説明

チェーン収納式柵柱の消音構造

【課題】 中空筒状をなす柵柱本体の内部にチェーンが出し入れ自在に収納されるチェーン収納式柵柱において、チェーン出し入れ時の衝突衝撃に対し、合成樹脂製の消音部材よりも優れた強度や耐久性を発揮しうる消音部材を用いた消音構造を提供する。
【解決手段】 金属製薄板51の片面又は両面に多数の突部52を打ち出してなる消音部材5を、該突部52が外側になるよう筒状に巻き回し、これを柵柱本体10の内側に挿入することにより、柵柱本体10内のチェーン収納スペースを包囲する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両や歩行者等の通行を規制するための柵柱、特に、柵柱間に懸架するチェーンを柵柱の内部に出し入れ自在に収納しうるように構成されたチェーン収納式柵柱において、チェーンを出し入れする際の騒音を低減するための消音構造に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの駐車場や公共施設等においては、車両や歩行者の通行を規制する目的で、地表に柵柱が設置される。柵柱は、通常、地面に対して着脱自在または格納自在に設けられ、隣り合う柵柱間には、必要に応じてチェーンが架け渡される。
【0003】
この種の柵柱にあっては、チェーンを使用しないとき、邪魔にならないようにチェーンを柵柱の内部に収納しうるように構成されたものが知られている。しかし、このようなチェーン収納式柵柱にあっては、チェーンの出し入れに際して金属製の柵柱本体とチェーンとが接触することにより、耳障りな金属音が発生し、近隣に不快感を与えてしまうという問題がある。
【0004】
そこで、例えば特許文献1−3等には、合成樹脂材料からなる可撓性の消音部材を略筒状に形成して柵柱の内側に挿入することにより、柵柱とチェーンとの接触音を低減しようとした技術が提案されている。これらの文献に開示された消音部材は、ポリプロピレンやポリエチレン等からなる板状材に多数の中空条を並設して略段ボール状にしたもの(いわゆるプラスチックダンボール)を、柵柱の内面に沿う筒状に巻いて形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−336032号公報
【特許文献2】特開2000−45240号公報
【特許文献3】特開2001−164529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のような可撓性の合成樹脂材料からなる消音部材は、軽くて加工性に優れ、高い消音効果を奏する反面、材質自体が柔軟であるため、金属製チェーンによる反復的な衝撃に対しては、いささか強度的に劣り、長期間の使用に耐えないという不都合がある。
【0007】
そこで本発明は、プラスチックダンボールと同等以上の加工性や経済性を有しながら、チェーンの衝突衝撃に対して、より高い強度や耐久性を発揮しうる消音部材を採用したチェーン収納式柵柱の消音構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明は、中空筒状をなす柵柱本体の内部にチェーンが出し入れ自在に収納されるチェーン収納式柵柱において、金属製薄板に多数の突部を形成してなる消音部材が、筒状に巻き回されて前記柵柱本体の内側に挿入されたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、本発明は、消音部材として金属製薄板に多数の突部を形成したものを用い、この消音部材を筒状に巻き回して柵柱本体の内側に挿入する構造を採用したものである。チェーンを出し入れする際、この消音部材にチェーンが接触して衝撃が吸収されることにより、チェーンの振動や暴れが抑制される。ガチャガチャというチェーンの接触音は、樹脂製の消音部材を用いた場合に比べると若干、大きくはなるが、金属製薄板の突部によって形成される空気層が、金属同士の甲高い接触音を低音の鈍い接触音に変化させるので、耳障りが大幅に和らげられる。この消音部材を形成するための金属製薄板としては、具体的には、ステンレス鋼やアルミニウム合金等からなるものであって、厚さが0.1〜0.2mm程度のものが特に好ましい。
【0010】
さらに本発明は、前記消音部材が、金属製薄板の片面又は両面に適宜間隔で、略山形又は略半球状の突部を打ち出したものであることを特徴とする。
【0011】
