説明

ターボチャージャハウジングと配管との組み付け構造

【課題】ターボチャージャハウジングと配管とを一体的に組み付けるに際し、その組み付け作業の簡素化を図ることができる組み付け構造を提供する。
【解決手段】タービンハウジング23の外側ハウジング6に、排気管9のフランジ部92に当接される屈曲部65を形成し、この屈曲部65の内周端に係止部66を形成する。タービンハウジング23の内側ハウジング5の外周面に上記係止部66が係止可能な係止溝54bを形成する。係止溝54bに係止部66を挿入して内側ハウジング5と外側ハウジング6とを組み付けた状態で、外側ハウジング6の屈曲部65と排気管9のフランジ部92とをクランプ装置7によって外周側からクランプする。これにより屈曲部65が弾性変形してフランジ部92に押圧され、溶接を必要とすることなく各部をシールした状態で内側ハウジング5、外側ハウジング6、排気管9が一体的に組み付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用エンジン等に適用されるターボチャージャのハウジング(以下、ターボチャージャハウジングと呼ぶ場合もある)と配管とを一体的に組み付ける構造に係る。特に、本発明は、上記両者の組み付け作業性の改善を図るための対策に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジン等に適用されるターボチャージャ(過給機)は、タービンホイールと、コンプレッサホイール(コンプレッサインペラとも呼ばれる)とをタービンシャフト(ロータシャフトとも呼ばれる)により連結し、これらをターボチャージャハウジング内に収納した構成となっている。また、このターボチャージャハウジングは、上記タービンシャフトを回転自在に支持するセンタハウジングと、上記タービンホイールを収容するタービンハウジングと、上記コンプレッサホイールを収容するコンプレッサハウジングとが一体的に組み付けられた構成となっている。
【0003】
そして、上記タービンハウジング内に形成された排気ガス流路を通過する排気ガスの圧力を受けてタービンホイールが回転し、タービンシャフトを介してコンプレッサホイールが回転する。これにより、コンプレッサハウジング内の吸入空気流路に導入された吸入空気を過給、すなわち圧縮して吸気マニホールドに向けて吐出するようになっている。
【0004】
また、上記タービンハウジング内の排気ガス流路を通過した排気ガスは排気管を経て排出されるようになっているため、これらタービンハウジングと排気管とは排気ガスの漏れが生じないように高いシール性を確保した状態で接続しておく必要がある。そして、このタービンハウジングと排気管との接続は、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように別ピースのフランジをそれぞれ介して行われているのが一般的であった。
【0005】
上記特許文献1及び特許文献2に開示されているタービンハウジングと排気管との接続構造として具体的には、タービンハウジングを内側ハウジングと外側ハウジングとによって構成しておき、これら両ハウジングにおける排気管側(タービン出口側)の端部を互いに重ね合わせて溶接する。そして、これら内側ハウジング及び外側ハウジングのうちの一方(例えば外側ハウジング)に別ピースのフランジを溶接すると共に、排気管にも別ピースのフランジを溶接し、フランジ同士をボルト締め等の締結によって接続した構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−2791号公報
【特許文献2】特開2007−278130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述の如くタービンハウジングを構成する内側ハウジングと外側ハウジングとを互いに溶接すると共にタービンハウジングに対して排気管を別ピースの両フランジを介して接続するといった従来構造では、溶接箇所が多く、これら部材の組み付け作業性の簡素化を図るには限界があった。
【0008】
