説明

ダンパ装置および冷蔵庫

【課題】 冷却機で発生させた冷気の供給などを制御するダンパ装置において、当該ダンパ装置が配置される冷蔵庫などの機器の小型化を図るとともにコストアップを抑制することができるダンパ装置を提供すること。
【解決手段】 本形態のダンパ装置1では、軸流ファン57がハウジング55に対して一体に取り付けられているため、例えば、共通の冷却機30から複数の収納室に冷気を供給する場合でも、個々の収納室に向かう各冷気供給経路にダンパ装置1を配置すればよく、大型の送風ファンを冷却機30近傍に配置する必要がない。このため、本形態では、送風ファンとしては、小型の軸流ファン57を用いればよく、冷蔵庫の小型化を図ることができる。しかも、軸流ファン57の駆動装置とバッフル56の駆動装置とを1つのの駆動装置58としてまとめたため、コストを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷気などの供給を制御するダンパ装置、およびこのダンパ装置を備えた冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫などにおいて食品などを収納する収納室を冷却する場合には、冷却機の近傍に送風ファンを配置するとともに、この送風ファンにより送られてくる冷気をダンパ装置のバッフルにより遮断した状態と収納室に供給する状態とに切り換えるようになっている。また、複数の収納室の各々を冷却する場合には、冷却機の近傍に配置した共通の送風ファンで冷気の送風を行うとともに、複数の収納室の各々に対して配置したダンパ装置のダンパによって、送風ファンにより送られてくる冷気の供給および遮断を制御するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のように、冷却機近傍に送風ファンを配置すると、複数の冷却室の各々に冷気を供給するには大型のファンが必要となり、送風ファンが大きな空間を占有してしまうという問題点がある。
【0004】
また、収納室を精度よく温度管理するため、冷気の導入を調整するバッフルを用いる必要があり、このバッフルを駆動するための駆動源としてのモータ等を追加することにより、コストアップを招くという問題点がある。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、冷却機で発生させた冷気の供給などを制御するダンパ装置において、当該ダンパ装置が配置される冷蔵庫などの機器の小型化を図るとともにコストアップを抑制することができるダンパ装置を提供することにある。また、本発明の課題は、当該ダンパ装置を備えた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、吸気口および排気口を備えたハウジングと、該ハウジング内の流路を開閉可能なバッフルとを有するダンパ装置において、前記ハウジングに対して一体に取り付けた送風ファンと、該送風ファンを駆動するファン駆動装置とを有し、該ファン駆動装置によって前記バッフルを駆動させるように構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記ファン駆動装置には、前記送風ファンを駆動させるための駆動源を有し、該駆動源の駆動力を前記バッフルに伝達する伝達機構および該伝達機構を継断するクラッチ操作機構を有していることが好ましい。このように構成すると、必要に応じてバッフルの駆動と停止を行うことができる。
【0008】
本発明において、前記伝達機構は、遊星歯車と、該遊星歯車を支持する遊星歯車支持歯車と、前記遊星歯車と噛合する太陽歯車およびリング歯車とから構成された遊星歯車機構を有し、前記クラッチ操作機構と連結された前記遊星歯車支持歯車、太陽歯車、およびリング歯車のいずれか1つの回転が、前記クラッチ操作機構によって阻止され、他の2つの歯車を介して前記駆動源の駆動力を前記バッフルに伝達されることが好ましい。このように構成すると、送風ファンを駆動させながらバッフルを停止させる際、クラッチ操作機構と遊星歯車支持歯車、太陽歯車、およびリング歯車のいずれか1つの歯車との連結が遮断されることにより、いずれか1つの歯車の回転を許容して、送風ファンを駆動する駆動源からの駆動力を逃がすことことができる。そのため、駆動源にかかる負荷を低減でき、駆動源を駆動力が小さい小型なものを用いることが可能になる。
【0009】
本発明に係るダンパ装置と、冷却機と、該冷却機で発生した冷気が供給される収納室とを備えた冷蔵庫では、前記ダンパ装置が前記収納室における冷気取り入れ口に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、ダンパ装置のハウジングに対して送風ファンが一体に取り付けられているため、例えば、共通の冷却機から複数の収納室に冷気を供給する場合でも、個々の収納室に向かう各冷気通路にダンパ装置を配置すればよい。このため、送風ファンとしては小型のものでよく、冷却機の近傍に大型のファンを配置するための大きな空間を確保する必要がない。それ故、冷蔵庫などの機器の小型化を図ることができる。しかも、送風ファンを駆動するファン駆動装置を用いてバッフルを駆動させているため、バッフルを駆動するためだけの駆動源を別途設ける必要がなく、コストアップを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したダンパ装置の一例を説明する。
【0012】
(全体構成)
