説明

テープラップ装置のアームクランプ機構

【課題】被加工物の偏心軸の回転数の自由度が大幅に高く、高精度のミクロ仕上げを可能にしたアームクランプ機構を有するテープラップ装置を提供。
【解決手段】機械本体 6に軸方向に移動可能に配置されたコラム64に設けた揺動軸 7に揺動可能に支持された揺動体 9と、揺動体 9に設けた軸方向穴12に軸方向に移動可能に配置されたアームクランプ軸10と、機械本体 6に支持されアームクランプ軸10の一端13を押圧可能な押圧面14を有する駆動装置15とを有し、アームクランプ軸10の一端13を駆動装置15の押圧面14が押圧してシュー組立体 5、5を固定する一対のアーム 16、16を閉じたとき、駆動装置15の押圧面14は揺動体 9及びアームクランプ軸10の一端13より後退してアームクランプ軸10とは切り離すようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨材被覆テープと、該テープ研磨材被覆面を鋼管、クランクシャフトを含む自動車部品などの被加工物の回転軸表面に接触させ押圧する剛性表面を有するシュー組立体とからなり、被加工物の回転軸が回転されて加工されるテープラップ装置のアームクランプ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の研磨材被覆テープと、該テープ研磨材被覆面をクランクシャフトを含む自動車部品などの被加工物の回転軸表面に接触させ押圧する剛性表面を有するシュー組立体とからなるテープラップ装置としては、例えば特許文献1に開示するものがある。このものはその図7、図9に記載するように、被加工物の軸(X)方向及び軸(X)方向に直交する直交(Y)方向に移動可能に支持された一対のアームに固定したシュー押圧クランプ駆動シリンダが一対のシューを介して被加工物の回転軸をクランプし、被加工物の回転軸を自転・公転させて回転軸のミクロ仕上げを行っていた。
【特許文献1】特許第3558917号公報 図7、図9
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の特許文献1に開示するテープラップ装置のアームクランプ機構では、一対のアームに固定したシュー押圧クランプ駆動シリンダが、被加工物の回転軸を自転・公転させたとき、被加工物の回転軸の自転・公転に対応した追従運動を行っていた。被加工物の回転軸の高精度のミクロ仕上げを行うため、被加工物の回転軸の高速回転を必要とするとき、アーム開閉クランプ駆動シリンダへの動力源ホースが追従運動時に切断する危険や、アーム開閉クランプ駆動シリンダの重量増加が大きいことにより、大幅な被加工物の偏心軸の高速回転を行うことが困難で、被加工物の偏心軸の回転数の自由度がなく、高精度のミクロ仕上げが困難であった。
【0004】
本発明の課題は、研磨材被覆テープと、該テープ研磨材被覆面を鋼管、クランクシャフトを含む自動車部品などの被加工物の回転軸表面に接触させ押圧する剛性表面を有するシュー組立体とからなり、被加工物の回転軸が回転されて加工されるテープラップ装置のアームクランプ機構において、アーム開閉クランプ駆動シリンダへの動力源ホースが追従運動時に切断する危険がなく、アーム開閉クランプ駆動シリンダの重量増加がが少なく、被加工物の偏心軸の回転数の自由度が大幅に高く、高精度のミクロ仕上げを可能にしたアームクランプ機構を有するテープラップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため本発明は、研磨材被覆テープと、該テープ研磨材被覆面を鋼管、クランクシャフトを含む自動車部の回転軸表面に接触させ押圧する剛性表面を有するシュー組立体とからなり、被加工物の回転軸を自転・公転させて回転軸のミクロ仕上げを行うテープラップ装置において、機械本体と、機械本体に軸方向に移動可能に配置されたコラムに設けた揺動軸に揺動可能に支持された揺動体と、揺動体に設けた軸方向穴に軸方向に移動可能に配置されたアームクランプ軸と、該機械本体に支持され該