説明

セパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法

【課題】高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を高いレベルで備えるセパレーターを提供する。また、そのようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造装置を提供する。さらにまた、そのようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維とを有するナノ繊維不織布からなることを特徴とするセパレーター。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、セパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法に関する。
【0002】
従来、ナノ繊維不織布からなるセパレーターが知られている(例えば、特許文献1参照。)。従来のセパレーターによれば、一般的な不織布からなるセパレーターと比較して繊維の平均径や空隙が微細であるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。このようなセパレーターは、電池(一次電池及び二次電池を含む。)やコンデンサー(キャパシターともいう。)等に好適に用いることができる。
なお、本発明における「セパレーター」は、非導電性のセパレーターのことをいう。また、「ナノ繊維」とは、ポリマー材料からなり、平均径が数nm〜数千nmの繊維のことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−510700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セパレーターの技術分野においては、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を高いレベルで備えるセパレーターが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を高いレベルで備えるセパレーターを提供することを目的とする。また、そのようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造装置を提供することを目的とする。さらにまた、そのようなセパレーターを製造することが可能なセパレーター製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のセパレーターは、ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維とを有するナノ繊維不織布からなることを特徴とする。
【0007】
このため、本発明のセパレーターによれば、ナノ繊維不織布からなるため、従来のセパレーターの場合と同様に、一般的な不織布からなるセパレーターと比較して繊維の平均径が微細であり、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0008】
また、本発明のセパレーターによれば、安定性が高く機械的強度に優れる「ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維」と、電解液吸収性、イオン抵抗性及びデンドライト耐性に優れる「ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維」とを有するナノ繊維不織布からなるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を高いレベルで備えるセパレーターとすることが可能となる。
【0009】
なお、本発明のセパレーターにおいては、ポリオレフィンとして種々のポリオレフィンを用いることができ、ポリプロピレンを特に好適に用いることができる。また、例えば、ポリプロピレンを主成分とし他のポリオレフィン(例えば、ポリブテン)を副成分とする混合ポリオレフィンも好適に用いることができる。
【0010】
[2]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維の平均径は、前記第2ナノ繊維の平均径よりも大きいことが好ましい。
【0011】
このような構成とすることにより、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を一層高いレベルで備えるセパレーターとすることが可能となる。
【0012】
[3]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維の平均径は、500nm〜9000nmの範囲内にあることが好ましい。
【0013】
このような構成とすることにより、十分に高い機械的強度を備えるセパレーターとすることが可能となる。
なお、本発明において、第1ナノ繊維の平均径を500nm〜9000nmの範囲内にしたのは、当該平均径が500nmより小さい場合にはセパレーターの機械的強度を十分に高くすることができない場合があるためであり、当該平均径が9000nmより大きい場合にはセパレーターを薄くすることが困難となる場合があるためである。
上記の観点からは、第1ナノ繊維の平均径が1000nm〜7000nmの範囲内にあることが一層好ましい。
【0014】
[4]本発明のセパレーターにおいては、前記第2ナノ繊維の平均径は、50nm〜1000nmの範囲内にあることが好ましい。
【0015】
このような構成とすることにより、十分に高い電解液吸収性、十分に低いイオン抵抗性及び十分に高いデンドライト耐性を備えるセパレーターとすることが可能となる。
なお、本発明において、第2ナノ繊維の平均径を50nm〜1000nmの範囲内にしたのは、当該平均径が50nmより小さい場合には第2ナノ繊維の製造が困難になる場合があるためであり、当該平均径が1000nmより大きい場合には、比表面積の減少により、セパレーターの電解液吸収性を十分に高くすることができず、イオン抵抗性を十分に低くすることができず、また、デンドライト耐性を十分に高くすることができない場合があるためである。
上記の観点からは、第2ナノ繊維の平均径が60nm〜500nmの範囲内にあることが一層好ましい。
【0016】
[5]本発明のセパレーターにおいては、前記ナノ繊維不織布の厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。
【0017】
このような構成とすることにより、十分に薄いセパレーターとすることが可能となる。