尚、上記コンプレッサハウジングと吸気管との接続も上記従来構造(タービンハウジングと排気管との接続構造)と同様に別ピースの両フランジを介した接続によって行われており、この場合においても溶接箇所が多く、これら部材の組み付け作業性の簡素化を図るには限界があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ターボチャージャハウジングと配管とを一体的に組み付けるに際し、その組み付け作業の簡素化を図ることができる組み付け構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための解決手段としては、本発明は、ターボチャージャハウジングの構成部材としての内側ハウジング及び外側ハウジングと、配管とを一体的に組み付ける組み付け構造を前提とする。そして、上記外側ハウジング及び配管に、それぞれ互いに重ね合わされるフランジ部を設ける一方、内側ハウジングに、上記外側ハウジングまたは配管のフランジ部の内周側部分を係止する係止部を設ける。また、上記外側ハウジングまたは配管のフランジ部の内周側部分が内側ハウジングの係止部に係止され、上記外側ハウジングのフランジ部と配管のフランジ部とが、これらフランジ部同士が近接する方向への押圧力を作用させる締結具によって締結されることにより、内側ハウジング及び外側ハウジングと、配管とを一体的に組み付けている。
【0011】
この特定事項により、外側ハウジング及び配管の各フランジ部同士が締結具からの押圧力によって高い接触力で接触することになり、外側ハウジングと配管との間に高いシール性が確保された状態でこれら両者が接続される。また、内側ハウジングは係止部によって外側ハウジングまたは配管に係止されているため、これらハウジング同士の組み付けまたは内側ハウジングと配管との組み付けも良好に行われている。このように、従来構造において必要とされていたターボチャージャハウジングと配管との組み付け部分における溶接作業やボルトの締結作業を必要とすることなしに十分なシール性の確保と確実な接続構造とを得ることができ、ターボチャージャハウジングと配管との組み付け作業性の改善を図ることができる。
【0012】
より具体的には、上記内側ハウジングに設けられている係止部を、この内側ハウジングの外周面が凹陥されて成る係止溝とする。また、上記外側ハウジングまたは配管のフランジ部を、板金の折り曲げ加工により形成し、締結具からの押圧力を受けることにより弾性変形して配管または外側ハウジングのフランジ部に当接する構成としている。
【0013】
この構成によれば、内側ハウジングと外側ハウジングまたは配管との係止を容易に行うことができ、これらハウジング同士の組み付け作業または内側ハウジングと配管との組み付け作業が容易である。また、外側ハウジングと配管との接続部分では、外側ハウジングまたは配管のフランジ部の弾性変形を伴って各フランジ部同士が高い接触力で接触しているため、周方向の全体に亘って高いシール性を確保することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ターボチャージャハウジングと配管との組み付け部分における溶接作業やボルトの締結作業を不要にできるため、組み付け作業性の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るターボチャージャ及び排気管を示す断面図である。
【図2】タービンハウジングと排気管との組み付け箇所を拡大して示す断面図である。
【図3】クランプ装置を示す図である。
【図4】タービンハウジングと排気管との組み付け前の状態を示す要部拡大図である。
【図5】タービンハウジングと排気管との組み付け作業において、クランプ装置の締結開始時の状態を示す要部拡大図である。
【図6】タービンハウジングと排気管との組み付け作業完了状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、自動車に搭載される可変容量型ターボチャージャにおけるタービンハウジングと排気管との組み付け構造として本発明を適用した場合について説明する。
【0017】
−ターボチャージャの全体構成−
図1は、本実施形態に係るターボチャージャ1及び排気管(配管)9を示す断面図であり、図2は、このターボチャージャ1のタービンハウジング23と排気管9との組み付け箇所を拡大して示す断面図である。
【0018】
上記ターボチャージャ1は、ターボチャージャハウジング2と、このターボチャージャハウジング2の内部に収納されたタービン3とを備えている。このタービン3は、タービンシャフト31と、このタービンシャフト31の一端側(図1における左側)に取付けられたコンプレッサホイール32と、タービンシャフト31の他端側(図1における右側)に取付けられたタービンホイール33とにより構成され、ターボチャージャハウジング2によって回転自在に支持されている。
