説明

スラリー循環装置、および、スラリー循環装置のフラッシング方法

【課題】スラリーが供される配管内や研磨装置内などに残留するスラリー残留物を確実に除去でき、かつ、フラッシング時間の短縮化を図れるスラリー循環装置を提供する。
【解決手段】スラリー循環装置3は、第1,第2供給タンク41,42と、第1,第2供給タンク41,42に貯留された液体を第1,第2CMP装置21,22に供給する供給ライン43と、第1,第2CMP装置21,22に供給される液体の供給元を切り替える第1,第2循環弁436,437と、第1,第2CMP装置21,22から排出される液体を第1,第2供給タンク41,42に回収する回収ライン63と、液体の回収先を切り替えるセパレータ64と、第1,第2供給タンク41,42に純水を補給する第1,第2DIW補給部53,54と、第1,第2供給タンク41,42にアルカリ溶液を補給するアルカリ溶液補給部55とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー循環装置、および、スラリー循環装置のフラッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CMP(Chemical Mechanical Polishing)装置にスラリーを供給する構成が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1,2の構成では、スラリーの供給ラインを2系統設けている。そして、一方の供給ラインからスラリーをCMP装置に供給しているときに、純水を用いて他方の供給ラインをフラッシング(洗浄)している。また、一方の供給ラインをフラッシングする場合には、他方の供給ラインからスラリーを供給しているときに行っている。
しかしながら、このような構成においては、供給ラインを純水のみでフラッシングしているため、スラリーの固着物が供給ラインに残ってしまうおそれがある。そこで、このような問題点を解決するための方法が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
この特許文献3には、研磨原液供給ラインからスラリー供給ラインに至る少なくとも一部に、有機アルカリ溶液を供給して排出後、過酸化水素水を供給して排出する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−96013号公報
【特許文献2】特開2000−326225号公報
【特許文献3】特開2009−34809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3のような洗浄液を特許文献1,2の構成に用いた場合、2系統の供給ラインを交互にフラッシングして配管内の異物を除去できるものの、CMP装置から排出されるスラリーを循環させる構造でなく、スラリーにはシリカなどの研磨剤および化学反応性成分を含み、スラリーが供給されるCMP装置の内部や表面の様々な場所においてスラリーの固着物が堆積されるため、CMP装置に残留しているスラリーなどの異物を除去できない。また、供給ラインのフラッシングに1個のタンクを使用しているため、当該タンクに純水が貯まるまでフラッシングを開始できず、フラッシング時間の短縮化を図れない。
【0005】
本発明の目的は、スラリーが供される配管内や研磨装置内などに残留するスラリー残留物を確実に除去でき、かつ、フラッシング時間の短縮化を図れるスラリー循環装置、および、スラリー循環装置のフラッシング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスラリー循環装置は、研磨装置にスラリーを供給し、前記研磨装置から排出されるスラリーを回収するスラリー循環装置であって、液体を貯留可能かつ排水可能な第1供給タンクおよび第2供給タンクと、前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに貯留された液体を前記研磨装置に供給する供給ラインと、前記研磨装置に供給される液体の供給元を前記第1供給タンクと前記第2供給タンクとの間で切り替える供給元切替部と、前記研磨装置から排出される液体を前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに回収する回収ラインと、前記回収ラインによる液体の回収先を前記第1供給タンクと前記第2供給タンクとの間で切り替える回収先切替部と、前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクのうち少なくとも一方にスラリーを補給するスラリー補給部と、前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに純水を補給する純水補給部と、前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクにアルカリ溶液を補給するアルカリ溶液補給部とを備えることを特徴とする。
【0007】
一方、本発明のスラリー循環装置のフラッシング方法は、研磨装置にスラリーを供給し、前記研磨装置から排出されるスラリーを回収するスラリー循環装置のフラッシング方法であって、前記スラリー循環装置は、液体を貯留可能かつ排水可能な第1供給タンクおよび第2供給タンクと、前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに貯留された液体を前記研磨装置に供給する供給ラインと、前記研磨装置から排出される液体を前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに回収する回収ラインとを備え、前記第1供給タンクと前記供給ラインと前記回収ラインとは、これらの間で液体を循環させる第1循環ラインを構成し、前記第2供給タンクと前記供給ラインと前記回収ラインとは、これらの間で液体を循環させる第2循環ラインを構成し、前記第1供給タンクに貯留された純水を前記第1循環ラインで循環させてスラリーを除去する第1スラリー除去工程と、前記第1スラリー除去工程を実施後、前記第2供給タンクに貯留された純水を前記第2循環ラインで循環させてスラリーを除去する第2スラリー除去工程と、前記第2スラリー除去工程を実施後、前記第1供給タンクに貯留されたアルカリ溶液を前記第1循環ラインで循環させてスラリーの固着物を除去する第1固着物除去工程と、前記第1固着物除去工程を実施後、前記第2供給タンクに貯留されたアルカリ水溶液を前記第2循環ラインで循環させてスラリーの固着物を除去する第2固着物除去工程と、前記第2固着物除去工程を実施後、前記第1供給タンクに貯留された純水を前記第1循環ラインで循環させてスラリーの残渣物を除去する第1残渣物除去工程と、前記第1残渣物除去工程を実施後、前記第2供給タンクに貯留された純水を前記第2循環ラインで循環させてスラリーの残渣物を除去する第2残渣物除去工程とを実施することを特徴とする。
