説明

ズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラム

【課題】監視カメラやビデオカメラなどにおいて、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを的確に補正する。
【解決手段】被写界深度判定部155が、切替先バリエータレンズ位置とあらかじめ記憶部130に登録されている被写界深度の閾値とを比較し、前記切替先バリエータレンズ位置が被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する。この結果により、バリエータレンズ102の停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレの有無を判定できる。そして、被写界深度判定部155の判定結果により、バリエータレンズ102の停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレがあることが判明した場合に、バリエータレンズ102を直接移動させることにより補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視カメラやビデオカメラなどに用いられるズームレンズのバリエータレンズやフォーカスレンズの位置制御を行うズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラやビデオカメラなどで、異なる距離の被写体を撮影する機能として、プリセット機能がある。プリセット機能とは、ズームレンズのバリエータレンズ位置、フォーカスレンズ位置を任意の箇所で記憶しておき、プリセット位置を切り替えるたびに前記バリエータレンズ位置や前記フォーカスレンズ位置を読み出し、所定の位置にズームレンズのバリエータレンズやフォーカスレンズを移動させるものである。
【0003】
プリセット機能では、記憶されているバリエータレンズ位置、フォーカスレンズ位置に対して、ズームレンズのバリエータレンズやフォーカスレンズを誤差なく駆動させ停止させることが理想である。しかし、実際は、モータをはじめとする各駆動手段のヒステリシスや回路出力誤差などにより、バリエータレンズやフォーカスレンズの停止位置精度にばらつきが生じる。このばらつきは、レンズを通した撮影画像上では、被写界深度が深ければピントボケとして目立つことはないが、被写界深度が浅い場合にはピントボケがはっきり目立つ。
【0004】
このようなピントボケを回避するため、プリセット位置の切り替え後、すなわちバリエータレンズ、フォーカスレンズを切替先位置に移動させた後に、オートフォーカス処理を行う技術が提案されている(たとえば、特許文献1〜3を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−156849号公報
【特許文献2】特開2000−278582号公報
【特許文献3】特開平11−183777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バリエータレンズは、変倍スピードの上昇が求められていることと、フォーカスレンズの位置精度の要求に比べて高分解能が求められていないことを理由として、フォーカスレンズと比べて、モータの送り精度が大きく設定されている。モータの送り精度が大きいということは、バリエータレンズは停止位置ズレが発生しやすいということを意味する。このようなバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケの発生を解消するために、オートフォーカス処理を行うことは大変有効である。
【0007】
図5は、従来のオートフォーカスの手法を説明するための図である。図5に示すオートフォーカスの手法は、いわゆる山登り制御といわれるもので、上記各特許文献1〜3に記載の技術をはじめとして従来から広く行われているものである。山登り制御とは、図5に示すように、撮影画像のコントラストが最大値となる位置(これをピント位置という)を検出するために、フォーカスレンズを前記ピント位置をまたぐように往復させ、徐々に前記ピント位置に収束させる手法である。
【0008】
