説明

スレート葺屋根におけるソーラーパネル用架台の基礎装置

【課題】 本発明は、特にスレート葺屋根において、寒冷地におけるソーラーパネルの架設部材の取付けによる積雪荷重と雨漏りの問題を解決し、強風による屋根面への浮揚力の阻止を実現するようにするものである。
【解決手段】 全体が適当な巾と長さを有して成る帯板材1の前端部に下側方に所定の高さ部6を設けるとともに帯板材に平行に適当長さ曲折した曲折平行部5を設け、前記帯板材の前側部左右両縁部に直立部8,8を設け、この両直立部間の帯板材上面部に間隔をおいて立設した架設体10の平面前側部に横長孔11を,この横長孔に隣接して縦長孔12を設け、任意の前記長孔に螺子13,14を嵌挿して架台部の取付けを行い、前記架設体の後側方に設けた抑止板15の上端部に曲折部17を設けて成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スレート葺屋根におけるソーラーパネル用架台の基礎装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、長年屋根に設置する雪止め取付具関係の研究開発を続けて来たが、近年のソーラーパネルの屋根面設置の普及にともない、雪止め装置の技術をソーラーパネルの取付けに応用せんと研究し、わが国でも普及しているスレート葺屋根における設置を目的としたソーラーパネル用架台のための基礎装置を提供せんとするものである。
【0003】
現在、施工されているスレート葺屋根は、セメント素材が5〜6mm位厚の薄物から成るものであるため、その上面部にソーラーパネルを設置することになると、その重量で屋根材が破損し易いリスクがあり、また当業界における設置の歴史が浅いため、異業種分野からの参入にはその施工技術に大きな隔差があり、雨漏りや結露の発生による問題が起っていた。
【0004】
一般に普及している取付け金具にあっては、建物の外部と内部との10℃以上の温度差によって住宅の構造材が腐蝕し易い現象を起し、住宅の耐久性に影響を与えているし、台風などによるソーラーパネルにかかる風圧力によって、屋根材が破損し易い状態になっていた。
【0005】
しかし、特許文献等を調査しても、特にスレート葺屋根に設置するようなソーラーパネル用架台の施工技術はまだ知られていないが、関係のある特許文献としては、次のようなものが存していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3299877号公報
【特許文献2】特開2001−77394号公報
【特許文献3】特開平11−124971号公報
【特許文献4】特開2003−82824号公報
【特許文献5】特許第3455206号公報
【特許文献6】特許第3455210号公報
【特許文献7】特許第3869292号公報
【特許文献8】特許第3894931号公報
【特許文献9】特許第3934453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明にあっては、特にスレート葺屋根において、ソーラーパネルの設置のための架設部材は、屋根裏が大気に直接触れることなく、屋根を葺く際に使用する材料用の通孔を利用して釘やビスなどによる取付けが可能となり、また寒冷地におけるソーラーパネルの架設部材の取付けによる積雪荷重と雨漏りの問題を解決し、強風による屋根面への浮揚力の阻止を実現するようにしているのである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、全体が適当な巾と長さを有して成る帯板材の前端部に下側方に所定の高さ部を設けるとともに帯板材に平行に適当長さ曲折した曲折平行部を設け、前記帯板材の前側部左右両縁部に直立部を設け、この両直立部間の帯板材上面部に間隔をおいて立設した架設体の平面前側部に横長孔を,この横長孔に隣接して縦長孔を設け、任意の前記長孔に螺子を嵌挿して架台部の取付けを行い、前記架設体の後側方に設けた抑止板の上端部に曲折部を設けて成るものである。
【0009】
前記帯板材にあっては、これを長尺に延長して構成するもの(図1参照)や、抑止板の位置よりやや後側部で終る短く構成するもの(図4参照)があり、また帯板材の前端部からの下側方への曲折平行部の長さを前記短い帯板材の長さに合わせて構成するもの(図5参照)がある。
【発明の効果】
【0010】
第1に、スレート葺建物の屋根面に設置するソーラーパネルの取付け用架台の設置のための装置全体は、軒先部にかかる風圧による浮揚力を極力抑制するように構成しているから、屋根材やソーラーパネル材の破損や腐敗が起ることがなく、耐久性のある装置となっている。
【0011】
第2に、帯板材の左右両側縁の直立部によって、屋根面を流下する雨水の案内をスムーズにできるようにしているから、屋根材への影響は殆どない。
【0012】
第3に、架台の取付けのための調整は架設体上面部における長孔と螺子との関係によって、自在かつ確実に行うことができるものであるから、安定と安全を十分保持することができる装置となっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】全体の正斜視図
【図2】同上の背斜視図
【図3】同上の右側面図
【図4】他例の全体の正斜視図
【図5】他他例の全体の背斜視図
【図6】同上の全体の左側面図
【図7】同上の全体の平面図
