データ処理装置
【課題】リアルタイム性を保証しつつ、DVFSによる低消費電力化を低オーバヘッドで実現するデータ処理装置を提供する。
【解決手段】受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置において、フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、電源・クロック生成部は、フレーム先頭検出部によるフレーム先頭検出のタイミングに応答してデータ処理部が動作可能な最大周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とをデータ処理部に供給し、データ処理部が時間制約処理を完了した後、最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とをデータ処理部に供給する。
【解決手段】受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置において、フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、電源・クロック生成部は、フレーム先頭検出部によるフレーム先頭検出のタイミングに応答してデータ処理部が動作可能な最大周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とをデータ処理部に供給し、データ処理部が時間制約処理を完了した後、最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とをデータ処理部に供給する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおけるデータ処理装置には、その処理にリアルタイム性が要求される。リアルタイム性とは、処理の要求から所定の時間内にその処理が完了することを保証することであり、特に通信制御用データ等は、通信状態を維持するためにリアルタイムに処理される必要がある。そのため、通信システムにおけるデータ処理装置のデータ処理性能は、想定される処理の最大負荷量または最大処理量に基づいて決定される。
【0003】
図1は、データ処理を行うプロセッサが、供給される各クロック周波数f1、f2で1フレームのデータを処理した場合の実行時間と残りのデータ量(負荷量)の関係を示す図である。実線L1〜L3は、フレームがそれぞれ括弧内に付記した周波数f1、f2でデータ処理された場合の残りのデータ量を表す。
【0004】
フレーム単位でデータが送受信される通信システムでは、規定されたフレーム長FL以内での処理の完了が求められる。そのため、最大のクロック周波数f1は、フレームに想定される最大データ量W1と規定のフレーム長FLに基づいて決定される。これにより、実線L1に示すように、最大データ量W1のフレームであっても、最大周波数f1でデータ処理されることによりフレーム長FLで処理が完了する。すなわち、前述したリアルタイム性が保障される。また、データ量W2(<W1)の場合は、実線L2、L3に示すように、リアルタイム性を保証しつつ、データ処理のクロック周波数を最大周波数f1からクロック周波数f2まで下げることができる。
【0005】
さらに、携帯電話システム等に代表される電池駆動の機器が使用される通信システムには、低消費電力化が要求される。
【0006】
図2は、通信システムにおける低消費電力化方法の一例を示す図である。図2のフレーム長FLと最大周波数f1は、図1に示したフレーム長FLと最大周波数f1に対応している。受信装置が受信した各フレームF1〜F3は、データ処理装置によりそれぞれ最大周波数f1でデータ処理される。そして、データ処理装置は、フレームF1〜F3毎にデータ処理が全て完了した時点Te1〜Te3でデータ処理用のプロセッサ等に供給するクロックをスリープ状態とし、電源電圧を低下させる。すなわち、期間Tp1〜Tp3では、データ処理を停止させることができ、低消費電力化が実現される。
【0007】
図3は、一般的な消費電力の式を表す図である。図3に示すように、データ処理を行うプロセッサ等の全体の消費電力Eは、供給するクロック周波数fcと電源電圧VDD並びにプロセッサ等のリーク電流Ilkgや静電容量Cに基づいて求められる。また、消費電力Eの第1項は、動的な消費電力E1、第2項は静的な消費電力E2を表す。このように、消費電力Eのうち動的な消費電力E1は電源電圧VDDの二乗に比例する。よって、プロセッサ等に供給する電源電圧を低下させることが、低消費電力化のための最も有効な手段である。
【0008】
そこで、低消費電力化の別の方法として、DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)による制御が行われる。この制御は、データ処理中に電源電圧とクロック周波数を動的に制御する技術である。
【0009】
図4は、データ処理を行うプロセッサ等に供給するクロック周波数及び電源電圧の関係を示す図である。図4(a)、図4(b)において、それぞれ処理されるフレームF4のデータ量は等しい。
【0010】
図4(a)に示すように、フレームF4に対してクロック周波数fでデータ処理が行われた場合、時間Tで処理が完了する。また、図4(b)に示すように、フレームF4に対して1/2のクロック周波数f/2でデータ処理が行われた場合、処理の完了までに2倍の時間2Tがかかるが、図4(c)に示すように、その間、電源電圧をクロック周波数f/2に対応する電源電圧に下げることができる。
【0011】
このように、DVFSによる制御では、データ処理中にそのクロック周波数を下げることにより、対応する電源電圧を下げることができるため、上述したように大幅な低消費電力化が実現される。
【0012】
以上に関するデータ処理装置は、例えば特許文献1〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008-282150号 公報
【特許文献2】特開平8-76874号 公報
【特許文献3】特開2005-236867号 公報
【特許文献4】特開2008-113319号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、DVFSによる制御によりクロック周波数を下げすぎると、データ処理にかかる時間が長くなるため、前述したデータ処理のリアルタイム性が保証されない場合がある。このような状況は、例えば図1において、データ量W2のフレームに対するデータ処理のクロック周波数を周波数f2よりも下げた場合に相当する。これを回避するために、データ処理装置は、常にデータ処理状況を監視し、適宜、DVFSによるクロック周波数の制御を行う必要があるが、これらデータ処理状況の監視のために、多大なリソースが消費される。つまり、データ処理状況を常時監視することは、高いオーバヘッドにつながる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、リアルタイム性を保証しつつ、DVFSによる低消費電力化を低オーバヘッドで実現するデータ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの態様によれば、受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置は、供給されるクロックと電源電圧に基づいて前記受信データを前記フレーム毎にデータ処理し、前記フレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を当該フレームに与えられた単位時間内に完了するデータ処理部と、前記クロックおよびそれに対応する電源電圧を生成し、前記データ処理部に供給する電源・クロック生成部と、前記フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、前記データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、前記電源・クロック生成部は、前記フレーム先頭検出部による前記フレーム先頭検出のタイミングに応答して前記データ処理部が動作可能な最大周波数のクロックと前記最大周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給し、前記データ処理部が前記時間制約処理を完了した後、当該フレームの単位時間内のクロック周波数設定タイミングで、前記最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、前記クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける前記未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックと前記第1の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する。
【発明の効果】
【0017】
上記の発明によれば、リアルタイム性を保証しつつ、DVFSによる低消費電力化を低オーバヘッドで実現するデータ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】データ処理を行うプロセッサが、供給される各クロック周波数f1、f2で1フレームを処理した場合の実行時間と残りのデータ量(負荷量)の関係を示す図である。
【図2】通信システムにおける低消費電力化方法の一例を示す図である。
【図3】一般的な消費電力の式を表す図である。
【図4】データ処理を行うプロセッサ等に供給するクロック周波数及び電源電圧の関係を示す図である。
【図5】本実施の形態におけるデータ処理装置のブロック図の一例である。
【図6】本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。
【図7】本実施の形態におけるデータ処理装置の動作例を示す図である。
【図8】最大データ量のフレームに対する処理の実行時間とプロセッサ4に供給されるクロックCLKの周波数との関係を示す。
【図9】性能決定部412における未処理データ量に基づくクロック周波数の決定方法の一例である。
【図10】時間制約処理の完了のタイミングで、データ量集計部411での未処理データ量の集計が完了している場合のデータ処理装置の動作を示す。
【図11】本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に従って実施の形態について説明する。但し、本技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0020】
[第1の実施の形態]
図5は、本実施の形態におけるデータ処理装置のブロック図の一例である。本データ処理装置は、有線または無線通信システムにおいてフレーム等のデータ単位毎でデータ処理を行う機器全般に実装可能である。
【0021】
本データ処理装置は、電源・クロック生成部1、データ受信部2、データ送信部3、プロセッサ4、入出力装置5を有し、受信したフレームの受信データRDに対するデータ処理や処理されたデータの出力等を行う。また、プロセッサ4内のクロック周波数決定部41とデータ処理部42は、ソフトウェアプログラムを実行することにより実現される機能に対応する。
【0022】
データ受信部2は、無線同期及び復調復号化部21とデータバッファ22を有し、フレームの受信データRDに対して受信処理を行う。
【0023】
図6は、本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。フレームは、フレーム同期用シンボルFHと通信制御用データCDとユーザデータUD1〜UD3を有する。また、フレームの先頭FSからフレームの終了FEまでのフレーム長FLは、フレームに与えられた単位時間であり、フレームの受信データRDは、通常、この単位時間内での処理完了が求められる。なお、このフレーム長FLは、システム毎に規定され、例えば通信システムの一つであるW-CDMAシステムでは10msとして規定されている。
【0024】
通信制御用データCDに対応する処理は、次フレーム以降の通信状態を維持するためにリアルタイム性が要求される時間制約処理を含み、時間制約処理はフレーム長FL以内に処理完了されなければならない。そのため、通常、通信制御用データCDは、フレームの先頭部分に含まれる。フレームの後部に含まれると、次フレームまでにその時間制約処理が完了しない場合があるためである。そして、本データ処理装置は、これらの時間制約処理を最大周波数で処理する。時間制約処理には、例えば送信電力制御処理や通信状態の報告処理等が挙げられるが、その具体的な内容については後述する。
【0025】
また、ユーザデータUD1〜UD3に対応する処理は、処理完了までの遅延が数フレーム程度許容される時間制約のない処理である。そして、本データ処理装置は、これらの時間制約のない処理を最適な低いクロック周波数で処理する。
