説明

タイヤ組付け用搬送設備

【課題】自動車組立てラインで吊下げ搬送される車体に対するタイヤ組付け作業を、当該車体の搬送経路の左右両側で行う場合のタイヤ搬送設備として効果的に活用出来るタイヤ組付け用搬送設備を提供する。
【解決手段】タイヤTを組み付ける前の車体Bを吊り下げてタイヤ組付け作業エリア4に搬送する車体吊下げ搬送装置1と、車体Bに組み付けるべきタイヤTを前記車体吊下げ搬送装置1で搬送される車体Bと同期状態で前記タイヤ組付け作業エリア4に搬送するタイヤ搬送装置2を備えたタイヤ組付け用搬送設備において、前記タイヤ搬送装置2は、前記車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路の下側に、当該車体搬送経路と前記タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送経路とが平面視において重なるように配設された構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車組立てラインにおいて、搬送される車体に組み付けるべきタイヤをタイヤ組付け作業エリアに搬送するタイヤ組付け用搬送設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車組立てラインにおいては、タイヤを組み付ける前の車体を吊り下げてタイヤ組付け作業エリアに搬送する車体吊下げ搬送装置と、車体に組み付けるべきタイヤを前記車体吊下げ搬送装置で搬送される車体と同期状態で前記タイヤ組付け作業エリアに搬送するタイヤ搬送装置を備えたタイヤ組付け用搬送設備が使用される。而して、従来のこの種のタイヤ組付け用搬送設備は、特許文献1に記載されるように、平面視において、車体吊下げ搬送装置による車体搬送経路の左右両外側にタイヤ搬送経路が並列するように、車体吊下げ搬送装置の左右両側にタイヤ搬送装置が並設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−70056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のタイヤ組付け用搬送設備では、平面視において車体搬送経路の左右両外側にタイヤ搬送経路が並列するので、設備全体としての床面占有面積が非常に大きくなる。又、搬送される車体の左右両側にタイヤ搬送経路が並列しているので、当該タイヤ搬送経路及びこのタイヤ搬送経路上で搬送されるタイヤが、搬送される車体の横側方からの当該車体に対するアクセスの邪魔になり、タイヤ組付け作業者やタイヤ組付けを行う作業ロボットの安全性、作業性も悪くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題点を解消することのできるタイヤ組付け用搬送設備を提案するものであって、請求項1に記載の本発明に係るタイヤ組付け用搬送設備は、後述する実施例との関係を理解し易くするために、当該実施例の説明において使用した参照符号を括弧付きで付して示すと、タイヤ(T)を組み付ける前の車体(B)を吊り下げてタイヤ組付け作業エリア(4)に搬送する車体吊下げ搬送装置(1)と、車体(B)に組み付けるべきタイヤ(T)を前記車体吊下げ搬送装置(1)で搬送される車体(B)と同期状態で前記タイヤ組付け作業エリア(4)に搬送するタイヤ搬送装置(2)を備えたタイヤ組付け用搬送設備において、前記タイヤ搬送装置(2)は、前記車体吊下げ搬送装置(1)の車体搬送経路の下側に、当該車体搬送経路と前記タイヤ搬送装置(2)のタイヤ搬送経路とが平面視において重なるように配設された構成になっている。
【発明の効果】
【0006】
上記本発明の構成によれば、車体吊下げ搬送装置で搬送される車体の搬送経路とタイヤ搬送装置で搬送されるタイヤの搬送経路とが平面視において重なるものであるから、設備全体としての床面占有面積が車体吊下げ搬送装置のみの床面占有面積と実質的に同一となり、床面の利用効率を大幅に高めることが出来る。又、車体の搬送経路の横側方にタイヤ搬送経路が張り出していないので、当該タイヤ搬送経路及びこのタイヤ搬送経路上で搬送されるタイヤが、搬送される車体の横側方からの当該車体に対するアクセスの邪魔になることはなく、タイヤ組付け作業者やタイヤ組付けを行う作業ロボットの安全性、作業性も格段に向上する。
【0007】
上記本発明を実施する場合、前記タイヤ搬送装置(2)は、車体(B)の右側に組み込まれるタイヤ(T)と車体(B)の左側に組み込まれるタイヤ(T)とを並列状態で支持して搬送するものであっても良いが、請求項2に記載のように、前記タイヤ搬送装置(2)を、全てのタイヤ(T)をタイヤ搬送経路方向に一列に直列させて支持搬送するコンベヤ(16)で構成することにより、タイヤ搬送装置の経路幅をタイヤ直径強程度に狭めて、車体吊下げ搬送装置による車体搬送経路の横幅内にタイヤ搬送装置が収まるように設置することが容易になる。
【0008】
又、前記タイヤ搬送装置(2)は、タイヤ(T)のみを支持搬送する手段として使用することも可能であるが、請求項3に記載のように、前記タイヤ搬送装置(2)を、1台の車体(B)に組み付ける複数のタイヤ群を、前記車体吊下げ搬送装置(1)で吊下げ搬送される各車体(B)の下側で支持するタイヤ支持エリア(21)と、前記車体吊下げ搬送装置(1)で吊下げ搬送される各車体(B)間の下側に位置する作業者搭乗エリア(22)とが交互に設けられた1つのスラットコンベヤ(16)から構成することが出来る。この構成によれば、タイヤ組付け作業エリアにタイヤを車体と同期させて搬送するためのタイヤ搬送装置により、搬送される車体間に立ち入って前後の車体に対する作業を行う作業者を当該車体と同期させて安全に移動させるためのマンコンベヤにも活用することが出来る。換言すれば、従来のマンコンベヤを備えた車体搬送装置の当該マンコンベヤを利用して、タイヤ搬送装置を簡単容易に実施することが出来、本発明によるタイヤ組付け用搬送設備を安価に実施することが出来る。この場合、請求項4に記載のように、前記タイヤ搬送装置(2)の作業者搭乗エリア(22)は、このタイヤ搬送装置(2)の両側の床面(29)高さと同じ高さの作業者搭乗面(26a)を備えたものとし、このタイヤ搬送装置(2)のタイヤ支持エリア(21)は、前記作業者搭乗エリア(22)の作業者搭乗面(26a)よりも一段低く構成することが出来る。この構成によれば、タイヤ搬送装置のタイヤ支持エリアを、当該タイヤ搬送装置の左右両側の床と前後両側の作業者搭乗エリアとで囲み、支持搬送されるタイヤが所定のエリアから外れるように不測に移動するのを防止出来るだけでなく、車体吊下げ搬送装置の車体搬送経路の床面上高さを十分に低くして、搬送される車体に対する作業性を向上させることが出来る。
