説明

セーフエリア警告装置

【課題】AF枠自動追尾機能を搭載したテレビカメラにおいて、そのAF枠自動追尾機能を利用して撮影目的の被写体を追尾することによって、その被写体がセーフエリアの外側に移動しないようにカメラマンに適切に注意を促すことができるセーフエリア警告装置を提供する。
【解決手段】テレビカメラシステム1は、テレビカメラ10のレンズ装置12にAFユニット40が搭載され、そのAFユニット40によりオートフォーカスにより自動でピントを合わせる被写体の範囲を示すAF枠を所定の被写体に自動追尾させるためのAF枠自動追尾装置18を備えている。そのAF枠自動追尾装置18において、撮影目的の被写体を撮影する画角範囲を所定の範囲に制限するセーフエリアをセーフエリア指定部60により指定し、設定すると、AF枠の追尾対象となっている被写体がセーフエリアの外側に移動するおそれがある場合に、セーフエリア警告表示部62によりランプが点灯して警告が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセーフエリア警告装置に係り、特にオートフォーカス(AF)におけるピント合わせの対象範囲であるAFエリア(AF枠)を所望の被写体に自動追尾させるAF枠自動追尾機能を備えたテレビカメラシステムに適用されるセーフエリア警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、放送用テレビカメラのほとんどがハイビジョンテレビカメラ(HDカメラ)であり、HDカメラでは、HD(高精細)画質の映像(HD映像)が撮影され、アスペクト比16:9の画面サイズ(解像度が1920×1080)の映像に対応したHD映像信号が出力される。
【0003】
一方、現在でもアスペクト比4:3の画面サイズ(解像度が640×480)のSD(標準)画質の映像(SD映像)に対応したテレビを使用している一般のユーザも多い。
【0004】
HDカメラを使用して撮影されたアスペクト比16:9の画面サイズの撮影映像を、アスペクト比4:3(画面サイズ)のテレビで視聴する場合には、撮影映像の左右両端部の映像が画面に表示されない。
【0005】
そのため、HDカメラを使用して撮影を行う場合に、カメラマンは、撮影目的の被写体がアスペクト比4:3のテレビでも表示されるように、アスペクト比4:3に対応した画角範囲に撮影目的の被写体が収まるように画角操作(パン/チルト操作等)を行わなければならない場合がある。
【0006】
一方、HDカメラのビューファインダには、アスペクト比16:9の撮影映像が表示されるが、その画面に重畳してアスペクト比4:3の画角範囲(撮影範囲)、即ち、アスペクト比16:9の画角範囲の中央部からアスペクト比4:3となる最大の範囲を切り出したときの画角範囲を示すアスペクトマーカーや、アスペクト比4:3の画角範囲よりも実際に画面に表示される撮影映像の画角範囲が狭められるアスペクト比4:3のテレビにおいて確実に被写体が表示される画角範囲を示すセーフエリアマーカーを表示し、撮影目的の被写体がそれらのマーカーで示された画角範囲内となるようにカメラ操作を行うことで、HD映像の画面を見ている人にしか撮影目的の被写体が見えないようなことがないようにカメラマンに注意を喚起するようにしたものが知られている。
【0007】
尚、セーフエリアマーカーは、所定のアスペクト比の画面サイズに対応した画角範囲を示すアスペクトマーカーに対して、その画角範囲の撮影映像をテレビに表示した際にカットされる可能性のある周辺部の領域を除いた範囲であり、任意のテレビで確実に表示される画角範囲として設定される。例えば、セーフエリアマーカーは、アスペクトマーカーの画角範囲に対して所定の割合(例えば95パーセント)の範囲に設定され、その割合もユーザが所定の範囲で変更できるようにしたものが知られている。本明細書では、セーフエリアマーカーの画角範囲をセーフエリアと称すると共に、アスペクトマーカーの画角範囲、即ち、所定のアスペクト比に対応した画角範囲もセーフエリアマーカーを設定しない場合等においてセーフエリアと称するものに該当するものとする。
【0008】
また、従来、カメラのフォーカスを自動的に合わせるオートフォーカス(AF)システムにおいては、どこにフォーカスを合わせるかをカメラに対して指示しなければならない。このとき、一般のカメラなどでは、フォーカスを合わせる位置は撮影範囲のセンターに固定されていて、例えば撮影範囲の中央にいる人物等にフォーカスが合うようになっている。
【0009】
