説明

チオシアロシド型オリゴ糖を含む糖鎖デンドリマーの製造方法及びその利用

【課題】本発明は、インフルエンザノイラミニダーゼ活性を阻害するデンドリマー化合物の提供を目的とする。
【解決手段】 次式(I)


(式中、E及びEは、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、R、Rは、同一又は異なった炭化水素基を示し、R、R及びRは酸素、窒素及び/又はカルボニル基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yはチオシアロオリゴ糖残基若しくは他の置換基であって少なくとも1つはチオシアロオリゴ糖残基を示し、lは0〜2の整数であり、mは0〜2の整数であり、kは0又は1の数を示し、kが0のときは3−mは1である)で表されるチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物及び該デンドリマー化合物を有効成分として含有する医薬に関する。より詳細には、チオシアロオリゴ糖を結合させたデンドリマー化合物であって、インフルエンザノイラミニダーゼ阻害活性を有するデンドリマー化合物、及び該デンドリマー化合物を有効成分として含有する医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
デンドリマーとは、ギリシャ語の「dendra」(樹木)を語源とする規則正しく分岐した樹状高分子化合物の総称である。デンドリマーによる球状のナノメートルスケールの空間は、様々な官能基を組み込むことで比較的自由にデザイン可能であることから、ナノテクノロジーの分野において、新規デンドリマーのデザインが現在盛んに行われている。
特に、近年、生体機能分野におけるデンドリマーの利用が著しく、生体系における外部刺激に応答するデンドリマー、DDS(薬物送達システム)に利用可能なデンドリマー、分子センサーとして機能し得るデンドリマーなど、多面的にその有効性を生かすべく研究が進んでいる。
【0003】
なかでも、生体に対する外部環境からの干渉、特に、細菌やウィルスなどの感染に対する有効な防御ツールとしてデンドリマーの利用は、注目を浴びている。
例えば、腸管出血性大腸菌O−157が産生するベロ毒素による生体への攻撃を有効に防御し得るデンドリマーの開発などが行われている。腸管出血性大腸菌O−157が産生するベロ毒素は、赤痢菌由来のシガ毒素と類似した細菌毒素のAB5ファミリーに属するタンパク質である。これらの毒素は、腎臓細胞上のグロボトリオシルセラミド(Gb3、Galα1−4Galβ1−4Glcβ1−Cer)中のグロボ3糖部分を認識し、接着することにより細胞内に取込まれ毒性を示すことが報告されている。
【0004】
すでに、本発明者らは、当該グロボ3糖を結合したカルボシランデンドリマーをコア骨格とするクラスター化合物を合成し、それに強いベロ毒素阻害活性があることを報告している(非特許文献1及び2、並びに特許文献1及び2参照)。
【0005】
また、本発明者らは、各種糖鎖含有カルボシランデンドリマー化合物に関する知見に基づいて(非特許文献3参照)、インフルエンザウィルス等のウィルス表面に存在するヘマグルチニンを特異的に接着し、生体に対するウィルス感染を防止し得る物質として、シアリルラクトース含有デンドリマーを開示した(特許文献2参照)。さらに、生体内における適合性および安全性に優れたアミド結合を介して糖鎖を結合するデンドリマーの開示も行っている(特許文献3参照)。
インフルエンザウィルスによる感染には、宿主細胞に対する接着と脱離が重要であるが、この過程には、各々、ヘマグルチニンとノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)という2種類のタンパク質が関与している。特に、ノイラミニダーゼはインフルエンザウィルスが、感染した細胞から脱離する上で必須の酵素である。従って、ノイラミニダーゼの活性を有効に阻害することができれば、インフルエンザウィルスによる他の細胞への感染を抑えることができるため、インフルエンザウィルス感染症の治療に応用することができる。
医薬品としてはすでに、インフルエンザ膜タンパク質のイオンチャンネル阻害剤(シンメトレルR(アマンタジン))やシアリダーゼの阻害剤(タミフルR(リン酸オセルタミビル)とリレンザR(ザナミビル))が、インフルエンザの特効薬として処方されている。しかしながら、これらの特効薬の有効成分は何れも天然物ではないため、その耐性ウィルスの出現が危惧されており、近年、シンメトレルRやタミフルRに対する耐性ウィルスが出現したとの報告もある。
【0006】
【非特許文献1】Matsuokaら,Tetrahedron Letters 40:7839-7842 1999
【非特許文献2】Nishikawaら,Proc.Natl.Acad.Sci., USA.99:7669-7674 2002
【非特許文献3】Matsuokaら,Bull.Chem.Soc.Jpn.,71:2709-2713 1998
【特許文献1】特開2004−107230
【特許文献2】国際公開公報WO02/02588
【特許文献3】特開2003−212893
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、インフルエンザウィルスのノイラミニダーゼ活性を有効に阻害し、インフルエンザウィルス感染症の治療薬の有効成分となるデンドリマー化合物の提供を目的とする。
さらに、本発明は、該デンドリマー化合物を有効成分として含有する医薬の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記事情に鑑み、耐性ウィルスに対しても治療効果を保持することができる、インフルエンザウィルス感染症の治療薬の開発を目的に、鋭意研究を行った結果、チオグリコシド結合型のシアル酸のオリゴ糖を結合させたデンドリマーがインフルエンザウィルスのノイラミニダーゼ活性を有効に阻害し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
インフルエンザのノイラミニダーゼ阻害物として、加水分解の過程で生じる基質の遷移状態アナログが有効であると考えられている。シアル酸誘導体は、この遷移状態アナログとしてインフルエンザのノイラミニダーゼの活性中心に結合し、その活性の阻害に有効であることが報告されている。抗インフルエンザ薬として市販されているタミフルR(リン酸オセルタミビル)は、このような機構に着目して開発されたものである。しかしながら、タミフルR(リン酸オセルタミビル)の有効部位であるシアル酸類似体は天然のものではないため、耐性ウィルスが出現する可能性があり、前述の通り、現に、タミフルR(リン酸オセルタミビル)耐性ウィルスが出現したとの報告もある。
発明者らは、耐性ウィルスの出現を回避し、かつ、インフルエンザノイラミニダーゼ阻害活性の高い化合物の創出を目的として、チオグリコシド結合型のシアル酸のオリゴ糖を結合させたデンドリマーの合成を行った。
【0009】
すなわち、本発明は、次式(I)
【化1】


