説明

セラミックスヒータ及びその製造方法

【課題】高精度で安価にシャフトの中空部より外側での載置板の測温が可能となり、載置板とシャフトが一体的に接合されたセラミックスヒータを提供する。
【解決手段】セラミックスヒータ1は、上面に被加熱物が載置され、セラミックスからなる載置板2と、載置板2の内部に埋設された複数の発熱抵抗体3A,3Bと、載置板2の下面に接合され、セラミックスからなる中空のシャフト5と、複数の発熱抵抗体3A,3Bの下方に配置された熱電対4A,4Bとを備える。熱電対4Bは、載置板2の下面に形成され、載置板2及びシャフト5で覆われた溝2dの内部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどの被加熱物を加熱、支持するセラミックスヒータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ等の被加熱物の製膜やエッチングを均質化するためには、被加熱物を加熱、支持する載置板の加熱ゾーンごとに温度制御が可能なセラミックスヒータが必要となる。そこで、各加熱ゾーンにそれぞれ発熱抵抗体を埋設して、各発熱抵抗体の発熱を独立して制御するマルチゾーンヒータが提案されている(例えば特許文献1参照)。マルチゾーンヒータは、各加熱ゾーンで独立した温度制御が可能であり、従来のシングルゾーンヒータと比較して載置面の温度分布の均一化や傾斜化を精度良く行うことができる。
【0003】
マルチゾーンヒータは、加熱ゾーンごとに測温する必要があるが、測温素子としての熱電対を載置板を支持するシャフトの中空部より外側に配置することは困難である。特許文献2には、内部に熱電対を埋設したセラミックス成形体を焼成して載置板を形成することにより、シャフトより外側に熱電対を配置することが記載されている。また、引用文献2には、焼成された載置板に機械加工で穴を開け、この穴に熱電対を挿入した後、載置板とシャフトとをボルトで接合することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3319593号公報
【特許文献2】特開2009−009795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内部に熱電対を埋設したセラミックス成形体を焼成して載置板を形成する場合、耐熱温度が焼成温度を超える熱電対を使用する必要がある。そのため、使用可能な熱電対が限定され、高精度で安価な熱電対を使用することができないという不都合があった。
【0006】
その場合は、焼結後に形成した穴に熱電対を挿入した後、載置板とシャフトとをボルトで接合する方法を採用する必要があった。しかし、この場合、加熱のサイクルによりルトの緩みが生じ、載置板とシャフトの締結部からリークが生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、使用可能な測温素子の幅が広がり、高精度で安価にシャフトの中空部より外側での載置板の測温が可能となり、載置板とシャフトが一体的に接合されたセラミックスヒータ及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のセラミックスヒータは、上面に被加熱物が載置され、セラミックスからなる載置板と、該載置板の内部に埋設された複数の発熱抵抗体と、前記載置板の下面に接合され、セラミックスからなる中空のシャフトと、前記複数の発熱抵抗体の下方に配置された複数の測温素子とを備え、前記載置板の下面又は前記シャフトの上面の少なくとも一方に形成され、前記載置板及び前記シャフトで覆われた溝の内部に、前記複数の測温素子のうち少なくとも1つの測温素子が配置されることを特徴とする。
【0009】
本発明のセラミックスヒータによれば、溝の内部に配置された測温素子によって、当該測温素子の上方に配置された発熱抵抗体により加熱される載置板の領域を測温することができる。そして、シャフトの中空部より外側に溝を延在させ、その溝の内部に測温素子を配置することによりシャフトの中空部より外側の領域を測温することができる。
【0010】
さらに、載置板とシャフトとを接合する際に溝の内部に測温素子を配置すればよいので、測温素子の耐熱温度は接合温度を超えていればよい。よって、測温素子が埋設された状態で焼成される従来の場合に比較して、耐熱温度の低い測温素子を使用することができ、高精度で安価に測温することが可能となる。
【0011】
なお、前記載置板及び前記シャフトはそれぞれ別個に形成されたセラミックス焼結体からなることが好ましい。そして、載置板とシャフトとは接合によって一体化されているので、載置板とシャフトの締結部からリークが生じるおそれがない。