金属製薄板に形成する突部の具体的な形状は、柵柱本体との間に空気層を形成しうるものであれば特に限定されないが、加工の容易性等に配慮すると略山形や略半球状の突部を適宜間隔で打ち出したようなものが実用的である。また、柵柱本体との間に空気層を確保するためには、少なくとも金属製薄板の片面に突部を形成し、その突部が外側になるように金属製薄板を巻き回すのが好ましいが、金属製薄板の両面に突部を形成しても、もちろん差し支えない。
【0012】
さらに本発明は、前記消音部材が、金属製薄板の両側縁部が適宜の幅で非固定状態のまま重なり合うように巻き回され、柵柱本体の内側に挿入されて、金属製薄板自体の復元弾性力により柵柱本体の内面に沿って装着されていることを特徴とする。
【0013】
かかる装着構造を採用すれば、金属製薄板を簡単に柵柱本体の内面に沿わせることができ、柵柱との間にも空気層を好適に確保することができる。装着作業に際して接着や溶接等の作業が必要ないので、製品の組立作業も簡単になる。また、既存のチェーン収納式柵柱に対しても、面倒な加工手間を要さずに、この消音部材を容易に追加することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述のように構成される本発明のチェーン収納式柵柱の消音構造では、柵柱本体の内側に装着される消音部材が金属製薄板を巻き回して構成されるので、チェーンの衝突衝撃に対しては、合成樹脂製の消音部材を採用した従来のものに比べて格段に優れた強度や耐久性が発揮される。
【0015】
金属製薄板には突部が形成されており、これが柵柱本体との間に空気層を形成して、その空気層がチェーンの衝撃を吸収する。これにより、チェーンの接触音が低音の鈍い音に変化して耳障りが和らげられるので、例えば早朝や夜間におけるチェーンの出し入れに際しても近隣に迷惑をかけることのない、実用レベルで十分な消音効果が得られる。
【0016】
金属製薄板に突部を形成する加工、及び、金属製薄板を巻き回して柵柱本体の内側に挿入する作業のいずれも極めて簡単であるから、本発明は経済性においても大いに優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るチェーン収納式柵柱の内部構造を示す縦断面図である。
【図2】同じく、チェーン収納式柵柱の内部構造を示す横断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る消音部材の斜視図である。
【図4】図3の消音部材を柵柱本体の内側に挿入する状態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0019】
図1〜図2は本発明の実施形態に係るチェーン収納式柵柱1の内部構造を示す。例示したチェーン収納式柵柱1は、柵柱本体10が、地中に埋設された外筒11内に格納され、必要に応じ引き上げられて、立設状態に固定されるものである。ただし、本発明において、柵柱本体10は例示のような昇降格納式に限定されず、例えば着脱式や移動式のものであってもよい。
【0020】
柵柱本体10は、ステンレス鋼等からなる中空の筒体で、その上部側面に窓孔12が形成されている。窓孔12の内側には、縦断面略コ字状の窓口金具2が、その開放面を窓孔12側に向けて、柵柱本体10の内面に溶接されている。窓口金具の底部には通孔が形成されており、この通孔に略短筒状の消音ピース21が嵌め込まれている。消音ピース21は、例えばポリウレタンやポリプロピレン等の合成樹脂、あるいは、より硬質で耐磨耗性や潤滑性に優れるABS樹脂その他のエンジニアリングプラスチック等からなる部材で、その内側にチェーン3が挿通される。
【0021】
チェーン3は、消音ピース21が嵌め込まれた窓口金具2を通じて、柵柱本体10の内外に出し入れされる。チェーン3の引き出し側の端部には、消音ピース21を通過しない大きさの引掛リング31が取り付けられている。この引掛リング31は、チェーン3を柵柱本体10内に収納したときには消音ピース21の上に係留されて、チェーン3を引き出す際の指掛かりとなる。チェーン3を引き出して懸架するときには、この引掛リング31が適宜の相手側掛止具に掛止される。なお、例示した柵柱本体10にあっては、窓孔12及び窓口金具12と背向する位置に、チェーン掛脱孔13とチェーン掛止金具4が設けられている。
【0022】
また、チェーン3の収納側の端部には、消音ピース21を通過しない大きさの抜け止め具32が取り付けられている。本発明において、抜け止め具32の形状は特に限定されないが、その表面は、例えばシリコンゴムやウレタンエラストマー等のゴム状弾性体(図示せず)等によって被覆されているのが好ましい。
【0023】