しかし、従来のオートフォーカス処理では、停止位置ズレが発生しているバリエータレンズではなく、フォーカスレンズを移動させてピントを合わせるので、プリセットを繰り返し行えば行うほど、バリエータレンズの位置ズレが大きくなる。この結果、ピントボケはいうに及ばず、撮影画像の倍率が設定値から大きくズレてしまうという問題が発生する。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを容易に補正できるズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、請求項1の発明にかかるズームレンズ制御装置は、プリセット機能を有するズームレンズ制御装置であって、ズームレンズを駆動させる駆動手段と、前記ズームレンズを介して得られた撮影画像を映像信号に変換する映像信号変換手段と、切替先のプリセット位置情報を取得するプリセット位置情報取得手段と、前記プリセット位置情報取得手段が取得した切替先プリセット位置情報から切替先バリエータレンズ位置を算出するバリエータレンズ位置算出手段と、前記プリセット位置情報取得手段が取得した切替先プリセット位置情報から切替先フォーカスレンズ位置を算出するフォーカスレンズ位置算出手段と、前記切替先バリエータレンズ位置と所定の被写界深度の閾値とを比較し、前記切替先バリエータレンズ位置が前記所定の被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する被写界深度判定手段と、前記被写界深度判定手段により前記切替先バリエータレンズ位置が前記所定の被写界深度の閾値内にないと判断した場合に、前記駆動手段を駆動させて前記ズームレンズのバリエータレンズのみによるオートフォーカス処理を実行するバリエータオートフォーカス処理手段と、前記映像信号変換手段から取得した映像信号をもとに、撮影画像のコントラストが最大となっているか否かの判定を行い、前記撮影画像のコントラストが最大となっている場合に前記バリエータオートフォーカス処理手段の動作を停止させる最大コントラスト判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを的確に補正することができる。
【0012】
また、請求項2の発明にかかるズームレンズ制御装置は、上記に記載の発明において、さらに、前記駆動手段を駆動させて前記ズームレンズのフォーカスレンズによるオートフォーカス処理を実行するオートフォーカス処理手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、請求項1に記載の発明によるバリエータオートフォーカス処理を行っても解消できないピントボケを改善することができる。
【0014】
また、請求項3の発明にかかるズームレンズ制御装置は、上記に記載の発明において、さらに、記憶手段を備え、前記記憶手段には前記プリセット位置情報や前記所定の被写界深度の閾値などが記憶されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、装置内部に必要とされるプリセット位置情報や所定の被写界深度の閾値などを登録しておくことができるため、処理効率を向上させることができる。
【0016】
また、請求項4の発明にかかるズームレンズ制御装置は、上記に記載の発明において、さらに、所定の時間ごとに自動的にプリセット位置を切り替えるオートプリセット切替手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、所定の時間ごとに自動的にプリセット位置の切り替えが可能になる。
【0018】
また、請求項5の発明にかかるズームレンズ制御方法は、切替先プリセット位置情報を取得するプリセット位置情報取得工程と、前記切替先プリセット位置情報から切替先バリエータレンズ位置および切替先フォーカスレンズ位置を算出する切替先位置算出工程と、前記切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する被写界深度判定工程と、前記被写界深度判定工程により前記切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にないと判定された場合に、前記切替先バリエータレンズ位置および前記切替先フォーカスレンズ位置に対応するようにズームレンズの状態を仮設定するズームレンズ仮設定工程と、前記ズームレンズ仮設定工程により仮設定されたズームレンズに対してバリエータレンズのみを用いてオートフォーカス処理を行うバリエータオートフォーカス処理工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを的確に補正することができる。
【0020】
また、請求項6の発明にかかるズームレンズ制御プログラムは、請求項5に記載のズームレンズ制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、請求項5に記載のズームレンズ制御方法をコンピュータに実行させることが可能なプログラムを提供できる。
【発明の効果】
【0022】
この発明にかかるズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムによれば、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを的確に補正することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、この発明にかかるズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