【0019】
上記ターボチャージャハウジング2は、上記コンプレッサホイール32を収容するコンプレッサハウジング21と、上記タービンシャフト31を回転自在に支持するセンタハウジング(ベアリングハウジング)22と、タービンホイール33を収容するタービンハウジング23とが一体的に組み付けられて構成されている。つまり、中央のセンタハウジング22の両側にコンプレッサハウジング21及びタービンハウジング23がそれぞれ組み付けられた構成となっている。
【0020】
上記コンプレッサハウジング21は、中央部(軸心部分)から空気を取り入れて外周側へ放出することが可能な形状となっている。また、このコンプレッサハウジング21内に収納されているコンプレッサホイール32は、ロックナット32aによってタービンシャフト31に固定されており、このタービンシャフト31とともに一体的に回転する。コンプレッサホイール32には複数のコンプレッサブレード32b,32b,…が設けられており、コンプレッサホイール32が回転すると、このコンプレッサブレード32b,32b,…により、空気が遠心力により半径方向外側に加速されて圧縮(過給)されるようになっている。
【0021】
尚、上記コンプレッサホイール32に隣接してシールリングカラー32cが配置されている。このシールリングカラー32cは上記タービンシャフト31を取り囲む形状となっている。
【0022】
上記センタハウジング22はターボチャージャ1の軸心方向の略中央部に配設されている。このセンタハウジング22にはスラストベアリング22aが設けられている。このスラストベアリング22aは上記タービンシャフト31のスラスト方向の荷重を受け止めるためのベアリングであり、オイルなどにより潤滑される。
【0023】
上記センタハウジング22には、タービンシャフト31の回転を保持するためのフローティングベアリング22bが設けられている。このフローティングベアリング22bはタービンシャフト31のラジアル方向の荷重を保持する。フローティングベアリング22bとタービンシャフト31との間には油膜が介在しており、フローティングベアリング22bがタービンシャフト31に直接接触しないようになっている。さらに、フローティングベアリング22bとセンタハウジング22との間にも油膜が存在し、フローティングベアリング22bがセンタハウジング22と直接接触しないようになっている。このフローティングベアリング22bはリテーナリング22cにより位置決めされている。また、このセンタハウジング22の内部には、ターボチャージャ1を冷却するための冷却水が流通する冷却水通路Wが形成されている。
【0024】
上記タービンハウジング23は、例えば鋳物で成る内側ハウジング5(内側支柱部とも呼ばれる)と板金で成る外側ハウジング6(外側シェルとも呼ばれる)との2つの部材が一体的に組み付けられた構成となっている。外側ハウジング6を板金製とすることによりターボチャージャ1全体の軽量化が図られている。
【0025】
また、このタービンハウジング23は、外周側から流入した排気ガスを、中央部(軸心部分)を通過させて排気管9に排出することが可能な形状となっている。つまり、このタービンハウジング23の内部には、上記内側ハウジング5と外側ハウジング6との間に形成されるタービンハウジング渦室Xが設けられており、このタービンハウジング渦室Xに排気が供給され、この排気が、このタービンハウジング渦室Xから、タービンホイール33を収容しているタービン室Yへ導入されることによりタービンホイール33が回転するようになっている。そして、その回転力が、上記タービンシャフト31を介してコンプレッサホイール32に伝達されることで、上記吸気の過給が行われるようになっている。
【0026】
また、タービンホイール33の外周側には可変ノズルベーン機構4が配設されている。これにより、タービンホイール33が回転するに際し、可変ノズルベーン機構4の各ノズルベーン41,41,…の回動位置が調整され、その回動角度を設定することにより、タービンハウジング渦室Xからタービン室Yへ向かう排気の流量及び流速を調整することが可能となっている。これにより、過給性能を調整することが可能になり、例えば、エンジンの低回転時にノズルベーン41,41,…同士の間の流路面積(スロート面積)を減少させるように各ノズルベーン41,41,…の回動位置を調整すれば、排気ガスの流速が増加して、エンジン低速域から高い過給圧を得ることができることになる。尚、上記可変ノズルベーン機構の具体構成については周知であるため、ここでの説明は省略する。