【0008】
以上のスラリー循環装置、および、そのフラッシング方法によれば、供給ラインおよび回収ラインに加えて、研磨装置に対しても、純水およびアルカリ溶液によりフラッシングを行うため、研磨装置内に残留する異物を除去できる。また、第1供給タンクと第2供給タンクとを用い、第1,第2スラリー除去工程、第1,第2固着物除去工程、第1,第2残渣物除去工程を第1,第2供給タンクで交互に実施できる。このため、供給タンクを1個だけ設ける構成と比べて、多くの純水やアルカリ溶液でフラッシングを行うことができ、洗浄能力を向上できる。
【0009】
本発明のスラリー循環装置では、前記供給ラインには、当該供給ラインを流れる液体との間で熱交換を行う熱交換器が設けられ、前記熱交換器には、当該熱交換器に冷水を供給する冷水供給部と、温水を供給する温水供給部とが接続されていることが好ましい。
【0010】
本発明によれば、供給ラインでアルカリ溶液を供給する際には、熱交換器に温水を供給することにより、当該アルカリ溶液を加熱することができる。このため、アルカリ溶液の加熱により固形物の除去能力を向上させることができ、フラッシング時間を短縮できる。
また、一般的に、供給ラインには、スラリーを冷水で冷却するための熱交換器が設けられている。本発明では、スラリーの冷却に用いる熱交換器に温水供給部を接続するだけで、アルカリ溶液を加熱することができ、フラッシング時間の短縮化を図るための設備投資を、最小限に抑えることができる。
【0011】
本発明のスラリー循環装置のフラッシング方法では、前記第1スラリー除去工程の実地中に、前記第2供給タンクに純水を貯留し、前記第2スラリー除去工程の実施中に、前記第1供給タンクの純水を排水するとともに当該第1供給タンクにアルカリ溶液を貯留し、前記第1固着物除去工程の実施中に、前記第2供給タンクの純水を排水するとともに当該第2供給タンクにアルカリ溶液を貯留し、前記第2固着物除去工程の実施中に、前記第1供給タンクのアルカリ溶液を排水するとともに当該第1供給タンクに純水を貯留し、前記第1残渣物除去工程の実施中に、前記第2供給タンクのアルカリ溶液を排水するとともに当該第2供給タンクに純水を貯留することが好ましい。
【0012】
本発明によれば、第1供給タンクでの第1スラリー除去工程中に、第2供給タンクで第2スラリー除去工程の準備のために純水を貯留し、第1スラリー除去工程終了直後に第2スラリー除去工程を開始することができる。すなわち、第1供給タンクと第2供給タンクとで同じ処理を行う際に、第1供給タンクでの処理中に、第2供給タンクで準備を行い、第1供給タンクでの処理終了後に第2供給タンクでの処理を開始できる。したがって、第1,第2循環ラインのフラッシングを短時間で行うことができる。
【0013】
本発明のスラリー循環装置のフラッシング方法では、前記供給ラインに、回転子を回転させることにより液体の流量を制御するポンプと、前記ポンプよりも下流側における液体の圧力を検出する圧力検出器とを設け、前記圧力検出器での圧力の検出結果に基づいて、液体の圧力が予め設定された設定圧力値となるように、前記ポンプの回転子の回転数を調整する回転数調整工程と、前記回転子の回転数が予め設定された設定回転数以上となった場合に、前記供給ラインのフラッシングが必要であると判定するフラッシング判定工程と、このフラッシング判定工程でフラッシングが必要であると判定されると、その旨を警報する警報工程とを実施することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、例えば、ポンプの下流側にフィルタが設けられた構成において、当該フィルタで捕捉した異物が多くなることで、液体の圧力が小さくなってしまう場合でも、回転子の回転数を高くすることで、液体の圧力を大きくすることができる。したがって、フラッシング中の液体の圧力をほぼ一定にすることができ、所定の洗浄能力を維持できる。
また、フラッシング中あるいは研磨中にフィルタが目詰まりすることで、回転子の回転数が高くなりすぎた場合には、フィルタの目詰まりを解消するために、フラッシングが必要である旨を作業者に知らせることができる。したがって、作業者は、フラッシングの再度の実施や、研磨の停止など、適切な対応を取ることができる。
【0015】
本発明のスラリー循環装置のフラッシング方法では、前記供給ラインに、回転子を回転させることにより液体の流量を制御するポンプと、前記ポンプよりも下流側における液体の圧力を検出する圧力検出器とを設け、前記圧力検出器での圧力の検出結果に基づいて、液体の圧力が予め設定された設定圧力値となるように、前記ポンプの回転子の回転数を調整する回転数調整工程と、前記回転子の回転数が予め設定された設定回転数以上となった場合に、前記供給ラインのフラッシングが必要であると判定するフラッシング判定工程と、前記研磨装置においてウェーハを研磨中か否かを判定する研磨判定工程と、前記フラッシング判定工程でフラッシングが必要であると判定され、かつ、前記研磨判定工程でウェーハの研磨中でないと判定されると、前記第1スラリー除去工程を開始させるフラッシング開始制御工程とを実施することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、例えばフィルタの目詰まりで回転子の回転数が高くなり、かつ、研磨装置が研磨中でない場合に、フラッシングを開始するので、作業者の手を煩わせることなく、あるいは、作業者が不在の場合であっても、適切なタイミングでフラッシングを開始できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るCMPシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】前記一実施形態におけるCMP装置の概略構成を示す断面図。
【図3】図2のIII−III線矢視平面図。
【図4】前記一実施形態におけるコントローラおよびその制御対象を示すブロック図。
【図5】前記一実施形態におけるフラッシングの概略動作を示すタイミングチャート。
【図6】前記一実施形態におけるフラッシングの概略動作を示すタイミングチャート。
【図7】前記一実施形態におけるフラッシングの詳細動作を示すタイミングチャート。