(ズームレンズ制御装置の機能的構成)
図1は、この発明の実施の形態にかかるズームレンズ制御装置の機能的構成を示す図である。このズームレンズ制御装置100は、ズームレンズ101を駆動させる駆動部110と、ズームレンズ101を介して得られた像を映像信号に変換する映像信号変換部120と、ズームレンズ101を制御するための各種情報を記憶する記憶部130と、プリセット切り替え動作などを実行させる操作部140と、ズームレンズ101のアイリス(絞り)104の開閉動作を実行させるアイリス操作部141と、ズームレンズ101の制御データを生成する制御部150と、を備えている。
【0025】
駆動部110は、ズームレンズ101の変倍をつかさどるバリエータレンズ102を駆動させるバリエータレンズ駆動モータ111と、ズームレンズ101のフォーカシングをつかさどるフォーカスレンズ103を駆動させるフォーカスレンズ駆動モータ112と、バリエータレンズ駆動モータ111およびフォーカスレンズ駆動モータ112の駆動を制御するモータドライバ113と、を備えている。
【0026】
映像信号変換部120は、ズームレンズ101を介して得られた像を映像信号に変換する撮像素子121と、撮像素子121からの映像信号を制御部150へ入力するための映像信号インタフェース(I/F)122と、を備えている。
【0027】
記憶部130は、ズームレンズ101を制御するための各種情報(たとえば、プリセット位置情報や所定の被写界深度の閾値など)を記憶する。この記憶部130は、EEPROM131や、RAM132、ROM133などからなっている。なお、この記憶部130は、制御部150の外部に設けてもよいし、制御部150の内部に設けることもできる。また、EEPROM131を制御部150の外部に、RAM132、ROM133を制御部150の内部に設けることもできる。
【0028】
制御部150は、検出部151と、プリセット位置情報取得部152と、バリエータレンズ位置算出部153と、フォーカスレンズ位置算出部154と、被写界深度判定部155と、最大コントラスト判定部156と、バリエータオートフォーカス処理部157と、オートフォーカス処理部158と、オートプリセット切替部159と、アイリス駆動部160と、マニュアルアイリス制御部161と、オートアイリス制御部162と、を備えている。
【0029】
検出部151は、操作部140からプリセット切り替え指示が入力されたことを検出する。プリセット位置情報取得部152は、検出部151がプリセット切り替え指示の入力を検出した際に記憶部130からあらかじめ登録されている切替先プリセット位置情報を取得する。プリセット位置情報取得部152が取得するプリセット位置情報であるが、操作部140が操作されるたびに、記憶部130に登録されているプリセット位置情報を登録順(たとえば、1,2,3,4,・・・と昇順、または・・・,4,3,2,1と降順)に取得するものでも、記憶部130に登録されているプリセット位置情報が一括でモニタ画面(不図示)などに表示され、切り替えたいプリセット位置を直接指定できるようなものでもよい。また、オートプリセット切替部159を設け、所定の時間ごとに自動的にプリセット位置を切り替えるようなオートプリセット機能を実行するものであってもよい。
【0030】
バリエータレンズ位置算出部153は、プリセット位置情報取得部152が取得した切替先プリセット位置情報から切替先バリエータレンズ位置(バリエータレンズ102の切替先位置)を算出する。フォーカスレンズ位置算出部154は、プリセット位置情報取得部152が取得した切替先プリセット位置情報から切替先フォーカスレンズ位置情報(フォーカスレンズ103の切替先位置)を算出する。
【0031】
次に、被写界深度判定部155が切替先バリエータレンズ位置と被写界深度とを比較することになるが、被写界深度判定部155の動作を説明する前に、バリエータレンズ102の位置およびフォーカスレンズ103の位置と被写界深度との関係について説明する。一般に、バリエータレンズ102(またはフォーカスレンズ103)の位置が望遠側にある場合は被写界深度が浅く、バリエータレンズ102(またはフォーカスレンズ103)の位置が広角側にある場合は被写界深度が深くなる。バリエータレンズ102やフォーカスレンズ103の停止位置のばらつきは、バリエータレンズ駆動モータ111、フォーカスレンズ駆動モータ112のヒステリシスや、モータドライバ113の出力誤差などによって生じることから、あらかじめ予測することが可能である。そこで、以下のようにあらかじめ被写界深度と各レンズの停止位置の許容範囲との関係を求めておく。
【0032】
