説明

セメント製造装置およびセメント製造方法

【課題】セメント原料として再利用されるダストの有害物質含有量の変動を抑制し、得られるセメントの品質を安定化する。
【解決手段】セメント製造装置は、セメント焼成設備10と、セパレータ14aを備えた竪型ミル14と、排ガス中に含まれるダストから粗粒および微粒を捕集する電気集塵機22と、電気集塵機22で捕集された粗粒をセメント焼成設備10に再供給する再供給手段23と、有害物質濃度検出器24と、電気集塵機22で捕集された微粒を貯留するタンク25と、セパレータ回転数制御手段14bと、微粒ダスト導入量制御手段21とを有する。排ガス中の有害物質濃度が有害物質濃度検出器24で検出され、その検出値に基づいて、セパレータ回転数制御手段14bはセパレータ14aの回転数を制御し、微粒ダスト導入量制御手段21は、タンク25から再供給手段23への微粒の導入量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント焼成設備から排出される排ガスを処理するための手段を備えたセメント製造装置、およびセメント製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セメント工場では、多種多様な廃棄物をセメント焼成用燃料やセメント原料の一部として使用されるようになってきている。それらの廃棄物には水銀等の揮発性の高い重金属が含まれることがあり、そのような揮発性の高い有害物質はセメント焼成設備で揮発して排ガス中に含有されることがある。セメント製造工程内の有害物質は、系外へ排出されるまでの工程で、排ガスに含まれるセメント原料や循環ダストに吸着し、工程内を循環しており、セメント原料や循環ダストに吸着しなかった有害物質は排ガスとともに系外(大気中)へ放出される。
【0003】
そこで、系外へ放出される有害物質の量を低減するため、例えば特許文献1には、セメント焼成設備から排出された排ガス中に含まれるダストを集塵機で捕集し、捕集したダストを、そのダストに含まれる揮発性金属成分の揮発温度以上に加熱することによって、有害物質である重金属をガス化して除去することが開示されている。また、特許文献2には、セメント焼成設備から排出された排ガスを、例えば集塵機によって重金属の含有量の高いダストと重金属の含有量の低いダストに分離して回収した後、得られた重金属の含有量の低いダストをセメント焼成設備に供給することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−355531号公報
【特許文献2】特開2006−45006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の技術では、ダストの一部をセメント原料としてセメント焼成装置へ再供給しているが、再供給されるダストから重金属を完全に除去することは極めて困難であり、結果的に、得られるセメントは、ごく微量ではあるが重金属を含有する。一方、ダストに含まれる重金属の一部は、セメント焼成用燃料やセメント原料の一部として供給される廃棄物に由来している。廃棄物はその種類によって組成が様々であり、例えば重金属の含有量は廃棄物によって大きく異なる。廃棄物はその種類によって組成が様々であり、例えば重金属の含有量は廃棄物によって大きく異なるため、結果としてダスト中の重金属の含有量は変動しやすい。そのため、使用される廃棄物の種類によって、セメントの焼成条件や、得られるセメントの組成が変動し、結果的にセメントの品質にばらつきが生じてしまうおそれがある。特許文献1、2に開示された技術では、ダストに含まれる重金属等の有害物質のばらつきは考慮されていない。
【0006】
本発明の目的は、資源循環型社会の構築と環境負荷低減を両立させるために、重金属含有量の異なる多種多様な廃棄物を使用しながら、排ガスから排出されやすい揮発性の高い有害物質の濃度を安定的に制御できるセメント製造装置およびセメント製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセメント製造装置は、セメント焼成設備と、
前記セメント焼成設備から排出される排ガスを用いて前記セメント原料を乾燥・粉砕させる竪型ミルであって、前記排ガスに含まれるダストとともに前記竪型ミルから排出される前記セメント原料の粒度を調整するために回転されるセパレータを備えた竪型ミルと、
前記竪型ミルから排出された前記排ガスに含まれるセメント原料および循環ダストから粗粒と微粒とを捕集する電気集塵機と、
前記電気集塵機により捕集された粗粒を、前記セメント焼成設備に再供給する再供給手段と、