【0026】
図5に戻り、データ受信部2の無線同期及び復調復号化部21は、図6に示すフレーム同期用シンボルFHに基づいて受信したフレームについて同期処理し、復調復号化処理し、復調復号化処理した受信データRDを順次データバッファ22に出力する。以降、無線同期及び復調復号化部21でのフレームの受信データRDの復調復号化と並行して、データ処理部42は、データバッファ22に出力された受信データRDを処理する。
【0027】
また、無線同期及び復調復号化部21は、フレームの受信データRDを復調復号化した受信データRDの受信データ量を求め、その受信データ量をプロセッサ4のソフトウェアプログラムである受信データ量集計部416に出力する。なお、受信データ量集計部416については後述する。
【0028】
このようにフレームの受信データ量が求まるタイミングは、フレームの受信データRDの復調復号化が全て完了した後であるため、データ処理部42での復調復号化された受信データRDの処理が開始されるタイミングよりも遅い。さらに、受信データ量が求まるタイミングは、フレーム毎の復調復号化される受信データ量に依存するため、フレーム毎に異なる。
【0029】
また、無線同期及び復調復号化部21は、フレーム同期シンボルFHによりフレームの先頭を検出し、その検出のタイミングで電源・クロック生成部1にフレーム先頭検出信号S1を出力する。
【0030】
データバッファ22は、復調復号化されたフレーム内の受信データRDを一時的に格納する。
【0031】
電源・クロック生成部1は、電源生成部11およびクロック生成部12を有し、図5に示す入力信号S1、S5に基づいてクロック生成部12が生成したクロックCLKおよびそれに対応して電源生成部11が生成した電源電圧Vcをプロセッサ4に供給する。
【0032】
ここで、電源・クロック生成部1は、前述の無線同期及び復調復号化部21が出力したフレーム先頭検出信号S1の入力に応答してプロセッサ4が動作可能な最大周波数のクロックCLKおよび対応する電源電圧をプロセッサ4に供給する。
【0033】
プロセッサ4は、電源・クロック生成部1から供給されるクロックCLKおよびそれに対応する電源電圧Vcに基づいて、クロック周波数決定部41およびデータ処理部42の機能を有するコンピュータプログラムを実行する。すなわち、データ処理部42は、クロックCLKおよび電源電圧Vcに基づいて入力されるデータを順次処理する。
【0034】
以上の動作に基づいて、本データ処理装置は、受信したフレームの先頭の検出に応答して、フレームの受信データの処理を最大周波数で開始する。これにより、自動的にフレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理が最大周波数で処理される。しかも、最大周波数への制御は、フレームの先頭検出に応答して行われるので、特別の監視処理は必要ない。
【0035】
また、データ処理部42は、データバッファ22に一時格納された受信処理中の現在のフレームの受信データおよび未処理の以前のフレームの受信データと、入出力装置5から入力される送信データ等とを処理する。そして、データ処理部42が処理したデータは、例えば入出力装置5またはデータ送信部3に出力される。
【0036】
さらに、データ処理部42は、前述した時間制約処理を完了した後、クロック周波数決定部41に時間制約処理完了信号S3を出力する。この時間制約処理の完了の検出方法としては、例えば、データ処理部42が、入力されたフレームから、まず時間制約処理に対応するデータと時間制約のない処理に対応するデータを分別する。そして、データ処理部42は、これら各々をそれぞれ個別に管理することにより、各々の処理の完了を検出する。
【0037】
クロック周波数決定部41は、データ処理部42での処理が完了していない未処理データ量に基づいてクロックCLKの周波数を決定する。このために、クロック周波数決定部41は、データ量集計部411、性能決定部412、データ処理管理機能部413、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415、受信データ量集計部416を有する。
【0038】
送信データ量集計部414は、入出力装置5などから入力される送信データのうち処理すべきデータ量を集計する。もしくは、このデータ量の集計値は、通信システム毎に送信データの許容量として規定された固定値であってもよい。
【0039】
未処理受信データ量集計部415は、データバッファ22を参照し、データバッファ22に格納され、滞留している以前のフレームの未処理のデータ量を集計する。
【0040】
受信データ量集計部416は、前述した無線同期及び復調復号部21から出力される現在のフレームの受信データ量を集計値として集計する。
【0041】
データ量集計部411は、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415、受信データ量集計部416が個別に集計した各データ量を未処理データ量として集計する。ここで、これらの各データ量の集計が開始されるタイミングは、受信データ量集計部416が現在のフレームの受信データを取得したタイミングである。すなわち、受信データ量集計部416が、無線同期及び復調復号部21から現在のフレームの受信データを取得したタイミングで、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415はそれぞれのデータ量の集計を開始する。そして、それら全ての集計の完了後、データ量集計部411は、各集計部414〜416が集計したデータ量を未処理データ量として集計する。この未処理データ量は、いわゆるデータ処理装置の現在の処理状況を表し、クロック周波数決定部41は、このデータ処理量に基づいて現在の処理状況に対応する最適のクロック周波数を決定する。
【0042】
さらに、データ量集計部411は、未処理データ量の集計が完了したタイミングでデータ処理管理機能部413にデータ量集計完了信号S6を出力する。
【0043】
データ処理管理機能部413は、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングとデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングとをそれぞれ管理する。以下に示す性能決定部412は、これらの各タイミングのいずれかで、クロック周波数を決定するが、これらのタイミングはフレーム毎にそれぞれ異なる。
【0044】
例えば、フレームの受信データ量は大きいが、そのフレームに含まれる時間制約処理に対応するデータ量が少ない場合、時間制約処理の完了のタイミングは早い。また、無線同期及び復調復号化部21での復調復号化処理に時間がかかるため、未処理データ量の集計完了のタイミングは遅くなる。この場合、性能決定部412は、時間制約処理の完了のタイミングでは未処理データ量の集計が完了していない場合があり、未処理データ量に基づくクロック周波数を決定できない。
【0045】
そこで、データ処理管理機能部413は、データ処理部42からの時間制約処理完了信号S3に応答して、まずデータ量集計部411からのデータ量集計完了信号S6に基づき未処理データ量の集計が完了しているか未完了かを判定する。そして、データ処理管理機能部413は、その判定結果に対応するクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。つまり、クロック周波数決定信号S4は未処理データ量の集計完了または未完了の情報を含む。
【0046】
さらに、データ量集計部411での未処理データ量の集計が未完了であった場合、データ処理管理機能部413は、その集計の完了後に、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受ける。そして、データ処理管理機能部413は、そのデータ量集計完了信号S6に応答して、集計の完了を示す第2のクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。
【0047】
性能決定部412は、前述したクロック周波数決定信号S4に応答し、未処理データに対する最適のクロック周波数を決定する。すなわち、クロック周波数決定信号S4が未処理データ量の集計完了を示す場合、性能決定部412は、データ量集計部411が集計した未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定する。そして、プロセッサ4は、そのクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。
【0048】
一方で、クロック周波数決定信号S4が未処理データ量の集計未完了を示す場合、性能決定部412は、1つ前のフレームに対する処理で同様に決定したクロック周波数をクロック周波数として決定する。そして、プロセッサ4は、そのクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。すなわち、未処理データ量の集計が未完了であるため、未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定することはできないが、時間制約処理は完了しているので、1つ前のフレームで決定した低いクロック周波数および対応する電源電圧で以降の処理を実行する。
【0049】
さらに、この場合、性能決定部412は、データ処理管理機能部413からデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了を示す第2のクロック周波数決定信号S4を受ける。そこで、性能決定部412は、第2のクロック周波数決定信号S4に応答して、未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定する。そして、プロセッサ4は、そのクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。
【0050】
データ送信部3は、変調符号化部31とデータバッファ32を有し、データ処理部42で処理された送信データを送信処理する。データバッファ32は、送信データTDを一時格納する。また、変調符号化部31は、データバッファ32に格納された送信データTDを変調符号化し、送信フレームを出力する。
【0051】
図7は、本実施の形態におけるデータ処理装置の動作例を示す図である。図7は、本データ処理装置がフレームF11、F12・・を順次受信した場合の処理の実行時間とプロセッサ4に供給されるクロックCLKの周波数との関係を示す。また、図7は、時間制約処理の完了のタイミングで、データ量集計部411での未処理データ量の集計が未完了であった場合のデータ処理装置の動作を示す。また、括弧内には、それぞれの実行時間にデータ処理部42に供給されるクロック周波数f10〜f13が示されている。
【0052】
また、時間Ts1〜Ts4はフレームの先頭が検出されたタイミングであり、時間Td1〜Td3はデータ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングであり、時間Tc1〜Tc3はデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングである。
【0053】
以下、図5〜図7を参照し、本データ処理装置の動作を説明する。
【0054】
時間Ts1において、データ受信部2は、フレームF11を受信する。そして、無線同期及び復調復号化部21は、その先頭を検出し、電源・クロック生成部1にフレーム先頭検出信号S1を出力する。
【0055】
フレームF11の受信データは、復調復号化され、データバッファ22に一時格納される。そして、フレームの受信データの復調復号化と並行してデータバッファ22に出力された受信データは、データ処理部42で順次処理される。
【0056】
電源・クロック生成部1は、フレーム先頭検出信号S1の入力のタイミングに応答して、データ処理部4が動作可能な最大周波数f1のクロックCLKとそれに対応する電源電圧Vcとをデータ処理部42を有するプロセッサ4に供給する。具体的には、電源・クロック生成部1は、プロセッサ4に供給する電源電圧Vcを最大周波数f1に対応する電源電圧Vcに上昇させてから、クロックCLKの周波数を最大周波数f1に変更する。先にクロックCLKを最大周波数f1に変更しても、それに対応する電源電圧Vcが供給されていなければ、プロセッサ4は、最大周波数f1で動作せず、誤動作する可能性があるからである。
【0057】
データ処理部42は、時間Ts1以降、データバッファ22に格納されたフレームF11の受信データを処理する。そして、図6に示したフレームF11の先頭部分に含まれる通信制御用データCDに対応する時間制約処理は、自動的に最大周波数f1で実行される。
【0058】