【0009】
本発明のタイヤ組付け用搬送設備は、タイヤ搬送装置(2)により前記タイヤ組付け作業エリア(4)に搬送されてきたタイヤ(T)を作業者が手作業で車体(B)の横側方に引き出すように実施することも可能であるが、請求項5に記載のように、前記タイヤ組付け作業エリア(4)に、前記タイヤ搬送装置(2)で搬送されてきたタイヤ(T)を前記車体吊下げ搬送装置(1)で吊下げ搬送されてきた車体(B)の左右両側に搬出するタイヤ振分け搬出装置(20)を併設することが、安全性、省力化の面で現実的である。この場合、請求項6に記載のように、前記タイヤ振分け搬出装置(20)は、左右一対の水平搬出装置(49A,49B)と当該各水平搬出装置(49A,49B)に接続された持上げ及び姿勢変更装置(50A,50B)を備えた構成とし、前記各水平搬出装置(49A,49B)は、前記タイヤ搬送装置(2)で搬送されてきた水平姿勢のタイヤ(T)を前記車体吊下げ搬送装置(1)で吊下げ搬送されてきた車体(B)の横側方に水平に送り出すタイヤ送出手段(51)と、このタイヤ送出手段(51)で送り出されたタイヤ(T)を所定位置まで搬出するタイヤ搬出コンベヤ(52)から構成し、前記持上げ及び姿勢変更装置(50A,50B)は、前記水平搬出装置(49A,49B)のタイヤ搬出コンベヤ(51)で所定位置まで搬出された水平姿勢のタイヤ(T)を、タイヤ組付け作業高さまで上昇させると共に当該タイヤ(T)を前記タイヤ搬送装置(2)の搬送方向下手側に向けて起こす手段で構成することが出来る。この構成によれば、車体下のタイヤをタイヤ組付け補助台上に載置するなどの作業を車体横に立つタイヤ組付け作業者が楽な姿勢で容易かつ安全に行える。
【0010】
尚、前記タイヤ搬送装置(2)のタイヤ送り方向上手側端部にタイヤを供給する場合、当該タイヤ搬送装置(2)のタイヤ送り方向上手側端部上へタイヤ送り方向下手側に向かってタイヤ(T)を送給するように構成することも可能であるが、請求項7に記載のように、平面視において、前記車体吊下げ搬送装置(1)の横側方位置からタイヤ搬送装置(2)にタイヤ(T)を送り込むタイヤ搬入装置(19)を併設するのが望ましい。この構成によれば、タイヤ搬送装置の経路長さを必要最小限に短く構成することが容易になるだけでなく、複数のタイヤをタイヤ搬送装置上に横から同時に送給することも可能になり、タイヤ搬送装置へのタイヤの送込み時間間隔を長くとることが出来、タイヤ搬送装置へのタイヤの送給を無理なく容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は設備全体の概略側面図である。
【図2】図2は同上設備のタイヤ組付け作業エリア手前の作業ラインの拡大側面図である。
【図3】図3は同上設備のタイヤ組付け作業エリアを示す拡大側面図である。
【図4】図4は図2に示す作業ラインにおける縦断正面図である。
【図5】図5はタイヤ搬送装置のタイヤ支持エリアを示す平面図である。
【図6】図6は同上タイヤ支持エリアの一部切欠き縦断正面図である。
【図7】図7は同上タイヤ支持エリアと作業者搭乗エリアとの隣接部分を示す一部縦断側面図である。
【図8】図8はタイヤ搬送装置へのタイヤ搬入装置を示す平面図である。
【図9】図9は同上タイヤ搬入装置を示す正面図である。
【図10】図10は同上タイヤ搬入装置の一部分の詳細構造を示す一部切欠き平面図である。
【図11】図11はタイヤ搬送装置からタイヤを搬出するタイヤ振分け搬出装置を示す平面図である。
【図12】図12は図11の要部の拡大平面図である。
【図13】図13は同上タイヤ振分け搬出装置の詳細構造を示す一部縦断正面図である。
【図14】図14はタイヤ組付け作業エリアの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1において、1は車体吊下げ搬送装置、2はタイヤ搬送装置、3は車体吊下げ搬送装置1による車体搬送経路中に設定された車体周囲に対する作業エリア、4は当該作業エリア3より車体搬送方向下手側において前記車体搬送経路中に設定されたタイヤ組付け作業エリアである。車体吊下げ搬送装置1は、図2〜図4に示すように、天井側に架設されたガイドレール5に、車体Bを吊り下げる開閉自在なハンガー6を備えた搬送用走行体7が走行自在に吊り下げられたもので、図示省略しているが、従来周知の各種の推進手段によって搬送用走行体7がガイドレール5に沿って所定速度で走行駆動される。尚、搬送用走行体7は、従来周知のようにガイドレール5の垂直方向の傾斜経路部や水平方向の旋回経路部を円滑に走行できるように長さ方向の複数個所に関節部を備え、ハンガー6は搬送用走行体7に対して前後左右方向に揺動自在に吊り下げられ、前記車体周囲に対する作業エリア3やタイヤ組付け作業エリア4などには、ハンガー6が左右両側横方向に揺動するのを、当該ハンガー6の上端左右両側に軸支されたローラー8に当接して防止する揺れ止め用ガイドレール9が架設されている。
【0013】
車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路には、床面上方の高レベルで車体Bを水平に搬送する高レベル搬送経路部10に下り傾斜経路部11を経由して接続する低レベル搬送経路部12と、この低レベル搬送経路部12に上り傾斜経路部13を経由して接続する中レベル搬送経路部14が設けられている。低レベル搬送経路部12では、搬送される車体Bが床面レベル近くまで下げられており、この低レベル搬送経路部12の全長が前記車体周囲に対する作業エリア3となっている。中レベル搬送経路部14は、床面上に立った作業者が搬送される車体Bに対するタイヤ取付け作業を容易に行える高さで車体Bが水平に搬送される経路部であって、この中レベル搬送経路部14に前記タイヤ組付け作業エリア4が設定されている。
【0014】
タイヤ搬送装置2は、モーター15で駆動されるスラットコンベヤ16によって構成されたもので、車体吊下げ搬送装置1における高レベル搬送経路部10の終端付近(下り傾斜経路部11の始端付近)の下方位置から中レベル搬送経路部14のタイヤ組付け作業エリア4よりも下手側の下方位置に至る水平のタイヤ搬送経路を構成している。このタイヤ搬送経路を構成するスラットコンベヤ16は、平面視において、車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路と重なるように、当該車体吊下げ搬送装置1の真下位置で床面に形成されたピット18内に設置され、その始端付近にはタイヤ搬入装置19が併設されると共に、終端付近でタイヤ組付け作業エリア4内に位置する箇所にはタイヤ振分け搬出装置20が併設されている。
