説明

スプリングブレーキアクチュエータ

【課題】ばね室に大気中の水分が入り込み難くすることができるスプリングブレーキアクチュエータを提供する。
【解決手段】内部に空間を有するハウジング22と、このハウジング22の内部空間をばね室46および圧力室45に区画するダイヤフラム28と、ばね室46の内部に配されてダイヤフラム28を圧力室側に付勢し、その付勢力を利用してブレーキ装置を作動させるコイルばね54とを備え、コイルばね54は、圧力室45へ圧力を供給することによって収縮可能であるとともに、ハウジング22に設けた開口部24cを通して外部からばね室内に挿入された操作部材100によっても収縮可能である、スプリングブレーキアクチュエータにおいて、開口部24cを密封するとばね室46の内部が密閉状態となるようにばね室46を形成し、開口部24cにばね室46の内部が大気と連通するための管路66を着脱自在に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮コイルばねの弾発力を利用してブレーキの作動を行うスプリングブレーキアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バス、トラック及びトレーラー等の大型車両においては、運転者のブレーキペダル操作によって制動する通常のブレーキに加えて、パーキングブレーキレバーの操作によって制動するパーキングブレーキを備えている。
この種のパーキングブレーキでは、上記パーキングブレーキレバーの操作により、ブレーキアクチュエータを作動し、このブレーキアクチュエータの作動により、ブレーキシューをドラムに当接させて制動するのが一般的である。上記ブレーキアクチュエータとしては、従来、スプリングブレーキアクチュエータが提案されている。
【0003】
このスプリングブレーキアクチュエータは、圧力室とばね室がダイヤフラムを介して隣接し、圧力室に流入又は流出する圧縮エアの圧力、及びばね室に設けられたコイルばねの弾発力のいずれかの力によってダイヤフラムが移動可能に構成され、このダイヤフラムと接続された操作ロッドが移動することにより、ブレーキが操作されるようになっている。詳細には、コイルばねの弾発力よりも圧縮エアの圧力による力の方が強い場合には、ダイヤフラムがコイルばね室側に移動して操作ロッドを後退させることにより、ブレーキが解除されるようになっている。一方、圧縮エアの圧力による力よりもコイルばねの弾発力の方が強い場合には、ダイヤフラムが圧力室側に移動して操作ロッドを突出させることにより、ブレーキが動作するようになっている。
【0004】
このスプリングブレーキアクチュエータは、ばね室内を大気と連通するためのバイパス管路を備えている。このバイパス管路は、ばね室内が負圧になることを防ぎ、ばね室内においてコイルばねの付勢力が妨げられることを防止する。
また、このばね室を形成するハウジングには、ブレーキ解除用ボルトをばね室内に挿入するための開口部が形成されている。このブレーキ解除用ボルトは、例えばメンテナンス時にコイルばねを手動で収縮させることでコイルばねによるブレーキを解除するためのものであり、ブレーキ解除時には前記開口部からばね室内に挿入されてコイルばねの一端を支えるばね座部材に係合される。この開口部は、普段はキャップで塞がれており、この開口部から水や粉塵がばね室内に入り込まないようになっている。また、キャップは、ハウジングの壁部に設けられたねじ穴にねじなどの締結部材を螺合させることにより取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−30555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の構成では、大気と連通可能なバイパス管路、ブレーキ解除用ボルト挿入用の開口部、キャップ取付用のねじ穴から、ばね室内に大気中の水分が入ることがある。この大気中の水分は、ばね室内に配置されたコイルばねと接触する。