説明

テンションセンサ

【課題】熱や、共振に由来する検出精度の低下を効果的に防ぐことができ、糸の張力を正確に検出することができる、テンションセンサを提供する。
【解決手段】リニアセンサ20を構成するセンサロッド22のロッド本体23を中空の筒状体で構成して重量を軽減化し、センサロッド22の固有振動数を大きくして、センサロッド22の共振を防ぐことができる。また、ロッド本体23の表面積を大きくして、放熱効果の向上を図ることができるので、周囲環境温度の変化等に起因する、ロッド本体23の長さ寸法の変化を抑えることができる。以上のように、本発明によれば、温度要因によるセンサロッド22の長さ変化と、糸、又は繊維機械等からの振動に由来するセンサロッド22の共振を効果的に防ぐことができるので、センサヘッド21によるコア24の変位量の正確な検出が可能となり、検出精度に優れたテンションセンサを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機等の繊維機械における巻き取り中の糸の張力を測定するテンションセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明は、リニアセンサにより糸の張力を検出するテンションセンサに関するが、この種のテンションセンサは、例えば特許文献1に公知である。特許文献1のテンションセンサは、固定部と可動部との間を連結する弾性部が、所定間隔を置いて平行に配置された2枚の板バネで構成されている。可動部には、測定対象である糸と係合する係合部が設けられている。リニアセンサは、固定部に固定された筒状のセンサヘッドと、該センサヘッドに対して相対的に直線変位可能に構成されたセンサロッドとを有する。センサロッドの一端が可動部に連結され、他端がセンサヘッド内で自由に動き得る自由端とされている。また、センサロッドは、可動部に連結されたロッド本体と、ロッド本体の自由端に形成されたコアとからなる。ロッド本体は中実の軸体で構成され、コアには、非磁性体と磁性体とが交互に配設されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−47526号公報
【特許文献2】特開2007−93397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の繊維機械に設けられるテンションセンサでは、熱に由来する検出精度の低下と、共振に由来する検出精度の低下が問題となる。すなわち、この種のテンションセンサでは、係合部と糸との間で発生した摩擦熱、或いは周囲環境温度の変化によりロッドの長さ寸法が変化すると、正確にセンサヘッドでコアの位置を検出することが困難となり、張力の検出精度が低下することが避けられない。また、糸、又は繊維機械の振動を受けてロッド本体が共振することによっても、正確にセンサロッドでコアの位置を検出することが困難となり、結果として検出精度が低下することが避けられない。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、熱に由来する検出精度の低下や、共振に由来する検出精度の低下を効果的に防ぐことができ、糸の張力を正確に検出することができる、テンションセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るテンションセンサは、リニアセンサを備える固定部と、該固定部に弾性部を介して取り付けられた可動部とを有する。前記可動部には、測定対象となる糸と係合する係合部が設けられており、前記係合部を介した前記可動部の変位量を前記リニアセンサで検出することにより、糸の張力を計測する。前記リニアセンサは、前記固定部に固定された筒状のセンサヘッドと、該センサヘッドに対して相対的に直線変位可能に構成されたセンサロッドとを有し、該センサロッドの一端が可動部に連結された固定端とされ、他端がセンサヘッド内に挿入されて該センサヘッド内で自由に動き得る自由端とされている。前記センサロッドは、前記可動部に連結されたロッド本体と、該ロッド本体の自由端に形成されたコアとからなる。そして、前記ロッド本体が、非磁性体からなる中空の筒状体で構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記コアが、磁性体のみで構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明におけるテンションセンサにおいては、ロッド本体を中空の筒状体で構成したので、ロッド本体の表面積を大きくして、放熱効果の向上を図ることができる。これにより、係合部と糸との間で発生した摩擦熱、或いは周囲環境温度の変化に起因する、ロッド本体の長さ寸法の変化を抑えることができるので、センサヘッドによるコアの位置の正確な検出が可能となる。
【0009】
また、ロッド本体を中空の筒状体で構成してあると、ロッド本体が中実の軸体である場合に比べて、ロッドの全体重量を軽減化できるので、ロッドの固有振動数を大きくできる。これにより、糸、又は繊維機械からの振動を受けて、ロッドが共振することを効果的に防ぐことができ、また、共振が発生した場合でも振幅を抑えることができるので、センサヘッドによるコアの位置の正確な検出が可能となる。
