説明

ダイシング装置

【課題】ダイシングブレードの冷却すべき範囲を効率よく冷却可能とするとともに、ダイシングブレードに冷却水を供給することによるダイシングブレードの「ぶれ」と振動を抑制することができるダイシング装置を提供する。
【解決手段】円盤状のダイシングブレード110が被加工部材200に当接する箇所を含む所定範囲を冷却水供給範囲Aとして、当該冷却水供給範囲Aに冷却水を供給しながらダイシングを行うダイシング装置100Aであって、冷却水を噴射する複数のノズル121,122,123を備え、複数のノズル121,122,123は、当該複数のノズル121,122,123の各ノズルが噴射する冷却水を冷却水供給範囲Aに分散して供給可能とするように、冷却水の噴射方向が各ノズルごとに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングブレードに冷却水を供給しながら被加工部材のダイシングを行うダイシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハーなどの被加工部材をダイシングブレードによってダイシングする際に、ダイシングブレードが被加工部材に当接する箇所を含む所定範囲(冷却水供給範囲という。)に冷却水を供給しながらダイシングすることが一般的に行われている。このとき、冷却水供給範囲に効率的に冷却水を供給することが重要であり、このような工夫がなされたダイシング装置は、従来より種々提案されている(例えば、特開2005−57160号公報参照。)。
【0003】
図4は、従来のダイシング装置900を説明するために示す図である。図4(a)は正面図であり、図4(b)及び図4(c)はノズルの斜視図である。従来のダイシング装置900は、図4に示すように、冷却水供給範囲Aに冷却水を供給しながらダイシングを行うダイシング装置である。なお、図4(b)に示すノズル920は、ダイシングブレード910の周縁(刃に相当する部分)に沿った縦長の噴射口921を有し、当該噴射口921の縦方向の中心軸がダイシングブレード910の周縁に対向する線上に一致するように配置して、噴射口921から冷却水を冷却水供給範囲Aに向かって噴射する。
【0004】
また、従来のダイシング装置900の変形例として、縦長の噴射口921の代わりに、図4(c)に示すように、断面が円形の噴射口(円形噴射口という。)922をダイシングブレード910の周縁に対向する線上に複数個並べて配置した例も示されている。
【0005】
従来のダイシング装置900によれば、ノズル920は、縦長の噴射口921又は複数個の円形噴射口922がダイシングブレードの周縁に対向する線上に沿うように配置されているため、縦長の噴射口921又は複数個の円形噴射口922から噴射される冷却水がダイシングブレード910の幅方向(厚み方向)に広がることなく、冷却水を効率的に冷却水供給範囲Aに噴射することができ、それによって、ダイシングブレード910を効率的に冷却することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−57160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のダイシング装置900は、縦長の噴射口921又は複数個の円形噴射口922のいずれの場合であっても、噴射口が1つのノズル920内に固定的に設けられている。このため、冷却水の噴射方向の設定やノズルの先端(噴射口)とダイシングブレードとの距離の設定など、ノズルとダイシングブレードとの位置関係を適切に設定できないという課題がある。また、噴射口が1つのノズル920内に固定的に設けられていると、各噴射口から噴射される冷却水の噴射方向はほぼ同じ方向で、かつ、冷却水はダイシングブレード910上においては、一本のまとまりとなってしまう場合が多い。このため、冷却水はダイシングブレード910の一箇所に集中して供給されることとなり、ダイシングブレード910はブレや振動が生じ易くなるといった課題もある。
【0008】
ダイシングブレードにブレや振動が生じた状態でダイシングを行うと、高精度なダイシングは困難なものとなる。特に、炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などの硬度の高い半導体ウエハーをダイシングする際は、ダイシングブレードがこれらの半導体ウエハーに当接したときに、ダイシングブレードが半導体ウエハーに容易には食い込んで行かないため、ダイシングブレードにブレや振動が生じ易くなる。このとき、冷却水の供給によるブレや振動がさらに加わると、ダイシングブレードのブレや振動はより大きくなるため、高精度なダイシングはますます困難なものとなる。
【0009】
そこで、本発明は、ダイシングブレードを効率よく冷却可能とするとともに、ダイシングブレードに冷却水を供給することによるダイシングブレードのブレや振動を抑制することができるダイシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明のダイシング装置は、円盤状のダイシングブレードが被加工部材に当接する箇所を含む所定範囲を冷却水供給範囲として、当該冷却水供給範囲に冷却水を供給しながらダイシングを行うダイシング装置であって、前記冷却水を噴射する複数のノズルを備え、前記複数のノズルは、当該複数のノズルの各ノズルが噴射する冷却水を前記冷却水供給範囲に分散して供給可能とするように、前記冷却水の噴射方向が前記各ノズルごとに設定されていることを特徴とする。
【0011】