コイルばねには腐食防止用の塗装が施されてはいるが、コイルばねの伸縮、及び経年的な劣化などにより塗装が摩耗・剥離した場合、接触した大気中の水分でコイルばねが腐食するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、ばね室に大気中の水分が入り込み難くすることができるスプリングブレーキアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、内部に空間を有するハウジングと、このハウジングの内部空間をばね室および圧力室に区画するダイヤフラムと、前記ばね室の内部に配されて前記ダイヤフラムを圧力室側に付勢し、その付勢力を利用してブレーキ装置を作動させるコイルばねとを備え、前記コイルばねは、前記圧力室へ圧力を供給することによって収縮可能であるとともに、前記ハウジングに設けた開口部を通して外部から前記ばね室内に挿入された操作部材によっても収縮可能である、スプリングブレーキアクチュエータにおいて、前記開口部を密封すると前記ばね室の内部が密閉状態となるように前記ばね室を形成し、前記開口部に前記ばね室の内部が大気と連通するための管路を着脱自在に取り付けたことを特徴とする。
この構成によれば、ばね室内に大気中の水分が侵入可能な通路を、操作部材をばね室内に挿入するための開口部のみに限定することができる。
【0008】
この場合において、前記管路の取付部を弾性により変形可能なゴム部材で形成することもできる。
この構成によれば、メンテナンス時等においてブレーキを手動で解放する際に、管路を容易に着脱することができる。また、弾性によって開口部を容易に密閉させて、水分が侵入し難くすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ばね室内に水分が侵入する可能性を低くすることができ、コイルばねが大気中の水分で腐食し難くすることができる。また、開口部にバイパス管路を着脱自在に取り付けることにより、この開口部をバイパス管路の入出口と兼用することができる。そのため、ばね室内に大気中の水分が侵入可能な通路を開口部のみに限定することができると共に、ブレーキの手動解除及びばね室を大気と連通させるバイパス管路の取付けという従前の機能を発揮できるようにすることができる。
【0010】
さらに、前記管路の取付部を弾性により変形可能なゴム部材で形成することにより、メンテナンスにおいてブレーキを手動で解放する際に、管路を容易に着脱することができる。これにより、メンテナンス性を向上させることができる。また、弾性によって開口部を密閉し、水分が侵入し難くすることができる。さらには、従来におけるキャップ、及びキャップ取付用の締結部材等が不要となるため、スプリングブレーキアクチュエータの部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るスプリングブレーキアクチュエータ(ばね式ブレーキアクチュエータ)について、図1〜図4に基づいて説明する。なお、以下の説明で使用する上下、左右等の方向は、図1を基準にしたものである。
【0012】
ブレーキアクチュエータ20の具体的な構造を図1及び図2に示す。ここで、図1はブレーキアクチュエータ20によるパーキングブレーキ作動状態を示し、図2はブレーキアクチュエータ20によるパーキングブレーキ解除状態を示している。また、図3は、図1に示すばね室46の一部拡大図である。
【0013】
このブレーキアクチュエータ20は、運転者が踏み込むペダルの動きに連動してブレーキ操作を行うサービスブレーキアクチュエータ20Aと、前記ペダルの動きとは別にパーキングブレーキ操作を行うスプリングブレーキアクチュエータ20Bとがタンデムで合体されたものである。
【0014】
なお、本発明に係るスプリングブレーキアクチュエータ20Bは必ずしもパーキングブレーキ用に限らず、サービスブレーキ用にも使用可能なものである。また、スプリングブレーキアクチュエータとして独立して構成されたものにも適用が可能である。
【0015】
サービスブレーキアクチュエータ20Aのハウジングは、図1に示すように、シリンダ側ハウジング22と、このシリンダ側ハウジング22の左側に位置する中間ハウジング23とで左右2分割で構築されており、そのハウジング内には第1ダイヤフラム26が設けられている。
また、スプリングブレーキアクチュエータ20Bのハウジングは、図1に示すように、中間ハウジング23と、この中間ハウジング23のさらに左側に位置するばね収容ハウジング24とで左右2分割で構築されており、そのハウジング内には第2ダイヤフラム28が設けられている。
【0016】
まず、サービスブレーキアクチュエータ20Aについて図1を用いて説明する。