【0027】
−タービンハウジング23と排気管9との組み付け構造−
次に、本実施形態において特徴とする構造であるタービンハウジング23と排気管9との組み付け構造について説明する。以下の説明では、図1及び図2における右側を「排気管側」または「タービン出口側」と呼び、左側を「センタハウジング側」と呼ぶこととする。
【0028】
(内側ハウジング5)
図2に示すように、上記タービンハウジング23を構成している内側ハウジング5は、この内側ハウジング5の外周側部分であって半径方向に延びる外周部51と、この外周部51の半径方向内側端部から排気管側(タービン出口側)に向かって延びる外側筒部52と、この外側筒部52の排気管側の端部から半径方向内側に向かって延びる内周部53と、この内周部53の半径方向内側端部から排気管側に向かって延びる内側筒部54とを備えている。
【0029】
上記外周部51の外周面51aは、外側ハウジング6の外周端を溶接により固定するための固定面として利用されている。
【0030】
また、上記外側筒部52の一部には半径方向に延びる貫通孔52aが形成されており、この貫通孔52aによって上記タービンハウジング渦室Xとタービン室Yとが連通されている。つまり、タービンハウジング渦室Xに流れ込んだ排気ガスを、この貫通孔52aからタービン室Yに導入するようになっている。
【0031】
上記内周部53は、上記外側筒部52と共に上記可変ノズルベーン機構4の収容空間及びタービン室Yを形成している。
【0032】
上記内側筒部54は、外径寸法が排気管9の外径寸法よりも僅かに小さく(小径に)設定されていると共に、内径寸法は排気管9の内径寸法に略一致している。
【0033】
また、この内側筒部54の特徴とする構成として、その外周面54aの先端部(排気管側の先端部)近傍であって、この先端部から所定寸法だけ後退した位置(センタハウジング側に後退した位置)には、その周方向に亘って連続した係止溝54bが形成されている。この係止溝54bの深さ寸法は、内側筒部54の剛性を十分に確保できる寸法として設定されており、例えば、内側筒部54の板厚寸法に対して1/2程度に設定されている。また、この係止溝54bの長さ寸法(内側筒部54の軸線に沿う方向の寸法)は、この内側筒部54の長さ寸法に対して1/4程度に設定されている。尚、この長さ寸法は、後述する外側ハウジング6に形成されている係止部66が嵌り込むことが可能な寸法として設定されている。この係止溝54bが本発明でいう内側ハウジング5の係止部に相当している。
【0034】
(外側ハウジング6)
一方、上記タービンハウジング23を構成しているもう一つの部材である外側ハウジング6は、金属製板材のプレス加工によって成形されている。具体的に、この外側ハウジング6の構成としては、この外側ハウジング6の外周側部分であってタービンハウジング23の軸線に沿って(図2の左右方向に)延びる外側筒部61と、この外側筒部61の排気管側の端部に連続し且つ排気管側に向かって膨出するように湾曲形成された湾曲部62と、この湾曲部62のセンタハウジング側の端部に連続し半径方向内側に向かって延びる内周部63と、この内周部63の半径方向内側端部から排気管側に向かって延びる内側筒部64とを備えている。
【0035】
外側ハウジング6の外側筒部61は、そのセンタハウジング側の端部が上記内側ハウジング5における外周部51の外周面51aに溶接により固定されている。これにより、内側ハウジング5と外側ハウジング6との外周部が一体的に接合されている。
【0036】
また、この外側ハウジング6の外側筒部61及び湾曲部62は、上記内側ハウジング5の外周部51及び外側筒部52との間に周方向に亘る空間を形成しており、この空間が上記タービンハウジング渦室Xとなっている。
【0037】
外側ハウジング6の内周部63は、上記内側ハウジング5の内周部53に対してその排気管側の側面に重ね合わされるか、または、僅かな寸法を存して対向するように配置されている。尚、この外側ハウジング6の内周部63と内側ハウジング5の内周部53とは接合されていない。
【0038】
また、外側ハウジング6の内側筒部64は、上記内側ハウジング5の内側筒部54の外周面54aに重ね合わされるように位置されている。
【0039】
そして、この外側ハウジング6の内側筒部64の特徴とする構成として、上記内側ハウジング5に形成されている係止溝54bに対向する位置には、屈曲部65及び係止部66が連続して形成されている。以下、これら屈曲部65及び係止部66の構成について説明する。