[2]本発明のダイシング装置においては、前記各ノズルは、当該各ノズルの噴射口が前記ダイシングブレードの周縁に対向する線上に並ぶように配置されていることが好ましい。
【0012】
[3]本発明のダイシング装置においては、前記ダイシングブレードの周縁に対向する線は、前記ダイシングブレードの中心を通る仮想的な平面上に存在する線であることが好ましい。
【0013】
[4]本発明のダイシング装置は、前記冷却水の噴射方向は、前記ダイシングブレードの周縁の接線方向であることが好ましい。
【0014】
[5]本発明のダイシング装置においては、前記冷却水の噴射方向は、前記各ノズルが噴射する冷却水の噴射方向がそれぞれ平行又はほぼ平行となる方向であることも好ましい。
【0015】
[6]本発明のダイシング装置においては、前記複数のノズルのうちの少なくとも2つのノズルは、当該2つのノズルの各ノズルが噴射する冷却水の噴射方向が前記ダイシングブレードの側面に対して鋭角をなす方向となるように配置されていることも好ましい。
【0016】
[7]本発明のダイシング装置においては、前記各ノズルは、前記各ノズルの各噴射口と前記各ノズルが噴射する冷却水の前記ダイシングブレードにおける各到達点との距離が同じ又はほぼ同じとなるように配置されていることが好ましい。
【0017】
[8]本発明のダイシング装置においては、前記各ノズルは、前記冷却水を流通させるための1本のパイプの先端を複数に分岐することによって形成された複数の枝パイプの先端にそれぞれ取り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のダイシング装置によれば、複数のノズルの各ノズルは、ダイシングブレードの冷却水供給範囲に冷却水を分散して供給可能とするように、冷却水の噴射方向が各ノズルごとに設定されている。複数のノズルがこのような構成となっているため、各ノズルが噴射する冷却水によってダイシングブレードを効率よく冷却可能とし、かつ、冷却水がダイシングブレードにおいて一箇所に集中しないため、ダイシングブレードのブレや振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係るダイシング装置100Aを説明するために示す図である。
【図2】実施形態2に係るダイシング装置100Bを説明するために示す図である。
【図3】実施形態3に係るダイシング装置100Cを説明するために示す図である。
【図4】従来のダイシング装置900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係るダイシング装置100Aを説明するために示す図である。なお、図1は、ダイシング装置100Aのダイシングブレード110と、冷却水を噴射する複数(3個とする。)のノズル121,122,123と、被加工部材としての半導体ウエハー200との位置関係を模式的に示す図である。また、図1(a)は正面図であり、図1(b)は図1(a)を矢印a方向から見た場合におけるダイシングブレード110と各ノズル121,122,123の噴射口と121a,122a,123aとの位置関係を模式的に示す図である。
【0022】
実施形態1に係るダイシング装置100Aは、図1に示すように、半導体ウエハー200にダイシングブレード110が当接する箇所を含む所定範囲(実施形態においても冷却水供給範囲Aという。)に冷却水を供給しながらダイシングを行うダイシング装置100Aである。また、実施形態1に係るダイシング装置100Aは、それぞれが個別に設けられている例えば3個のノズル121,122,123を備えている。
【0023】
これらノズル121,122,123は、冷却水が流通する1本のパイプ140の先端を3つに分岐することによって形成された3本の枝パイプ141,142,143の先端部に取り付けられている。すなわち、枝パイプ141の先端部には、ノズル121が取り付けられ、枝パイプ142の先端部には、ノズル122が取り付けられ、枝パイプ143の先端部には、ノズル123が取り付けられている。また、各ノズル121,122,123は、ダイシングブレード110と一体となっており、ダイシングブレード110との位置関係を保持した状態でダイシングブレード110と共にx軸方向に沿って移動する。また、ダイシングブレード110は矢印R方向に回転するものとする。
【0024】
また、各ノズル121,122,123は、図1(b)に示すように、各噴射口121a,122a,123aが、ダイシングブレード110の周縁(刃に相当する部分)110aに対向する線上に一列に並ぶように配置されている。なお、ダイシングブレード110の周縁110aに対向する線というのは、ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面(図示せず。)上に存在する線L(図1(b)参照。)であるとする。
【0025】
また、各ノズル121,122,123は、図1(a)に示すように、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水の噴射方向がダイシングブレード110の周縁110aの接線方向となるように配置され、かつ、それぞれの噴射口121a,122a,123aと、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水のダイシングブレード110上での到達点P1,P2,P3との距離D1,D2,D3が同じかほぼ同じとなるように配置されている。なお距離D1,D2,D3は図示を省略している。
【0026】