【0012】
また、測温素子同士が電気的に接触しないように、前記溝の内部には1つの測温素子のみが配置され、異なる測温素子が挿入される溝は独立していることが好ましい。なお、溝が独立するとは、溝が互いに少なくとも立体的に交差も接続もしていないことを意味する。
【0013】
また、耐熱温度が接合温度を超える必要があるので、前記測温素子は熱電対であることが好ましい。
【0014】
また、前記熱電対を構成する1対の熱電対素線が別々に配置されるように、前記溝が分割されていることが好ましい。この場合、各熱電対素線が測温接点以外で電気的に接触することを確実に防止することができる。
【0015】
また、前記溝と連続して形成された穴の内部に、前記熱電対の測温接点が配置されることが好ましい。この場合、測温接点が配置される穴を溝より小さくすることにより、測温接点を所定の位置に確実に安定的に配置することが可能となる。
【0016】
また、前記溝は、前記発熱抵抗体から0.5mm以上離れていることが好ましい。一般的に、測温素子の起電力は発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さいのが、このような間隔を確保することにより、測温素子が発生する起電力が受ける干渉が小さくなり、精度良く測温することが可能となる。
【0017】
また、前記載置板はAlNを主成分としたセラミックスからなることが好ましい。このようなセラミックスは熱伝導性が高く温度追従性に優れるので、載置板の加熱応答性及び均熱性が良好となる。
【0018】
また、前記載置板及び前記シャフトが、AlN又はAlを主成分としたセラミックスからなる場合、拡散接合で接合すると、接合温度は1200℃以上1650℃以下となるので、前記熱電対はJIS C1602−1995に規定のB、R、S熱電対の何れかとすればよい。また、ガラス質等の接合材を接合界面に設けて接合すると、接合温度は600℃以上1300℃以下となり、前記熱電対としてJIS C1602−1995に規定のK、N熱電対も使用することができる。
【0019】
また、前記載置板及び前記シャフトがSiCを主成分としたセラミックスからなる場合、拡散接合で接合すると、接合温度は1800℃以上2000℃以下となるので、前記熱電対はW−Re系熱電対とすればよい。
【0020】
また、前記発熱抵抗体に接続され、前記シャフトの中空部内に露出して前記載置板に配置される端子と、前記端子に接続され、前記シャフトの中空部内を通る配線とを備えることが好ましい。この場合、シャフトの中空部での配線構造が簡易化する。
【0021】
また、前記端子のうち少なくも1つの端子が複数の発熱抵抗体に接続されることが好ましい。この場合、シャフトの中空部を通る配線の本数が減少し、シャフトの内径を小さくすることが可能となる。
【0022】
また、前記端子は、その間隔が5mm以上10mm以下であり、その材質がNi、Fe−Ni−Co、Mo、W又はMo及びWを主成分とする合金であることが好ましい。これにより、端子の設置面積が小さくでき、シャフトの内径を小さくすることが可能となる。
【0023】
本発明のセラミックスヒータの製造方法は、複数の発熱抵抗体を内部に埋設した平板状のセラミックス成形体を焼結して載置板を形成する工程と、中空のセラミックス成形体を焼結してシャフトを形成する工程と、前記載置板の前記シャフトとの接合面又は前記シャフトの前記載置板との接合面の少なくとも一方に溝を形成する工程と、少なくとも1つの測温素子を前記溝の内部に配置した状態で、前記載置板と前記シャフトとを接合して、前記溝を前記載置板及び前記シャフトで覆う工程とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明のセラミックスヒータの製造方法によれば、載置板及びシャフトで覆われた溝の内部に測温素子が配置されており、この測温素子によって当該測温素子の上方に配置された発熱抵抗体により加熱される載置板の領域を測温することができる。そして、シャフトの中空部より外側に溝を延在させ、この溝の内部に測温素子を配置することによって、シャフトの中空部より外側の領域を測温することができる。
【0025】
さらに、載置板とシャフトとを接合する際に溝の内部に測温素子が配置されるので、測温素子の耐熱温度は接合温度を超えていればよい。よって、測温素子が埋設した状態で焼結される従来の場合と比較して、耐熱温度の低い測温素子を使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係るセラミックスヒータの模式縦断面図。