【0040】
上記屈曲部65は、内側筒部64の一部が外周側に向けて折り曲げられた第1フランジ部65aと、この第1フランジ部65aの外周端から排気管側に折り曲げられた比較的小寸法の(内側筒部64の軸線に沿う方向の寸法が比較的小寸法に設定された)水平部65bと、この水平部65bの排気管側端部から内周側に向けて折り曲げられた第2フランジ部65cとにより形成されている。上記水平部65bが設けられたことで第1フランジ部65aと第2フランジ部65cとの間に僅かな空間が形成されており、これにより屈曲部65は、外力(内側筒部64の軸線に沿う方向の外力)が作用した際に、第1フランジ部65aと第2フランジ部65cとの間隔寸法を変化させながら弾性変形(屈曲部65の全体が内側筒部64の軸線に沿って倒れ込むような弾性変形)が可能となっている。この屈曲部65が本発明でいう外側ハウジング6のフランジ部に相当している。
【0041】
一方、上記屈曲部65に連続形成される上記係止部66は、上記屈曲部65の第2フランジ部65cが上記係止溝54bの内部にまで内周側に向けて延長され且つ排気管側に折り曲げられた形状となっている。この係止部66の長さ寸法は、上記内側ハウジング5の係止溝54bの長さ寸法よりも短く設定されており、この係止部66の全体が係止溝54bの内部に嵌り込むことが可能となっている。また、この係止部66における排気管側の先端は、後述するクランプ装置(締結具)7からの押圧力を受けて上記係止溝54bの縦壁54c(排気管側に位置する縦壁)に押圧されている。このクランプ装置7により発生する押圧力については後述する。
【0042】
(排気管9)
一方、上述の如く構成されたタービンハウジング23に組み付けられる排気管9は、その先端部(タービンハウジング23に組み付けられた状態でのセンタハウジング側の先端部)の形状に特徴がある。以下、具体的に説明する。
【0043】
この排気管9の先端部には、上記内側ハウジング5に形成されている内側筒部54の先端部分(排気管側の先端部分)が挿入される溝部91と、タービンハウジング23に組み付けられた状態で上記外側ハウジング6の屈曲部65が当接するフランジ部92とが形成されている。
【0044】
上記溝部91は、排気管9の内径寸法が先端部分においてのみ大径とされることによって形成されている。この先端部分における内径の拡大寸法(溝部91の半径方向の深さ寸法)は上記内側ハウジング5の内側筒部54の板厚寸法に略一致している。また、この溝部91の長さ寸法(排気管9の軸線に沿う方向の寸法)は、この溝部91の縦壁91aに上記内側ハウジング5の内側筒部54の先端(排気管側の先端)が当接した状態で、且つ上記外側ハウジング6の屈曲部65に外力が作用していない状態(図5に示す状態を参照)において、この屈曲部65と上記フランジ部92との間に僅かな隙間が生じる程度の寸法に設定されている。
【0045】
一方、排気管9のフランジ部92は、断面が略台形状の突起として形成されている。具体的には、センタハウジング側に面する壁面であって排気管9の軸心に対して直交する方向に延びる当接面92aと、この当接面92aの外周端から排気管9の軸心に沿う方向に延びる比較的小寸法の水平面92bと、この水平面92bの端部から内周側に向かって延びる傾斜面92cとを有している。この傾斜面92cは外周端から内周端に向かって排気管9の基端部側(排気流れ方向の下流側:図2における右側)に傾斜するテーパ面として形成されている。
【0046】
(クランプ装置7)
次に、上述の如く構成された内側ハウジング5、外側ハウジング6及び排気管9を一体的に組み付けるためのクランプ装置7について説明する。図3は、このクランプ装置7の正面図(タービンハウジング23と排気管9とを組み付けた場合に、タービンハウジング23の軸線に沿った方向から見た図)である。
【0047】
この図3に示すように、クランプ装置7は、VクランプまたはVバンドとも呼ばれ、金属製で略半円弧状に形成された一対のクランプ材71,72がボルトB及びナットNによって一体的に組み付けられた構成となっている。具体的に、各クランプ材71,72は、その周方向の両端部にフランジ71a,71a、72a,72aがそれぞれ形成されており、これらフランジ71a,71a、72a,72aには板厚方向に貫通するボルト孔が形成されている。そして、各フランジ71a,72a同士を重ね合わせると共にそれぞれのボルト孔を位置合わせしてボルトBを挿入し、このボルトBをナットNにねじ込むことによって各クランプ材71,72同士を接近させて所定の締結力を得る構成となっている。