なお、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水は、図1において、それぞれ1本の破線矢印で示されているが、実際には多少の広がりを持って噴射される。これは、後述する実施形態2及び実施形態3において説明する図2及び図3においても同様である。
【0027】
各ノズル121,122,123を図1に示すように配置することにより、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水は、冷却水供給範囲Aに分散して供給される。これにより、冷却水を冷却水供給範囲Aの広い範囲に効率よく供給することができ、かつ、冷却水がダイシングブレード110の一箇所に集中しないため、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0028】
また、各ノズル121,122,123の各噴射口121a,122a,123aが、ダイシングブレード110の周縁110aに対向する線上(ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線L上)に一列に並ぶように配置されている。このため、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水の水量及び水圧をダイシングブレードの各側面において均等又はほぼ均等にすることができ、これによっても、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0029】
また、各ノズル121,122,123の各噴射口121a,122a,123aが、ダイシングブレード110の周縁110aに対向する線上(ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面(図示せず。)上に存在する線L上)に一列に並ぶように配置されているため、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水は、ダイシングブレード110の幅方向(厚み方向)に必要以上に広がることがなく、ダイシングブレード110を効率よく冷却することができる。
【0030】
また、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水の噴射方向がダイシングブレード110の周縁110aの接線方向とすることにより、ダイシングブレード110の周縁110aすなわち刃に相当する部分に冷却水を直接供給することができ、ダイシングブレード110の最も発熱量の多い部分を効率的に冷却することができる。
【0031】
また、各ノズル121,122,123の噴射口121a,122a,123aと、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水のダイシングブレード110上での到達点P1,P2,P3との距離D1,D2,D3が同じかほぼ同じとなるようしている。このため、ダイシングブレード110の各到達点部P1,P2,P3における冷却水の水量及び水圧を均等又はほぼ均等にすることができ、これによっても、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0032】
[実施形態2]
図2は、実施形態2に係るダイシング装置100Bを説明するために示す図である。なお、図2は、ダイシング装置100Bのダイシングブレード110と、冷却水を噴射する3個のノズル121,122,123と、被加工部材としての半導体ウエハー200との位置関係を模式的に示す図である。また、図2(a)は正面図であり、図2(b)は図2(a)を矢印a方向から見た場合におけるダイシングブレード110と各ノズル121,122,123の噴射口と121a,122a,123aとの位置関係を模式的に示す図である。
【0033】
実施形態2に係るダイシング装置100Bが実施形態1に係るダイシング装置100Aと異なるのは、ノズル121,122,123をそれぞれ平行に配置した点であり、その他の構成は実施形態1に係るダイシング装置100Aと同様である。したがって、実施形態1に係るダイシング装置100Aと同一部分には同一符号を付している。
【0034】
実施形態2に係るダイシング装置100Bにおいても、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水は、冷却水供給範囲Aに供給されるように配置される。なお、各ノズル121,122,123は、実施形態1に係るダイシング装置100Aの場合と同様に、各噴射口121a,122a,123aがダイシングブレード110の周縁110aに対向する線上(ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線L上)に一列に並ぶように配置されている(図2(b)参照。)。
【0035】
また、各ノズル121,122,123は、それぞれの噴射口121a,122a,123aと各ノズル121,122,123が噴射する冷却水のダイシングブレード110上での到達点P1,P2,P3との距離D1,D2,D3が同じかほぼ同じとなるように配置されている。なお、実施形態2においても、距離D1,D2,D3は図示を省略している。
【0036】
各ノズル121,122,123を図2に示すように配置することによって、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水は、冷却水供給範囲Aに分散して供給される。これにより、冷却水を冷却水供給範囲Aの広い範囲に効率よく供給することができ、かつ、冷却水がダイシングブレード110の一箇所に集中しないため、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0037】
