説明

セメント代替物の製造方法

【課題】 廃棄物を高温度で焼却してダイオキシン類を分解させながらその不燃部分が溶融した溶融スラグを利用して優れたセメント代替物を製造すること。
【解決手段】 一般廃棄物6000kgをロータリーキルン型焼却溶融炉を用い、1600℃を僅かに越える高温度の下で焼却して溶融スラグを生成させ、これを水槽に50%程度まで満たしてある水中に投入して急冷粉砕した。こうして概ね1mm〜15mm程度の水砕スラグが生じた。次いで水槽から水砕スラグを取り出し、しばらく常温の室内に放置して乾燥させた後、水砕スラグをディスクミルで微粉砕し、更に遊星式ボールミルで微粉砕して平均比表面積が4100cm2/gである微粉末を得た。この微粉末にセメント粉を10:10の割合で混合し、かつ空錬りして均一に混合したセメント代替物を得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物、例えば、都市ゴミ、一般廃棄物、アスベスト、産業廃棄物、下水汚泥等を適切に高温焼却処理して製造するセメント代替物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、人の生活に伴い不要物として排出される一般廃棄物は、全国の自治体がこれを収集し焼却炉に於いて、該一般廃棄物から発生することのある有害なダイオキシン類を分解させ得る800〜1200℃の高温度の下で焼却処理を行っている。このような焼却処理の過程で発生する溶融スラグは、多くの場合、これを水中に投下する等によって急冷し、細かな針状結晶の水砕スラグに形成されている。こうして得られた水砕スラグは、後述するように、その一部が利用されているものの、大部分は最終処分場に運ばれて埋め立て処分されているのが実情である。一般廃棄物の発生量は年々増加の傾向にあるが、埋め立て用の最終処分場は減少の傾向にあり、その確保は年々困難になってきている。そこで、以上のような焼却処理によって発生する溶融スラグの利用の拡大が期待されている。
【0003】
現在までのところ、前記水砕スラグの利用先としては、路盤材やコンクリート用骨材、アスファルト混合物用骨材、或いは歩道用ブロックや空洞ブロック等の種々のコンクリート二次製品用材料等が提案され、或いは試験的に使用されているが、例えば、骨材として用いる場合は、そのサイズの関係上、細骨材に限定され、その使用割合も細骨材配合量中の30%以下程度に限定されているのが実情である。
【0004】
このように使用する水砕スラグの配合割合が少ないのは、これをこれ以上配合すると、得られるコンクリートの圧縮強度が実用強度以下に低下する虞があるからであると考えられる。
【0005】
また前記のような廃棄物の内、前記のように、都市ゴミの焼却溶融物を急冷した急冷スラグを利用して、セメント代替物である硬化材及びこれを用いた硬化体の製造方法の提案がある(特許文献1)。
この特許文献1の硬化材は、基本的に、急冷工程を経た都市ゴミ溶融スラグを粉砕して作る微粉末からなる硬化材であって、水を加え、かつアルカリ刺激材によるアルカリ刺激を与えることによって硬化するものであり、硬化体の製造方法は、急冷工程を経た都市ゴミ溶融スラグの微粉末からなる硬化材に骨材とアルカリ刺激材とを加えて均一に混合し、次いで水を加えて本錬りし、得られた混練物を型枠に打ち込んだ上で放置し、硬化後に脱型するものである。
【0006】
これは、都市ゴミの急冷スラグを有効利用するものであり、優れた技術であるが、このような都市ゴミを含む廃棄物の焼却溶融物には、金属アルミニウムが含まれているのが普通であり、この金属アルミニウムについて適切な処理を行っておかないと、コンクリートの骨材その他として使用した場合に、コンクリート中のアルカリとの反応によりガスが発生する虞がある。本件の技術は、このような処理の必要のない材料を前提としている。
【0007】
【特許文献1】特開2005−60189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、人の生活に伴い不要物として排出される廃棄物を高温度で焼却することによりダイオキシン類を分解させながら不燃部分が溶融した溶融スラグを発生させ、これに含まれる金属アルミニウムを除去し、或いはその性質を変えるべく処理した上で、優れたセメント代替物を製造するセメント代替物の製造方法を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1は、廃棄物類を、焼却溶融炉で高温度処理を行い、この過程で得られた高温度処理物を急冷して急冷粉砕スラグを得、該急冷粉砕スラグを金属アルミニウム成分の含有の有無に応じて、これを除去する前処理過程を伴う又は伴わない適合微粉砕処理を行い、次いで得られた適合微粉末にセメント粉を混合し、得られた混合粉体をセメント代替物とする、セメント代替物の製造方法である。