しかし、動いている被写体を撮影する場合などにおいては、このようにフォーカスを合わせる位置が固定されていては都合が悪い。そこで、例えば、テレビカメラなどで、スポーツのように被写体の動きの激しいシーンを撮影する場合において、被写体にピントを合わせる目的でAFエリア(AF枠)を被写体に自動追尾させるAF枠自動追尾システムが知られている(例えば、特許文献1等参照)。尚、本明細書では、AFエリアの範囲の輪郭を示すAF枠をAFエリアと同様にピントを合わせる被写体の範囲を意味する用語として主に使用するものとする。
【0010】
また、撮像された画像の中から人物の顔を表す画像を検出し、その被写体となった顔に対して自動的にピントを合わせたり、あるいは上記検出された顔を表す領域が拡大されるように自動的にズーム倍率を変更させるデジタルカメラが知られている(例えば、特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開2006−267221号公報
【特許文献2】特開2004−320286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、撮影目的の被写体をAF枠の追尾対象として撮影を行う場合に、カメラマンはその撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に出ないように画角操作をビューファインダのセーフエリアマーカーで確認しながら行ったとしても、他の操作等に注意が行き、不用意に撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に移動してしまう場合があった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に移動しないようにカメラマンに適切に注意を促すことができるセーフエリア警告装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に係るセーフエリア警告装置は、光学系により結像された被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮影画像のうち、所定のAF枠の範囲の被写体にピントが合うように前記光学系のフォーカス調整を行うオートフォーカス手段と、所定の追尾対象の被写体にピントが合うように前記AF枠を前記追尾対象の被写体に自動追尾させるAF枠自動追尾手段を備えたテレビカメラシステムに使用されるセーフエリア警告装置であって、前記撮像手段により撮像される撮影画像全体の画角範囲に対して、撮影目的の被写体を撮影する画角範囲を所定の画角範囲に制限する場合の該所定の画角範囲をセーフエリアとして設定するセーフエリア設定手段と、前記AF枠が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記AF枠が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断された場合に、その旨の警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項2に係るセーフエリア警告装置は、請求項1に記載の発明において、前記判断手段は、AF枠の枠線が前記セーフエリアの枠線に所定距離以内に近づいた場合に、前記AF枠が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断することを特徴としている。
【0015】
請求項3に係るセーフエリア警告装置は、請求項1、又は、2に記載の発明において、前記警告手段は、ランプの点灯、振動手段による振動、又は、ビューファンダへの情報表示によって前記警告を行うことを特徴としている。
【0016】
請求項4に係るセーフエリア警告装置は、光学系により結像された被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮影画像のうち、所定のAF枠の範囲の被写体にピントが合うように前記光学系のフォーカス調整を行うオートフォーカス手段と、追尾対象の被写体として前記撮影画像の中から顔検出処理により人物の顔を検出し、該検出した顔にピントが合うように前記AF枠を前記検出した顔に自動追尾させるAF枠自動追尾手段を備えたテレビカメラシステムに使用されるセーフエリア警告装置であって、前記撮像手段により撮像される撮影画像全体の画角範囲に対して、撮影目的の被写体を撮影する画角範囲を所定の画角範囲に制限する場合の該所定の画角範囲をセーフエリアとして設定するセーフエリア設定手段と、前記AF枠自動追尾手段における顔検出処理により前記撮像手段により撮像される撮影画像の中から人物の顔を検出する顔検出手段と、前記顔検出手段により検出された顔が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあるか否かを判断する判断手段と、前記判断手段により前記顔が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断された場合に、その旨の警告を行う警告手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に移動しないようにカメラマンに適切に注意を促すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るセーフエリア警告装置を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明が適用されるテレビカメラシステムの全体構成を示したブロック図である。同図のテレビカメラシステム1は、例えば放送用又は業務用のテレビカメラ10と、AF枠自動追尾装置18等を備えている。
【0020】
テレビカメラ10は、ハイビジョンテレビ[HD(High Definition)TV]方式に対応したHDカメラからなるカメラ本体14と、カメラ本体14のレンズマウントに装着される撮影レンズ(光学系)を備えたレンズ装置12とから構成される。
【0021】
カメラ本体14には、撮像素子(例えばCCD)や所要の信号処理回路等が搭載されており、レンズ装置12の撮影レンズにより結像された像は、撮像素子により光電変換された後、信号処理回路によって所要の信号処理が施されてHDTV方式の映像信号(HDTV信号)として、カメラ本体14の映像信号出力端子等から外部に出力される。
【0022】
また、カメラ本体14には、ビューファインダ16が設置されており、そのビューファインダ16にテレビカメラ10の撮影映像が表示されるようになっている。また、ビューファインダ16には、撮影映像以外の各種情報が表示されるようになっており、例えば、現在の設定されているAF枠の範囲(位置、大きさ、形状)を示す画像(枠画像)が撮影映像に重畳されて表示されるようになっている。AF枠はオートフォーカス(AF)によりピントを合わせる被写体の範囲(輪郭)を示す。
【0023】
レンズ装置12は、カメラ本体14のレンズマウントに装着される撮影レンズ(ズームレンズ)を備えており、その撮影レンズにより、被写体がカメラ本体14の撮像素子の撮像面に結像されるようになっている。撮影レンズには、図示を省略するが、その構成要素としてフォーカスレンズ群、ズームレンズ群、絞りなどの撮影条件を調整するための可動部が設けられており、それらの可動部は、モータ(サーボ機構)によって電動駆動されるようになっている。例えば、フォーカスレンズ群やズームレンズ群は光軸方向に移動し、フォーカスレンズ群が移動することによってフォーカス(被写体距離)調整が行われ、またズームレンズ群が移動することによって焦点距離(ズーム倍率)調整が行われる。
【0024】
尚、AFに関するシステムにおいては、少なくともフォーカスレンズ群が電動で駆動できればよく、その他の可動部は手動でのみ駆動可能であってもよい。
【0025】
また、レンズ装置12には、AFユニット40及びレンズCPU42等が搭載されている。レンズCPU42はレンズ装置12全体を統括制御するものである。また、AFユニット40は、AFによるフォーカス制御(自動ピント調整)を行うために必要な情報を取得するための処理部であり、図示を省略するが、AF処理部、AF用撮像回路等から構成されている。
【0026】
AF用撮像回路はAF処理用の映像信号を取得するためにレンズ装置12に配置されており、CCD等の撮像素子(AF用撮像素子という)やAF用撮像素子の出力信号を所定形式の映像信号として出力する処理回路等を備えている。尚、AF用撮像回路から出力される映像信号は輝度信号である。
【0027】
AF用撮像素子の撮像面には、撮影レンズの光路上に配置されたハーフミラー等によってカメラ本体14の撮像素子に入射する被写体光から分岐された被写体光が結像するようになっている。AF用撮像素子の撮像エリアに対する撮影範囲及び被写体距離(ピントが合う被写体の距離)は、カメラ本体14の撮像素子の撮像エリアに対する撮影範囲及び被写体距離に一致するように構成されており、AF用撮像素子により取り込まれる被写体画像は、カメラ本体14の撮像素子により取り込まれる被写体画像と一致している。なお、両者の撮影範囲に関しては完全に一致している必要はなく、例えば、AF用撮像素子の撮影範囲の方がカメラ本体14の撮像素子の撮影範囲を包含する大きな範囲であってもよい。
【0028】