【図2】図1のII−II線矢視模式断面図。
【図3】本発明の実施形態の変形に係るセラミックスヒータの模式縦断面図。
【図4】図3のIV−IV線矢視模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ1について説明する。
【0028】
図1に示すように、セラミックスヒータ1は、半導体ウエハなどの被加熱物を載置される一方の主面である上面(載置面)2aを有し、セラミックスからなる載置板2、載置板2の内部に埋設された発熱抵抗体3A、3B、発熱抵抗体3A,3Bの下方に配置された熱電対4A,4B、及び、載置板2の他方の主面である下面(接合面)2bに接合され、セラミックスからなる中空のシャフト5を備えたマルチゾーンヒータである。
【0029】
なお、セラミックスヒータ1は、さまざまな半導体製造プロセスにおいて使用される半導体製造装置(例えば、成膜装置、エッチング装置、クリーニング装置、検査装置)のためのセラミックス製品として適用され得る。
【0030】
載置板2は、ここでは、円盤状のセラミックス焼成体であり、使用温度における体積抵抗率が10E+08Ω・cm以上であることが好ましい。このような物性を有するセラミックスとして、窒化アルニウム(AlN)、アルミナ(Al)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)、イットリア(Y)、炭化珪素(SiC)、石英を主成分とし、焼結助剤などの副成分を適宜含むものが好適である。
【0031】
特に窒化アルミニウムを主成分とする高熱伝導性セラミックスは、熱伝導性が80W/m・Kから170W/m・Kと高く温度追従性に優れるので、良好な加熱応答性や均熱性が求められるセラミックスヒータ1の載置板2の材料とすることが好適である。一方、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックスは、熱伝導率が低いので、載置面に傾斜状に温度勾配を持たせることが求められるセラミックスヒータ1の載置板2の材料とすることが好適である。
【0032】
発熱抵抗体3A、3Bは、詳細は図示しないが、載置板2の内部に配置されている。発熱抵抗体3Aは、載置板2の中央部に埋設されており、載置面2aの中央部の加熱ゾーンZAを加熱する。発熱抵抗体3Bは、載置板2の外周部に埋設されており、載置面2aの外周部の加熱ゾーンZBを加熱する。なお、加熱ゾーンZA,ZBは、ここでは同心円状に隣接しているが、これに限定されない。図2には、加熱ゾーンZA,ZBの境界を一点鎖線で示している。
【0033】
発熱抵抗体3A,3Bは、モリブデン(Mo)やタングステン(W)等の耐熱金属などを用いて、箔、板、線、メッシュ、繊維状など公知の任意の形状に形成されている。
【0034】
熱電対4Aは、載置板2の下面2bの略中央部に形成された凹部2c内に配置されている。そして、熱電対4Aの測温接点4aは、凹部2cの上面に、図示しない押さえ部品をネジ止めすることによって固定されており、加熱ゾーンZAの下方に位置している。
【0035】
熱電対4Bは、載置板2の下面2bに中央部から外周部に直線状に延びるように形成された溝2dの内部に配置されている。熱電対4Bの測温接点4bは、溝2dの外周側の端部付近の上面に静置されており、加熱ゾーンZBの下方に位置している。溝2dには、熱電対4Bの1対の熱電対素線が共に挿入されている。なお、溝2dは、直線状に延びるものに限定されず、屈曲などをしていてもよい。
【0036】
熱電対4Bは、載置板2とシャフト5との接合時に、溝2dに配置されるので、熱電対を多数設ける場合であっても、異なる熱電対が挿入される溝が交差も接続もしないように、互いに独立した溝を形成することにより、互いに接触することなく熱電対を配置することができる。
【0037】
熱電対4A,4Bの測温接点4a,4bは、加熱ゾーンZA,ZBの中心付近の下方に設けることが好ましいが、これに限定されない。加熱ゾーンZA,ZBの中心付近の下方に測温接点4a,4bを設ければ、当該加熱ゾーンZA,ZBの温度をより正確に測定することができる。また、熱電対4A,4Bを、加熱ゾーンZA,ZBの下方に複数設けて、当該加熱ゾーンZA,ZBの平均温度を算出するように構成すれば、当該加熱領域ZA,ZAの温度を正確に求めることができる。
【0038】