を有するセメント製造装置において、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器と、
前記有害物質濃度検出器の検出値に基づいて前記セパレータの回転数を制御するセパレータ回転数制御手段と、
前記電気集塵機により捕集された微粒を貯留するタンクと、
前記有害物質濃度検出器の検出値に基づいて前記タンクから前記再供給手段への微粒の導入を制御する微粒ダスト導入量制御手段と、
をさらに有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のセメント製造方法は、セメント焼成設備でセメント原料を焼成し、回転数の制御により前記セメント原料の粒度を調整するセパレータを備えた竪型ミルによって、前記セメント焼成設備から排出される排ガスを用いて前記セメント原料および循環ダストを乾燥・粉砕し、電気集塵機によって、前記竪型ミルから排出される排ガスに含まれる前記セメント原料および循環ダストから粗粒と微粒とを捕集し、捕集された前記粗粒を前記セメント焼成設備に再供給するセメント製造方法において、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出することと、
前記有害物質濃度の検出値に基づいて前記セパレータの回転数を制御することと、
前記電気集塵機により捕集された微粒を貯留することと、
前記有害物質濃度の検出値に基づいて、貯留された前記微粒の前記再供給手段への導入を制御することと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、排ガス中の有害物質濃度に応じてセパレータの回転数、および電気集塵機で捕集された微粒の再供給手段への導入を制御することで、電気集塵機で捕集されるダストの有害物質含有量およびセメント焼成設備で再利用されるダストの有害物質含有量を、それらの変動が抑制されるように制御することができる。その結果、安定した品質でセメントを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態によるセメント製造装置の概略図である。
【図2】図1に示すセメント製造装置における、セパレータ回転数の制御およびタンクからの微粒の払い出しの制御の一例を示すフローチャートである。
【図3】図2に示す制御による排ガス中の有害物質濃度の経時的変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、セメント焼成設備10および竪型ミル14を備えた本発明の一実施形態によるセメント製造装置が示されている。なお、図1において、固体とガスの流れを矢印で示しているが、固体の流れは実線矢印で示し、ガスの流れは破線矢印で示している。また、有害物質を含んでいる可能性の高い微粒成分の流れは一点鎖線で示している。
【0012】
石灰石、珪石、粘土、鉄源および廃棄物等からなるセメント原料は、所定の諸率に配合調合された後、コンベア15で搬送されて竪型ミル14に供給され、竪型ミル14では、セメント焼成設備10から排出される排ガスを用いてセメント原料が乾燥・粉砕され、粉砕されたセメント原料とともに排ガスが排出される。また、後述するように、ロータリーキルン12および/または仮焼炉13では燃料として可燃性廃棄物が燃焼処理され、これらの廃棄物中に含まれる揮発性重金属が排ガス中に混入してセメント製造装置内を循環している。
【0013】
竪型ミル14は、セパレータ14aと、セパレータ14aの回転数を制御する、例えば制御回路として与えることのできるセパレータ回転数制御手段14bと、回転するテーブル14cと、テーブル14c上に微小な隙間を介して配置されたローラ14d等と、を有している。セメント原料は、テーブル14c上に供給され、テーブル14cの回転による遠心力でテーブル14cの外周部へ移動し、テーブル14cとローラ14dとの間で圧縮およびせん断されることによって粉砕される。粉砕されたセメント原料は、セメント焼成設備10から導入された排ガスとともにセパレータ14aに送り込まれ、セパレータ14aは、回転により生じる気流を利用してセメント原料を所定の粒度に分級し、竪型ミル14から排出されるセメント原料の粒度は、セパレータ回転数制御手段14bによってセパレータ14a回転数を制御することによって調整することができる。一般に、セパレータ14aの回転数を高くするほど、排出されるセメント原料は、粒径の小さいものの割合が多くなる。
【0014】
セメント焼成設備10から排出された排ガスは、セメント製造装置を循環する循環ダスト(以下、単にダストともいう)を含んでいる。本発明で取り扱う排ガスに含まれるダストは、セメント原料を含んでいるが、本発明における排ガス処理では、セメント原料もダストとして他の粒子と特に区別することなく処理する。よって、本発明では、排ガスの処理に関して述べるとき、セメント原料と他の粒子とを区別せず単にダストという。