AF処理部は、AF用撮像回路から映像信号を取得し、その映像信号に基づいてAFの対象範囲とするAFエリア(AF枠)の範囲内における被写体画像のコントラストの高低を示す焦点評価値を算出する。例えば、AF用撮像素子から得られた映像信号から高域周波数成分の信号をハイパスフィルタによって抽出した後、その高域周波数成分の信号のうち後述のようにして設定されるAFエリアに対応する範囲の信号を1画面(1フレーム)分ずつ積算する。このようにして1画面分ごとに得られる積算値はAFエリア内の被写体画像のコントラストの高低を示し、その積算値が焦点評価値としてレンズCPUに与えられる。
【0029】
レンズCPU42は、AFエリアの範囲(輪郭)を示すAF枠の情報(AF枠情報)を、後述するようにAF枠自動追尾装置18から取得し、そのAF枠情報により指定されたAF枠内の範囲をAFエリアとしてAF処理部に指定する。そして、そのAFエリア内の画像(映像信号)により求められる焦点評価値をAF処理部から取得する。
【0030】
このようにしてAF用撮像回路から1画面分の映像信号が取得されるごとに(AF処理部で焦点評価値が求められるごとに)AF処理部から焦点評価値を取得すると共に、取得した焦点評価値が最大(極大)、即ち、AF枠内の被写体画像のコントラストが最大となるようにフォーカスレンズ群を制御する。例えば、焦点評価値に基づくフォーカスレンズ群の制御方式として山登り方式が一般的に知られており、フォーカスレンズ群を焦点評価値が増加する方向に移動させて行き、焦点評価値が減少し始める点を検出すると、その位置にフォーカスレンズ群を設定する。これにより、AF枠内の被写体に自動でピントが合わせられる。
【0031】
尚、上述のAF処理部は、焦点評価値を算出するために、レンズ装置12に搭載されたAF用撮像素子から映像信号を取得しているが、カメラ本体14の撮像素子より撮影された映像の映像信号をカメラ本体14から取得するような構成としてもよい。また、AF枠内の被写体に自動でピントを合わせるためのAF手段はどのようなものであってもよい。
【0032】
ここで、図2に示すようにAFエリア200は、カメラ本体14における撮像素子の撮像エリア202(又は撮影範囲)に対して四角形状の領域として設定される。そして、AFエリア200の輪郭を示す枠204がAF枠を示し、AFエリア200(AF枠204内)の画角範囲で撮影される被写体がAFによりピントを合わせる対象となる。
【0033】
尚、本明細書では、撮像エリア202に対するAF枠204(AFエリア200)の範囲は、AF枠204の位置、大きさ、及び、形状(縦横比)の3つの要素によって決まるものとし、AF枠の位置、大きさ、及び、形状の3つの要素のうち、少なくとも1つの要素が変更された場合にはAF枠の範囲が変更されたものとする。
【0034】
また、レンズ装置12は、ケーブルを介して、又は、直接的にカメラ本体14と接続され、レンズ装置12とカメラ本体14との間で各種情報のやり取りが行えるようになっている。これによりAFユニット40において現在設定されているAF枠の情報もカメラ本体14に送信され、カメラ本体14内での処理によってビューファインダ16に表示される撮影映像に現在設定されているAF枠の位置、大きさ、形状に対応したAF枠の画像が重畳表示されるようになっている。
【0035】
AF枠自動追尾装置18は、主にAF枠自動追尾機能の処理(AF枠自動追尾処理)を行う装置であり、その機能を利用してセーフエリア警告機能の処理(セーフエリア警告処理)を行う装置である。AF枠自動追尾装置18は、レンズ装置12及びカメラ本体14に対して外部装置として配置される。そして、ケーブル等によってレンズ装置12に接続され、レンズCPU42との間で各種信号のやり取りがシリアル通信等によって行えるようになっている。これにより、AF枠の範囲を指定するAF枠情報がAF枠自動追尾装置18からレンズ装置12のレンズCPU42に与えられ、そのAF枠情報に基づいてAFユニット40におけるAF枠の範囲が設定される。尚、AF枠自動追尾装置18は、レンズ装置12又はカメラ本体14に設置してもよいし内蔵してもよい。
【0036】
また、AF枠自動追尾装置18には映像信号を取り込むための映像入力コネクタが設けられており、その映像入力コネクタにカメラ本体14の映像出力コネクタがケーブルで接続される。これによって、カメラ本体14の映像出力コネクタから出力された撮影映像の映像信号が、AF枠自動追尾装置18に入力されるようになっている。
【0037】
尚、カメラ本体14の映像出力コネクタから出力される映像信号はHD画質の映像のHDTV信号であるが、AF枠自動追尾装置18において必要な画質と処理負担を考慮すると、SD画質の映像で十分である。そこで、カメラ本体14から出力されたHDTV信号を、ダウンコンバータにより標準テレビ[NTSC(National Television System Committee))方式の映像信号(SDTV信号)に変換(ダウンコンバート)してAF枠自動追尾装置18の映像入力コネクタに入力するようにしてもよい。