ここで、時間制約処理は、フレーム長FL以内に実行されればそのリアルタイム性は保証されるが、時間制約処理が常に最大周波数f1で実行される理由を以下に示す。
【0059】
図8は、最大データ量のフレームに対する処理の実行時間とプロセッサ4に供給されるクロックCLKの周波数との関係を示す。ここで、図8には、図6と同様に1フレーム中の通信制御用データCDとユーザデータUDが示され、フレームの先頭部分に含まれる通信制御用データCDに対応する時間制約処理が先に実行される。また、図8(a)と図8(b)に示すフレームの全データ量はそれぞれ等しく、システムに想定される最大のデータ量である。
【0060】
図8(a)に示すように、データ処理装置が想定される最大データ量のフレームを処理する場合、その最大周波数f1で処理すれば、1フレーム長FLで処理が完了する。図1で説明したように、データ処理装置の最大周波数f1は、システム上、想定される最大データ量のフレームを1フレーム長FL以内に処理完了できる周波数に設計されているからである。
【0061】
また、データ処理装置は、処理開始前にフレームのデータ量を予測できない。そこで、データ処理装置は、最大データ量のフレームであっても1フレーム長FL内での処理完了を保証するために、フレームの先頭の検出に応答し、処理速度を最大周波数f1に設定する。
【0062】
一方で、図8(b)に示すように、フレーム先頭検出時の処理速度を最大周波数f1に設定せず、それより低い周波数f3に設定したとしても、時間制約処理はフレーム長FL以内に完了するためそのリアルタイム性は保証される。
【0063】
しかし、ユーザデータUDが最大データ量の場合は、それに対応する時間制約のない処理は、最大周波数f1で実行されてもフレーム長FL以内に処理完了しない。その結果、期間FLpに示すユーザデータUDは、フレームの未処理の受信データとしてデータバッファ22に滞留する。その結果、ユーザデータUDに対応する時間制約のない処理は数フレーム程度の遅延が許容されていても、最大データ量のフレームの受信が続く場合は、フレーム毎に滞留する未処理の受信データでデータバッファ22がオーバフローし、システムが破たんする恐れがある。
【0064】
以上のように、データ処理装置は、フレームの受信データ量の滞留によるシステム破たんを回避するために、フレームの先頭の検出に応答し、その時点の未処理データ量にかかわらず、自動的に処理速度を最大周波数f1に設定する。これによりフレームの先頭部分に含まれる通信制御用データCDに対応する時間制約処理は自動的に最大周波数f1で実行され、ユーザデータUDが最大データ量になったとしてもシステムの破たんは回避される。
【0065】
図7に戻り、時間Td1における時間制約処理完了のタイミングで、データ処理部42は、データ処理管理機能部413に時間制約処理完了信号S3を出力する。以降は、ユーザデータUD1〜UD3等に対応する時間制約のない処理であるため、低消費電力化のために、可能ならばクロック周波数を最大周波数f1よりも低く設定する。
【0066】
データ処理管理機能部413は、データ処理部42からの時間制約処理完了信号S3に応答して、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受けているか否かを参照する。
【0067】
前述したように、本動作例では、時間制約処理の完了のタイミングTd1において、データ量集計部411での未処理データ量の集計が未完了である。これは、例えばフレームの受信データ量が大きく、無線同期及び復調復号化部21において、フレームの受信データに対する復調復号処理が完了していないことによる。よって、データ処理管理機能部413は、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受けていない。
【0068】
そこで、データ処理管理機能部413は、未処理データ量の集計未完了を示すクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。
【0069】
性能決定部412は、クロック周波数決定信号S4に応答して、フレームF11の一つ前のフレームF10でその未処理データ量に基づいて決定したクロック周波数f10を新たなクロック周波数に決定する。すなわち、以前のフレームに対する処理速度を引き継ぐ。そして、プロセッサ4は、その決定したクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。
【0070】
電源・クロック生成部1は、クロック周波数設定信号S5に対応する周波数f10のクロックCLKとそれに対応する電源電圧Vcとをデータ処理部42を有するプロセッサ4に供給する。以降、時間Td1〜Tc1の間は、クロック周波数f10で未処理データに対応する時間制約のない処理が実行される。
【0071】
時間Tc1において、無線同期及び復調復号化部21は、フレームの受信データの復調復号化を完了し、受信データ量を求め、その受信データ量を受信データ量集計部416に出力する。そして、受信データ量集計部416にその受信データ量が入力されたタイミングで、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415はそれぞれのデータ量の集計し、データ量集計部411は、各集計部414〜416が集計したデータ量を未処理データ量として集計する。
【0072】
さらに、データ量集計部411は、未処理データ量の集計が完了したタイミングでデータ処理管理機能部413にデータ量集計完了信号S6を出力する。
【0073】
データ処理管理機能部413は、そのデータ量集計完了信号S6に応答して、第2のクロック周波数決定信号S4を出力する。
【0074】
性能決定部412は、データ処理管理機能部413からの第2のクロック周波数決定信号S4に応答して、未処理データ量を参照する。この未処理データ量は現時点でのデータ処理状況に対応する。そして、性能決定部412は、その未処理データ量に基づいてクロック周波数f11を決定する。そして、プロセッサ4は、その決定したクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。ここで、クロック周波数f11は、例えばフレーム長FL内に未処理データに対応する処理を全て完了できる最小のクロック周波数である。
【0075】
図9は、性能決定部412における未処理データ量に基づくクロック周波数の決定方法の一例である。図表91は、各集計部414〜416で集計したデータ量を示す。データ量集計部411は、各集計部414〜416が集計した受信データ量A、未処理受信データ量B、送信データ量Cを未処理データ量として集計する。
【0076】
図表92は、性能決定部412がデータ集計部91の集計した未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するまでの途中計算例を示す。
【0077】
欄p1には、性能決定部412がデータ集計部411を参照して得た未処理データ量A、B、Cのそれぞれが示されている。
【0078】
欄p2には、データ処理の優先度に基づく係数X、Y、Zが示されている。例えば、送信データ量の増加が予想され、それが原因で未処理データ量が増加し、システム破たんが発生する可能性がある場合は、送信データを早く処理するために係数Zを大きくし、その処理の優先度を上げる。
【0079】
そして、欄p3には、欄p1と欄p2の積算値AX、BY、CZが示されて、欄p4には最終集計値Dとしてそれら積算値の和(AX+BY+CZ)が示されている。
【0080】
図表93は、未処理データ量に基づく最終集計値Dとそれに対応するクロック周波数の関係が定義された対応テーブルである。性能決定部412は、この対応テーブルに基づいてクロック周波数を決定する。例えば、最終集計値Dが10000byte以上30000byte未満の場合、クロック周波数は、100MHzに決定される。なお、図表93には、クロック周波数に対応する動作電圧が示されている。このように、性能決定部412がクロック周波数に対応する動作電圧を決定してもよい。図表93において、クロック周波数が高いほど、その駆動に必要な対応する動作電圧は高くなる。前述したように、消費電力は主に電源電圧の二乗に比例するため、低消費電力化の観点からより低いクロック周波数に決定されることが好ましい。
【0081】
また、前述したように、送信データに対応する処理を早く実行するために係数Zを大きくした場合には、送信データ量Cが小さくても最終集計値Dは係数Zに起因して大きくなり、クロック周波数は大きな値に決定される。すなわち、送信データ量Cに対するデータ処理の優先度が処理速度に反映される。
【0082】
図5、図7に戻り、電源・クロック生成部1は、クロック周波数設定信号S5に対応する周波数f11のクロックCLKとそれに対応する電源電圧Vcとをデータ処理部42に供給する。以降、時間Tc1〜Ts2の間は、クロック周波数f11で未処理データに対応する処理が実行される。
【0083】
次に、時間Ts2において、データ受信部2は、フレームF12の先頭を検出する。それに応答してクロック周波数は再び最大周波数f1に変更され、電源電圧Vcも上昇される。そして、同様にフレームF12の通信制御用データCDに対応する時間制約処理は、最大周波数f1で実行される。そして、その時間制約処理が完了した後は、時間制約処理の完了の時間Td1のタイミング以降に、以前のフレームF11で決定されたクロック周波数f11に変更される。さらに、未処理データ量の集計のタイミングTc2に応答して、未処理データ量に基づいて決定された新たなクロック周波数f12に変更される。以降、図7に示すようにフレーム毎に同様の処理が繰り返される。
【0084】
以上のように、本実施の形態のデータ処理装置は、その先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を自動的に最大周波数で実行する。そして、その完了のタイミングにおいて、現在のデータ処理状況に対応する未処理データ量の集計が完了していない場合は、本データ処理装置は、以前のフレームで決定されたクロック周波数で時間制約のない処理を実行する。これにより、データ処理装置は、時間制約処理のみを確実に最大周波数で実行するとともに、時間制約のない処理を最大周波数で無駄に実行することを回避できるため、より低消費電力化が実現される。
【0085】
さらに、未処理データ量の集計完了のタイミングにおいて、本データ処理装置は、未処理データ量に基づいて新たに決定した可能な限り低いクロック周波数で時間制約のない処理を実行する。また、この未処理データ量に基づくクロック周波数への設定は、フレーム毎に、規定のフレーム長FL以内に1回のみ行われる。
【0086】
以上により、本実施の形態におけるデータ処理装置は、時間制約処理をリアルタイムに完了させ、通信状態を維持しつつ低消費電力化を実現する。さらに本データ処理装置は、低消費電力化のためにデータ処理状況を常時監視する必要がなく、フレーム毎に所定のタイミングで1回のみ適切なクロック周波数を設定するだけであり、低オーバヘッドの処理を実現する。
【0087】
図10は、本実施の形態におけるデータ処理装置の図7と異なる動作例を示す図である。図10は、時間制約処理の完了のタイミングで、データ量集計部411での未処理データ量の集計が完了している場合のデータ処理装置の動作を示す。時間Ts1〜Ts4はフレームの先頭が検出されたタイミングであり、時間Td1〜Td3はデータ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングであり、時間Tc1〜Tc3はデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングである。
【0088】
図10は、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングTd1〜Td3が、データ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングTc1〜Tc3よりも遅い点で図7に示す動作例とは異なる。そして、このような動作は、例えば、フレームの受信データ量が少なく、さらにそのフレームの時間制約処理に対応するデータCDの割合が大きい場合に起こり得る。すなわちフレームの受信データ量が少ないため、無線同期及び復調復号化部21での復調復号化処理は早く完了し、フレームの受信データ量が早いタイミングで得られるため、データ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミング時間Tc1〜Tc3は早い。また、フレームの時間制約処理に対応するデータCDの割合が大きいため、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングTd1〜Td3は比較的に遅くなる。
【0089】
以下、図5、図10を参照し、図7の動作との差異を説明する。
【0090】