【0010】
本発明の2は、本発明の1のセメント代替物の製造方法に於いて、前記高温度処理が、前記廃棄物類を1600℃を越える温度で焼却溶融処理することであり、かつ前記適合微粉砕処理は、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみで構成したものである。
【0011】
本発明の3は、本発明の1のセメント代替物の製造方法に於いて、前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を固化させた後、その溶融固化物を結晶化至適温度に20〜40分間保持するものであり、かつ前記適合微粉砕処理は、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみで構成したものである。
【0012】
本発明の4は、本発明の1のセメント代替物の製造方法に於いて、前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を固化させた後、その溶融固化物を、結晶化至適温度内に於いて、3℃/分以下の一定の冷却速度で冷却するものであり、かつ前記適合微粉砕処理は、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみで構成したものである。
【0013】
本発明の5は、本発明の1のセメント代替物の製造方法に於いて、前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を20分以上、焼却炉内に滞留させるものであり、かつ前記適合微粉砕処理は、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみで構成したものである。
【0014】
本発明の6は、本発明の1のセメント代替物の製造方法に於いて、前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融するものであり、かつ前記適合微粉砕処理が、得られた急冷粉砕スラグを磁気吸着処理し、該急冷粉砕スラグ中に含まれることのある磁気吸着成分を吸着除去することで同時に金属アルミニウム成分を除去する前処理過程を行った後に、該急冷粉砕スラグを適合サイズに微粉砕処理するものとしたものである。
【0015】
本発明の7は、本発明の1のセメント代替物の製造方法に於いて、前記高温度処理物の急冷を、水冷で行うものとしたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明1のセメント代替物の製造方法によれば、一般廃棄物を高温度処理することにより、焼却の過程で発生することのあるダイオキシンを分解してこれによる環境汚染の問題を解消することができる。
【0017】
また高温度処理物を急冷して急冷粉砕スラグを得た後は、該高温度処理過程で、溶融物中に含まれることのあるアルミニウムの酸化が十分に進行した場合又は進行しなかった場合に応じて、次の適合微粉砕処理の過程では、該急冷スラグをそのまま微粉砕処理し、又は残存する金属アルミニウムの除去処理を伴う微粉砕処理を行うため、得られるセメント代替物は、これを用いてモルタルやコンクリートを作成した場合に、水酸化カルシウム及び水と反応して水素ガスを発生する問題を回避することができる。
【0018】
更に、急冷スラグの微粉砕処理で得られる適合微粉末に適量のセメント粉を混合してセメント代替物を作成するものであるため、アルカリ刺激材を必要とせずに急冷スラグ成分を硬化させることができる利点がある。
【0019】
また急冷粉砕スラグは、それ自体に微細な割れが入っていたりするので、前記したように、骨材として使用した場合には、それを用いたコンクリートの十分な圧縮強度が得られない問題があるが、この場合は、微粉砕して用いる物であるため、そのような不都合が一切ない利点もある。
【0020】
本発明の2、3、4及び5のセメント代替物の製造方法によれば、前記高温度処理として、前記のような処理を行っているため、アルミニウムの酸化が効率よく進行し、前記適合微粉砕処理の過程を、金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、より簡易な工程で行うことができることになり、得られるセメント代替物は、これを用いてモルタルやコンクリートを作成した場合に、アルカリとの反応により水素ガスを発生する問題を回避することができるものとなる。