第1ダイヤフラム26は、シリンダ側ハウジング22及び中間ハウジング23で囲まれた内部空間を仕切っており、シリンダ側ハウジング22側(図1の右側)の大気室35と、中間ハウジング23側(図1の中央右側)の第1圧力室36とを区画している。
【0017】
この第1ダイヤフラム26の大気室35側の面には、図1に示すように、一端にフランジ37を備えた操作ロッド40がそのフランジ37を介して当接している。この操作ロッド40の他端には、ピン42を介してピストン30が連結されている。
【0018】
シリンダ側ハウジング22の大気室35を形成する部分(大気室形成部22b)の下部には、大気室35を大気に連通させるための大気連通口22cが設けられている。また、中間ハウジング23の上面部には、第1圧力室36内に圧縮エアを供給するための第1供給ポート23dを設けている。
【0019】
第1圧力室36に通ずる第1供給ポート23dには、ブレーキ弁(図示せず)を介して空気圧供給源が接続されている。そして、ブレーキペダルの踏み込み時にブレーキ弁を通じて第1供給ポート23dから第1圧力室36内に圧縮エアが供給される一方、ペダルの踏み込みを緩めるに従って第1圧力室36内の圧縮エアが第1供給ポート23dを通じて逃がされるようになっている。
【0020】
次に、スプリングブレーキアクチュエータ20Bについて図1を用いて説明する。
ばね収容ハウジング24は、中間ハウジング23の開口を覆うキャップ状に形成されている。そして、中間ハウジング23及びばね収容ハウジング24で囲まれた内部空間が第2ダイヤフラム28によって仕切られている。この第2ダイヤフラム28は、中間ハウジング23側(図1の中央左側)の第2圧力室45と、ばね収容ハウジング24側(図1の左側)のばね室46とを区画している。
【0021】
この第2ダイヤフラム28の中央部と第1ダイヤフラム26の中央部との間には、これらの第1ダイヤフラム26及び第2ダイヤフラム28の間の力伝達を行う伝達ロッド50が介在している。また、中間ハウジング23の上面部には、第2圧力室45内に圧縮エアを供給するための第2供給ポート23eを設けている。
【0022】
ばね室46内には、圧縮コイルばね54が装填されている。この圧縮コイルばね54は、第2ダイヤフラム28の変位方向と略平行な方向に伸縮する姿勢、すなわち、圧縮コイルばね54の中心軸とスプリングブレーキアクチュエータ20Bの中心軸とが合致する姿勢でばね室46内に装填されている。
【0023】
圧縮コイルばね54は、最も収縮した状態における軸方向寸法を小さくするために、いわゆる樽型のもの(上下端に比べて中間部が径方向に膨らんだ形状のもの)が用いられている。また、この圧縮コイルばね54の外面には、防食、防錆用の塗装が施されている。
【0024】
ばね室46内には、図1〜図3に示すように、圧縮コイルばね54の位置を中心位置に安定させるためのばね座部材56、58が設けられている。これらのばね座部材56、58は、例えば、鉄又はアルミニウムで形成されており、その外面に防食用の塗装が施されている。
ばね座部材56は、圧縮コイルばね54の一方の端部54aと第2ダイヤフラム28との間に介在し、ばね座部材58は、圧縮コイルばね54の他方の端部54bとばね収容ハウジング24の天壁24bとの間に介在している。
【0025】
一方のばね座部材56は、図1〜図3に示すように、円板状のばね座本体56mを有し、このばね座本体56mが第2ダイヤフラム28のばね室側表面に密着するように配設されている。このばね座本体56mと第2ダイヤフラム28との相対位置は、圧縮コイルばね54の押付けによる摩擦力を利用して固定可能であるが、さらに両者を接着することによって積極的に固定するようにしてもよい。
【0026】
ばね座本体56mの中央部には、図3に示すように、厚肉のばね拘束部56aが形成されている。圧縮コイルばね54の一方の端部54aは、ばね拘束部56aに嵌められることにより、径方向の動きが制限されている。また、このばね拘束部56aの中央にはさらに厚肉のボス部56bが形成され、このボス部56bの中心には、メンテナンス時等においてブレーキ解除用ボルト100(図4参照)を係合させるための鍵穴56c(図1及び図2参照)が形成されている。また、ばね拘束部56aよりも外側の部分には、圧縮コイルばね54の弾発力を受ける平面部56fが円周状に形成されている。
【0027】