【0015】
タイヤ搬送装置2を構成するスラットコンベヤ16の詳細構造を図2〜図7に基づいて説明すると、スラットコンベヤ16は、車体Bに組み付けられる4つのタイヤTを、このスラットコンベヤ16におけるタイヤ搬送方向に一列に直列させて支持するタイヤ支持エリア21と、作業者搭乗エリア22とがタイヤ搬送方向に交互に配列されている。タイヤ支持エリア21における4つのタイヤ支持部21a〜21dの夫々は、タイヤTを水平に寝かせた状態で支持する3つのスラット板23a〜23cから成り、各スラット板23a〜23cには、タイヤTをタイヤ搬送方向に対して直角横向きに滑動自在に支持する多数のローラー24が軸支され、各タイヤ支持部21a〜21d間と両端のタイヤ支持部21a,21dの外側には、夫々1つのスラット板25が介装されている。作業者搭乗エリア22は、タイヤ支持エリア21における各タイヤ支持部21a〜21dのローラー24によるタイヤ支持レベルよりも一段高いレベル、具体的には各タイヤ支持部21a〜21dで支持されたタイヤTの上面レベルより少し低いレベル、に位置する作業者搭乗面26aを複数のスラット板26で構成するものである。而して、全てのスラット板23a〜23c,25,26は、その左右両側辺が左右一対のローラーチエン27の内側に位置する各リンクプレート27aによって支持され、当該左右一対のローラーチエン27の各ローラー27bが左右一対のガイドレール28上に支持されて、スラットコンベヤ16が構成されている。
【0016】
上記構成のタイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16は、その作業者搭乗エリア22の作業者搭乗面26aがコンベヤ周囲の床面29と同一高さとなるようにピット18内に設置されている。そして、各タイヤ支持エリア21で直列状に支持される4つのタイヤTが、その上側の車体吊下げ搬送装置1で搬送される各車体Bの下側に位置し且つ各作業者搭乗エリア22が各車体B間の下側に位置する状態を保つように、車体吊下げ搬送装置1の搬送用走行体7とタイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16とが同期運転される。尚、スラットコンベヤ16の周囲とピット18の周囲の床面29との間は、ピットカバー用床材30によって閉じられている。
【0017】
タイヤ搬入装置19は、図8〜図10に示すように、タイヤ搬送装置2の片側の床面上に当該タイヤ搬送装置2と平行に設置されたタイヤ置台31と、このタイヤ置台31とタイヤ搬送装置2との間に並列設置された2列のタイヤ送給手段32A,32Bから構成されている。タイヤ置台31は、少なくとも4つのタイヤTを水平の二次元平面上で自由な方向に滑動自在に支持するものであって、水平のテーブル板31aの上に遊転球体から成る自在受け座31bを配列設置したものである。2列のタイヤ送給手段32A,32Bは互いに同一構造のものであって、タイヤ置台31側のタイヤ間歇送出手段33とタイヤ搬送装置2側のタイヤ送出用ベルトコンベヤ34から構成されている。
【0018】
タイヤ間歇送出手段33は、2つのタイヤTを直列状に支持できる全長を有すると共に、支持するタイヤTをタイヤ送出用ベルトコンベヤ34側へ重力で滑動させることが出来る傾斜フリーローラーコンベヤ35と、当該傾斜フリーローラーコンベヤ35の上側に配設された前後2つの開閉自在なタイヤストッパー36a,36bとから構成されている。両タイヤストッパー36a,36bは、共通の可動基台37の下側に左右一対の垂直支軸38a,38bによって一端が揺動自在に軸支された左右一対のアーム39a,39b、これら各アーム39a,39bの遊端下側に垂直支軸で自転可能に軸支されたストッパーローラー40a,40b、各アーム39a,39bと一体に前記垂直支軸38a,38bの周りで揺動自在なレバー41a,41b、両レバー41a,41bの遊端どうしを、これらレバー41a,41bに設けられた長孔を介して連動連結する連動垂直軸42、及び前記可動基台37に取付けられたシリンダーユニット43から構成されている。このシリンダーユニット43は、そのピストンロッド43aの先端に前記連動垂直軸42を備えており、このピストンロッド43aの出退移動により、左右一対のアーム39a,39bを左右対称に開閉運動させるものであり、前側のタイヤストッパー36aのシリンダーユニット43と後ろ側のタイヤストッパー36bのシリンダーユニット43とは、そのピストンロッド43aが互いに同心状に相対向するように前後対称に配置されている。
【0019】
前後2つのタイヤストッパー36a,36bを支持する共通の可動基台37は、タイヤ送給手段32A,32Bの上に跨って設置された固定フレーム44の下側に、当該固定フレーム44に取付けられた複数のスライドガイド45と、これらスライドガイド45に係合するように可動基台37上に敷設された左右一対のスライドガイドレール46とを介して、タイヤ送給手段32A,32Bのタイヤ送給方向前後に一定範囲内で移動自在に支持され、重力で傾斜下方(タイヤ送出用ベルトコンベヤ34のある側)へ滑動しようとする可動基台37を、当該可動基台37側に取り付けられた当接板47を介して受け止める左右一対の緩衝用スプリングユニット48が固定フレーム44側に設けられ、可動基台37は定位置に位置決めされている。タイヤ間歇送出手段33に続くタイヤ送出用ベルトコンベヤ34は、上手側のタイヤ間歇送出手段33から排出されたタイヤTを受け継いでタイヤ搬送装置2の方へ強制的に搬送するコンベヤベルト34aと、当該コンベヤベルト34aを駆動するモーター34bから構成されている。
【0020】
次にタイヤ振分け搬出装置20を、図11〜図14に基づいて説明すると、このタイヤ振分け搬出装置20は、タイヤ搬送装置2の左右両側に配設された水平搬出装置49A,49Bと、当該水平搬出装置49A,49Bに接続された持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bを備えたものであって、水平搬出装置49A,49Bは、タイヤ搬送装置2のタイヤ支持エリア21上で支持されている水平姿勢のタイヤTを当該タイヤ搬送装置2の左右両側へ交互に振り分けるように水平に送り出す、両水平搬出装置49A,49Bに共通の1つのタイヤ送出手段51と、このタイヤ送出手段51で送り出されたタイヤTを所定位置まで搬出するタイヤ搬出コンベヤ52から構成され、持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bは、水平搬出装置49A,49Bのタイヤ搬出コンベヤ52で所定位置まで搬出された水平姿勢のタイヤTを、タイヤ組付け作業高さまで上昇させると共に当該タイヤTをタイヤ搬送装置2の搬送方向下手側に向けて起こすものである。