なお、本発明において、ナノ繊維不織布の厚さを1μm〜100μmの範囲内にしたのは、当該厚さが1μmより薄い場合にはセパレーターの機械的強度を十分に高くすることができない場合があるためであり、当該厚さが100μmより厚い場合にはイオン抵抗性を十分に低くすることができない場合があるためである。
上記の観点からは、ナノ繊維不織布の厚さが10μm〜40μmの範囲内にあることが一層好ましい。
【0018】
[6]本発明のセパレーターにおいては、前記第1ナノ繊維及び前記第2ナノ繊維は、ともに、電界紡糸法により得られたものであることが好ましい。
【0019】
このような構成とすることにより、よく制御された繊維径を有し、安定した品質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0020】
[7]本発明のセパレーター製造装置は、長尺シートを搬送する搬送装置と、ナノ繊維の原料となるポリマー溶液を貯蔵するための原料タンクと、前記ポリマー溶液を吐出口から吐出する複数のノズルを有するノズルユニットと、前記ノズルから前記ポリマー溶液が吐出される側に配置されているコレクターと、前記複数のノズルと前記コレクターとの間に高電圧を印加する電源装置とを備えるセパレーター製造装置であって、前記原料タンクとして、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液を貯蔵するための第1原料タンクと、ポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を貯蔵するための第2原料タンクとを備え、前記ノズルユニットは、前記複数のノズルとして、前記第1ポリマー溶液を吐出するための複数の第1ノズルと、前記第2ポリマー溶液を吐出するための複数の第2ノズルとを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明のセパレーター製造装置によれば、電界紡糸装置を用いて本発明のセパレーター(上記[1]〜[6]に記載したセパレーター)を製造することが可能となる。
【0022】
[8]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、上向きノズルからなり、前記コレクターは、前記ノズルユニットの上方に配置されていることが好ましい。
【0023】
このような構成とすることにより、下向きノズルを用いたセパレーター製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象(下向きノズルから紡糸されなかったポリマー溶液の塊がそのまま長尺シートに付着する現象)を発生させることなく、高品質なセパレーターを製造することが可能となる。
【0024】
[9]本発明のセパレーター製造装置においては、前記第1原料タンクを30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温する保温装置をさらに備えることが好ましい。
【0025】
ところで、ポリオレフィンは優れた耐化学薬品性及び非極性構造を有するため、溶媒に対する溶解性が低く、溶液を安定して均一な液体の状態に保つことが困難となる場合がある。よって、一般ポリオレフィンからなるナノ繊維を安定して製造することは困難となる場合がある。これに対して、上記のような構成とすることにより、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液を安定して均一な液体の状態に保つことが可能となり、ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維を安定して製造することが可能となる。
【0026】
なお、所定の温度を30℃〜100℃の範囲内としたのは、所定の温度が30℃未満の場合には、ポリオレフィンを溶媒に完全に溶解するのが困難となる場合があるからであり、所定の温度が100℃を超える場合には、溶媒の蒸発量が大きくなりすぎて第1ポリマー溶液中のポリオレフィンの濃度を一定に維持するのが困難となる場合があるからである。
上記の観点からは、所定の温度を50℃〜90℃の範囲内とすることがより一層好ましい。
【0027】
[10]本発明のセパレーター製造装置においては、前記保温装置は、前記ノズルユニットも30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温することが好ましい。
【0028】
ところで、第1原料タンクのみを保温して他の部分を保温しないと、時間の経過とともに第1ポリマー溶液の粘度が高くなってノズルからの第1ポリマー溶液の吐出量が徐々に低下してしまい、これに起因して均一な品質を有する第1ナノ繊維を安定して大量に製造することが困難となる場合がある。これに対して、上記のような構成とすることにより、時間が経過しても第1ポリマー溶液の粘度が高くなることがなくなり、ノズルからの第1ポリマー溶液の吐出量が徐々に低下してしまうこともなくなる。このため、均一な品質を有する第1ナノ繊維を安定して大量に製造することが可能となる。
【0029】
[11]本発明のセパレーター製造方法は、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液及びポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を作製するポリマー溶液作製工程と、複数の第1ノズルの吐出口から前記第1ポリマー溶液を吐出し、複数の第2ノズルの吐出口から前記第2ポリマー溶液を吐出することにより、前記ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維及び前記ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維を電界紡糸し、ナノ繊維不織布からなるセパレーターを製造するセパレーター製造工程とを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明のセパレーター製造方法によれば、電界紡糸により本発明のセパレーター(上記[1]〜[6]に記載したセパレーター)を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係るセパレーター300を説明するために示す図である。
【図2】実施形態に係るセパレーター製造装置1を説明するために示す図である。
【図3】実施形態における電界紡糸装置20を説明するために示す図である。
【図4】実施形態に係るセパレーター製造方法のフローチャートである。
【図5】実施例に係るセパレーター300aの電子顕微鏡写真である。
【図6】変形例1に係るセパレーター製造装置2の正面図である。
