動板と、
前記振動板の外周側から後方にかけて配置されるフレームと、
内周部が前記振動板に接合され、外周部が前記フレームに接合されるエッジと、
前記振動板よりも後方に配置されて、前記フレームに接合される磁気回路と、
前記振動板を振動させるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回され、前記磁気回路の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルと、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビン、前記フレームおよび前記磁気回路に接合される結合部材を備え、
前記結合部材は、
前記振動板の裏面に接合される振動板接合部と、
前面側に前記振動板接合部が接合されるとともに、底面側に前記ボイスコイルボビンが接合されるボビン結合部と、
前記ボビン結合部の中心位置を位置決めする中心保持部と、
前記中心保持部に接合されるとともに、前記フレームおよび前記磁気回路に接合される枠体部と、を有することを特徴とするスピーカを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、部品コストや製造コストを上昇させることなく、耐入力性および低音再生能力に優れて小型化および薄型化が可能なスピーカを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るスピーカ1の分解斜視図。
【図2】結合部材8の分解斜視図。
【図3】スピーカ1をその前方からボイスコイルボビンを透かして見た平面図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】(a)は振動板2を前方から見た平面図、(b)は図5(a)のB−B線断面図。
【図6】凹部のない振動板20aの一例を示しており、(a)は振動板20aの平面図、(b)は振動板20aの長手方向b−b線断面図、(c)は振動板20aの短手方向c−c線断面図。
【図7】前面側が緩やかな凹面形状の振動板20aを備えたスピーカ1の短径方向断面図。
【図8】スピーカ1に用いられる結合部材8の分解斜視図。
【図9】振動板2の裏面形状が平面形状の場合のスピーカ1の断面図。
【図10】スピーカ1に用いられる結合部材8の分解斜視図。
【図11】鍔部21aを有する振動板接合部21の部分拡大鳥瞰図。
【図12】中心保持部23の第1の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図。
【図13】中心保持部23の第2の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図。
【図14】振動板接合部21とボビン結合部22を一体化した振動伝達部25を有する結合部材8を備えたスピーカ1の分解斜視図。
【図15】図14のスピーカ1の変形例を示す分解斜視図。
【図16】従来の細長形状のスピーカ121の断面図。
【図17】特許文献1に記載された細長形状のスピーカ231の構造を示す図。
【図18】特許文献2に記載されたスピーカ341の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態に係るスピーカ1の分解斜視図である。図1のスピーカ1は、細長形状の振動板2と、振動板2の周囲を取り囲むように配置される細長で環状のエッジ3と、振動板2を振動させるボイスコイルボビン4と、ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5と、フレーム6と、振動板2よりも後方側でフレーム6に接合される磁気回路7と、振動板2の裏面に接合される結合部材8とを備えている。
エッジ3の内周部は振動板2に接合され、エッジ3の外周部はフレーム6に接合されている。ボイスコイルボビン4の外周面に沿って巻回されるボイスコイル5は磁気回路7の磁気ギャップ中に支持されている。
【0019】
ボイスコイルボビン4および振動板2と結合部材8とを接合する際には、例えばボイスコイルボビン4および振動板2と結合部材8との少なくとも一方に接着部材を付着させて、両者を接合すればよい。なお、具体的な接合形態は問わない。
【0020】
図1の磁気回路7は、フレーム6の内周部に接合されるポットヨーク11と、ポットヨーク11の内側に配置されるマグネット12と、マグネット12の前面に配置されるポールピース13とを有する。この磁気回路7は内磁型であるが、外磁型の磁気回路7を用いてもよい。
【0021】
本実施形態の技術的特徴の一つは、結合部材8の構造である。図2は結合部材8の分解斜視図である。図2の結合部材8は、振動板接合部21と、ボビン結合部22と、中心保持部23と、枠体部24とを有する。振動板接合部21は、振動板2の裏面に接合される。ボビン結合部22の前面側には振動板接合部21が接合され、ボビン結合部22の底面側にはボイスコイルボビン4が接合される。中心保持部23は、ボビン結合部22の中心位置すなわちボイスコイルボビン4の中心位置を位置決めする。枠体部24は、中心保持部23に接合されるとともに、フレーム6および磁気回路7に接合される。
【0022】
図3はスピーカ1をその前方からボイスコイルボビンを透かして見た平面図、図4は図3のA−A線断面図である。また図5(a)は振動板2を前方から見た平面図、図5(b)は図5(a)のB−B線断面図である。
【0023】
図1に示すように、ボイスコイルボビン4は振動板2の裏面側に取り付けられるため、図3ではボイスコイルボビン4の位置を破線で示している。図5に示すように、振動板2には、その長手方向に沿って3つの凹部2aが形成されている。また、振動板2の外周縁部には、後方に伸びるリブ2cが形成されている。振動板2の隣接する2個の凹部2aの側面部と、これら凹部2aの間のリブ2cの内周面には、振動板接合部21が接合される。
【0024】
図4の断面図に示すように、振動板接合部21の前面側は、振動板2の裏面形状に合わせて緩やかな曲線状になっており、振動板2の裏面側との接触面積を広げている。また、振動板接合部21の裏面側中央部には突起部21aが設けられており、この突起部21aはボビン結合部22の中央部に設けられた孔部に嵌合される。これにより、振動板接合部21とボビン結合部22が互いに位置決めされる。
【0025】
ボビン結合部22の裏面側の内径は、ボイスコイルボビン4の外径と略等しくなっており、ボビン結合部22の裏面側にボイスコイルボビン4の前端部が接合される。上述したように、中心保持部23により、ボイスコイルボビン4の中心位置が位置決めされるため、ボイスコイルボビン4をボビン結合部22の裏面側に接合することで、ボイスコイルボビン4とボビン結合部22を正しく位置決めすることができる。ボビン結合部22は、中心保持部23により、結合部材8の中心位置に位置決めされている。よって、ボビン結合部22にボイスコイルボビン4を挿入することで、ボイスコイルボビン4を結合部材8の中心位置に位置決めすることができる。
【0026】
図4に示すように、中心保持部23は枠体部24に接合され、この枠体部24は磁気回路7のポットヨーク11とフレーム6に接合されている。これにより、結合部材8は、フレーム6と磁気回路7に堅固に接合される。
【0027】
結合部材8の材料は特に問わないが、結合部材8を構成する部材のうち、振動板接合部21とボビン結合部22は、中心保持部23よりもヤング率の大きい材料を用いて形成される。これは、振動板接合部21とボビン結合部22は、ボイスコイル5の振動を振動板2に伝達する役割を果たすため、振動板接合部21とボビン結合部22の材料が硬いほど、ボイスコイル5の振動を損失なく振動板2に伝達できるためである。これに対して、中心保持部23は、ダンパーとして機能するため、弾力性のある材料にした方が最低共振周波数を低くでき、低域再生能力を高める上で望ましい。
【0028】
振動板2の凹部2aとリブ2cは、一体成形された一つの部材で構成されている。この部材の材料としては例えば紙や樹脂が用いられるが、材料については特に問わない。
【0029】
振動板2は、図4に示すように、短手方向では緩やかな曲面形状になっており、短手方向の中心線が最も前方に張り出している。
【0030】
振動板2の前面外周側にはエッジ3が接合されている。エッジ3の内周部3aは、振動板2の外周縁部よりも内側で振動板2に接合されている。また、図3に示すように、振動板接合部21に接合されたボイスコイルボビン4はエッジ3の内径よりも大きくなっている。また、ボイスコイルボビン4の外周縁部はエッジ3とは非接触である。
【0031】
したがって、本実施形態によれば、ボイスコイルボビン4の外径をより大きくすることができる。すなわち、本実施形態の場合、ボイスコイルボビン4の外径を大きくするためには、それに合わせてボビン結合部22の外径を大きくする必要があるが、ボビン結合部22の外径が大きくなっても、エッジ3への干渉はなく、ボビン結合部22の外径が大きくなったことによりエッジ3の幅が狭まるおそれはない。したがって、従来問題であった、ボイスコイルボビン4の口径を大型化した影響で、エッジ3の幅が狭まって最低共振周波数が上がるという不具合が生じなくなる。
【0032】
このように、本実施形態によれば、ボイスコイルボビン4の外径を大きくしても、エッジ3の幅に影響を及ぼすことがない。したがって、ボイスコイルボビン4の口径の大型化に容易に対応できる。ボイスコイルボビン4の口径が大きいほど、入力耐圧が高くなるため、小型かつ薄型のスピーカ1でありながら高出力化が可能となる。
【0033】
なお、上述したように、本実施形態によれば、ボイスコイルボビン4の口径を振動板2の短径よりも大きくできるが、かといって、必ずボイスコイルボビン4の口径が振動板2の短径よりも大きくなければならないというわけではない。本実施形態は、ボイスコイルボビン4の口径が振動板2の短径より小さいスピーカ1にも問題なく適用できる。