【0021】
更に詳細構造を説明すると、両水平搬出装置49A,49Bに共通のタイヤ送出手段51は、タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送経路とその上側の車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路との間を左右横方向に横断移動自在な可動台53、この可動台53の下側にタイヤ搬送方向に直列するように夫々垂直支軸で軸支された複数のタイヤ押出し用ローラー54、及び可動台53を往復移動させるシリンダーユニット55から構成されている。可動台53は、この可動台53の両端上側に取り付けられたスライドガイド56を介して一対のスライドガイドレール57a,57bに横動自在車輪に支持されている。この一対のスライドガイドレール57a,57bは、タイヤ搬送装置2の左右両側に当該タイヤ搬送装置2と平行に架設された支持フレーム58a,58b間に、タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送経路上を横断するように架設された一対のレール支持フレーム59a,59bの下側に取り付けられている。シリンダーユニット55は、片側のレール支持フレーム59aの側部に取り付けられ、そのピストンロッド55aの先端が、可動台53の一端部から連設された延出板53aの先端部に連結されている。従って、シリンダーユニット55のピストンロッド55aを出退移動させることにより、図13に示すように、可動台53のタイヤ押出し用ローラー54を、タイヤ搬送装置2の一側辺位置と他側辺位置との間で往復移動させることが出来る。
【0022】
水平搬出装置49A,49Bのタイヤ搬出コンベヤ52は、タイヤ搬送装置2に隣接する水平ローラーコンベヤ部60と、この水平ローラーコンベヤ部60に続く傾斜フリーローラーコンベヤ部61とから構成され、水平ローラーコンベヤ部60は、タイヤ搬送装置2側の端部領域に軸支された複数本のフリーローラー60aと、このフリーローラー60a群と傾斜フリーローラーコンベヤ部61との間に軸支され且つモーター60bによって駆動される複数本の駆動ローラー60cとで構成され、傾斜フリーローラーコンベヤ部61は、架台62上に設置された3つのローラー群61a〜61cで構成されている。
【0023】
持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bは、昇降体63、この昇降体63を昇降駆動する昇降駆動手段64、昇降体63に設けられたタイヤ支持台65、及びこのタイヤ支持台65を姿勢切換えするシリンダーユニット66から構成されている。昇降体63は、前記架台62上に立設された固定フレーム67に取り付けられた一対の昇降用ガイドレール68と、昇降体63に取り付けられ且つ一対の昇降用ガイドレール68に係合するスライドガイド69を介して垂直昇降自在に支持されている。昇降駆動手段64は、架台62及び固定フレーム67に垂直に取り付けられたシリンダーユニット70、このシリンダーユニット70のピストンロッド70aの先端に軸支された歯輪71、固定フレーム67の上端近傍位置に軸支された位置固定歯輪72、及び一端が固定フレーム67の上端に係止されると共に他端が昇降体63の上端に係止され且つ中間が歯輪71の下側と位置固定歯輪72の上側を経由するように巻回させたチエン73から構成され、シリンダーユニット70のピストンロッド70aにより歯輪71を、図13の仮想線で示す下降限と実線で示す上昇限との間で昇降させることにより、昇降体63が歯輪71の昇降量の2倍の距離だけ逆方向に昇降するように構成している。
【0024】
昇降体63に設けられたタイヤ支持台65は、平面視において、昇降体63からタイヤ搬出コンベヤ52における傾斜フリーローラーコンベヤ部61の横側方位置に向かって片持ち状で水平に突出する回転軸74、この回転軸74から傾斜フリーローラーコンベヤ部61のローラー群61a〜61cの間の空隙部内に向かって片持ち状で水平に延出する一対のタイヤ支持アーム75、及び両タイヤ支持アーム75の基端部に垂直向きに固着されたタイヤ受け板76から構成されている。このタイヤ支持台65を姿勢切換えするシリンダーユニット66は、昇降体63の背面側に垂直縦向きに軸支され、下向きに延出するそのピストンロッド66aの先端は、前記回転軸74の基端部に取り付けられたレバー74aの遊端に軸支連結されている。而して、図14に実線で示すように、ピストンロッド66aによりレバー74aを下降限まで揺動させたとき、当該レバー74aの揺動に連動して回転する回転軸74によって一対のタイヤ支持アーム75が水平姿勢となり、図14に仮想線で示すように、ピストンロッド66aによりレバー74aを上昇限まで揺動させたとき、当該レバー74aの揺動に連動して回転する回転軸74によって一対のタイヤ支持アーム75が、タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送方向に向かって起こされ、斜め上向きの起立姿勢となるように構成されている。
【0025】
以上のように構成された本発明のタイヤ組付け用搬送設備の使用方法と作用について説明すると、車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路中に設定された車体周囲に対する作業エリア3及びこれに続くタイヤ組付け作業エリア4では、搬送用走行体7は一定微速で連続走行するように制御される。一方、タイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16は、そのタイヤ支持エリア21で支持されたタイヤTが、前記車体周囲に対する作業エリア3及びこれに続くタイヤ組付け作業エリア4において一定微速で連続走行する搬送用走行体7と同一速度で同一方向に移動するように、車体吊下げ搬送装置1と同期運転される。このとき、スラットコンベヤ16上の各タイヤ支持エリア21は、前記搬送用走行体7のハンガー6に支持された各車体Bの真下に位置すると共に、スラットコンベヤ16上の各作業者搭乗エリア22は、前後に隣り合う車体B間の真下に位置する状態で、車体吊下げ搬送装置1の搬送用走行体7とタイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16とが同期運転される。
