説明

デジタル信号処理装置

【課題】A/D変換回路において、種々のノイズを除去しつつ、入力アナログ信号の変化に迅速に追従する。
【解決手段】サンプリング回路10からのサンプルデータは演算部16に供給される。また、遅延素子12で1クロック分遅延させたサンプルデータ、及び2クロック分遅延させたサンプルデータも演算部16に供給される。演算部16は、第1差分値=現在値−1つ前の値、第2差分値=1つ前の値−2つ前の値を演算し、第1差分値の絶対値がしきい値を超え、第2差分値がしきい値以下の場合に現在値を1つ前の値で置換して出力し、それ以外は現在値をそのまま出力してノイズを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル信号処理装置、特にA/D変換で得られたデジタル信号のノイズを除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
A/D変換器による回転式のボリュームノブやスライド式ボリューム等の操作子の位置読み取りの際、一般的なノイズ除去方法としてはローパスフィルタ(LPF)でノイズ成分を除去する方法が採用される。
【0003】
しかしながら、振幅の大きいパルスノイズをローパスフィルタで除去する場合、ローパスフィルタの時定数を大きくする必要があり、操作子の操作速度に対してローパスフィルタ出力値の追従が非常に遅くなる問題がある。
【0004】
また、複数の読み取り値の中から最小値と最大値を除去して平均をとる方法(所謂フィギュアスケート採点方法)でも同様に操作子の操作に対して出力値の追従が遅れる。
【0005】
また、読み取り値が連続して3点同じだった場合に最新の読み取り値を採用する方法では、操作子を動かしている最中は変化した結果を出力できない問題がある。
【0006】
下記の特許文献1には、アナログ信号をサンプルホールドし、サンプルホールドされたアナログ信号の差とスパイクノイズ設定値とを比較してスパイクノイズか否かを判定し、スパイクノイズと判定した場合にサンプリング1回分遅延させたアナログ信号を出力してA/D変換するA/Dサンプリング装置が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−252756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術では、信号レベルがパルス的に増大するスパイクノイズを除去することはできても信号レベルが逆にパルス的に減少するようなノイズを除去することはできない。また、上記従来技術では現在のサンプリング値とその1つ前のサンプリング値の差を用いてノイズを除去しているため、例えば信号レベルがノイズではなく実際に順次増大する場合においてもその追従が遅れてしまう。
【0009】
本発明の目的は、種々のノイズを除去でき、かつ、追従性を向上させた処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、操作アナログ信号をサンプリングするサンプリング回路と、前記サンプリング回路からのサンプリング値の現在値、1つ前の値、及び2つ前の値に対し、
第1差分値=現在値−1つ前の値
第2差分値=1つ前の値−2つ前の値
を演算し、前記第1差分値及び前記第2差分値としきい値との大小関係に応じて前記現在値を出力するか前記1つ前の値に置換して出力することでノイズを除去する処理回路と、前記処理回路からの出力をA/D変換するA/D変換器とを有することを特徴とする。また、本発明は、操作アナログ信号をA/D変換するA/D変換器と、前記A/D変換器からのA/D変換値の現在値、1つ前の値、及び2つ前の値に対し、
第1差分値=現在値−1つ前の値
第2差分値=1つ前の値−2つ前の値
を演算し、前記第1差分値及び前記第2差分値としきい値との大小関係に応じて前記現在値を出力するか前記1つ前の値に置換して出力することでノイズを除去する処理回路とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、前記処理回路は、前記第1差分値の絶対値がしきい値を超え、かつ、前記第2差分値の絶対値がしきい値以下である場合に前記現在値を前記1つ前の値に置換して出力し、それ以外の場合に前記現在値を出力することでノイズを除去する。
【0012】