【0021】
本発明の6のセメント代替物の製造方法によれば、前記急冷粉砕スラグ中に含まれる金属アルミニウムを、磁性金属類とともに、極めて簡易な操作により良好に除去することができる。そのため、得られるセメント代替物は、これを用いてモルタルやコンクリートを作成した場合に水素ガスを発生する前記問題を回避することのできるものとなる。
【0022】
本発明の7のセメント代替物の製造方法によれば、前記高温度処理物の急冷を極めて簡単な方法で行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、廃棄物類を、焼却溶融炉で高温度処理を行い、この過程で得られた高温度処理物を急冷して急冷粉砕スラグを得、該急冷粉砕スラグを金属アルミニウム成分の含有の有無に応じて、これを除去する前処理過程を伴う又は伴わない適合微粉砕処理を行い、次いで得られた適合微粉末にセメント粉を混合し、得られた混合粉体をセメント代替物とする、セメント代替物の製造方法である。
【0024】
前記廃棄物類は、例えば、都市ゴミ、一般廃棄物、アスベスト、産業廃棄物、下水汚泥等であるが、これに限定されない。高温度焼却処理が可能な廃棄物類は採用可能である。
【0025】
前記高温度処理は、焼却溶融炉で行う処理であるが、この処理として、例えば、前記廃棄物類を1600℃を越える温度で焼却溶融処理することが採用可能であるし、該高温度処理として、廃棄物類を1100℃〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を固化させた後、その溶融固化物を結晶化至適温度に20〜40分間保持することとする処理を採用することもできる。また前記高温度処理として、廃棄物類を1100℃〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を固化させた後、その溶融固化物を、結晶化至適温度内に於いて、3℃/分以下の一定の冷却速度で冷却する処理を採用することもできるし、廃棄物類を1100℃〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を20分以上、炉内に滞留させる処理を採用することもできる。更には前記高温度処理として、単に前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融する処理を採用することも可能である。
【0026】
前記急冷は、種々の方法によって行うことが可能であるが、水冷によることとするのが最も簡易である。これは、前記高温度処理によって生じた廃棄物の焼却溶融物である高温度処理物を、例えば、水中に投入することによって行うことが可能であり、こうして高温度処理物は急冷粉砕され、急冷粉砕スラグが生じることとなる。
【0027】
前記適合微粉砕処理は、前記のように、該急冷粉砕スラグを金属アルミニウム成分の含有の有無に応じて、これを除去する前処理過程を伴う又は伴わない処理として行うものである。また該急冷粉砕スラグが金属アルミニウム(酸化されていないアルミニウム)成分を含むか否かは、前記高温度処理の態様によって決まる。例えば、前記した高温度処理の内、単に廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融する処理では、アルミニウムの酸化が十分に進行しないので、その結果生じる焼却溶融物は金属アルミニウムを含むものとなり、それ以外の高温度処理では、前記した簡易な指標を利用してアルミニウムの酸化を適切に進行させ、焼却溶融物に金属アルミニウムを殆ど含まないものとすることができる。従って前記適合微粉砕処理は、この区別に対応して、該金属アルミニウムを除去する前処理過程を伴う処理として行い、又は伴わない処理として行う。
【0028】
前記適合微粉砕処理は、前記のように、焼却溶融物が金属アルミニウムを含まず、それ故、それを急冷した急冷粉砕スラグが金属アルミニウムを殆ど含まない場合は、それを除去する前処理過程が不要であるから、単に該急冷粉砕スラグを微粉砕するのみの工程として行う。この微粉砕は、自由に種々の手段を用いて行うことができる。特定の手段に限定されない。例えば、順次ディスクミル及びボールミルを用いて必要な粒度まで粉砕すること等が可能である。
【0029】