図2は、バリエータレンズおよびフォーカスレンズの特性を示すグラフである。図2に示すグラフから、フォーカスレンズ103に関しては全可動範囲で光学要求値(被写界深度)を満足するが、バリエータレンズ102は光学要求値(被写界深度)を満足しない位置が生じることが分かる。そこで、この実施の形態では、フォーカスレンズ103とその光学要求値に関しては問題とせず、バリエータレンズ102とその光学要求値のみを取り上げることにする。
【0033】
図3は、光学要求値(被写界深度)とバリエータレンズおよびフォーカスレンズ停止位置の許容範囲との関係を説明するための図である。この実施の形態では、まず、バリエータレンズ102の全可動範囲内における停止位置の範囲を、バリエータレンズ駆動モータ111のヒステリシスやモータドライバ113の出力誤差などを考慮して求める。そして、これに、光学要求値(被写界深度)を重ねあわせる(図3の上側のグラフ)。このグラフから、Aの範囲では、光学要求値>停止位置となっているので、バリエータレンズ102の停止位置がばらついていてもピントは合っている(実使用上支障はない程度)という特性が導き出せる。一方、Bの範囲では、光学要求値<停止位置となっているので、バリエータレンズ102の停止位置がばらつくとピントがボケるという特性が導き出せる。これより、バリエータレンズ102の位置に対する被写界深度の閾値Cを求めることができる。この結果、切替先のバリエータレンズ102の位置が閾値Cのどちらかにあるかを判定し、切替先のバリエータレンズ102の位置がAの範囲内にあれば(すなわち閾値C内にある)バリエータレンズ102をその位置に固定する。一方、切替先のバリエータレンズ102の位置がBの範囲内にあれば(すなわち閾値C外にある)バリエータレンズ102をまず当該位置に移動させた後に、バリエータレンズ102でいわゆる山登り制御を実行してピント調整を行う。
【0034】
以上のように、この実施の形態では、バリエータレンズ102の実際の停止位置と被写界深度との関係から撮像画像にピントボケが許容できるものか否かを判定し、許容できない程度のものであった場合に限りバリエータレンズ102の位置補正を行ってピント調整を行うものとした。
【0035】
また、バリエータレンズ102は、本来変倍をつかさどるものであるため、その位置がズレると設定倍率にズレが生じることになる。このため、ピント調整のために行うバリエータレンズ102の位置補正が同時に設定倍率のズレを補正することになる。
【0036】
ところで、被写界深度はアイリス104の位置によっても変化するが、被写界深度が一番浅くなるのはアイリス104が開放状態のときである。また、ピントが合っていると判断できる範囲が一番狭くなるのは、被写界深度が一番浅いときである。そこで、アイリス104を開放し被写界深度が一番浅い状態で被写界深度と各レンズの停止位置との関係の測定を開始すればよい。このようにすれば、仮に像の明るさが増しアイリス104を徐々に閉じていくような状態になっても、ピントが合っていると判断できる範囲は広くなる傾向になり、ピント合わせの精度が劣化するようなことはない。なお、アイリス104を絞った状態で被写界深度と各レンズの停止位置との関係の測定を開始すると、像が暗くなりアイリス104を徐々に開いていくような状態になった場合、ピントが合っていると判断できる範囲がだんだん狭くなる傾向になり、ピント合わせが困難になる。また、アイリス104の位置によるピントボケが発生するおそれが大きくなる。以上から、この実施の形態では、アイリス104を開放状態で、被写界深度と各レンズの停止位置との関係を求めることにする。
【0037】
そこで、制御部150は、アイリス104を駆動させるアイリス駆動部160と、アイリス操作部141からアイリス制御指示が入力されたことを検出すると、アイリス駆動部160を介してアイリス104の開閉を制御するマニュアルアイリス制御部161と、を備えている。また、制御部150は、映像信号変換部120から送られた映像信号から像の明るさを判断し、その像の明るさに基づいて、アイリス駆動部160を介してアイリス104の開閉を制御するオートアイリス制御部162も備えている。
【0038】
被写界深度判定部155は、切替先バリエータレンズ位置とあらかじめ記憶部130に登録されている被写界深度の閾値とを比較し、切替先バリエータレンズ位置が被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する。この結果、切替先バリエータレンズ位置が被写界深度の閾値内にある場合は、切替先バリエータレンズ位置および切替先フォーカスレンズ位置の情報をそのままモータドライバ113へ送り、この情報に基づき、バリエータレンズ駆動モータ111およびフォーカスレンズ駆動モータ112を制御し、バリエータレンズ102およびフォーカスレンズ103を切替先プリセット位置へ移動させる。一方、切替先ズーム位置が被写界深度の閾値内にない場合は、上記と同様に、バリエータレンズ102およびフォーカスレンズ103を切替先プリセット位置へ移動させた後、後述するバリエータオートフォーカス処理を実行する。