【0034】
図1〜図5では、振動板2に3つの凹部2aを形成し、これら3つの凹部2aで2つの結合部材8を固定する例を説明したが、ボイスコイルボビン4が1個だけの場合は振動板2に2つの凹部2aを設ければよい。すなわち、本実施形態の振動板2には少なくとも2つの凹部2aが形成される。隣接する2つの凹部2aの間隔は振動板接合部21の外径に合わせて設定する必要がある。
【0035】
また、本実施形態は、ボイスコイルボビン4の数が3個以上の場合にも適用可能である。この場合、ボイスコイルボビン4の数に応じた数の凹部2aを振動板2に形成すればよい。また、ボイスコイルボビン4ごとに結合部材8を設ける必要がある。
【0036】
上述した実施形態では、3つの凹部2aが形成された振動板2を使用する例を説明したが、振動板2に凹部は必ずしも必須ではない。
【0037】
例えば図6は凹部のない振動板20aの一例を示しており、図6(a)は振動板20aの平面図、図6(b)は振動板20aの長手方向b−b線断面図、図6(c)は振動板20aの短手方向c−c線断面図である。
【0038】
図6の振動板20aの前面は緩やかな凸面形状になっており、凹部は存在しない。振動板20aの裏面側も前方から見て凸面形状になっており、この点では図3の振動板2と同様である。したがって、図3の振動板2と図6の振動板2の裏面側の凸面形状がまったく同じであれば、図2の振動板接合部21をそのまま適用可能である。
【0039】
振動板2の前面側の形状は凸面形状以外の形状でもよく、例えば凹面形状でもよい。図7は前面側が緩やかな凹面形状の振動板20aを備えたスピーカ1の短径方向断面図、図8はこのスピーカ1に用いられる結合部材8の分解斜視図である。
【0040】
図8の結合部材8は、図2の結合部材8と同様に、振動板接合部21と、ボビン結合部22と、中心保持部23と、枠体部24とを有するが、振動板接合部21の前面側の形状が図2の振動板接合部21と異なっている。図7の振動板20aの裏面側は、前方から見て凹面形状であり、曲面形状が図3の振動板2とは逆である。図8の振動板接合部21の前面側は、振動板20aの裏面側の曲面形状に合致した形状となっており、この形状は図2の振動板接合部21とは曲面形状が逆である。
【0041】
一方、図8の振動板接合部21の底面側の形状は、図2の振動板接合部21と同じであり、振動板接合部21より後方側に配置されるボビン結合部22、中心保持部23および枠体部24をすべて図2のものと共通化できる。
【0042】
このように、振動板2、20aの形状が変化しても、結合部材8中の振動板接合部21の前面側を振動板2、20aの裏面形状に合わせた形状にしさえすれば、その他の部材をすべて共通化できるため、種々のサイズおよび形状の振動板2に、それほどコストをかけずに対応できる。
【0043】
振動板2、20aの形状は、上述したものに限定されず、種々の形状を取り得る。例えば、図9は振動板20bの裏面形状が平面形状の場合のスピーカ1の断面図、図10はこのスピーカ1に用いられる結合部材8の分解斜視図である。この場合も、振動板接合部21の前面側の形状を平面状にする必要があるものの、振動板接合部21の底面側は図2の振動板接合部21と同じでよく、したがって、振動板接合部21の後方側に配置されるボビン結合部22、中心保持部23および枠体部24をすべて共通化できる。
【0044】
このように、振動板2、20a、20bはスピーカ1の性能に合わせて種々の形状にすることができる。一般には、低域重視の場合は図7や図9のような凹面か平板状の振動板20a、20bが望ましく、中高域重視の場合は図4のような凸面状の振動板2が望ましい。
【0045】
上述した振動板接合部21は、振動板2、20a、20bの裏面側に接合されるが、振動板接合部21の前面側に鍔部21aを設けてもよい。図11は鍔部21aを有する振動板接合部21の部分拡大鳥瞰図である。鍔部21aを設けることで、振動板2、20a、20bとの接触面積を増やすことができ、振動板接合部21と振動板2、20a、20bとの接合力を増大できる。なお、鍔部21aは、振動板2の長径方向と短径方向の両方に設ける必要はなく、どちらか一方のみに設けてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態ではボイスコイルボビン4とボイスコイル5は円形形状にしたが、角部が丸まった矩形状でもよいし、トラック形状(平行する二本の直線の両端にそれぞれ円弧を接続した形状)でもよいし、その他の形状でもよく、具体的な形状は問わない。
【0047】
中心保持部23の形状は、必ずしも図2等に示したものに限定されない。例えば、図12は中心保持部23の第1の変形例を示す図であり、図12(a)は平面図、図12(b)は斜視図である。
【0048】