(式中、E及びEは、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、R、Rは、同一又は異なった炭化水素基を示し、R、R及びRは酸素、窒素及び/又はカルボニル基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yはチオシアロオリゴ糖残基若しくは他の置換基であって少なくとも1つはチオシアロオリゴ糖残基を示し、lは0〜2の整数であり、mは0〜2の整数であり、kは0又は1の数を示し、kが0のときは3−mは1である)で表されるチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物、並びにこれらのチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物の他、薬理学上許容される担体を含む医薬である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物は、インフルエンザノイラミニダーゼの活性を有効に阻害する。また、耐性ウィルスの出現を低率に抑える効果も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
式(I)中、E及びEは、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよいが、炭素又はケイ素が好ましく、ケイ素が最も好ましい。
【0012】
及びRは、同一又は異なった炭化水素基を示すが、炭素数3〜6のアルキル基、フェニル基、ビニル基、及びアリル基のいずれかが好ましく、このうち炭素数3〜4のアルキル基又はフェニル基がより好ましい。
【0013】
、R及びRは、酸素、窒素及び/又はカルボニル基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素基を示すが、炭素数3〜12のアルキル基、アルキレン基、アルケニレン基及びアルコキシレン基(オキシアルキレン基)のいずれかが好ましく、このうち炭素数3〜6のアルキレン基がより好ましい。
【0014】
Yの少なくとも1つは、非還元末端にチオグリコシド型のシアル酸を有する1糖〜3糖を示す。シアル酸としては、NeuAc(N−アセチルノイラミン酸:N−acetylneuraminic acid、Neu5Ac)又は、NeuGc(N−グリコリルノイラミン酸:N−glycolylneuraminic acid、Neu5Gc)が利用可能であるが、NeuAc(N−アセチルノイラミン酸)残基が好ましい。また、シアル酸に結合する糖としては、1〜3糖が好ましく、当業者において周知の糖であれば如何なるものであっても使用することができ、限定はしないが、例えば、ガラクトース、グルコース、ラクトース、セロビオースなどが好適に使用可能である。Yとデンドリマー骨格との結合は、グリコシド結合又はチオグリコシド結合であり、特に、チオグリコシド結合が好ましい。従って、Yは、例えば、以下の置換基となる。
【化2】


また、本発明のデンドリマーにおいては、1分子中の全てのYの位置が上記置換基のいずれかであることが望ましいが、必ずしも、全てのYが上記置換基である必要はなく、例えば、水素、C=C二重結合、水酸基などであってもよく、当該技術分野における通常の合成方法により、チオシアロオリゴ糖以外にYの位置に結合し得ると当業者によって予測され得る置換基の如何なるものであってもよい。
【0015】
式(I)のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物の構造は、k、l、mの組み合わせに応じて種々の構造を取り得るが代表的な化学式は下記のようになる。
【化3】


(式Ia、Ib、Ic及びId中、E及びEは、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、Rは、炭化水素基を示し、R、R及びRは酸素又は窒素あるいはカルボニル基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yはチオシアロオリゴ糖残基若しくは他の置換基であって少なくとも1つはチオシアロオリゴ糖残基を示す)
【0016】
本発明の式(I)の化合物は、例えば、次の反応式に従って製造することができる。
【化4】