【図8】前記一実施形態におけるフラッシングの詳細動作を示すタイミングチャート。
【図9】前記一実施形態における異常検出処理を示すフローチャート。
【図10】前記一実施形態における経過時間と回転式制御ポンプの回転数を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
[CMPシステムの構成]
図1に示すように、CMPシステム1は、スラリーによりウェーハW(図2参照)を研磨する。また、ウェーハWの傷付き防止やスラリーの円滑な供給のために、アルカリ溶液(水酸化カリウム(KOH)溶液)や純水を用いたフラッシングを行う。このCMPシステム1は、研磨装置としての第1CMP装置21および第2CMP装置22と、スラリー循環装置3とを備える。
【0019】
第1CMP装置21は、ウェーハWの表裏面を同時に研磨するものであり、図2および図3に示すように、環状の下定盤211と、下定盤211と対向する環状の上定盤212と、下定盤211の内側に配置された太陽歯車213と、後述する液体回収部6を構成する第1排水槽61とを備えている。
下定盤211は、図示しないモータにより回転駆動される。また、下定盤211の上面には、3個のキャリア214がセットされている。各キャリア214には、ウェーハWをそれぞれ収容するホール215が設けられている。
上定盤212は、シリンダ216にジョイント217を介して吊り下げられ、下定盤211とは逆方向に回転駆動される。この上定盤212には、後述する供給ライン43の第1下流ライン434が連通されている。ウェーハWの研磨時には、この第1下流ライン434を介して、スラリーが供給される。また、フラッシング時には、第1下流ライン434を介して、アルカリ溶液や純水が供給される。
なお、以下において、スラリーとアルカリ溶液と純水とを特に区別せずに、「液体」と称して説明する場合がある。
【0020】
また、下定盤211および上定盤212の対向面には、研磨パッドが貼付されている。
一方、第1排水槽61は、下面が略閉塞された円筒状に形成されている。この第1排水槽61の上端側の内面には、内歯歯車218が設けられている。そして、太陽歯車213および第1排水槽61は、それぞれ独立したモータで回転駆動される。
なお、第2CMP装置22も、第1CMP装置21と同様の機構を有しており、下定盤211と、供給ライン43の第2下流ライン435が連通された上定盤212と、第2排水槽62とを備えている。
【0021】
そして、ウェーハWの研磨を行うには、上定盤212を上昇させた状態で、下定盤211上に複数のキャリア214をセットし、各キャリア214のホール215にウェーハWをセットする。上定盤212を下降させ、各ウェーハWに所定の加圧力を付加する。この状態で、第1下流ライン435を回して、下定盤211と上定盤212の間にスラリーを供給しながら、下定盤211、上定盤212、太陽歯車213および第1排水槽61を所定の方向に所定の速度で回転させる。
【0022】
スラリー循環装置3は、第1CMP装置21および第2CMP装置22に液体を供給して回収し、再利用する。このスラリー循環装置3は、図1および図4に示すように、液体を供給する液体供給部4と、この液体供給部4に液体を補給する液体補給部5と、液体供給部4で第1CMP装置21および第2CMP装置22に供給された液体を回収する液体回収部6と、CMPシステム1全体を制御するコントローラ7とを備える。
【0023】
液体供給部4は、液体をそれぞれ貯留可能な第1供給タンク41および第2供給タンク42と、この第1供給タンク41および第2供給タンク42に貯留された液体を流通させて第1CMP装置21および第2CMP装置22に供給する供給ライン43と、供給ライン43で流通させる液体の温度を調整する液体温度調整部45とを備える。
第1供給タンク41には、第1排水部411が設けられている。この第1排水部411は、第1供給タンク41の側面の下方に連通する第1排水ライン412と、この第1排水ライン412に設けられた第1排水弁413とを備える。そして、第1排水部411は、第1排水弁413がコントローラ7により制御されることで、第1供給タンク41内の液体を排水する。また、第2供給タンク42にも、第1排水部411、第1排水ライン412、および、第1排水弁413とそれぞれ同じ構成の第2排水部421、第2排水ライン422、第2排水弁423が設けられている。
【0024】
なお、第1供給タンク41および第2供給タンク42には、図示しない液面センサも設けられている。詳しくは後述するが、フラッシングにおいて高温のアルカリ溶液を使用するため、アルカリ溶液の泡立ちおよび湯気が発生する。この泡立ちおよび湯気は、液面センサの誤感知の原因となるおそれがある。そこで、第1供給タンク41および第2供給タンク42に、泡立ちを液面センサに近づけないような仕切り板と、湯気を排気するファンとを設けている。
【0025】
供給ライン43は、第1供給タンク41および第2供給タンク42の下面にそれぞれ連通する第1上流ライン431および第2上流ライン432と、第1上流ライン431および第2上流ライン432の両方に連通する中間ライン433と、中間ライン433および第1CMP装置21の上定盤212に連通する第1下流ライン434と、中間ライン433および第2CMP装置22の上定盤212に連通する第2下流ライン435とを備える。
第1上流ライン431および第2上流ライン432には、それぞれ供給元切替部としての第1循環弁436および第2循環弁437がそれぞれ設けられている。
また、中間ライン433には、液体の流通方向の上流から順に、回転制御式ポンプ438と、フィルタ440と、圧力検出器441とが設けられている。
回転制御式ポンプ438は、回転子439(図4参照)を有している。当該回転子439の回転数がコントローラ7により調整されることで、液体の流量が調整される。
フィルタ440は、液体中の異物を捕捉する。圧力検出器441は、液体の圧力を検出して、その結果をコントローラ7へ出力する。
【0026】
液体温度調整部45は、中間ライン433における回転制御式ポンプ438とフィルタ440との間に設けられた熱交換器451(図1では「HEX」と示す)を有している。この熱交換器451は、いわゆるシェルアンドチューブタイプのものであり、シェル(胴体)中に、熱媒体が流通する複数のチューブを設けた構造を有している。熱交換器451における熱媒体の導入部は、水導入ライン452を介して導入三方弁453の導出部に連通されている。この導入三方弁453の一方の導入部には、冷水導入ライン454を介して冷水供給部455が接続されており、他方の導入部には、温水導入ライン456を介して温水供給部457が接続されている。