【0015】
前述のように、セメント原料には廃棄物が含まれているが、廃棄物には、水銀、タリウム、セレン、カドミウム、亜鉛、鉛およびヒ素など揮発性の高い重金属類が含まれていることがある。これらの有害物質は、ダストに吸着した状態およびガスの状態で排ガス中に含まれている。
【0016】
セメント焼成設備10は、サスペンションプレヒータ11とロータリーキルン12とを有している。サスペンションプレヒータ11の上段に供給されたセメント送入原料は、サスペンションプレヒータ11で予熱・仮焼され、予熱・仮焼された最下段サイクロン原料は、ロータリーキルン12で約1450℃で焼成され、冷却後に排出され、これによってセメントクリンカが得られる。得られたセメントクリンカは、石膏等を添加された後、仕上げミル(不図示)で粉砕されてセメントとされる。
【0017】
一般に、セメント焼成設備10と竪型ミル14との間には、セメント焼成設備10から排出された排ガスを冷却するための調湿塔16が設置されており、セメント焼成設備10から排出された排ガスは、調湿塔16で冷却された後、セメント原料の乾燥用に竪型ミル14に供給される。なお、図1に二点鎖線で示すように、セメント製造装置10からの排ガスを、調湿塔16を介さずに直接、竪型ミル14に供給してもよい。
【0018】
セメント製造装置は、セメント焼成設備10から竪型ミル14を経て排出された排ガスのセメント原料およびダストを粗粒と微粒とに分級し、捕集する電気集塵機22と、電気集塵機22で捕集されたダストの粗粒をセメント製造設備10に再供給するための再供給手段23とを有している。再供給手段23は、例えば、空気輸送機、スクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットエレベータ等で構成することができる。また、再供給手段23とセメント焼成設備10との間には、セメント原料とダストとを均一に混合するブレンディングサイロと、セメント焼成設備10へ送入されるセメント原料を貯蔵するストレージサイロとを有している(不図示)。
【0019】
セメント製造装置は、電気集塵機22で粗粒および微粒が捕集された後の浄化排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器24と、電気集塵機22で捕集された微粒を貯留するタンク25と、タンク25の出口側において再供給手段23までの払い出しラインに設けられ、有害物質濃度検出器24の検出値に基づいて、タンク25から再供給手段23へ導入される微粒の量を制御する微粒ダスト導入量制御手段21と、をさらに有している。
【0020】
有害物質濃度検出器24は、電気集塵機22と、電気集塵機22から排出された、ダストを捕集した後の浄化排ガスを大気中に放出する煙突26との間のガス移送ラインに設置されている。有害物質濃度検出器24は、例えば、有害物質として水銀濃度を連続的に検出したり、他の有害物質の検出器と組み合わせて複数種類の有害物質の濃度を連続的に検出したりすることもできる。有害物質濃度検出器24によって検出された有害物質濃度の検出値は、竪型ミル14のセパレータ回転数制御手段14bおよび微粒ダスト導入量制御手段21へ送られる。
【0021】
有害物質濃度検出器24からの検出値に基づいて、セパレータ回転制御手段14bは、検出値が所定のしきい値以上になったとき(有害物質濃度が所定の濃度以上になったとき)に、セパレータ14aの回転数を増加させるようにセパレータ14aの回転数を制御する。例えば水銀濃度の場合は0.05mg/m3以下を所定のしきい値として設定させると。
【0022】
一方、微粒ダスト導入量制御手段21は、有害物質濃度検出器24からの検出値が所定のしきい値以上であるときには、タンク25に貯留されている微粒が再供給手段23へ導入されないようにしているが、検出値がしきい値未満である場合、タンク25に貯留されている微粒を再供給手段23へ導入する。微粒ダスト導入量制御手段21は、例えばダンパで構成することができる。
【0023】
次に、上述したセメント製造装置10による排ガスの処理手順を説明する。
【0024】
調湿塔16および竪型ミル14を経てセメント焼成設備10から排出された、ダストを含む排ガスは、電気集塵機22へ導入され、電気集塵機22で排ガス中のセメント原料および循環ダストが粗粒と微粒とに分級されて捕集される。電気集塵機22で捕集された粗粒は再供給手段23に導入され、再供給手段23によってセメント原料の一部としてセメント焼成設備10に供給される。一方、電気集塵機22で捕集された微粒は、タンク25に導入される。排ガス処理の初期段階では、微粒ダスト導入量制御手段21は、タンク25から再供給手段23までの払い出しラインを開いて、タンク25内に導入された微粒が再供給手段23へ導入されるようにしている。