フレームF11の受信データは、復調復号化され、データバッファ22に一時格納される。以降、フレームの受信データの復調復号化と並行してデータバッファ22に出力された受信データは、データ処理部42により最大周波数f1で順次処理される。
【0091】
時間Tc1において、フレームF11の受信データの復調復号化が完了し、フレームF11の受信データ量が求められ、データ量集計部411での未処理データ量の集計が完了する。そして、データ量集計部411は、データ処理管理機能部413にデータ量集計完了信号S6を出力する。
【0092】
そして、時間Td1における時間制約処理完了のタイミングで、データ処理部42は、データ処理管理機能部413に時間制約処理完了信号S3を出力する。
【0093】
データ処理管理機能部413は、データ処理部42からの時間制約処理完了信号S3に応答して、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受けているか否かを参照し、未処理データ量の集計完了を示すクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。
【0094】
性能決定部412は、データ処理管理機能部413からのクロック周波数決定信号S4に応答して、データ量集計部411が集計した未処理データ量に基づいて新たなクロック周波数f11を決定する。そして、プロセッサ4は、その決定したクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。それに応答して、電源・クロック生成部1は、クロックCLKを最大周波数f1からクロック周波数f11に下げ、電源電圧Vcを最大周波数f1に対応する最大電圧からクロック周波数f11に対応する電圧に下げる。
【0095】
そして、時間Td1以降、フレーム12の先頭検出のタイミングTs2までクロック周波数f11で未処理データに対応する処理が実行される。以降、図10に示すようにフレーム毎に同様の処理が繰り返される。
【0096】
以上のように、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングTd1〜Td3が、データ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングTc1〜Tc3よりも遅い場合、本データ処理装置は、前者のタイミングTd1〜Td3で未処理データ量に基づく新たなクロック周波数を決定する。
【0097】
このように、本データ処理装置は、フレームの受信データの性格に関わらず、フレーム毎に図7に示す動作または図10に示す動作により低オーバヘッドで低消費電力化を実現する。
【0098】
また、無線同期及び復調復号部21がフレームの先頭を検出してから、そのフレームの受信データの処理がデータ処理部42で開始されるまでに、復調復号化処理やバッファリング等が行われるため、遅延が生じることが想定される。このような場合、フレームの先頭を検出した時点でプロセッサ4に最大周波数のクロックCLKを供給することは適切でない。
【0099】
そこで、無線同期及び復調復号化部21は、フレームの先頭検出のタイミング後、データ処理部42が時間制約処理を開始するタイミングで電源・クロック生成部1にフレーム先頭検出信号S1を出力する。
【0100】
これは、例えばデータ処理部42が、フレームの先頭部分に含まれる通信制御用データCDの処理開始と同時に無線同期及び復調復号部21に図示しない信号を返し、無線同期及び復調復号部21が、その信号に応答してフレーム先頭検出信号S1を出力することにより実現される。もしくは、システム設計時に上述した遅延を想定し、無線同期及び復調復号部21がその遅延分遅らせてフレーム先頭検出信号S1を出力してもよい。
【0101】
これにより、本データ処理装置は、最大周波数のクロックおよびそれに対応する電源電圧での処理を、時間制約処理に対応するデータについてのみ適用できる。
【0102】
次に、通信状態維持のためにリアルタイム性が求められる時間制約処理の具体例として、送信電力制御処理、通信状態の報告処理、MAP情報の解析処理について簡単に説明する。
【0103】
第1の例では、全てのユーザが同一周波数の搬送波を使用するCDMA方式では、基地局からの距離にかかわらず移動局が同じ送信電力で電波を出すと、近い方からの電波が強すぎて、遠い方の移動局からの信号を分離できなくなるという問題が発生する。これを遠近問題といい、この問題を解決するために各移動局が送信電力を必要最小限に抑える適応送信電力制御が不可欠となる。
【0104】
そこで、移動局は、時間制約処理として基地局が指定する上り信号の電波強度に基づいて自己の送信電力の調整処理を行う。この調整処理は、そのフレームの期間内で完了することが求められる。
【0105】
第2の例では、基地局は、移動局に送信する下り信号の電波強度を調整するために、まず、移動局に下り信号の電波強度の測定を指示する。その指示に応答して、移動局は、基地局からの下り信号の電波強度を測定し、その測定結果を基地局に報告する。この報告処理も、基地局からのその命令コマンドを受信したフレームの期間内で完了することが求められる。
【0106】
第3の例は次のとおりである。図11は、本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。図11(a)は、TDMA方式のフレーム構成であり、無線リソースは時間領域で分割されている。マップデータM1は、分割された複数のタイムスロットSL1、SL2・・の管理情報を含み、例えば自分に割当てられたスロット位置の情報等を含む。
【0107】
図11(b)は、モバイルWiMAXが採用しているOFDMA方式のフレーム構成であり、無線リソースは周波数領域と時間領域で分割されている。本フレームは、データ転送用のブロックである複数のバーストB1、B2・・を有する。そして、マップデータM2は、フレーム内のこれらバーストB1、B2・・の管理情報を含み、例えば各バーストの割当て情報や拡張制御情報等の受信パラメータを含む。
【0108】
受信側は、受信したこれらのフレームを処理するために、まずマップデータM1、M2を解析し、各スロットおよびバーストの位置情報等を検出する必要がある。そのため、マップデータM1、M2の解析は、そのフレームの期間の早い段階で完了することが求められる。そこで、本データ処理装置は、時間制約処理としてマップデータM1、M2の解析処理を行う。
【0109】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0110】
(付記1)
受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置において、
供給されるクロックと電源電圧に基づいて前記受信データを前記フレーム毎にデータ処理し、前記フレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を当該フレームに与えられた単位時間内に完了するデータ処理部と、
前記クロックおよびそれに対応する電源電圧を生成し、前記データ処理部に供給する電源・クロック生成部と、
前記フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、
前記データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、
前記電源・クロック生成部は、前記フレーム先頭検出部による前記フレーム先頭検出のタイミングに応答して前記データ処理部が動作可能な最大周波数のクロックと前記最大周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給し、前記データ処理部が前記時間制約処理を完了した後、当該フレームの単位時間内のクロック周波数設定タイミングで、前記最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、前記クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける前記未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックと前記第1の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給するデータ処理装置。
【0111】
(付記2)
前記電源・クロック生成部は、前記データ処理部による前記時間制約処理の完了のタイミングに応答して、前記クロック周波数設定タイミングの前に一時的に以前のフレームで決定された第2の周波数のクロックと前記第2の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する付記1記載のデータ処理装置。
【0112】
(付記3)
前記未処理データは、現在のフレームおよび以前のフレームの受信データと送信データとを有する付記1記載のデータ処理装置。
【0113】
(付記4)
前記未処理データ量は、前記現在のフレームおよび以前のフレームの受信データと送信データのそれぞれに対してデータ処理の優先順位に基づく係数が積算されてから求められる付記3記載のデータ処理装置。
【0114】
(付記5)
前記クロック周波数決定部は、前記未処理データ量に対応するクロックの周波数が定義された対応テーブルを有し、当該対応テーブルに基づいて前記第1の周波数を決定する付記1記載のデータ処理装置。
【0115】
(付記6)
前記電源・クロック生成部は、前記受信データ先頭検出部による前記フレームの検出のタイミング以降、前記データ処理部による前記時間制約処理の開始のタイミングで前記最大周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する付記1記載のデータ処理装置。
【0116】
(付記7)
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記移動局が、前記基地局が指定する上り信号の電波強度に基づいて自己の送信電力を調整する処理を含む付記1記載のデータ処理装置。
【0117】
(付記8)
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記基地局から送信された下り信号の電波強度を測定し、前記基地局に測定結果を報告する処理を含む付記1記載のデータ処理装置。
【0118】
(付記9)
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記フレームは、データ転送用のブロックである複数のバーストを有し、前記時間制約処理は、前記フレーム内の複数のバーストの位置情報または受信パラメータを含むマップデータを解析する処理である付記1記載のデータ処理装置。
【符号の説明】
【0119】
1 電源・クロック生成部 2 データ受信部 3 データ送信部
4 プロセッサ 5 入出力装置 41 クロック周波数決定部 42 データ処理部
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムにおけるデータ処理装置には、その処理にリアルタイム性が要求される。リアルタイム性とは、処理の要求から所定の時間内にその処理が完了することを保証することであり、特に通信制御用データ等は、通信状態を維持するためにリアルタイムに処理される必要がある。そのため、通信システムにおけるデータ処理装置のデータ処理性能は、想定される処理の最大負荷量または最大処理量に基づいて決定される。
【0003】
図1は、データ処理を行うプロセッサが、供給される各クロック周波数f1、f2で1フレームのデータを処理した場合の実行時間と残りのデータ量(負荷量)の関係を示す図である。実線L1〜L3は、フレームがそれぞれ括弧内に付記した周波数f1、f2でデータ処理された場合の残りのデータ量を表す。
【0004】
フレーム単位でデータが送受信される通信システムでは、規定されたフレーム長FL以内での処理の完了が求められる。そのため、最大のクロック周波数f1は、フレームに想定される最大データ量W1と規定のフレーム長FLに基づいて決定される。これにより、実線L1に示すように、最大データ量W1のフレームであっても、最大周波数f1でデータ処理されることによりフレーム長FLで処理が完了する。すなわち、前述したリアルタイム性が保障される。また、データ量W2(<W1)の場合は、実線L2、L3に示すように、リアルタイム性を保証しつつ、データ処理のクロック周波数を最大周波数f1からクロック周波数f2まで下げることができる。
【0005】
さらに、携帯電話システム等に代表される電池駆動の機器が使用される通信システムには、低消費電力化が要求される。
【0006】