また、各ノズル121,122,123の各噴射口121a,122a,123aが、ダイシングブレード110の周縁110aに対向する線上(ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線L上)に一列に並ぶように配置されている。このため、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水の水量及び水圧をダイシングブレードの各側面において均等又はほぼ均等にすることができ、これによっても、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0038】
また、各ノズル121,122,123の各噴射口121a,122a,123aが、ダイシングブレード110の周縁110aに対向する線上(ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線L上)に一列に並ぶように配置されているため、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水は、ダイシングブレード110の幅方向(厚み方向)に必要以上に広がることがなく、ダイシングブレード110を効率よく冷却することができる。
【0039】
また、各ノズル121,122,123の噴射口121a,122a,123aと各ノズル121,122,123が噴射する冷却水のダイシングブレード110上での到達点P1,P2,P3との距離D1,D2,D3が同じかほぼ同じとなるようしている。このため、ダイシングブレード110の各到達点部P1,P2,P3における冷却水の水量及び水圧を均等又はほぼ均等にすることができ、これによっても、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0040】
[実施形態3]
図3は、実施形態3に係るダイシング装置100Cを説明するために示す図である。なお、図3は、ダイシング装置100Cにおけるダイシングブレード110と、冷却水を噴射する3個のノズル121,122,123と、被加工部材としての半導体ウエハー200との位置関係を模式的に示す図である。また、図3(a)は正面図であり、図3(b)は図3(a)を矢印b方向から見た場合の平面図である。
【0041】
実施形態3に係るダイシング装置100Cが実施形態1に係るダイシング装置100Aと異なるのは、図3に示すように、3個のノズルのうちの2個のノズル(ノズル121及びノズル122とする。)から噴射される冷却水が、ダイシングブレード110の各側面に対して所定角度θ(例えば、θ=5度〜15度とする。)で供給されるように、これら2個のノズル121,122を配置した点であり、その他の構成は実施形態1に係るダイシング装置100Aと同様である。したがって、実施形態1に係るダイシング装置100Aと同一部分には同一符号を付している。
【0042】
なお、ノズル123は、実施形態1に係るダイシング装置100Aのノズル123と同様に、当該ノズル123が噴射する冷却水の噴射方向がダイシングブレード110の周縁110aの接線方向となるように配置されているものとする。
【0043】
また、各ノズル121,122,123は、それぞれの噴射口121a,122a,123aと各ノズル121,122,123が噴射する冷却水のダイシングブレード110上での到達点P1,P2,P3との距離D1,D2,D3が同じかほぼ同じとなるように配置されている。なお、実施形態3においても、距離D1,D2,D3は図示を省略している。
【0044】
実施形態3に係るダイシング装置100Cによれば、3個のノズルのうちの2個のノズル(ノズル121及びノズル122とする。)から噴射される冷却水がダイシングブレード110の各側面に対して所定角度θ(例えば、θ=5度〜15度とする。)で供給されるように、ノズル121,122を配置するようにしている。このため、ダイシングブレード110の各側面に対しても冷却水を効率よく供給することができる。また、ノズル123は、当該ノズル123が噴射する冷却水の噴射方向が実施形態1と同様に、ダイシングブレード110の周縁110aの接線方向となるように配置している。このため、ダイシングブレード110の周縁110aすなわち刃に相当する部分に冷却水を直接供給することができ、ダイシングブレード110の最も発熱量の多い部分を効率的に冷却することができる。
【0045】
また、実施形態3に係るダイシング装置100Cにおいても、各ノズル121,122,123が噴射する冷却水はダイシングブレード110の一箇所に集中しないため、ダイシングブレード110のブレや振動を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0047】
(1)上記各実施形態においては、各ノズル121,122,123から噴射される冷却水がダイシングブレード110に到達するまでの距離D1,D2,D3は同じ又はほぼ同じとなるように各ノズルを配置した場合を例示したが、これらの距離D1,D2,D3は必ずしも同じとする必要はなく、それぞれを適切な距離に設定することも可能である。例えば、実施形態2を例にした場合、実施形態2においては、平行に配置されたノズル121,122,123のうちの下段に位置するノズルほど、その噴射口がダイシングブレード110側に突き出るような配置としたが、各ノズル121,122,123の噴射口が縦方向(y軸方向)において揃うように配置してもよい。