前記微粉末は、その粒径が小さな物ほど比表面積が大きくなり圧縮強度の高いコンクリートを形成できるセメント代替物を作製することができる。以上の観点等から、この微粉末の比表面積は4000cm2/g〜10000cm2/gとするのが適当である。
【0030】
また前記適合微粉砕処理は、前記した高温度処理の関係で急冷粉砕スラグが金属アルミニウム成分を含む場合は、それを除去する前処理過程を含む微粉砕処理を行う。これは特定の手段に限定されない。例えば、まず急冷粉砕スラグを磁気吸着処理し、該急冷粉砕スラグ中に含まれることのある磁気吸着成分を吸着除去することで、同時に金属アルミニウム成分をも除去する前処理過程を行い、その後、前処理の済んだ急冷粉砕スラグを適合サイズに微粉砕処理するように構成したものである。
【0031】
前記適合微粉末へのセメント粉の混合は、両者の混合割合を自由に決定することができるが、セメント粉の割合が少な過ぎ得ると、セメントの水和反応の際に発生する水酸化カルシウムの量が不足し、適合微粉末の硬化が十分に進行し得ない場合があり得る。勿論、このような場合には、アルカリ刺激材を添加すれば、十分な圧縮強度を持った物に硬化させることができるが、セメント粉の割合を若干増加させ、アルカリ刺激材を添加しなくても済むようにする方が好ましい。具体的には、例えば、セメント粉は、適合微粉末と1:1になる程度まで混合するのが好ましい。なおこれらの適合微粉末とセメント粉との混合物は、空錬りして両成分の混合状態を均一にしておくべきである。
【0032】
従って本発明のセメント代替物の製造方法によれば、一般廃棄物を高温度処理することにより、焼却の過程で発生することのあるダイオキシンを分解してこれによる環境汚染の問題を解消しつつ、優れたセメント代替物を製造することができる。
【0033】
また高温度処理物を急冷して急冷粉砕スラグを得た後は、該高温度処理過程で、溶融物中に含まれることのあるアルミニウムの酸化が十分に進行した場合又は進行しなかった場合に応じて、次の適合微粉砕処理の過程では、該急冷スラグをそのまま微粉砕処理し、又は残存する金属アルミニウムの除去用の前処理を伴う微粉砕処理を行うため、得られるセメント代替物は、これを用いてモルタルやコンクリートを作成した場合に、水酸化カルシウム及び水と反応して水素ガスを発生する問題を回避することができる。
【0034】
更に、本発明のセメント代替物の製造方法は、前記高温度処理物を急冷して急冷スラグを得るものであり、既にこの時点で、前段階の粉砕が完了しているので、後の微粉砕処理の際に、前処理としての破砕処理を行う必要がない利点がある。なお、上記急冷粉砕スラグは、それ自体に微細な割れが入っている可能性があるが、この急冷スラグは、例え、そのような物であっても、微粉砕して用いる物であるため、全く問題はない。
【0035】
こうして急冷スラグの微粉砕処理で得られる適合微粉末は、これに適量のセメント粉を混合してセメント代替物を作成するものであって、経済的であると共に、セメントの水和反応時に発生する水酸化カルシウムのアルカリ刺激作用により急冷スラグ成分を硬化させることができるため、特別にアルカリ刺激材を添加しなくても良い利点がある。
【0036】
前記高温度処理として、単に前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融する処理を採用した場合以外では、その処理過程で、アルミニウムの酸化が効率よく進行し、前記適合微粉砕処理の過程を、金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、より簡易な工程で行うことができることになる利点が得られる。
【0037】
前記高温度処理として、単に前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融する処理を採用した場合には、その焼却溶融物を急冷することによって生成した急冷粉砕スラグ中の金属アルミニウムを除去する必要があるが、これは、前記したように、適合微粉砕処理の前処理過程として、前記した磁気吸着処理を含めることで、前記急冷粉砕スラグ中に含まれる金属アルミニウムを、磁性金属類とともに、極めて簡単にかつ良好に除去することができる。
【0038】
いずれにしても前記適合微粉砕処理後に得られる微粉末は金属アルミニウムを含まない物となっており、その結果、これとセメント粉との混合物である本発明のセメント代替物は、これを用いてモルタルやコンクリートを作成した場合に水素ガスを発生する問題を回避することのできるものとなる。
【0039】