【図7】変形例2に係るセパレーター製造装置3の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明のセパレーター、セパレーター製造装置及びセパレーター製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0033】
[実施形態]
1.実施形態に係るセパレーター300の構成
まず、実施形態に係るセパレーター300の構成を説明する。
図1は、実施形態に係るセパレーター300を説明するために示す図である。図1(a)は芯材(符号を図示せず。)に巻いた状態のセパレーター300を示す斜視図であり、図1(b)はセパレーター300の細部を拡大して示す模式図である。
【0034】
実施形態に係るセパレーター300は、図1に示すように、ポリプロピレンからなる第1ナノ繊維310と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維320とを有するナノ繊維不織布からなる。ナノ繊維不織布の厚さは1μm〜100μmの範囲内であり、例えば、30μmである。
【0035】
第1ナノ繊維310の平均径は500nm〜9000nmの範囲内にあり、例えば、5000nmである。また、第2ナノ繊維320の平均径は50nm〜1000nmの範囲内にあり、例えば、100nmである。また、セパレーター300においては、第1ナノ繊維310の平均径は、第2ナノ繊維320の平均径よりも大きい。
【0036】
セパレーター300は、後述する実施形態に係るセパレーター製造装置1を用いて、実施形態に係るセパレーター製造方法により得られたものである。つまり、後述するように、第1ナノ繊維310及び第2ナノ繊維320は電界紡糸法により得られたものである。
【0037】
2.実施形態に係るセパレーター製造装置1の構成
次に、実施形態に係るセパレーター製造装置1の構成を説明する。
図2は、実施形態に係るセパレーター製造装置1を説明するために示す図である。図2(a)はセパレーター製造装置1の正面図であり、図2(b)はセパレーター製造装置1の平面図である。なお、図2においては、一部の部材は断面図として示している。これは後述する図3、図6及び図7においても同様である。
図3は、実施形態における電界紡糸装置20を説明するために示す図である。図3(a)は電界紡糸装置20の正面図であり、図3(b)はノズルユニット110周辺の平面図である。なお、図3(b)においては、第1ポリマー溶液回収経路124及び第2ポリマー溶液回収経路134についての図示を省略している。
【0038】
実施形態に係るセパレーター製造装置1は、図2に示すように、搬送装置10と、電界紡糸装置20と、通気度計測装置40と、搬送速度制御装置50(図示せず。)と、主制御装置60と、VOC処理装置70とを備える。
【0039】
実施形態に係るセパレーター製造装置1は、電界紡糸装置として、長尺シートWが搬送されていく所定の搬送方向に沿って直列に配置された4台の電界紡糸装置20を備える。
【0040】
搬送装置10は、長尺シートWを所定の搬送速度で搬送する。搬送装置10は、長尺シートWを繰り出す繰り出しローラー11、長尺シートWを巻き取る巻き取りローラー12、長尺シートWの張りを調整するテンションローラー13,18と、繰り出しローラー11と巻き取りローラー12との間に位置する補助ローラー14,15,16,17を備える。繰り出しローラー11及び巻き取りローラー12は、図示しない駆動モーターにより回転駆動される構造となっている。
電界紡糸装置20は、搬送装置10により搬送されている長尺シートWに第1ナノ繊維310及び第2ナノ繊維320を堆積させる。電界紡糸装置20の詳細な構成については後述する。
【0041】
通気度計測装置40は、電界紡糸装置20により「第1ナノ繊維310と第2ナノ繊維320とを有するナノ繊維不織布を堆積させた長尺シートW」(後述する複合シート)の通気度を計測する。通気度計測装置40としては、一般的な通気度計測装置を使用することができる。
搬送速度制御装置50は、通気度計測装置40により計測された通気度に基づいて搬送速度を制御する。
主制御装置60は、「搬送装置10、電界紡糸装置20、通気度計測装置40、搬送速度制御装置50、VOC処理装置70」を制御する。
VOC処理装置70は、長尺シートWにナノ繊維を堆積させる際に発生する揮発性成分を燃焼して除去する。
【0042】
以下、電界紡糸装置20の構成について詳しく説明する。
電界紡糸装置20は、図3に示すように、筐体100と、ノズルユニット110と、コレクター150と、電源装置160と、補助ベルト装置170と、第1原料タンク200と、第1供給装置210と、第2原料タンク220と、第2供給装置230と、保温装置240とを備える。電界紡糸装置20は、後述する複数の第1ノズル120及び複数の第2ノズル130の吐出口から第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液をオーバーフローさせながら吐出して、第1ナノ繊維310及び第2ナノ繊維320を電界紡糸する。
【0043】
筐体100は、導電体からなり、接地されている。
ノズルユニット110は、複数の第1ノズル120、複数の第2ノズル130、第1ポリマー溶液供給経路122、第2ポリマー溶液供給経路132、第1ポリマー溶液回収経路124及び第2ポリマー溶液回収経路134(図示せず。)を有する。複数の第1ノズル120及び複数の第2ノズル130は、いずれも上向きノズルからなる。
本発明のセパレーター製造装置には様々な大きさ及び様々な形状を有するノズルユニットを用いることができるが、ノズルユニット110は、例えば、上面から見たときに一辺が0.5m〜3mの長方形(正方形を含む)に見える大きさ及び形状を有する。
【0044】
複数の第1ノズル120は、ポリマー溶液を吐出口から吐出する複数のノズルであって、ポリプロピレンを含有する第1ポリマー溶液を吐出するためのものである。第1ノズル120の内部は空洞になっており、当該空洞は第1ポリマー溶液供給経路122内の空洞と連通している。第1ノズル120は、第1ポリマー溶液を吐出口から上向きに吐出する。第1ノズル120を構成する材料としては、導電体を用いることができ、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム等を用いることができる。
【0045】
複数の第2ノズル130は、ポリマー溶液を吐出口から吐出する複数のノズルであって、ポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を吐出するためのものである。第2ノズル130の内部は空洞になっており、当該空洞は第2ポリマー溶液供給経路132内の空洞と連通している。複数の第2ノズル130は、上記に記載した以外の構成に関しては、複数の第1ノズル120と同様の構成を有する。