【0048】
また、これらクランプ材71,72の断面形状としては、図1及び図2に示すように、上記外側ハウジング6の内側筒部64に形成されている屈曲部65及び上記排気管9に形成されているフランジ部92を共に嵌め込み可能な凹部を内周側に設けた構成となっている。具体的には、図1に示すように、内周側に向かって外側に拡がるように傾斜された各側壁71b,71b、72b,72bと、これら側壁71b,71b、72b,72bの外周端同士を連結する連結部71c,72cとを備えた形状となっている。各側壁71b,71b、72b,72bの内面の傾斜角度は、上記排気管9に形成されているフランジ部92の傾斜面92cの傾斜角度に略一致するように設定されている。
【0049】
−タービンハウジング23と排気管9との組み付け作業−
次に、上述の如く構成されたタービンハウジング23と排気管9とをクランプ装置7によって一体的に組み付けるための組み付け作業について図4〜図6に沿って説明する。
【0050】
先ず、図4に示すように、内側ハウジング5に対して、その排気管側から外側ハウジング6を重ね合わせる。具体的には、内側ハウジング5の外周部51の外周面51aに対して外側ハウジング6の外側筒部61の外周端を重ね合わせる。また、内側ハウジング5の内周部53に対してその排気管側の側面に外側ハウジング6の内周部63を重ね合わせる。更に、内側ハウジング5の内側筒部54の外周面54aに対して外側ハウジング6の内側筒部64を重ね合わせる。
【0051】
また、このように内側ハウジング5の内側筒部54の外周面54aに対して外側ハウジング6の内側筒部64を重ね合わせる際、外側ハウジング6に形成されている係止部66の全体を内側ハウジング5の係止溝54bの内部に嵌め込んでおく(図5の嵌め込み状態を参照)。
【0052】
次に、図5に示すように、内側ハウジング5の外周部51の外周面51aに対して外側ハウジング6の外側筒部61の外周端を溶接により接合する。
【0053】
また、内側ハウジング5に対して排気管9を嵌め合わせる。この排気管9の嵌め合わせ作業としては、排気管9に形成されている上記溝部91内に、内側ハウジング5に形成されている内側筒部54の先端部分(排気管側の先端部分)を挿入する。この際、溝部91の縦壁91aに内側ハウジング5の内側筒部54の先端が当接する位置まで内側ハウジング5を挿入する。この状態では、上記外側ハウジング6の屈曲部65には外力が作用しておらず、この屈曲部65と排気管9のフランジ部92との間に僅かな隙間が生じている。
【0054】
この状態で、上記外側ハウジング6の屈曲部65及び排気管9のフランジ部92の外周側にクランプ装置7を装着する。
【0055】
このクランプ装置7のボルトBをナットNにねじ込んでいき(図3を参照)、各クランプ材71,72同士を接近させていくと、上記外側ハウジング6の屈曲部65及び排気管9のフランジ部92に対して内周側に向かう押圧力が作用する(図5に示す矢印αを参照)。また、上述した如く、各クランプ材71,72の各側壁71b,71b、72b,72bの内面は傾斜面となっているため、各クランプ材71,72が外側ハウジング6の屈曲部65及び排気管9のフランジ部92に対して内周側に向かう押圧力を作用させるのに伴って、これら屈曲部65及びフランジ部92は、クランプ材71,72の各側壁71b,71b、72b,72bから軸心に沿う方向(図5における左右方向)内向きの押圧力を受けることになる(図5に示す矢印βを参照)。これにより、上記屈曲部65は、第1フランジ部65aと第2フランジ部65cとの間隔寸法を小さくしながら排気管9のフランジ部92に向かって弾性変形(屈曲部65の全体が排気管9のフランジ部92に向かって倒れ込むように弾性変形)する。
【0056】
そして、上記ボルトBのねじ込みが完了した状態では、図6に示すように、屈曲部65の第2フランジ部65cが排気管9のフランジ部92の当接面92aに比較的高い圧力で接触した状態となっており、この部分で高いシール性が得られることになる。また、この状態では、上記係止部66の先端も上記係止溝54bの縦壁54cに比較的高い圧力で接触した状態となっており、この部分でも高いシール性が得られることになる。このように係止部66の先端が係止溝54bの縦壁54cに押圧されていることで、内側ハウジング5の内側筒部54の先端も排気管9に向けて押圧されることになるので、これら内側ハウジング5と排気管9との間にも高いシール性が得られることになる。