【0025】
一般的に有害物質は、粒径が比較的小さい(比表面積が大きい)ダストに吸着しやすく、粒径が比較的大きい(比表面積が小さい)ダストには吸着しにくい。よって、タンク25に貯留される微粒は、有害物質の含有量が、そのまま再供給手段23からセメント焼成設備10に供給される粗粒と比べて高い。
【0026】
電気集塵機22で粗粒および微粒が捕集された後の排ガスである浄化排ガスは、煙突26へ導入され、煙突26から大気中へ放出される。また、浄化排ガスは、電気集塵機22から煙突26までの移送ラインの工程で、有害物質濃度検出器24により有害物質濃度が検出される。有害物質濃度の検出値は、竪型ミル14のセパレータ回転数制御手段14bおよび微粒ダスト導入量制御手段21へ送られる。
【0027】
セパレータ回転数制御手段14bおよび微粒ダスト導入量制御手段21は、有害物質濃度検出器24の検出値に応じて、それぞれセパレータ14aの回転数およびタンク25から再供給手段23までの払い出しラインの開閉を制御する。以下、これらの制御について、有害物質濃度として水銀濃度を検出する場合を例に挙げて、図2等を参照しつつ説明する。
【0028】
有害物質濃度検出器24にて浄化排ガス中の水銀濃度が検出される(S101)と、その検出値はセパレータ回転数制御手段14bへ送られる。セパレータ回転数制御手段14は、送られた検出値を、予め定められたしきい値Aと比較する(S102)。比較の結果、検出値がしきい値A未満であれば、セパレータ回転制御手段14bは、セパレータ14aを通常運転における回転数で回転させる(S104)。
【0029】
一方、水銀濃度の検出値がしきい値A以上であれば、セパレータ回転数制御手段14bは、セパレータ14aの回転数を増加させ、通常よりも高い回転数でセパレータ14aを回転させる(S103)。セパレータ14aの回転数を増加させることにより、竪型ミル14から排出されるセメント原料および循環ダストは、粒径が小さくなり、有害物質がより吸着しやすい。よって、セパレータ14aの回転数を増加させ、セメント原料および循環ダストの粒径をより小さくすることで、ダストへの有害物質の吸着が促進され、結果的に浄化排ガス中の有害物質濃度が低下する。また、セメント原料および循環ダストの小径化による有害物質の吸着促進がセパレータ12aの回転数制御によって行なわれ、これは電気集塵機22でのダストの捕集に直ちに反映されるので、有害物質の除去に即効性を持たせることができる。なお、ダストをより小径化することで、電気集塵機22で捕集される微粒の割合が増加し、タンク25へ導入される微粒の量も増えることになる。
【0030】
有害物質濃度検出器24にて検出された排ガス中の水銀濃度の検出値は、微粒ダスト導入量制御手段21へも送られる。微粒ダスト導入量制御手段21は、送られた検出値を、予め定められたしきい値Bと比較する(S105)。比較の結果、検出値がしきい値B以上であれば、微粒ダスト導入量制御手段21は、タンク25から再供給手段23までの払い出しラインを閉じる(S107)。これによって、電気集塵機22からタンク25に導入された微粒は、タンク25内に貯留される。
【0031】
一方、水銀濃度の検出値がしきい値B未満であれば、微粒ダスト導入制御手段21は、タンク25から再供給手段23までの払い出しラインを開く(S106)。払い出しラインを開くことによって、タンク25内に貯留されていた微粒が、再供給手段23を通じてセメント焼成設備10へ供給される。微粒は、粗粒に比べて有害物質の含有量が高い。よって、排ガス中の水銀濃度が低下した場合に、タンク25に貯留されている微粒をセメント焼成設備10へ供給することで、セメント焼成設備10から排出される排ガス中の水銀濃度が上昇することになる。
【0032】
図2に示したフローでは、セパレータ14aの回転数の制御の後に、タンク25の払い出しラインの開閉制御を行なっているが、これらの制御の順番は逆であってもよいし、並行して行なってもよい。
【0033】
上記の制御による、排ガス中の水銀濃度検出値の経時的変化、セパレータ回転数の経時的変化、および払い出しラインの開閉の経時的変化の一例を図3に示す。図3に示す例では、しきい値Aとしきい値Bが同じ場合を示している。図3において、実線は本発明による制御を行った場合を示し、破線は本発明による制御を行わなかった場合を示す。
【0034】