また、第2供給ポート23eには、パーキングブレーキ弁(図示せず)を介して空気圧供給源が接続されており、パーキングブレーキ操作がされていない時にパーキングブレーキ弁を通じて第2供給ポート23eから第2圧力室45内に高圧エアが供給される一方、パーキングブレーキ操作がされた時にはパーキングブレーキ弁を通じて第2供給ポート23eから第2圧力室45内の高圧エアが逃がされるようになっている。
【0028】
一方、ばね収容ハウジング24の先端部(図1の左側端部)には、開口部24cが形成されている。この開口部24cは、ばね室46に連通する唯一の開口であり、この開口部24cを蓋などで密封した状態では、ばね室46の内部が密閉状態になる。
【0029】
この開口部24cは、図1及び図2に示すように、バイパス管路66を介してシリンダ側ハウジング22の上部に形成された開口部22dと接続されている。このバイパス管路66は、詳細には、開口部22d側に接続される接続チューブ66aと、開口部24c側に接続される接続チューブ66bと、これらの接続チューブ66a、66bが両端部でそれぞれ繋がれた管路66cとで構成されている。これにより、シリンダ側ハウジング22の大気連通口22cから大気室35に流入する大気は、開口部22dからバイパス管路66を通り、開口部24cからばね室46内に流入する。これにより、ばね室46の内部が負圧にならないようになっている。
【0030】
接続チューブ66bは、弾性を有するゴム材料で形成されている。また、接続チューブ66bの先端外周面には、周方向に亘って溝部66b1(図3参照)が形成されている。この溝部66b1は、開口部24cの周縁部に弾性によって嵌め込まれるようになっている。この構造により、接続チューブ66bは、弾性によって開口部24cに着脱自在に取り付けられることになる。また、この接続チューブ66bが取り付けられた状態では、開口部24cの周縁部は完全に密封された状態になる。すなわち、ハウジング22外の大気は、バイパス管路66を通じてばね室46の内部に入り込む以外は、大気が入り込まないようになっている。
【0031】
また、接続チューブ66aについても、接続チューブ66bと同様にゴム材料で形成されており、周方向に亘って形成された溝部が開口部22dの周縁部に嵌め込まれることにより、着脱自在に取り付けられている。
さらに、管路66cは、同様にゴム材料で形成されており、接続チューブ66a、66bとの接続部において大気が漏れることなく繋がれている。また、管路66cは、ゴム材料でなくても、鉄、アルミニウム等の金属製の管であってもよい。
【0032】
図4は、図1及び図2に示すブレーキアクチュエータであって、スプリングブレーキアクチュエータ20Bによるパーキングブレーキを手動で解除した状態を示す断面図である。
上述した開口部24cからは、メンテナンス時等にブレーキ解除用ボルト100が挿入されることになる。このブレーキ解除用ボルト100の先端部分(鍵穴56cと係合する部分)には、その外周面の一部にフランジ部100aが設けられている。そして、ブレーキ解除用ボルト100を開口部24cを介して鍵穴56cに挿通させた後に約90度回転させることにより、このフランジ部100aが鍵穴56cの端面と係合することになる。
【0033】
また、開口部24の外側部分には、ブレーキ解除用ボルトと螺合するナット101、及びこのナット101を受けるワッシャ102が用意されている。このナット101を回転させると、ブレーキ解除用ボルト100を軸方向に移動させることができる。その結果、圧縮コイルばね54の付勢力に抗してばね座部材56を開口部24c側に向けて移動させることができるようになっている。
【0034】
次に、本発明の実施の形態に係るスプリングブレーキアクチュエータ20Bの作用を説明する。
【0035】
まず、車両停車時において運転者によりパーキングブレーキ操作された状態では、第2供給ポート23e及びパーキングブレーキ弁(図示せず)を通じて第2圧力室45内の高圧エアが外部に逃がされるため、圧縮コイルばね54の弾発力によって第2ダイヤフラム28の中央部が第2圧力室45の容積を減少させる向きに押されて図1の位置にあり、さらにはその押圧力が伝達ロッド50、第1ダイヤフラム26、操作ロッド40、及びピストン30にも伝達されて、これに係合する伝達軸がブレーキシリンダに向かって前進する。この伝達軸の前進によりウェッジ(図示せず)がブレーキシリンダの両伸縮ロッド間に割り込み、ブレーキシリンダを伸長させてブレーキを働かせる。