(上記式中、Xはハロゲン原子、Xは反応脱離性の保護基を示し、Yは、チオシアロオリゴ糖である)
本発明の式(I)の化合物は、式(III)で表されるハロゲン化デンドリマーと式(IV)で表されるスルフィド化合物とを反応させ、必要に応じて、スルフィド化合物中のチオシアロオリゴ糖残基の保護基を脱離させることにより本発明の式(I)の化合物を製造できる。
【0017】
式(IV)の化合物の製造方法の例として、化合物(36)の製造方法を後述の実施例中に示す。他のチオシアロオリゴ糖のチオアセテート誘導体を製造する場合にも、同様な方法により製造することができる。
また、ハロゲン化デンドリマーは、例えば、次のようにして製造することができる。
Fan(0)3−Brを例にすると、既知化合物のトリオール(トリス(3−ヒドロキシプロピル)フェニルシラン)に脱離基としてメシル基を導入し、臭素アニオンによる求核置換反応を行うことで調製できる(この反応については、例えば、Matsuokaら,Biomacromolecules 7,pp.2274−2283,2006、などを参照のこと)。また、他の構造を持つハロゲン化デンドリマーについても同様に製造することができる。
式(III)の化合物と式(IV)の化合物の反応は、例えばナトリウムメトキシド等の塩基の存在下で行うことができる。また、Yの保護基の脱離は例えばナトリウムメトキシド等の塩基を用いた加水分解により行うことができる。
【0018】
得られた本発明の式(I)の化合物は、洗浄、各種クロマトグラフィー、ゲル濾過等により精製することができる。
【0019】
本発明の化合物は、生体に対して悪影響を及ぼさない医薬組成物の形態で医薬として、用いることができる。
上記医薬組成物は、一般式(I)で表されるチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物、その薬理学上許容される塩又はそれらの水和物のうち、1又は複数の種類を含有してもよい。
通常、医薬組成物には、本発明の化合物の他、薬理学上許容される担体が含まれる。
「薬理学上許容される担体」は、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、アイソトニックに作用して吸着を遅らせる薬剤及びその類似物を含み、薬剤的投与に適するもののことである。該担体及び該担体を希釈するために好ましいものの例には、限定はしないが、水、生理食塩水、フィンガー溶液、デキストロース溶液、及びヒト血清アルブミンなどが含まれる。また、リポソーム及び不揮発性油などの非水溶性媒体も用いられる。さらに、本発明の化合物の活性を保護又は促進するような特定の化合物が、該組成物中に包含されていてもよい。
【0020】
本発明の医薬は、静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入なども含む)、経皮及び経粘膜への投与を含み、治療上適切な投与経路に適合するように製剤化される。非経口、皮内、又は皮下への適用に使用される溶液又は懸濁液には、限定はしないが、注射用の水などの滅菌的希釈液、生理食塩水溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒、ベンジルアルコール又は他のメチルパラベンなどの保存剤、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなどの無痛化剤、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、塩化ナトリウム又はデキストロースなど浸透圧調製のための薬剤を含んでもよい。
pHは塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調製することができる。非経口的標品はアンプル、ガラスもしくはプラスチック製の使い捨てシリンジ又は複数回投与用バイアル中に収納される。
【0021】
注射に適する医薬組成物には、滅菌された注射可能な溶液又は分散媒を、使用時に調製するための滅菌水溶液(水溶性の)又は分散媒及び滅菌されたパウダーが含まれる。静脈内の投与に関し、適切な担体には生理食塩水、静菌水、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が含まれる。注射剤として使用する場合、組成物は滅菌的でなくてはならず、また、シリンジを用いて投与されるために十分な流動性を保持していなくてはならない。該組成物は、調剤及び保存の間、化学変化及び腐食等に対して安定でなくてはならず、細菌及び真菌などの微生物由来のコンタミネーションを防止する必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及び適切な混合物を含む溶媒又は分散媒培地を使用することができる。例えば、レクチンなどのコーティング剤を用い、分散媒においては必要とされる粒子サイズを維持し、界面活性剤を用いることにより適度な流動性が維持される。種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどは、微生物のコンタミネーションの防止に対して使用可能である。また、糖、マンニトール、ソルビトールなどのポリアルコール及び塩化ナトリウムのような等張性を保つ薬剤が組成物中に含まれてもよい。吸着を遅らせることができる組成物には、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの薬剤が含まれる。
【0022】
滅菌的な注射可能溶液は、必要な成分を単独で、又は他の成分と組み合わせた後に、適切な溶媒中に必要量の活性化合物を加え、滅菌することで調製される。一般に、分散媒は、基本的な分散培地及び上述したその他の必要成分を含む滅菌的媒体中に活性化合物を取り込むことにより調製される。滅菌的な注射可能な溶液を調製するための滅菌的パウダーの調製方法には、活性な成分及び滅菌溶液に由来する何れかの所望な成分を含むパウダーを調製する真空乾燥及び凍結乾燥が含まれる。
【0023】
経口組成物には、不活性な希釈剤又は体内に取り込んでも害を及ぼさない担体が含まれる。経口組成物には、例えば、ゼラチンのカプセル剤に包含されるか、加圧されて錠剤化される。経口的治療のためには、活性化合物は賦形剤と共に取り込まれ、錠剤、トローチ又はカプセル剤の形態で使用される。また、経口組成物は、流動性担体を用いて調製することも可能であり、流動性担体中の該組成物は経口的に適用される。さらに、薬剤的に適合する結合剤、及び/又はアジュバント物質などが包含されてもよい。
錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ及びその類似物は以下の成分又は類似の性質を持つ化合物の何れかを含み得る:微結晶性セルロースのような賦形剤、アラビアゴム、トラガント又はゼラチンなどの結合剤;アルギン酸、PRIMOGEL、又はコーンスターチなどの膨化剤;ステアリン酸マグネシウム又はSTRROTESなどの潤滑剤;コロイド性シリコン二酸化物などの滑剤;スクロース又はサッカリンなどの甘味剤;又はペパーミント、メチルサリチル酸又はオレンジフレイバーなどの香料添加剤。
【0024】
本発明の化合物は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な担体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。
【0025】
本発明の化合物によるウィルス感染症の治療又は予防において、適切な投与量レベルは、投与される患者の状態、投与方法等に依存するが、当業者であれば、容易に最適化することが可能である。
注射投与の場合は、例えば、一日に患者の体重あたり約0.1μg/kgから約500mg/kgを投与するのが好ましく、一般に一回又は複数回に分けて投与され得るであろう。好ましくは、投与量レベルは、一日に約0.1μg/kgから約250mg/kgであり、より好ましくは一日に約0.5〜約100mg/kgである。
経口投与の場合は、組成物は、好ましくは1.0から1000mgの活性成分を含む錠剤の形態で提供され、好ましくは活性成分が1.0,5.0,10.0,15.0,20.0,25.0,50.0,75.0,100.0,150.0,200.0,250.0,300.0,400.0,500.0,600.0,750.0,800.0,900.0及び1000.0mgである。化合物は一日に1〜4回の投与計画で、好ましくは一日に一回又は二回投与される。
【0026】
医薬組成物又は製剤は、一定の投与量を保障すべく、均一単位投与量により構成されなくてはならない。単位投与量は、患者の治療に有効な一回の投与量を含み、薬剤的に受容可能な担体と共に製剤化された一単位のことである。本発明の単位投与量を決定する場合には、製剤化される化合物の物理的、化学的特徴、期待される治療上の効果、及び該化合物に特有な留意事項等が考慮される。
【0027】
本発明の医薬組成物はキットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明に係る薬剤組成物がキットとして供給される場合、該薬剤組成物のうち異なる構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
【0028】
キット中に含まれる試薬は、構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような何れかの種類の容器中に供給される。例えば、封着されたガラスアンプルは、窒素ガスのような中性で不反応性ガスの下において包装されたバッファーを含む。アンプルは、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などから構成される。他の適切な容器の例には、アンプルなどの類似物質から作られる簡単なボトル、及び内部がアルミニウム又は合金などのホイルで裏打ちされた包装材が含まれる。他の容器には、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物が含まれる。容器は、皮下用注射針で貫通可能なストッパーを有するボトルなどの無菌のアクセスポートを有する。
【0029】
また、キットには使用説明書も添付される。当該医薬組成物からな成るキットの使用説明は、紙又は他の材質上に印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体として供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
【0030】
さらに、本発明には、ウィルス感染、特に、インフルエンザウィルスに感染した、又は感染する危険性のある哺乳動物の該感染症に関する予防又は治療方法も含まれる。
ここで「治療」とは、ウィルスに感染するおそれがあるか又は感染した哺乳動物において、該感染症の病態の進行を阻止又は緩和することを意味し、治療的処置のみならず予防的処置をも含む広い意味として使用される。
治療の対象となる「哺乳動物」は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などのことである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。
【0031】
以下に実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
〔合成例1〕n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(6)の合成
化合物(6)は下記のスキームのように合成を行った。
【化5】