また、本発明の他の実施形態では、前記処理回路は、サンプリング値あるいはA/D変換値の現在値、1つ前の値、2つ前の値、3つ前の値、4つ前の値に対し、前記4つ前の値、前記3つ前の値、前記2つ前の値が特定の第1変化パターンであり、かつ、前記3つ前の値、前記2つ前の値、前記1つ前の値が特定の第2変化パターンを示す場合に、前記2つ前の値を前記1つ前の値に置換して前記第1差分値及び前記第2差分値を演算する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、種々のノイズを除去でき、かつ、操作アナログ信号変化に対する追従性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1に、本実施形態におけるデジタル信号処理装置の構成を示す。回転式のボリュームノブ、スライド式ボリュームあるいはミキシングノブ等の操作子からの操作量に応じた操作アナログ信号はサンプリング回路10に供給される。サンプリング回路10は、入力アナログ信号を所定のサンプリング周波数fsでサンプリングし、演算部16に出力するとともに遅延素子12に出力する。
【0016】
遅延素子12は、例えばD型フリップフロップで構成され、サンプリングされたデータを1サンプリングクロック分だけ遅延して演算部16に出力するとともに遅延素子14に出力する。
【0017】
遅延素子14も、例えばD型フリップフロップで構成され、サンプリングされたデータをさらに1サンプリングクロック分だけ遅延して、つまり遅延素子12と併せて合計2サンプリングクロック分だけ遅延して演算部16に出力する。
【0018】
演算部16は、現在のサンプルデータ、遅延素子12からの1つ前のサンプルデータ、遅延素子14からの2つ前のサンプルデータの3つのサンプルデータが入力され、これらを用いて現在値がノイズ、例えばCPU周辺回路等から混入した高周波デジタルノイズか否かを判定し、ノイズであると判定した場合に現在値に代えて1つ前のサンプルデータを出力する。また、ノイズでないと判定した場合には、現在値をそのまま出力する。具体的には、演算部16は、2つの差分値を用いてノイズか否かを判定する。2つの差分値は以下のとおりである。
第1差分値dx1=現在値−1つ前の値
第2差分値dx2=1つ前の値−2つ前の値
A/D変換器18は、演算部16からの出力を所定のビット数でデジタル値に変換して出力する。A/D変換器18の後段に、さらに微小なランダムノイズを除去するためのローパスフィルタ(LPF)を設けてもよい。
【0019】
以下、演算部16における処理アルゴリズムについて説明する。図2に、現在値(図中(3)で示す)、1つ前の値(図中(2)で示す)、2つ前の値(図中(1)で示す)の変化を示す。1つ前の値(2)が2つ前の値(1)よりも増大し、現在値(3)で再び2つ前の値(1)のレベルに戻る場合である。この場合、演算部16は、
dx1=現在値(3)−1つ前の値(2)
dx2=1つ前の値(2)−2つ前の値(1)
を演算し、それぞれの差分値の絶対値を所定のしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)>しきい値
であり、しかも2つの差分値の符号が互いに逆であれば、1つ前の値(2)がノイズである可能性が高く、一方、現在値(3)はノイズでないと判定できるから、演算部16は現在値(3)をそのまま出力する。
【0020】
図3に、他の変化パターンを示す。1つ前の値(2)が2つ前の値(1)よりも減少し、現在値(3)で再び2つ前の値(1)のレベルに戻る場合である。この場合も、演算部16は、
dx1=現在値(3)−1つ前の値(2)
dx2=1つ前の値(2)−2つ前の値(1)
を演算し、それぞれの差分値の絶対値を所定のしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)>しきい値
であり、しかも2つの差分値の符号が互いに逆であれば、1つ前の値(2)がノイズである可能性が高く、一方、現在値(3)はノイズでないと判定できるから、演算部16は現在値(3)をそのまま出力する。
【0021】
図4に、他の変化パターンを示す。2つ前の値(1)と1つ前の値(2)が同じレベルで、現在値(3)がこれらより増大する場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)≦しきい値
であれば、現在値(3)がノイズであるか真値であるか判定できず、ノイズである可能性があるので現在値(3)を1つ前の値(2)で置換して出力する。図4に、現在値(3)が1つ前の値(2)で置換されて出力される様子を示す。置換前の現在値(3)は破線、置換後の現在値(3)は実線で示されている。
【0022】