【0036】
一方、パーキングブレーキがかけられた状態からパーキングブレーキ操作が解除されると、第2供給ポート23eから第2圧力室45内に高圧エアが供給されるため、その圧力と補助コイルばね62の弾発力とにより、圧縮コイルばね54の弾発力に抗して(すなわち圧縮コイルばね54の収縮を伴いながら)第2ダイヤフラム28の中央部がばね室46の容積を減少させる向き(図1では左向き)に押され、図2に示すようにばね座部材56のばね拘束部56aの前面がばね座部材58の軸端58cに当たる位置まで移動する。これに伴い、ブレーキシリンダからウェッジ(図示せず)を介して反力を受けている伝達軸、ピストン30、及び操作ロッド40もばね室46に向かって図2の位置まで移動する。このようにして伝達軸がブレーキシリンダから後退することにより、ブレーキシリンダは収縮状態となり、ブレーキを解除する。
なお、圧縮コイルばね54は、図2に示すように、円筒部58aの軸端58cにばね拘束部56aの前面が当たる位置まで両ばね座部材56,58が接近可能となっており、ばね室46の容積をできるだけ小さくすることができる。
【0037】
このパーキングブレーキ解除状態からサービスブレーキが操作される(この実施の形態ではブレーキペダルが踏み込まれる)と、第1供給ポート23dを通じて第1圧力室36内に高圧エアが導入されるため、その圧力によって第1ダイヤフラム26、操作ロッド40、及びピストン30がブレーキシリンダ側に押される。これにより、ブレーキシリンダ側に向かって伝達軸が前進するため、ブレーキシリンダが再び伸長してブレーキをかける状態となる。
【0038】
この構成において、例えばメンテナンスのとき(各圧力室に高圧エアが導入されていない状態のとき)に、図1における第2ダイヤフラム28を圧縮コイルばね54の弾性力に抗して先端側(図1の左側)へ移動させ、パーキングブレーキを手動で解除したい場合がある。このときに、作業者は、図4に示すように、バイパス管路66の接続チューブ66bを開口部24cから取り外し、開口部24cからブレーキ解除用ボルトを挿入してばね座部材56の鍵穴56cに係合させ、圧縮コイルばね54が圧縮する方向にブレーキ解除用ボルトを回転させる(引く)ことにより、ブレーキを解除させる。また、メンテナンスのとき以外は、接続チューブ66bを開口部24cに取り付けることにより、開口部24c付近の大気が開口部24cから入り込まないようにすると共に、大気が大気連通口22cのみからしか入らないようになる。
【0039】
本発明の実施の形態に係るスプリングブレーキアクチュエータによれば、ばね収容ハウジング24の先端部に、ばね室46内に連通し、ばね収容ハウジング24の外部から前記第2ダイヤフラム28の位置をコイルばねの付勢力に抗して移動させるためのブレーキ解除用ボルトを挿入する開口部24cを形成し、この開口部24cを密封するとばね室46の内部が密閉状態となるようにばね室46を形成したことにより、ばね室内46に大気中の水分が侵入するおそれを少なくすることができる。その結果、ばね室46内に水分が侵入する可能性を低くすることができる。これにより、コイルばねが大気中の水分で腐食し難くすることができるので、耐水性に優れたスプリングブレーキアクチュエータを提供することができる。
【0040】
また、開口部24cにばね室46の内部が大気と連通するためのバイパス管路66を着脱自在に取り付けたことにより、開口部24cとバイパス管路66の取り付け口を兼用にすることができる。その結果、開口部24cの他に別途バイパス管路66の取り付け部を設ける構造と比べて、ばね室内46に大気中の水分が侵入するおそれを少なくすることができる。その結果、ばね室46内に水分が侵入する可能性を低くすることができる。これにより、コイルばねが大気中の水分で腐食し難くすることができる。
また、従来において、開口部24cを密封するためにキャップをねじ等の締結部材で固定していたが、このキャップおよび締結部材をなくすことができるので、部品点数を削減することができる。
【0041】
さらに、バイパス管路66を配管して、大気連通口22cから大気を取り込むようにしているので、ばね室内46内に大気中の水分やゴミが入り込む可能性を低くすることができる。
【0042】