図1(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るダンパ装置の一部を断面で示す斜視図、および(a)に示すダンパ装置から排出ダクトを取り除いた状態を示す斜視図である。図2は、図1に示すダンパ装置の分解斜視図である。図3は、本発明の実施の形態に係るダンパ装置における駆動装置の縦断面図を模式的に示す説明図である。図4は、図1(b)に示すダンパ装置から収納部分を取り除いて、駆動装置を模式的に示す説明図である。
【0013】
図1および図2に示すダンパ装置1は、冷蔵庫などにおいて食品などの収納室の冷気取り入れ口に配置され、冷却機30からダクト40を介して送られる冷気の供給および遮断を制御するものである。
【0014】
本形態のダンパ装置1は、冷却機30から延びたダクト40に接続される吸気口52、および冷蔵庫の収納室で開口する排気口53(図2参照)を備えたハウジング55と、このハウジング55内に配置されたバッフル56と、排気口53の外側に配置された軸流ファン57(送風ファン)と、バッフル56および軸流ファン57に対する共通の駆動装置58とを有している。
【0015】
ハウジング55は、吸気口52が形成された第1ケース551と、この第1ケース551の側方に取り付けられた第2ケース552と、底部分を塞ぐ底カバー553と、第1ケース551の側方に形成されたボックス上の収納部分554の底面を塞ぐ底蓋555とを備えており、収納部分554には駆動装置58が配置されている。
【0016】
図2に示すように、第1ケース551の側端面および第2ケース552の側端面にはそれぞれ、半円形の切り欠き531、532が形成されており、ケース551、552を接合すると、切り欠き531、532によって円形の排気口53が形成される。排気口53の周りには外側に向けて4本のボルト59が等角度間隔に突き出ており、これらボルト59にねじ込まれたナット(図示せず)によって軸流ファン57が排気口53に固定されている。なお、排気口53には排出ダクト45が軸流ファン57とともに固定されている。
【0017】
バッフル56は、第1ケース551の側板部分に対して、その下端部分の両側に連結された回転軸561、562を中心に回転可能に支持されており、起立した吸気口52を塞いだ閉姿勢と、平伏して流体の流通を許容する開姿勢とに切り換えられる。ここで、回転軸562は、その先端部が収納部分554まで延びて、回転軸562の先端部に形成された歯車565と駆動装置58とが収納部分554の上面560に形成されたスリット558を介して機構的に接続されている。
【0018】
駆動装置58は、伝達機構580として、軸流ファン57を駆動する図示しないモータからの駆動力が、軸流ファン57に形成された歯車571に噛合されて伝達される第1伝達歯車581と、この第1伝達歯車581と収納部分554の上面560に形成されたスリット559を介して噛合する第2伝達歯車582と、この第2伝達歯車582側からの駆動力を受ける受け歯車583aおよび遊星歯車584に駆動力を伝達する伝達歯車583bを備えた太陽歯車583と、遊星歯車584に噛合する内周歯車部585aおよび駆動装置58の一部であるクラッチ操作機構60の最終段としての増速歯車601に噛合する外周歯車部585bを備えたリング歯車585と、遊星歯車584をそれぞれ回転自在に支承する支承軸586aおよびこの支承軸586aと軸方向の逆側に延設されたピニオン部586bを備えた遊星歯車支持歯車586と、このピニオン部586bと噛合して動力を増速歯車588と伝達するアイドラとしての伝達歯車587と、この伝達歯車587の歯部587aに噛合する小径歯車588aおよび回転軸562の先端部に形成された歯車565と噛合する大径歯車588bを有する増速歯車588とにより構成されている。なお、太陽歯車583、遊星歯車584、リング歯車585、および遊星歯車支持歯車586により遊星歯車機構50が構成されている。
【0019】
また、クラッチ操作機構60は、ソレノイド(不図示)によって駆動されるとともにバネ部材(不図示)が係合する係合部603aが形成され、バネ部材によってクラッチ歯車602との係合を外す方向に付勢されている付勢回転体603と、この付勢回転体603に形成された回転規制部603bと係脱自在な係合突起602cを外周面に備えたクラッチ歯車602と、このクラッチ歯車602の小径歯車602bと噛合する大径歯車601aおよび遊星歯車を構成するリング歯車585に噛合された小径歯車601bを有する増速歯車601とから構成されている。
【0020】
従って、クラッチ操作機構60は、ソレノイドを駆動して付勢回転体603をバネ部材の付勢力に抗して回転させることにより回転規制部603bを所定位置まで移動させ、この回転規制部603bとクラッチ歯車602に形成された係合突起602cとを係合させ、リング歯車585の回転を止めることにより、太陽歯車583と遊星歯車支持歯車586との間で回転伝達がなされる。
【0021】
このように構成した本形態のダンパ装置1では、軸流ファン57を駆動するモータを必要に応じて正逆転させるとともに、クラッチ操作機構60の切り替えを行ってバッフル56を所望の姿勢にすることにより、冷却機30で発生した冷気の流体排出ダクト45への送風および遮断を行うことができる。本形態において、バッフル56を開姿勢から閉姿勢に切り替える際、軸流ファン57が逆回転し冷気の逆流が発生するが、その際の時間はわずかなものであり問題ない。
【0022】
(本形態の効果)
以上説明したように、本形態のダンパ装置1では、送風ファンとして軸流ファン57がハウジング55に対して一体に取り付けられているため、例えば、共通の冷却機30から複数の収納室に冷気を供給する場合でも、個々の収納室に向かう各冷気供給経路にダンパ装置1を配置すればよく、大型の送風ファンを冷却機30近傍に配置する必要がない。このため、本形態では、送風ファンとしては、小型の軸流ファン57を用いればよく、冷却機30の近傍に大型のファンを配置するための大きな空間を確保する必要がない。それ故、冷蔵庫の小型化を図ることができる。