一方、熱交換器451における熱媒体の導出部は、水導出ライン458を介して導出三方弁459の導入部に接続されている。この導出三方弁459の一方の導出部には、冷水導出ライン460を介して冷水供給部455が接続されており、他方の導出部には、温水導出ライン461を介して温水供給部457が接続されている。
このような構成により、熱交換器451と冷水供給部455との間で循環する熱媒体としての冷水と、中間ライン433を流通するスラリーとの間で熱交換が行われ、スラリーが冷却される。また、熱交換器451と温水供給部457との間で循環する熱媒体としての温水と、中間ライン433を流通するアルカリ溶液との間で熱交換が行われ、アルカリ溶液が加熱される。
なお、熱交換器451と冷水供給部455との間で循環させる冷水によりスラリーを冷却する構成は、従来、一般的に用いられているものである。
【0027】
液体補給部5は、第1供給タンク41および第2供給タンク42にそれぞれスラリーを供給する第1スラリー補給部51および第2スラリー補給部52と、第1供給タンク41および第2供給タンク42にそれぞれ純水を供給する第1DIW補給部53および第2DIW補給部54と、第1供給タンク41にアルカリ溶液を供給するアルカリ溶液補給部55とを備える。
第1,第2スラリー補給部51,52は、スラリーを貯留可能なスラリータンク511,521と、このスラリータンク511,521に貯留されたスラリーを第1,第2供給タンク41,42にそれぞれ導くスラリーライン512,522とを備える。スラリーライン512,522には、スラリータンク511,521のスラリーを送り出すスラリーポンプ513,523と、この送り出されたスラリーと純水とを調合する調合部514,524と、スラリー弁515,525とが設けられている。
第1DIW補給部53,第2DIW補給部54は、純水を貯留可能なDIWタンク531,541と、このDIWタンク531,541に貯留された純水を第1供給タンク41および第2供給タンク42にそれぞれ導くDIWライン532,542と、第1DIW弁533および第2DIW弁543とを備える。
アルカリ溶液補給部55は、アルカリ溶液を貯留可能なアルカリタンク551と、このアルカリタンク551に貯留されたアルカリ溶液を第1供給タンク41に導くアルカリライン552とを備える。アルカリライン552には、アルカリタンク551のアルカリ溶液を送り出すアルカリポンプ553と、アルカリ弁554とが設けられている。
【0028】
液体回収部6は、第1CMP装置21および第2CMP装置22の下定盤211から流れ落ちる液体を受ける第1排水槽61および第2排水槽62と、この第1排水槽61および第2排水槽62で受けた液体を第1供給タンク41および第2供給タンク42の上方まで導く回収ライン63と、この回収ライン63で導かれた液体を第1供給タンク41または第2供給タンク42に戻す回収先切替部としてのセパレータ64とを備える。回収ライン63は、第1排水槽61および第2排水槽62の下面に連通する第1上流ライン631および第2上流ライン632と、第1上流ライン631および第2上流ライン632の両方に連通する下流ライン633とを備える。なお、第1上流ライン631および第2上流ライン632には、液体を流通させる状態と流通させない状態と切り替える開閉弁634が設けられている。
セパレータ64は、回転軸と、この回転軸の外周面に設けられた板状部材とから構成され、板状部材を傾かせることにより、下流ライン633から排出される液体を第1供給タンク41または第2供給タンク42に戻す。
なお、第2上流ライン432を除く供給ライン43と、第1供給タンク41と、回収ライン63とにより本発明の第1循環ラインが構成されており、第1上流ライン431を除く供給ライン43と、第2供給タンク42と、回収ライン63とにより本発明の第2循環ラインが構成されている。
【0029】
コントローラ7は、図4に示すように、タッチパネルやキーボードなどにより構成された入力部71と、警告を音や光あるいは映像で報知する警告部72と、コンピュータである制御装置73とを備える。
制御装置73は、図示しない記憶手段に記憶されたプログラムおよびデータをCPU(Central Processing Unit)が処理することにより構成される、CMP制御手段731と、フラッシング制御手段732と、熱交換制御手段733と、ポンプ調整手段734と、フラッシング判定手段735とを備える。
【0030】
CMP制御手段731は、作業者の入力部71の入力操作に基づいて、第1CMP装置21および第2CMP装置22などを制御して、第1供給タンク41あるいは第2供給タンク42に貯留されたスラリーを用いて、ウェーハWの研磨を行う。
【0031】
フラッシング制御手段732は、入力部71の入力操作あるいはフラッシング判定手段735におけるフラッシングを開始する旨の指令に基づいて、フラッシングを行う。
熱交換制御手段733は、ウェーハWの研磨中に液体温度調整部45を制御してスラリーを冷却する。また、フラッシング中に液体温度調整部45を制御してアルカリ溶液を加熱する。
ポンプ調整手段734は、圧力検出器441における液体の圧力検出結果に基づいて、圧力が予め設定された設定圧力値とほぼ同じになるように、回転子439の回転数を調整する。
フラッシング判定手段735は、回転子439の回転数に基づいて、フラッシングを開始する旨の指令をフラッシング制御手段732に出力する。
【0032】
[CMPシステムの作用]
次に、上述のCMPシステム1の作用として、フラッシングの動作について説明する。
なお、図5〜図8における時刻Tの間隔を便宜的に同じように図示したが、当該間隔は、期間の長さを表すものではない。
【0033】
(作業者の指令に基づくフラッシング)
まず、作業者の指令に基づくフラッシングの概略について説明する。
研磨終了後の時刻T0の時点では、図5に示すように、第1供給タンク41および第1,第2循環ラインにスラリーが残留し、第2供給タンク42に純水が残留している。また、セパレータ64は、第1供給タンク41側に向いており、回収した液体を第1供給タンク41に戻すことが可能になっている。
【0034】
そして、時刻T1に、作業者による入力部71の入力操作により、フラッシングを開始する旨の指令がなされると、制御装置73のフラッシング制御手段732は、第2供給タンク42を用いて、第2循環ライン上に残留するスラリーを追い出すスラリー追い出し工程を行う。