【0033】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−O−t−ブチルジメチルシリル−β−D−グルコピラノシド(2)の合成
アルゴン雰囲気下、既知のペンテニルグルコシド(1)(2.00g,8.06mmol)をピリジン(25mL)に溶解させ、氷冷下でTBDMSCl(2.19g,14.53mmol)を加え、氷冷のまま1時間撹拌した。その後、無水酢酸(6.9mL,73.12mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。氷冷下でメタノール(10mL)を加えた後、反応液を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル225mL]で精製し、目的物(2)(3.63g,92.1%)を得た。
【表1】

【0034】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(3)の合成
完全保護グルコシド(2)(2.98g,6.10mmol)を酢酸(24mL)に溶解させ、水(6mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル180mL]で精製し、目的物(3)(2.24g,98.2%)を得た。
【表2】

【0035】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(4)の合成
アルゴン雰囲気下、アルコール(3)(200mg,0.534mmol)をピリジン (3mL)に溶解させ、氷冷下でトリフェニルホスフィン(210mg,0.801mmol)及び四臭化炭素(266mg,0.802mmol)を順に加え、45℃で15分撹拌した。氷冷下、メタノール(3mL)を加えて、反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣を少量のメタノールに溶解させ、そこにトルエンを加えて結晶化した副生成物をセライト濾過により除去し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[5:2(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル25mL]で精製し、目的物(4)(224mg,95.7%)を得た。
【0036】
【表3】

【0037】
n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(6)の合成
アルゴン雰囲気下、シアル酸チオアセテート(5)(377mg,0.686mmol)及びブロミド(4)(200mg,0.457mmol)をDMF(1mL)に溶解させ、氷冷下でジエチルアミン(0.72mL,68.6mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈し、1M塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:3(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル45mL]で粗精製し、ついで分取型GPCにより目的物(6)(194mg,49.1%)を単離した。
【表4】

【0038】
〔合成例2〕n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(11)の合成
化合物(11)は下記のスキームのように合成を行った。
【化6】

【0039】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−O−t−ブチルジメチルシリル−β−D−ガラクトピラノシド(8)の合成
アルゴン雰囲気下、既知のペンテニルグルコシド(例えば、Matsuoka及びNishimura,Macromolecules 28, pp.2961−2968,1995、などを参照のこと)(7)(2.87g,11.56mmol)をピリジン(25mL)に溶解させ、氷冷下でTBDMSCl(3.48g,23.09mmol)を加え、氷冷のまま5時間撹拌した。その後、無水酢酸(9.8mL,103.86mmol)を加え、室温で6時間攪拌した。氷冷下でメタノール(15mL)を加えた後、反応液を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル300mL]で精製し、目的物(8)(4.45g,78.8%)を得た。
【表5】

【0040】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシド(9)の合成
完全保護ガラクトシド(8)(300mg,0.614mmol)を酢酸(2.4mL)に溶解させ、水(0.6mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[1:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル180mL]で精製し、目的物(9)(225mg,97.8%)を得た。
【表6】

【0041】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシド(10)の合成
アルゴン雰囲気下、アルコール(9)(200mg,0.534mmol)をピリジン (3mL)に溶解させ、氷冷下でトリフェニルホスフィン(280mg,1.068mmol)および四臭化炭素(266mg,0.802mmol)を順に加え、50℃で1時間撹拌した。氷冷下、メタノール(3mL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣を少量のメタノールに溶解させ、そこにトルエンを加えて結晶化した副生成物をセライト濾過により除去し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル25mL]で精製し、目的物(10)(148mg,63.2%)を得た。
【表7】

【0042】
n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(11)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(5)(364mg,0.662mmol)およびブロミド(10)(145mg,0.332mmol)をDMF−メタノール混合液(1:1(v/v),1.4mL)に溶解させ、氷冷下で炭酸カリウム(91mg,0.662 mmol)を加え、室温で21時間撹拌した。氷冷下、酢酸(76μL,1.324mmol)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をピリジン(4mL)に懸濁し、無水酢酸(3mL)を加えて、一晩攪拌した。反応液を濃縮して、その残渣をクロロホルムに溶解させ、1M硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[15:14:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール,シリカゲル40mL]で粗精製し、次いで分取型GPCにより目的物(11)(122mg,42.5%)を単離した。
【0043】
〔合成例3〕n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−1,6−チオ−β−D−グルコピラノシド(16)の合成
化合物(16)は下記のスキームのように合成を行った。
【化7】

【0044】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−O−t−ブチルジメチルシリル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(13)の合成
アルゴン雰囲気下、既知のペンテニルチオグルコシド(Leuck及びKunz,J. prakt.Chem.339,pp.322−334,1997、などを参照のこと)(12)(6.30g,23.83mmol)をピリジン(65mL)に溶解させ、氷冷下でTBDMSCl(6.46g,42.86mmol)を加え、氷冷のまま1時間撹拌した。その後、無水酢酸(13.5mL,143.07mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。氷冷下でメタノール(20mL)を加えた後、反応液を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル0.8L]で精製し、目的物(13)(11.39g,94.7%)を得た。
【表8】

【0045】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(14)
完全保護チオグルコシド(13)(5.90g,12.02mmol)を酢酸(48mL)に溶解させ、水(12mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル250mL]で精製し、目的物(14)(4.42g,97.6%)を得た。
【表9】