なお、発熱抵抗体3A,3Bと凹部2c及び溝2dとの間隔は、0.5mm以上であることが好ましく、さらに好ましくは2.0mm以上である。熱電対4A,4Bの起電力は発熱抵抗体3A,3Bに印加される電圧に比べて小さいので、このような間隔を確保することにより、熱電対4A,4Bが発生する起電力が受ける干渉が小さくなり、精度良く測温することが可能となる。
【0039】
シャフト5は、載置板2の下面2bの中心部に接合された中空のセラミックス焼結体である。載置板2とシャフト5とは、拡散接合やセラミックス、ガラス等の接合材による固層接合により接合されている。
【0040】
シャフト5は、ここでは、円筒形状であり、載置板2との接合部分の外径が他の軸部5aより拡大した拡大部5bを有し、拡大部5bの上面が載置板2との接合面となる。溝2dは、拡大部5bにより下方を完全に覆われており、外部に開放されていない。
【0041】
シャフト5の材質は、載置板2の材質と同等でよいが、断熱性を高めるために、載置板2の素材より熱伝導率の低い素材を用いてもよい。なお、軸部5aの断面外形は、円形に限定されず、例えば、楕円形、多角形などであってもよい。また、拡大部5bの断面外形は、円形に限定されず、溝2dの下方を完全に覆うものであれば、任意の形状とすることができる。
【0042】
シャフト5は、図示しないが、適宜フランジなどを介して真空チャンバーに接続されており、シャフト5の中空部が真空チャンバーの内部と同じ雰囲気にするように構成されている。フランジを用いることにより、酸化に弱いW−Re合金系の熱電対4A,4Bをシャフト5の中空部に露出させることができる。
【0043】
熱電対4A,4Bは、載置板2とシャフト5との接合と同時に設けられる。そのため、接合温度を超える耐熱温度を有する熱電対4A,4Bを選択する必要がある。
【0044】
例えば、載置板2とシャフト5が窒化アルミニウム又はアルミナを主成分とするセラミックスからなる場合、載置板2とシャフト5とは接合材を使用しない拡散接合により接合され、その接合温度は1200℃以上1650℃以下である。ガラス質等の接合材を接合界面に設けてガラス接合等を行う場合、接合温度は600℃以上1300℃以下となる。
【0045】
よって、この接合温度を超える耐熱温度を有する熱電対、例えば、JIS C1602−1995に規定のB熱電対(Pt−Rh合金、耐熱温度1820℃)、R熱電対及びS熱電対(共にPt−Rh合金/Pt、耐熱温度1760℃)、K熱電対(Ni−Cr合金/Ni合金、耐熱温度950℃)、N熱電対(共にNi−Cr−Si合金/Ni−Si合金、耐熱温度1250℃)を使用することができる。また、W−Re系熱電対(耐熱温度2400度)、Ir−Rh系熱電対(Ir−40%Rh/Ir−50%Rh、耐熱温度2000℃)を適宜選択して使用することもできる。
【0046】
B熱電対は、耐熱温度が高いだけでなく、150℃から高精度の測温が可能であり、特に好ましい。W−Re系熱電対は、耐熱温度は最も高いが、高温酸化雰囲気では酸化されるため、真空、不活性、還元雰囲気で使用することが好ましい。W−Re系熱電対として、具体的には、W/W−Re26%、W−Re5%/W−Re26%、W−Re3%/W−Re26%などの熱電対を使用することができる。
【0047】
また、載置板2とシャフト5が炭化珪素を主成分とするセラミックスからなる場合、載置板2とシャフト5とは拡散接合により接合され、その接合温度は1800℃以上2000℃以下である。
【0048】
よって、この接合温度を超える耐熱温度を有する熱電対、例えば、W−Re系熱電対(耐熱温度2400度)、Ir−Rh系熱電対(Ir−40%Rh/Ir−50%Rh、耐熱温度2000℃)を使用することができる。
なお、ガラス接合の場合は、窒化アルミニウム又はアルミナを主成分とするセラミックスの場合と同様に、接合温度は600℃以上1300℃以下であり、上述した熱電対を適宜選択して使用することができる。
【0049】
発熱抵抗体3A、3Bとそれぞれ接続させて予め埋設した接続端子6を下面2bに露出させ、これら接続端子6に端子7がろう付け又は溶接されている。接続端子6はモリブデン(Mo)やタングステン(W)などからなるものである。
【0050】
端子7は、箔、板、塊状の耐熱金属から構成することができる。好適な耐熱金属として、ニッケル(Ni)、コバール(登録商標)(Fe−Ni−Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、又はモリブデン(Mo)及びタングステン(W)を主成分とする耐熱合金を挙げることができる端子7が線膨張係数の小さい耐熱金属からなるので、端子7を埋設した箇所近傍の残留応力を小さくすることができ、端子7を5mm以上10mm以下(ニッケルからなる場合は、7mm以上10mm以下)の間隔(端子外周部間の距離)で設置することができる。これにより、端子7の設置面積を小さくでき、シャフト5の内径を小さくすることが可能となる。