図5に、他の変化パターンを示す。2つ前の値(1)と1つ前の値(2)が同じレベルで、現在値(3)がこれらより減少する場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)≦しきい値
であれば、現在値(3)がノイズであるか真値であるか判定できず、ノイズである可能性があるので現在値(3)を1つ前の値(2)で置換して出力する。図5に、現在値(3)が1つ前の値(2)で置換されて出力される様子を示す。置換前の現在値(3)は破線、置換後の現在値(3)は実線で示されている。
【0023】
図6に、他の変化パターンを示す。1つ前の値(2)が2つ前の値(1)より増大し、さらに現在値(3)が1つ前の値(2)より増大する場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)>しきい値
であり、しかもdx1とdx2の符号が同じであれば、現在値(3)はノイズではなく真に増大していると判定し、現在値(3)をそのまま出力する。
【0024】
図7に、他の変化パターンを示す。1つ前の値(2)が2つ前の値(1)より減少し、さらに現在値(3)が1つ前の値(2)より減少する場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)>しきい値
であり、しかもdx1とdx2の符号が同じであれば、現在値(3)はノイズではなく真に減少していると判定し、現在値(3)をそのまま出力する。
【0025】
図8に、他の変化パターンを示す。現在値(3)、1つ前の値(2)、2つ前の値(1)とも同じレベルの場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)≦しきい値、かつ、ABS(dx2)≦しきい値
であれば、現在値(3)はノイズでなく真値であるとしてそのまま出力する。
【0026】
図9に、他の変化パターンを示す。現在値(3)は1つ前の値(2)と同じレベルであり、1つ前の値(2)は2つ前の値(1)より減少している場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)≦しきい値、かつ、ABS(dx2)>しきい値
であれば、現在値(3)はノイズでなく真値であるとしてそのまま出力する。
【0027】
図10に、他の変化パターンを示す。現在値(3)は1つ前の値(2)と同じレベルであり、1つ前の値(2)は2つ前の値(1)より増大している場合である。演算部16は、dx1及びdx2を演算し、これらの差分値の絶対値をそれぞれしきい値と大小比較する。そして、
ABS(dx1)≦しきい値、かつ、ABS(dx2)>しきい値
であれば、現在値(3)はノイズでなく真値であるとしてそのまま出力する。
【0028】
このように、演算部16は、2つの差分値dx1、dx2としきい値との大小関係に応じて現在値をそのまま出力するか1つ前の値に置換して出力するかを決定する。より詳しくは、演算部16は、2つの差分値dx1、dx2の絶対値をしきい値と比較して、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)≦しきい値
である場合に現在値をノイズであると判定して現在値(3)を1つ前の値(2)で置換して出力し、それ以外の場合には現在値(3)をそのまま出力することでノイズを除去する。
【0029】
図11に、本実施形態の処理フローチャートを示す。まず、サンプリングされた最新の3つのデータ、すなわち現在値(3)、1つ前の値(2)、2つ前の値(1)を取得する(S101)。なお、装置の起動後、1回目のサンプリング時は最初の値である現在値を1つ前の値、2つ前の値とする。次に、演算部16は、これら3つの値を用いて2つの差分値
dx1=現在値(3)−1つ前の値(2)
dx2=1つ前の値(2)−2つ前の値(1)
を算出する(S102)。そして、dx1の絶対値であるABS(dx1)がしきい値を超え、かつ、dx2の絶対値であるABS(dx2)がしきい値以下であるか否かを判定し(S103)、この条件を満足する場合に現在値(3)はノイズであるとして現在値(3)に代えて1つ前の値(2)を出力する(S104)。一方、この条件を満足しない場合には、現在値(3)をそのまま出力する(S105)。出力された1つ前の値(2)あるいは現在値(3)はA/D変換器18で所定のビット数でデジタル値に変換され、さらにLPF等で微小ノイズが除去される。
【0030】
本実施形態の処理によれば、図12に示すようなノイズに効果的に対応できる。すなわち、図12に示すように操作子を操作しておらずアナログ信号に変動がない状況でノイズ100が混入してサンプリングした場合、最初の3個のデータに着目すると図4の変化パターンであり、