さらにまた、バイパス管路66の接続チューブ66bを弾性により変形可能なゴム部材で形成しているので、メンテナンスにおいてパーキングブレーキを手動で解放する際に、接続チューブ66bを容易に着脱することができる。これにより、メンテナンス性を向上させることができる。また、弾性によって開口部24cを密閉し、水分が侵入し難くすることができる。
【0043】
また、本実施の形態では、ブレーキアクチュエータ20について説明したが、図5に示すように、スプリングブレーキアクチュエータ20B単体を用いて、パーキングブレーキのみに使用することもできる。この図5で示すスプリングブレーキアクチュエータ200では、図1及び図2で示すサービスブレーキアクチュエータ20Aを除いたものである。より詳細には、シリンダ側ハウジング220及び中間ハウジング230の形状を適宜変更して組み付けるようにしたものであり、その他の構成および機能等は、上述したスプリングブレーキアクチュエータ20Bと同様のものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係るスプリングブレーキアクチュエータにおいてパーキングブレーキがかけられた状態を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るスプリングブレーキアクチュエータのパーキングブレーキ及びサービスブレーキがともに解除された状態を示す断面図である。
【図3】図1に示すばね室の拡大断面図である。
【図4】図1の状態において、開口からブレーキ解除用ボルトを挿入し、ブレーキを手動で解除している状態を示す断面図である。
【図5】図1のスプリングブレーキアクチュエータを単体で示す一部断面図である。
【符号の説明】
【0045】
20 ブレーキアクチュエータ
20A サービスブレーキアクチュエータ
20B スプリングブレーキアクチュエータ
22 シリンダ側ハウジング(ハウジング)
22b 大気室形成部
22c 大気連通口
22d 開口部
23 中間ハウジング
23b 第1圧力室形成部
23c 第2圧力室形成部
23d 第1供給ポート
23e 第2供給ポート
24 収容ハウジング
24b 天壁
24c 開口部
26 第1ダイヤフラム
28 第2ダイヤフラム
30 ピストン
35 大気室
36 第1圧力室
37 フランジ
40 操作ロッド
42 ピン
45 第2圧力室(圧力室)
46 ばね室
50 伝達ロッド
54 圧縮コイルばね(コイルばね)
54a、54b 端部
56、58 ばね座部材
56a 拘束部
56b ボス部
56c 鍵穴
56f 平面部
56m 座本体
58a 円筒部
58b フランジ部
58c 軸端
62 補助コイルばね
66 バイパス管路
66a、66b 接続チューブ
66b1 溝部
66c 管路
100 ブレーキ解除用ボルト(操作部材)
100a フランジ部
101 ナット
102 ワッシャ
200 スプリングブレーキアクチュエータ
220 シリンダ側ハウジング
230 中間ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間を有するハウジングと、このハウジングの内部空間をばね室および圧力室に区画するダイヤフラムと、前記ばね室の内部に配されて前記ダイヤフラムを圧力室側に付勢し、その付勢力を利用してブレーキ装置を作動させるコイルばねとを備え、
前記コイルばねは、前記圧力室へ圧力を供給することによって収縮可能であるとともに、前記ハウジングに設けた開口部を通して外部から前記ばね室内に挿入された操作部材によっても収縮可能である、スプリングブレーキアクチュエータにおいて、
前記開口部を密封すると前記ばね室の内部が密閉状態となるように前記ばね室を形成し、前記開口部に前記ばね室の内部が大気と連通するための管路を着脱自在に取り付けたことを特徴とするスプリングブレーキアクチュエータ。
【請求項2】
前記管路の取付部を弾性により変形可能なゴム部材で形成したことを特徴とする請求項1に記載のスプリングブレーキアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−195119(P2008−195119A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29963(P2007−29963)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】