本実施形態においては、第1ノズル120とコレクター150との間の距離と、第2ノズル130とコレクター150との間の距離が同等となっている。本発明はこれに限定されるものではなく、第1ナノ繊維の平均径と第2ナノ繊維の平均径とを変えるために、第1ノズルとコレクターとの間の距離と、第2ノズルとコレクターとの間の距離とを異なるものとする(例えば、第1ノズルとコレクターとの間の距離の方を短くする)こともできる。
【0046】
ところで、第1ポリマー溶液供給経路122及び第2ポリマー溶液供給経路132は、図3(b)に示すように、それぞれ突出部を有しており、互いの突出部は凹凸状に組み合っている。
第1ノズル120は、図3(b)に示すように、第1ポリマー溶液供給経路122の突出部上に配置されている。また、第2ノズル130は、第2ポリマー溶液供給経路132の突出部上に配置されている。このため、複数の第1ノズル120と複数の第2ノズル130とは、長尺シートの進行方向に沿って交互に配置されていることとなる。
第1ノズル120及び第2ノズル130は、例えば、1.5cm〜6.0cmのピッチで配列されている。複数の第1ノズル120及び複数の第2ノズル130を合計した数は、例えば、36個(縦横同数に配列した場合、6個×6個)〜21904個(縦横同数に配列した場合、148個×148個)とすることができる。
【0047】
第1ポリマー溶液供給経路122は、内部に空洞を有し、この内部の空洞を介して第1原料タンク200からの第1ポリマー溶液を第1ノズル120に供給する。第1ポリマー溶液供給経路122は、第1供給装置210との接続部を有し、当該接続部で第1供給装置210のパイプ212と接続されている。
【0048】
第2ポリマー溶液供給経路132も、内部に空洞を有し、この内部の空洞を介して第2原料タンク220からの第2ポリマー溶液を第2ノズル130に供給する。第2ポリマー溶液供給経路132は、第2供給装置230との接続部を有し、当該接続部で第2供給装置230のパイプ232と接続されている。
【0049】
第1ポリマー溶液回収経路124は、詳しい説明は省略するが、受部、溝部及び蓋部から形成されてなる。第2ポリマー溶液回収経路134も同様の構成を有する。第1ポリマー溶液回収経路124は、第1ノズル120の吐出口からオーバーフローした第1ポリマー溶液を回収する。また、第2ポリマー溶液回収経路134は、第2ノズル130の吐出口からオーバーフローした第2ポリマー溶液を回収する。
【0050】
コレクター150は、第1ノズル120及び第2ノズル130から第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液が吐出される側、つまり、ノズルユニット110よりも上方に配置されている。コレクター150は導電体からなり、図2に示すように、絶縁部材152を介して筐体100に取り付けられている。
【0051】
電源装置160は、第1ノズル120及び第2ノズル130と、コレクター150との間に高電圧を印加する。電源装置160の正極はコレクター150に接続され、電源装置160の負極は筐体100を介してノズルユニット110に接続されている。つまり、本実施形態においては、第1ノズル120とコレクター150との間に印加する電圧と第2ノズル130とコレクター150との間に印加する電圧とが同等となる。
なお、本発明は上記のものに限られるものではなく、例えば、第1ナノ繊維の平均径と第2ナノ繊維の平均径とを変えるために、第1ノズルとコレクターとの間に印加する電圧と第2ノズルとコレクターとの間に印加する電圧とを異なるものとする(第1ノズルとコレクターとの間に印加する電圧の方を低くする)こともできる。
【0052】
補助ベルト装置170は、長尺シートWの搬送速度に同期して回転する補助ベルト172と、補助ベルト172の回転を助ける5つの補助ベルト用ローラー174とを有する。5つの補助ベルト用ローラー174のうち1つ又は2つ以上の補助ベルト用ローラーが駆動ローラーであり、残りの補助ベルト用ローラーが従動ローラーである。コレクター150と長尺シートWとの間に補助ベルト172が配設されているため、長尺シートWは、正の高電圧が印加されているコレクター150に引き寄せられることなくスムーズに搬送されるようになる。
【0053】
第1原料タンク200は、第1ナノ繊維310の原料となる第1ポリマー溶液を貯蔵する。第1原料タンク200は、図3(a)に示すように、第1ポリマー溶液の分離や凝固を防ぐための撹拌装置202を内部に有する。第1原料タンク200には、第1供給装置210のパイプ212が接続されている。
【0054】
第1供給装置210は、第1ポリマー溶液を通過させるパイプ212及び供給動作を制御するバルブ214からなり、第1原料タンク200に貯蔵された第1ポリマー溶液をノズルユニット110の第1ポリマー溶液供給経路122に供給する。なお、第1供給装置及び後述する第2供給装置は、1つのノズルユニットにつき最低1本あればよい。
【0055】
第2原料タンク220は、第2ナノ繊維400の原料となる第2ポリマー溶液を貯蔵する。第2原料タンク220は、第2ポリマー溶液の分離や凝固を防ぐための撹拌装置222を内部に有する。第2原料タンク220には、第2供給装置230のパイプ232が接続されている。
【0056】
第2供給装置230は、第2ポリマー溶液を通過させるパイプ232及び供給動作を制御するバルブ234からなり、第2原料タンク220に貯蔵された第2ポリマー溶液をノズルユニット110の第2ポリマー溶液供給経路132に供給する。
【0057】
保温装置240は、第1原料タンク200、第1供給装置210及びノズルユニット110を30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温する。
保温装置240は、図示による詳しい説明は省略するが、第1原料タンク200を加熱する第1ヒーターと、第1供給装置210を加熱する第2ヒーターと、ノズルユニット110を加熱する第3ヒーターと、第1原料タンク200の温度を計測する第1温度センサーと、第1供給装置210の温度を計測する第2温度センサーと、ノズルユニット110の温度を計測する第3温度センサーと、第1温度センサー、第2温度センサー及び第3温度センサーの検出結果に基づいて第1ヒーター、第2ヒーター及び第3ヒーターの出力を調整することにより温度を制御する温度制御装置とを備える。所定の温度は、ポリプロピレンの平均分子量、用いる溶媒の種類、第1ポリマー溶液の組成等により決定される。
【0058】
3.実施形態に係るセパレーター製造方法の説明
次に、実施形態に係るセパレーター製造方法を説明する。
図4は、実施形態に係るセパレーター製造方法のフローチャートである。
【0059】