図2は、通信システムにおける低消費電力化方法の一例を示す図である。図2のフレーム長FLと最大周波数f1は、図1に示したフレーム長FLと最大周波数f1に対応している。受信装置が受信した各フレームF1〜F3は、データ処理装置によりそれぞれ最大周波数f1でデータ処理される。そして、データ処理装置は、フレームF1〜F3毎にデータ処理が全て完了した時点Te1〜Te3でデータ処理用のプロセッサ等に供給するクロックをスリープ状態とし、電源電圧を低下させる。すなわち、期間Tp1〜Tp3では、データ処理を停止させることができ、低消費電力化が実現される。
【0007】
図3は、一般的な消費電力の式を表す図である。図3に示すように、データ処理を行うプロセッサ等の全体の消費電力Eは、供給するクロック周波数fcと電源電圧VDD並びにプロセッサ等のリーク電流Ilkgや静電容量Cに基づいて求められる。また、消費電力Eの第1項は、動的な消費電力E1、第2項は静的な消費電力E2を表す。このように、消費電力Eのうち動的な消費電力E1は電源電圧VDDの二乗に比例する。よって、プロセッサ等に供給する電源電圧を低下させることが、低消費電力化のための最も有効な手段である。
【0008】
そこで、低消費電力化の別の方法として、DVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)による制御が行われる。この制御は、データ処理中に電源電圧とクロック周波数を動的に制御する技術である。
【0009】
図4は、データ処理を行うプロセッサ等に供給するクロック周波数及び電源電圧の関係を示す図である。図4(a)、図4(b)において、それぞれ処理されるフレームF4のデータ量は等しい。
【0010】
図4(a)に示すように、フレームF4に対してクロック周波数fでデータ処理が行われた場合、時間Tで処理が完了する。また、図4(b)に示すように、フレームF4に対して1/2のクロック周波数f/2でデータ処理が行われた場合、処理の完了までに2倍の時間2Tがかかるが、図4(c)に示すように、その間、電源電圧をクロック周波数f/2に対応する電源電圧に下げることができる。
【0011】
このように、DVFSによる制御では、データ処理中にそのクロック周波数を下げることにより、対応する電源電圧を下げることができるため、上述したように大幅な低消費電力化が実現される。
【0012】
以上に関するデータ処理装置は、例えば特許文献1〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008-282150号 公報
【特許文献2】特開平8-76874号 公報
【特許文献3】特開2005-236867号 公報
【特許文献4】特開2008-113319号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、DVFSによる制御によりクロック周波数を下げすぎると、データ処理にかかる時間が長くなるため、前述したデータ処理のリアルタイム性が保証されない場合がある。このような状況は、例えば図1において、データ量W2のフレームに対するデータ処理のクロック周波数を周波数f2よりも下げた場合に相当する。これを回避するために、データ処理装置は、常にデータ処理状況を監視し、適宜、DVFSによるクロック周波数の制御を行う必要があるが、これらデータ処理状況の監視のために、多大なリソースが消費される。つまり、データ処理状況を常時監視することは、高いオーバヘッドにつながる。
【0015】
そこで、本発明の目的は、リアルタイム性を保証しつつ、DVFSによる低消費電力化を低オーバヘッドで実現するデータ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
1つの態様によれば、受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置は、供給されるクロックと電源電圧に基づいて前記受信データを前記フレーム毎にデータ処理し、前記フレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を当該フレームに与えられた単位時間内に完了するデータ処理部と、前記クロックおよびそれに対応する電源電圧を生成し、前記データ処理部に供給する電源・クロック生成部と、前記フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、前記データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、前記電源・クロック生成部は、前記フレーム先頭検出部による前記フレーム先頭検出のタイミングに応答して前記データ処理部が動作可能な最大周波数のクロックと前記最大周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給し、前記データ処理部が前記時間制約処理を完了した後、当該フレームの単位時間内のクロック周波数設定タイミングで、前記最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、前記クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける前記未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックと前記第1の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する。
【発明の効果】
【0017】
上記の発明によれば、リアルタイム性を保証しつつ、DVFSによる低消費電力化を低オーバヘッドで実現するデータ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】データ処理を行うプロセッサが、供給される各クロック周波数f1、f2で1フレームを処理した場合の実行時間と残りのデータ量(負荷量)の関係を示す図である。
【図2】通信システムにおける低消費電力化方法の一例を示す図である。
【図3】一般的な消費電力の式を表す図である。
【図4】データ処理を行うプロセッサ等に供給するクロック周波数及び電源電圧の関係を示す図である。
【図5】本実施の形態におけるデータ処理装置のブロック図の一例である。
【図6】本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。
【図7】本実施の形態におけるデータ処理装置の動作例を示す図である。
【図8】最大データ量のフレームに対する処理の実行時間とプロセッサ4に供給されるクロックCLKの周波数との関係を示す。
【図9】性能決定部412における未処理データ量に基づくクロック周波数の決定方法の一例である。
【図10】時間制約処理の完了のタイミングで、データ量集計部411での未処理データ量の集計が完了している場合のデータ処理装置の動作を示す。
【図11】本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に従って実施の形態について説明する。但し、本技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0020】
[第1の実施の形態]
図5は、本実施の形態におけるデータ処理装置のブロック図の一例である。本データ処理装置は、有線または無線通信システムにおいてフレーム等のデータ単位毎でデータ処理を行う機器全般に実装可能である。
【0021】
本データ処理装置は、電源・クロック生成部1、データ受信部2、データ送信部3、プロセッサ4、入出力装置5を有し、受信したフレームの受信データRDに対するデータ処理や処理されたデータの出力等を行う。また、プロセッサ4内のクロック周波数決定部41とデータ処理部42は、ソフトウェアプログラムを実行することにより実現される機能に対応する。
【0022】
データ受信部2は、無線同期及び復調復号化部21とデータバッファ22を有し、フレームの受信データRDに対して受信処理を行う。
【0023】
図6は、本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。フレームは、フレーム同期用シンボルFHと通信制御用データCDとユーザデータUD1〜UD3を有する。また、フレームの先頭FSからフレームの終了FEまでのフレーム長FLは、フレームに与えられた単位時間であり、フレームの受信データRDは、通常、この単位時間内での処理完了が求められる。なお、このフレーム長FLは、システム毎に規定され、例えば通信システムの一つであるW-CDMAシステムでは10msとして規定されている。
【0024】
通信制御用データCDに対応する処理は、次フレーム以降の通信状態を維持するためにリアルタイム性が要求される時間制約処理を含み、時間制約処理はフレーム長FL以内に処理完了されなければならない。そのため、通常、通信制御用データCDは、フレームの先頭部分に含まれる。フレームの後部に含まれると、次フレームまでにその時間制約処理が完了しない場合があるためである。そして、本データ処理装置は、これらの時間制約処理を最大周波数で処理する。時間制約処理には、例えば送信電力制御処理や通信状態の報告処理等が挙げられるが、その具体的な内容については後述する。
【0025】
また、ユーザデータUD1〜UD3に対応する処理は、処理完了までの遅延が数フレーム程度許容される時間制約のない処理である。そして、本データ処理装置は、これらの時間制約のない処理を最適な低いクロック周波数で処理する。
【0026】
図5に戻り、データ受信部2の無線同期及び復調復号化部21は、図6に示すフレーム同期用シンボルFHに基づいて受信したフレームについて同期処理し、復調復号化処理し、復調復号化処理した受信データRDを順次データバッファ22に出力する。以降、無線同期及び復調復号化部21でのフレームの受信データRDの復調復号化と並行して、データ処理部42は、データバッファ22に出力された受信データRDを処理する。
【0027】
また、無線同期及び復調復号化部21は、フレームの受信データRDを復調復号化した受信データRDの受信データ量を求め、その受信データ量をプロセッサ4のソフトウェアプログラムである受信データ量集計部416に出力する。なお、受信データ量集計部416については後述する。
【0028】
このようにフレームの受信データ量が求まるタイミングは、フレームの受信データRDの復調復号化が全て完了した後であるため、データ処理部42での復調復号化された受信データRDの処理が開始されるタイミングよりも遅い。さらに、受信データ量が求まるタイミングは、フレーム毎の復調復号化される受信データ量に依存するため、フレーム毎に異なる。
【0029】
また、無線同期及び復調復号化部21は、フレーム同期シンボルFHによりフレームの先頭を検出し、その検出のタイミングで電源・クロック生成部1にフレーム先頭検出信号S1を出力する。
【0030】
データバッファ22は、復調復号化されたフレーム内の受信データRDを一時的に格納する。
【0031】
電源・クロック生成部1は、電源生成部11およびクロック生成部12を有し、図5に示す入力信号S1、S5に基づいてクロック生成部12が生成したクロックCLKおよびそれに対応して電源生成部11が生成した電源電圧Vcをプロセッサ4に供給する。
【0032】
ここで、電源・クロック生成部1は、前述の無線同期及び復調復号化部21が出力したフレーム先頭検出信号S1の入力に応答してプロセッサ4が動作可能な最大周波数のクロックCLKおよび対応する電源電圧をプロセッサ4に供給する。
【0033】
プロセッサ4は、電源・クロック生成部1から供給されるクロックCLKおよびそれに対応する電源電圧Vcに基づいて、クロック周波数決定部41およびデータ処理部42の機能を有するコンピュータプログラムを実行する。すなわち、データ処理部42は、クロックCLKおよび電源電圧Vcに基づいて入力されるデータを順次処理する。
【0034】
以上の動作に基づいて、本データ処理装置は、受信したフレームの先頭の検出に応答して、フレームの受信データの処理を最大周波数で開始する。これにより、自動的にフレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理が最大周波数で処理される。しかも、最大周波数への制御は、フレームの先頭検出に応答して行われるので、特別の監視処理は必要ない。
【0035】
また、データ処理部42は、データバッファ22に一時格納された受信処理中の現在のフレームの受信データおよび未処理の以前のフレームの受信データと、入出力装置5から入力される送信データ等とを処理する。そして、データ処理部42が処理したデータは、例えば入出力装置5またはデータ送信部3に出力される。
【0036】
さらに、データ処理部42は、前述した時間制約処理を完了した後、クロック周波数決定部41に時間制約処理完了信号S3を出力する。この時間制約処理の完了の検出方法としては、例えば、データ処理部42が、入力されたフレームから、まず時間制約処理に対応するデータと時間制約のない処理に対応するデータを分別する。そして、データ処理部42は、これら各々をそれぞれ個別に管理することにより、各々の処理の完了を検出する。
【0037】