ABS(dx1)>しきい値、かつ、ABS(dx2)≦しきい値
という条件を満たすため3個目のデータは2個目のデータで置換され、ノイズ100が除去されることになる。レベルが減少するようなノイズが混入している場合も同様であり、最初の3個のデータが図5のような変化パターンとなり、上記条件を満足する結果、1つ前のデータで置換されるためノイズが除去される。
【0031】
本実施形態では、上記の条件を満足するか否かによりノイズか否かを判定し、上記の条件を満足する場合にのみ1つ前の値で置換する処理を行うため、操作アナログ信号の変化に対する追従性にも優れる。図13に、ボリュームノブ等が実際に操作されて操作アナログ信号である入力アナログ信号が実際に変化した場合を示す。サンプルデータはデータ200、300、400、500と順次増大する。本実施形態の処理では、サンプルデータ300に対しては図4の変化パターンであるため1つ前のサンプルデータ200に置換されてサンプルデータ310として出力されるが、サンプルデータ400に対しては図6の変化パターンであるためサンプルデータ400はそのまま出力される。したがって、サンプルデータ200、サンプルデータ310、サンプルデータ400と出力されることとなり、操作アナログ信号の変化に迅速に追従することができる。図13には、参考のため既述した従来技術による処理を破線で示す。操作信号が変化しても常に1クロック分遅延してしまう。
【0032】
本実施形態では、図1に示すように遅延素子12、14及び演算部16で構成しているが、これらをソフトウェア(ファームウエア)で実現してもよい。この場合、CPUはROMに格納されたプログラムを読み込み、図11に示されるフローチャートに従い処理を実行する。すなわち、サンプリング回路10からサンプリングデータを順次取り込み、2つ前の値、1つ前の値、現在値をバッファメモリ等に蓄積し、第1差分値及び第2差分値を算出し、その絶対値としきい値とを大小比較して現在値を1つ前の値で置換するか否かを判定して出力する。
【0033】
<第2実施形態>
上記の実施形態では、図12に示すような単発のノイズ100に対応することができるが、特定のノイズ、例えば図14に示すように連続して生じるノイズ100、102に対応することが困難である。その理由は、最初の3個のデータに着目すると図4の変化パターンであるためノイズ100は除去されるものの、ノイズ102を現在値として含むそれ以前の3個の履歴データに着目すると図3の変化パターンであり、ノイズ102はそのまま出力されるからである。すなわち、サンプルデータを順にデータ1、2、3、4、5、6、7とし、データ3、5がノイズ100、102に相当するものとする。最初の3個のデータであるデータ1、2、3は図4の変化パターンであるためデータ3は1つ前のデータ2で置換される。次の3個のデータであるデータ2、3、4は図2の変化パターンであるためデータ4はそのまま出力される。次の3個のデータであるデータ3、4、5は図3の変化パターンであるためデータ5はそのまま出力されるため、ノイズ102として残ってしまう。図14に、第1実施形態のアルゴリズムによる処理の結果、ノイズ100は除去されるもののノイズ102はそのまま残存する様子を示す。
【0034】
このような連続するノイズに対応するためには、サンプルデータをバッファメモリに蓄積して図14に示すようなパターンか否かを判定し、図14に示すようなパターンである場合に処理アルゴリズムを以下のように変更すればよい。すなわち、図14に示すように図4の変化パターンに続いて図2の変化パターンが出現した場合に、履歴データを最新の読み取り値である現在値で置換してしまう。具体的には、図1において次回のデータ読み取りの際の遅延素子14の出力値を現在値で置換する。すると、この後にノイズ102が出現しても、履歴データ上は図4の変化パターンとなるためノイズを除去できる。
【0035】
図15を用いて本実施形態の処理をより具体的に説明する。いま、サンプルデータが、データ1、2、3、4、5、6、7であるとする。変化パターンは図14と同じパターンである。データ3、5がそれぞれノイズ100、102に対応する。最初の3個のデータはデータ1、2、3であり、図4の変化パターンである。したがって、第1実施形態の処理に従い、データ3は1つ前のデータ2で置換されてデータ3’となる。次に、データ2、3、4の3個のデータが対象となり、これは図2の変化パターンであるため第1実施形態の処理に従い、データ4はそのまま出力されることになる。一方、最初に図4の変化パターンが出現し、次に図2の変化パターンが出現したため、履歴データであるデータ3を最新のデータであるデータ4の値で置換する。この状態で次のデータ5が入力されると、対象となるデータはデータ3、4、5であるが、データ3は上記のようにデータ4で置換されているため、データ4、4、5が対象となり、図4の変化パターンとなるためデータ5は1つ前のデータであるデータ4で置換されてデータ5’として出力される。結局、処理結果はデータ1、2、3’、4、5’、6、7のようになり、ノイズ100、102が有効に除去される。