【0026】
車体Bに組み付けられるタイヤTは、タイヤ搬入装置19によってタイヤ搬送装置2の始端部に供給される。即ち、図8に示すように、タイヤ搬入装置19のタイヤ置台31上に1台の車体Bに必要な4つのタイヤTが載置され、このタイヤ置台31上の各タイヤTが作業者の手作業により2列のタイヤ送給手段32A,32Bの各傾斜フリーローラーコンベヤ35上に送出される。このとき各タイヤ送給手段32A,32Bのタイヤ間歇送出手段33における前後2つのタイヤストッパー36a,36bを、図10の片側のタイヤ送給手段32Aで示すように、後ろ側のストッパーローラー40a,40bが開き、前側のストッパーローラー40a,40bが閉じた状態で待機させておくことにより、各傾斜フリーローラーコンベヤ35上に送出されて傾斜下方に滑動するタイヤTは、タイヤストッパー36a,36bの開いている後ろ側のストッパーローラー40a,40bの位置を通過した後、閉じている前側のストッパーローラー40a,40bによって受け止められることになる。
【0027】
タイヤストッパー36aは、シリンダーユニット43のピストンロッド43aを進出移動させることにより、レバー41a,41bを介して左右一対のアーム39a,39bが垂直支軸38a,38bの周りで互いに接近する閉動方向に揺動し、左右一対のストッパーローラー40a,40b間の間隔が狭められ、タイヤTを制止する閉じ姿勢に切り換わり、反対にシリンダーユニット43のピストンロッド43aを退入移動させることにより、左右一対のアーム39a,39bが垂直支軸38a,38bの周りで互いに離間する開動方向に揺動し、左右一対のストッパーローラー40a,40b間の間隔が広げられ、タイヤTの通過を許す開き状態に切り換わる。タイヤストッパー36bは、シリンダーユニット43のピストンロッド43aの出退移動方向と左右一対のアーム39a,39bの開閉運動方向とが、タイヤストッパー36aと正反対になる。
【0028】
上記のように、2列のタイヤ送給手段32A,32Bの各傾斜フリーローラーコンベヤ35上に送出されたタイヤTを、その前側の閉じ姿勢にあるストッパーローラー40a,40bで受け止めさせたならば、続いて各傾斜フリーローラーコンベヤ35上にタイヤTを送出し、前側の閉じ姿勢にあるストッパーローラー40a,40bで受け止められた先行タイヤTの後ろ側に連なる状態で制止させる。このように2列のタイヤ送給手段32A,32Bの各傾斜フリーローラーコンベヤ35上に2つのタイヤTを夫々直列状に制止させた状態から、図10の片側のタイヤ送給手段32Aで示すように、両タイヤ送給手段32A,32Bの前側の閉じ姿勢にあるストッパーローラー40a,40bを開き姿勢に切り換えると共に後ろ側のストッパーローラー40a,40bを閉じ姿勢に切り換える。この結果、先頭の左右2つのタイヤTが同時にタイヤ送出用ベルトコンベヤ34上に重力で滑動排出されるが、後続の左右2つのタイヤTは、閉じ姿勢に切り換わった後ろ側のストッパーローラー40a,40bによって受け止められる。2列のタイヤ送給手段32A,32Bの各タイヤ送出用ベルトコンベヤ34上に乗り移ったタイヤTは、当該タイヤ送出用ベルトコンベヤ34のコンベヤベルト34aがモーター34bによって駆動されることによりタイヤ搬送装置2の方へ搬送されるが、ここでコンベヤベルト34aの駆動制御により、図8に示すように、各タイヤ送出用ベルトコンベヤ34の前端所定位置PでタイヤTを自動停止させることが出来る。
【0029】
一方、タイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16は先に説明したように一定微速で駆動されているので、1つのタイヤ支持エリア21のタイヤ搬送方向に直列する4つのタイヤ支持部21a〜21dの内、前半2つのタイヤ支持部21a,21bがタイヤ送給手段32A,32Bの並列する2つのタイヤ送出用ベルトコンベヤ34の出口に隣接したとき、当該2つのタイヤ送出用ベルトコンベヤ34のコンベヤベルト34aをモーター34bによって駆動することにより、各タイヤ送出用ベルトコンベヤ34の前端位置で待機していた左右2つのタイヤTを同時にタイヤ搬送装置2側へ送り出し、タイヤ支持エリア21の前半2つのタイヤ支持部21a,21b上に移載することが出来る。
【0030】
各タイヤ送出用ベルトコンベヤ34からタイヤTがタイヤ搬送装置2側へ排出されたならば、両タイヤ送給手段32A,32Bのタイヤ間歇送出手段33における傾斜フリーローラーコンベヤ35の前端位置で前側のタイヤストッパー36aのストッパーローラー40a,40bによって受け止められていた左右2つのタイヤTを、当該タイヤストッパー36aのストッパーローラー40a,40bを開き姿勢に切り換えて両タイヤ送出用ベルトコンベヤ34上に排出させることと、両タイヤ送出用ベルトコンベヤ34の駆動とにより、両タイヤ送出用ベルトコンベヤ34の前端定位置Pまで搬送する。そして、一定微速で移動しているスラットコンベヤ16上のタイヤ支持エリア21の後半2つのタイヤ支持部21c,21dが両タイヤ送出用ベルトコンベヤ34の前端に隣接する位置に達したとき、上記のように両タイヤ送出用ベルトコンベヤ34により、これら両タイヤ送出用ベルトコンベヤ34の前端定位置Pで待機していた左右2つのタイヤTを、スラットコンベヤ16上のタイヤ支持エリア21の後半2つのタイヤ支持部21c,21d上に同時に移載することが出来る。
【0031】
尚、タイヤ搬入装置19におけるタイヤ送給手段32A,32Bのタイヤ間歇送出手段33の傾斜フリーローラーコンベヤ35上からタイヤ送出用ベルトコンベヤ34上へ先頭の左右2つのタイヤTが排出されたならば、両タイヤ間歇送出手段33の前側のタイヤストッパー36aのストッパーローラー40a,40bを閉じ姿勢に切り換えると共に、後ろ側のタイヤストッパー36bのストッパーローラー40a,40bを開き姿勢に切り換え、後ろ側のタイヤストッパー36bのストッパーローラー40a,40bで受け止められていた左右2つのタイヤTを傾斜フリーローラーコンベヤ35上で前側のタイヤストッパー36aまで重力で滑動させ、閉じ姿勢の前側のタイヤストッパー36aのストッパーローラー40a,40bで制止させる。この状態で、各傾斜フリーローラーコンベヤ35上へタイヤ置台31上からタイヤTを送り込み、再び、両タイヤ送給手段32A,32Bのタイヤ間歇送出手段33の傾斜フリーローラーコンベヤ35上に夫々2つのタイヤTを直列状に停止待機させることが出来る。