チェーン3は、柵柱本体10の中間部分に適宜の高さで設けられるチェーン収納スペースに収納される。本発明の要部は、該チェーン収納スペースを包囲する消音部材5にある。消音部材5は、図3に示すように、例えばステンレス鋼やアルミニウム合金等からなる金属製薄板51の片面又は両面に、多数の突部52を適宜間隔で打ち出すことにより形成される。突部52の形状は特に限定されるものではないが、略山形や略半球状であれば打ち出し加工が容易である。
【0024】
金属製薄板51は、図4に示すように、上述の突部52が外側に突出するようにして、柵柱本体10の内径よりもやや細い筒状に巻き回される。金属製薄板51の両側縁部は、互いに固着される必要はなく、適宜の幅で非固定状態のまま重なり合う状態に保持される。その消音部材5が、柵柱本体10の下端側から柵柱本体10の内側に挿入され、チェーン収納スペースの位置まで押し込まれる。すると、金属製薄板51自体の復元弾性力によって消音部材5の筒径が拡大し、柵柱本体10の内面に沿うようにして装着される。消音部材5が柵柱本体10の所定位置に装着されたならば、その下端位置に中底板15を適宜の手段で固定する。中底板15の表面には、予め合成ゴムや合成樹脂系材料からなる適宜の緩衝材(図示せず)が貼着されているのが好ましい。
【0025】
図2に示すように、柵柱本体10の内側に消音部材5が挿入された状態において、金属製薄板51と柵柱本体10の内周面との間、及び金属製薄板51同士が重なり合う部分には、突部52の高さに相当する空気層が形成されることとなる。この空気層がチェーン3の接触による衝撃を吸収して、チェーン3の接触音を和らげるのである。消音効果を考慮すると、金属製薄板51の厚さは0.1〜0.2mm程度、突部52の高さは少なくとも0.5以上、できれば数mm程度とするのが望ましい。突部52の配列形態は、概ね均等な分布であれば特に限定されないが、柵柱本体10の内径が数cm〜10cm前後の場合、配置間隔を数cm以内とするのが好ましい。ただし、金属製薄板51が柵柱本体10の内面に密接しないほうがよいので、少なくとも周方向の配置間隔はできるだけ小さくするほうがよい。
【0026】
このように、本発明は、金属製薄板51に突部52を形成して筒状に巻き回してなる消音部材5を柵柱本体10の内側に挿入する、という極めて簡素な構成を採用しているため、複雑な部品加工等は不要で、柵柱本体10に容易に装着することができる。その装着にあたって、柵柱本体10の内部構造や断面形状は特に制限されないから、消音対策が施されていない既設の柵柱に対しても消音部材10を容易に後付けすることができる。金属製薄板51からなる消音部材5は、合成樹脂製の消音部材5比べて格段に優れた強度や耐久性を発揮するとともに、金属製薄板51の突部52が形成する空気層によって実用的に十分な消音作用も奏する。このように、簡素にして安価な構成により、チェーン収納式柵柱1の消音化を図ることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 チェーン収納式柵柱
10 柵柱本体
3 チェーン
5 消音部材
51 金属製薄板
52 突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空筒状をなす柵柱本体の内部にチェーンが出し入れ自在に収納されるチェーン収納式柵柱において、金属製薄板に多数の突部を形成してなる消音部材が、筒状に巻き回されて前記柵柱本体の内側に挿入されたことを特徴とするチェーン収納式柵柱の消音構造。
【請求項2】
請求項1に記載のチェーン収納式柵柱の消音構造において、
消音部材は、金属製薄板の片面又は両面に適宜間隔で、略山形又は略半球状の突部を打ち出したものであることを特徴とするチェーン収納式柵柱の消音構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のチェーン収納式柵柱の消音構造において、
消音部材は、金属製薄板の両側縁部が適宜の幅で非固定状態のまま重なり合うように巻き回され、柵柱本体の内側に挿入されて、金属製薄板自体の復元弾性力により柵柱本体の内面に沿って装着されていることを特徴とするチェーン収納式柵柱の消音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−12441(P2011−12441A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157073(P2009−157073)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(595143056)ホクデン工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】