図3において、排ガス中の水銀濃度が次第に上昇し、時間T1でしきい値に達する。それと同時に、セパレータ回転数が増加され、時間T11において開いていたタンク25の払い出しラインが閉じられる(T1からT11までの時間は制御応答遅れによるタイムラグである)。これによって、水銀の含有量が高い微粒はタンク25に貯留されるため、メント焼成設備10への水銀の供給が抑制され、また、竪型ミル14においてセパレータ14aの回転数が増加するため、セメント原料および循環ダストへの水銀の吸着が促進され、結果的に排ガス中の水銀濃度は低下する。
【0035】
時間T2を過ぎると、排ガス中の水銀濃度はしきい値よりも低下する。水銀濃度がしきい値未満になった時点で、セパレータ回転数が通常の回転数に戻され、時間T21においてタンク25の払い出しラインが開かれる(T2からT21までの時間は制御応答遅れによるタイムラグである)。払い出しラインが開かれることによって、水銀の含有量が高い微粒がタンク25からセメント焼成設備10へ供給されるため、結果的に、排ガス中の水銀濃度は上昇していく。
【0036】
以上のように、本実施形態では、排ガス中の有害物質濃度を検出し、有害物質濃度が高い場合は、有害物質がセメント原料および循環ダストに吸着しやすくなるようにセパレータ14aの回転を制御して排ガス中の有害物質濃度を低下させ、かつ、有害物質濃度が低い場合は、電気集塵機22で捕集したダストのうち有害物質の含有量が高いダストをセメント焼成設備10に再供給する。
【0037】
このような制御によって、排ガス中に含まれる有害物質濃度の変動を、セパレータ回転数および払い出しラインの開閉を制御しない場合(図3中、破線で示す)と比較して抑制することができる。排ガス中の有害物質濃度の安定化は、排ガス中のダストの有害物質含有量の安定化を意味する。
【0038】
図3では、セパレータ14aの回転数を増加させるトリガーとなるしきい値Aと、タンク25の払い出しラインを開閉させるトリガーとなるしきい値Bとが同じ値であり、セパレータ回転数の制御とタンク25の払い出しラインの開閉制御が同時に行なわれる例を示したが、これらのしきい値A、Bは互いに異なっていてもよい。しきい値A、Bが異なる場合は、セパレータ14aの回転数制御とタンク25の払い出しライン開閉制御を独立して行なうことができる。
【0039】
また、上述した説明では、微粒ダスト導入量制御手段21は、タンク25の払い出しラインを開いたり閉じたりするように制御する例が示されているが、払い出しラインの開度を制御するように構成されていてもよい。この場合は、しきい値と検出値との差の程度に応じて払い出しラインの開度を制御するようにすれば、排ガス中の有害物質濃度の変動をより小さくすることができる。
【0040】
さらに、以上説明した排ガスの処理手順において、有害物質をより効率よく吸着させることができるようにするために、竪型ミル14で乾燥・粉砕されたセメント原料のBET比表面積は、2〜4m2/gであることが好ましい。この値が2m2/g未満であると、セメントクリンカ中のf.CaOが増大しやすく、また、水銀等の有害物質の吸着量が減少するので、好ましくない。一方、この値が4m2/gよりも大きいと、電気集塵機22で捕集できるダストの量が減少するため、セメント原料としての供給量が減少してしまうため、好ましくない。
【0041】
以上説明したように、本発明の一形態によれば、以下の(1)〜(3)に記載するセメント製造装置、および(4)〜(5)に記載するセメント製造方法が提供される。
【0042】
(1) セメント焼成設備10と、
前記セメント焼成設備10から排出される排ガスを用いて前記セメント原料を乾燥・粉砕させる竪型ミル14であって、前記排ガスに含まれるダストとともに前記竪型ミル14から排出される前記セメント原料の粒度を調整するために回転されるセパレータ14aを備えた竪型ミル14と、
前記竪型ミル14から排出された前記排ガスに含まれるセメント原料および循環ダストから粗粒と微粒とを捕集する電気集塵機22と、
前記電気集塵機22により捕集された粗粒を、前記セメント焼成設備10に再供給する再供給手段23と、
を有するセメント製造装置において、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器24と、
前記有害物質濃度検出器24の検出値に基づいて前記セパレータ14aの回転数を制御するセパレータ回転数制御手段14bと、
前記電気集塵機22により捕集された微粒を貯留するタンク25と、
前記有害物質濃度検出器24の検出値に基づいて前記タンク25から前記再供給手段23への微粒の導入を制御する微粒ダスト導入量制御手段21と、
をさらに有することを特徴とするセメント製造装置。
【0043】