【0046】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−1−チオ−β−D−グルコピラノシド(15)の合成
アルゴン雰囲気下、アルコール(14)(300mg,0.768mmol)をピリジン(4.5mL)に溶解させ、氷冷下でトリフェニルホスフィン(302mg,1.151mmol)および四臭化炭素(382mg,1.151mmol)を順に加え、45℃で15分撹拌した。氷冷下、メタノール(3mL)を加えて、反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[80:1(v/v)クロロホルム−メタノール,シリカゲル50mL]で精製し、目的物(15)(318mg,91.4%)を得た。
【表10】

【0047】
n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−1,6−チオ−β−D−グルコピラノシド(16)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(3)(273 mg,0.497mmol)およびブロミド(15)(150mg,0.331mmol)をDMF(2mL)に溶解させ、氷冷下でジエチルアミン(0.78mL,7.465mmol)を加え、室温で7時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:3→0:1(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル40mL]で粗精製し、ついで分取型GPCにより目的物(16)(181mg,64.4%)を単離した。
【表11】

【0048】
〔合成例4〕n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−1,6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(21)の合成
化合物(21)は下記のスキームのように合成を行った。
【化8】

【0049】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−O−t−ブチルジメチルシリル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(18)の合成
アルゴン雰囲気下、既知のペンテニルチオグルコシド(Leuck及びKunz,J. prakt.Chem.339,pp.322−334,1997、などを参照のこと)(17)(5.30g,20.05mmol)をピリジン(55mL)に溶解させ、氷冷下でTBDMSCl(5.44g,36.09mmol)を加え、氷冷のまま5時間撹拌した。その後、無水酢酸(17.0mL,180.16mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。氷冷下でメタノール(30mL)を加えた後、反応液を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル0.9L]で精製し、目的物(18)(8.16g,80.7%)を得た。
【表12】

【0050】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(19)の合成
完全保護チオガラクトシド(18)(550mg,1.090mmol)を酢酸(4.8mL)に溶解させ、水(1.2mL)を加え、50℃で3時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル40mL]で精製し、目的物(19)(388mg,91.3%)を得た。
【表13】

【0051】
n−ペンテニル 2,3,4−トリ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(20)の合成
アルゴン雰囲気下、アルコール(19)(200mg,0.512mmol)をピリジン(3mL)に溶解させ、氷冷下でトリフェニルホスフィン(242mg,0.923mmol)および四臭化炭素(255mg,0.769mmol)を順に加え、45℃で45分撹拌した。氷冷下、メタノール(3mL)を加えて、反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[80:1(v/v)クロロホルム−メタノール,シリカゲル40mL]で精製し、目的物(20)(165mg, 71.1%)を得た。
【表14】

【0052】
n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−1,6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(21)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(5)(364mg,0.662mmol)およびブロミド(20)(150mg,0.331mmol)をDMF−メタノール混合液(1:1(v/v),1.5mL)に溶解させ、氷冷下で炭酸カリウム(92mg 0.666mmol)を加え、室温で32時間撹拌した。氷冷下、酢酸(76μL,1.328mmol)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をピリジン(1mL)に懸濁し、無水酢酸(1mL)を加えて、一晩攪拌した。反応液を濃縮して、その残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:3(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル30mL]で粗精製し、次いで分取型GPC(クロロホルム)により目的物(21)(162mg,57.4%)を単離した。
【表15】

【0053】
〔合成例5〕n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(26)の合成
化合物(26)は下記のスキームのように合成を行った。
【化9】

【0054】
n−ペンテニル O−(2,3−ジ−O−アセチル−4,6−O−イソプロピリデン−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(23)の合成
アルゴン雰囲気下、既知のペンテニルラクトシド(例えば、Matsuoka及びNishimura,Macromolecules 28, pp.2961−2968,1995、などを参照のこと)(22)(11.36g 27.67mmol)をDMF(100mL)に溶解させ、氷冷下で2−メトキシ−1−プロペン(5.2mL,55.53mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(1.05g,5.52mmol)を順に加え、氷冷のまま3時間撹拌した。その後、ピリジン(80mL)および無水酢酸(65.3mL,692.01mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル0.9L]で精製し、目的物(23)(14.56g,79.6%)を得た。
【表16】

【0055】
n−ペンテニルO−(2,3−ジ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(24)の合成
完全保護ラクトシド(23)(200mg,0.303mmol)を酢酸(1.6mL)に溶解させ、水(0.4 mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[1:4(v/v)トルエン−酢酸エチル, シリカゲル20mL]で精製し、目的物(24)(178mg,94.7%)を得た。
【表17】

【0056】
n−ペンテニル O−(2,3−ジ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(25)の合成
アルゴン雰囲気下、ジオール(24)(155mg,0.250mmol)をピリジン (2.5mL)に溶解させ、氷冷下でトリフェニルホスフィン(98mg,0.374mmol)および四臭化炭素(124mg,0.473mmol)を順に加え、50℃で30分、60℃で3時間時間撹拌した。氷冷下、さらにトリフェニルホスフィン(65mg,0.248mmol)および四臭化炭素(83mg,0.250mmol)を順に加え、60℃で30分撹拌した。氷冷下、メタノール(1mL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣を少量のメタノールに溶解させ、そこにトルエンを加えて結晶化した副生成物をセライト濾過により除去し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[3:1(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル25mL]で精製し、目的物(25)(130mg,76.0%)を得た。
【表18】

【0057】
n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−ガラクトピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(26)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(5)(169mg,0.308mmol)及びブロミド(25)(105mg,0.154mmol)をDMF−メタノール混合液(1:1(v/v),1mL)に溶解させ、氷冷下で炭酸カリウム(43mg,0.311mmol)を加え、室温で36時間撹拌した。氷冷下、酢酸(35μL,0.611mmol)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をピリジン(2mL)に懸濁し、無水酢酸(1.5mL)を加えて、3日間攪拌した。反応液を濃縮して、その残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[1:1→2:3→0:1(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル25mL]で粗精製し、次いで分取型GPCにより目的物(26)(80mg,45.2%)を単離した。
【表19】

【0058】
〔合成例6〕n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(35)の合成
化合物(35)は下記のスキームのように合成を行った。
【化10】