こうして本発明のセメント代替物は、上記のような問題を回避しながら、極めて簡単かつ安価に製造できる物であり、かつ十分な圧縮強度を持ち、耐酸性を有するものとなる。そしてこれを硬化させる際には、通常アルカリ刺激材を必要としない物であるが、適切な割合でアルカリ刺激材(例えば、水酸化カルシウム、メタ珪酸塩又は水酸化ナトリウム)を添加すれば、更に高圧縮強度で高い耐酸性のコンクリートを得ることができるものとなる。またこのように、アルカリ刺激材を添加する場合は、前記混合粉体中の適合微粉末に対するアルカリ刺激材の混合割合は0.2〜10%程度が適当である。アルカリ刺激材が0.2%未満になると得られるコンクリートの圧縮強度が十分でなくなり、10%を越えると、硬化速度が速くなり過ぎて操作が困難になるからである。
【0040】
前記高温度処理物の急冷を水冷で行った場合は、これを極めて簡単な方法で行うことができることになる。
【実施例1】
【0041】
一般廃棄物6000kgを内側に耐火レンガを張ったロータリーキルン型焼却溶融炉を用いて、1600℃を僅かに越える高温度の下で焼却して溶融スラグ(溶融物)を生成させ、該溶融スラグを、隣接して設置してある水槽に流動送給し、該水槽中に50%程度まで満たしてある水中に投入し、該溶融スラグを急冷粉砕した。こうして概ね1mm〜15mm程度の水砕スラグが生じた。
【0042】
次いで、該水槽から水砕スラグを取り出し、しばらく常温の室内に放置して乾燥させた後、該水砕スラグをディスクミルで微粉砕し、更に遊星式ボールミルで微粉砕して平均比表面積が4100cm2/gである微粉末を得た。
この微粉末にセメント粉を10:10の割合で混合し、かつミキサで空錬りして均一に混合したセメント代替物を得た。
【実施例2】
【0043】
一般廃棄物6000kgを内側に耐火レンガを張ったロータリーキルン型焼却溶融炉を用いて、1200℃の高温度の下で焼却して溶融スラグを生成させ、これを、耐火耐熱構造の溶融スラグ取り出しヤードに落とし込み、そのまま自然放熱させて徐冷し、得られた溶融固化物を加熱炉に装入して1100〜1150℃の結晶化至適温度に30分間保持し、その後これを取り出し、隣接して設置してある水槽に送給し、該水槽中に50%程度まで満たしてある水中に投入し、急冷粉砕した。こうして概ね1mm〜15mm程度の水砕スラグが生じた。
【0044】
次いで、該水槽から水砕スラグを取り出し、実施例1と同様に処理して平均比表面積が4100cm2/gである微粉末を得、同様に、この微粉末にセメント粉を10:10の割合で混合し、かつ空錬りして均一に混合したセメント代替物を得た。
【実施例3】
【0045】
実施例2と同様にして溶融固化物を作製し、該溶融固化物を1150℃に昇温してある加熱炉に装入して1150℃まで加熱し、続いて該温度から1100℃までの間、3℃/分の冷却速度で冷却し、1100℃を下回ったところで該加熱炉から取り出し、これを隣接して設置してある水槽に送給し、該水槽中に50%程度まで満たしてある水中に投入し、急冷粉砕した。こうして概ね1mm〜15mm程度の水砕スラグが生じた。
【0046】
次いで、該水槽から水砕スラグを取り出し、実施例1、2と同様に処理して平均比表面積が4100cm2/gである微粉末を得、同様に、この微粉末にセメント粉を10:10の割合で混合し、かつ空錬りして均一に混合したセメント代替物を得た。
【実施例4】
【0047】
一般廃棄物6000kgを内側に耐火レンガを張ったロータリーキルン型焼却溶融炉を用いて、1200℃の高温度の下で焼却して溶融スラグを生成させ、該溶融スラグをそのまま該焼却炉内に25分間保持し、その後、該加熱炉から該溶融スラグを取り出し、これを隣接して設置してある水槽に送給し、該水槽中に50%程度まで満たしてある水中に投入し、急冷粉砕した。こうして概ね1mm〜15mm程度の水砕スラグが生じた。
【0048】
次いで、該水槽から水砕スラグを取り出し、実施例1、2、3と同様に処理して平均比表面積が4100cm2/gである微粉末を得、同様に、この微粉末にセメント粉を10:10の割合で混合し、かつ空錬りして均一に混合したセメント代替物を得た。
【実施例5】
【0049】
一般廃棄物6000kgを内側に耐火レンガを張ったロータリーキルン型焼却溶融炉を用いて、1200℃の高温度の下で焼却して溶融スラグ(溶融物)を生成させ、該溶融スラグを、隣接して設置してある水槽に送給し、該水槽中に50%程度まで満たしてある水中に投入し、該溶融スラグを急冷粉砕した。こうして概ね1mm〜15mm程度の水砕スラグが生じた。
【0050】