【0036】
図15では、図4の変化パターンに続き図2の変化パターンが出現した場合に履歴データであるデータ3をデータ4で置換しているが、同様に、図5の変化パターンに続き図3の変化パターンが出現した場合にも履歴データであるデータ3を最新のデータであるデータ4で置換すればよいことは当業者には明らかであろう。
【0037】
また、図16に示すように連続的であり、かつ、異なる符号のノイズが生じた場合にも、同様に特定の変化パターンが出現したか否かを検出して履歴データを書き換えることで対応できる。すなわち、図16において最初の3個のデータはデータ1、2、3であり、図4の変化パターンである。したがって。データ3は1つ前のデータであるデータ2で置換されてデータ3’となる。次に、データ2、3、4の3個のデータが対象となり、これは図2の変化パターンであるためデータ4はそのまま出力される。一方、図4の変化パターンに続いて図2の変化パターンが出現したため、履歴データであるデータ3を最新のデータであるデータ4で置換する。すると、次に対象となるのはデータ3、4、5であるが、履歴データ3はデータ4で置換されているためデータ4、4、5となり、図5の変化パターンとなるためデータ5は1つ前のデータであるデータ4で置換されてデータ5’となり、図15と同様にノイズが除去される。
【0038】
このように、第1実施形態の処理を基本としつつ、特定の変化パターンが出現した場合に履歴データを書き換える処理を行うことで、連続するノイズも除去することが可能である。演算部16あるいはCPUは、履歴データを書き換えるべき特定変化パターンを予めROM等のメモリに記憶しておけばよい。履歴データを書き換えるべき特定変化パターンは、上記のように、
(A)図4の変化パターンに続く図2の変化パターン
(B)図5の変化パターンに続く図3の変化パターン
である。図4及び図5の変化パターンは、dx1の絶対値がしきい値を超え、かつ、dx2の絶対値がしきい値以下のパターンであり、図2及び図3の変化パターンは、dx1とdx2の符号が逆であり、かつ、dx1とdx2の絶対値がともにしきい値を超えるパターンである。演算部16あるいはCPUは、図4の変化パターンが出現したらフラグをセットし、フラグがセットされた状態で次に図2の変化パターンが出現した場合に履歴データを書き換える処理を実行する。その後、フラグをクリアする。なお、図2の変化パターンが出現しなかった場合もフラグをクリアする。もちろん、あらゆるタイプのノイズに対応すべく、他の特定変化パターンを予め記憶しておくことも可能である。特定変化パターンに該当する場合の置換処理は、データ2、3、4を対象とするタイミングで行ってもよいが、データ3、4、5を対象とするタイミングで行ってもよい。データ2、3、4を対象とするタイミングでは、データ4についての処理のための差分演算を実行した後にデータ3をデータ4で置換し、次のデータ3、4、5の処理に備えることになる。データ3、4、5を対象とするタイミングでは、差分演算を実行する前に履歴データであるデータ3をデータ4で置換してデータ3’とし、データ3’、データ4、データ5を用いて差分演算し判定処理を行う。データ5を現在値、データ4を1つ前のデータ、データ3を2つ前のデータ、データ2を3つ前のデータ、データ1を4つ前のデータとすると、4つ前の値、3つ前の値、2つ前の値が図4の変化パターンであり、かつ、3つ前の値、2つ前の値、1つ前の値が図2の変化パターンである場合に、2つ前の値を1つ前の値に置換して第1差分値dx1及び第2dx2を演算し、現在値を処理するということができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、図1に示された構成は例示であって他の構成も可能である。例えば、図17に示すように、サンプリング回路を含むA/D変換器11の後段に遅延素子12、14及び演算部16を設ける構成でもよい。A/D変換器11からのA/D変換値は演算部16に供給されるとともに遅延素子12、14を介して供給され、A/D変換値の現在値、1つ前の値、2つ前の値が演算部16に供給される。演算部16はこれらの値に対して既述した処理を実行してノイズを除去し出力する。図中一点鎖線で示す遅延素子12、14、演算部16はCPUで構成でき、プログラムを実行することでその機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態の構成ブロック図である。
