説明

セメント製造装置

【課題】コストアップを抑制しつつ系外へのダイオキシン排出を低減したセメント製造装置を提供する。
【解決手段】 セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検出する濃度検出部と、竪型ミルと電気集塵機との間に設けられ、竪型ミルにより粉砕されたセメント原料粉を捕集するサイクロンと、サイクロンで捕集されたセメント原料粉のBET比表面積を検出する原料粉表面積検出部と、竪型ミルに設けられたセパレータの回転数を変更する回転数変更手段とをさらに備え、揮発性有機化合物の濃度の閾値である濃度閾値と、原料粉BET比表面積の閾値である原料粉表面積閾値とを設け、回転数変更手段は、揮発性有機化合物の濃度の検出値が濃度閾値を超えた場合、または原料粉BET比表面積の検出値が原料粉表面積閾値未満となった場合、セパレータの回転数を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント焼成設備から排出されるダイオキシンの処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1では、セメント焼成設備から抽気したガスから、水銀、ダイオキシン等を凝縮させて除去する技術が記載されている。また、特許文献2では、排ガスを急冷することでダイオキシンの再合成を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−97005号公報
【特許文献2】特開2005−315563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1,2にあっては、凝縮や急冷を行う設備を別途設置する必要があり、コストアップを招いていた。
【0005】
本発明の目的は、コストアップを抑制しつつ系外へのダイオキシン排出を低減したセメント製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセメント製造装置は、セメント焼成設備と、竪型ミルと、電気集塵機とを備えるセメント製造装置において、
前記セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検出する濃度検出部と、前記竪型ミルと前記電気集塵機との間に設けられ、前記竪型ミルにより粉砕されたセメント原料粉を捕集するサイクロンと、前記サイクロンで捕集されたセメント原料粉のBET比表面積を検出する原料粉表面積検出部と、前記竪型ミルに設けられたセパレータの回転数を変更する回転数変更手段とをさらに備え、
前記揮発性有機化合物の濃度の閾値である濃度閾値と、前記原料粉BET比表面積の閾値である原料粉表面積閾値とを設け、前記回転数変更手段は、前記揮発性有機化合物の濃度の検出値が前記濃度閾値を超えた場合、または前記原料粉BET比表面積の検出値が前記原料粉表面積閾値未満となった場合、前記セパレータの回転数を増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
よって、各閾値に基づきセパレータ回転数を変更し、ダイオキシン前駆体となる揮発性有機化合物を竪型ミルでの粉砕物または電気集塵機のダストに吸着させることにより、コストアップを抑制しつつ系外へのダイオキシン排出を低減したセメント製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】セメント製造装置のシステム図である。
【図2】実施形態1のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態1]
図1は、セメント製造装置1のシステム図である。セメント製造装置1は、サスペンションプレヒータ11(以下SP11と記載)、仮焼炉12、ロータリーキルン13、塩素バイパス設備14(以下塩素BP14と記載)、原料サイロ15、竪型ミル16、サイクロン17,電気集塵機18(以下EP18と記載)、煙突19を有する。太実線は原料の流れ、細実線はガスの流れを示す。
【0010】
竪型ミル16には、セメント原料となる石灰石、粘土、珪石、鉄、および建設発生土等の廃棄物が供給され、粉砕・混合された後サイクロン17を介して原料サイロ15に供給される。原料サイロ15内のセメント原料は適宜SP1に供給されて予熱され、仮焼炉12を介してロータリーキルン11において焼成され、クリンカとなって排出される。このクリンカを粉砕することによりセメント製品が得られる。仮焼炉12およびロータリーキルン13には石炭とともに廃プラスチック等の可燃性廃棄物が燃料として供給される。塩素BP14は、窯尻13aからガスを一部抽気し、このガスから塩素分を除去する。
【0011】
また、竪型ミル16には粉砕した原料を分級するセパレータ16aが設けられている。このセパレータ16aは回転数変更手段100からの指令に基づき回転数を変化させることにより分級を行うものであって、回転数を上げることで、より小径の原料粒子を分級するものである。この竪型ミル16内ではSP11からの排ガスによって粉砕された原料が乾燥され、その際排ガスに含まれる物質の一部は原料の粒子に吸着される。また、竪型ミル16は、粉砕されたセメント原料が、セメント焼成設備から導入された排ガスとともにセパレータ16aに送り込まれ、セパレータ16aは、回転により生じる気流を利用してセメント原料を所定の粒度に分級し、竪型ミル16から排出されるセメント原料の粒度は、回転数変更手段100によってセパレータ16a回転数を制御することによって調整することができる。一般に、セパレータ16aの回転数を高くするほど、排出されるセメント原料は、粒径の小さいものの割合が多くなる。