次いで、該水槽から水砕スラグを取り出し、しばらく常温の室内に放置して乾燥させた後、この水砕スラグをベルトコンベアの一端側に配したホッパーに装入し、該ホッパーから該ベルトコンベアの上面に吐出させ、20mm程度の厚みで搬送し、その搬送途中で、廃棄エリアとの間を往復移動する複数の電磁石を、それぞれ搬送中の該微粉末に接触させ、その中に含まれる磁性体成分を吸着させ、該磁性体成分とこれに凝集した凝集成分を同時に除去し、該磁性体成分と凝集成分は該廃棄エリアに廃棄した。また該磁性体成分と凝集成分の除去後の水砕スラグは、該ベルトコンベアの他端側に配した容器中に搬送収納した。その後、該容器から該水砕スラグを取り出し、ディスクミルに投入して微粉砕し、更に遊星式ボールミルで微粉砕して、磁性体成分及び凝集成分が除去された、平均比表面積が4100cm2/gである微粉末を得た。こうして得た微粉末にセメント粉を10:10の割合で混合し、かつミキサで空錬りして均一に混合したセメント代替物を得た。
【テスト例1】
【0051】
実施例1〜5で得たセメント代替物を用いて、対応する5種類のコンクリートのテストピースを6本ずつ作成し、圧縮強度試験、耐酸性試験及び水素ガスの発生の有無の観察を行った。
【0052】
テストピースは、次のようにして作製した。
5種類のセメント代替物毎に、セメント代替物、最大粒径5mmの砂、砕石2005を用いて、コンクリート配合組成比の一例であるセメント:砂:砂利=1:2:4(体積比)に準じて、該セメント代替物:最大粒径5mmの砂:砕石2005=10部:20部:40部(体積比)に配合し、コンクリート配合材とした。このコンクリート配合材をモルタルミキサで1分間空練りした後、適量の水を加えて1分30秒間本練りし、これを口径100mm、高さ200mmの円筒状の型枠6本に打設し、材齢1日で脱型し、材齢14日まで静置して6本のテストピースを得た。なおこれらの全ての作業は、20℃、65%RHの恒温恒湿室内で行った。
【テスト例2】
【0053】
このテスト例2では、実施例1〜5で得たセメント代替物にアルカリ刺激材として水酸化カルシウムを添加した。水酸化カルシウムはセメント代替物中のスラグの微粉末100に対して2の割合で添加した。この点を除いては、テスト例1と全く同様に処理して各々6本ずつテストピースを作製した。これらの全ての作業を、20℃、65%RHの恒温恒湿室内で行ったことも同様である。
【比較例】
【0054】
比較例は、セメント代替物ではなく、セメントを用いた通常のコンクリートのテストピースであり、セメント代替物をポルトランドセメントに代えた点を除いては、テスト例1及び2と全く同一の条件で6本のテストピースを作製した。これらの全ての作業を20℃、65%RHの恒温恒湿室内で行ったことも当然同様である。
【圧縮強度試験】
【0055】
前記テスト例1、2の各実施例のテストピース及び比較例のテストピースの内、それぞれ3本のテストピースを用いて圧縮強度を測定した。この圧縮強度は、島津万能試験機RFE−50型(500KN)を用いて測定した。この測定も20℃、65%RHの恒温恒湿室内で行った。これらの圧縮強度試験の測定結果は表1に示した。




【0056】
【表1】

【テスト例1、2及び比較例の圧縮強度試験のデータからの考察】
【0057】
(1) 実施例1〜5のセメント代替物のみを用いたテスト例1のテストピースと一般のポルトランドセメントを用いた比較例のテストピースとを比較すると、前者の圧縮強度の方が僅かに高いが、両者の圧縮強度には殆ど差がないといって良い。このことは本発明のセメント代替物の製造方法によって製造したセメント代替物は、種々のコンクリート製品又は構造物を作製するに際し圧縮強度の面ではセメントと全く同様に用いることができるものであることを示しいると考えられる。
(2) 実施例1〜5のセメント代替物のみを用いたテスト例1のテストピースとアルカリ刺激材として水酸化カルシウムを添加したテスト例2のテストピースとを比較すると、後者の方が圧縮強度が高くなっている。より圧縮強度の高い物が欲しい場合は、アルカリ刺激材を添加するのが有効であることを示している。
【耐酸性試験及び水素ガス発生の観察】
【0058】
<水素ガス発生の観察>
前記テスト例1、2及び前記比較例のテストピースを作製する過程に於いて、コンクリート配合材に適量の水を加えてテストピースを作製する間の水素ガスの発生の有無をそれぞれ観察した。この観察はテストピースからの泡や水の吹出、並びにその膨張の有無等をチェックすることで行った。
<耐酸性試験>