【0032】
尚、各タイヤ送給手段32A,32Bにおいて、傾斜フリーローラーコンベヤ35上を重力で傾斜下方へ滑動するタイヤTが各タイヤ間歇送出手段33のタイヤストッパー36a,36bで受け止められるとき、これらタイヤストッパー36a,36bには、傾斜フリーローラーコンベヤ35の傾斜下方に向かって大きな衝撃が作用することになる。しかしながら、これら前後2つのタイヤストッパー36a,36bが取り付けられている可動基台37は、固定フレーム44に対しスライドガイドレール46に沿って傾斜フリーローラーコンベヤ35と平行な傾斜経路上を前後移動可能な状態で支持され、図10に示すように、可動基台37側の当接板47が固定フレーム44側の緩衝用スプリングユニット48によって受け止められることにより定位置に位置決めされているから、タイヤストッパー36a,36bが傾斜下方へ滑動するタイヤTを受け止めた時の衝撃は、これらタイヤストッパー36a,36bを備えた可動基台37の傾斜下方への若干の移動を伴って、当該可動基台37から当接板47を介して緩衝用スプリングユニット48によって吸収される構成となっている。
【0033】
以上のようにして、タイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16上における各タイヤ支持エリア21には、その直列する4つのタイヤ支持部21a〜21dの全てにタイヤ搬入装置19からタイヤTを2回に分けて送給することが出来る。而して、このスラットコンベヤ16上における各タイヤ支持エリア21は、車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路中に設定された作業エリア3の下側を一定微速で移動することになる。一方、車体吊下げ搬送装置1の各搬送用走行体7は、ハンガー6に車体Bを支持した状態で高レベル搬送経路部10から下り傾斜経路部11を経由して低レベル搬送経路部12に進入し、吊下げ搬送している車体Bがタイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16上に接近する状態で、当該低レベル搬送経路部12内の作業エリア3を一定微速で移動するが、先に説明したように、車体吊下げ搬送装置1の搬送用走行体7とタイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16上の各タイヤ支持エリア21とは、先に説明したような相対位置関係を保って同一方向に同一速度で移動するように同期運転されているので、作業エリア3では、車体吊下げ搬送装置2が搬送する各車体Bとタイヤ搬送装置2が搬送する直列状態の4つのタイヤTとが、これら4つのタイヤTが各車体Bの下側に隠れるようにして同期して一定微速で移動することになる。
【0034】
従って、作業エリア3内を移動する車体Bに対して各種作業を行う作業者は、タイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16の左右両側のピットカバー用床材30及び床面29上を歩行しながら車体Bの左右両側に対する作業を行うことが出来、当該車体Bの前後両側に対する作業は、前後に隣り合う車体B間に位置する、タイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16における作業者搭乗エリア22上に立ち入って、搬送される車体Bと同期移動している当該作業者搭乗エリア22のスラット板26の作業者搭乗面26a上で安全に作業を行うことが出来る。
【0035】
車体Bを吊下げ搬送する搬送用走行体7は、作業エリア3内を通過した後、低レベル搬送経路部12から上り傾斜経路部13を経由して中レベル搬送経路部14内に移行し、当該中レベル搬送経路部14の始端部に設定されたタイヤ組付け作業エリア4を走行することになる。一方、タイヤ搬送装置2のスラットコンベヤ16上の各タイヤ支持エリア21上で直列支持されている4つのタイヤTは、その上側に位置する車体Bと同期しながら作業エリア3からタイヤ組付け作業エリア4に向かって移動し、タイヤ組付け作業エリア4に併設されているタイヤ振分け搬出装置20に到着する。
【0036】
スラットコンベヤ16上の各タイヤ支持エリア21内の直列する4つのタイヤ支持部21a〜21dには、先頭から右側前輪用タイヤ、左側前輪用タイヤ、右側後輪用タイヤ、及び左側後輪用タイヤの順に並ぶように、タイヤTがタイヤ搬入装置19によって搬入されているものと仮定する。而して、先頭のタイヤ支持部21aに支持されている右側前輪のタイヤTがタイヤ振分け搬出装置20に到着するとき、図11〜図13に示すように、水平搬出装置49A,49Bに共通のタイヤ送出手段51の可動台53が、タイヤ搬送装置2の左側で待機しているので、先頭のタイヤ支持部21aがタイヤ送出手段51の位置に到着したとき、シリンダーユニット55のピストンロッド55aの進出限位置までの進出移動により可動台53を左側待機位置から右側へ横動させ、当該可動台53が備えるタイヤ押出し用ローラー54により、スラットコンベヤ16上のタイヤ支持エリア21内の先頭のタイヤ支持部21aに支持されているタイヤTを右方向に押し出す。
【0037】
この結果、当該タイヤTは、タイヤ支持部21a上から右側の水平搬出装置49Aのタイヤ搬出コンベヤ52における水平ローラーコンベヤ部60上に押し出され、当該水平ローラーコンベヤ部60のフリーローラー60a上を経由して、モーター60bで駆動されている駆動ローラー60c上に押し出されるので、この後当該タイヤTは、駆動ローラー60cによって次段の傾斜フリーローラーコンベヤ部61上に送り出され、この傾斜フリーローラーコンベヤ部61上を重力で傾斜下方に滑動する。このとき、右側の持上げ及び姿勢変更装置50Aの昇降体63は、図13に実線で示すように下降限位置で待機しており、当該昇降体63が備えるタイヤ支持台65の並列する2つのタイヤ支持アーム75は、傾斜フリーローラーコンベヤ部61の並列する3つのローラー群61a〜61cの間で当該ローラー群61a〜61cのタイヤ支持位置より低い位置にある。従って、傾斜フリーローラーコンベヤ部61上を重力で傾斜下方に滑動してきたタイヤTは、下降限位置で待機している昇降体63で受け止められ、このタイヤTの下側に前記タイヤ支持台65の並列する2つのタイヤ支持アーム75が位置している。尚、タイヤTは、昇降体63で直接受け止められるようにしても良いが、図示のように、当該昇降体63の傾斜フリーローラーコンベヤ部61に面する側に付設された緩衝部材63aで受け止められるように構成することが出来る。