【0012】
EP18と煙突19の間にはVOC濃度検出部110が設けられている。VOC濃度検出部110はEP18の排ガスに含まれるVOC(揮発性有機化合物:ダイオキシン前駆体)濃度Cvを検出する。サイクロン17と原料サイロ15の間には原料粉表面積検出部120が設けられて原料ミル精粉(竪型ミル16で粉砕された原料粉、以下原料粉)のBET比表面積A1を検出する。必要に応じ、EP18と原料サイロ15の間にEPダスト表面積検出部130を設け、EP18で集塵された集塵ダストのBET比表面積A2を検出することとしてもよい。回転数変更手段100は、検出されたVOC濃度Cv、原料粉のBET比表面積A1に基づきセパレータ16aの回転数を変更する。
【0013】
[回転数変更手段]
排ガスからのダイオキシン低減には、発生したダイオキシンまたはその前駆体を原料粒子に吸着させて再度セメント製造装置内に戻し、SP11内で分解した後、塩素分を塩素BP14により除去することが有効である。したがって、排ガス中のVOC濃度Cvが増加した場合は排ガス中のダイオキシンの増加が見込まれるため、セパレータ回転数を増加させて原料粒子の粒径を小さくすることで、比表面積を増加させる。具体的には、Cvが濃度閾値αを超えた際(下記式(1)参照)、セパレータ回転数を増加させる。これにより粉砕された原料に吸着されるダイオキシン量を増加させ、系外へのダイオキシン排出量を低減する。
【0014】
また、サイクロン17から排出される原料粉のBET比表面積が減少すると、それに伴って吸着量が減少するため、系外に排出されるダイオキシン量も増大するおそれがある。したがって、サイクロン17で捕集された原料粉のBET比表面積A1が原料粉表面積閾値β1未満となった場合、(下記式(2)参照)、セパレータ回転数を増加させる。
【0015】
図2は、回転数変更手段100におけるフローチャートである。
ステップS1では、各検出部110,120において検出されたVOC濃度Cv、原料粉のBET比表面積A1を読み込む。
ステップS2では、VOC濃度Cv、原料粉のBET比表面積A1それぞれの閾値α、β1に基づき、下記の式(1)、(2)のいずれかが成立するか否かを判断する。YES(いずれか1つでも成立した場合)であればステップS3へ移行し、NO(いずれも成立しない場合)はステップS1に戻る。
Cv>α・・・(1)
A1<β1・・・(2)
ステップS3では、セパレータ16aの回転数を増加させ、ステップS1に戻る。
【0016】
なお、本実施形態では上記式(1)(2)のいずれか1つでも成立した場合はセパレータ回転数を増加させることとしたが、全ての式が成立した場合に回転数を増加させることとしてもよいし、各式(1)(2)に優先順位を設け、優先度の高い式が成立した場合、他の式の正否に拠らず回転数を増加させることとしてもよい。また必要であれば、上記(1)、(2)式が成立しない場合であっても、EP18から排出されたダストのBET比表面積A2が第2表面積閾値β2未満となった場合にセパレータ回転数を増加させることとしてもよい。
【0017】
[実施形態1の効果]
VOC濃度検出部110と、原料粉表面積検出部120と、セパレータの回転数を変更する回転数変更手段100とを備え、
回転数変更手段100は、VOC濃度Cvが濃度閾値αを超えた場合、または原料粉のBET比表面積A1が原料粉表面積閾値未満となった場合、セパレータ16aの回転数を増加させることとした。
これにより、排ガス中のダイオキシンの増加が見込まれる際はセパレータ回転数を増加させて原料粒子の比表面積を増加させ、ダイオキシンの吸着を促進することが可能となる。よって、コストアップを抑制しつつ系外へのダイオキシン排出を低減したセメント製造装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 セメント焼成設備
16 竪型ミル
17 電気集塵機
100 回転数変更手段
110 濃度検出部
120 原料粉表面積検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント焼成設備と、竪型ミルと、電気集塵機とを備えるセメント製造装置において、
前記セメント焼成設備から排出される排ガスに含まれる揮発性有機化合物の濃度を検出する濃度検出部と、
前記竪型ミルと前記電気集塵機との間に設けられ、前記竪型ミルにより粉砕されたセメント原料粉を捕集するサイクロンと、
前記サイクロンで捕集されたセメント原料粉のBET比表面積を検出する原料粉表面積検出部と、
前記竪型ミルに設けられたセパレータの回転数を変更する回転数変更手段と
をさらに備え、
前記揮発性有機化合物の濃度の閾値である濃度閾値と、前記原料粉BET比表面積の閾値である原料粉表面積閾値とを設け、
前記回転数変更手段は、前記揮発性有機化合物の濃度の検出値が前記濃度閾値を超えた場合、または前記原料粉BET比表面積の検出値が前記原料粉表面積閾値未満となった場合、前記セパレータの回転数を増加させること
を特徴とするセメント製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−206921(P2012−206921A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75994(P2011−75994)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】