クロック周波数決定部41は、データ処理部42での処理が完了していない未処理データ量に基づいてクロックCLKの周波数を決定する。このために、クロック周波数決定部41は、データ量集計部411、性能決定部412、データ処理管理機能部413、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415、受信データ量集計部416を有する。
【0038】
送信データ量集計部414は、入出力装置5などから入力される送信データのうち処理すべきデータ量を集計する。もしくは、このデータ量の集計値は、通信システム毎に送信データの許容量として規定された固定値であってもよい。
【0039】
未処理受信データ量集計部415は、データバッファ22を参照し、データバッファ22に格納され、滞留している以前のフレームの未処理のデータ量を集計する。
【0040】
受信データ量集計部416は、前述した無線同期及び復調復号部21から出力される現在のフレームの受信データ量を集計値として集計する。
【0041】
データ量集計部411は、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415、受信データ量集計部416が個別に集計した各データ量を未処理データ量として集計する。ここで、これらの各データ量の集計が開始されるタイミングは、受信データ量集計部416が現在のフレームの受信データを取得したタイミングである。すなわち、受信データ量集計部416が、無線同期及び復調復号部21から現在のフレームの受信データを取得したタイミングで、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415はそれぞれのデータ量の集計を開始する。そして、それら全ての集計の完了後、データ量集計部411は、各集計部414〜416が集計したデータ量を未処理データ量として集計する。この未処理データ量は、いわゆるデータ処理装置の現在の処理状況を表し、クロック周波数決定部41は、このデータ処理量に基づいて現在の処理状況に対応する最適のクロック周波数を決定する。
【0042】
さらに、データ量集計部411は、未処理データ量の集計が完了したタイミングでデータ処理管理機能部413にデータ量集計完了信号S6を出力する。
【0043】
データ処理管理機能部413は、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングとデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングとをそれぞれ管理する。以下に示す性能決定部412は、これらの各タイミングのいずれかで、クロック周波数を決定するが、これらのタイミングはフレーム毎にそれぞれ異なる。
【0044】
例えば、フレームの受信データ量は大きいが、そのフレームに含まれる時間制約処理に対応するデータ量が少ない場合、時間制約処理の完了のタイミングは早い。また、無線同期及び復調復号化部21での復調復号化処理に時間がかかるため、未処理データ量の集計完了のタイミングは遅くなる。この場合、性能決定部412は、時間制約処理の完了のタイミングでは未処理データ量の集計が完了していない場合があり、未処理データ量に基づくクロック周波数を決定できない。
【0045】
そこで、データ処理管理機能部413は、データ処理部42からの時間制約処理完了信号S3に応答して、まずデータ量集計部411からのデータ量集計完了信号S6に基づき未処理データ量の集計が完了しているか未完了かを判定する。そして、データ処理管理機能部413は、その判定結果に対応するクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。つまり、クロック周波数決定信号S4は未処理データ量の集計完了または未完了の情報を含む。
【0046】
さらに、データ量集計部411での未処理データ量の集計が未完了であった場合、データ処理管理機能部413は、その集計の完了後に、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受ける。そして、データ処理管理機能部413は、そのデータ量集計完了信号S6に応答して、集計の完了を示す第2のクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。
【0047】
性能決定部412は、前述したクロック周波数決定信号S4に応答し、未処理データに対する最適のクロック周波数を決定する。すなわち、クロック周波数決定信号S4が未処理データ量の集計完了を示す場合、性能決定部412は、データ量集計部411が集計した未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定する。そして、プロセッサ4は、そのクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。
【0048】
一方で、クロック周波数決定信号S4が未処理データ量の集計未完了を示す場合、性能決定部412は、1つ前のフレームに対する処理で同様に決定したクロック周波数をクロック周波数として決定する。そして、プロセッサ4は、そのクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。すなわち、未処理データ量の集計が未完了であるため、未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定することはできないが、時間制約処理は完了しているので、1つ前のフレームで決定した低いクロック周波数および対応する電源電圧で以降の処理を実行する。
【0049】
さらに、この場合、性能決定部412は、データ処理管理機能部413からデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了を示す第2のクロック周波数決定信号S4を受ける。そこで、性能決定部412は、第2のクロック周波数決定信号S4に応答して、未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定する。そして、プロセッサ4は、そのクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。
【0050】
データ送信部3は、変調符号化部31とデータバッファ32を有し、データ処理部42で処理された送信データを送信処理する。データバッファ32は、送信データTDを一時格納する。また、変調符号化部31は、データバッファ32に格納された送信データTDを変調符号化し、送信フレームを出力する。
【0051】
図7は、本実施の形態におけるデータ処理装置の動作例を示す図である。図7は、本データ処理装置がフレームF11、F12・・を順次受信した場合の処理の実行時間とプロセッサ4に供給されるクロックCLKの周波数との関係を示す。また、図7は、時間制約処理の完了のタイミングで、データ量集計部411での未処理データ量の集計が未完了であった場合のデータ処理装置の動作を示す。また、括弧内には、それぞれの実行時間にデータ処理部42に供給されるクロック周波数f10〜f13が示されている。
【0052】
また、時間Ts1〜Ts4はフレームの先頭が検出されたタイミングであり、時間Td1〜Td3はデータ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングであり、時間Tc1〜Tc3はデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングである。
【0053】
以下、図5〜図7を参照し、本データ処理装置の動作を説明する。
【0054】
時間Ts1において、データ受信部2は、フレームF11を受信する。そして、無線同期及び復調復号化部21は、その先頭を検出し、電源・クロック生成部1にフレーム先頭検出信号S1を出力する。
【0055】
フレームF11の受信データは、復調復号化され、データバッファ22に一時格納される。そして、フレームの受信データの復調復号化と並行してデータバッファ22に出力された受信データは、データ処理部42で順次処理される。
【0056】
電源・クロック生成部1は、フレーム先頭検出信号S1の入力のタイミングに応答して、データ処理部4が動作可能な最大周波数f1のクロックCLKとそれに対応する電源電圧Vcとをデータ処理部42を有するプロセッサ4に供給する。具体的には、電源・クロック生成部1は、プロセッサ4に供給する電源電圧Vcを最大周波数f1に対応する電源電圧Vcに上昇させてから、クロックCLKの周波数を最大周波数f1に変更する。先にクロックCLKを最大周波数f1に変更しても、それに対応する電源電圧Vcが供給されていなければ、プロセッサ4は、最大周波数f1で動作せず、誤動作する可能性があるからである。
【0057】
データ処理部42は、時間Ts1以降、データバッファ22に格納されたフレームF11の受信データを処理する。そして、図6に示したフレームF11の先頭部分に含まれる通信制御用データCDに対応する時間制約処理は、自動的に最大周波数f1で実行される。
【0058】
ここで、時間制約処理は、フレーム長FL以内に実行されればそのリアルタイム性は保証されるが、時間制約処理が常に最大周波数f1で実行される理由を以下に示す。
【0059】
図8は、最大データ量のフレームに対する処理の実行時間とプロセッサ4に供給されるクロックCLKの周波数との関係を示す。ここで、図8には、図6と同様に1フレーム中の通信制御用データCDとユーザデータUDが示され、フレームの先頭部分に含まれる通信制御用データCDに対応する時間制約処理が先に実行される。また、図8(a)と図8(b)に示すフレームの全データ量はそれぞれ等しく、システムに想定される最大のデータ量である。
【0060】
図8(a)に示すように、データ処理装置が想定される最大データ量のフレームを処理する場合、その最大周波数f1で処理すれば、1フレーム長FLで処理が完了する。図1で説明したように、データ処理装置の最大周波数f1は、システム上、想定される最大データ量のフレームを1フレーム長FL以内に処理完了できる周波数に設計されているからである。
【0061】
また、データ処理装置は、処理開始前にフレームのデータ量を予測できない。そこで、データ処理装置は、最大データ量のフレームであっても1フレーム長FL内での処理完了を保証するために、フレームの先頭の検出に応答し、処理速度を最大周波数f1に設定する。
【0062】
一方で、図8(b)に示すように、フレーム先頭検出時の処理速度を最大周波数f1に設定せず、それより低い周波数f3に設定したとしても、時間制約処理はフレーム長FL以内に完了するためそのリアルタイム性は保証される。
【0063】
しかし、ユーザデータUDが最大データ量の場合は、それに対応する時間制約のない処理は、最大周波数f1で実行されてもフレーム長FL以内に処理完了しない。その結果、期間FLpに示すユーザデータUDは、フレームの未処理の受信データとしてデータバッファ22に滞留する。その結果、ユーザデータUDに対応する時間制約のない処理は数フレーム程度の遅延が許容されていても、最大データ量のフレームの受信が続く場合は、フレーム毎に滞留する未処理の受信データでデータバッファ22がオーバフローし、システムが破たんする恐れがある。
【0064】
以上のように、データ処理装置は、フレームの受信データ量の滞留によるシステム破たんを回避するために、フレームの先頭の検出に応答し、その時点の未処理データ量にかかわらず、自動的に処理速度を最大周波数f1に設定する。これによりフレームの先頭部分に含まれる通信制御用データCDに対応する時間制約処理は自動的に最大周波数f1で実行され、ユーザデータUDが最大データ量になったとしてもシステムの破たんは回避される。
【0065】
図7に戻り、時間Td1における時間制約処理完了のタイミングで、データ処理部42は、データ処理管理機能部413に時間制約処理完了信号S3を出力する。以降は、ユーザデータUD1〜UD3等に対応する時間制約のない処理であるため、低消費電力化のために、可能ならばクロック周波数を最大周波数f1よりも低く設定する。
【0066】
データ処理管理機能部413は、データ処理部42からの時間制約処理完了信号S3に応答して、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受けているか否かを参照する。
【0067】
前述したように、本動作例では、時間制約処理の完了のタイミングTd1において、データ量集計部411での未処理データ量の集計が未完了である。これは、例えばフレームの受信データ量が大きく、無線同期及び復調復号化部21において、フレームの受信データに対する復調復号処理が完了していないことによる。よって、データ処理管理機能部413は、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受けていない。