上記のとおり構成されたセメント製造装置によれば、排ガス中の有害物質濃度に応じてセパレータ14aの回転数が制御され、竪型ミル14から排出されるダストの粒度を調整する。一般に、排ガス中のダストは粒径が小さいほど有害物質が吸着しやすく、電気集塵機22で捕集される微粒は粗粒に比べて有害物質の含有量が高い。そこで、排ガス中の有害物質濃度に応じてセパレータ14aの回転数を制御することで、電気集塵機22で捕集される微粒の量、すなわち有害物質の量が制御される。
【0044】
一方、セメント焼成設備10は廃棄物を燃料の一部としているため、廃棄物の種類によってダストの有害物質含有量が変化する。そのため、排ガス中の有害物質濃度に応じて、有害物質の含有量の高い微粒を貯留しているタンクから再供給手段23への、微粒の導入を制御することで、再供給手段を介してセメント焼成設備10で再利用されるダストの有害物質含有量が制御される。
【0045】
これらの制御を適切に行なうことによって、排ガス中の有害物質濃度、およびセメント焼成設備10で再利用されるダストの有害物質含有量の変動を抑制することができる。
【0046】
(2) 上記(1)に記載のセメント製造装置において、
前記セパレータ回転数制御手段14bは、前記有害物質検出器24の検出値が所定のしきい値以上になったときに前記セパレータ14aの回転数を増加させ、
前記微粒ダスト導入量制御手段21は、前記有害物質検出器24の検出値が所定のしきい値未満になったときに、前記タンク25から前記再供給手段21へ前記微粒を導入させること
を特徴とするセメント製造装置。
【0047】
このように、セパレータ回転数制御手段14bが、排ガス中の有害物質濃度が高い場合にセパレータ14aの回転数を増加させてダストを微細化することにより、ダストへの有害物質の吸着を促進させ、有害物質を電気集塵機22にて効率的に捕集することができる。また、微粒ダスト導入量制御手段21が、排ガス中の有害物質濃度が高い場合は、微粒をタンク25に貯留して有害物質の含有量が低い粗粒のみを再供給手段23に導入し、排ガス中の有害物質濃度が低い場合は、タンク25に貯留された、有害物質の含有量が高い微粒を再供給手段23に導入するようにすることで、セメント製造設備10で再利用されるダストの有害物質含有量の変動を抑制することができる。
【0048】
(3) 上記(1)または(2)に記載のセメント製造装置において、
前記前記竪型ミル14は、前記セメント原料をBET比表面積が2〜4m2/gとなるように粉砕すること
を特徴とするセメント製造装置。
【0049】
BET比表面積を上記の範囲とすることで、有害物質をダストに効率よく吸着させることができる。
【0050】
(4) セメント焼成設備10でセメント原料を焼成し、回転数の制御により前記セメント原料の粒度を調整するセパレータ14aを備えた竪型ミル14によって、前記セメント焼成設備10から排出される排ガスを用いて前記セメント原料および循環ダストを乾燥・粉砕し、電気集塵機によって、前記竪型ミル14から排出される排ガスに含まれる前記セメント原料および循環ダストから粗粒と微粒とを捕集し、捕集された前記粗粒を前記セメント焼成設備10に再供給するセメント製造方法において、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出することと、
前記有害物質濃度の検出値に基づいて前記セパレータ14aの回転数を制御することと、
前記電気集塵機22により捕集された微粒を貯留することと、
前記有害物質濃度の検出値に基づいて、貯留された前記微粒の前記再供給手段23への導入を制御することと、
を含むことを特徴とするセメント製造方法。
【0051】
上記のセメント製造方法によれば、排ガス中の有害物質濃度に応じてセパレータ14aの回転数を制御することで、電気集塵機22で捕集される、有害物質の含有量が高い微粒の量を制御でき、また、排ガス中の有害物質濃度に応じて、再供給手段23への微粒の導入を制御することで、セメント焼成設備10で再利用されるダストの有害物質含有量を制御できる。これらの制御を適切に行なうことによって、排ガス中の有害物質濃度、およびセメント焼成設備10で再利用されるダストの有害物質含有量の変動を抑制することができる。
【0052】
(5) 上記(4)に記載のセメント製造方法において、
前記セパレータ14aの回転数を制御することは、前記有害物質濃度の検出値が所定のしきい値以上になったときに前記セパレータ14aの回転数を増加させることを含み、
前記微粒の前記再供給手段23への導入を制御することは、前記有害物質濃度の検出値が所定のしきい値未満になったときに、貯留されている微粒を前記再供給手段23へ導入させることを含むこと
を特徴とするセメント製造方法。