【0038】
タイヤTを右側の水平搬出装置49Aにおけるタイヤ搬出コンベヤ52上に押し出したタイヤ送出手段51の可動台53は、図12及び図13に仮想線で示すように、シリンダーユニット55のピストンロッド55aが進出限位置に達した右側への押し出し完了位置、即ち、当該可動台53が備えるタイヤ押出し用ローラー54がスラットコンベヤ16の右側に少し出た位置で、そのまま待機する。そして、スラットコンベヤ16側の空になった先頭のタイヤ支持部21aの次のタイヤ支持部21bがタイヤ送出手段51の位置に到着したとき、シリンダーユニット55のピストンロッド55aが進出限位置から元の退入限位置に引き戻される。この結果、2番目のタイヤ支持部21b上で支持されていたタイヤTは、可動台53のタイヤ押出し用ローラー54により左側の水平搬出装置49Bのタイヤ搬出コンベヤ52へ押し出される。この左側の水平搬出装置49Bのタイヤ搬出コンベヤ52へ押し出されたタイヤTは、当該タイヤ搬出コンベヤ52の水平ローラーコンベヤ部60と傾斜フリーローラーコンベヤ部61とを経由して、当該傾斜フリーローラーコンベヤ部61の傾斜下方の終端位置で、左側の持上げ及び姿勢変更装置50Bの下降限位置で待機する昇降体63で受け止められる。即ち、水平搬出装置49A,49Bに共通のタイヤ送出手段51は、その1つの可動台53の一往復移動により、スラットコンベヤ16側の前後2つのタイヤ支持部21a,21b上のタイヤTを左右両側の水平搬出装置49A,49Bのタイヤ搬出コンベヤ52上へ順次振り分けることが出来る。
【0039】
左右各水平搬出装置49A,49Bのタイヤ搬出コンベヤ52の傾斜下方の終端位置に振り分け搬出された各タイヤTは、左右各持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bによって、タイヤ組付け作業高さまで持ち上げられると共に、タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送方向(車体吊下げ搬送装置1の車体搬送方向)に向かって所定角度まで起こされる。具体的に説明すると、昇降体63の昇降駆動手段64は、そのシリンダーユニット70のピストンロッド70aが図13に実線で示す進出限位置にあるとき、昇降体63を吊り下げるチエン73が最も弛められて昇降体63が前記下降限位置まで下された状態にあるが、タイヤTが傾斜フリーローラーコンベヤ部61の傾斜下方の終端位置に達した後、前記ピストンロッド70aを退入移動させ、その先端の歯輪71を下降させてチエン73の位置固定歯輪72と固定端との間の部分を引き下ろすことにより、下降限位置で待機していた昇降体63を、図13の仮想線及び図14の実線で示す上昇限位置まで上昇させることが出来る。
【0040】
昇降体63が下降限位置から上昇することにより、傾斜フリーローラーコンベヤ部61の傾斜下方の終端位置で当該昇降体63に受け止められていたタイヤTは、当該傾斜フリーローラーコンベヤ部61のローラー群61a〜61c間から上昇する2本の並列するタイヤ支持アーム75によって傾斜フリーローラーコンベヤ部61から持ち上げられる。昇降体63が上昇限位置に達して停止した後、又は昇降体63が上昇限位置に達する前に、シリンダーユニット66のピストンロッド66aを下向きに進出移動させて、レバー74aを所定角度下方に揺動させると、当該レバー74aと回転軸74を介して一体のタイヤ支持アーム75が、当該回転軸74の周りに昇降体64に対して所定角度上向きに回転することになり、シリンダーユニット66のピストンロッド66aが進出限位置に達したとき、タイヤ支持アーム75で支持されていたタイヤTが、タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送方向(車体吊下げ搬送装置1の車体搬送方向)に向かって所定角度まで起こされることになる。このとき、重力でタイヤ支持アーム75上を回転軸74のある側に滑動するタイヤTは、タイヤ受け板76で受け止められるが、このタイヤ受け板76には、受け止めるタイヤTを位置決めする一対のストッパー部材76a,76bを付設しておくことが出来る。
【0041】
上記のようにしてタイヤ振分け搬出装置20の左右各水平搬出装置49A,49Bと左右各持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bによって、タイヤ組付け作業高さまで持ち上げられると共に、タイヤ搬送装置2のタイヤ搬送方向(車体吊下げ搬送装置1の車体搬送方向)に向かって所定角度まで起こされたタイヤTは、タイヤ組付け作業エリア4における車体吊下げ搬送装置1の車体搬送経路の左右両側において、夫々作業者により昇降体63のタイヤ支持台65上から取り上げられ、そのタイヤ取り上げ作業位置の真横に位置するタイヤ搬送装置2の中レベル搬送経路部14において吊下げ搬送されている車体Bの前側車軸の左右両端に対する組付け作業が夫々行われる。昇降体63のタイヤ支持台65上からタイヤTが取り上げられた後は、昇降駆動手段64のシリンダーユニット70のピストンロッド70aが元の進出限位置まで進出し、チエン73が弛められて昇降体63(タイヤ支持台65)が元の下降限位置まで下される。この結果、タイヤ支持アーム75は、傾斜フリーローラーコンベヤ部61のタイヤ支持位置より下側に入り込んで、次の作用に備えることになる。尚、昇降駆動手段64におけるピストンロッド70aの出退移動量、即ち、歯輪71の昇降距離は、当該歯輪71が動滑車として作用するので、昇降体63の下降限位置と上昇限位置との間の昇降距離の半分になる。
【0042】
以上のようにして、車体吊下げ搬送装置1で搬送される車体Bの前側車軸の左右両端に対するタイヤ組付け作業が行われるが、タイヤ搬送装置2側では、タイヤ支持エリア21の先頭のタイヤ支持部21aと2番目のタイヤ支持部21bからのタイヤTの振り分けが終わった後、3番目のタイヤ支持部21cと最後のタイヤ支持部21dが順次タイヤ振分け搬出装置20に到着するので、上記の先頭のタイヤ支持部21aと2番目のタイヤ支持部21bからのタイヤTの順次振り分け搬出作用と同一の作用が、タイヤ振分け搬出装置20の左右両側の水平搬出装置49A,49Bと持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bによって行われる。従って、車体Bの前側車軸の左右両端に対するタイヤ組付け作業を終えた作業者又は後ろ側タイヤ組付け担当の別の作業者は、次にタイヤ振分け搬出装置20の持上げ及び姿勢変更装置50A,50Bによって持ち上げられ且つ姿勢が起こされたタイヤTを、前側車軸の左右両端にタイヤTが組付けられた車体Bの後ろ側車軸の左右両端に組み付ける作業を行うことが出来る。