次に、フラッシング制御手段732は、時刻T1から予め設定された時間が経過して時刻T2になったことを検出すると、第1供給タンク41を用いて、スラリー追い出し工程で追い出しきれなかったスラリーを、第1循環ラインから除去する第1スラリー除去工程を開始する。
さらに、フラッシング制御手段732は、時刻T3になったことを検出すると、第1循環ラインでの純水の循環を開始する。また、この第1スラリー除去工程の途中に時刻T4になったことを検出すると、第2供給タンク42を用いて、第2循環ラインからスラリーを除去する第2スラリー除去工程を開始する。
以上のスラリー追い出し工程および第1,第2スラリー除去工程の実施により、第1,第2循環ラインと、第1CMP装置21内と、第2CMP装置22内とに残留していたスラリーが除去され、純水が残留する。また、スラリーの固着物が残留することもある。
【0035】
また、フラッシング制御手段732は、時刻T5になったことを検出すると、セパレータ64を第2供給タンク42側に傾けて、第2循環ラインでの純水の循環を開始する。そして、第2スラリー除去工程の途中に時刻T6になったことを検出すると、第1供給タンク41を用いて、固着物を第1循環ラインから除去する第1固着物除去工程を開始する。
この後、時刻T7になったことを検出すると、セパレータ64を第1供給タンク41側に傾けて、第1循環ラインでのアルカリ溶液の循環を開始する。さらに、第1固着物除去工程の途中に時刻T8になったことを検出すると、セパレータ64を第2供給タンク42側に傾けて、第1供給タンク41から排出されるアルカリ溶液を第2供給タンク42に貯留し、第2供給タンク42を用いて、第2循環ラインから固着物を除去する第2固着物除去工程を開始する。
以上の第1,第2固着物除去工程では、熱交換制御手段733の制御に基づき液体温度調整部45で加熱されたアルカリ溶液が用いられる。そして、これらの工程の実施により、第1,第2循環ラインと、第1CMP装置21内と、第2CMP装置22内とに残留していた純水と固着物とが除去され、アルカリ溶液が残留する。この残留するアルカリ溶液中には、残渣物を含むスラリーが残留している。
【0036】
次に、フラッシング制御手段732は、図6に示すように、時刻T9になったことを検出すると、第2循環ラインでのアルカリ溶液の循環を開始する。そして、第2固着物除去工程の途中に時刻T10になったことを検出すると、第1供給タンク41を用いて、残渣物を第1循環ラインから除去する第1残渣物除去工程を開始する。
この後、時刻T11になったことを検出すると、セパレータ64を第1供給タンク41側に傾けて、第1循環ラインでの純水の循環を開始する。さらに、第1残渣物除去工程の途中に時刻T12になったことを検出すると、第2供給タンク42を用いて、第2循環ラインから残渣物を除去する第2残渣物除去工程を開始する。
以上の第1,第2残渣物除去工程の実施により、第1,第2循環ラインと、第1CMP装置21内と、第2CMP装置22内とに残留していたアルカリ溶液と残渣物とが除去され、純水が残留することがある。
【0037】
また、フラッシング制御手段732は、時刻T13になったことを検出すると、セパレータ64を第2供給タンク42側に傾けて、第2循環ラインでの純水の循環を開始する。そして、第2残渣物除去工程の途中に時刻T14になったことを検出すると、第1供給タンク41を用いて、スラリーを第1循環ラインに供給するスラリー置換工程を開始する。
このスラリー置換工程の実施により、第1循環ラインと、第1CMP装置21とから純水が除去され、スラリーが残留する。
以上により、フラッシングが終了する。
【0038】
次に、フラッシング時におけるCMPシステム1の詳細な動作について説明する。
時刻T0の時点では、図7に示すように、全ての弁が閉じており、かつ、全てのポンプが停止している。また、導入三方弁453および導出三方弁459は、熱交換器451に冷水を供給可能な状態となっている。
そして、フラッシング制御手段732は、時刻T1となりスラリー追い出し工程を開始する際には、第1排水弁413を開いて、第1供給タンク41内のスラリーを排水する。そして、第1供給タンク41の液面センサにより、第1供給タンク41内のスラリーの残量が所定量以下となったことを検出すると、第2循環弁437を開くとともに回転制御式ポンプ438を駆動させ、第2供給タンク42内の純水を第2循環ライン上に流す。この純水により、第2循環ラインに残留するスラリーを押し出して、第1供給タンク41から純水とともに排水する。
【0039】
次に、時刻T2になると、フラッシング制御手段732は、第1スラリー除去工程を開始し、第1排水弁413を閉じるとともに、第1供給タンク41内に所定量の純水が補給される期間だけ第1DIW弁533を開いて、第1供給タンク41に純水を貯留する。また、第2循環弁437を閉じるとともに、回転制御式ポンプ438を停止させる。そして、第2排水弁423を開いて第2供給タンク42内の純水を排水し、所定量まで排水されたら第2排水弁423を閉じる。
この後、時刻T3になると、フラッシング制御手段732は、第1循環弁436を開くとともに回転制御式ポンプ438を駆動させ、第1供給タンク41の純水を第1循環ラインで循環させる。
【0040】
そして、フラッシング制御手段732は、時刻T4になると、第2スラリー除去工程を開始し、第2DIW弁543を開いて第2供給タンク42内に純水を貯留し、所定量まで貯留されたら第2DIW弁543を閉じる。
次に、時刻T5になると、フラッシング制御手段732は、第1循環弁436を閉じて第1循環ラインでの純水の循環を終了させるとともに、第1排水弁413を開いて第1供給タンク41内の純水を排水する。そして、所定量まで排水されたら第1排水弁413を閉じて、第1スラリー除去工程を終了する。また、フラッシング制御手段732は、セパレータ64を第2供給タンク42側に傾けるとともに第2循環弁437を開き、第2供給タンク42の純水を第2循環ラインで循環させる。
この後、時刻T6になると、フラッシング制御手段732は、第1固着物除去工程を開始し、第1供給タンク41にアルカリ溶液を貯留する。このアルカリ溶液の貯留の際、まず、アルカリ弁554を開くとともに第1DIW弁533を駆動させることで、第1供給タンク41にアルカリ溶液を補給し、液面センサでアルカリ溶液が所定量になったことを検出すると、アルカリ弁554を閉じるとともにアルカリポンプ553を停止させる。この後、第1DIW弁533を開いて、第1供給タンク41に純水を補給し、アルカリ濃度が設定濃度に達した時点で第1DIW弁533を閉じる。