実施形態に係るセパレーター製造方法は、図4に示すように、ポリマー溶液作製工程S1と、セパレーター製造工程S2とを含む。実施形態に係るセパレーター製造方法は、上記したセパレーター製造装置1を用いて、実施形態に係るセパレーター300を製造する方法である。
【0060】
S1.ポリマー溶液作製工程
ポリマー溶液作製工程は、ポリプロピレンを含有する第1ポリマー溶液及びポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を作製する工程である。以下、第1ポリマー溶液の場合と第2ポリマー溶液の場合とに分けて説明する。
【0061】
(a)第1ポリマー溶液の作製
第1原料タンク200において、原料となるポリプロピレンを溶媒に溶解させて第1ポリマー溶液を作製する。このとき、保温装置30により50℃〜100℃、より好ましくは60℃〜80℃で保温しながら撹拌する。
【0062】
溶媒としては、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4‐ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、1‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、アセトニトリル(AN)、N‐メチルモルホリン‐N‐オキシド、炭酸ブチレン(BC)、1,4‐ブチロラクトン(BL)、炭酸ジエチル(DEC)、ジエチルエーテル(DEE)、1,2‐ジメトキシエタン(DME)、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)、1,3‐ジオキソラン(DOL)、炭酸エチルメチル(EMC)、ギ酸メチル(MF)、3‐メチルオキサゾリジン‐2‐オン(MO)、プロピオン酸メチル(MP)、2‐メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、スルホラン(SL)、HFIP、キシレン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(Decalin)、メチルエチルケトン(MEK)、ジクロロベンゼン(DCB)等を用いることができる。溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
また、電気伝導度や粘度等の調整のために、各種の添加剤を用いることもできる。
【0063】
この間、第1温度センサーは、第1原料タンク200の温度を計測し、計測結果を温度制御装置に送信する。温度制御装置は第1温度センサーの検出結果に基づいて第1ヒーターの出力を調整することにより、第1原料タンク200の温度(つまり、第1ポリマー溶液の温度)を制御する。
【0064】
(b)第2ポリマー溶液の作製
第2原料タンク220において、原料となるポリフッ化ビニリデンを溶媒に溶解させて第2ポリマー溶液を作製する。
【0065】
溶媒としては、例えば、アセトン、クロロホルム、エタノール、イソプロパノール、メタノール、トルエン、テトラヒドロフラン、水、ベンゼン、ベンジルアルコール、1,4‐ジオキサン、プロパノール、四塩化炭素、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、フェノール、ピリジン、トリクロロエタン、酢酸、N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)、1‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ジメチル(DMC)、アセトニトリル(AN)、N‐メチルモルホリン‐N‐オキシド、炭酸ブチレン(BC)、1,4‐ブチロラクトン(BL)、炭酸ジエチル(DEC)、ジエチルエーテル(DEE)、1,2‐ジメトキシエタン(DME)、1,3‐ジメチル‐2‐イミダゾリジノン(DMI)、1,3‐ジオキソラン(DOL)、炭酸エチルメチル(EMC)、ギ酸メチル(MF)、3‐メチルオキサゾリジン‐2‐オン(MO)、プロピオン酸メチル(MP)、2‐メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、スルホラン(SL)、HFIP、キシレン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン(Decalin)、メチルエチルケトン(MEK)、ジクロロベンゼン(DCB)等を用いることができる。溶媒は、単独で又は混合して用いることができる。
また、電気伝導度や粘度等の調整のために、各種の添加剤を用いることもできる。
【0066】
なお、本実施形態においては、第1ポリマー溶液の粘度が高くなるように(濃い溶液となるように)上記工程を行う。このようにすることにより、第1ナノ繊維の平均径を第2ナノ繊維の平均径よりも大きくすることができる。
また、溶液の電気伝導度を調整する添加剤を用いて、第2ポリマー溶液の電気伝導度を高くすることによっても、第1ナノ繊維の平均径を第2ナノ繊維の平均径よりも大きくすることができる。
【0067】
S2.セパレーター製造工程
セパレーター製造工程においては、複数の第1ノズル120の吐出口から第1ポリマー溶液を吐出し、複数の第2ノズル130の吐出口からポリフッ化ビニリデンを含む第2ポリマー溶液を吐出することにより、長尺シートW上にポリプロピレンからなる第1ナノ繊維310及びポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維320を電界紡糸し、ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維310と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維320とを有するナノ繊維不織布からなるセパレーターを製造する。以下、当該工程を詳細に説明する。
【0068】
まず、第1原料タンク200で作製した第1ポリマー溶液をパイプ212を通して第1ポリマー溶液供給経路122へ供給し、第2原料タンク220で作製した第2ポリマー溶液をパイプ232を通して第2ポリマー溶液供給経路132へ供給する。なお、第1供給装置210においてはバルブ214により第1原料タンク200からの第1ポリマー溶液の移送動作を制御し、第2供給装置230においてはバルブ234により第2原料タンク220からの第2ポリマー溶液の移送動作を制御する。
【0069】
また、この間、第2温度センサーは、パイプ212の温度を計測し、計測結果を温度制御装置に送信する。温度制御装置は第2温度センサーの検出結果に基づいて第2ヒーターの出力を調整することにより、パイプ212の温度を制御する。
【0070】