【図8】架台取付け時の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
スレート葺屋根の軒先部に本装置を設置するときは、実施例に合わせて次のように施工する。
【0015】
第1実施例(図1)の場合にあっては、屋根面の軒先部に、帯板材と高さ部と曲折平行部とによって形成されている空間部を差し込んだ後に、帯板材の後端部に設けた取付部の釘孔に釘を屋根板材cの適所に固着する。
【0016】
そして、この装置の架設体の上面部にソーラーパネル用の架設部材a,bを載置するが、そのとき前記架設体上の横長孔又は縦長孔のいずれかを選択して螺子を嵌挿し、これを自在に移動調整して架設部材と連結するようにする。
【0017】
このような架設体上の横縦長孔と螺子の嵌挿関係は、後記する第2,第3実施例の場合にあっても同様である。
【0018】
第2実施例(図4)の場合にあっては、第1実施例の場合と同様、屋根面の軒先部に、帯板材と高さ部と曲折平行部とによって形成されている空間部を差し込んでおくようにする。
【0019】
第3実施例(図5)の場合にあっては、嵌挿する取付け面積が広くなるように空間部を深く差し込んで取付けるものである。
【実施例】
【0020】
1は全体が適当な巾と長さを有して成る帯板材で、比較的長尺に成る帯板材の後端部には段部2を介して取付部3を設け、この取付部には適当数の釘孔4を設ける。
【0021】
前記帯板材1の後側部の中央部には通口を設け、この通口の延長線上の前記段部2にも通口を設けるが、この両通口は太陽熱射によって起る屋根材や金具類の変形を未然に防止するための放熱作用を行うものである。
【0022】
5は前記帯板材1の前端部の下側方に所定の高さ部6を設けこれを帯板材に平行に適当長さに曲折形成した曲折平行部で、この曲折平行部と前記帯板材との間には空間部7を形成する。
【0023】
前記帯板材1の上側部と高さ部6と曲折平行部5との間に形成するこの空間部7には、屋根板部を差し込み嵌挿するようにするが、これによって帯板材の当該部分への風による浮揚力を抑止することになる。
【0024】
8,8は前記帯板材1の前側部の左右両側縁部に曲折立設した直立部で、この両直立部の機能は帯板材1上を流れる雨水のガイドとなる。
【0025】
10は前記両直立部8,8から間隔をおいて前記帯板材の上面部に前後の支板9,9を固着して立設した架設体で、この架設体の左右両側面部は図示のように開放状態にある。
【0026】
11は前記架設体10の平面前側部に設けた横長孔で、この横長孔に隣接して縦長孔12を設ける。
【0027】
前記両横長孔11と縦長孔12に対しては選択的に雄螺子13を嵌挿し、これに雌螺子14を螺合し、載置するソーラーパネル用の架設部材a,bの位置を前後自在に調整して固定する。
【0028】
15は前記架設体10から後側方に間隔をおいて帯板材1上に支板16,16を固着して設置した抑止板で、この抑止板の上端部は下側角度方向への曲折部17を設けるが、この曲折部は角度なしで抑止板15の補強部として形成してもよい。
【0029】
前記抑止板15の後側部には左右に曲折突設した羽根片18,18を設け、雨水流に対する補助や風力に対する抑止力の補助をする。
【0030】
前記抑止板15全体の機能は、本具に接する風圧力の方向を下方に誘導するようにする。
【0031】
図面においては3つの実施例を示している。即ち、図1乃至図3は第1例、図4は第2例、図5乃至図7は第3例であるが、部分的に若干の相違はあっても、その基本的構成はすべて共通である。
【0032】
これらの実施例の違いは、施工されているスレート葺屋根面の構造の違いを予想しているものであるが、ソーラーパネルの取付用架台を同屋根面上に取付ける手段に変わりはない。
【符号の説明】
【0033】
1 帯板材
2 段部
3 取付部
4 釘孔
5 曲折平行部
6 高さ部
7 空間部
8,8 直立部
9,9 支板
10 架設体
11 横長孔
12 縦長孔
13 雄螺子
14 雌螺子
15 抑止板
16,16 支板
17 曲折部
18,18 羽根片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が適当な巾と長さを有して成る帯板材の前端部に下側方に所定の高さ部を設けるとともに帯板材に平行に適当長さ曲折した曲折平行部を設け、前記帯板材の前側部左右両縁部に直立部を設け、この両直立部間の帯板材上面部に間隔をおいて立設した架設体の平面前側部に横長孔を,この横長孔に隣接して縦長孔を設け、任意の前記長孔に螺子を嵌挿して架台部の取付けを行い、前記架設体の後側方に設けた抑止板の上端部に曲折部を設けて成ることを特徴とするスレート葺屋根におけるソーラーパネル用架台の基礎装置。
【請求項2】
長尺に成る帯板材の後端部に取付部を設けて成る請求項1に記載したスレート葺屋根におけるソーラーパネル用架台の基礎装置。
【請求項3】
帯板材の長さが抑止板の位置よりやや後側部で終る請求項1に記載したスレート葺屋根におけるソーラーパネル用架台の基礎装置。
【請求項4】
帯板材の前端部から下側方への曲折平行部の長さを帯板材の長さに合わせて成る請求項3に記載したスレート葺屋根におけるソーラーパネル用架台の基礎装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate