説明

ソーラーセル付き電子時計

【課題】 従来、帯状のソーラーセルをムーブメント支持台に組み込む場合、組込安定性向上のためにソーラーセルを延出して穴等を設け、ムーブメント支持台に設けたフック等に係合させることで固定していたが、ソーラーセルの形状が複雑になるため加工コストが高いという問題点がある。
【解決手段】 ソーラーセル17と導通部材29及び位置決め部材31を別体として成形し、ソーラーセル17の裏面に導通部材29の固着部29aと位置決め部材31の固着部31aを接着することでソーラーセル体37を形成し、各々の部品は単純な形状とすることができ、生産コストを低く抑えることができる。また、ソーラーセル17の裏面全面に導通部材29と位置決め部材31の固着部31aを接着することで、ソーラーセル17に剛性を持たせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細長い帯状のソーラーセルの受光面を表示部に対して略垂直に配置したソーラーセル付き電子時計の構造に関するもので、詳しくは組込性を良くしたソーラーセル体の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のソーラー発電時計においては光の照射を受けて発電する受光面が、例えば指針表示式時計で見た時、時刻表示を行う指針および文字板の下に配置される構成が一般的である。このような時計では通常、デザイン的装飾を行う文字板と受光面がほぼ平面領域を同じくするため、文字板に光を透過させる特性が要求される。このため、文字板材質などに制約があり、文字板色調等デザインの自由度が制限されてしまう。そこで、この問題を解決するソーラー発電時計の1つの構造として、受光面を有するソーラーセルを文字板と平面的に重合させて配置するのではなく、文字板の周囲の側胴内壁部に受光面を垂直に配置させたリングソーラー時計が考案され実用化されている。
【0003】
リングソーラー時計の場合、光の透過性能が要求されない文字板を使用できるため、デザイン的に全く制約を受けないのでソーラー時計以外の時計と同じデザインの時計を提供することが出来るが、このタイプのソーラー発電時計においてはそのソーラーセルの組込性に問題点を有している。
【0004】
そこで、リング状のソーラーセルを容易に組立可能とする構造を用いた電子時計として、特許文献1に開示された構成がある。特許文献1の電子時計では、ソーラーセルがムーブメントに対して垂直方向へ移動することを防止するため、ソーラーセルにフック引っ掛かり部を設け、このフック引っ掛かり部にフック引っ掛け穴を形成する。またソーラーセルを保持するムーブメント支持台には規制部材としてフック部を設けた。そして、ソーラーセルのフック引っ掛け穴がムーブメント支持台のフックに係合されることにより、ソーラーセルが組込状態から脱することなく、組立作業性が良好となる。
【0005】
また、特許文献2の電子時計では、ソーラーセルの発電電力を取り出す引き出し電極とソーラーセルとを別体とし、ソーラーセルの形状を単純化して製造を容易にすることで加工コストの低下を図っている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−121567号公報(段落番号0008、0009及び図1、図2)
【特許文献2】国際公開 WO2004/66042号公報(第4頁、第6頁及び図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、ソーラーセルに一体形成したフック引っ掛かり部にフック引っ掛け穴をソーラーセル面から突出させて設けるためソーラーセル体そのものが複雑な形状となるので、加工コストが高くなるという課題を有する。また、ソーラーセル体単体では剛性が低いので、フック部等規制部材を設けても、組立作業性に難があるという課題を有する。また、ムーブメントのサイズが変更となると、それに伴いソーラーセルのフック引っ掛かり部及びフック引っ掛け穴の位置が変更となるので、ソーラーセルを共通使用できないという課題を有する。
【0008】
また、特許文献2の構成は、ソーラーセルの保持方法が、丸めたソーラーセルが広がろうとする張力又は接着等であるので、張力を利用する場合はソーラーセルが組込状態を脱してはずれやすく、接着である場合は組込後に容易に分解することが出来ないという課題を有する。
【0009】
本発明の目的は、以上のような課題を解決し、リングソーラー発電時計のソーラーセル体の低コスト化を図りながら且つ組立作業性を良好とするソーラーセル体の構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のソーラーセル付き電子時計は、時刻を表示するための表示部と、該表示部の表面に対してほぼ垂直に受光面を配置するソーラーセル体と、前記ソーラーセルの発電エネルギーによって駆動されるムーブメントと、該ムーブメントを構成し前記表示部の外周部に位置するムーブメント支持台とを備え、前記ソーラーセル体は前記ムーブメントの電子回路と電気的導通を行なう導通部材と、前記ムーブメント支持台の固定部に係合する位置決め部材を有するソーラーセル付き電子時計において、前記導通部材と、前記位置決め部材と、前記ソーラーセルとは各々別体の部材で構成されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、発電を行うソーラーセル体を構成するソーラーセルと、導通部材及び位置決め部材とを別体で形成したので、高価なソーラーセルの形状を単純化させることができるため、製造が容易でありコスト低下を図ることが可能である。
【0012】
さらに、本発明のソーラーセル付き電子時計は、前記導通部材と前記位置決め部材は前記ソーラーセルの裏面に固着する各々固着部を有し、前記導通部材と前記位置決め部材の前記固着部は前記ソーラーセル裏面のほぼ全面領域に固着されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、導通部材と位置決め部材に形成した固着部をソーラーセルの裏面ほぼ全体に接着することによりソーラーセル体の剛性を高めることができ、丸めたソーラーセルの広がろうとする力が大きくなり、組込安定性を高めることが可能である。
【0014】
さらに、本発明のソーラーセル付き電子時計は、前記ムーブメント支持台に前記ソーラーセルの裏面側を保持する側壁部を設け、該側壁部の内周面に前記位置決め部材に設けられた位置決め部と係合するための前記固定部を設けることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ソーラーセルの裏面側を側壁部に沿って這わせ、位置決め部を固定部に固定することで、確実なソーラーセル体の保持固定を可能とした。
【0016】
さらに、本発明のソーラーセル付き電子時計は、前記ソーラーセルを前記側壁部の内周面に位置決めしたとき、前記導通部材と前記位置決め部材は前記ムーブメントを挟んでほぼ対向する位置に配設することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、ムーブメントのほぼ直径位置でソーラーセル体を保持できるので、丸めたソーラーセル体の片側だけが浮くことなく、容易に組立を行うことが可能である。
【0018】
さらに、本発明のソーラーセル付き電子時計は、前記位置決め部はL字形の形状であることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、ソーラーセル体を組み込む時、ソーラーセル体を広げる方向で組むためムーブメント支持台の固定部へ位置決め部を容易に組み込むことが可能である。
【0020】
さらに、本発明のソーラーセル付き電子時計では、前記位置決め部材は、前記ソーラーセル裏面の略中間位置に一定距離をおいて前記ソーラーセルに2個固着されていて、一方を切断して使用することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、位置決め部を複数個形成することにより、ムーブメントサイズが変わっても、1つを残して位置決め部を切断すればソーラーセル体を共通使用することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ソーラーセルの位置決めと導通をソーラーセルとは別体の部材で行うことにより、ソーラーセルの製造が容易で生産コストを低く抑えることができ、更に位置決め部材の形状や数量を工夫することにより、組込安定性を増したソーラーセル付き電子時計を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づいて本発明を詳述する。図1〜図6は、本発明の第1の実施形態に係るリングソーラー発電時計を示すものであり、図1はリングソーラー発電時計の構造を示す外観図であり、図2はその断面図である。図3は本発明の第1の実施形態を示すソーラーセル体の形状を示す平面図、図4はソーラーセル体の使用状態を示す斜視図、図5はソーラーセル体をムーブメント支持台に組み込んだ状態を示す斜視図、図6はムーブメント支持台の内面壁を省略しソーラーセル体の位置決め構造を示す斜視図である。
【0024】
図において、11が側胴、13が文字板、15が指針であり、17がソーラーセル、19が風防ガラス、21が見返しリング、23がムーブメント、25がムーブメント支持台、29は導通部材、31は位置決め部材、33が端子押さえ、35が裏ブタである。ムーブメント支持台25はムーブメント23を構成する部品の1つである。また、ソーラーセル17と該ソーラーセル17の裏面に接着されている後述の導通部材29と位置決め部材31とによりソーラーセル体37を構成する。
【0025】
側胴11の表面側(図2の上側)には風防ガラス19が保持され裏面側には裏蓋35が固定され、文字板13上でムーブメント23により駆動される指針15が回転して時刻を表示している。側胴11の内側にはムーブメント支持台25が配置され、このムーブメント支持台25の内面の側壁部にソーラーセル体37が保持されていて、ソーラーセル17は文字板13側に受光面を向けてほぼ直角に配設されている。ソーラーセル体37は前述のようにソーラーセル17と導通部材29及び位置決め部材31により形成されており、ソーラーセル17の内面には見返しリング21が配設され直接ソーラーセル17は見えないようになっている。また、導通部材はムーブメント23に配置されている図示しない回路基板に端子押さえ33でもって固定されている。
【0026】
次に本発明のソーラーセル体37について詳細に説明する。
図3は本発明の第1の実施形態を示すソーラーセル体37の形状であり、組込前の自然状態を示している。ソーラーセル体37は、基板上に受光面としてのアモルファスシリコンセル層がほぼ全表面に形成されているソーラーセル17と、ソーラーセル17の電気的導通をとるための導通部材29と、ソーラーセル17の位置決めを行うための位置決め部材31により形成されており、各部材は各々別体で形成されている。また、導通部材29は固着部29aと導通部29bより成り、位置決め部材31は固着部31aと位置決め部31bより形成されている。そして、ソーラーセル17の裏面にそれぞれの固着部29aと固着部31aの二箇所で接着されて導通部材29と位置決め部材31を形成している。
【0027】
図4はソーラーセル体の使用状態を示すもので、ソーラーセル体37は組込時には丸められ、図5に示すようにムーブメント支持台25に設けられた溝部41内にソーラーセル17の裏面を側壁部42に沿って組み込まれる。その際、導通部材29は、図2に示すように、端子押さえ33によりムーブメントの部品である電子回路基板と接触させることで電気的導通を行い、位置決め部材31は、図6に示すように、ムーブメント支持台25に設けられた固定部であるフック39と係合することでソーラーセル体37の回転及び垂直方向への移動規制を行っている。
【0028】
このように、ソーラーセル体37は、導通部材29と位置決め部材31がそれぞれ位置規制されることにより固定される。本発明では、ソーラーセル17と導通部材29及び位置決め部材31が各々別体で構成されているので、位置規制をソーラーセル17のみで行った場合に必要となるフック引っ掛け穴等の複雑な形状を、ソーラーセル17自体に設ける必要がない。このため、ソーラーセル17は単純な帯状の長方形形状となり、取り個数の増加や歩留向上により、加工コストを低くすることが可能となる。
また、図5に示すように、導通部材29と位置決め部材31がムーブメント23をはさんで対向する位置に配置することにより、丸められたソーラーセル体37の片側が溝部41から浮き、組込状態を脱することがなくなるため、組込作業性を向上させることが可能となる。
【0029】
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。第1の実施形態の部材と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図7は本発明の第2の実施形態を示すソーラーセル体137の形状であり、組込前の自然状態の平面図である。位置決め部材131の固着部131aを幅広とし、固着部131aをソーラーセル17の裏面に接着し、導通部材29の固着部29aと合わせてソーラーセル17の裏面ほぼ全体を覆う構成と成している。このようにすることで、ソーラーセル17単体と比較して剛性が高く、組込時に丸められたソーラーセル体137が元に戻ろうとする力が大きくなる。ソーラーセル体137は丸められた状態から元に戻ろうとする力によってムーブメント支持台25の側壁部42に保持されるため、この元に戻ろうとする力が大きい本実施形態は組込後の安定性が高く、組立作業性がよい。尚、両固着部29a、131aはソーラーセル17の基板裏面全面でなくともよく、両固着部29a、131aの周囲にソーラーセル17の基板裏面が多少見える構成でも良い。
【0030】
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。第2の実施形態同様、第1の実施形態の部材と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図8は本発明の第3の実施形態を示すソーラーセル体237の形状であり、組込前の自然状態の平面図である。ソーラーセル17の裏面に複数の位置決め部材231の固着部231aが接着されている。複数の位置決め部材231のうち1つを残して他の位置決め部材を切り取ることで、導通部材29と位置決め部材231の距離を調節することができる。このため見切り径が変更となっても導通部材29とほぼ対向する位置に位置決め部材231を配置することができるので、1種類のソーラーセル体237をサイズの異なるムーブメントに共通に使用することが可能となる。
【0031】
続いて、本発明の第4の実施形態について説明する。第1の実施形態の部材と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。図9は本発明の第4の実施形態を示すソーラーセル体337の形状であり、組込前の自然状態の平面図である。位置決め部材331の位置決め部331bの形状は長方形状の穴で形成されている。このように、位置決め部材の位置決め部の形状は、L字状でなくても良く、このほかには円形状や長穴形状などでも発明の効果を発揮することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のソーラーセル体は、表示面に対して垂直に配置することのできる電子機器に使用して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態におけるリングソーラー発電時計の構造を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態におけるリングソーラー発電時計の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるソーラーセル体の平面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるムーブメント組立時にソーラーセルをムーブメント支持台に組み込む状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるソーラーセルをムーブメント支持台に組み込んだ状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態におけるソーラーセルの位置決め部材がムーブメント支持台のフックに係合している状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるソーラーセル体の平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態におけるソーラーセル体の平面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態におけるソーラーセル体の平面図である。
【符号の説明】
【0034】
11 側胴
13 文字板
15 指針
17 ソーラーセル
19 風防ガラス
21 見返しリング
23 ムーブメント
25 ムーブメント支持台
29 導通部材
29a 導通部材の固着部
29b 導通部材の導通部
31,131,231,331 位置決め部材
31a,131a、231a、331a 位置決め部材の固着部
31b,131b、231b、331b 位置決め部材の位置決め部
33 端子押さえ
35 裏蓋
37,137,237,337 ソーラーセル体
39 フック部
41 溝部
42 側壁部
43 内壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時刻を表示するための表示部と、該表示部の表面に対してほぼ垂直に受光面を配置するソーラーセルと、前記ソーラーセルの発電エネルギーによって駆動されるムーブメントと、該ムーブメントを構成し前記表示部の外周部に位置するムーブメント支持台とを備え、前記ソーラーセルは前記ムーブメントの電子回路と電気的導通を行なう導通部材と、前記ムーブメント支持台の固定部に係合する位置決め部材を有するソーラーセル付き電子時計において、
前記導通部材と、前記位置決め部材と、前記ソーラーセルとは各々別体の部材で構成されていることを特徴とするソーラーセル付き電子時計。
【請求項2】
前記導通部材と前記位置決め部材は前記ソーラーセルの裏面に固着する各々固着部を有し、前記導通部材と前記位置決め部材の前記固着部は前記ソーラーセル裏面のほぼ全面領域に固着されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラーセル付き電子時計。
【請求項3】
前記ムーブメント支持台に前記ソーラーセルの裏面側を保持する側壁部を設け、該側壁部の内周面に前記位置決め部材に設けられた位置決め部と係合するための前記固定部を設けることを特徴とする請求項1または2に記載のソーラーセル付き電子時計。
【請求項4】
前記ソーラーセルを前記側壁部の内周面に位置決めしたとき、前記導通部材と前記位置決め部材は前記ムーブメントを挟んでほぼ対向する位置に配設することを特徴とする請求項3に記載のソーラーセル付き電子時計。
【請求項5】
前記位置決め部はL字形の形状であることを特徴とする請求項3に記載のソーラーセル付き電子時計。
【請求項6】
前記位置決め部材は、前記ソーラーセル裏面の略中間位置に一定距離をおいて前記ソーラーセルに2個固着されていて、一方を切断して使用することを可能としたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のソーラーセル付き電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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