次に、長尺シートWを搬送装置10にセットし、その後、長尺シートWを繰り出しローラー11から巻き取りローラー12に向けて所定の搬送速度Vで搬送させながら、各電界紡糸装置20において長尺シートWに第1ナノ繊維及び第2ナノ繊維を順次堆積させる。この間、第3温度センサーは、ノズルユニット110の温度を計測し、計測結果を温度制御装置に送信する。温度制御装置は第3温度センサーの検出結果に基づいて第3ヒーターの出力を調整することにより温度を制御する。これにより、長尺シート上に「ポリプロピレンからなる第1ナノ繊維310と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維320とを有するナノ繊維不織布からなるセパレーター300」が堆積した複合シートを製造する。当該複合シートは、巻き取りローラー12に巻き取られる。
【0071】
最後に、当該複合シートからナノ繊維不織布からなるセパレーター300を回収する。
【0072】
以下に、実施形態に係るセパレーター製造方法における製造条件を例示的に示す。
【0073】
長尺シートWとしては、各種材料からなる不織布、織物、編物、紙などを用いることができる。長尺シートWの厚さは、例えば5μm〜500μmのものを用いることができる。長尺シートWの長さは、例えば10m〜10kmのものを用いることができる。
【0074】
製造する複合シートの通気度Pは、例えば0.15cm/cm/s〜200cm/cm/sに設定することができる。搬送速度Vは、例えば0.2m/分〜100m/分に設定することができる。ノズルとコレクター150とノズルユニット110に印加する電圧は、10kV〜80kVに設定することができる。
【0075】
紡糸区域の温度は、ノズルユニット110近辺を除き、例えば50℃に設定することができる。紡糸区域の湿度は、例えば30%に設定することができる。
【0076】
以下、実施形態に係るセパレーター300、セパレーター製造装置1及びセパレーター製造方法の効果を記載する。
【0077】
実施形態に係るセパレーター300によれば、ナノ繊維不織布からなるため、従来のセパレーターの場合と同様に、一般的な不織布からなるセパレーターと比較して繊維の平均径が微細であり、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性を備え、さらに、総厚の薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0078】
また、実施形態に係るセパレーター300によれば、安定性が高く機械的強度に優れるポリオレフィン(ポリプロピレン)からなる第1ナノ繊維310と、電解液吸収性、イオン抵抗性及びデンドライト耐性に優れるポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維320とを有するナノ繊維不織布からなるため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を高いレベルで備えるセパレーターとすることが可能となる。
【0079】
また、実施形態に係るセパレーター300によれば、第1ナノ繊維310の平均径が第2ナノ繊維320の平均径よりも大きいため、高い電解液吸収性、低いイオン抵抗性及び高いデンドライト耐性並びに高い機械的強度を一層高いレベルで備えるセパレーターとすることが可能となる。
【0080】
また、実施形態に係るセパレーター300によれば、第1ナノ繊維310の平均径が500nm〜9000nmの範囲内にあるため、十分に高い機械的強度を備えるセパレーターとすることが可能となる。
【0081】
また、実施形態に係るセパレーター300によれば、第2ナノ繊維320の平均径が50nm〜1000nmの範囲内にあるため、十分に高い電解液吸収性、十分に低いイオン抵抗性及び十分に高いデンドライト耐性を備えるセパレーターとすることが可能となる。
【0082】
また、実施形態に係るセパレーター300によれば、ナノ繊維不織布の厚さが1μm〜100μmの範囲内にあるため、十分に薄いセパレーターとすることが可能となる。
【0083】
また、実施形態に係るセパレーター300によれば、第1ナノ繊維310及び第2ナノ繊維320は、ともに、電界紡糸法により得られたものであるため、よく制御された繊維径を有し、安定した品質を有するセパレーターとすることが可能となる。
【0084】
実施形態に係るセパレーター製造装置1によれば、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液を貯蔵するための第1原料タンク200と、ポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を貯蔵するための第2原料タンク220とを備え、ノズルユニット110は、1ポリマー溶液を吐出するための複数の第1ノズル120と、第2ポリマー溶液を吐出するための複数の第2ノズル130とを備えるため、電界紡糸装置を用いて実施形態に係るセパレーター300を製造することが可能となる。
【0085】
また、実施形態に係るセパレーター製造装置1によれば、第1ノズル120及び第2ノズル130は上向きノズルからなるため、下向きノズルを用いたセパレーター製造装置の場合に見られるようなドロップレット現象を発生させることなく、高品質なセパレーターを製造することが可能となる。
【0086】
また、実施形態に係るセパレーター製造装置1によれば、第1原料タンク200を30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温する保温装置240を備えるため、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液を安定して均一な液体の状態に保つことが可能となり、ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維310を安定して製造することが可能となる。
【0087】
また、実施形態に係るセパレーター製造装置1によれば、保温装置240がノズルユニット110も30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温するため、時間が経過しても第1ポリマー溶液の粘度が高くなることがなくなり、ノズルからの第1ポリマー溶液の吐出量が徐々に低下してしまうこともなくなる。このため、均一な品質を有する第1ナノ繊維310を安定して大量に製造することが可能となる。
【0088】