アームクランプ軸の一端を押圧可能な押圧面を有する駆動装置と、該アームクランプ軸の一端を該駆動装置の押圧面が押圧して該シュー組立体を支持する一対のアームを閉じたとき、該アームクランプ軸をその位置にクランプ保持する第1のスプリングに付勢されたクランプ爪と、該クランプ爪を該第1のスプリングに抗して外すアンクランプ装置と、該クランプ爪を外したとき該アームクランプ軸を該第1のスプリングの逆方向に付勢して該一対のアームを開く第2のスプリングとを有し、該アームクランプ軸の一端を該駆動装置の押圧面が押圧して該シュー組立体を固定する一対のアームを閉じたとき、該駆動装置の押圧面は該揺動体及び該アームクランプ軸の一端より後退して該アームクランプ軸とは切り離すようにされたことを特徴とするテープラップ装置のアームクランプ装置を提供することによって上記した従来製品の課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
かかる構成により、アームクランプ軸の一端を該駆動装置の押圧面が押圧して該シュー組立体を固定する一対のアームを閉じたとき、該駆動装置の押圧面は該揺動体及び該アームクランプ軸の一端より後退して該アームクランプ軸とは切り離すようにされ、アームクランプ軸は一対のアームを閉じた位置でクランプ爪によりクランプ保持され、コラム、揺動体及び該アームクランプ軸のみが、被加工物の回転軸の自転・公転に対応した追従運動を行うので、アーム開閉クランプ駆動シリンダへの動力源ホースが追従運動時に切断する危険がなく、かつアーム開閉クランプ駆動シリンダの重量増加が少なく、被加工物の偏心軸の回転数の自由度を大幅に高くし、高精度のミクロ仕上げを可能にしたアームクランプ機構を有するテープラップ装置を提供するものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態の一例を図面を参照して説明する。図1(a)は本発明を実施形態の被加工物の回転軸テープラップ装置のアームクランプ機構の構成概略要部側面図で、(b)のA−A断面に沿って一対のアームが開いた状態で示し、(b)は(a)のB−B断面に沿った要部断面図で、被加工物 2は一部を省略して示し、図2(a)は図1(a)の一対のアームを閉じた状態で示す一部を切り欠いた拡大側面断面図を示し、(b)は(a)のC−C断面に沿った、図1(b)のB部下部水平面断面図で、(c)は(a)の一対のアームを閉じた状態で被加工物の回転軸を公転させたときの被加工物の回転軸の軌跡と、軸の公転に対応した追従運動を行う揺動体の揺動軸の軌跡と、をそれぞれ示す。
【0008】
図1、図2に示すように、本発明の実施形態のテープラップ装置は、研磨材被覆テープ11と、テープ11の研磨材被覆面 8を鋼管、クランクシャフトを含む自動車部品などの被加工物 2表面である回転軸 3に接触させ押圧する剛性表面 4を有するシュー組立体 5とからなり、被加工物 2の回転軸 3を自転・公転させて回転軸 3のミクロ仕上げを行う。本発明の実施形態のテープラップ装置のアームクランプ機構 1は、機械本体 6と、機械本体 6に軸方向に移動可能に配置されたコラム64に設けた揺動軸 7に揺動可能に支持された揺動体 9と、揺動体 9に設けた軸方向穴12に軸方向に移動可能に配置されたアームクランプ軸10と、機械本体 6に支持されアームクランプ軸10の一端13を押圧可能な押圧面14を有する駆動装置15と、アームクランプ軸10の一端13を駆動装置15の押圧面14が押圧してシュー組立体 5、5を支持する一対のアーム 16、16を閉じたとき(図2(a)のアームクランプ軸10の一端 13'の位置)、アームクランプ軸10をその位置にクランプ保持する第1のスプリング17に付勢されたクランプ爪18と、クランプ爪18を第1のスプリング17に抗して外すアンクランプ装置Bと、クランプ爪18を外したときアームクランプ軸10を第1のスプリング17の逆方向に付勢して一対のアーム 16、16を開く第2のスプリング19とを有し(図1のアームクランプ軸10の一端13の位置)、アームクランプ軸10の一端13を駆動装置15の押圧面14が押圧してシュー組立体 5、5を固定する一対のアーム 16、16を閉じたとき、駆動装置15の押圧面14は揺動体 9及びアームクランプ軸10の一端13より後退してアームクランプ軸10とは切り離すようにされている。