【0043】
4つ全てのタイヤTを下して空になったタイヤ支持エリア21と作業者搭乗エリア22は、スラットコンベヤ16の一定微速の回動により、タイヤ搬送経路の下側の戻り経路を経由してタイヤ搬送経路の始端位置に戻され、再びタイヤ搬入装置19においてタイヤ支持エリア21の直列する4つのタイヤ支持部21a〜21d上に4つのタイヤTが順次搬入される。
【0044】
尚、タイヤ振分け搬出装置20における水平搬出装置49A,49Bのタイヤ送出手段51を、車体搬送経路の右側にタイヤTを搬出する水平搬出装置49AにタイヤTを送出する右向きタイヤ送出手段と、車体搬送経路の左側にタイヤTを搬出する水平搬出装置49BにタイヤTを送出する左向きタイヤ送出手段とに分けて構成することも可能である。このようにタイヤ送出手段51を構成するときは、車体搬送経路の下側に、右側タイヤを搬送するコンベヤと左側タイヤを搬送するコンベヤとを並設してタイヤ搬送装置2を構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のタイヤ組付け用搬送設備は、自動車組立てラインで吊下げ搬送される車体に対するタイヤ組付け作業を、当該車体の搬送経路の左右両側で行う場合のタイヤ搬送設備として効果的に活用出来る。
【符号の説明】
【0046】
1 車体吊下げ搬送装置
2 タイヤ搬送装置
3 車体周囲に対する作業エリア
4 タイヤ組付け作業エリア
5 ガイドレール
6 ハンガー
7 搬送用走行体
16 スラットコンベヤ
19 タイヤ搬入装置
20 タイヤ振分け搬出装置
21 タイヤ支持エリア
21a〜21d タイヤ支持部
22 作業者搭乗エリア
23a〜23c,25,26 スラット板
24 タイヤ支持用ローラー
31 タイヤ置台
32A,32B タイヤ送給手段
33 タイヤ間歇送出手段
34 タイヤ送出用ベルトコンベヤ
35 傾斜フリーローラーコンベヤ
36a,36b タイヤストッパー
37 基台
39a,39b アーム
40a,40b ストッパーローラー
43,55,66,70 シリンダーユニット
44,67 固定フレーム
45,56,69 スライドガイド
46,57a,57b スライドガイドレール
48 緩衝用スプリングユニット
49A,49B 水平搬出装置
50A,50B 持上げ及び姿勢変更装置
51 タイヤ送出手段
52 タイヤ搬出コンベヤ
53 可動台
54 タイヤ押出し用ローラー
60 水平ローラーコンベヤ部
60a フリーローラー
60c 駆動ローラー
61 傾斜フリーローラーコンベヤ部
61a〜61c ローラー群
63 昇降体
64 昇降駆動手段
65 タイヤ支持台
68 昇降用ガイドレール
71 歯輪
72 位置固定歯輪
73 チエン
74 回転軸
75 タイヤ支持アーム
76 タイヤ受け板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを組み付ける前の車体を吊り下げてタイヤ組付け作業エリアに搬送する車体吊下げ搬送装置と、車体に組み付けるべきタイヤを前記車体吊下げ搬送装置で搬送される車体と同期状態で前記タイヤ組付け作業エリアに搬送するタイヤ搬送装置を備えたタイヤ組付け用搬送設備において、前記タイヤ搬送装置は、前記車体吊下げ搬送装置の車体搬送経路の下側に、当該車体搬送経路と前記タイヤ搬送装置のタイヤ搬送経路とが平面視において重なるように配設されている、タイヤ組付け用搬送設備。
【請求項2】
前記タイヤ搬送装置は、全てのタイヤをタイヤ搬送経路方向に一列に直列させて支持搬送するコンベヤで構成されている、請求項1に記載のタイヤ組付け用搬送設備。
【請求項3】
前記タイヤ搬送装置は、1台の車体に組み付ける複数のタイヤ群を、前記車体吊下げ搬送装置で吊下げ搬送される各車体の下側で支持するタイヤ支持エリアと、前記車体吊下げ搬送装置で吊下げ搬送される各車体間の下側に位置する作業者搭乗エリアとが交互に設けられた1つのスラットコンベヤから構成されている、請求項1又は2に記載のタイヤ組付け用搬送設備。
【請求項4】
前記タイヤ搬送装置の作業者搭乗エリアは、このタイヤ搬送装置の両側の床面高さと同じ高さの作業者搭乗面を備え、このタイヤ搬送装置のタイヤ支持エリアは、前記作業者搭乗エリアの作業者搭乗面よりも一段低く構成されている、請求項3に記載のタイヤ組付け用搬送設備。
【請求項5】
前記タイヤ組付け作業エリアには、前記タイヤ搬送装置で搬送されてきたタイヤを前記車体吊下げ搬送装置で吊下げ搬送されてきた車体の左右両側に搬出するタイヤ振分け搬出装置が併設されている、請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ組付け用搬送設備。
【請求項6】
前記タイヤ振分け搬出装置は、左右一対の水平搬出装置と当該各水平搬出装置に接続された持上げ及び姿勢変更装置を備え、前記各水平搬出装置は、前記タイヤ搬送装置で搬送されてきた水平姿勢のタイヤを前記車体吊下げ搬送装置で吊下げ搬送されてきた車体の横側方に水平に送り出すタイヤ送出手段と、このタイヤ送出手段で送り出されたタイヤを所定位置まで搬出するタイヤ搬出コンベヤから構成され、前記持上げ及び姿勢変更装置は、前記水平搬出装置のタイヤ搬出コンベヤで所定位置まで搬出された水平姿勢のタイヤを、タイヤ組付け作業高さまで上昇させると共に当該タイヤを前記タイヤ搬送装置の搬送方向下手側に向けて起こす手段で構成されている、請求項5に記載のタイヤ組付け用搬送設備。
【請求項7】
前記タイヤ搬送装置のタイヤ送り方向上手側端部には、平面視において、前記車体吊下げ搬送装置の横側方位置から当該タイヤ搬送装置に送り込むタイヤ搬入装置が併設されている、請求項1〜6の何れか1項に記載のタイヤ組付け用搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−116386(P2012−116386A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269143(P2010−269143)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】