【0039】
最大コントラスト判定部156は、映像信号変換部120から送られてくる映像信号をもとに、撮影画像のコントラストが最大となっているか否かの判定を行う。
【0040】
バリエータオートフォーカス処理部157は、モータドライバ113を制御して、バリエータレンズ102を駆動させる。そして、最大コントラスト判定部156が撮影画像のコントラストが最大となったと判定すると、直ちにバリエータレンズ102の駆動を停止させる。この結果、バリエータレンズ102が撮影画像のコントラストが最大値となる位置(ピント位置)に固定され、バリエータレンズ102によるオートフォーカス処理(バリエータオートフォーカス処理)が終了する。この実施の形態では、いわゆる山登り制御を実行することで、バリエータレンズ102によるピント位置を検出する。
【0041】
オートフォーカス処理部158は、前述のバリエータオートフォーカス処理を行ってもピントボケを解消できなかった場合に駆動される。すなわち、オートフォーカス処理部158は、モータドライバ113を制御して、フォーカスレンズ103を駆動させる。そして、最大コントラスト判定部156が撮影画像のコントラストが最大となった判定すると、直ちにフォーカスレンズ103の駆動を停止させる。この結果、バリエータレンズ102が撮影画像のコントラストが最大値となる位置(ピント位置)に固定され、オートフォーカス処理が終了する。ここでも、いわゆる山登り制御を実行することでピント位置を検出する。
【0042】
以上のようにして、このズームレンズ制御装置100は、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズ102の停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを、直接バリエータレンズ102を移動させる(バリエータオートフォーカス処理)ことにより補正する。したがって、バリエータレンズ102の停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを的確に補正できる。また、ズームレンズ制御装置100によるバリエータオートフォーカス処理は、実使用上支障をきたす程度にピントボケが発生した場合にのみ実行されるので、所望の撮影画像が得られるまでの時間を短縮し、効率的な撮影を行うことができるようになる。
【0043】
このズームレンズ制御装置100の処理は、あらかじめ登録されているプリセット位置情報に基づいて実行されるが、プリセット位置情報の登録の手法は、従来技術と同様であるため、説明は省略した。
【0044】
また、ズームレンズ制御装置100の制御部150の機能は、CPUに所定のプログラムを実行させることで代替することも可能である。
【0045】
(ズームレンズ制御の処理手順)
図4は、ズームレンズ制御の処理手順を示すフローチャートである。以下、この図4のフローチャートに基づいて、ズームレンズ制御装置100が実行するズームレンズ制御の処理手順を説明する。
【0046】
図4のフローチャートにおいて、まず、切替先プリセット位置情報を取得する(ステップS401)。この処理は、前述のプリセット位置情報取得部152の処理により実行される。
【0047】
次に、切替先バリエータレンズ位置および切替先フォーカスレンズ位置を算出する(ステップS402)。ここでは、前述のバリエータレンズ位置算出部153の処理により、ステップS401で取得した切替先プリセット位置情報から切替先バリエータレンズ位置(バリエータレンズ102の切替先位置)を算出する。同様に、前述したフォーカスレンズ位置算出部154の処理により、ステップS401で取得した切替先プリセット位置情報から切替先フォーカスレンズ位置(フォーカスレンズ103の切替先位置)を算出する。
【0048】
次に、切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する(ステップS403)。ここでは、前述の被写界深度判定部155の処理により、切替先バリエータレンズ位置と、あらかじめ記憶部130に登録されているバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値(図3の閾値C)とを比較し、切替先バリエータレンズ位置が当該被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する。ここで、切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にない場合(ステップS403:No)は、所定の状態にズームレンズ101を仮設定する(ステップS404)。ここでは、バリエータレンズ102およびフォーカスレンズ103を切替先位置へ移動させる。そして、バリエータオートフォーカス処理によるピントあわせを行う(ステップS405)。この処理は、前述のように、最大コントラスト判定部156とバリエータオートフォーカス処理部157により行われる。