【0041】
そして、時刻T7になると、フラッシング制御手段732は、第2循環弁437を閉じて第2循環ラインでの純水の循環を終了させ、第2排水弁423を開いて第2供給タンク42内の純水を排水する。そして、所定量まで排水されたら第2排水弁423を閉じて、第2スラリー除去工程を終了する。さらに、フラッシング制御手段732は、熱交換制御手段733にアルカリ溶液を加熱する旨の指令を行うとともに、セパレータ64を第1供給タンク41側に傾ける。
熱交換制御手段733は、フラッシング制御手段732の指令に基づいて、導入三方弁453および導出三方弁459を切り替えて、熱交換器451と温水供給部457との間で、例えば75℃程度の温水を循環させる。
そして、フラッシング制御手段732は、第1循環弁436を開いて、第1供給タンク41のアルカリ溶液を第1循環ラインで循環させる。
第1循環ラインを循環するアルカリ溶液は、熱交換器451との熱交換により45℃〜65℃に加熱される。上記の温度となるようにアルカリ溶液を加熱する理由は、45℃未満の場合、固着物が溶けにくく、65℃を超えると回転制御式ポンプ438の負荷が大きくなるからである。
この後、時刻T8になると、フラッシング制御手段732は、第2固着物除去工程を開始し、セパレータ64を第2供給タンク42側に傾けて、第1循環ラインを循環するアルカリ溶液を第2循環ラインで再利用するために、第2供給タンク42に貯留する。
【0042】
次に、フラッシング制御手段732は、図8に示すように、時刻T9になると、第1循環弁436を閉じて第1循環ラインでのアルカリ溶液の循環を終了させ、第1排水弁413を開いて第1供給タンク41内のアルカリ溶液を排水する。この後、所定量まで排水されたら第1排水弁413を閉じて、第1固着物除去工程を終了する。また、第2循環弁437を開いて、第2供給タンク42のアルカリ溶液を第2循環ラインで循環させる。
この後、時刻T10になると、第1残渣物除去工程を開始し、第1DIW弁533を開いて第1供給タンク41に純水を貯留し、所定量まで貯留されたら第1DIW弁533を閉じる。
そして、時刻T11になると、フラッシング制御手段732は、第2循環弁437を閉じて第2循環ラインでのアルカリ溶液の循環を終了させ、第2排水弁423を開いて第2供給タンク42内のアルカリ溶液を排水する。この後、所定量まで排水されたら第2排水弁423を閉じる。さらに、熱交換制御手段733は、フラッシング制御手段732の指令に基づき導入三方弁453および導出三方弁459を切り替えて、熱交換器451と冷水供給部455との間で、冷水を循環させる。以上により、第2固着物除去工程が終了する。なお、導入三方弁453および導出三方弁459の切り替えは、研磨処理が開始されるまでの間であれば、どのタイミングで行ってもよい。
また、フラッシング制御手段732は、セパレータ64を第1供給タンク41側に傾け、第1循環弁436を開いて第1供給タンク41の純水を第1循環ラインで循環させる。
【0043】
この後、フラッシング制御手段732は、時刻T12になると、第2残渣物除去工程を開始し、第2DIW弁543を開いて第2供給タンク42内に純水を貯留し、所定量まで貯留されたら第2DIW弁543を閉じる。
そして、時刻T13になると、第1循環弁436を閉じて第1循環ラインでの純水の循環を終了させ、第1排水弁413を開いて第1供給タンク41内の純水を排水する。この後、所定量まで排水されたら第1排水弁413を閉じて、第1残渣物除去工程を終了する。さらに、セパレータ64を第2供給タンク42側に傾けて、第2循環弁437を開くことで、第2供給タンク42の純水を第2循環ラインで循環させる。
この後、時刻T14になると、フラッシング制御手段732は、スラリー置換工程を開始し、スラリー弁515を開くとともにスラリーポンプ513を駆動させることで第1供給タンク41にスラリーを貯留する。次に、所定量まで貯留されたらスラリー弁515を閉じるとともにスラリーポンプ513を停止させる。
【0044】
フラッシング制御手段732は、時刻T15になると、第2循環弁437を閉じて第2循環ラインでの純水の循環を終了させ、第2残渣物除去工程を終了する。さらに、セパレータ64を第1供給タンク41側に傾け、第1循環弁436を開いて、第1供給タンク41のスラリーを第1循環ラインで循環させる。
この後、時刻T16になると、フラッシング制御手段732は、回転制御式ポンプ438を停止させるとともに第1循環弁436を閉じることで、スラリー置換工程が終了する。
【0045】
(異常検出時のフラッシング)
次に、作業者の指令によらず、異常を検出した場合のフラッシングについて説明する。なお、以下の処理が実施される間隔としては、数時間であってもよいし、数日であってもよい。
上述のような作業者の指令に基づくフラッシング中、あるいは、第1CMP装置21および第2CMP装置22によるウェーハWの研磨中に、回転制御式ポンプ438を駆動させている状態において、圧力検出器441は、図9に示すように、循環液体(中間ライン433を流通するスラリーや純水あるいはアルカリ溶液)の圧力を検出し(ステップS1)、その結果をポンプ調整手段734に出力する。ポンプ調整手段734は、圧力検出器441からの検出結果に基づいて、供給ライン43を流通する液体の圧力が設定圧力値とほぼ同じになるように、回転子439の回転数を調整する(ステップS2)。
【0046】
ここで、供給ライン43内を液体とともに流通するスラリーの残渣などにより、フィルタ440に目詰まりが発生したり、当該残渣などが熱交換器451のチューブ間に固着する。この目詰まり量や固着量は、時間の経過とともに増えるため、循環液体の圧力も、徐々に小さくなっていく。そこで、ポンプ調整手段734は、図10に示すように、循環液体の圧力がほぼ一定となるように、回転子439の回転数を徐々に高くする。
【0047】
次に、図9に示すように、フラッシング判定手段735は、ポンプ調整手段734での調整結果に基づいて、回転制御式ポンプ438の回転子439の回転数が、予め設定された設定回転数M以上になったか否かを判定する(ステップS3)。
このような判定処理を行うのは、回転子439の回転数が設定回転数M以上の場合には、フィルタ440に目詰まりしたり、熱交換器451に固着した残渣などが多いため、フラッシングを行う必要があるからである。
【0048】
そして、フラッシング判定手段735は、ステップS3において、設定回転数M以上になっていないと判定すると、ステップS1に戻り、ステップS3で設定回転数M以上になっていると判定すると、CMP制御手段731の制御により第1CMP装置21および第2CMP装置22が動作中か否かを判定する(ステップS4)。