【0051】
発熱抵抗体3A、3Bに接続される端子7には給電線(配線)8がそれぞれ接続されている。これら給電線8はシャフト5の中空部を通っている。熱電対4A,4B及び給電線8は、シャフト5の中空部を通り、図示しないコネクタ、フランジなどを介して、図示しない温度制御装置に接続されている。
【0052】
温度制御装置は、熱電対4A,4Bがそれぞれ発生する起電力に基づいて、加熱ゾーンZA,ZBの温度を検出する。そして、温度制御装置は、この検出した温度を参照して、図示しない給電源から各給電線8を介して発熱抵抗体3A,3Bに供給される電力を制御することにより、発熱抵抗体3A,3Bでの発熱を調整して、加熱ゾーンZA,ZBの温度を調整するように構成されている。
【0053】
次に、本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ1の製造方法について説明する。
【0054】
セラミックスヒータ1の製造方法は、発熱抵抗体3A,3Bを内部に埋設した平板状のセラミックス成形体を焼結して載置板2を形成する工程と、中空のセラミックス成形体を焼結してシャフト5を形成する工程と、載置板2の下面に凹部2c及び溝2dを形成する工程と、測温素子4Bを溝2dの内部に配置した状態で、載置板2とシャフト5とを接合して、溝2dを載置板2及びシャフト5で覆う工程とを備えている。なお、凹部2c及び溝2dは、焼結後の載置板2に機械加工によって形成される。
【0055】
次に、本発明の実施形態の変形に係るセラミックスヒータ1Aについて説明する。図3に示すように、セラミックスヒータ1Aは、前述したセラミックスヒータ1と類似するので、相違点のみを説明する。
【0056】
まず、セラミックスヒータ1Aは、前述したセラミックスヒータ1と比較して、載置板2Aの下面に形成された溝2eと連続して形成された穴2fの内部に、熱電対4Bの測温接点4bが配置され、図4を参照して、熱電対4Bを構成する1対の熱電対素線が別々に配置されるように、溝2eが分割されている点が異なる。
【0057】
このように、溝2eより小さく形成された穴2fに測温接点4bを配置することにより、測温接点4bを所定の位置に確実に安定的に配置することが可能となる。特に、穴2fを測温接点4bと概略同一の大きさに形成することにより、測温接点4bを固定する手段を省略することも可能となる。また、分割された溝2eのそれぞれに熱電対素線が配置されているので、各熱電対素線が電気的に接続することを確実に防止することができる。なお、穴2fは、溝2eを機械加工で形成した後に、機械加工で形成される。
【0058】
さらに、熱電対4Bと溝2eとの隙間にスペーサ9を挟み込み、この隙間を埋めている。これにより、測温接点4bを所定の位置にさらに確実に安定的に配置することが可能となる。
【0059】
また、セラミックスヒータ1Aは、前述したセラミックスヒータ1と比較して、1つの端子7が2つの発熱抵抗体3A、3Bに接続されたコモン端子となっている点も異なる。
【0060】
このように、コモン端子を設けることにより、端子7及び給電線8の数を削減することができる。発熱抵抗体3がn個の場合、各発熱抵抗体3に接続される2つの端子7のうちの一方の端子7をコモン端子として共有することにより、端子7及び給電線8の数を2n個から(n+1)個に削減することができる。これにより、シャフト5の内径及び軸部5aの外径を細くすることが可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、2つの加熱ゾーンZA,ZBを有するマルチゾーンヒータを例に挙げて実施形態を説明したが、これに限定されない。例えば、3つ以上の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータや1つの加熱ゾーンしか有さないシングルゾーンヒータであってもよい。例えば、シングルゾーンヒータの場合、複数の熱電対で測温して平均値を算出することによって正確な測温が可能となる。
【0062】
また、溝2d,2eの下方をシャフト5の拡大部5bで覆う場合を例に挙げて実施形態を説明したが、これに限定されない。例えば、シャフト5や載置板2とは別個のセラミックス焼結体を用意して、このセラミックス焼結体で溝2d,2eの下方を覆うように、シャフト5と載置板2との接合時に同時に接合するものであってもよい。
【0063】