【0049】
一方、ステップS403において切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にある場合(ステップS403:Yes)は、所定の状態にズームレンズ101を設定する(ステップS406)。具体的には、バリエータレンズ102およびフォーカスレンズ103を切替先位置に移動させ固定する。
【0050】
この実施の形態では、上記のような処理を実行することで、変倍をつかさどるバリエータレンズ102を移動させてズームレンズ101のピント調整を行うが、以下、図3を参照しながら、具体的なズームレンズ101の制御例を説明する。
【0051】
第1例:現在のバリエータレンズ位置(1)からプリセット切り替えで(2)の位置へ移動させる場合
(ア)切替先バリエータレンズ位置(2)を算出し、(2)の位置は閾値C内にあるか否かを判定する。
(イ)(2)の位置は閾値C外にあるので、バリエータレンズ102を(2)の位置へ移動させた後、バリエータオートフォーカス処理を実行する。
【0052】
第2例:現在のバリエータレンズ位置(3)からプリセット切り替えで(4)の位置へ移動させる場合
(ア)切替先バリエータレンズ位置(4)を算出し、(4)の位置は閾値C内にあるか否かを判定する。
(イ)(4)の位置は閾値C内にあるので、バリエータレンズ102を(4)の位置へ移動させ固定する(バリエータオートフォーカス処理は行わない)。
【0053】
第3例:現在のバリエータレンズ位置(5)からプリセット切り替えで(6)の位置へ移動させる場合
(ア)切替先バリエータレンズ位置(6)を算出し、(6)の位置は閾値C内にあるか否かを判定する。
(イ)(6)の位置は閾値C外にあるので、バリエータレンズ102を(6)の位置へ移動させた後、バリエータオートフォーカス処理を実行する。
【0054】
第4例:現在のバリエータレンズ位置(7)からプリセット切り替えで(8)の位置へ移動させる場合
(ア)切替先バリエータレンズ位置(8)を算出し、(8)の位置は閾値C内にあるか否かを判定する。
(イ)(8)の位置は閾値C内にあるので、バリエータレンズ102を(8)の位置へ移動させ固定する(バリエータオートフォーカス処理は行わない)。
【0055】
以上説明したように、この実施の形態にかかるズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムでは、ズームレンズのプリセット切り替え後に生じるバリエータレンズの停止位置ズレを原因とするピントボケや設定倍率のズレを直接バリエータレンズを移動させて補正することで解消する。このため、簡易な操作で、ピントボケや設定倍率のズレを的確に補正できる。
【0056】
また、フォーカスレンズを用いたオートフォーカス処理は、ズームレンズのプリセット切り替え後は、バリエータレンズによる調整では解消できない程度のピントボケが生じた場合以外は行わない。このため、プリセット切り替え後必ずオートフォーカス処理を行っていた従来技術と比較して、所望の撮影画像が得られるまでの時間を短縮し、効率的な撮影を行うことができるようになる。したがって、この実施の形態にかかるズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムは、特に監視カメラやビデオカメラなど、すばやい画像の切り替えが望まれる装置に用いた場合に優れた効果を奏する。
【0057】
なお、この実施の形態で説明したズームレンズ制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、この発明にかかるズームレンズ制御装置、ズームレンズ制御方法、およびズームレンズ制御プログラムは、ズームレンズの効率的な制御に有用であり、特に、頻繁に撮影画像の切り替えが行われる装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施の形態にかかるズームレンズ制御装置の機能的構成を示す図である。
【図2】バリエータレンズおよびフォーカスレンズの特性を示すグラフである。
【図3】光学要求値(被写界深度)とバリエータレンズおよびフォーカスレンズ停止位置の許容範囲との関係を説明するための図である。
【図4】ズームレンズ制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】従来のオートフォーカスの手法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
100 ズームレンズ制御装置
101 ズームレンズ
102 バリエータレンズ
103 フォーカスレンズ