【0009】
図2(a)に示すように、本発明の実施形態のテープラップ装置のアームクランプ機構 1では、クランプ爪18は、アームクランプ軸10に固定されたクランプスリーブ20の爪穴21に嵌まり合うようにされ、アンクランプ装置Bは、図2(b)に示すように、機械本体 6の側面26に設けた図示しない爪駆動装置のロッド22、及びロッド22の押圧を受けてクランプ爪18を外す軸に固定されたカラー23を押す、ピン24を支点とする3角形状の旋回部材25とを有する。ピン24を支点とする3角形状の旋回部材25は点線の位置で軸に固定されたカラー23を押してクランプ爪18を外す。さらに、図2(a)に示すように、アームクランプ軸10の一端13を駆動装置15の押圧面14が押圧してシュー組立体 5、5を固定する一対のアーム 16、16を閉じたとき、アームクランプ軸10をその位置にクランプ保持する第3のスプリング27に付勢されたくさび28のくさび面29によりアームクランプ軸10を押圧する押圧ピン30とを有する。アンクランプ装置Bの旋回部材25は、アンクランプ時には同時にくさび28の延長部 28'が、クランプ爪18を外す軸に固定されたカラー23に固定されており、カラー23を押すと同時に延長部 28'、くさび28及びくさび面29を後退させて、アームクランプ軸10を押圧する押圧ピン30を後退させて、くさび面29によるクランプも解くようにされている。
【0010】
図2(a)に示すように、本発明の実施形態のテープラップ装置では、シュー組立体 5、5を支持する一対のアーム 16、16、アーム開閉装置40を一体化したカートリッジ44とし、図示しない交換装置により、揺動体先端45に取り付けられる。機械本体 6に軸方向に移動可能に配置されたコラム64に連結された直動軸受60は上部壁面36に固定されたガイドレール61に案内され、コラム64に連結された直動軸受62はは底面37に固定されたガイドレール63に案内される。アームクランプ軸10は、揺動体 9内のアームクランプ軸部 10aと、カートリッジ44内のアームクランプ軸部 10bとを含み、接続部 10cで機械本体 6の取り付部45に取り付けられたとき連結される。アーム開閉装置40は、カートリッジ44内のアームクランプ軸部 10bがクランプカム41を引いて一対のアーム 16、16の端部 42、42を支軸43を支点として押し開くようにされている。アームクランプ軸10は、揺動体 9内のアームクランプ軸部 10aと、カートリッジ44内のアームクランプ軸部 10bとを含み、カートリッジ44が揺動体先端45に取り付けられたとき、10c で連結される。図2(c)に示すように、一対のアームを閉じた状態で被加工物の回転軸を公転させたときの被加工物の回転軸の軌跡と、軸の公転に対応した追従運動を行う揺動体の揺動軸の軌跡とを描き、揺動体及びアームクランプ軸10は、揺動軸 7の回りに上下Z方向に数度の追従運動を行う。
【0011】
かかる構成により本発明の実施形態のテープラップ装置は、アームクランプ軸の一端を駆動装置の押圧面が押圧してシュー組立体を支持する一対のアームを閉じたとき、駆動装置の押圧面は揺動体及び該アームクランプ軸の一端より後退してアームクランプ軸とは切り離すようにされ、アームクランプ軸は一対のアームを閉じた位置でクランプ爪によりクランプ保持され、コラム、揺動体及び該アームクランプ軸のみが、被加工物の回転軸の自転・公転に対応した追従運動を行うので、アーム開閉クランプ駆動シリンダへの動力源ホースが追従運動時に切断する危険がなく、かつアーム開閉クランプ駆動シリンダの重量増加が少なく、被加工物の偏心軸の回転数の自由度を大幅に高くし、高精度のミクロ仕上げを可能にしたアームクランプ機構を有するテープラップ装置を提供するものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明を実施形態の被加工物の回転軸テープラップ装置のアームクランプ機構の構成概略要部側面図で、(b)のA−A断面に沿って一対のアームが開いた状態で示し、(b)は(a)のB−B断面に沿った要部断面図で、被加工物 2は一部を省略して示す。