【0057】
以上の作業によってタービンハウジング23と排気管9とが組み付けられることにより、外側ハウジング6と排気管9との間の高いシール性の確保、内側ハウジング5と排気管9との間の高いシール性の確保、外側ハウジング6と内側ハウジング5との確実な接続、タービンハウジング23と排気管9との確実な接続を図ることができる。つまり、従来構造において必要とされていた排気管接続部分における溶接作業を必要とすることなしに十分なシール性の確保と確実な接続構造とを得ることができることになり、ターボチャージャハウジング2と排気管9との組み付け作業性の改善を図ることができる。また、従来では、この排気管の接続部分に別ピースを溶接して締結用のフランジを設けるものもあったが、本実施形態の構成によれば、この別ピースが不要になり、製造コストの削減が図れる。また、溶接に伴う材料の耐食性悪化を回避するための処理(溶接による鋭敏化を解消するための熱処理等)を不要にでき、これによっても製造コストの削減が図れる。
【0058】
−他の実施形態−
以上説明した実施形態は、自動車に搭載される可変容量型ターボチャージャにおけるタービンハウジング23と排気管9との組み付け構造として本発明を適用した場合について説明した。本発明は、自動車用に限らず、その他の用途に使用されるターボチャージャに対しても適用可能である。また、上記可変ノズルベーン機構を備えていないターボチャージャに対しても本発明は適用可能である。更には、ターボチャージャハウジング2を構成している上記コンプレッサハウジング21と吸気管との組み付け構造として本発明を適用することも可能である。併せて、外側ハウジング6の屈曲部65(フランジ部に相当)と排気管9のフランジ部92との関係を逆にする構造も適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ターボチャージャのタービンハウジングを構成する内側ハウジング及び外側ハウジングと、排気管とを溶接や複数のボルトナットを用いることなく一体的に組み付けるための組み付け構造に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ターボチャージャ
2 ターボチャージャハウジング
23 タービンハウジング
5 内側ハウジング
54b 係止溝(係止部)
6 外側ハウジング
65 屈曲部(フランジ部)
66 係止部
7 クランプ装置(締結具)
9 排気管(配管)
92 フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャハウジングの構成部材としての内側ハウジング及び外側ハウジングと、配管とを一体的に組み付ける組み付け構造において、
上記外側ハウジング及び配管に、それぞれ互いに重ね合わされるフランジ部が設けられている一方、内側ハウジングには、上記外側ハウジングまたは配管のフランジ部の内周側部分を係止する係止部が設けられており、
上記外側ハウジングまたは配管のフランジ部の内周側部分が内側ハウジングの係止部に係止され、上記外側ハウジングのフランジ部と配管のフランジ部とが、これらフランジ部同士が近接する方向への押圧力を作用させる締結具によって締結されることにより、内側ハウジング及び外側ハウジングと、配管とが一体的に組み付けられていることを特徴とするターボチャージャハウジングと配管との組み付け構造。
【請求項2】
請求項1記載のターボチャージャハウジングと配管との組み付け構造において、
上記内側ハウジングに設けられている係止部は、この内側ハウジングの外周面が凹陥されて成る係止溝であり、
上記外側ハウジングまたは配管のフランジ部は、板金の折り曲げ加工により形成されていて、締結具からの押圧力を受けることにより弾性変形して配管または外側ハウジングのフランジ部に当接していることを特徴とするターボチャージャハウジングと配管との組み付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106303(P2011−106303A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260027(P2009−260027)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】