【0038】
AF枠自動追尾装置18は、AF枠自動追尾処理を実行する際に、カメラ本体14から入力された映像信号から1コマ分の撮影画像を順次取り込み、撮影画像の中から所定の追尾対象の被写体を検出する処理を行う。そして、AFによりその被写体にピントが合わせられるようにAF枠の範囲を決定し、決定したAF枠の範囲をAF枠情報としてレンズ装置12のレンズCPU42に送信する。
【0039】
同図に示すようにAF枠自動追尾装置18は、CPU50、AF枠操作部52、追尾開始スイッチ54、追尾停止スイッチ56、デコーダ58、セーフエリア指定部60、セーフエリア警告表示部62等を備えている。
【0040】
CPU50は、AF枠自動追尾装置18での処理を統括的に行う演算処理部であり、その処理内容については適宜説明する。
【0041】
AF枠操作部52は、AF枠の範囲をユーザがマニュアル操作するための操作部材と、操作部材の設定状態を電気的に検出する検出器とを備え、例えば、撮像エリア(撮影範囲)に対するAF枠の位置を手動操作により変更するための位置操作部材(例えばジョイスティック、トラックボール等)、AF枠の大きさを手動操作により変更するためのサイズ操作部材(例えば、ツマミ)、AF枠の形状(縦横比)を手動操作により変更するための形状操作部材(例えば、ツマミ)等を備えている。これらの操作部材の設定状態は検出器により検出されCPU50に与えられる。CPU50は、AF枠自動追尾処理を実行していない場合には、各操作部材の設定状態に基づいてAF枠の範囲(位置、大きさ、形状)を決定し、そのAF枠の範囲を示すAF枠情報をレンズ装置12のレンズCPU42に送信する。
【0042】
追尾開始スイッチ54は、ユーザがAF枠自動追尾の開始を指示するスイッチであり、追尾停止スイッチ56は、ユーザがAF枠自動追尾の停止を指示するスイッチである。CPU50は、これらのスイッチ54、56の状態に従ってAF枠自動追尾処理を開始し、又は、停止する。
【0043】
デコーダ58は、カメラ本体14からAF枠自動追尾装置18に入力されるテレビカメラ10の撮影映像の映像信号を、CPU50等においてデジタル処理可能なデータに変換するための回路である。
【0044】
セーフエリア指定部60は、カメラ本体14の撮像素子の撮像エリアにより撮影されるテレビカメラ10の撮影映像全体の画角範囲(テレビカメラ10の撮影範囲)に対してユーザが所定の画角範囲(撮影範囲)をセーフエリアとして指定するための操作部である。セーフエリアは、テレビカメラ10の撮影映像をテレビ等の表示装置で表示した場合に、想定した表示装置の画面に撮影映像が確実に表示される画角範囲(撮影範囲)を示すものであり、カメラマンが撮影目的の被写体をセーフエリアの画角範囲内で撮影するように画角操作(パン/チルト操作やズーム操作等)を行うことによって、その撮影目的の被写体が想定した表示装置で確実に表示されることを保証するものである。詳細は後述する。
【0045】
セーフエリア警告表示部62は、セーフエリア指定部60によりセーフエリアとして指定された画角範囲から撮影目的の被写体が外部に移行しようとした場合にその警告としてLED等のランプを点灯させるための表示部であり、例えば、ビューファインダ16の画面の横等に設置される。
【0046】
以上のような構成部を備えたAF枠自動追尾装置18における処理内容について説明する。まず、AF枠自動追尾処理とセーフエリア警告処理のうちAF枠自動追尾処理について一例を説明する。AF枠自動追尾が行われていないときにユーザはビューファインダ16の画面を見ながらAF枠操作部52を操作し、また、画角操作し、追尾対象とする撮影目的の被写体を囲むようにAF枠の範囲を設定する。そして、追尾開始スイッチ54をオンする。
【0047】
CPU50は、テレビカメラ10から入力される映像信号によりフレーム単位(1コマ単位)の撮影画像をデコーダ58を介して適宜取り込み、追尾開始スイッチ54がオンされた際に、取り込んだ撮影画像に対して周知の顔検出処理を実行し、AF枠の範囲に人物の顔(顔画像)が含まれるか否かを判定する。もし、顔が含まれる場合には、その顔を追尾対象とし、検出した顔(顔画像)の範囲をAF枠の範囲として変更する。そして、顔検出処理によるAF枠自動追尾処理を開始する。
【0048】