フラッシング判定手段735は、第1CMP装置21などが動作中であると判定すると、警告部72を制御して、フラッシングが必要である旨を警告する(ステップS5)。そして、警告を認識した作業者により、第1CMP装置21および第2CMP装置22による研磨を停止する旨の入力操作がなされると、CMP制御手段731は、研磨を終了する。さらに、作業者によりフラッシングを開始する旨の入力操作がなされると、フラッシング制御手段732は、上述した作業者の指令に基づくフラッシングを開始する。
【0049】
一方で、フラッシング判定手段735は、第1CMP装置21などが動作中でないと判定すると、フラッシング制御手段732にフラッシングの開始を指令する。フラッシング制御手段732は、フラッシング判定手段735の指令に基づいて、上述した作業者の指令に基づくフラッシングと同様のフラッシング(自動フラッシング)を開始する(ステップS6)。
そして、フラッシングが行われると、フィルタ440の目詰まりや熱交換器451の固着物が除去されるため、圧力検出器441で検出される圧力が低くなる。このため、ポンプ調整手段734の制御により、図10に示すように、回転子439の回転数は低くなるように調整される。
【0050】
[実施形態の作用効果]
上述したような本実施形態では、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)供給ライン43および回収ライン63に加えて、スラリーが接触する第1CMP装置21や第2CMP装置22についても、フラッシングを行っているため、第1CMP装置21や第2CMP装置22の異物を除去できる。例えば、上定盤212の液供給口、下定盤211の外周側面部分、各種歯車などに付着している異物を除去できる。また、供給タンクを1個だけ設ける構成と比べて、多くの純水やアルカリ溶液でフラッシングを行うことができ、洗浄能力を向上できる。さらに、作業者は、フラッシングを行うにあたり入力部71を操作するだけでよいため、直接アルカリ溶液を取り扱うことによる薬傷のリスクを低減できるとともに、作業者による作業のばらつきも低減できる。
【0051】
(2)第1供給タンク41と第2供給タンク42とを設けているため、第1供給タンク41と第2供給タンク42とで同じ処理、例えば、スラリー除去工程を行う際に、第1供給タンク41での純水の循環中に第2供給タンク42での純水の貯留を行い、第1供給タンク41での純水の循環終了後に第2供給タンク42での純水の循環を直ちに開始できる。したがって、第1,第2循環ラインのフラッシングを短時間で行うことができる。
【0052】
(3)加熱されたアルカリ溶液を用いてフラッシングを行うため、アルカリ溶液の固形物の除去能力を向上させることができ、フラッシング時間の短縮化を図ることができる。また、スラリーの冷却に用いる熱交換器451に温水を導入することでアルカリ溶液を加熱しているため、従来ある設備に温水を導入する構成を設けるだけでよく、設備投資を最小限に抑えることができる。
【0053】
(4)フィルタ440の目詰まりなどで供給ライン43を流通する液体の圧力が小さくなっても、ポンプ調整手段734の制御により回転子439の回転数を高くして、液体の圧力をほぼ一定に保つため、所定の洗浄能力を維持できる。さらに、フラッシング判定手段735は、回転子439の回転数が設定回転数M以上となった場合には、警告部72により、その旨を作業者に警告する。このため、作業者は、適切な対応を取ることができる。
【0054】
(5)フラッシング判定手段735は、回転子439の回転数が設定回転数M以上となり、かつ、第1CMP装置21および第2CMP装置22が動作中でない場合には、フラッシング制御手段732にフラッシングを開始させる。このため、作業者の手を煩わせることなく、あるいは、作業者が不在の場合であっても、適切なタイミングでフラッシングを開始できる。
【0055】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しな
い範囲内において種々の改良および設計の変更などが可能である。
すなわち、圧力検出器441およびポンプ調整手段734を設けずに、供給ライン43を流通する液体の圧力を調整しない構成としてもよい。また、回転子439の回転数が高くなり、かつ、第1CMP装置21が動作していない場合であっても、フラッシングを自動的に開始せずに、警告を発するだけであってもよい。
さらに、アルカリ溶液を加熱しなくてもよい。また、アルカリ溶液を加熱する構成としては、スラリーを冷却する熱交換器451とは別の熱交換器、あるいは、ヒータを設けてもよい。
そして、第1循環弁436および第2循環弁437を設けずに、第1上流ライン431と第2上流ライン432との接続点にCMPシステム1個の三方弁を供給元切替部として設けてもよい。
また、セパレータ64を設けずに、回収先切替部として、下流ライン633の排出孔に三方弁を設けるとともに、この三方弁の導出部に、第1供給タンク41および第2供給タンク42に液体を排出するためのラインをそれぞれ設けてもよい。さらに、セパレータ64を設けずに、回収先切替部として、下流ライン633の排出側を2個に分岐させ、この分岐されたラインのそれぞれに弁を設けてもよい。
さらには、第1供給タンク41と第2供給タンク42とで同じ処理、例えば、スラリー除去工程を行う際に、第1供給タンク41での純水の循環中に第2供給タンク42での純水の貯留を行わなくてもよい。
また、ウェーハWの片面を研磨する片面研磨装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
3…スラリー循環装置
21,22…CMP装置(研磨装置)
41…第1供給タンク
42…第2供給タンク
43…供給ライン
51,52…第1,第2スラリー補給部
53,54…第1,第2DIW補給部(純水補給部)
55…アルカリ溶液補給部
63…回収ライン
64…セパレータ(回収先切替部)
436,437…第1,第2循環弁(供給元切替部)
438…回転制御式ポンプ(ポンプ)
439…回転子
441…圧力検出器
451…熱交換器
455…冷水供給部
457…温水供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨装置にスラリーを供給し、前記研磨装置から排出されるスラリーを回収するスラリー循環装置であって、
液体を貯留可能かつ排水可能な第1供給タンクおよび第2供給タンクと、