【0059】
O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−α−D−グルコピラノシルブロマイド(28)の合成
市販のセロビオースα−アセテート(PFANSTIEHL LABORATORIES Inc.,Waukegan,IL 60085−0439,USA)(27)(10.00g,14.47mmol)を酢酸(20mL)−無水酢酸(2mL)混合液に溶解させ、氷冷下、30%臭化水素−酢酸溶液(5.9mL,29.48mL)を加えて密栓し、室温で3.5時間攪拌した。さらに氷冷下で30%臭化水素−酢酸溶液(5.9mL,29.48mL)を加えて一晩攪拌した。反応液を氷水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、水で5回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄した。硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をジエチルエーテルで洗浄することにより目的物(28)(10.20g,98.9%)を得た。
【表20】

【0060】
n−ペンテニル O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(29)の合成
アルゴン雰囲気下、セロビオースα−ブロミド(28)(28.10g,40.17mmol)および4−ペンテン−1−オール(20.4mL,201.32mmol)、モレキュラーシーブス4A(35g)をジクロロメタン(180mL)に懸濁させ、2時間攪拌した。−20oCでトリフルオロメタンスルホン酸銀(12.39g,48.22mmol)を加え、40分攪拌し、反応液をセライト濾過し、不溶物をクロロホルムで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせて、氷水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順に洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[4:1(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル0.9L]で精製し、目的物(29)(15.23g,53.8%)を得た。
【表21】

【0061】
n−ペンテニル O−β−D−グルコピラノシル−(1→4)−β−D−グルコピラノシド(30)の合成
ペンテニルセロビオシド(29)(2.89g,4.10mmol)をメタノール(50mL)−ジクロロメタン(5mL)混合液に溶解させ、1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(2mL)を加え、室温で2時間撹拌した。IR−120B(H+型)を加えてpH〜4とした反応液を綿栓濾過し、樹脂をメタノールで洗浄した。濾液と洗浄液を合わせて濃縮し、残渣として、目的物(30)(1.68g,定量的)を得た。
【表22】

【0062】
n−ペンテニル O−(2,3−ジ−O−アセチル−4,6−O−イソプロピリデン−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(31)の合成
アルゴン雰囲気下、セロビオシド(30)(8.14g,19.83mmol)をDMF(80mL)に溶解させ、氷冷下で2−メトキシ−1−プロペン(3.7mL,39.51mmol)およびp−トルエンスルホン酸−水和物(0.75 g,3.94mmol)を順に加え、氷冷のまま2時間、室温に戻して4時間撹拌した。その後、ピリジ(50mL)および無水酢酸(47.0mL,498.08mmol)を加え、室温で一晩攪拌した。反応液を濃縮し、残渣を酢酸エチルに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[5:1 (v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル0.9L]で精製し、目的物(31)(9.37g,71.5%)を得た。
【表23】

【0063】
n−ペンテニル O−(2,3−ジ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(32)の合成
完全保護セロビオシド(31)(185mg,0.280mmol)を酢酸(1.6mL)に溶解させ、水(0.4mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[1:2(v/v)トルエン−酢酸エチル, シリカゲル20mL]で精製し、目的物(32)(168mg,96.6%)を得た。
【表24】

【0064】
n−ペンテニル O−(2,3−ジ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(33)の合成
アルゴン雰囲気下、ジオール(32)(1.71g,2.76mmol)をピリジン(25mL)に溶解させ、氷冷下でトリフェニルホスフィン(1.45g,5.53mmol)および四臭化炭素(1.83g,5.52mmol)を順に加え、50℃で1時間時間撹拌した。氷冷下、メタノール(5mL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣を少量のメタノールに溶解させ、そこにトルエンを加えて結晶化した副生成物をセライト濾過により除去し、濾液を濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[1:1(v/v)ヘキサン−酢酸エチル,シリカゲル25mL]で精製し、目的物(33)(1.86g,98.9%)を得た。
【表25】

【0065】
n−ペンテニル O−(2,3,4−トリ−O−アセチル−6−ブロモ−6−デオキシ−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(34)の合成
アルゴン雰囲気下、アルコール(33)(1.08g,1.58mmol)をピリジン(5mL)に溶解させ、氷冷下で無水酢酸(0.75mL,7.95mmol)を加え、室温で6時間時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[2:1(v/v)トルエン−酢酸エチル,シリカゲル80mL]で精製し、目的物(34)(1.15g,定量的)を得た。
【表26】

【0066】
n−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−O−(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−2,3,6−トリ−O−アセチル−β−D−グルコピラノシド(35)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(5)(227mg,0.413mmol)及びブロミド(34)(200mg,0.276mmol)をDMF(0.8mL)に溶解させ、氷冷下でジエチルアミン(0.43mL,4.11mmol)を加え、室温で20時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、1M 塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[100:30:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール,シリカゲル40mL]で粗精製し、ついで分取型GPCにより目的物(35)(249mg,78.3%)を単離した。
【0067】
〔合成例7〕チオシアロオリゴ糖結合型デンドリマーの合成
チオシアロオリゴ糖結合型デンドリマーを以下のスキームのように合成した。
【化11】

【0068】
4−アセチルチオ−ペンテニル S−(メチル 5−アセトアミド−4,7,8,9−テトラ−O−アセチル−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−2,3,4−トリ−O−アセチル−1,6−チオ−β−D−グルコピラノシド(36s)の合成
アルゴン雰囲気下、ペンテニルグリコシド(16)(216mg,0.245mmol)を1,4−ジオキサン(0.5mL)に溶解し、チオ酢酸(1mL,13.99mmol)を加え、加熱し50℃とした。そこでAIBN(80mg,0.49mmol)を加え、80℃で3時間撹拌した。その後、氷冷下でシクロヘキセン(99μL,0.98mmol)を加え、室温に戻して数分間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィ[トルエン→酢酸エチル,シリカゲル25mL]で精製し、目的物(36s)(235mg,定量的)を得た。
【表27】