【0068】
そこで、データ処理管理機能部413は、未処理データ量の集計未完了を示すクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。
【0069】
性能決定部412は、クロック周波数決定信号S4に応答して、フレームF11の一つ前のフレームF10でその未処理データ量に基づいて決定したクロック周波数f10を新たなクロック周波数に決定する。すなわち、以前のフレームに対する処理速度を引き継ぐ。そして、プロセッサ4は、その決定したクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。
【0070】
電源・クロック生成部1は、クロック周波数設定信号S5に対応する周波数f10のクロックCLKとそれに対応する電源電圧Vcとをデータ処理部42を有するプロセッサ4に供給する。以降、時間Td1〜Tc1の間は、クロック周波数f10で未処理データに対応する時間制約のない処理が実行される。
【0071】
時間Tc1において、無線同期及び復調復号化部21は、フレームの受信データの復調復号化を完了し、受信データ量を求め、その受信データ量を受信データ量集計部416に出力する。そして、受信データ量集計部416にその受信データ量が入力されたタイミングで、送信データ量集計部414、未処理受信データ量集計部415はそれぞれのデータ量の集計し、データ量集計部411は、各集計部414〜416が集計したデータ量を未処理データ量として集計する。
【0072】
さらに、データ量集計部411は、未処理データ量の集計が完了したタイミングでデータ処理管理機能部413にデータ量集計完了信号S6を出力する。
【0073】
データ処理管理機能部413は、そのデータ量集計完了信号S6に応答して、第2のクロック周波数決定信号S4を出力する。
【0074】
性能決定部412は、データ処理管理機能部413からの第2のクロック周波数決定信号S4に応答して、未処理データ量を参照する。この未処理データ量は現時点でのデータ処理状況に対応する。そして、性能決定部412は、その未処理データ量に基づいてクロック周波数f11を決定する。そして、プロセッサ4は、その決定したクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。ここで、クロック周波数f11は、例えばフレーム長FL内に未処理データに対応する処理を全て完了できる最小のクロック周波数である。
【0075】
図9は、性能決定部412における未処理データ量に基づくクロック周波数の決定方法の一例である。図表91は、各集計部414〜416で集計したデータ量を示す。データ量集計部411は、各集計部414〜416が集計した受信データ量A、未処理受信データ量B、送信データ量Cを未処理データ量として集計する。
【0076】
図表92は、性能決定部412がデータ集計部91の集計した未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するまでの途中計算例を示す。
【0077】
欄p1には、性能決定部412がデータ集計部411を参照して得た未処理データ量A、B、Cのそれぞれが示されている。
【0078】
欄p2には、データ処理の優先度に基づく係数X、Y、Zが示されている。例えば、送信データ量の増加が予想され、それが原因で未処理データ量が増加し、システム破たんが発生する可能性がある場合は、送信データを早く処理するために係数Zを大きくし、その処理の優先度を上げる。
【0079】
そして、欄p3には、欄p1と欄p2の積算値AX、BY、CZが示されて、欄p4には最終集計値Dとしてそれら積算値の和(AX+BY+CZ)が示されている。
【0080】
図表93は、未処理データ量に基づく最終集計値Dとそれに対応するクロック周波数の関係が定義された対応テーブルである。性能決定部412は、この対応テーブルに基づいてクロック周波数を決定する。例えば、最終集計値Dが10000byte以上30000byte未満の場合、クロック周波数は、100MHzに決定される。なお、図表93には、クロック周波数に対応する動作電圧が示されている。このように、性能決定部412がクロック周波数に対応する動作電圧を決定してもよい。図表93において、クロック周波数が高いほど、その駆動に必要な対応する動作電圧は高くなる。前述したように、消費電力は主に電源電圧の二乗に比例するため、低消費電力化の観点からより低いクロック周波数に決定されることが好ましい。
【0081】
また、前述したように、送信データに対応する処理を早く実行するために係数Zを大きくした場合には、送信データ量Cが小さくても最終集計値Dは係数Zに起因して大きくなり、クロック周波数は大きな値に決定される。すなわち、送信データ量Cに対するデータ処理の優先度が処理速度に反映される。
【0082】
図5、図7に戻り、電源・クロック生成部1は、クロック周波数設定信号S5に対応する周波数f11のクロックCLKとそれに対応する電源電圧Vcとをデータ処理部42に供給する。以降、時間Tc1〜Ts2の間は、クロック周波数f11で未処理データに対応する処理が実行される。
【0083】
次に、時間Ts2において、データ受信部2は、フレームF12の先頭を検出する。それに応答してクロック周波数は再び最大周波数f1に変更され、電源電圧Vcも上昇される。そして、同様にフレームF12の通信制御用データCDに対応する時間制約処理は、最大周波数f1で実行される。そして、その時間制約処理が完了した後は、時間制約処理の完了の時間Td1のタイミング以降に、以前のフレームF11で決定されたクロック周波数f11に変更される。さらに、未処理データ量の集計のタイミングTc2に応答して、未処理データ量に基づいて決定された新たなクロック周波数f12に変更される。以降、図7に示すようにフレーム毎に同様の処理が繰り返される。
【0084】
以上のように、本実施の形態のデータ処理装置は、その先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を自動的に最大周波数で実行する。そして、その完了のタイミングにおいて、現在のデータ処理状況に対応する未処理データ量の集計が完了していない場合は、本データ処理装置は、以前のフレームで決定されたクロック周波数で時間制約のない処理を実行する。これにより、データ処理装置は、時間制約処理のみを確実に最大周波数で実行するとともに、時間制約のない処理を最大周波数で無駄に実行することを回避できるため、より低消費電力化が実現される。
【0085】
さらに、未処理データ量の集計完了のタイミングにおいて、本データ処理装置は、未処理データ量に基づいて新たに決定した可能な限り低いクロック周波数で時間制約のない処理を実行する。また、この未処理データ量に基づくクロック周波数への設定は、フレーム毎に、規定のフレーム長FL以内に1回のみ行われる。
【0086】
以上により、本実施の形態におけるデータ処理装置は、時間制約処理をリアルタイムに完了させ、通信状態を維持しつつ低消費電力化を実現する。さらに本データ処理装置は、低消費電力化のためにデータ処理状況を常時監視する必要がなく、フレーム毎に所定のタイミングで1回のみ適切なクロック周波数を設定するだけであり、低オーバヘッドの処理を実現する。
【0087】
図10は、本実施の形態におけるデータ処理装置の図7と異なる動作例を示す図である。図10は、時間制約処理の完了のタイミングで、データ量集計部411での未処理データ量の集計が完了している場合のデータ処理装置の動作を示す。時間Ts1〜Ts4はフレームの先頭が検出されたタイミングであり、時間Td1〜Td3はデータ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングであり、時間Tc1〜Tc3はデータ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングである。
【0088】
図10は、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングTd1〜Td3が、データ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングTc1〜Tc3よりも遅い点で図7に示す動作例とは異なる。そして、このような動作は、例えば、フレームの受信データ量が少なく、さらにそのフレームの時間制約処理に対応するデータCDの割合が大きい場合に起こり得る。すなわちフレームの受信データ量が少ないため、無線同期及び復調復号化部21での復調復号化処理は早く完了し、フレームの受信データ量が早いタイミングで得られるため、データ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミング時間Tc1〜Tc3は早い。また、フレームの時間制約処理に対応するデータCDの割合が大きいため、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングTd1〜Td3は比較的に遅くなる。
【0089】
以下、図5、図10を参照し、図7の動作との差異を説明する。
【0090】
フレームF11の受信データは、復調復号化され、データバッファ22に一時格納される。以降、フレームの受信データの復調復号化と並行してデータバッファ22に出力された受信データは、データ処理部42により最大周波数f1で順次処理される。
【0091】
時間Tc1において、フレームF11の受信データの復調復号化が完了し、フレームF11の受信データ量が求められ、データ量集計部411での未処理データ量の集計が完了する。そして、データ量集計部411は、データ処理管理機能部413にデータ量集計完了信号S6を出力する。
【0092】
そして、時間Td1における時間制約処理完了のタイミングで、データ処理部42は、データ処理管理機能部413に時間制約処理完了信号S3を出力する。
【0093】
データ処理管理機能部413は、データ処理部42からの時間制約処理完了信号S3に応答して、データ量集計部411からデータ量集計完了信号S6を受けているか否かを参照し、未処理データ量の集計完了を示すクロック周波数決定信号S4を性能決定部412に出力する。
【0094】
性能決定部412は、データ処理管理機能部413からのクロック周波数決定信号S4に応答して、データ量集計部411が集計した未処理データ量に基づいて新たなクロック周波数f11を決定する。そして、プロセッサ4は、その決定したクロック周波数に対応するクロック周波数設定信号S5を電源・クロック生成部1に出力する。それに応答して、電源・クロック生成部1は、クロックCLKを最大周波数f1からクロック周波数f11に下げ、電源電圧Vcを最大周波数f1に対応する最大電圧からクロック周波数f11に対応する電圧に下げる。
【0095】
そして、時間Td1以降、フレーム12の先頭検出のタイミングTs2までクロック周波数f11で未処理データに対応する処理が実行される。以降、図10に示すようにフレーム毎に同様の処理が繰り返される。
【0096】
以上のように、データ処理部42での時間制約処理の完了のタイミングTd1〜Td3が、データ量集計部411での未処理データ量の集計完了のタイミングTc1〜Tc3よりも遅い場合、本データ処理装置は、前者のタイミングTd1〜Td3で未処理データ量に基づく新たなクロック周波数を決定する。
【0097】
このように、本データ処理装置は、フレームの受信データの性格に関わらず、フレーム毎に図7に示す動作または図10に示す動作により低オーバヘッドで低消費電力化を実現する。
【0098】
また、無線同期及び復調復号部21がフレームの先頭を検出してから、そのフレームの受信データの処理がデータ処理部42で開始されるまでに、復調復号化処理やバッファリング等が行われるため、遅延が生じることが想定される。このような場合、フレームの先頭を検出した時点でプロセッサ4に最大周波数のクロックCLKを供給することは適切でない。
【0099】
そこで、無線同期及び復調復号化部21は、フレームの先頭検出のタイミング後、データ処理部42が時間制約処理を開始するタイミングで電源・クロック生成部1にフレーム先頭検出信号S1を出力する。
【0100】
これは、例えばデータ処理部42が、フレームの先頭部分に含まれる通信制御用データCDの処理開始と同時に無線同期及び復調復号部21に図示しない信号を返し、無線同期及び復調復号部21が、その信号に応答してフレーム先頭検出信号S1を出力することにより実現される。もしくは、システム設計時に上述した遅延を想定し、無線同期及び復調復号部21がその遅延分遅らせてフレーム先頭検出信号S1を出力してもよい。
【0101】
これにより、本データ処理装置は、最大周波数のクロックおよびそれに対応する電源電圧での処理を、時間制約処理に対応するデータについてのみ適用できる。
【0102】
次に、通信状態維持のためにリアルタイム性が求められる時間制約処理の具体例として、送信電力制御処理、通信状態の報告処理、MAP情報の解析処理について簡単に説明する。