【0023】
また、本形態では、従来であればそれぞれ冷蔵庫内の別々に配置されていた軸流ファン57とバッフルとを1つのダンパ装置1としてまとめたため、冷蔵庫への取り付け、取り外し作業などが容易である。しかも、軸流ファン57とバッフル56とを共通の駆動装置58により駆動することにより、コストを抑制できる。
【0024】
さらに、本形態において、伝達機構580は、遊星歯車584と、遊星歯車584を支持する遊星歯車支持歯車586と、遊星歯車584と噛合する太陽歯車583およびリング歯車585とから構成された遊星歯車機構50を有し、クラッチ操作機構60の増速歯車601と噛合されたリング歯車601の回転が、付勢回転体603によって増速歯車601と噛合したクラッチ歯車602の回転が阻止されることにより、太陽歯車583から遊星歯車支持歯車586を介してモータの駆動力がバッフル56に伝達される。故に、軸流ファン57を駆動させながらバッフル56を停止させる際、クラッチ操作機構60とリング歯車601との連結が遮断されることにより、リング歯車601の回転を許容して、軸流ファン57を駆動させるモータからの駆動力を逃がすことことができる。そのため、モータにかかる負荷を低減でき、モータを駆動力が小さい小型なものを用いることができる。
【0025】
(その他の実施の形態)
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、これに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種種変形実施可能である。例えば、上記形態では、送風ファンとして軸流ファン57を用いているが、シロッコファン等、その他のファンを用いてもよい。
【0026】
また、上述の実施の形態において、駆動装置58を構成する全ての歯車の回転軸線の方向が、バッフル56を回転可能に支持する回転軸561、562の方向と平行になっているが、必ずしも平行にする必要はなく、互いに直交させてもよい。
【0027】
さらに、上述の実施の形態において、付勢回転体603は、ソレノイドによって駆動されているが、回転規制部603bが係合突起602cの回転規制内に進入して係合突起602cと係合可能であれば、必ずしもソレノイドに限定されるものではなく、各種駆動手段を用いることができる。
【0028】
さらにまた、上述の実施の形態において、冷却機30は、ダクト40に接続されているが、排出ダクト45側に冷却機30を接続させ、排気口53を吸気口とし、吸気口52を排気口にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)、(b)は、本発明の実施の形態に係るダンパ装置の一部を断面で示す斜視図、および(a)に示すダンパ装置から排出ダクトを取り除いた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示すダンパ装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るダンパ装置における駆動装置の縦断面図を模式的に示す説明図である。
【図4】図1(b)に示すダンパ装置から収納部分を取り除いて、駆動装置を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ダンパ装置
30 冷却機
50 遊星歯車機構
52 吸気口
53 排気口
55 ハウジング
56 バッフル
57 軸流ファン(送風ファン)
58 ファン駆動装置
580 伝達機構
583 太陽歯車
584 遊星歯車
586 遊星歯車支持歯車
60 クラッチ操作機構
601 リング歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口および排気口を備えたハウジングと、該ハウジング内の流路を開閉可能なバッフルとを有するダンパ装置において、
前記ハウジングに対して一体に取り付けた送風ファンと、該送風ファンを駆動するファン駆動装置とを有し、該ファン駆動装置によって前記バッフルを駆動させるように構成したことを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ファン駆動装置には、前記送風ファンを駆動させるための駆動源を有し、該駆動源の駆動力を前記バッフルに伝達する伝達機構および該伝達機構を継断するクラッチ操作機構を有することを特徴とするダンパ装置。
【請求項3】
請求項2において、前記伝達機構は、遊星歯車と、該遊星歯車を支持する遊星歯車支持歯車と、前記遊星歯車と噛合する太陽歯車およびリング歯車とから構成された遊星歯車機構を有し、
前記クラッチ操作機構と連結された前記遊星歯車支持歯車、太陽歯車、およびリング歯車のいずれか1つの回転が、前記クラッチ操作機構によって阻止され、他の2つの歯車を介して前記駆動源の駆動力を前記バッフルに伝達されることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに規定するダンパ装置と、冷却機と、該冷却機で発生した冷気が供給される収納室とを備えた冷蔵庫であって、
前記ダンパ装置は、前記収納室における冷気取り入れ口に配置されていることを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−147177(P2007−147177A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343127(P2005−343127)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】