また前記テスト例1、2の各実施例毎及び前記比較例で作製した各6本のテストピースの内の残りの各3本を、それぞれタンクに満たした希硫酸溶液中に浸漬して72時間後に取り出し、水道水で洗い流しながら表面をブラシで軽くこすり、その後、各々その表面の侵食の有無を観察した。
両観察結果は表2に示した。
【0059】
【表2】

【0060】
<耐酸性試験及び水素ガス発生の観察>
(1) 表2に示した結果から見ると、実施例1〜5で作製したセメント代替物を用いたテスト例1、2のいずれも、テストピースの作製中に水素ガスの発生は観察されなかった。従って、実施例1〜4では、前記高温度処理の過程で生じた溶融スラグ中の金属アルミニウムが殆ど酸化して酸化アルミニウムになったと判断できるし、実施例5では、溶融スラグ中に残留する金属アルミニウムが、電磁石を用いた磁性体成分の除去に伴ってその凝集成分として同時に除去されたと判断することができる
(2) また表2に示した結果から見ると、比較例は希硫酸によって侵食を受けているが、実施例1〜5のセメント代替物を用いたテスト例1、2のテストピースはいずれも侵食を受けていない。テスト例1、2のテストピースでは、セメントの水和反応で生成する水酸化カルシウムがアルカリ刺激材として作用し、これが消費されてしまっているためと考えられる。実施例1〜5で作製されたセメント代替物は、この面でも優れた性能を持つものであると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物類を、焼却溶融炉で高温度処理を行い、この過程で得られた高温度処理物を急冷して急冷粉砕スラグを得、該急冷粉砕スラグを金属アルミニウム成分の含有の有無に応じて、これを除去する前処理過程を伴う又は伴わない適合微粉砕処理を行い、次いで得られた適合微粉末にセメント粉を混合し、得られた混合粉体をセメント代替物とする、セメント代替物の製造方法。
【請求項2】
前記高温度処理が、前記廃棄物類を1600℃を越える温度で焼却溶融処理することであり、
かつ前記適合微粉砕処理が、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみからなるものである請求項1のセメント代替物の製造方法。
【請求項3】
前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を固化させた後、その溶融固化物を結晶化至適温度に20〜40分間保持するものであり、
かつ前記適合微粉砕処理が、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみからなるものである請求項1のセメント代替物の製造方法。
【請求項4】
前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を固化させた後、その溶融固化物を、結晶化至適温度内に於いて、3℃/分以下の一定の冷却速度で冷却するものであり、
かつ前記適合微粉砕処理が、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみからなるものである請求項1のセメント代替物の製造方法。
【請求項5】
前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融し、その焼却溶融物を20分以上、焼却炉内に滞留させるものであり、
かつ前記適合微粉砕処理が、前記金属アルミニウム成分の除去用の前処理過程を伴わない、急冷粉砕スラグの適合サイズへの微粉砕処理のみからなるものである請求項1のセメント代替物の製造方法。
【請求項6】
前記高温度処理が、前記廃棄物類を1100〜1600℃で焼却溶融するものであり、
かつ前記適合微粉砕処理が、得られた急冷粉砕スラグを磁気吸着処理し、該急冷粉砕スラグ中に含まれることのある磁気吸着成分を吸着除去することで同時に金属アルミニウム成分を除去する前処理過程を行った後に、該急冷粉砕スラグを適合サイズに微粉砕処理するものである請求項1のセメント代替物の製造方法。
【請求項7】
前記高温度処理物の急冷が、水冷である請求項1のセメント代替物の製造方法。

【公開番号】特開2008−30980(P2008−30980A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−203992(P2006−203992)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(598157122)昭和興業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】