【0103】
第1の例では、全てのユーザが同一周波数の搬送波を使用するCDMA方式では、基地局からの距離にかかわらず移動局が同じ送信電力で電波を出すと、近い方からの電波が強すぎて、遠い方の移動局からの信号を分離できなくなるという問題が発生する。これを遠近問題といい、この問題を解決するために各移動局が送信電力を必要最小限に抑える適応送信電力制御が不可欠となる。
【0104】
そこで、移動局は、時間制約処理として基地局が指定する上り信号の電波強度に基づいて自己の送信電力の調整処理を行う。この調整処理は、そのフレームの期間内で完了することが求められる。
【0105】
第2の例では、基地局は、移動局に送信する下り信号の電波強度を調整するために、まず、移動局に下り信号の電波強度の測定を指示する。その指示に応答して、移動局は、基地局からの下り信号の電波強度を測定し、その測定結果を基地局に報告する。この報告処理も、基地局からのその命令コマンドを受信したフレームの期間内で完了することが求められる。
【0106】
第3の例は次のとおりである。図11は、本実施の形態におけるデータ処理装置が処理するフレームのデータフォーマットの一例である。図11(a)は、TDMA方式のフレーム構成であり、無線リソースは時間領域で分割されている。マップデータM1は、分割された複数のタイムスロットSL1、SL2・・の管理情報を含み、例えば自分に割当てられたスロット位置の情報等を含む。
【0107】
図11(b)は、モバイルWiMAXが採用しているOFDMA方式のフレーム構成であり、無線リソースは周波数領域と時間領域で分割されている。本フレームは、データ転送用のブロックである複数のバーストB1、B2・・を有する。そして、マップデータM2は、フレーム内のこれらバーストB1、B2・・の管理情報を含み、例えば各バーストの割当て情報や拡張制御情報等の受信パラメータを含む。
【0108】
受信側は、受信したこれらのフレームを処理するために、まずマップデータM1、M2を解析し、各スロットおよびバーストの位置情報等を検出する必要がある。そのため、マップデータM1、M2の解析は、そのフレームの期間の早い段階で完了することが求められる。そこで、本データ処理装置は、時間制約処理としてマップデータM1、M2の解析処理を行う。
【0109】
以上の実施の形態をまとめると,次の付記のとおりである。
【0110】
(付記1)
受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置において、
供給されるクロックと電源電圧に基づいて前記受信データを前記フレーム毎にデータ処理し、前記フレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を当該フレームに与えられた単位時間内に完了するデータ処理部と、
前記クロックおよびそれに対応する電源電圧を生成し、前記データ処理部に供給する電源・クロック生成部と、
前記フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、
前記データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、
前記電源・クロック生成部は、前記フレーム先頭検出部による前記フレーム先頭検出のタイミングに応答して前記データ処理部が動作可能な最大周波数のクロックと前記最大周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給し、前記データ処理部が前記時間制約処理を完了した後、当該フレームの単位時間内のクロック周波数設定タイミングで、前記最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、前記クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける前記未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックと前記第1の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給するデータ処理装置。
【0111】
(付記2)
前記電源・クロック生成部は、前記データ処理部による前記時間制約処理の完了のタイミングに応答して、前記クロック周波数設定タイミングの前に一時的に以前のフレームで決定された第2の周波数のクロックと前記第2の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する付記1記載のデータ処理装置。
【0112】
(付記3)
前記未処理データは、現在のフレームおよび以前のフレームの受信データと送信データとを有する付記1記載のデータ処理装置。
【0113】
(付記4)
前記未処理データ量は、前記現在のフレームおよび以前のフレームの受信データと送信データのそれぞれに対してデータ処理の優先順位に基づく係数が積算されてから求められる付記3記載のデータ処理装置。
【0114】
(付記5)
前記クロック周波数決定部は、前記未処理データ量に対応するクロックの周波数が定義された対応テーブルを有し、当該対応テーブルに基づいて前記第1の周波数を決定する付記1記載のデータ処理装置。
【0115】
(付記6)
前記電源・クロック生成部は、前記受信データ先頭検出部による前記フレームの検出のタイミング以降、前記データ処理部による前記時間制約処理の開始のタイミングで前記最大周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する付記1記載のデータ処理装置。
【0116】
(付記7)
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記移動局が、前記基地局が指定する上り信号の電波強度に基づいて自己の送信電力を調整する処理を含む付記1記載のデータ処理装置。
【0117】
(付記8)
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記基地局から送信された下り信号の電波強度を測定し、前記基地局に測定結果を報告する処理を含む付記1記載のデータ処理装置。
【0118】
(付記9)
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記フレームは、データ転送用のブロックである複数のバーストを有し、前記時間制約処理は、前記フレーム内の複数のバーストの位置情報または受信パラメータを含むマップデータを解析する処理である付記1記載のデータ処理装置。
【符号の説明】
【0119】
1 電源・クロック生成部 2 データ受信部 3 データ送信部
4 プロセッサ 5 入出力装置 41 クロック周波数決定部 42 データ処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置において、
供給されるクロックと電源電圧に基づいて前記受信データを前記フレーム毎にデータ処理し、前記フレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を当該フレームに与えられた単位時間内に完了するデータ処理部と、
前記クロックおよびそれに対応する電源電圧を生成し、前記データ処理部に供給する電源・クロック生成部と、
前記フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、
前記データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、
前記電源・クロック生成部は、前記フレーム先頭検出部による前記フレーム先頭検出のタイミングに応答して前記データ処理部が動作可能な最大周波数のクロックと前記最大周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給し、前記データ処理部が前記時間制約処理を完了した後、当該フレームの単位時間内のクロック周波数設定タイミングで、前記最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、前記クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける前記未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックと前記第1の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給するデータ処理装置。
【請求項2】
前記電源・クロック生成部は、前記データ処理部による前記時間制約処理の完了のタイミングに応答して、前記クロック周波数設定タイミングの前に一時的に以前のフレームで決定された第2の周波数のクロックと前記第2の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記電源・クロック生成部は、前記受信データ先頭検出部による前記フレームの検出のタイミング以降、前記データ処理部による前記時間制約処理の開始のタイミングで前記最大周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記移動局が、前記基地局が指定する上り信号の電波強度に基づいて自己の送信電力を調整する処理を含む請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記基地局から送信された下り信号の電波強度を測定し、前記基地局に測定結果を報告する処理を含む請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項1】
受信データをフレーム毎に受信する通信システムのデータ処理装置において、
供給されるクロックと電源電圧に基づいて前記受信データを前記フレーム毎にデータ処理し、前記フレームの先頭部分に含まれるデータに対応する時間制約処理を当該フレームに与えられた単位時間内に完了するデータ処理部と、
前記クロックおよびそれに対応する電源電圧を生成し、前記データ処理部に供給する電源・クロック生成部と、
前記フレームの先頭を検出するフレーム先頭検出部と、
前記データ処理部における未処理データ量に基づいてクロック周波数を決定するクロック周波数決定部とを有し、
前記電源・クロック生成部は、前記フレーム先頭検出部による前記フレーム先頭検出のタイミングに応答して前記データ処理部が動作可能な最大周波数のクロックと前記最大周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給し、前記データ処理部が前記時間制約処理を完了した後、当該フレームの単位時間内のクロック周波数設定タイミングで、前記最大周波数のクロックより低い第1の周波数のクロックであって、前記クロック周波数決定部が当該クロック周波数設定タイミングにおける前記未処理データ量に基づいて決定した第1の周波数のクロックと前記第1の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給するデータ処理装置。
【請求項2】
前記電源・クロック生成部は、前記データ処理部による前記時間制約処理の完了のタイミングに応答して、前記クロック周波数設定タイミングの前に一時的に以前のフレームで決定された第2の周波数のクロックと前記第2の周波数のクロックに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記電源・クロック生成部は、前記受信データ先頭検出部による前記フレームの検出のタイミング以降、前記データ処理部による前記時間制約処理の開始のタイミングで前記最大周波数のクロックとそれに対応する電源電圧とを前記データ処理部に供給する請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記移動局が、前記基地局が指定する上り信号の電波強度に基づいて自己の送信電力を調整する処理を含む請求項1記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記通信システムは、基地局と移動局を有する無線通信システムであって、前記時間制約処理は、前記基地局から送信された下り信号の電波強度を測定し、前記基地局に測定結果を報告する処理を含む請求項1記載のデータ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−19044(P2011−19044A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161667(P2009−161667)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】
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