前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに貯留された液体を前記研磨装置に供給する供給ラインと、
前記研磨装置に供給される液体の供給元を前記第1供給タンクと前記第2供給タンクとの間で切り替える供給元切替部と、
前記研磨装置から排出される液体を前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに回収する回収ラインと、
前記回収ラインによる液体の回収先を前記第1供給タンクと前記第2供給タンクとの間で切り替える回収先切替部と、
前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクのうち少なくとも一方にスラリーを補給するスラリー補給部と、
前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに純水を補給する純水補給部と、
前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクにアルカリ溶液を補給するアルカリ溶液補給部とを備える
ことを特徴とするスラリー循環装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスラリー循環装置において、
前記供給ラインには、当該供給ラインを流れる液体との間で熱交換を行う熱交換器が設けられ、
前記熱交換器には、当該熱交換器に冷水を供給する冷水供給部と、温水を供給する温水供給部とが接続されている
ことを特徴とするスラリー循環装置。
【請求項3】
研磨装置にスラリーを供給し、前記研磨装置から排出されるスラリーを回収するスラリー循環装置のフラッシング方法であって、
前記スラリー循環装置は、
液体を貯留可能かつ排水可能な第1供給タンクおよび第2供給タンクと、
前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに貯留された液体を前記研磨装置に供給する供給ラインと、
前記研磨装置から排出される液体を前記第1供給タンクおよび前記第2供給タンクに回収する回収ラインとを備え、
前記第1供給タンクと前記供給ラインと前記回収ラインとは、これらの間で液体を循環させる第1循環ラインを構成し、
前記第2供給タンクと前記供給ラインと前記回収ラインとは、これらの間で液体を循環させる第2循環ラインを構成し、
前記第1供給タンクに貯留された純水を前記第1循環ラインで循環させてスラリーを除去する第1スラリー除去工程と、
前記第1スラリー除去工程を実施後、前記第2供給タンクに貯留された純水を前記第2循環ラインで循環させてスラリーを除去する第2スラリー除去工程と、
前記第2スラリー除去工程を実施後、前記第1供給タンクに貯留されたアルカリ溶液を前記第1循環ラインで循環させてスラリーの固着物を除去する第1固着物除去工程と、
前記第1固着物除去工程を実施後、前記第2供給タンクに貯留されたアルカリ水溶液を前記第2循環ラインで循環させてスラリーの固着物を除去する第2固着物除去工程と、
前記第2固着物除去工程を実施後、前記第1供給タンクに貯留された純水を前記第1循環ラインで循環させてスラリーの残渣物を除去する第1残渣物除去工程と、
前記第1残渣物除去工程を実施後、前記第2供給タンクに貯留された純水を前記第2循環ラインで循環させてスラリーの残渣物を除去する第2残渣物除去工程とを実施する
ことを特徴とするスラリー循環装置のフラッシング方法。
【請求項4】
請求項3に記載のスラリー循環装置のフラッシング方法において、
前記第1スラリー除去工程の実地中に、前記第2供給タンクに純水を貯留し、
前記第2スラリー除去工程の実施中に、前記第1供給タンクの純水を排水するとともに当該第1供給タンクにアルカリ溶液を貯留し、
前記第1固着物除去工程の実施中に、前記第2供給タンクの純水を排水するとともに当該第2供給タンクにアルカリ溶液を貯留し、
前記第2固着物除去工程の実施中に、前記第1供給タンクのアルカリ溶液を排水するとともに当該第1供給タンクに純水を貯留し、
前記第1残渣物除去工程の実施中に、前記第2供給タンクのアルカリ溶液を排水するとともに当該第2供給タンクに純水を貯留する
ことを特徴とするスラリー循環装置のフラッシング方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載のスラリー循環装置のフラッシング方法において、
前記供給ラインに、回転子を回転させることにより液体の流量を制御するポンプと、前記ポンプよりも下流側における液体の圧力を検出する圧力検出器とを設け、
前記圧力検出器での圧力の検出結果に基づいて、液体の圧力が予め設定された設定圧力値となるように、前記ポンプの回転子の回転数を調整する回転数調整工程と、
前記回転子の回転数が予め設定された設定回転数以上となった場合に、前記供給ラインのフラッシングが必要であると判定するフラッシング判定工程と、
このフラッシング判定工程でフラッシングが必要であると判定されると、その旨を警報する警報工程とを実施する
ことを特徴とするスラリー循環装置のフラッシング方法。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のスラリー循環装置のフラッシング方法において、
前記供給ラインに、回転子を回転させることにより液体の流量を制御するポンプと、前記ポンプよりも下流側における液体の圧力を検出する圧力検出器とを設け、
前記圧力検出器での圧力の検出結果に基づいて、液体の圧力が予め設定された設定圧力値となるように、前記ポンプの回転子の回転数を調整する回転数調整工程と、
前記回転子の回転数が予め設定された設定回転数以上となった場合に、前記供給ラインのフラッシングが必要であると判定するフラッシング判定工程と、
前記研磨装置においてウェーハを研磨中か否かを判定する研磨判定工程と、
前記フラッシング判定工程でフラッシングが必要であると判定され、かつ、前記研磨判定工程でウェーハの研磨中でないと判定されると、前記第1スラリー除去工程を開始させるフラッシング開始制御工程とを実施する
ことを特徴とするスラリー循環装置のフラッシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−250324(P2012−250324A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125217(P2011−125217)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】