【図2】サンプルデータの変化パターン図(その1)である。
【図3】サンプルデータの変化パターン図(その2)である。
【図4】サンプルデータの変化パターン図(その3)である。
【図5】サンプルデータの変化パターン図(その4)である。
【図6】サンプルデータの変化パターン図(その5)である。
【図7】サンプルデータの変化パターン図(その6)である。
【図8】サンプルデータの変化パターン図(その7)である。
【図9】サンプルデータの変化パターン図(その8)である。
【図10】サンプルデータの変化パターン図(その9)である。
【図11】実施形態の処理フローチャートである。
【図12】サンプルデータの変化パターン図(その10)である。
【図13】実施形態のデータ追従性を示す説明図である。
【図14】サンプルデータの変化パターン図(その11)である。
【図15】サンプルデータの変化パターン図(その12)である。
【図16】サンプルデータの変化パターン図(その13)である。
【図17】実施形態の他の構成図である。
【符号の説明】
【0041】
10 サンプリング回路、12,14 遅延素子、16 演算部、18 A/D変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作アナログ信号をサンプリングするサンプリング回路と、
前記サンプリング回路からのサンプリング値の現在値、1つ前の値、及び2つ前の値に対し、
第1差分値=現在値−1つ前の値
第2差分値=1つ前の値−2つ前の値
を演算し、前記第1差分値及び前記第2差分値としきい値との大小関係に応じて前記現在値を出力するか前記1つ前の値に置換して出力することでノイズを除去する処理回路と、
前記処理回路からの出力をA/D変換するA/D変換器と、
を有することを特徴とするデジタル信号処理装置。
【請求項2】
操作アナログ信号をA/D変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器からのA/D変換値の現在値、1つ前の値、及び2つ前の値に対し、
第1差分値=現在値−1つ前の値
第2差分値=1つ前の値−2つ前の値
を演算し、前記第1差分値及び前記第2差分値としきい値との大小関係に応じて前記現在値を出力するか前記1つ前の値に置換して出力することでノイズを除去する処理回路と、
を有することを特徴とするデジタル信号処理装置。
【請求項3】
請求項1、2のいずれかに記載の装置において、
前記処理回路は、前記第1差分値の絶対値がしきい値を超え、かつ、前記第2差分値の絶対値がしきい値以下である場合に前記現在値を前記1つ前の値に置換して出力し、それ以外の場合に前記現在値を出力することでノイズを除去することを特徴とするデジタル信号処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、
前記処理回路は、前記サンプリング値あるいは前記A/D変換値の現在値、1つ前の値、2つ前の値、3つ前の値、4つ前の値に対し、前記4つ前の値、前記3つ前の値、前記2つ前の値が特定の第1変化パターンであり、かつ、前記3つ前の値、前記2つ前の値、前記1つ前の値が特定の第2変化パターンを示す場合に、前記2つ前の値を前記1つ前の値に置換して前記第1差分値及び前記第2差分値を演算することを特徴とするデジタル信号処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記特定の第1変化パターンは、前記4つ前の値、前記3つ前の値、前記2つ前の値に対し、前記2つ前の値と前記3つ前の値の差分値の絶対値が前記しきい値を超え、かつ、前記3つ前の値と前記4つ前の値の差分値の絶対値が前記しきい値以下であり、前記特定の第2変化パターンは、前記3つ前の値、前記2つ前の値、前記1つ前の値に対し、前記1つ前の値と前記2つ前の値の差分値及び前記2つ前の値と前記3つ前の値の差分値の符号が逆であり、かつ、これらの差分値の絶対値が前記しきい値を超えるものであることを特徴とするデジタル信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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