実施形態に係るセパレーター製造方法によれば、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液及びポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を作製するポリマー溶液作製工程S1と、ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維310及びポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維320を電界紡糸し、ナノ繊維不織布からなるセパレーター300を製造するセパレーター製造工程S2とを含むため、電界紡糸により実施形態に係るセパレーター300を製造することが可能となる。
【0089】
[実施例]
図5は、実施例に係るセパレーター300aの電子顕微鏡写真である。
【0090】
実施例においては、本発明により定義されるセパレーター300aを実際に製造し、当該セパレーター300aの構造を確認した。
【0091】
実施例に係るセパレーター300aの製造方法は、以下の通りである。
まず、ポリマー溶液作製工程として、第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液を作製した。
【0092】
(a)第1ポリマー溶液の作製
第1ポリマー溶液は、原料となるシンジオタクチックポリプロピレン(sPP。重量平均分子量(Mw):127000、数平均分子量(Mn):54000、Mw/Mn=2.35。Sigma−Aldrich社より購入。)と、シクロヘキサン:アセトン:ジメチルホルムアミド=8:1:1の混合溶媒とを用いて作製した。上記原料及び溶媒を60℃で撹拌し、原料の溶解を確認した後に溶液を30℃まで冷却した。溶液濃度は6wt%となるように調整した。
【0093】
(b)第2ポリマー溶液の作製
第2ポリマー溶液は、原料となるポリフッ化ビニリデン(PVDF。Sigma−Aldrich社より購入。)と、アセトン:ジメチルホルムアミド=1:1の混合溶媒とを用いて作製した。上記原料及び溶媒を常温で撹拌し、原料の溶解を確認した。溶液濃度は24wt%となるように調整した。
【0094】
次に、セパレーター製造工程として、電界紡糸法によりナノ繊維不織布からなるセパレーター300aを製造した。
電界紡糸の条件は、第1ポリマー溶液及び第2ポリマー溶液両方に対して共通で、ノズル−コレクター間距離(TCD)を15cmとし、印加電圧を10kVとした。
【0095】
上記のようにして製造したセパレーター300aは、図5に示すように、ポリプロピレンからなる第1ナノ繊維(太い方の繊維)と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維(細い方の繊維)とを有するナノ繊維不織布からなるセパレーターとなることが確認できた。
セパレーター300aにおいては、第1ナノ繊維の平均径はおおよそ5000nmであり、第2ナノ繊維の平均径はおおよそ300nmであった。
【0096】
このように、本発明により定義されるセパレーター300aの構造を確認することができた。
【0097】
以上、本発明を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0098】
(1)上記実施形態における各構成要素の数、位置関係、大きさは例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
(2)上記実施形態に係るセパレーター300は、実施形態に係るセパレーター製造装置1を用いて製造するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のセパレーターは、種々のセパレーター製造装置を用いて製造することができる。
【0100】
(3)上記実施形態に係るセパレーター300は、実施形態に係るセパレーター製造方法により製造するものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のセパレーターは、種々のセパレーター製造方法を用いて製造することができる。
【0101】
(4)上記実施形態に係るセパレーター製造方法は、実施形態に係るセパレーター製造装置1を用いて行うものとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のセパレーター製造方法は、電界紡糸装置を備える種々のセパレーター製造装置を用いて行うことができる。
【0102】
(5)本発明のセパレーター製造装置は、複合シートからセパレーターを分離して回収する装置をさらに備えてもよい。図6は、変形例1に係るセパレーター製造装置2の正面図である。図7は、変形例2に係るセパレーター製造装置3の正面図である。セパレーター製造装置2,3は、複合シートからセパレーターを分離して回収する装置であるセパレーター分離回収装置80を備える。このような構成とすることにより、一度巻き取りローラーに巻き取られた複合シートから、ナノ繊維不織布からなるセパレーターを回収する手間をかけることなくセパレーターを連続的に製造することが可能となる。
【0103】
(6)上記実施形態に係るセパレーター300、セパレーター製造装置1及びセパレーター製造方法においては、ポリオレフィンとしてポリプロピレンを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。ポリオレフィンとしてポリプロピレン以外のポリオレフィンを用いてもよいし、2種類以上のポリオレフィンを混合した混合ポリオレフィンを用いてもよい。
【0104】
(7)上記実施形態に係るセパレーター製造装置1は、通気度計測装置40を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、厚みを計測する他の計測装置(例えば、カメラを用いるもの)を用いてもよい。また、通気度計測装置を用いなくてもよい。この場合、長尺シートとしてフィルム等通気性のないものも用いることができる。
【0105】
(8)本発明のセパレーター製造装置においては、ノズルユニットとして、管状の第1ポリマー溶液供給装置及び第2ポリマー溶液供給装置を備えるノズルユニットを用いてもよい。
【0106】
(9)上記実施形態においては、電界紡糸装置20として4台の電界紡糸装置を備えるセパレーター製造装置1を例にとって本発明のセパレーター製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、3台以下又は5台以上の電界紡糸装置を備えるセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。
【0107】
(10)上記実施形態においては、電源装置160の正極がコレクター150に接続され、電源装置160の負極がノズルユニット110に接続された電界紡糸装置を用いて本発明のセパレーター製造装置を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電源装置の正極がノズルユニットに接続され、電源装置の負極がコレクターに接続された電界紡糸装置を備えるセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。