【0069】
Fan(0)3−NeuSGlcS(OAc,OMe)(37s)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(36s)(180mg,0.188mmol)、及びFan(0)3−Brデンドリマー(20mg,0.042mmol)をDMF(0.45mL)−メタノール(0.25mL)混合液に溶解させた。そこに1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(207μL,0.207mmol)を加え、室温で19時間撹拌した。その後、氷冷下で酢酸(12μL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下、ピリジン(0.5mL)に懸濁させ、無水酢酸(0.5mL)を加え、室温で5時間撹拌した。その後反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[15:14:1→10:9:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール, シリカゲル20 mL]で精製し、目的物(37s)(86mg,68.3%)を得た。また、副生成物として2糖ダイマー(41s)(31mg)を得た。
【0070】
Ball(0)4−NeuSGlcS(OAc,OMe)(38s)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(36s)(180mg,0.188mmol)、及びBall(0)4−Brデンドリマー(17mg,0.033mmol)をDMF(0.45mL)−メタノール(0.25mL)混合液に溶解させた。そこに1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(207μL,0.207mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。その後、氷冷下で酢酸(12μL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下、ピリジン(0.5mL)に懸濁させ、無水酢酸(0.5mL)を加え、室温で22時間撹拌した。その後反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[15:14:1→7:7:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール,シリカゲル20mL]で精製し、目的物(38s)(75mg,59.1%)を得た。また、副生成物として2糖ダイマー(41s)(22mg)を得た。
【0071】
Dumbbell(1)6−NeuSGlcS(OAc,OMe)(39s)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(36s)(190mg,0.199mmol)、及びDumbbell(1)6−Brデンドリマー(21mg,0.023mmol)をDMF(0.45mL)−メタノール(0.25mL)混合液に溶解させた。そこに1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(219μL,0.219mmol)を加え、室温で23時間撹拌した。その後、氷冷下で酢酸(13μL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下、ピリジン(0.5mL)に懸濁させ、無水酢酸(0.5mL)を加え、室温で22時間撹拌した。その後反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[15:14:1→5:4:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール,シリカゲル20mL]で精製し、目的物(39s)(87mg,64.9%)を得た。また、副生成物として2糖ダイマー(41s)(33mg)を得た。
【0072】
Ball(1)12−NeuSGlcS(OAc,OMe)(40s)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(36s)(180mg,0.188mmol)、及びBall(1)12−Brデンドリマー(20mg,0.011mmol)をDMF(0.45mL)−メタノール(0.25mL)混合液に溶解させた。そこに1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(207μL,0.207mmol)を加え、室温で8時間撹拌した。その後、氷冷下で酢酸(12μL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下、ピリジン(0.5mL)に懸濁させ、無水酢酸(0.5mL)を加え、室温で24時間撹拌した。その後反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、水で洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[15:14:1→15:0:1 (v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール,シリカゲル20mL]で精製し、目的物(38s)(50mg,37.6%)を得た。
化合物(36o)の合成についても化合物(36s)と同様に行った。
また、化合物(36o)及び化合物(35)を担持したファン型、ボール型、ダンベル型の各デンドリマー化合物も上記(〔合成例7〕)と同様に合成した。
さらに、化合物(11)及び化合物(26)を担持したファン型、ボール型、ダンベル型の各デンドリマー化合物も上記(〔合成例7〕)と同様に合成した。
【0073】
〔合成例8〕エーテルおよびアミド伸長型チオシアロオリゴ糖結合型デンドリマーの合成
エーテルおよびアミド伸長型チオシアロオリゴ糖結合型デンドリマーを以下のスキームのように合成した。
【化12】

【0074】
Fan(0)3-エーテル-NeuSGlcO(OAc,OMe) (42o)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(36o)(249.6mg, 265.5μmol)、及びFan(0)3−エーテル−Brデンドリマー(38.1mg, 59.0μmol)をDMF(0.25mL)−メタノール(0.25mL)混合液に溶解させた。そこに1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(266μL,266μmol)を加え、室温で24時間撹拌した。その後、氷冷下で酢酸(15μL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下、ピリジン(1.5mL)に懸濁させ、無水酢酸(1.5mL)を加え、35℃で一晩撹拌した。その後反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[10:9:1→8:6:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール, シリカゲル30 mL]で精製し、目的物(42o)(144.7mg,79.2%)を得た。
ボール型、ダンベル型についても同様に合成を行った。
さらに、化合物(35)、化合物(11)及び化合物(26)を担持したエーテル伸長型デンドリマーについても上記と同様に合成を行った。
【0075】
Fan(0)3-アミド-NeuSGlcO(OAc,OMe) (43o)の合成
アルゴン雰囲気下、チオアセテート(36o)(250.0mg, 266.0μmol)、及びFan(0)3−アミド−Brデンドリマー(59.1mg, 47.9μmol)をDMF(0.25mL)−メタノール(0.25mL)混合液に溶解させた。そこに1M ナトリウムメトキシド・メタノール溶液(266μL,266μmol)を加え、室温で24時間撹拌した。その後、氷冷下で酢酸(15μL)を加えて反応を停止させ、反応液を濃縮した。残渣をアルゴン雰囲気下、ピリジン(1.5mL)に懸濁させ、無水酢酸(1.5mL)を加え、35℃で一晩撹拌した。その後反応液を濃縮し、残渣をクロロホルムに溶解させ、1M 硫酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水乾燥させた後、セライト濾過し、濾液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ[10:9:1→8:6:1→6:5:1(v/v/v)クロロホルム−酢酸エチル−メタノール, シリカゲル30mL]で精製し、目的物(43o)(103.8mg,53.9%)を得た。
ボール型、ダンベル型についても同様に合成を行った。
さらに、化合物(35)、化合物(11)及び化合物(26)を担持したアミド伸長型デンドリマーについても上記と同様に合成を行った。
【0076】
〔合成例9〕チオシアロシド化合物の脱保護
上述のように合成した、デンドリマー及びモノマーを含むチオシアロシド化合物の脱保護を下記のスキームのように行った。
【化13】