図2に示した中心保持部23は、ボビン結合部22から枠体部24まで伸びる4本の脚部23aの幅が略等しいが、図12の中心保持部23はこれら4本の脚部23aの幅が一定でないことを特徴とする。4本の脚部23aの幅を場所によって変えることで、最低共振周波数を調整できる。より具体的には、最低共振周波数をより低くすることができる。したがって、図12の中心保持部23は、低音域の再生能力を向上させるのに望ましい形状である。
【0049】
最低共振周波数を単に下げるためには例えば、4本の脚部23aの幅を一様に狭くすればよいが、単に幅を狭くしただけだと中心保持部23の強度が弱くなり、高出力を出せなくなる。そこで、最低共振周波数を低くしつつ高出力化も維持できるように、4本の脚部23aの幅を部分的に調整するようにしたのが図12の中心保持部23である。このような目的から鑑みると、中心保持部23の形状は、必ずしも図12に示したものに限定されない。中心保持部23の材料や厚み、4本の脚部23aの長さや幅などを総合的に考慮に入れて、4本の脚部23aの形状を調整すればよい。
【0050】
一方、図13は中心保持部23の第2の変形例を示す図であり、図13(a)は平面図、図13(b)は斜視図である。図13の中心保持部23は、ボビン結合部22を中央に載置する平板部23bと、この平板部23bから外側に伸びて枠体部24に接合される4本の脚部23cとを有する。図13の脚部23cは、図12の脚部23aよりも長さが短くなっており、かつ、平板部23bはボビン結合部22を堅固に固定する。したがって、図13の中心保持部23は、最低共振周波数を高くしたいときに望ましい形状であり、この中心保持部23を採用することで、中高音域の再生能力の向上が図れる。
【0051】
上述した図12と図13では、中心保持部23の形状を変更することで、音域の調整を行う例を説明したが、このような形状の変更に代えて、あるいは形状の変更とともに、中心保持部23の材料を種々変更することにより、音域の調整を行ってもよい。
【0052】
このように、本実施形態では、振動板2の裏面に接合される結合部材8を、振動板接合部21、ボビン結合部22、中心保持部23および枠体部24からなる複数の部材で構成するため、振動板2の形状が変わった場合には、それに併せて振動板接合部21の形状のみを変えればよく、その他の部材を共通化できることから、種々の形状の振動板2への対応が容易となり、部品コスト削減が図れる。
【0053】
また、結合部材8を複数の部材で構成することで、例えば最低共振周波数を調整したい場合には、一部の部材(例えば中心保持部23)の形状のみを変えればよく、設計変更が容易になり、設計変更に伴うコストも削減できる。
【0054】
さらに、結合部材8は振動板2の短径方向の径に依存せずに振動板2の裏面に接合されるため、振動板2の短径方向の径よりも大きな口径のボイスコイルボビン4を結合部材8に取付けることができ、高耐入力化が図れる。また、振動板2に接合されるエッジ3の幅にも制限はないため、エッジ3を必要以上に狭めなくて済み、最低共振周波数を低く維持でき、低音域の再生能力向上が図れる。
【0055】
また、結合部材8を構成する各部材は小型化が可能であり、各部材を組立てて結合部材8を作製した後に、振動板2への接合を行うため、スピーカ1の組立工程を簡略化でき、音響特性に優れた小型かつ薄型のスピーカ1を実現できる。
【0056】
さらには、本実施形態の結合部材8は、一列に複数個並べて配置することが可能なため、細長形状の振動板2を用いて、複数のウーハーまたはツイータが横に並んだスピーカ1を容易に作製できる。
【0057】
図1等では、結合部材8が振動板接合部21、ボビン結合部22、中心保持部23および枠体部24からなる複数の部材で構成される例を示したが、これら各部材の一部を一体化してもよい。例えば、図14は振動板接合部21とボビン結合部22を一体化した振動伝達部25を有する結合部材8を備えたスピーカ1aの分解斜視図である。
【0058】
図14の振動伝達部25は、その中心部は空洞であり、底面側から挿入されるボイスコイルボビン4は前面側の枠に当接した状態で支持される。また、中心保持部23は、ボイスコイルボビン4を挿入できるように、ボイスコイルボビン4の外径に合わせた円形の枠を有する。
【0059】
図14の結合部材8は、振動伝達部25を新たに設けて、中心保持部23の中心部を空洞にしたことを除けば、図2の結合部材8と同様の構造を有する。また、図14の結合部材8以外のスピーカ1aの構成部品も図1のスピーカ1と同様である。
【0060】
図15は図14のスピーカ1aの変形例を示すスピーカ1bの分解斜視図である。複数の結合部材8を一列に長手方向に配置する際は、図1に示すように、結合部材8を構成する各部材をそれぞれ単純に横に並べてもよいし、あるいは、結合部材8を構成する一部の部材を、隣接する部材と一体化してもよい。例えば、図15のスピーカ1bでは、隣り合う中心保持部23同士を一体成形した構造体26と、隣り合う枠体部24同士を一体成形した構造体27とを有する例を示している。
【0061】
図15のように、結合部材8中の一部の部材を別の結合部材8と一体化することで、個々の結合部材8を別個に組立てる作業の手間が軽減できて、組立作業性がよくなる。