【0108】
(11)上記各実施形態においては、1つの電界紡糸装置に1つのノズルユニットが配設されたセパレーター製造装置1を用いて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの電界紡糸装置に2つのノズルユニットが配設されたセパレーター製造装置に本発明を適用することもできるし、2つ以上のノズルユニットが配設されたセパレーター製造装置に本発明を適用することもできる。
【0109】
この場合、全てのノズルユニットでノズル配列ピッチを同一にすることもできるし、各ノズルユニットでノズル配列ピッチを異ならせることもできる。また、すべてのノズルユニットでノズルユニットの高さ位置を同一にすることもできるし、各ノズルユニットでノズルユニットの高さ位置を異ならせることもできる。
【符号の説明】
【0110】
1,2,3…セパレーター製造装置、10,19…搬送装置、11…繰り出しローラー、12…巻き取りローラー、13,18,88…テンションローラー、14,15,16,17,86…補助ローラー、20…電界紡糸装置、40…通気度計測装置、60…主制御装置、70…VOC処理装置、80…セパレーター分離回収装置、82…セパレーター巻き取りローラー、84…分離ローラー、91,92…駆動ローラー、100…筐体、110…ノズルユニット、120…第1ノズル、122…第1ポリマー溶液供給経路、124…第1ポリマー溶液回収経路、130…第2ノズル、132…第2ポリマー溶液回収経路、150…コレクター、152…絶縁体、160…電源装置、170…補助ベルト装置、172…補助ベルト、174…補助ベルト用ローラー、200…第1原料タンク、202,222…撹拌装置、210…第1供給装置、212,232…パイプ、214,234…バルブ、220…第2原料タンク、230…第2供給装置、240…保温装置、300…セパレーター、310…第1ナノ繊維、320…第2ナノ繊維、W,W2…長尺シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維と、ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維とを有するナノ繊維不織布からなることを特徴とするセパレーター。
【請求項2】
請求項1に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維の平均径は、前記第2ナノ繊維の平均径よりも大きいことを特徴とするセパレーター。
【請求項3】
請求項2に記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維の平均径は、500nm〜9000nmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項4】
請求項3に記載のセパレーターにおいて、
前記第2ナノ繊維の平均径は、50nm〜1000nmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記ナノ繊維不織布の厚さは、1μm〜100μmの範囲内にあることを特徴とするセパレーター。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のセパレーターにおいて、
前記第1ナノ繊維及び前記第2ナノ繊維は、ともに、電界紡糸法により得られたものであることを特徴とするセパレーター。
【請求項7】
長尺シートを搬送する搬送装置と、
ナノ繊維の原料となるポリマー溶液を貯蔵するための原料タンクと、
前記ポリマー溶液を吐出口から吐出する複数のノズルを有するノズルユニットと、
前記ノズルから前記ポリマー溶液が吐出される側に配置されているコレクターと、
前記複数のノズルと前記コレクターとの間に高電圧を印加する電源装置とを備えるセパレーター製造装置であって、
前記原料タンクとして、ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液を貯蔵するための第1原料タンクと、ポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を貯蔵するための第2原料タンクとを備え、
前記ノズルユニットは、前記複数のノズルとして、前記第1ポリマー溶液を吐出するための複数の第1ノズルと、前記第2ポリマー溶液を吐出するための複数の第2ノズルとを備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載のセパレーター製造装置において、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、上向きノズルからなり、
前記コレクターは、前記ノズルユニットの上方に配置されていることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のセパレーター製造装置において、
前記第1原料タンクを30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温する保温装置をさらに備えることを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項10】
請求項9に記載のセパレーター製造装置において、
前記保温装置は、前記ノズルユニットも30℃〜100℃の範囲内にある所定の温度に保温することを特徴とするセパレーター製造装置。
【請求項11】
ポリオレフィンを含有する第1ポリマー溶液及びポリフッ化ビニリデンを含有する第2ポリマー溶液を作製するポリマー溶液作製工程と、
複数の第1ノズルの吐出口から前記第1ポリマー溶液を吐出し、複数の第2ノズルの吐出口から前記第2ポリマー溶液を吐出することにより、前記ポリオレフィンからなる第1ナノ繊維及び前記ポリフッ化ビニリデンからなる第2ナノ繊維を電界紡糸し、前記ポリオレフィンからなる前記第1ナノ繊維と、前記ポリフッ化ビニリデンからなる前記第2ナノ繊維とを有するナノ繊維不織布からなるセパレーターを製造するセパレーター製造工程とを含むことを特徴とするセパレーター製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221600(P2012−221600A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83214(P2011−83214)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】