【0010】
以上のように、本願発明においては、ロッド本体を中空の筒状体で構成したことにより、温度要因によるロッド長変化と、糸、又は繊維機械からの振動に由来するロッドの共振を効果的に防ぐことができるので、コアの位置の正確な検出を可能として、検出精度に優れたテンションセンサを得ることができる。
【0011】
コアを磁性体のみで構成してあると、非磁性体の分だけセンサロッドの自由端側の重量の軽減を図ることができるので、ロッド本体を中空の筒状体で構成したこと相俟って、センサロッドの固有振動数を大きくすることができる。これによっても、糸、又は繊維機械からの振動を受けてセンサロッドが共振することを効果的に防ぐことができ、また、共振が発生した場合でも振幅を抑えることができるので、センサヘッドによるコアの位置の正確な検出が可能となり、検出精度に優れたテンションセンサを得ることができる。非磁性体を廃したことに伴う、部品点数の削減効果や、製造コストの削減効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るテンションセンサを示す横断平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本願発明に係るテンションセンサの斜視図である。
【図4】要部の斜視図である。
【図5】本発明に係るテンションセンサが適用される繊維機械装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
図1ないし図5に、本発明に係るテンションセンサを繊維機械装置に適用した実施形態を示す。図5に示すように、繊維機械装置は、給糸部Bから所定形状のパッケージPを形成するものであり、給糸部BからパッケージPに至る糸Yの経路上に、テンションセンサ2、テンションコントロール装置3、巻上げ装置4などを備える。
【0014】
巻き取り時の糸Yの張力が不均一であると、生産されるパッケージPの歩留まりの低下を招き、また、過剰な張力が糸Yに加わると糸品質の不良が発生する。そこで、巻き取り時の糸Yの張力を均一に保つため、経路上の糸Yの張力をテンションセンサ2により測定し、この測定結果に応じてテンションコントロール装置3により張力を大小に調整する。符号5はテンションセンサ2による測定結果に基づいてテンションコントロール装置3をコントロールするための制御部を示す。
【0015】
図1に示すように、テンションセンサ2は、繊維機械装置のシャーシ6にビス7により固定された固定部10と、固定部10に弾性部11を介して取り付けられた可動部12とを有する。固定部10は、シャーシ6に固定される左右方向に伸びる締結座14と、締結座14の基端から前方向に伸びる支持腕15とを有する上方視で略L字状のブロック体であり、締結座14の遊端に、テンションセンサ2の計測要素となるリニアセンサ20のセンサヘッド21が装着されている。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、図1において示した方向を前後および左右方向と規定する。
【0016】
弾性部11は、一枚の金属板をコ字状にプレス成形してなるものであり、左右方向に並行状に伸びる第1および第2の板バネ片30・31と、両板バネ片30・31の基端を繋ぐ座片32とを含む。弾性部11の座片32に沿うように、四角ブロック状の連結ブロック33が装着されており、両板バネ片30・31と連結ブロック33を貫通して支持腕15の前面に打ち込まれた二本のビス34・34によって、弾性部11は固定部10に固定されている。
【0017】
両板バネ片30・31の遊端には、可動部12が装着されている。可動部12は、二本のビス40・40により板バネ片30・31の遊端に固定された支持ブロック41と、支持ブロック41に装着されて張力の測定対象である糸Yと係合する係合部42とで構成される。係合部42は、糸Yに接するローラ状の案内部43と、案内部43を回転自在に支持する支持軸44とを有する。案内部43の外面には、上方向に走行移動する糸Yを案内する案内溝が形成されている。
【0018】
リニアセンサ20は、固定部10に装着された筒状のセンサヘッド21と、センサヘッド21に対して相対的に前後方向に直線変位可能に構成されたセンサロッド22とを有する。センサロッド22の一端(前端)は可動部12の支持ブロックに連結固定された固定端とされ、他端(後端)がセンサヘッド21内に挿入されて、センサヘッド21内に自由に動き得る自由端とされている。センサロッド22は、可動部12に連結された非磁性体からなるロッド本体23と、ロッド本体23の自由端に外嵌装着されたコア24とからなる。
【0019】
図1に示すように、糸Yは案内部43との接触部分において屈曲し、この接触部分において、案内部43には糸Yの上流方向に加わる張力と、糸Yの下流方向に加わる張力とを合成した後方向の押圧力、換言すれば、糸Yが屈曲状態から直線状態に復帰しようとする復帰力を受ける。これに対し、一対の板バネ片30・31からなる弾性部11は、糸Yが可動部12に与える復帰力とは逆向き、すなわち前向きの付勢力を可動部12に与える。