また、載置板2,2Aの下面に溝2d,2eを形成する場合を例に挙げて実施形態を説明したが、これに限定されない。例えば、シャフト5の上面に溝を形成してもよい。また、載置板2,2Aの下面及びシャフト5の上面にそれぞれ溝を形成して、載置板2,2Aとシャフト5との接合により、これらの溝が一体化するように構成してもよい。
【0064】
また、熱電対4A,4Bを用いる場合を例に挙げて実施形態を説明したが、これに限定されない。耐熱温度が接合温度を超えるものであれば、任意の測温素子を用いてもよい。
【実施例】
【0065】
次に実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0066】
(実施例1)
載置板2のセラミックスとして主原料に窒化アルミニウム、添加物として酸化イットリウムを加え、公知の製造方法で原料粉末を調整したものを用いた。熱電対4A,4BとしてB熱電対を用いた。これらの具体的な埋設方法は、原料粉末のプレス成形体にモリブデンからなる発熱抵抗体3A,3Bを設置して、その上に原料粉末を投入してプレス成形することにより、セラミックス粉末に、発熱抵抗体が埋設された成形体を得た。そして、この成形体を、還元雰囲気のホットプレスで焼成温度を1800℃として焼成した。得られた焼結体を加工し、φ210×10mmの円盤状の載置板2とした。この載置板2の下面に直径40mm深さ2mmの凹部2cと幅3mm深さ2mmの溝2dを機械加工で形成した。
【0067】
凹部2cにB熱電対4Aを、溝2dにB熱電対4Bを挿入し、それぞれの測温端子4a,4bを押さえ部品でネジ止めで固定した。発熱抵抗体3A,3Bの露出した端部にコバール製の端子7をろう付けで固定した。熱電対4A,4BはB熱電対を使用した。
【0068】
シャフト5は、窒化アルミニウムのみを用いて載置板2と同一条件で焼結して、内径50mm、高さ200mmで、軸部5aが外径60mm、拡大部5bが外径80mm、厚み8mmとした焼結体を得た。
【0069】
載置板2とシャフト5とは拡散接合により接合した。この接合温度は1600℃であった。このようにして載置板2にシャフト5が接合されたセラミックスヒータ1を得た。なお、載置板2を構成する窒化アルミニウムの体積抵抗率を測定したところ、セラミックスヒータ1の使用温度範囲100℃〜800℃において、10E+08Ω・cm以上であった。
【0070】
真空チャンバーにセラミックスヒータ1を設置し、まず、加熱ゾーンZAの設定温度を400℃、加熱ゾーンZBの設定温度を450℃として加熱を試みた。熱電対4A,4Bにより測温し、得られた温度を基に出力調整を行って外部電源より電力を給電線7に供給した。サーモグラフにより載置面2aの温度を測定したところ、加熱ゾーンZAが400℃、加熱ゾーンZBが448℃となり、中心部から外周部にかけて傾斜状の温度分布が得られた。次に、加熱ゾーンZA,ZB部の設定温度を共に500℃として加熱したところ、載置面2aの温度分布は設定温度からの差が1%以下となった。
【0071】
(実施例2)
実施例2では、熱電対4A,4BとしてW−Re熱電対を用いた点を除いて、実施例1と同様にしてセラミックスヒータ1を得た。実施例1と同様の設定温度として、加熱を試みたところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0072】
(実施例3)
実施例3では、載置板2とシャフト5との接合をガラス接合方式に変更し、熱電対4A,4BとしてK熱電対を用いた点を除いて、実施例1と同様にしてセラミックスヒータ1を得た。接合温度850℃であった。
【0073】
(実施例4)
実施例3では、載置板2とシャフト5との接合をガラス接合方式に変更し、熱電対4A,4BとしてインコネルシースのK熱電対を用いた点を除いて、実施例1と同様にしてセラミックスヒータ1を得た。接合温度850℃であった。
実施例1と同様の設定温度として、加熱を試みたところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0074】
上記の実施例1〜4で示したように、発熱抵抗体3A,3Bを埋設した載置板2にシャフト5を接合する際に、溝2dの内部に熱電対4Bを配置することによって製造されたセラミックスヒータ1を用いることにより、各加熱ゾーンZA、ZBを測温することができ、載置面2の温度分布を均一化及び傾斜化できることが確認された。また、セラミックスヒータ1の測温部位及び装置構造の制約が少なくなり、装置を大幅に簡略化することができた。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…セラミックスヒータ、 2,2A…載置板、 2a…上面、 2b…下面、 2c…凹部、 2d,2e…溝、 2f…穴、 3A,3B…発熱抵抗体、 4A,4B…熱電対(測温素子)、 4a,4b…測温接点、 5…シャフト、 5a…軸部、 5b…拡大部、 6…接続端子、 7…端子、 8…給電線(配線)、 9…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に被加熱物が載置され、セラミックスからなる載置板と、