【0053】
排ガス中の有害物質濃度が高い場合はセパレータ14aの回転数を増加させてダストへの有害物質の吸着を促進させ、逆に有害物質濃度が低い場合は、有害物質の含有量が高い微粒がセメント製造設備10に再供給されるようにすることで、排ガス中の有害物質濃度、およびセメント焼成設備10で再利用されるダストの有害物質含有量の変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 セメント焼成設備
11 サスペンションプレヒータ
12 ロータリーキルン
13 仮焼炉
14 竪型ミル
14a セパレータ
14b セパレータ回転制御手段
14c テーブル
14d ローラ
15 コンベア
16 調湿塔
21 微粒ダスト導入量制御手段
22 電気集塵機
23 再供給手段
24 有害物質濃度検出器
25 タンク
26 煙突

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント焼成設備と、
前記セメント焼成設備から排出される排ガスを用いて前記セメント原料を乾燥・粉砕させる竪型ミルであって、前記排ガスに含まれるダストとともに前記竪型ミルから排出される前記セメント原料の粒度を調整するために回転されるセパレータを備えた竪型ミルと、
前記竪型ミルから排出された前記排ガスに含まれるセメント原料および循環ダストから粗粒と微粒とを捕集する電気集塵機と、
前記電気集塵機により捕集された粗粒を、前記セメント焼成設備に再供給する再供給手段と、
を有するセメント製造装置において、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出する有害物質濃度検出器と、
前記有害物質濃度検出器の検出値に基づいて前記セパレータの回転数を制御するセパレータ回転数制御手段と、
前記電気集塵機により捕集された微粒を貯留するタンクと、
前記有害物質濃度検出器の検出値に基づいて前記タンクから前記再供給手段への微粒の導入を制御する微粒ダスト導入量制御手段と、
をさらに有することを特徴とするセメント製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセメント製造装置において、
前記セパレータ回転数制御手段は、前記有害物質検出器の検出値が所定のしきい値以上になったときに前記セパレータの回転数を増加させ、
前記微粒ダスト導入量制御手段は、前記有害物質検出器の検出値が所定のしきい値未満になったときに、前記タンクから前記再供給手段へ前記微粒を導入させること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセメント製造装置において、
前記前記竪型ミルは、前記セメント原料をBET比表面積が2〜4m2/gとなるように粉砕すること
を特徴とするセメント製造装置。
【請求項4】
セメント焼成設備でセメント原料を焼成し、回転数の制御により前記セメント原料の粒度を調整するセパレータを備えた竪型ミルによって、前記セメント焼成設備から排出される排ガスを用いて前記セメント原料および循環ダストを乾燥・粉砕し、電気集塵機によって、前記竪型ミルから排出される排ガスに含まれる前記セメント原料および循環ダストから粗粒と微粒とを捕集し、捕集された前記粗粒を前記セメント焼成設備に再供給するセメント製造方法において、
前記排ガス中の有害物質濃度を検出することと、
前記有害物質濃度の検出値に基づいて前記セパレータの回転数を制御することと、
前記電気集塵機により捕集された微粒を貯留することと、
前記有害物質濃度の検出値に基づいて、貯留された前記微粒の前記再供給手段への導入を制御することと、
を含むことを特徴とするセメント製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載のセメント製造方法において、
前記セパレータの回転数を制御することは、前記有害物質濃度の検出値が所定のしきい値以上になったときに前記セパレータの回転数を増加させることを含み、
前記微粒の前記再供給手段への導入を制御することは、前記有害物質濃度の検出値が所定のしきい値未満になったときに、貯留されている微粒を前記再供給手段へ導入させることを含むこと
を特徴とするセメント製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−241112(P2011−241112A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113908(P2010−113908)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】