【0077】
Fan(0)3−NeuSGlcO(OH)(44o)の合成
アルゴン雰囲気下、Fan(0)3-NeuSGlcO(OAc,OMe)(37o) (48.1mg, 16.5μmol)をメタノール(0.5mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(1M メタノール溶液, 8μL, 8μM)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(2mL)を加えて一晩撹拌し、強酸性陽イオン交換樹脂Dowex-50W-X8(H+)(適量)を加えてpH〜4とした後、綿栓ろ過を行い、ろ液を濃縮した。その残渣をゲルろ過(Sephadex G-25: 250mL, 5%AcOH aq.)で精製した後、凍結乾燥を行い、白色固体として目的物(44o)(30.5mg, 92.7%)を得た。
【表28】


【0078】
n−ペンテニル S−(5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−6−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(45)の合成
【化14】


アルゴン雰囲気下、NeuSGlcO(OAc,OMe)(6)(79.1mg,91.6μmol)をメタノール(1.0 mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(1M メタノール溶液, 50μL, 50μM)を加え、室温で30分間撹拌した。その後、0.5M 水酸化ナトリウム水溶液(2mL)を加えて一晩撹拌し、強酸性陽イオン交換樹脂Dowex−50W−X8 (H)を適量加えてpH〜4とした後、綿栓ろ過を行った。ろ液を濃縮し、残渣をゲルろ過(Sephadex G−15:220 mL,5% AcOH aq.)で精製した後、凍結乾燥を行い、白色固体として目的物(45)(54.3mg, 99.3%)を得た。
【表29】

【0079】
n−ペンテニル S−(5−アセトアミド−3,5−ジデオキシ−D−グリセロ−α−D−ガラクト−2−ノニュロピラノシロネート)−(2→6)−O−(6−チオ−β−D−グルコピラノシル)−(1→4)−β−D−グルコピラノシド(46)の合成
【化15】


アルゴン雰囲気下、NeuSCel(OAc,OMe)(35)(61.1mg, 53.0μmol)をメタノール(0.8mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(1M メタノール溶液, 40μL, 40μM)を加え、室温で30分間撹拌した。その後、0.5M水酸化ナトリウム水溶液(2mL)を加えて一晩撹拌し、強酸性陽イオン交換樹脂Dowex−50W−X8(H)を適量加えてpH〜4とした後、綿栓ろ過を行った。ろ液を濃縮し、残渣をゲルろ過(Sephadex G−15: 220mL, 5%AcOH aq.)で精製した後、凍結乾燥を行い、白色固体として目的物(46)(38.2mg, quant.)を得た。
【表30】


以下のシアリダーゼ阻害活性の測定には、脱保護した化合物を使用した。
【0080】
〔実験例〕シアリダーゼ阻害アッセイ法
前記合成例に示すように合成した下記の化合物についてシアリダーゼ阻害活性を測定した。
【化16】


96穴プレートに種々の濃度の合成阻害剤(本発明に係る上記化合物及びポジティブコントロール(ザナミビルあるいはオセルタミビル))(4μL)とインフルエンザA型ウィルス(H1N1:Aソ連型、H3N2:A香港型)懸濁液(4μL)を加え、4℃、1時間インキュベートした。各ウェルにシアリダーゼの基質として0.4mM 4−Mu−Neu5Ac(4−メチルウンベリフェリル−N−アセチル−α−D−ノイラミン酸)(2μL)を加え、37℃、30分インキュベートし、停止溶液(200μL)を加えた。この混合物(100μL)を新規の96穴マイクロプレートに移し、励起波長 Ex.355nm、蛍光波長 Em.460nmの蛍光強度を測定し、インフルエンザウィルスシアリダーゼに対する各化合物のIC50値を測定した。
測定結果を以下の表に示す。
【表31】


【表32】


【表33】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明はインフルエンザウィルスのノイラミニダーゼ活性を有効に阻害することから、抗インフルエンザ薬の開発に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)
【化1】


(式中、E及びEは、炭素、ケイ素、ゲルマニウムのいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよく、R、Rは、同一又は異なった炭化水素基を示し、R、R及びRは酸素、窒素及び/又はカルボニル基を含んでもよい同一又は異なった炭化水素鎖を示し、Yはチオシアロオリゴ糖残基若しくは他の置換基であって少なくとも1つはチオシアロオリゴ糖残基を示し、lは0〜2の整数であり、mは0〜2の整数であり、kは0又は1の数を示し、kが0のときは3−mは1である)で表されるチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項2】
及びRが同一又は異なる炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ビニル基、又はアルケニル基である請求項1に記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項3】
、R及びRが同一又は異なり、アミド結合を含んでもよく、炭素数1〜6の直鎖アルキル基、アルキレン基、又はアルケニレン基、又はアルコキシレン基(オキシアルキレン基)である請求項1又は請求項2に記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項4】
及びEがケイ素である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項5】
がフェニル基、Rが−C−、−C−O−C−又は−C−NHCOC10−、Rが−C10−、Yが以下の置換基
【化2】


のずれかであり、kが0、lが1、mが2である請求項4に記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項6】
が−C−、−C−O−C−又は−C−NHCOC10−、Rが−C10、Yが以下の置換基
【化2】


のずれかであり、kが0、lが0、mが2である請求項4に記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項7】
がメチル基、R及びRが−C−、−C−O−C−又は−C−NHCOC10−、Rが−C10、Yが以下の置換基
【化2】


のずれかであり、kが1、lが2、mが0である請求項4に記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項8】
及びRが−C−、−C−O−C−又は−C−NHCOC10−、Rが−C10、Yが以下の置換基
【化2】


のずれかであり、kが1、lが0、mが0である請求項4に記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物若しくはその薬理学上許容される塩又はそれらの水和物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のチオシアロオリゴ糖結合デンドリマー化合物、その薬剤上許容される塩及びそれらの水和物、並びに薬剤上許容される担体を含有することを特徴とする感染症の治療のための医薬。
【請求項10】
前記感染症がインフルエンザウィルス感染症であることを特徴とする請求項8に記載の医薬。

【公開番号】特開2009−242387(P2009−242387A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55892(P2009−55892)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(500433225)学校法人中部大学 (105)
【Fターム(参考)】