【図2】(a)は図1(a)の一対のアームを閉じた状態で示す一部を切り欠いた拡大側面断面図を示し、(b)は(a)のC−C断面に沿った、図1(b)のB部下部水平面断面図で、(c)は(a)の一対のアームを閉じた状態で被加工物の回転軸を公転させたときの被加工物の回転軸の軌跡と、軸の公転に対応した追従運動を行う揺動体の揺動軸の軌跡と、をそれぞれ示す。
【符号の説明】
【0013】
1 :アームクランプ機構 2 :被加工物 3 :回転軸 4:剛性表面
5 :シュー組立体 6 :機械本体 7 :揺動軸 9:揺動体
10:アームクランプ軸 11:研磨材被覆テープ 13:アームクランプ軸の一端
14:駆動装置の押圧面 15:駆動装置 16:アーム
17:第1のスプリング 18:クランプ爪 19:第2のスプリング
45:揺動体先端 60、62 :直動軸受 61、63 :ガイドレール
64:コラム B:アンクランプ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨材被覆テープと、該テープ研磨材被覆面を鋼管、クランクシャフトを含む自動車部の回転軸表面に接触させ押圧する剛性表面を有するシュー組立体とからなり、被加工物の回転軸を自転・公転させて回転軸のミクロ仕上げを行うテープラップ装置において、機械本体と、機械本体に軸方向に移動可能に配置されたコラムに設けた揺動軸に揺動可能に支持された揺動体と、揺動体に設けた軸方向穴に軸方向に移動可能に配置されたアームクランプ軸と、該機械本体に支持され該アームクランプ軸の一端を押圧可能な押圧面を有する駆動装置と、該アームクランプ軸の一端を該駆動装置の押圧面が押圧して該シュー組立体を支持する一対のアームを閉じたとき、該アームクランプ軸をその位置にクランプ保持する第1のスプリングに付勢されたクランプ爪と、該クランプ爪を該第1のスプリングに抗して外すアンクランプ装置と、該クランプ爪を外したとき該アームクランプ軸を該第1のスプリングの逆方向に付勢して該一対のアームを開く第2のスプリングとを有し、該アームクランプ軸の一端を該駆動装置の押圧面が押圧して該シュー組立体を固定する一対のアームを閉じたとき、該駆動装置の押圧面は該揺動体及び該アームクランプ軸の一端より後退して該アームクランプ軸とは切り離すようにされたことを特徴とするテープラップ装置のアームクランプ装置。
【請求項2】
該クランプ爪は、該アームクランプ軸に固定されたクランプスリーブの爪穴に嵌まり合うようにされ、該アンクランプ装置は、該機械本体の側面に設けた爪駆動装置のロッド及びロッドの押圧を受けて該クランプ爪を外す軸を押すピンを支点とする旋回部材とを有することを特徴とする請求項1記載のテープラップ装置のアームクランプ装置。
【請求項3】
該アームクランプ軸の一端を該駆動装置の押圧面が押圧して該シュー組立体を固定する一対のアームを閉じたとき、該アームクランプ軸をその位置にクランプ保持する第3のスプリングに付勢されたくさびのくさび面により該アームクランプ軸を押圧する押圧ピンと、該旋回部材は該くさびを後退させて、該アームクランプ軸を押圧する押圧ピンを後退させてクランプを解くようにされたことを特徴とする請求項1記載のテープラップ装置のアームクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−38389(P2007−38389A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229561(P2005−229561)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】