該載置板の内部に埋設された複数の発熱抵抗体と、
前記載置板の下面に接合され、セラミックスからなる中空のシャフトと、
前記複数の発熱抵抗体の下方に配置された複数の測温素子とを備え、
前記載置板の下面又は前記シャフトの上面の少なくとも一方に形成され、前記載置板及び前記シャフトで覆われた溝の内部に、前記複数の測温素子のうち少なくとも1つの測温素子が配置されることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記載置板及び前記シャフトはそれぞれ別個に形成されたセラミックス焼結体からなることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記溝の内部には1つの測温素子のみが配置され、異なる測温素子が挿入される溝は独立していることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記測温素子は熱電対であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項5】
前記熱電対を構成する1対の熱電対素線が別々に配置されるように、前記溝が分割されていることを特徴とする請求項4に記載のセラミックスヒータ。
【請求項6】
前記溝と連続して形成された穴の内部に、前記熱電対の測温接点が配置されることを特徴とする請求項4又は5に記載のセラミックスヒータ。
【請求項7】
前記溝は、前記発熱抵抗体から0.5mm以上離れていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項8】
前記載置板はAlNを主成分としたセラミックスからなることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項9】
前記載置板及び前記シャフトは、AlN又はAlを主成分としたセラミックスからなり、前記測温素子はJIS C1602−1995に規定のK、N、B、R、S熱電対の何れかであることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項10】
前記載置板及び前記シャフトはSiCを主成分としたセラミックスからなり、前記測温素子はW−Re系熱電対であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項11】
前記発熱抵抗体に接続され、前記シャフトの中空部内に露出して前記載置板に配置される端子と、
前記端子に接続され、前記シャフトの中空部内を通る配線とを備えることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項12】
前記端子のうち少なくも1つの端子が複数の発熱抵抗体に接続されることを特徴とする請求項11に記載のセラミックスヒータ。
【請求項13】
前記端子は、その間隔が5mm以上10mm以下であり、その材質がNi、Fe−Ni−Co、Mo、W又はMo及びWを主成分とする合金であることを特徴とする請求項11又は12に記載のセラミックスヒータ。
【請求項14】
複数の発熱抵抗体を内部に埋設した平板状のセラミックス成形体を焼結して載置板を形成する工程と、
中空のセラミックス成形体を焼結してシャフトを形成する工程と、
前記載置板の前記シャフトとの接合面又は前記シャフトの前記載置板との接合面の少なくとも一方に溝を形成する工程と、
少なくとも1つの測温素子を前記溝の内部に配置した状態で、前記載置板と前記シャフトとを接合して、前記溝を前記載置板及び前記シャフトで覆う工程とを備えることを特徴とするセラミックスヒータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160368(P2012−160368A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19757(P2011−19757)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】