顔検出処理によるAF枠自動追尾処理を開始すると、CPU50は、テレビカメラ10の撮影画像を順次取り込み、取り込んだ撮影画像の中から人物の顔画像を顔検出処理により検出する。そして、現在のAF枠の範囲に最も近い位置の顔画像の範囲を新たなAF枠の範囲として変更する。これにより、追尾対象の顔がAF枠によって追尾される。
【0049】
一方、追尾開始スイッチ54がオンされた際のAF枠の範囲に人物の顔が含まれていない場合には、AF枠の範囲内の画像を基準パターンとして記憶する。そして、パターンマッチング処理によるAF枠自動追尾処理を開始する。
【0050】
パターンマッチング処理によるAF枠自動追尾処理を開始すると、CPU50は、テレビカメラ10の撮影画像を順次取り込み、取り込んだ撮影画像の中から基準パターンに合致する画像範囲を周知のパターンマッチング処理により検出する。そして、その検出した画像範囲を新たなAF枠の範囲として変更する。これにより顔以外の追尾対象の物体がAF枠によって追尾される。
【0051】
顔検出処理又はパターンマッチング処理によるAF枠自動追尾処理が実行されている際に、ユーザが追尾停止スイッチ56をオンするとCPU50のAF枠自動追尾処理が停止し、AF枠自動追尾が行われなくなる。
【0052】
尚、上記のAF枠自動追尾処理の内容は一例であって、他の処理内容によって顔や顔以外の任意の物体をAF枠で追尾するようにしたものであってもよい。
【0053】
次にAF枠自動追尾装置18におけるセーフエリア警告処理について説明する。テレビカメラ10の撮影映像は、HD(高精細)画質の映像(HD映像)であり、この場合、図3に示すように撮影映像全体の画面(画角範囲)300は、アスペクト比16:9の画面サイズのものとなる。
【0054】
一方、アスペクト比16:9のテレビカメラ10の撮影映像をアスペクト比4:3の画面サイズの表示装置で表示した場合には、表示装置の画面に表示される画角範囲(撮影範囲)は、図3の破線枠302で示す画角範囲の撮影映像となる。
【0055】
もし、撮影目的の被写体がアスペクト比4:3の画面サイズの表示装置で確実に表示されることを意識して撮影する場合、カメラマンは、その撮影目的の被写体が図3の破線枠302の画角範囲内から外側に出ないように画角操作(パン/チルト操作等)を行う必要がある。
【0056】
また、このような場合に限らず、テレビカメラ10で撮影される撮影映像全体の画角範囲(テレビカメラ10の画角範囲)に対して、表示装置で表示される撮影映像の画角範囲が小さい範囲に制限される場合には、その制限された画角範囲内で撮影目的の被写体が撮影されるように画角操作を行う必要がある。
【0057】
そこで、このように撮影目的の被写体を撮影する画角範囲を、所定の画角範囲に制限したい場合には、その制限したい画角範囲をセーフエリアとしてユーザが図1のセーフエリア指定部60により指定することによって、その指定に従ってCPU50がセーフエリアを設定するようになっている。
【0058】
例えば、セーフエリア指定部60では、特徴的な画角範囲をセーフエリア指定部60により指定することができるようになっており、その1つとして、アスペクト比4:3の画面サイズの表示装置での表示を考慮して、図3のようにアスペクト比4:3の画角範囲(破線枠302、以下、画角範囲302)をセーフエリアとして指定することができるようになっている。また、アスペクト比4:3の画面サイズの表示装置でも画角範囲302の撮影映像の周辺部分が画面に表示されない場合もあり、それを考慮して画角範囲302に対して所定の割合(所定パーセント)の画角範囲304をセーフエリアとして指定して設定することもできるようになっている。その割合は予め決められた値(95、90、85、80等のパーセント値)の中から選択できるようにしてもよいし、任意の値を指定できるようにしてもよい。
【0059】
また、アスペクト比4:3の画面サイズの表示装置での表示と同様に、テレビカメラ10の撮影映像と同じアスペクト比16:9の画面サイズの表示装置での表示を考慮して、テレビカメラ10の画角範囲300をセーフエリアとして指定することや、その画角範囲に対して所定の割合の画角範囲をセーフエリアとして指定できるようにしてもよい。
【0060】
CPU50は、上記のようにセーフエリア指定部60により指定されたセーフエリアを設定すると、AF枠自動追尾処理を実行している際に追尾対象の被写体を撮影目的の被写体とみなし、追尾対象の被写体を追尾しているAF枠がセーフエリアの外側に移動するおそれがあるときに、セーフエリア警告表示部62によりその旨をカメラマンに通知する。
【0061】
例えば、テレビカメラ10の画角範囲300に対して、アスペクト比4:3の画角範囲302がセーフエリア310として設定されたものとする。このとき、図4に示すようにAF枠204の枠線がセーフエリア310の枠線に接した場合にセーフエリア警告表示部62のランプを点灯させる。