104 アイリス(絞り)
110 駆動部
111 バリエータレンズ駆動モータ
112 フォーカスレンズ駆動モータ
113 モータドライバ
120 映像信号変換部
121 撮像素子
122 映像信号インタフェース(I/F)
130 記憶部
131 EEPROM
132 RAM
133 ROM
140 操作部
141 アイリス操作部
150 制御部
151 検出部
152 プリセット位置情報取得部
153 バリエータレンズ位置算出部
154 フォーカスレンズ位置算出部
155 被写界深度判定部
156 最大コントラスト判定部
157 バリエータオートフォーカス処理部
158 オートフォーカス処理部
159 オートプリセット切替部
160 アイリス駆動部
161 マニュアルアイリス制御部
162 オートアイリス制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリセット機能を有するズームレンズ制御装置であって、
ズームレンズを駆動させる駆動手段と、
前記ズームレンズを介して得られた撮影画像を映像信号に変換する映像信号変換手段と、
切替先のプリセット位置情報を取得するプリセット位置情報取得手段と、
前記プリセット位置情報取得手段が取得した切替先プリセット位置情報から切替先バリエータレンズ位置を算出するバリエータレンズ位置算出手段と、
前記プリセット位置情報取得手段が取得した切替先プリセット位置情報から切替先フォーカスレンズ位置を算出するフォーカスレンズ位置算出手段と、
前記切替先バリエータレンズ位置と所定の被写界深度の閾値とを比較し、前記切替先バリエータレンズ位置が前記所定の被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する被写界深度判定手段と、
前記被写界深度判定手段により前記切替先バリエータレンズ位置が前記所定の被写界深度の閾値内にないと判断した場合に、前記駆動手段を駆動させて前記ズームレンズのバリエータレンズのみによるオートフォーカス処理を実行するバリエータオートフォーカス処理手段と、
前記映像信号変換手段から取得した映像信号をもとに、撮影画像のコントラストが最大となっているか否かの判定を行い、前記撮影画像のコントラストが最大となっている場合に前記バリエータオートフォーカス処理手段の動作を停止させる最大コントラスト判定手段と、
を備えていることを特徴とするズームレンズ制御装置。
【請求項2】
さらに、前記駆動手段を駆動させて前記ズームレンズのフォーカスレンズによるオートフォーカス処理を実行するオートフォーカス処理手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のズームレンズ制御装置。
【請求項3】
さらに、記憶手段を備え、
前記記憶手段には前記プリセット位置情報や前記所定の被写界深度の閾値などが記憶されていることを特徴とする請求項1または2に記載のズームレンズ制御装置。
【請求項4】
さらに、所定の時間ごとに自動的にプリセット位置を切り替えるオートプリセット切替手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のズームレンズ制御装置。
【請求項5】
切替先プリセット位置情報を取得するプリセット位置情報取得工程と、
前記切替先プリセット位置情報から切替先バリエータレンズ位置および切替先フォーカスレンズ位置を算出する切替先位置算出工程と、
前記切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にあるか否かを判定する被写界深度判定工程と、
前記被写界深度判定工程により前記切替先バリエータレンズ位置がバリエータレンズ位置に関する被写界深度の閾値内にないと判定された場合に、前記切替先バリエータレンズ位置および前記切替先フォーカスレンズ位置に対応するようにズームレンズの状態を仮設定するズームレンズ仮設定工程と、
前記ズームレンズ仮設定工程により仮設定されたズームレンズに対してバリエータレンズのみを用いてオートフォーカス処理を行うバリエータオートフォーカス処理工程と、
を含むことを特徴とするズームレンズ制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載のズームレンズ制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするズームレンズ制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−298708(P2007−298708A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126150(P2006−126150)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】