なお、複数の結合部材8同士で一体化する部材の種類は、図15に示したものに限定されない。例えば、振動伝達部25を一体化してもよい。
【0062】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1、1a、1b スピーカ
2、20a、20b 振動板
2a 凹部
2c リブ
3 エッジ
3a 内周部
4 ボイスコイルボビン
5 ボイスコイル
6 フレーム
7 磁気回路
8 結合部材
11 ポットヨーク
12 マグネット
13 ポールピース
21 振動板接合部
21a 鍔部
22 ボビン結合部
23 中心保持部
23a、23c 脚部
23b 平板部
24 枠体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
前記振動板の外周側から後方にかけて配置されるフレームと、
内周部が前記振動板に接合され、外周部が前記フレームに接合されるエッジと、
前記振動板よりも後方に配置されて、前記フレームに接合される磁気回路と、
前記振動板を振動させるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンの外周面に沿って巻回され、前記磁気回路の磁気ギャップ中に支持されるボイスコイルと、を備えたスピーカにおいて、
前記振動板の裏面に接合されるとともに、前記ボイスコイルボビン、前記フレームおよび前記磁気回路に接合される結合部材を備え、
前記結合部材は、
前記振動板の裏面に接合される振動板接合部と、
前面側に前記振動板接合部が接合されるとともに、底面側に前記ボイスコイルボビンが接合されるボビン結合部と、
前記ボビン結合部の中心位置を位置決めする中心保持部と、
前記中心保持部に接合されるとともに、前記フレームおよび前記磁気回路に接合される枠体部と、を有することを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記ボイスコイルボビンの外径は、前記振動板の短手方向の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記中心保持部は、中央に配置される前記ボビン結合部から外側に伸びて前記枠体部に接合される複数の脚部を有し、
前記複数の脚部それぞれの幅を調整することで、前記振動板の最低共振周波数を調整することを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記中心保持部は、
前記ボビン結合部が中央に載置される平板部と、
前記平板部の対向する両端部から外側に伸びて前記枠体部に接合される複数の脚部を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記振動板接合部および前記ボビン結合部を一体成形した振動伝達部を有し、
前記中心保持部は、前記振動伝達部の中心位置を位置決めすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項6】
前記振動板の裏面には、複数の前記結合部材が一列に配置され、
前記複数の結合部材中の複数の振動板接合部、複数のボビン結合部、複数の中心保持部、および複数の枠体部の少なくとも一つは、一体成形されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項7】
前記振動板結合部および前記ボビン結合部は、前記中心保持部よりもヤング率の大きい材料を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項8】
前記振動板は、
前記ボイスコイルの径と略等しい間隔を隔てて配置され、前記振動板の裏面側に形成される少なくとも2つの凹部と、
前記振動板の外周縁部に沿って裏面側に形成されるリブと、を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項9】
前記振動板は、細長形状状であり、
前記振動板接合部は、前記振動板の長手方向に沿って前記2つの凹部の側面部に接合されるとともに、前記振動板の短手方向に沿って前記リブの内周面に接合されることを特徴とする請求項8に記載のスピーカ。
【請求項10】
前記ボイスコイルボビンは円形形状であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のスピーカ。
【請求項11】
前記ボイスコイルボビンは角部が丸まった矩形状またはトラック形状であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−134640(P2012−134640A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283307(P2010−283307)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】