【0062】
具体的には、画角範囲300の左上頂点を原点、横方向をx軸、縦方向をy軸とし、画角範囲300の四隅の頂点の座標を各々、左上頂点(0、0)、右上頂点(X、0)、左下頂点(0、Y)、右下頂点(X、Y)とする。また、セーフエリア310の四隅の頂点の座標を各々、左上頂点(xL、yT)、右上頂点(xR、yT)、左下頂点(xL、yB)、右下頂点(xR、yB)とする。ただし、図3の例ではyT=0、yB=Yとなる。
【0063】
そして、AF枠204の中心の座標を(x0、y0)とし、AF枠204の横幅をm、縦幅をnとすると、下記の4つの条件式(1)〜(4)、
xL<x0−m/2 …(1)
xR>x0+m/2 …(2)
yT<y0−n/2 …(3)
yB>y0+n/2 …(4)
を満たすときが、AF枠がセーフエリア310の範囲内であって、AF枠204の枠線がセーフエリア310の枠線に接していない状態となる。このときCPU50はセーフエリア警告表示部62のランプを消灯させる。
【0064】
一方、条件式(1)〜(4)のいずれか1つの条件でも満たされなくなった場合には、AF枠204の枠線がセーフエリア310の枠線に接している状態(又は、更に外側に移動している状態)となる。このときCPU50はセーフエリア警告表示部62のランプを点灯させて、撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に移動するおそれがあることを通知する。
【0065】
尚、AF枠204の枠線がセーフエリア310の枠線に接する状態よりも前、即ち、AF枠204の枠線がセーフエリア310の枠線に所定距離以内に近づいた場合に、警告を行うように、例えば、上記条件式(1)〜(4)を、
xL+α<x0−m/2 …(1)
xR−α>x0+m/2 …(2)
yT+β<y0−n/2 …(3)
yB−β>y0+n/2 …(4)
(ただしα、βは正の値)
に変え、条件式(1)〜(4)のいずれか1つの条件でも満たされなくなった場合に、セーフエリア警告表示部62のランプを点灯させるようにしてもよい。
【0066】
また、上記のような条件式(1)〜(4)に基づいてAF枠204(撮影目的の被写体)がセーフエリアの外側に移動するおそれがあることを判断する場合に限らない。例えば、AF枠204の移動方向等も考慮して、AF枠204がセーフエリアの外側に移動するおそれがあることを判断するようにしてもよい。
【0067】
以上、上記実施の形態では、AF枠自動追尾処理を行っている際のAF枠の範囲内の被写体(追尾対象の被写体)を撮影目的の被写体とみなしたが、AF枠自動追尾処理を行っていない場合であっても、顔検出を行うようにし、検出された顔の全て、又は、その中からユーザが選択した顔を撮影目的の被写体として、顔の範囲がセーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断した場合にセーフエリア警告表示部62のランプを点灯させるようにしてもよい。
【0068】
また、上記セーフエリア警告表示部62の代わりに、又は、これと併用して、振動を発生させる振動発生装置を、テレビカメラ10を載置する架台(ペデスタルドリー等)に延設されたカメラマンが把持する操作棒や、カメラマンの体等に設置し、撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断した場合に、その振動発生装置で振動を発生させて、その旨をカメラマンに通知するようにしてもよい。
【0069】
また、セーフエリア警告表示部62の代わりに、又は、これと併用して、ビューファインダ16の画面内に撮影目的の被写体がセーフエリアの外側に移動するおそれがあることを警告表示するようにしてもよい。この場合の警告表示はセーフエリア警告表示部62と同様に画面内のランプを点灯(警告時に非警告時と異なる色に切り替える等)させるようにしてもよいし、文字、記号、図形等を用いた任意の情報表示によって警告を行うようにしてもよい。
【0070】
また、警告表示を行うためのセーフエリアマーカー(警告ライン)に加えて、その少し内側に注意喚起ラインを設けて、その注意喚起ラインの外側に撮影目的の被写体が移動するおそれがあるときには所定の方法(表示等)で注意を促すようにしてもよい。例えば左右の警告ラインに加えて、その少し手前に注意喚起ラインを設けて、そこで注意の警告が出るようにしても良い。
【0071】