【0048】
(2)上記各実施形態においては、ノズル121,122,123の数は3個とした場合を例示したが、3個に限られるものではない。また、各ノズル121,122,123の配置の仕方も種々変形実施可能である。この場合、各ノズルが噴射する冷却水が、冷却水供給範囲Aの一箇所に集中することなく冷却水供給範囲Aに分散して供給可能となるように各ノズルを配置すればよい。
【0049】
(3)上記各実施形態においては、各ノズルは一本のパイプを分岐することによって形成された枝パイプの先端に取り付けるような構成としたが、一本のパイプを分岐するのではなく、それぞれ独立したパイプによって各ノズルに冷却水を流通させるようにしてもよい。
【0050】
(4)上記実施形態1及び実施形態2においては、各ノズル121,122,123の噴射口121a,122a,123aが、ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線L上に一列に並ぶように、各ノズル121,122,123を配置した場合を例示したが、噴射口121a,122a,123aは、必ずしも、ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線L上に一列に並べる必要はなく、例えば、ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線Lを境にして互い違いに配置するようにしてもよい。
【0051】
(5)上記各実施形態においては、ダイシング装置として、半導体ウエハーをダイシングするダイシング装置を例示したが、これに限られるものではなく、ダイシングブレードに冷却水を供給しながら被加工部材をダイシングする装置であれば適用可能となる。
【符号の説明】
【0052】
100A,100B,100C・・・ダイシング装置、110・・・ダイシングブレード、110a・・・周縁、121、122,123・・・ノズル、121a,122a,123a・・・ノズルの噴射口、140・・・パイプ、141,142,143・・・枝パイプ、200・・・半導体ウエハー、A・・・冷却水供給範囲、L・・・ダイシングブレード110の厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線、P1,P2,P3・・・冷却水の到達点、R・・・ダイシングブレードの回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のダイシングブレードが被加工部材に当接する箇所を含む所定範囲を冷却水供給範囲として、当該冷却水供給範囲に冷却水を供給しながらダイシングを行うダイシング装置であって、
前記冷却水を噴射する複数のノズルを備え、
前記複数のノズルは、当該複数のノズルの各ノズルが噴射する冷却水を前記冷却水供給範囲に分散して供給可能とするように、前記冷却水の噴射方向が前記各ノズルごとに設定されていることを特徴とするダイシング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のダイシング装置において、
前記各ノズルは、当該各ノズルの噴射口が前記ダイシングブレードの周縁に対向する線上に並ぶように配置されていることを特徴とするダイシング装置。
【請求項3】
請求項2に記載のダイシング装置において、
前記ダイシングブレードの周縁に対向する線は、前記ダイシングブレードの厚み方向の中心を通る仮想的な平面上に存在する線であることを特徴とするダイシング装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のダイシング装置において、
前記冷却水の噴射方向は、前記ダイシングブレードの周縁の接線方向であることを特徴とするダイシング装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のダイシング装置において、
前記冷却水の噴射方向は、前記各ノズルが噴射する冷却水の噴射方向がそれぞれ平行又はほぼ平行となる方向であることを特徴とするダイシング装置。
【請求項6】
請求項1に記載のダイシング装置において、
前記複数のノズルのうちの少なくとも2つのノズルは、当該2つのノズルの各ノズルが噴射する冷却水の噴射方向が前記ダイシングブレードの側面に対して鋭角をなす方向となるように配置されていることを特徴とするダイシング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のダイシング装置において、
前記各ノズルは、前記各ノズルの各噴射口と前記各ノズルが噴射する冷却水の前記ダイシングブレードにおける各到達点との距離が同じ又はほぼ同じとなるように配置されていることを特徴とするダイシング装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のダイシング装置において、
前記各ノズルは、前記冷却水を流通させるための1本のパイプの先端を複数に分岐することによって形成された複数の枝パイプの先端にそれぞれ取り付けられていることを特徴とするダイシング装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22717(P2013−22717A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162525(P2011−162525)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】