案内部43が糸Yから後ろ向きの復帰力を受けると、図1に想像線で示すように、その復帰力の大きさに応じて、可動部12の全体が固定部10に対して後方に変位し、この変位に伴ってセンサロッド22のコア24が後方に変位する。このコア24の変位量をセンサヘッド21で検出することにより、糸Yの張力を測定することができる。センサヘッド21による測定値は制御部5に送られ、制御部5は測定値に基づいて、テンションコントロール装置3により糸Yに付与する張力を増減させて、張力を最適値に近付ける制御を行い、また測定値が許容範囲を超えている場合には、巻上げ装置4を緊急停止させるなどの制御を行う。
【0020】
そのうえで、本実施形態に係るテンションセンサ2では、図2および図4に示すように、センサロッド22を構成するロッド本体23が中空の筒状体で構成されていることを特徴とする。このように、ロッド本体23を中空の筒状体で構成してあると、ロッド本体23の表面積を大きくして、放熱効果の向上を図ることができるので、係合部42と糸Yとの間で発生した摩擦熱、或いは周囲環境温度の変化に起因する、ロッド本体23の長さ寸法の変化を効果的に抑えることができる。従って、張力変化に伴うセンサヘッド21によるコア24の変位量の正確な検出が可能となる。
【0021】
また、ロッド本体23を中空の筒状体で構成してあると、ロッド本体23が中実の軸体である場合に比べて、センサロッド22の全体重量を軽減化できるので、センサロッド22の固有振動数を大きくすることができる。これにより、糸、又は繊維機械装置からの振動を受けて、センサロッド22が共振することを効果的に防ぐことができ、また、共振が発生した場合でも振幅を抑えることができるので、センサヘッド21によるコア24の変位量の正確な検出が可能となる。
【0022】
このように、ロッド本体23を中空の筒状体で構成してあると、温度変化に起因するセンサロッド22の長さ寸法の変化を抑えるとともにと、糸、又は繊維機械装置からの振動に由来するセンサロッド22の共振を効果的に防ぐことができるので、コア24の変位量の正確な検出が可能となり、検出精度に優れたテンションセンサを得ることができる。
【0023】
また、本実施形態では、ロッド本体23の遊端部に装着されるコア24の非磁性体を廃して、コア24を磁性体のみで構成している。これによれば、非磁性体の分だけセンサロッド22の自由端側の重量の軽減を図ることができるので、ロッド本体23を中空の筒状体で構成したこと相俟って、センサロッド22の固有振動数を大きくすることができる。これによっても、糸、又は繊維機械装置からの振動を受けてセンサロッド22が共振することを効果的に防ぐことができ、また、共振が発生した場合でも振幅を抑えることができるので、センサヘッド21によるコア24の変位量の正確な検出が可能となり、検出精度に優れたテンションセンサを得ることができる。コア24から非磁性体を廃したことにより、部品点数を減らして、テンションセンサ2の全体コストのコストダウンを図ることができる点でも有利である。
【0024】
上記実施形態のテンションセンサ2では、固定部10と可動部12とを繋ぐ弾性部11を、並行状に配設された二本の板バネ片30・31で構成したが、本発明はこれに限られず、弾性部11を構成する板バネ片は一本であってもよい。また、固定部10や可動部12などの詳細構造は、上記実施形態に示したものに限られない。
【符号の説明】
【0025】
2 テンションセンサ
10 固定部
11 弾性部
12 可動部
20 リニアセンサ
21 センサヘッド
22 センサロッド
23 ロッド本体
24 コア
42 係合部
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアセンサを備える固定部と、該固定部に弾性部を介して取り付けられた可動部とを有し、
前記可動部には、測定対象となる糸と係合する係合部が設けられており、
前記係合部を介した前記可動部の変位量を前記リニアセンサで検出することにより、糸の張力を計測するテンションセンサであって、
前記リニアセンサは、前記固定部に固定された筒状のセンサヘッドと、該センサヘッドに対して相対的に直線変位可能に構成されたセンサロッドとを有し、該センサロッドの一端が可動部に連結された固定端とされ、他端がセンサヘッド内に挿入されて該センサヘッド内で自由に動き得る自由端とされており、
前記センサロッドが、前記可動部に連結されたロッド本体と、該ロッド本体の自由端に形成されたコアとからなり、
前記ロッド本体が、非磁性体からなる中空の筒状体で構成されていることを特徴とするテンションセンサ。
【請求項2】
前記コアが、磁性体のみで構成されている請求項1記載のテンションセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−163879(P2011−163879A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25881(P2010−25881)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】