また、上記実施の形態では、セーフエリアをAF枠自動追尾装置18のセーフエリア指定部60により指定して設定したが、例えば、カメラ本体14においてセーフエリアを設定してビューファインダ16にそのセーフエリアの画角範囲を示すセーフエリアマーカー等を表示させる機能がある場合には、AF枠自動追尾装置18がその情報をカメラ本体14から取得してセーフエリアを設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明が適用されるテレビカメラシステムの全体構成を示したブロック図である。
【図2】AF枠の説明に使用した説明図である。
【図3】セーフエリアの説明に使用した説明図である。
【図4】セーフエリア警告表示処理の説明に使用した説明図である。の処理の説明に使用した説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1…テレビカメラシステム、10…テレビカメラ、12…レンズ装置、14…カメラ装置、16…ビューファインダ、18…AF枠自動追尾装置、42…レンズCPU、50…CPU、52…AF枠操作部、54…追尾開始スイッチ、56…追尾停止スイッチ、58…デコーダ、60…セーフエリア指定部、62…セーフエリア警告表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系により結像された被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮影画像のうち、所定のAF枠の範囲の被写体にピントが合うように前記光学系のフォーカス調整を行うオートフォーカス手段と、所定の追尾対象の被写体にピントが合うように前記AF枠を前記追尾対象の被写体に自動追尾させるAF枠自動追尾手段を備えたテレビカメラシステムに使用されるセーフエリア警告装置であって、
前記撮像手段により撮像される撮影画像全体の画角範囲に対して、撮影目的の被写体を撮影する画角範囲を所定の画角範囲に制限する場合の該所定の画角範囲をセーフエリアとして設定するセーフエリア設定手段と、
前記AF枠が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記AF枠が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断された場合に、その旨の警告を行う警告手段と、
を備えたことを特徴とするセーフエリア警告装置。
【請求項2】
前記判断手段は、AF枠の枠線が前記セーフエリアの枠線に所定距離以内に近づいた場合に、前記AF枠が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断することを特徴とする請求項1のセーフエリア警告装置。
【請求項3】
前記警告手段は、ランプの点灯、振動手段による振動、又は、ビューファンダへの情報表示によって前記警告を行うことを特徴とする請求項1、又は、2のセーフエリア警告装置。
【請求項4】
光学系により結像された被写体像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された撮影画像のうち、所定のAF枠の範囲の被写体にピントが合うように前記光学系のフォーカス調整を行うオートフォーカス手段と、追尾対象の被写体として前記撮影画像の中から顔検出処理により人物の顔を検出し、該検出した顔にピントが合うように前記AF枠を前記検出した顔に自動追尾させるAF枠自動追尾手段を備えたテレビカメラシステムに使用されるセーフエリア警告装置であって、
前記撮像手段により撮像される撮影画像全体の画角範囲に対して、撮影目的の被写体を撮影する画角範囲を所定の画角範囲に制限する場合の該所定の画角範囲をセーフエリアとして設定するセーフエリア設定手段と、
前記AF枠自動追尾手段における顔検出処理により前記撮像手段により撮像される撮影画像の中から人物の顔を検出する顔検出手段と、
前記顔検出手段により検出された顔が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあるか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により前記顔が前記セーフエリアの外側に移動するおそれがあると判断された場合に、その旨の警告を行う警告手段と、
を備えたことを特徴とするセーフエリア警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−152135(P2010−152135A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330899(P2008−330899)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】